説明

カーボンナノチューブ分散材料の導電性向上方法

【課題】CNT分散性に優れた高分岐ポリマーを分散剤として用いたCNT含有組成物から調製されるCNT分散材料、すなわち、導電性複合体の導電性を向上させる手法を提供すること。
【解決手段】カーボンナノチューブおよびガラス転移点を有する高分岐ポリマーを含むカーボンナノチューブ分散材料を、例えば、上記高分岐ポリマーのガラス転移点の−30℃〜+150℃の範囲の温度で加熱することを特徴とするカーボンナノチューブ分散材料の導電性向上方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ分散材料の導電性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、CNTとも略記する)は、ナノテクノロジーの有力な素材として、広範な分野で応用の可能性が検討されている。その用途としては、トランジスタや、顕微鏡用プローブなどのように単独のCNTそのものを使用する方法と、電子放出電極、燃料電池用電極、またはCNTを分散させた導電性複合体などのように、多数のCNTをまとめてバルクとして使用する方法と、に大別される。
単独のCNTを使用する場合、CNTを溶媒中に加えてこれに超音波を照射した後、電気泳動等で単一に分散しているCNTのみを取り出す方法などが用いられている。
【0003】
一方、バルクで用いる導電性複合体では、マトリックス材となるポリマー中などに良好に分散させる必要がある。
しかし、一般的にCNTは分散しにくいという問題があり、通常の複合体ではCNTの分散が不完全なまま用いられているため、十分にCNTの性能を発現させているとは言い難い。
さらに、この問題は、CNTの各種応用を難しくさせることにもつながっている。このためCNTの表面改質、表面化学修飾などによって分散性を向上させる方法が種々検討されている。
【0004】
このようなCNTを分散させる方法として、コイル状構造を持つポリ((m−フェニレンビニレン)−co−(ジオクトキシ−p−フェニレンビニレン))をCNT表面に付着させる方法(例えば特許文献1参照)が提案されている。
ここでは、有機溶媒中にCNTを孤立に分散させることが可能で、CNT1本にポリマーが付着している様子を示しているが、一度ある程度にまで分散した後に凝集が起こり、沈殿物としてCNTを捕集するというものであり、長期的にCNTを分散させた状態で保存できるものではなかった。
【0005】
上記の問題点を解決する方法として、ポリビニルピロリドンによりCNTをアミド系極性有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献2参照)、アルコール系有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献3参照)が提案されている。
しかし、分散剤として用いられるポリマーは直鎖状ポリマーであることを特徴としたものであり、高分岐ポリマーについての知見は明らかにされていない。
【0006】
一方、CNTの分散剤として高分岐ポリマーに着目した方法(例えば特許文献4参照)も提案されている。高分岐ポリマーとはスターポリマーや、デンドリティック(樹枝状)ポリマーとして分類されるデンドリマー、ハイパーブランチポリマーなどのように、骨格内に分岐を有するポリマーである。
これらの高分岐ポリマーは、従来の高分子が一般的に紐状の形状であるのに対し、積極的に分岐を導入している点で比較的疎な内部空間や粒子性を有するという特異な形状を示すと共に、各種官能基の導入により修飾可能な多数の末端を有しており、これらの特徴を利用することで直鎖状のポリマーと比較してCNTを高度に分散させる可能性がある。
【0007】
しかし、前述の高分岐ポリマーを分散剤として用いた特許文献4の技術では、長期的にCNTの孤立分散状態を保つには、機械的な処理のほかに熱処理をも必要としており、CNTの分散能はそれほど高いものではなかった。
さらに、この特許文献4の技術では、分散剤を合成する際の収率が低く、収率を向上させるためにカップリング剤として多量の金属触媒を使用する必要があることから、高分岐ポリマー中に金属成分が残留する虞があるため、CNTとの複合体の用途では応用が限定される虞がある。
また、上記各特許文献では、分散液から調製されるCNT分散薄膜の導電性向上に関する検討はなされていない。
【0008】
CNTの導電性を向上させる方法として、CNT粉末あるいはCNT分散薄膜のドーピング方法(例えば特許文献5)が提案されている。この特許文献5の技術では、酸化剤と有機溶媒とを含む酸化剤溶液中にCNTを添加し、CNTをドーピング処理する方法、またはCNT分散液からCNT分散薄膜を作製し、この分散薄膜を酸化剤溶液でドーピング処理する方法が記載されている。
しかし、特許文献5の技術はドーピング方法を主眼に据えたものであるため、分散剤に関する記載、特に高分岐ポリマーを分散剤とした検討に関する記載はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−44216号公報
【特許文献2】特開2005−162877号公報
【特許文献3】特開2008−24522号公報
【特許文献4】国際公開第2008/139839号パンフレット
【特許文献5】特開2008−297196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、CNT分散性に優れた高分岐ポリマーを分散剤として用いたCNT含有組成物から調製されるCNT分散材料、すなわち、導電性複合体の導電性を向上させる手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ガラス転移点(Tg)を有する高分岐ポリマーを分散剤として用いてCNT含有組成物を調製し、この組成物から得られるCNT分散材料を、高分岐ポリマーのTg付近またはそれ以上の温度でポストベークした場合に、CNT分散材料の表面抵抗が低下して導電性が向上するとともに、その硬度が高くなること、および上記ポストベーク処理により導電性が向上したCNT分散材料を、さらに酸などの酸化剤でドーピング処理することで、その他の特性を損なうことなくその導電性をより向上させ得ることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
1. カーボンナノチューブおよびガラス転移点を有する高分岐ポリマーを含むカーボンナノチューブ分散材料を加熱することを特徴とするカーボンナノチューブ分散材料の導電性向上方法、
2. 前記ガラス転移点に対し、−30℃〜+150℃の範囲の温度で加熱する1の導電性向上方法、
3. 前記高分岐ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、1,000〜2,000,000である1または2の導電性向上方法、
4. 前記高分岐ポリマーが、トリアリールアミン構造を繰り返し単位として有する3の導電性向上方法、
5. 前記高分岐ポリマーが、式(1)または式(2)で表される繰り返し単位を有する4の導電性向上方法、
【化1】

[式(1)および(2)中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立して、式(3)〜(7)で表されるいずれかの二価の有機基を表し、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または式(8)〜(11)で表されるいずれかの一価の有機基を表し(ただし、Z1およびZ2が同時に前記アルキル基となることはない。)、式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。
【化2】

(式中、R5〜R38は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
【化3】

{式中、R39〜R62は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、フェニル基、OR63、COR63、COOR63、またはNR6364(これらの式中、R63およびR64は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、またはフェニル基を表す。)を表す。}]
6. 前記高分岐ポリマーが、トリカルボニルベンゼン構造を繰り返し単位として有する3の導電性向上方法、
7. 前記高分岐ポリマーが、式(12)で表される繰り返し単位を有する6の導電性向上方法、
【化4】

