説明

カーボンナノチューブミクロ繊維

【課題】 分散されたCNT断片から迅速な方法でカーボンナノチューブを含んでなる比較的長いミクロ繊維を二次加工する方法を提供すること。
【解決手段】 本発明はナノテクノロジーの分野に関する。特定的には、本発明は分散されたカーボンナノチューブ断片からのカーボンナノチューブミクロ繊維の製造に関し、分散されたカーボンナノチューブ断片は続いて電場に暴露される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はナノテクノロジーの分野に関する。特定的には、本発明は分散されたカーボンナノチューブ(carbon nanotube)断片からのカーボンナノチューブミクロ繊維の製造に関し、分散されたカーボンナノチューブ断片は続いて電場に暴露される。
【背景技術】
【0002】
発明の技術的背景
一定の(DC)電場中の帯電粒子がそれらを動かす電気泳動力を経験することは、ほとんど200年前から既知である。さらに最近、カーボンナノチューブを含むコロイド粒子を、接触電極により作られる電場の適用により、多様な小規模の構造に集成する(assemble)ことができることが観察された。しかしながら、電気泳動法は、粒子上に強い表面電荷が存在し且つ適用される電圧が低い(加水分解に関する閾値より低い)コロイド系に限られる。交流(AC)電場及び誘電泳動力(dielectrophoretic force)の使用によりこれらの制限を克服することができる。例えば、非特許文献1、非特許文献2及び非特許文献3を参照されたい。
【0003】
コロイド粒子の懸濁液を横切るAC電場の適用はそれらの分極を生ずる。得られる誘起双極子の記号及び大きさは、粒子の有効分極率に依存し、それはClausius−Mossotti関数Kの実数部分により与えられ、
【0004】
【数1】

【0005】
ここでε(及びε)ならびにσ(及びσ)はそれぞれ媒体及び粒子の誘電率(dielectric permittivity)及び伝導率である。金属性粒子は常に電場の勾配の高い領域に引き付けられる。誘電性粒子の場合、力はω=(τMW−1のクロスオーバー周波数において吸引性から反発性に変化し、ここでτMWはMaxwell−Wagner電荷緩和時間
【0006】
【数2】

【0007】
である。そのような相互作用の記号の周波数−依存性変化は通常、水中におけるポリマー小球の場合に観察され、高度の制御を許す。非特許文献4も参照されたい。
【0008】
クロスオーバー周波数ωよりずっと大きい周波数ωの限度内で、式(1)は誘電定数のみの関数に単純化される。
【0009】
【数3】

【0010】
ωよりずっと小さい周波数の限度内で、式(1)は伝導率のみの関数に単純化される。
【0011】
【数4】

【0012】
【数5】

【0013】
交流電圧の使用は、実質的にいずれの型の分極可能な粒子をいずれの型の媒体中で処理することも可能にし、且ついずれも粒子フラックス(fluxes)を崩壊させ得る加水分解又は電気浸透電流を引き起こすことなく、高い電場の強度を可能にする利点を有する。
【0014】
非特許文献5は、単層カーボンナノチューブ(single wall carbon nanotubes;SWCNT)を重水(DO)中に分散させ、非常に高い加速度(170,000g)において4時間遠心し、水中の非常に低濃度のSWCNTを作る方法を記載している。次いで非常に高い周波数(10MHz)のAC電位を、分散液と直接接触している電極に適用する。電極間の間隙は一般に小さく、40μmの大きさである。明らかにこれらの著者は高い周波数限界内で操作し、それは彼らの式(1)が誘電定数の関数であり、且つ本明細書に示される式(2)及び(4)の組合せとであると理解され得るからである。
【0015】
特許文献6は、比較的高い周波数におけるAC電場(3V,1MHz)を介するSWCNT’sの形成を記載している。作られるSWCNT’sは長さが約3〜5μmであり、直径が10〜15nmであり、ロープの外観を有した。断片は数時間の音波処理を介して分散された。
【非特許文献1】T.B.Jones著,Electromechanics of Particles:Cambridge University Press,Cambridge,1995年
【非特許文献2】H.A.Pohl著,Dielectrophoresis,Cambridge University Press,Cambridge,1978年
