説明

カーボンナノチューブ分散組成物およびそれを用いたカーボンナノチューブ含有組成物

【課題】カーボンナノチューブの分散安定性が高く、他の材料に対してごく少量の添加で、導電性、寸法安定性、耐衝撃性等の機能を付与することができるカーボンナノチューブ分散組成物を得る。
【解決手段】カーボンナノチューブ分散組成物中の分散剤の量を、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3mg以上15mg以下とする。また、このカーボンナノチューブ分散組成物を用いて、そこから溶媒を除去することにより、カーボンナノチューブ含有組成物を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散安定性にすぐれるカーボンナノチューブ分散組成物、およびそのカーボンナノチューブ分散組成物を用いて作製するカーボンナノチューブ含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素が正六角形を敷き詰めた形に配置したグラファイトのシートを筒状に巻いた構造を基本とした炭素の一形態であり、一層だけのものを単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、複数層を有するものを多層カーボンナノチューブ(MWCNT)と呼ぶ。基本構造がグラファイトシートであることから、高い導電性や強度を有しており、その特性を活かした様々な応用が考えられている。例えば特許文献1〜5には、少量の添加で高い導電性が得られることを利用した導電性塗料や透明導電性膜が開示されている。また特許文献6には、同じくカーボンナノチューブの導電性を活かしたヒーター部材としての利用が、さらに特許文献7、特許文献8には、カーボンナノチューブを含有することにより寸法安定性を増した樹脂材料が、それぞれ開示されている。
【0003】
これらの利用形態で最も重要なのは、カーボンナノチューブの分散性である。カーボンナノチューブは、その繊維状の形態から、繊維が絡み合ったり、束状に集まったりする凝集を起こしやすい。特に粘度の低い液体中に分散させる場合、カーボンナノチューブが自由に動けることから、一時的には分散できても、しだいに凝集する傾向が強くなる。このような凝集が起こると、分散組成物中での均一性が損なわれ、導電性の低下、光散乱の増加、強度の低下などにつながることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−11344号公報
【特許文献2】特開2001−30200号公報
【特許文献3】特許3665969号公報
【特許文献4】特開2005−255985号公報
【特許文献5】特開2008−24568号公報
【特許文献6】特表2010−517231号公報
【特許文献7】特開2003−82202号公報
【特許文献8】特開2008−255256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、カーボンナノチューブを様々な部材に適用するには、その分散性、特に長時間にわたって分散状態を維持できる分散安定性が求められる。本発明は、このような高い分散安定性を有するカーボンナノチューブ分散組成物を提供し、これを用いた高性能のカーボンナノチューブ含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者は上記課題を解決するために種々検討した結果、分散剤の量を最適化することが重要であることを見出した。
【0007】
即ち、少なくともカーボンナノチューブと分散剤と溶媒から成り、分散剤の量が、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3mg以上15mg以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ分散組成物である。
【0008】
また、上記カーボンナノチューブ分散組成物から溶媒を除去してなるカーボンナノチューブ含有組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明を用いれば、カーボンナノチューブが長期間にわたって安定に分散した組成物が得られる。このような分散性が良好なカーボンナノチューブ分散組成物は、他の材料に対してごく少量の添加で、導電性、寸法安定性、耐衝撃性等を付与することができるため、各種塗料や電極材料、樹脂組成物などを高機能化するのに有効である。また、本発明の樹脂組成物から溶媒を除去してなる組成物は、極めて薄い膜状態でも導電性を発現できるので、透明性と高い導電性、帯電防止性が両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を構成する第1の発明は、少なくともカーボンナノチューブと分散剤と溶媒から成り、分散剤の量が、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3mg以上15mg以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ分散組成物である。