(式中、RおよびR′は、水素原子または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
8. 前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種である1〜7のいずれかの導電性向上方法、
9. 前記加熱後、さらに酸化剤で処理する1〜8のいずれかの導電性向上方法、
10. 1〜9のいずれかの導電性向上方法によって導電性が向上したカーボンナノチューブ分散材料、
11. 1〜9のいずれかの導電性向上方法を用いることを特徴とするカーボンナノチューブ分散材料の製造方法、
12. カーボンナノチューブおよびガラス転移点を有する高分岐ポリマーを含む組成物を基材状に塗布し、加熱乾燥して得られた薄膜複合体を、前記ガラス転移点の−30℃〜+150℃の範囲の温度でポストベーク処理することを特徴とするカーボンナノチューブ分散材料の製造方法、
13. 前記ポストベーク処理後、さらに酸化剤でドーピング処理する12のカーボンナノチューブ分散材料の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な導電性および硬度を有するCNT分散材料を提供できる。
得られたCNT分散材料は、各種電導体材料等として幅広い用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例27,28で作製した複合体薄膜の透過率に対する表面抵抗の変化を示す図である。
【図2】実施例29,30で作製した複合体薄膜の透過率に対する表面抵抗の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るCNT分散材料の導電性向上方法は、CNTおよびガラス転移点を有する高分岐ポリマーを含むカーボンナノチューブ分散材料を加熱するものであり、必要に応じて、さらにこの分散材料を酸化剤で処理するものである。
より具体的には、CNTおよび上記高分岐ポリマー分散剤を含む組成物から薄膜等の複合体材料を作製するために行う加熱処理に加え、ポストベーク処理を行うものであり、必要に応じて、さらにこの分散材料を酸などの酸化剤でドーピング処理するものである。
このポストベーク処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等の適切な雰囲気下で行えばよい。
【0016】
ポストベーク処理温度は、CNT分散材料の導電性を向上させることが可能であれば、特に限定されないが、分散剤として用いる高分岐ポリマーのガラス転移点(Tg)より30℃低い温度から、Tgより150℃高い温度の範囲であることが好ましい。
Tgより30℃を超えて低い温度でのポストベーク処理では、十分に導電性を向上させる効果が得られない場合があり、一方、Tgより150℃を超えて高い温度でのポストベーク処理では、分散剤である高分岐ポリマーの熱分解や着色が起こる場合があり、導電性材料としての応用に支障をきたす虞がある。
より好ましいポストベーク処理温度は、分散剤として用いる高分岐ポリマーのTgより20℃低い温度から、Tgより125℃高い温度である。
【0017】
また、ポストベーク処理時間も、CNT分散材料の導電性を向上させることが可能であれば、特に限定されず、また、ポストベーク処理温度にも依存するが、上述した好適なポストベーク処理温度では、2〜60分間が好ましく、3〜40分間がより好ましい。
2分未満の処理では、十分に導電性を向上させる効果が得られない場合があり、一方、60分を超える処理では、分散剤である高分岐ポリマーの熱分解や着色が起こる場合があり、導電性材料としての応用に支障をきたす虞があるのみならず、生産性の面で効率が悪くなる。
【0018】
一方、ドーピング処理は、ポストベーク処理後のCNT分散材料の導電性を向上させることが可能であれば、特に限定されるものではないが、酸などの酸化能を有する酸化剤を用いることが好ましい。なお、酸化剤が液体である場合はそのままの状態で使用することも可能であるが、水や有機溶媒に溶解させた溶液状態で使用してもよい。また、ドーピング処理の方法としては、CNT分散材料中のCNTがドーピングされ、導電性が向上するものであれば、特に限定されるものではないが、CNT分散材料を酸化剤または酸化剤溶液中へディップする方法、CNT分散材料に酸化剤または酸化剤溶液をコートする方法が好ましい。さらに、ドーピング処理後はそのままの状態で使用することも可能であるが、過剰の酸化剤を除去するための洗浄処理を行ってもよい。
【0019】
ドーピング処理時の温度は、処理後のCNT分散材料の導電性を向上し得れば、特に限定されないが、−50〜200℃であることが好ましく、−30〜180℃であることがより好ましく、−20〜150℃であることがさらに好ましい。−50℃以下の温度でのドーピング処理では、導電性向上効果が十分に発揮されない場合があり、一方、200℃以上の温度でのドーピング処理では、CNT分散材料の着色や基板の変質などの劣化が起こる場合があり、導電性材料としての応用に支障をきたす虞がある。
【0020】
また、ドーピング処理時間も、処理後のCNT分散材料の導電性を向上し得れば、特に限定されず、ドーピング処理温度にも依存するが、上述した好適なドーピング処理温度では、1分間〜20時間が好ましく、1分間〜10時間がより好ましい。1分間未満の処理では、導電性向上効果が十分に発揮されない場合があり、一方、20時間を超える処理では、CNT分散材料の着色や基板の変質などの劣化が起こる場合があり、導電性材料としての応用に支障をきたす虞があるのみならず、生産性の面で効率が悪くなる。
【0021】
上記ドーピング処理剤として用いられる、酸などの酸化能を有する酸化剤の例としては、硫黄オキソ酸類、ハロゲンオキソ酸類、窒素オキソ酸類、金属ハライド、金属オキソ酸類、ベンゾキノン類、オゾンおよび過酸化水素からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
硫黄オキソ酸類としては、例えば、硫酸、硫酸水素カリウム、硫酸カリウム、ジメチルスルホキシド(DMSO)、フルオロスルホン酸およびその塩、トリフルオロメタンスルホン酸およびその塩などが挙げられる。
ハロゲンオキソ酸類としては、例えば、次亜塩素酸およびその塩、亜塩素酸およびその塩、塩素酸およびその塩、過塩素酸およびその塩、ヨージルベンゼン、2−ヨードキシ安息香酸、デス・マーチンペルヨージナンなどが挙げられる。
窒素オキソ酸類としては、例えば、硝酸およびその塩、窒素二酸化物類、窒素酸化物類などを使用でき、具体的には、硝酸銀、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸メチル、フッ化ニトロイル、塩化ニトロイル、五酸化二窒素、テトラフルオロホウ酸ニトロニウム、ニトロメタン、ニトロベンゼン、ヘキサクロロアンチモン酸ニトロシル、テトラフルオロホウ酸ニトロシル、過塩素酸ニトロシル、硫酸水素ニトロシル、ニトロソベンゼン、フッ化ニトロシル、塩化ニトロシル、臭化ニトロシルなどが挙げられる。
金属ハライドとしては、例えば、三塩化鉄、五フッ化モリブデン、五塩化モリブデン、五塩化タングステン、四塩化スズ、四ヨウ化スズ、五フッ化ルテニウム、五臭化タンタル、三塩化金、四塩化金(III)酸などが挙げられる。
金属オキソ酸類としては、金属オキソ酸およびその塩、金属酸化物が挙げられ、例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸バリウム、四酸化オスミウムなどが挙げられる。
ベンゾキノン類としては、例えば、ベンゾキノン、テトラクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン等のジクロロジシアノベンゾキノン、テトラシアノキノジメタンなどが挙げられる。
これらの酸化剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0022】
前述のように、酸化剤が液体である場合はそのままの状態で使用することも可能であるが、水や有機溶媒に溶解させた溶液状態で使用してもよい。このような有機溶媒としては、酸化剤が溶解して溶液となるものであれば、特に限定されることはなく、後述するCNT含有組成物を調製する際に使用される有機溶媒が例として挙げられる。
【0023】
CNTは、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等によって作製されるが、本発明の導電性向上方法に用いられるCNT分散材料を構成するCNTとしては、いずれの方法で得られたものでもよい。また、CNTには1枚の炭素膜(グラフェン・シート)が円筒状に巻かれた単層CNT(以下、SWCNTと記載)と、2枚のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた2層CNT(以下、DWCNTと記載)と、複数のグラフェン・シートが同心円状に巻かれた多層CNT(以下、MWCNTと記載)とがあるが、本発明においては、SWCNT、DWCNT、MWCNTをそれぞれ単体で、または複数を組み合わせて使用できる。
【0024】
上記の方法でSWCNT、DWCNTやMWCNTを作製する際には、同時にフラーレンやグラファイト、非晶性炭素が副生産物として生成し、またニッケル、鉄、コバルト、イットリウムなどの触媒金属も残存するので、これらの不純物の除去、精製を必要とする場合がある。不純物の除去には、硝酸、硫酸などによる酸処理とともに超音波処理が有効である。しかし、硝酸、硫酸などによる酸処理ではCNTを構成するπ共役系が破壊され、CNT本来の特性が損なわれてしまう可能性があるため、適切な条件で精製して使用することが望ましい。
【0025】
CNTの分散剤として用いられる高分岐ポリマーの平均分子量は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量が1,000〜2,000,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると、CNTの分散能が著しく低下する、または分散能を発揮しなくなる虞がある。一方、重量平均分子量が2,000,000を超えると、分散処理における取り扱いが極めて困難となる虞がある。重量平均分子量が2,000〜1,000,000の高分岐ポリマーがより好ましい。
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトフラフィーによる測定値(ポリスチレン換算)である。
【0026】
高分岐ポリマーとしては、CNTの分散能を有しているものであれば特に限定されるものではないが、トリアリールアミン構造を繰り返し単位と有するものを好適に用いることができる。
その具体例としては、トリアリールアミン骨格を分岐点として含有する、上記(1)または(2)で示される繰り返し単位を有するものが挙げられる。
この高分岐ポリマーは、トリアリールアミン構造の芳香環由来のπ−π相互作用を通してCNTの有する共役構造に対して高い親和性を示すと考えられるため、CNTの高い分散能が期待されると共に、上記トリアリールアミン類とアルデヒド類および/またはケトン類から選ばれる共モノマーとの組み合わせや条件により、様々な骨格のデザインや官能基導入、分子量や分布の制御、さらには機能付与を行うことが可能であるなどの特徴を有する。
【0027】
上記式(1)および(2)において、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立して、上記式(3)〜(7)で表されるいずれかの二価の有機基を表すが、式(3)で示される置換または非置換のフェニレン基が好ましく、R5〜R8が全て水素原子のフェニレン基がより好ましい。
【0028】
上記式(2)〜(7)において、R1〜R38は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基等が挙げられる。
【0029】
また、上記式(1)および(2)において、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または上記式(8)〜(11)で表されるいずれかの一価の有機基を表す(ただし、Z1およびZ2が同時に上記アルキル基となることはない。)が、Z1およびZ2としては、それぞれ独立して、水素原子、2−または3−チエニル基、下記式(8′)で示される基が好ましく、特に、Z1およびZ2のいずれか一方が水素原子で、他方が、水素原子、2−または3−チエニル基、下記式(8′)で示される基、特にR41がフェニル基の4−ビフェニル基およびR41がメトキシ基の4−メトキシフェニル基がより好ましい。
なお、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、上記で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0030】
【化5】