【非特許文献3】R.Pethig,et al.著,J.Phys.D:Appl.Phys.,24,1992年,881
【非特許文献4】T.Muller,et al.著,J.Phys.D:Appl.Phys.,29,1996年,340
【非特許文献5】Krupke et al.著,Science,301,2003年,344
【非特許文献6】M.S.Kumar,et al.著,Chemical Physics Letters,383,2004年,235
【発明の開示】
【0016】
分散されたCNT断片から迅速な方法でカーボンナノチューブを含んでなる比較的長いミクロ繊維を二次加工する必要がある。
【0017】
前に記載された方法と異なり、本発明は比較的高価な重水ではなくてHO中で製造することができる。遠心はずっと短い持続時間(4時間ではなくて30分)及びより低い強度(わずか6000g)のものである。適用される電圧の周波数は特許文献5により記載された周波数より3桁以上低く(more than 3 orders of magnitude lower)、100Hz〜10kHzの範囲である。高い周波数においては寄生キャパシタンス(parasitic capacitance)が意図されないシグナル経路を作り、それは誘電泳動及び続く有害な位置におけるミクロ繊維の成長に導き得、取り付け具(fixtures)及び電極の構造の電気的設計を複雑にする。従って低周波数の使用の利点は、回路部品、ケーブル及び取り付け具の設計及び構築が単純になることである。
【0018】
本発明のさらなる利点は、CNT断片の混合物の精製のためにそれを使用できることである。2種類の精製:半導体CNTsからの金属性CNTsの分離ならびにCNT形成プロセス中に通常作られる凝集及び凝結した材料からのCNT断片(いずれかの型の)の抽出が可能である。半導体及び金属型のCNTの間の電気伝導率における大きな差のために(Bachtold et al.著,Phys.Rev.Lett.,845,2000年,6082を参照されたい)、式4の低周波数限度内で誘電泳動力が金属性CNTsの場合に正であり、半導体性CNTsの場合に負であるように媒体(水)の伝導率を調製することが可能である。かくして、金属型は電場の強度のより高い領域に向かって動き、半導体型は電場の強度のより低い領域に向かって動くであろう。この動きはCNT断片の電子的性質に従うそれらの凝離を与える。与えられる型のCNT断片をそれらの特異的電子構造に従って、周波数又は媒体の伝導率の操作を介して誘電泳動力を均衡させることにより、さらに分類することも可能なはずである。
【0019】
第2の種類の精製(CNT断片の抽出)は、CNTsの製造に用いられるほとんどすべての既知の初期の方法により製造される材料の高度に凝集及び凝結した性質を前提とすると、重要な利点である。CNTsの凝集物及び凝結物は、それらの大きな寸法(典型的には1〜50ミクロンの範囲内)の故に、分散液中で非常に小さい移動度を有する。従って誘電泳動の適用を介し、CNT断片をこれらのより大きな構造から物理的に抽出することができる。比較的大きな構造を小片に破壊する微粉砕(磨砕)又は凝集した材料から断片を遊離させる適した界面活性剤及び分散剤の適用を介して、個々のCNT断片の収率を向上させることができる。
【0020】
本発明のさらなる利点は、それが電気抵抗体として働くサブミクロンアセンブリを生じ得ることであり、それは多様な電子的及び検出用途において用いられ得る。抵抗体は電子回路の基本的成分であり、本明細書で製造されるミクロ繊維をチップ(IC)又はウェハースケールにおける回路の構築に用いることができる。さらにこれらのミクロ繊維の表面を特定のタンパク質又は生物学的材料と結合するように改質し、そのような分子が存在する場合にミクロ繊維の電気抵抗が変化するようにすることができる。従ってこれらのCNTミクロ繊維を化学的及び生物医学的用途におけるセンサーとして用いることができる。
【0021】
発明の概略
本発明は:
(a)分散されたCNT断片を含んでなる分散されたカーボンナノチューブ溶液を1対の電極の間に置き;そして
(b)多数のカーボンナノチューブ断片を分散されたCNT断片の平均長より大きい長さのカーボンナノチューブ繊維に集成するのに有効なAC電圧を電極に適用し、ここで適用される有効電圧の周波数は1MHz又はそれ未満である
段階を含んでなるカーボンナノチューブ繊維の製造法に関する。
【0022】
本発明はまた:
(a)分散されたCNT断片を含んでなる分散されたカーボンナノチューブ溶液を1対の電極の間に置き;そして
(b)多数のカーボンナノチューブ断片を分散されたCNT断片の平均長より大きい長さのカーボンナノチューブ繊維に集成するのに有効なDC電圧を電極に適用する
段階を含んでなるカーボンナノチューブ繊維の製造法に関する。
【0023】
図面の簡単な記述
図1(a)は、ミクロワイアの成長のために用いられる電極配置の写真である。図1(b)は、ミクロワイアの成長のために用いられる電極配置の略図である。
【0024】
図2は、25μmの電極間隙において成長したカーボンナノチューブの典型的な電流−電圧応答を示すグラフ図である。
【0025】
図3は、5μmの電極間隙を横切るミクロ繊維成長に必要な閾電圧を示すグラフ図である。
【0026】
図4は、本発明により製造されるCNTのSEMコラージュを示す。
【0027】
発明の詳細な記述
本発明は、カーボンナノチューブのミクロ−スケール繊維への誘電泳動集成に関する。これらのミクロ繊維をサブ−ミクロン直径及び100nm〜数mmの長さの電線として用いることができる。
【0028】
ナノ−構造の1つの種類はカーボンナノチューブ(CNT’s)であり、それはそれらの寸法及び予測される構造−感受性のために多くの注意を引いてきた。カーボンナノチューブは数ナノメーターの大きさの直径及び最高で数マイクロメーターの長さを有する。これらの長いナノチューブは、同軸的やり方で配置されたカーボン六角形から成り、チューブの両端は五角形−含有バックミンスターフラーレン(buckminsterfullerene)−様構造によりキャップされている。ナノチューブは、直径及び壁中のグラファイト環の配置のキラリティーに依存して半導体又は金属として挙動することができる。さらに、異質のカーボンナノチューブを一緒に結合させ、興味深い電気的、磁気的、非線形光学的、熱的及び機械的性質を有する分子ワイアの形成を可能にすることができる。
【0029】
ナノチューブの珍しい性質は、パネルディスプレーにおける電子場エミッタ(electron field emitters)、単−分子トランジスタ(single−molecular transistors)、走査型プローブ顕微鏡チップ(scanning probe microscope tips)、ガス及び電気化学的エネルギー貯蔵、触媒、タンパク質/DNA支持体、分子濾過膜及びエネルギー−吸収材料のための新規な材料を含む材料科学及びナノテクノロジーにおける多数の用途を示唆する(例えば:M.Dresselhaus,et al.著,Phys.World,January,1988年,33;P.M.Ajayan,and T.W.Ebessen著,Rep.Prog.Phys.,60,1997年,1027;R.Dagani著,C&E News,January,11,1999年,31を参照されたい)。
【0030】
特定の寸法に切断される金属性又は半導体性を有するナノ−構造は、エレクトロニクス、通信コンピューター(communications computer)及び他の産業において有用なナノ−スケール電気機械及び回路の構築において用途を有する。例えば均一な長さ又は特定の寸法−分布の属性を有するナノチューブの大規模製造を、電界−放出トランジスタ(field−emmision transistors)、人工アクチュエーター(artificial actuators)、分子−濾過膜、エネルギー−吸収材料、分子トランジスタ及び他の光電子装置のような電子的用途において、ならびにガス貯蔵、単−電子装置(single−electron devices)及び化学的及び生物学的センサーにおいて用いることができる。
【0031】
「ナノチューブ」という用語は、約1〜200nmの狭い寸法(直径)及び長い寸法(長さ)を有し、ここで長い寸法対狭い寸法の比率、すなわちアスペクト比は少なくとも5である中空の物品を指す。一般にアスペクト比は10〜2000である。
【0032】
「カーボンナノチューブ断片」という用語は、一般にカーボンナノチューブ直径の少なくとも3倍の長さの(of a length of at least three carbon nanotube diameters)カーボンナノチューブ切片を指す。