【0031】
上記式(8)〜(11)および(8′)において、R39〜R62は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、フェニル基、OR63、COR63、COOR63、またはNR6364(これらの式中、R63およびR64は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、またはフェニル基を表す。)を表す。
ここで、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基としては、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3−ブロモプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル基、3−ブロモ−2−メチルプロピル基、4−ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基等が挙げられる。
なお、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、上記式(2)〜(7)で例示した基と同様のものが挙げられる。
【0032】
本発明に用いられる高分岐ポリマーは、下記スキーム1に示されるように、例えば、下記式(A)で示されるような、上述したトリアリールアミン骨格を与え得るトリアリールアミン化合物と、例えば下記式(B)で示されるようなアルデヒド化合物および/またはケトン化合物とを、酸触媒の存在下で縮合重合して得られる。
なお、アルデヒド化合物として、例えば、テレフタルアルデヒド等のフタルアルデヒド類のような、二官能化合物(C)を用いる場合、スキーム1で示される反応が生じるだけではなく、下記スキーム2で示される反応が生じ、2つの官能基が共に縮合反応に寄与した、架橋構造を有する高分岐ポリマーが得られる場合もある。
【0033】
【化6】

(式中、Ar1〜Ar3、およびZ1〜Z2は、上記と同じ意味を表す。)
【0034】
【化7】

(式中、Ar1〜Ar3、およびR1〜R4は、上記と同じ意味を表す。)
【0035】
上記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ウンデカンアルデヒド、7−メトキシ−3,7−ジメチルオクチルアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、3−メチル−2−ブチルアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒドなどの飽和脂肪族アルデヒド類;アクロレイン、メタクロレインなどの不飽和脂肪族アルデヒド類;フルフラール、ピリジンアルデヒド、チオフェンアルデヒドなどのヘテロ環式アルデヒド類;ベンズアルデヒド、トリルアルデヒド、トリフルオロメチルベンズアルデヒド、フェニルベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、アセトキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、アセチルベンズアルデヒド、ホルミル安息香酸、ホルミル安息香酸メチル、アミノベンズアルデヒド、N,N−ジメチルアミノベンズアルデヒド、N,N−ジフェニルアミノベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒド、アントリルアルデヒド、フェナントリルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3−フェニルプロピオンアルデヒドなどの芳香族アルデヒド類等が挙げられる。特に芳香族アルデヒド類を用いることが好ましい。
【0036】
上記ケトン化合物としては、アルキルアリールケトン、ジアリールケトン類であり、例えば、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジフェニルケトン、フェニルナフチルケトン、ジナフチルケトン、フェニルトリルケトン、ジトリルケトン等が挙げられる。
【0037】
上記縮合重合反応では、トリアリールアミン化合物のアリール基1当量に対して、アルデヒド化合物および/またはケトン化合物を0.1〜10当量の割合で用いることができる。
上記酸触媒としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸などの鉱酸類;p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸一水和物などの有機スルホン酸類;ギ酸、シュウ酸などのカルボン酸類等を用いることができる。
酸触媒の使用量は、その種類によって種々選択されるが、通常、トリアリールアミン類100質量部に対して、0.001〜10,000質量部、好ましくは、0.01〜1,000質量部、より好ましくは0.1〜100質量部である。
【0038】
上記の縮合反応は無溶媒でも行えるが、通常溶媒を用いて行われる。溶媒としては反応を阻害しないものであれば全て使用することができ、例えば、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド類;メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられる。これら溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。特に、環状エーテル類が好ましい。
また、使用する酸触媒が、例えばギ酸のような液状のものであるならば、酸触媒に溶媒としての役割を兼ねさせることもできる。
【0039】
縮合時の反応温度は、通常40〜200℃である。反応時間は反応温度によって種々選択されるが、通常30分間から50時間程度である。
以上のようにして得られる重合体の重量平均分子量Mwは、通常1,000〜2,000,000、好ましくは、2,000〜1,000,000である。
【0040】
また、高分岐ポリマーとして、トリカルボニルベンゼン構造を繰り返し単位として有するものも好適に用いることができる。
その具体例としては、トリカルボニルベンゼン骨格を分岐点として含有する、上記(12)で示される繰り返し単位を有する高分岐ポリアミドが挙げられる。
上記式(12)において、RおよびR′は、水素原子、または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。
【0041】
ここで、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、1−メチルシクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロブチル基、2−メチルシクロブチル基、3−メチルシクロブチル基、1,2−ジメチルシクロプロピル基、2,3−ジメチルシクロプロピル基、1−エチルシクロプロピル基、2−エチルシクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロブチル基、2−エチルシクロブチル基、3−エチルシクロブチル基、1,2−ジメチルシクロブチル基、1,3−ジメチルシクロブチル基、2,2−ジメチルシクロブチル基、2,3−ジメチルシクロブチル基、2,4−ジメチルシクロブチル基、3,3−ジメチルシクロブチル基、1−n−プロピルシクロプロピル基、2−n−プロピルシクロプロピル基、1−イソプロピルシクロプロピル基、2−イソプロピルシクロプロピル基、1,2,2−トリメチルシクロプロピル基、1,2,3−トリメチルシクロプロピル基、2,2,3−トリメチルシクロプロピル基、1−エチル−2−メチルシクロプロピル基、2−エチル−1−メチルシクロプロピル基、2−エチル−2−メチルシクロプロピル基、2−エチル−3−メチルシクロプロピル基等が挙げられる。
【0042】
また、置換基を有していてもよいアリール基としては、特に限定されるものではないが、CNTの分散能を高めることを考慮すると、下記式(13)〜(23)で示される少なくとも1種を用いることが好ましく、よりCNTの分散能に優れる高分岐ポリマーを与えることから、特に式(13)、(17)および(23)で表されるアリール基が好ましい。
【0043】
【化8】

【0044】
式(13)〜(23)においてR65〜R142は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。
また、W1およびW2は、互いに独立して、単結合、CR143144(R143およびR144は、互いに独立して、水素原子または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基(ただし、これらは一緒になって環を形成していてもよい。)を表す。)、C=O、O、S、SO、SO2、またはNR145(R145は、水素原子または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表す。)を表す。
【0045】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基としては、上記と同様のものが挙げられる。
また、R143およびR144が一緒になって形成する環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基等が挙げられる。
【0046】
1およびX2は、互いに独立して、単結合、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基、または式(24)で示される基を表す。
【0047】
【化9】

【0048】
146〜R149は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表し、Y1およびY2は、互いに独立して、単結合または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基を表す。
これらハロゲン原子、炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基およびアルコキシ基としては上記と同様のものが挙げられる。
炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等が挙げられる。
【0049】
上記式(13)〜(23)で表されるアリール基の具体例としては、下記式で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化10】

【0051】
本発明で好適に用いられる高分岐ポリマーにおけるトリカルボニルベンゼン環を含む繰り返し単位の具体例としては、下記式(25)、(26)で示されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
【化11】

【0053】
上記トリカルボニルベンゼン構造を繰り返し単位として有する高分岐ポリマーは、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物およびジアミノ化合物から得ることができ、例えば、下記スキーム3に示されるように、繰り返し構造(25)を有する高分岐ポリマーは、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物(27)およびジアミノ化合物であるフェニレンジアミン(28)を適当な有機溶媒中で反応させて得ることができる。
また、下記スキーム4に示されるように、繰り返し構造(25)を有する高分岐ポリマーは、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物(27)およびフェニレンジアミン(28)を適当な有機溶媒中で等量用いて反応させて得られる化合物(29)より合成することもできる。
【0054】
【化12】

(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。)
【0055】
【化13】

(式中、Xは、互いに独立してハロゲン原子を表す。)
【0056】
スキーム3の方法の場合、各原料の仕込み量としては、目的とするポリマーが得られる限りにおいて任意であるが、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物(27)1当量に対し、フェニレンジアミン(28)0.01〜10当量が好ましい。
有機溶媒としては、この種の反応において通常用いられる種々の溶媒を用いることができ、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピペリドン、N,N−ジメチルエチレン尿素、N,N,N’,N’−テトラメチルマロン酸アミド、N−メチルカプロラクタム、N−アセチルピロリジン、N,N−ジエチルアセトアミド、N−エチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオン酸アミド、N,N−ジメチルイソブチルアミド、N−メチルホルムアミド、N,N’−ジメチルプロピレン尿素などのアミド類等、およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
中でもN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合系が好ましく、特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが好適である。
【0057】
スキーム3の反応およびスキーム4の第2段階の反応において、反応温度は、用いる溶媒の融点から溶媒の沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、−20〜100℃程度が好ましく、−10〜50℃がより好ましい。
上記スキーム3の反応およびスキーム4の第2段階の反応では、通常用いられる種々の塩基を用いることができる。
この塩基の具体例としては、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、酢酸カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化バリウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、フッ化セシウム、酸化アルミニウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン等が挙げられる。
塩基の添加量は、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物(27)1当量に対して1〜100当量が好ましく、1〜10当量がより好ましい。なお、これらの塩基は水溶液にして用いてもよい。
式(25)で表される繰り返し構造を有する高分岐ポリマーは、原料成分が残存していないことが好ましいが、本発明の効果を損なわなければ一部の原料が残存していてもよい。
いずれのスキームの方法においても、反応終了後、生成物は再沈法等によって容易に精製できる。
【0058】
なお、本発明においては、少なくとも1つの末端トリカルボニルベンゼン環のハロゲン原子の一部を、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、エステル基等でキャップしてもよい。
上記アルキル基、アルコキシ基としては、上記炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基および炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
エステル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、o−クロルフェニル基、m−クロルフェニル基、p−クロルフェニル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−シアノフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、p−メチルフェニルメチル基、m−メチルフェニルメチル基、o−エチルフェニルメチル基、m−エチルフェニルメチル基、p−エチルフェニルメチル基、2−プロピルフェニルメチル基、4−イソプロピルフェニルメチル基、4−イソブチルフェニルメチル基、α−ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0059】
アルキルアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、1−メチル−n−ブチルアミノ基、2−メチル−n−ブチルアミノ基、3−メチル−n−ブチルアミノ基、1,1−ジメチル−n−プロピルアミノ基、1,2−ジメチル−n−プロピルアミノ基、2,2−ジメチル−n−プロピルアミノ基、1−エチル−n−プロピルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、1−メチル−n−ペンチルアミノ基、2−メチル−n−ペンチルアミノ基、3−メチル−n−ペンチルアミノ基、4−メチル−n−ペンチルアミノ基、1,1−ジメチル−n−ブチルアミノ基、1,2−ジメチル−n−ブチルアミノ基、1,3−ジメチル−n−ブチルアミノ基、2,2−ジメチル−n−ブチルアミノ基、2,3−ジメチル−n−ブチルアミノ基、3,3−ジメチル−n−ブチルアミノ基、1−エチル−n−ブチルアミノ基、2−エチル−n−ブチルアミノ基、1,1,2−トリメチル−n−プロピルアミノ基、1,2,2−トリメチル−n−プロピルアミノ基、1−エチル−1−メチル−n−プロピルアミノ基、1−エチル−2−メチル−n−プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0060】
アラルキルアミノ基の具体例としては、ベンジルアミノ基、メトキシカルボニルフェニルメチルアミノ基、エトキシカルボニルフェニルメチルアミノ基、p−メチルフェニルメチルアミノ基、m−メチルフェニルメチルアミノ基、o−エチルフェニルメチルアミノ基、m−エチルフェニルメチルアミノ基、p−エチルフェニルメチルアミノ基、2−プロピルフェニルメチルアミノ基、4−イソプロピルフェニルメチルアミノ基、4−イソブチルフェニルメチルアミノ基、ナフチルメチルアミノ基、メトキシカルボニルナフチルメチルアミノ基、エトキシカルボニルナフチルメチルアミノ基等が挙げられる。
アリールアミノ基の具体例としては、フェニルアミノ基、メトキシカルボニルフェニルアミノ基、エトキシカルボニルフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、メトキシカルボニルナフチルアミノ基、エトキシカルボニルナフチルアミノ基、アントラニルアミノ基、ピレニルアミノ基、ビフェニルアミノ基、ターフェニルアミノ基、フルオレニルアミノ基等が挙げられる。
【0061】
アルコキシシリル基含有アルキルアミノ基としては、モノアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、ジアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基、トリアルコキシシリル基含有アルキルアミノ基のいずれでもよく、その具体例としては、3−トリメトキシシリルプロピルアミノ基、3−トリエトキシシリルプロピルアミノ基、3−ジメチルエトキシシリルプロピルアミノ基、3−メチルジエトキシシリルプロピルアミノ基、N−(2−アミノエチル)−3−ジメチルメトキシシリルプロピルアミノ基、N−(2−アミノエチル)−3−メチルジメトキシシリルプロピルアミノ基、N−(2−アミノエチル)−3−トリメトキシシリルプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0062】
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、アントラニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、フルオレニルオキシ基等が挙げられる。
アラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ基、p−メチルフェニルメチルオキシ基、m−メチルフェニルメチルオキシ基、o−エチルフェニルメチルオキシ基、m−エチルフェニルメチルオキシ基、p−エチルフェニルメチルオキシ基、2−プロピルフェニルメチルオキシ基、4−イソプロピルフェニルメチルオキシ基、4−イソブチルフェニルメチルオキシ基、α−ナフチルメチルオキシ基等が挙げられる。
【0063】
これらの基は、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物(27)のハロゲン原子を、対応する置換基を与える一官能性物質で置換することで容易に導入することができ、例えば、下記式スキーム5に示されるように、アニリン誘導体を加えて反応させることで、少なくとも1つの末端にフェニルアミノ基を有する高分岐ポリマー(30)が得られる。
【0064】
【化14】