【0033】
「カーボンナノチューブ繊維」という用語は、断片の平均長より大きい長さを有するカーボンナノチューブ断片の集成体を指す。これらの繊維を、電導度及び抵抗率を含むがこれらに限られない電気的性質を有するワイアと考えることもできる。
【0034】
本明細書で、「カーボンに基づくナノチューブ」又は「カーボンナノチューブ」又は「CNT」により、主に炭素原子から成る中空の構造を意味する。カーボンナノチューブに他の元素、例えば金属をドーピングすることができる。
【0035】
「整列した」という用語は、それが分散剤溶液中のナノチューブを指す場合、個々のナノチューブ又はナノチューブの凝集物の他に関する配向を指す(すなわち整列した対整列しない)。本明細書で用いられる場合、「整列した」という用語は基質上のナノ−構造(平らに置く)の2次元配向も指すことができる。
【0036】
本発明における好ましいナノ−ロッド(nano−rods)はナノチューブであり、ここでカーボンに基づくナノチューブ(CNT’s)が最も好ましい。本発明のナノチューブは一般に長さが約1〜200nmであり、ここで長さの寸法対狭い寸法の比率、すなわちアスペクト比は少なくとも5である。一般にアスペクト比は10〜2000である。カーボンナノチューブは主に炭素原子から成るが、他の元素、例えば金属がドーピングされていることができる。本発明のカーボンに基づくナノチューブは多層ナノチューブ(MWCNTs)又は単層ナノチューブ(SWCNTs)であることができる。例えばMWCNTはそれぞれ異なる直径を有する数個の同軸ナノチューブを含む。かくして直径が最も小さいチューブはそれより大きな直径のチューブにより封入され、それが今度は他のもっと大きな直径のナノチューブに封入される。他方、SWCNTは1個のナノチューブのみを含む。
【0037】
本発明の1つの態様において、ナノチューブは音波処理により分散される。音波処理により、超音波力の適用を意味する。他の制限ではない分散の方法には、界面活性剤の使用及びDNA会合(association)が含まれる。
【実施例】
【0038】
材料
超純水はBarnstead Easypure 逆浸透系から得た。単−及び多−層カーボンナノチューブはMER Corp.,Tucson AZから得た。これらのナノチューブは約15nm(走査型電子顕微鏡を介して観察)の直径を有したが、他の直径のナノチューブを用いることもできる。超音波プローブを用い、ナノチューブを約0.01重量%の濃度で水中に分散させた(Sonics & Materials Vibra−Cell,20kHzで2分間運転)。
【0039】
装置
本明細書でミクロワイアとも称されるミクロ繊維を2つの電極間の交流電場内で集成した;これらの電極間の間隙は10μm〜3mmの範囲であった。2つの型の電極アセンブリを準備した。第1の型では100nmの厚さの金電極をガラススライド上に付着させ、付着の間のマスクとして働くTeflonテープの幅により電極間の間隙を決定した。電極間隙は4〜8mmの範囲である。第2の型の電極構造(10ミクロン〜100ミクロンの範囲の間隙寸法を有する)は、写真平版を介してガラス基質上に二次加工された。これらの電極は、10nmのクロムの層上に100nmの厚さの金の層を付着させることにより形成された。電極の寸法及び形を区画するフォトマスクを用いてエッチング−抵抗層(etch−resist layer)を適用し、次いで過剰の金属を除去した。典型的な電極配置の写真及び略図を図1に示す。
【0040】
ミクロワイアを集成するために、コロイド懸濁液を電極間隙上に置き、ガラスカバースリップで覆った。関数発生器(function generator)(Wavetek Model 23)及び図1に示される電気回路を用い、交流電場を適用した。図1に示される抵抗体は、ワイアが間隙を橋絡する時の電流の動揺を制限し、間隙においてワイアを集成させ、コンデンサーはファンクションジェネレーターにより作られるDCバイアスを遮断する。そのような小さい間隙の使用はミクロワイアを成長させるのに必要な適用電圧を低下させ、従って外部の直列増幅器(以前の研究で用いられた)の必要がないことが注目されねばならない。適用される電場の周波数を100〜10,000Hzの間で変化させ、適用される電圧及び電流をデジタル電気抵抗ミリアンペア計(digital multimeters)(Fluke Model 87)を用いて測定した。