(式中、XおよびRは上記と同じ意味を表す。)
【0065】
なお、上記末端修飾は、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物(27)およびフェニレンジアミン(28)を反応させて得られた繰り返し構造(25)を有する高分岐ポリマーをアニリン等の一官能性物質で処理してもよく、上記化合物(27)および(28)をアニリン等の一官能性物質の存在下で反応させて処理してもよいが、得られた高分岐ポリマーの有機溶媒に対する溶解性を高めることを考慮すると、後者の手法が好適である。
この際、アニリン等の一官能性物質の仕込み量としては、特に限定されるものではないが、トリハロゲン化ベンゼンカルボニル化合物(27)1当量に対して、0.01〜10当量が好ましく、0.1〜5当量がより好ましい。
【0066】
なお、本発明の導電性向上方法に用いられるCNT分散材料を調製する際のCNT含有組成物には、さらに上記分散剤(高分岐ポリマー)の溶解能を有する有機溶媒を含んでいてもよい。
このような有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)などのエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類;n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類等が挙げられ、これら有機溶媒は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。
特に、CNTの孤立分散の割合を向上させ得るという点から、NMP、DMF、THF、イソプロパノールが好ましく、さらに組成物の成膜性をも向上し得るための添加剤として、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、または、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類等を、少量含むことが望ましい。
【0067】
上記CNT含有組成物の調製法は任意であり、分散剤(高分岐ポリマー)が液状の場合には、当該分散剤とCNTとを適宜混合し、分散剤が固体の場合には、これを溶融させた後、CNTと混合して調製することができる。
また、有機溶媒を用いる場合には、分散剤、CNT、有機溶媒を任意の順序で混合して組成物を調製すればよい。
この際、分散剤、CNTおよび有機溶媒からなる混合物を分散処理することが好ましく、この処理により、CNTの孤立分散の割合をより向上させることができる。分散処理としては、機械的処理である、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどを用いた湿式処理や、バス型やプローブ型のソニケータを用いる超音波処理が挙げられる。
分散処理の時間は任意であるが、1分間から10時間程度が好ましく、5分間から5時間程度がより好ましい。
なお、本発明で用いる分散剤は、CNTの分散能に優れているため、分散処理前等に加熱処理を施さなくとも、CNTが高濃度で孤立分散した組成物を得ることができるが、必要に応じて加熱処理を施しても構わない。
【0068】
上記CNT含有組成物における、分散剤とCNTとの混合比率は、質量比で1,000:1〜1:100程度とすることができる。
また、有機溶媒を使用した組成物中における分散剤の濃度は、CNTを有機溶媒に分散させ得る濃度であれば特に限定されるものではないが、本発明においては、組成物中に0.001〜30質量%程度とすることが好ましく、0.002〜20質量%程度とすることがより好ましい。
さらに、この組成物中におけるCNTの濃度は、少なくともCNTの一部が孤立分散する限りにおいて任意であるが、本発明においては、組成物中に0.0001〜20質量%程度とすることが好ましく、0.001〜10質量%程度とすることがより好ましい。
以上のようにして調製された本発明の組成物中では、分散剤がCNTの表面に付着して複合体を形成しているものと推測される。
【0069】
上記CNT含有組成物は、上述した有機溶媒に可溶な汎用合成樹脂と混合し、これと複合化させたものでもよい。
汎用合成樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)などのポリオレフィン系樹脂;PS(ポリスチレン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、MS(メタクリル酸メチル−スチレン共重合体)などのポリスチレン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの(メタ)アクリル樹脂;PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、PLA(ポリ乳酸)、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート/アジペートなどのポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリグルコール酸;変性でんぷん;酢酸セルロース、三酢酸セルロース;キチン、キトサン;リグニン等の熱可塑性樹脂、並びに、フェノール樹脂;尿素樹脂;メラミン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0070】
上記CNT含有組成物は、上述した有機溶媒に可溶な架橋剤を含んでいてもよい。
このような架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられ、これら架橋剤は、それぞれ単独で、または2種以上混合して用いることができる。なお、好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、CYMEL(登録商標)、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メチロール化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メチロール化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグアナミン、ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、メチロール化ベンゾグアナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メチロール化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、メトキシメチル化チオ尿素、メチロール化チオ尿素等の化合物、およびこれらの化合物の縮合体が例として挙げられる。
【0071】
架橋剤の添加量は、使用する有機溶媒、使用する基材、要求される粘度、要求される膜形状などにより変動するが、CNT分散剤(高分岐ポリマー)に対して0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.05〜40質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の高分岐ポリマーと架橋反応を起こすものであり、高分岐ポリマー中に架橋性置換基が存在する場合はそれらの架橋性置換基により架橋反応が促進される。
本発明では、架橋反応を促進するための触媒としてとして、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、スルホサリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の酸性化合物、および/または2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、有機スルホン酸アルキルエステル等の熱酸発生剤を添加することができる。
触媒の添加量はCNT分散剤(高分岐ポリマー)に対して、0.0001〜20質量%、好ましくは0.0005〜10質量%、より好ましくは0.001〜3質量%である。
【0072】
上記CNT含有組成物は、マトリックスとなる樹脂と混合し、溶融混練することにより複合化させたものでもよい。
マトリックスとなる樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましく、その具体例としては、上記汎用合成樹脂で例示した熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
この場合、組成物の調製は、分散剤、CNT、マトリックスとなる樹脂を、混練装置により溶融混練して複合化すればよい。混練装置としては、各種ミキサや、単軸または二軸押出機などが挙げられる。この際の混練温度、時間は任意であり、マトリックスとなる樹脂に応じて適宜選択される。
また、マトリックスとなる樹脂を用いた組成物中におけるCNT濃度は、要求される組成物の機械的、電気的、熱的特性などにおいて変化するため任意であるが、本発明においては、組成物中に0.0001〜30質量%程度とすることが好ましく、0.001〜20質量%とすることがより好ましい。
【0073】
以上説明したCNT含有組成物(溶液)は、PET、ガラス、ITOなどの適当な基材上にスピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法などの適宜な方法により塗布し、必要に応じて加熱乾燥するだけで、容易にCNTネットワークの発達した薄膜複合体とすることができる。
この薄膜に上述のポストベーク処理を施して導電性および硬度を向上させることができる。また、必要に応じて、上記薄膜にさらに酸などの酸化剤でドーピング処理を施してより導電性を向上させることができる。
ポストベーク処理した薄膜、およびさらにドーピング処理した薄膜は、CNTの金属的性質を活かした帯電防止膜、透明電極等の導電性材料、光電変換素子および電界発光素子等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、試料の調製および物性の分析に用いた装置および条件は、以下のとおりである。
(1)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
条件A(合成例1,2)
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex KF−804L+KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
条件B(合成例3)
装置:(株)島津製作所製 SCL−10Avp (GPCに改造)
カラム:Shodex K−804L+K−805L
カラム温度:60℃
溶媒:LiCl/N−メチル−2−ピロリドン溶液(質量比1:1000)
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
(2)UV/Vis照射示差走査熱量計(Photo−DSC)
装置:(株)NETZCH製 Photo−DSC 204 F1 Phoenix
昇温速度:40℃/分
測定温度:25〜350℃
(3)プローブ型超音波照射装置(分散処理)
装置:Hielscher Ultrasonics社製 UIP1000
(4)バス型超音波洗浄器(分散処理)
装置:Elma社製 エルマソニックS30H(出力:80W)
(5)抵抗率計(表面抵抗測定)
装置:三菱化学(株)製 ロレスタ−GP
<実施例1〜26,比較例1〜3>
プローブ:三菱化学(株)製 直列4探針プローブ ASP(探針間距離:5mm)
<実施例27〜30>
プローブ:三菱化学(株)製 直列4探針プローブ PSP(探針間距離:1.5mm)
(6)ヘイズメーター(全光透過率測定)
装置:日本電色工業(株)製 NDH5000
(7)微細形状測定機(膜厚測定)
装置:(株)小坂研究所製 ET4000A
(8)分光光度計(光透過率測定)
装置:(株)島津製作所製 MULTIPURPOSE RECORDING SPECTROPHOTOMETR MPS−2000
【0075】
また、実施例における略号の意味は下記のとおりである。
CNT−1:未精製MWCNT[CNT社製 “C Tube 100”、外径10〜30nm]
CNT−2:Thin MWCNT[Nanocyl社製 “Nanocyl(登録商標)NC 7000”]
PVP:ポリビニルピロリドン[東京化成工業(株)製 K15、Mw10,000]
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
CHN:シクロヘキサノン
【0076】
[1]分散剤(トリアリールアミン系高分岐ポリマー)の合成
[合成例1]高分岐ポリマーPTPA−PBA−1の合成
窒素下、1L四口フラスコに、トリフェニルアミン[Zhenjiang Haitong Chemical Industry Co.,Ltd.製、以下同様]80.0g(326mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド[三菱ガス化学(株)製,4−BPAL、以下同様]118.8g(652mmol(トリフェニルアミンに対して2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物[江南化工(株)製、以下同様]12.4g(65mmol(トリフェニルアミンに対して0.20eq))を加え、1,4−ジオキサン160gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら85℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。6時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF560gで希釈し、28質量%アンモニア水80gを加えた。その混合溶液をアセトン2000gおよび水400gの混合溶液へ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF640gに再溶解させ、アセトン2000gおよび水400gの混合溶液へ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥して、下記式[A]で表される繰り返し単位を有する高分岐ポリマーPTPA−PBA−1 115.1gを得た。
得られたPTPA−PBA−1の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは17,000、多分散度Mw/Mnは3.82であった(ここでMnは同条件で測定される数平均分子量を表す。以下同様。)。またDSCにより測定されるガラス転移点(Tg)は159℃であった。
【0077】
【化15】

【0078】
[合成例2]高分岐ポリマーPTPA−PBA−2の合成
窒素下、1L四口フラスコに、トリフェニルアミン80.0g(326mmol)、4−フェニルベンズアルデヒド118.9g(652mmol(トリフェニルアミンに対して2.0eq))、パラトルエンスルホン酸一水和物12.4g(65mmol(トリフェニルアミンに対して0.20eq))を加え、1,4−ジオキサン160gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら85℃まで昇温し、溶解させ、重合を開始した。6時間反応させた後、反応混合物を60℃まで放冷した。この反応混合物をTHF560gで希釈し、28%アンモニア水80gを加えた。その混合溶液をメタノール4000gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、減圧乾燥した後、得られた固体をTHF640gに再溶解させ、メタノール4000gへ投入することで再度再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、130℃で6時間減圧乾燥して、前記式[A]で表される繰り返し単位を有する高分岐ポリマーPTPA−PBA−2 122.9gを得た。
得られたPTPA−PBA−2の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは19,000、多分散度Mw/Mnは4.35であった。またDSCにより測定されるガラス転移点(Tg)は179℃であった。
【0079】
[2]分散剤(トリカルボニルベンゼン系高分岐ポリマー)の合成
[合成例3]高分岐ポリマーTmPDAの合成
窒素下、100mL四口フラスコに、1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリド[東京化成工業(株)製]5g(19mmol)およびNMP29gを仕込んだ。この混合物を撹拌しながら−15℃まで冷却した。そこへ、1,3−フェニレンジアミン[デュポン社製]1.5g(14mmol(1.1eq))をNMP29gに溶解した溶液を、−15℃を維持しながら30分間かけて滴下した。滴下後、純水10gおよびNMP10gを加えて1時間撹拌し、この反応混合物を純水750gへ投入することで再沈殿させた。析出した沈殿物をろ過し、150℃で2時間減圧乾燥して、下記式[B]で表される繰り返し単位を有する高分岐ポリマーTmPDA4.4gを得た。
得られたTmPDAの、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,700、多分散度Mw/Mnは2.77であった。なお、分子量測定には条件Bを使用した。またDSCにより測定されるガラス転移点(Tg)は167℃であった。
【0080】
【化16】