【0041】
先行技術は、電極がカーボンナノチューブの分散液と直接接触していなければならないことを前提としているが、実際には誘電泳動力はAC電場の故に生ずる。液体との直接の接触なしで必要な強度の電場を作ることができる。薄い絶縁性(誘電性)材料を電極及び分散液の間に置くと、電場の強度は誘電体の存在により部分的に低下するが、電場はまだ分散液中に現れる。従って分散液と直接接触させることは必要でない。本発明の利点は、電極面で起こり得る可能な加水分解をそれが避けることである。
【0042】
実験法
実験は、SWCNTs又はMWCNTsの水性コロイドを調製し、それを交流電場に供し、ミクロ繊維の成長を観察することにより行なわれた。複数の実験パラメーター:粒度、濃度、組成、電極間隙、電極に適用される根平均二乗(RMS)電圧及び周波数を変化させた。観察は繊維成長の間にコロイドを通過するRMS電流、繊維成長を開始させるのに必要な閾電圧、成長速度、集成されるミクロ繊維の直径及び形態ならびに完成したミクロ繊維の電気抵抗を含んだ。
【0043】
抵抗は、ワイアを介して交流を注入し(injecting)、2つの電極間の対応する電圧低下を記録することにより評価された。このデータを用い、ワイアに関するI−V(すなわち電流対電圧)曲線を構成した;得られる線(図2を参照されたい)の逆勾配はワイアの抵抗である。図2において、ワイア(ミクロ繊維)の抵抗は約2.5MΩであるが、本発明により多様な他の抵抗(及び体積抵抗率)を得た。この測定は、ミクロワイアがまだ部分的に減らされたコロイド懸濁液中にある間に行なわれる。コロイドの存在は疑いなく測定を混乱させるが、回路を介して流れる電流は、ワイアが完成すると数桁増加するので、我々はこの混乱は小さいと信じる。
【0044】
ワイア集成の機構
コロイド粒子上の誘電泳動力はそれらを最大電場強度の領域に向かって動かし、それはこの形状の場合、ガラススライドの表面に沿って存在する。粒子が分散されると、それらの間の反発相互作用は凝集を妨げる。しかしながら高濃度の領域において、反発相互作用は誘電泳動力により克服され、粒子をワイアチップ上に凝集させる。
【0045】
ワイア成長の開始に必要な最低電圧は、複数の変数に依存性である。式(1)及び(2)に従い、誘電泳動力は適用電場の周波数、粒子半径ならびに粒子及び周りの媒体の伝導率及び誘電率の関数である。図3に、SWCNT及びMWCNT懸濁液に関する閾電圧を適用電場の周波数の関数としてプロットする。5μmの間隙を横切って、わずか1〜10ボルトの比較的低い適用電圧において電場強度は非常に強く(典型的には2000〜20,000V/cm)、CNT断片を一緒に押し込める(squeeze)誘電力の結果として粒子は容易にミクロワイアに集成される。閾電圧は周波数の増加とともに向上し、それは式(1)に従い、固定された電場強度において周波数の増加とともに誘電力が低下するからである。CNT断片を1つの構造に融合させるのに最少量のエネルギーは必要であると思われ、従ってこの基準を満たすために適用電圧が向上しなければならない。電場強度は間隙の幅に反比例するので、比較的低い周波数(100kHz未満)を用いて非常に長いワイアが成長するはずである。
【0046】
カーボンナノチューブの二次加工及び適用は産業及び学問(academia)の両方に非常に興味深いものであるが、成功は純粋なナノチューブ試料の使用に依存する。上記の方法を用い、図4に示される通り20mmより長いMWCNTミクロワイアが形成された。高い抵抗値を示す長い(最高で数mm)非常に薄いミクロ繊維の製造の利益は、そのようなミクロ繊維に基づくセンサーの感度が向上するであろうことである。すなわち標的分子の濃度における比較的小さい変化でも絶対抵抗における有意な変化を生ずるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1A】ミクロワイアの成長のために用いられる電極配置の写真。
【図1B】ミクロワイアの成長のために用いられる電極配置の略図。
【図2】25μmの電極間隙において成長したカーボンナノチューブの典型的な電流−電圧応答を示すグラフ図。
【図3】5μmの電極間隙を横切るミクロ繊維成長に必要な閾電圧を示すグラフ図。
【図4】本発明により製造されるCNTのSEMコラージュ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分散されたCNT断片を含んでなる分散されたカーボンナノチューブ溶液を1対の電極の間に置き;そして