【0081】
[3]高分岐ポリマー/MWCNT複合体薄膜の作製および評価
[実施例1]
分散剤として合成例1で得られたPTPA−PBA−1(Tg159℃)0.50gを、NMP49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液3.0gに、CHN0.75gを添加し、薄膜作製用の塗布液を調製した。この塗布液75μLを、スリット幅(厚さ)25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃のホットプレートで2分間乾燥することで透明で均一なMWCNT/PTPA−PBA−1複合体薄膜を作製した。
得られた複合体薄膜を、100℃のホットプレートで1分間予熱した後、別の150℃(分散剤Tg−9℃)のホットプレートで20分間加熱してポストベークした。この複合体薄膜を室温(およそ25℃)まで放冷した後、表面抵抗および全光透過率を測定した。
なお、表面抵抗は同一薄膜上の無作為な5箇所でそれぞれ測定し、最大値と最小値を除いた3つの値の平均値を評価した。また、各測定は2つの複合体薄膜について行い、その時の平均値を評価した。各評価結果および表面抵抗値の未ポストベーク(後述の比較例1)表面抵抗値に対する比を表1に示す。
【0082】
[実施例2〜10]
ポストベーク条件を表1に記載の加熱温度および加熱時間に変更した以外は、実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0083】
[比較例1]
ポストベークを行わない以外は、実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0084】
[実施例11〜19]
分散剤を合成例3で得られたTmPDA(Tg167℃)に、ポストベーク条件を表1記載の加熱温度および加熱時間に、それぞれ変更した以外は、実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0085】
[比較例2]
分散剤を合成例3で得られたTmPDA(Tg167℃)に変更し、ポストベークを行わない以外は、実施例1と同様に操作し、評価した。結果を表1に併せて示す。
【0086】
【表1】

【0087】
表1に示されるように、分散剤として、トリアリールアミン構造を分岐点として有し、159℃のガラス転移点(Tg)を有する高分岐ポリマーであるPTPA−PBA−1を用いた場合では、Tgより約90℃高い温度(250℃)でのポストベークに伴い急激な表面抵抗の低下が確認された。また、その変化はTgより約120℃高い温度(280℃)でほぼ飽和する傾向が確認され、表面抵抗値は5×103Ω/□(ポストベーク前のおよそ1/5)に達した。一方、全光透過率は280℃までのポストベークではほとんど変化は見られなかった。
また、分散剤として、トリカルボニルベンゼン構造を分岐点として有し、167℃のTgを有する高分岐ポリマーであるTmPDAを用いた場合では、ポストベーク前の表面抵抗値が低いため変化幅は大きくないものの、Tgより約20℃低い150℃でのポストベークに伴い表面抵抗の低下が確認された。また、表面抵抗値はPTPA−PBA−1の場合と同様に5×103Ω/□に達しており、全光透過率もPTPA−PBA−1の場合と同様に280℃までのポストベークでほとんど変化は見られなかった。
以上から、Tgを有する高分岐ポリマーを分散剤として用いたCNT複合体薄膜において、Tg付近またはそれ以上の温度でのポストベークにより表面抵抗の低下が起こり、導電性が向上することが確認された。これは、Tg付近またはそれ以上の温度でのポストベークにより、マトリックスである分散剤の軟化・流動が起こり、複合体薄膜中のCNTネットワークの発達が促された結果として、表面抵抗が低下し、導電性が向上したものと考えられる。
以上の点から、本発明のTgを有する高分岐ポリマーを分散剤として用い、Tg付近またはそれ以上の温度(Tgより150℃程度高い温度)でポストベークを行う手法が、高導電性で均一なCNT複合体薄膜を得る上で、有効であることがわかる。
【0088】
[実施例20]
分散剤として合成例2で得られたPTPA−PBA−2(Tg179℃)0.50gを、NMP49.25gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.25gを添加した。この混合物に、プローブ型超音波照射装置を用いて室温(およそ25℃)で30分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散した黒色のMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液1.0gに、CHN0.25gを添加し、薄膜作製用の塗布液を調製した。この塗布液75μLを、スリット幅(厚さ)25.4μmのアプリケータを用いてガラス基板上に均一に展開し、100℃のホットプレートで1分間乾燥することで透明で均一なMWCNT/PTPA−PBA−2複合体薄膜を作製した。
得られた複合体薄膜を、100℃のホットプレートで1分間予熱した後、別の200℃(分散剤Tg+21℃)のホットプレートで3分間加熱してポストベークした。この複合体薄膜を室温(およそ25℃)まで放冷した後、表面抵抗、膜厚および鉛筆硬度を測定した。
【0089】
なお、表面抵抗は同一薄膜上の無作為な5箇所でそれぞれ測定し、最大値と最小値を除いた3つの値の平均値を評価した。膜厚については、複合体薄膜の一部を削り取り、複合体薄膜上面と基板との段差として触針により測定した。
鉛筆硬度については、JIS K5600−5−4(塗料の一般試験方法)に記載される方法に準拠し、手かき法にて実施した。さらに表面抵抗値および膜厚から体積抵抗を算出した。なお、各測定は2つの複合体薄膜について行い、その平均値を評価した。各評価結果並びに表面抵抗値および体積抵抗値の未ポストベーク(後述の比較例3)各抵抗値に対する比を表2に示す。
【0090】
[実施例21〜26]
ポストベーク条件を表2に記載の加熱温度および加熱時間に変更した以外は、実施例20と同様に操作し、評価した。結果を表2に併せて示す。
【0091】
[比較例3]
ポストベークをしなかった以外は、実施例20と同様に操作し、評価した。結果を表2に併せて示す。
【0092】
【表2】