(b)多数のカーボンナノチューブ断片を分散されたCNT断片の平均長より大きい長さのカーボンナノチューブ繊維に集成するのに有効なAC電圧を電極に適用し、ここで適用される有効電圧の周波数は1MHz又はそれ未満である
ことを含んでなるカーボンナノチューブ繊維の製造法。
【請求項2】
(a)分散されたCNT断片を含んでなる分散されたカーボンナノチューブ溶液を1対の電極の間に置き;そして
(b)多数のカーボンナノチューブ断片を分散されたCNT断片の平均長より大きい長さのカーボンナノチューブ繊維に集成するのに有効なDC電圧を電極に適用する
段階を含んでなるカーボンナノチューブ繊維の製造法。
【請求項3】
適用される有効電圧の周波数が100Hzもしくはそれ未満である請求項1の方法。
【請求項4】
CNT断片を音波処理により分散させる請求項1又は請求項2の方法。
【請求項5】
集成されたカーボンナノチューブ繊維の長さが分散されたCNT断片の平均長の少なくとも3倍である請求項1又は請求項2の方法。
【請求項6】
集成されたカーボンナノチューブ繊維の長さが分散されたCNT断片の平均長の少なくとも5倍である請求項1又は請求項2の方法。
【請求項7】
集成されたカーボンナノチューブ繊維の長さが分散されたCNT断片の平均長の少なくとも100倍である請求項1又は請求項2の方法。
【請求項8】
集成されたカーボンナノチューブ繊維の抵抗が少なくとも2.5MΩである請求項1又は請求項2の方法。
【請求項9】
カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブ(SWCNTs)である請求項1又は請求項2の方法。
【請求項10】
カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブ(MWCNTs)である請求項1又は請求項2の方法。
【請求項11】
該電極の少なくとも1つがCNT溶液と直接接触している請求項1又は請求項2の方法。
【請求項12】
該電極のいずれもCNT溶液と直接接触していない請求項1又は請求項2の方法。
【請求項13】
CNTsを精製する請求項1又は請求項2の方法。
【請求項14】
金属性CNTsを半導体CNTsから分離する請求項14の方法。
【請求項15】
CNT断片をCNT凝集物から抽出する請求項14の方法。
【請求項16】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる電気装置。
【請求項17】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる複合材料。
【請求項18】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる電界放出ディスプレー(field emission display)。
【請求項19】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる電子エミッタ(electron emitter)。
【請求項20】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる電池。
【請求項21】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる燃料電池。
【請求項22】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる電磁干渉(EMI)シールド。
【請求項23】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる化学的センサー。
【請求項24】
請求項1又は請求項2の方法により製造される1種もしくはそれより多いCNT繊維を含んでなる生物学的センサー。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−36630(P2006−36630A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183784(P2005−183784)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】