【0093】
表2に示されるように、分散剤として、トリアリールアミン構造を分岐点として有し、179℃のガラス転移点(Tg)を有する高分岐ポリマーであるPTPA−PBA−2を用いた場合では、Tgより高温でのポストベークに伴い鉛筆硬度が上昇した。また、その値は、ポストベーク前が5Bであったのに対し、ポストベーク温度が200℃でH〜3H、250℃で2H〜5H、300℃で5Hへと達した。ポストベーク時間については、20分間程度で変化はほぼ飽和することが確認された。
これは、Tg以上の温度でのポストベークにより、マトリックスである分散剤の軟化・流動が起こり、複合体薄膜中のCNTネットワークの発達が促されると同時に、マトリックスである分散剤のネットワークも発達し、複合体薄膜の硬度が向上したものと考えられる。
さらに、分散剤として上記PTPA−PBA−2を用いた場合では、Tgより高温でのポストベークに伴う表面抵抗の低下に伴い体積抵抗も低下することが確認された。また、その値は、Tgより約70〜120℃高い温度でのポストベークにより10-2Ω・cmレベルに達することが確認された。この値は、CNT粉体のみを約40MPaで圧縮した際に測定される体積抵抗(1.6×10-2Ω・cm)に匹敵する値であり、Tg以上の温度でのポストベークにより、CNTネットワークが高度に発達したことが確認される。
以上のように、Tgを有する高分岐ポリマーを分散剤として用いたCNT複合体薄膜に対し、Tgまたはそれ以上の温度(Tgより150℃程度高い温度)でポストベークを行う手法が、高導電性で、均一かつ高硬度のCNT複合体薄膜を得る上で有効であることがわかる。
【0094】
[実施例27]
分散剤として合成例2で得られたPTPA−PBA−2(Tg179℃)0.02gを、NMP1.97gに溶解させ、この溶液へMWCNTとしてCNT−1 0.01gを添加した。この混合物に、バス型超音波洗浄器を用いて常温(およそ25℃)で120分間超音波処理を行い、沈降物がなくMWCNTが均一に分散したMWCNT含有分散液を得た。
上記MWCNT含有分散液2.0gに、CHN0.5gを添加し、薄膜作製用の塗布液を調製した。この塗布液50μLを、スリット幅(厚さ)254μm(10mil)のアプリケータを用いて、塗布速度10mm/分でガラス基板[松浪硝子工業(株)製 スライドグラスS7213“プレクリン水縁磨 t1.0”]上に均一に展開し、100℃のホットプレートで1分間乾燥することで透明で均一な、MWCNT/PTPA−PBA−2複合体薄膜を作製した。また、同様に塗布速度を20mm/分、40mm/分、60mm/分に変更したものも作製し、膜厚の異なる計4枚のMWCNT/PTPA−PBA−2複合体薄膜を作製した。
得られた複合体薄膜を250℃(分散剤Tg+71℃)のホットプレートで20分間加熱してポストベークした。この複合体薄膜を室温(およそ25℃)まで放冷した後、表面抵抗および透過率を測定した。
【0095】
なお、表面抵抗は同一薄膜上の無作為な4箇所でそれぞれ測定し、4つの値の平均値を評価した。透過率については、分光光度計により薄膜のスペクトルを測定し、500nmにおける透過率を測定値とした。各評価結果を透過率に対する表面抵抗の変化として図1に併せて示す。
【0096】
[実施例28]
実施例27と同様に操作して得られたポストベーク処理後のMWCNT/PTPA−PBA−2複合体薄膜を、シャーレ(95mmφ)に入れた96質量%硫酸50gにガラス基板ごと室温(およそ25℃)で5分間浸漬し、酸処理した。その後、純水500mL中にガラス基板ごと室温(およそ25℃)で30秒間浸漬し、続けて純水1000mL中にガラス基板ごと室温(およそ25℃)で30秒間浸漬した。その後、100℃のホットプレートで5分間乾燥させた。膜厚の異なる複合体薄膜についても同様に酸処理し、得られた複合体薄膜を実施例27と同様に評価した。結果を図1に併せて示す。
【0097】
[実施例29]
用いるCNTをCNT−2に変更した以外は実施例27と同様に操作し、評価した。結果を図2に併せて示す。
【0098】
[実施例30]
酸処理する複合体薄膜を実施例29で作製したものに変更した以外は実施例28と同様に操作し、評価した。結果を図2に併せて示す。
【0099】
図1,2に示されるように、同じ透過率での薄膜複合体の表面抵抗は、硫酸によるドーピング処理前後で低下しており、硫酸によるドーピング処理により導電性が向上していることが確認された。CNT分散材料を酸などの酸化剤でドーピング処理することによりCNTがドープされ高導電化することが報告されているが、今回のようにポストベーク処理により導電性が向上した複合体薄膜をさらにドーピング処理した場合でも、CNTがドープされ更なる高導電化が起こったものと考えられ、結果として複合体薄膜の導電性も向上したものと考えられる。
以上のように、ポストベーク処理を行う手法が、高導電性のCNT複合体薄膜を得る上で有効であるが、さらに酸などの酸化剤でドーピング処理を行うことで複合体薄膜の導電性が向上し、さらなるCNT複合体薄膜の高導電化に有効であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブおよびガラス転移点を有する高分岐ポリマーを含むカーボンナノチューブ分散材料を加熱することを特徴とするカーボンナノチューブ分散材料の導電性向上方法。
【請求項2】
前記ガラス転移点に対し、−30℃〜+150℃の範囲の温度で加熱する請求項1記載の導電性向上方法。
【請求項3】
前記高分岐ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量が、1,000〜2,000,000である請求項1または2記載の導電性向上方法。
【請求項4】
前記高分岐ポリマーが、トリアリールアミン構造を繰り返し単位として有する請求項3記載の導電性向上方法。
【請求項5】
前記高分岐ポリマーが、式(1)または式(2)で表される繰り返し単位を有する請求項4記載の導電性向上方法。
【化1】

[式(1)および(2)中、Ar1〜Ar3は、それぞれ独立して、式(3)〜(7)で表されるいずれかの二価の有機基を表し、Z1およびZ2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または式(8)〜(11)で表されるいずれかの一価の有機基を表し(ただし、Z1およびZ2が同時に前記アルキル基となることはない。)、式(2)中、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。
【化2】

(式中、R5〜R38は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、または炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルコキシ基を表す。)
【化3】

{式中、R39〜R62は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、フェニル基、OR63、COR63、COOR63、またはNR6364(これらの式中、R63およびR64は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいアルキル基、炭素原子数1〜5の分岐構造を有していてもよいハロアルキル基、またはフェニル基を表す。)を表す。}]
【請求項6】
前記高分岐ポリマーが、トリカルボニルベンゼン構造を繰り返し単位として有する請求項3記載の導電性向上方法。
【請求項7】
前記高分岐ポリマーが、式(12)で表される繰り返し単位を有する請求項6記載の導電性向上方法。
【化4】

(式中、RおよびR′は、水素原子または炭素原子数1〜10の分岐構造を有していてもよいアルキル基を表し、Arは、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
【請求項8】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜7のいずれか1項記載の導電性向上方法。
【請求項9】
前記加熱後、さらに酸化剤で処理する請求項1〜8のいずれか1項記載の導電性向上方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の導電性向上方法によって導電性が向上したカーボンナノチューブ分散材料。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の導電性向上方法を用いることを特徴とするカーボンナノチューブ分散材料の製造方法。
【請求項12】
カーボンナノチューブおよびガラス転移点を有する高分岐ポリマーを含む組成物を基材状に塗布し、加熱乾燥して得られた薄膜複合体を、前記ガラス転移点の−30℃〜+150℃の範囲の温度でポストベーク処理することを特徴とするカーボンナノチューブ分散材料の製造方法。
【請求項13】
前記ポストベーク処理後、さらに酸化剤でドーピング処理する請求項12記載のカーボンナノチューブ分散材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−6756(P2013−6756A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26136(P2012−26136)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】