【0011】
カーボンナノチューブは表面が不活性で、凝集しやすい性質を持つため、溶媒中に安定に分散させるために様々な分散剤が用いられている。特に、電気的な反発力が働かない非水系の溶媒中においては、表面に吸着して立体的な反発効果を発現する高分子系の分散剤が用いられる。その際、分散剤の量がカーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3mgよりも少ないと、必要な厚さの吸着層をカーボンナノチューブ表面に形成することができず、立体反発力が不足して、十分な分散効果が得られない。一方、分散剤が多すぎて、幾何学的な表面積1mあたり15mg以上になると、カーボンナノチューブの含有率が低下して導電性などの性能を損なうばかりか、過剰な分散剤が架橋剤として働いて、かえって凝集を引き起こすことにつながる。
【0012】
カーボンナノチューブの分散において、分散剤の最適量が、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3mg以上15mg以下になる理由としては、以下のようなことが考えられる。
【0013】
まず、表面積の決め方であるが、粉体試料の表面積を求める方法として、一般的には窒素ガスなどの吸着量を基に算出するBET法などが用いられる。通常の粉体試料は形状が複雑で一定しないことが多いので、粒子径などから算出することが困難だからである。しかし、カーボンナノチューブは形状が単純であるので、これを理想的な円柱形と見なして幾何学的に表面積を求めることが可能である。また、ガス吸着によって表面積を求める場合、カーボンナノチューブが束状に凝集する、いわゆるバンドルを形成していると正確な表面積を得るのが困難であることや、分散剤の吸着には関係しない、チューブの内壁部分の面積も加算される場合があるなど、かえって実情に合致しなくなる可能性が高い。従って、幾何学的に求めた表面積の方が、カーボンナノチューブが理想的に分散した系に対しては適切であると考えられる。
【0014】
次に、カーボンナノチューブの分散に、分散剤がどのように寄与しているかを考え、必要な分散剤の量を見積もってみる。
【0015】
電気的な反発力が期待できない場合、カーボンナノチューブの安定な分散に寄与するのは熱運動のエネルギーであり、その大きさは、ボルツマン定数をk、絶対温度をTとすると、ほぼkT程度である。これに対して、カーボンナノチューブを凝集させるのは、主にナノチューブ間に働くvan der Waalsエネルギーであり、この両者の大小関係によって、分散系が安定になるかどうかが決まる。van der Waalsエネルギーは距離が近付くにつれて急激に増加するので、安定に分散させるには、カーボンナノチューブどうしが接近するのを防ぎ、van der Waalsエネルギーが熱運動エネルギーを大きく超えないようにすることが重要である。この働きをするのが、カーボンナノチューブの表面に形成された分散剤の吸着層である。
【0016】
カーボンナノチューブの凝集を引き起こすvan der Waalsエネルギーは、このエネルギーの大きさにかかわる定数であるHamaker定数をグラファイトの一般的な値である5×10−13ergとして計算することができる。例えば、比較的細いカーボンナノチューブが弱く凝集する例として、直径5nmのカーボンナノチューブが、長さ10nmにわたる部分で互いに接近して来た場合、van der Waalsエネルギーは表面間距離5nmで、0.3kT、表面間距離3nmで1kT、表面間距離2nmで3kT程度となる(T=298度の場合)。これは、表面に1.5nm以上の厚さの吸着層を形成して表面間距離を3nm以上に保てば、凝集エネルギーは1kT以下に抑えられる、即ち、凝集エネルギーと熱運動エネルギーが同レベルになって、熱運動による分散が可能になることを意味する。また、比較的強い相互作用のモデルとして、直径15nmのカーボンナノチューブが長さ100nmにわたる部分で接近する例を考えると、その時のvan der Waalsエネルギーは、表面間距離20nmで0.5kT、表面間距離15nmで1kT、表面間距離10nmで3kTとなる。これは、表面に7.5nmの厚さの分散剤吸着層を形成して表面間距離を15nmにすれば、やはり熱運動エネルギーによる分散が可能であることを意味している。
【0017】
カーボンナノチューブの表面に1.5nmの厚さの吸着層を形成して上記の弱い凝集を防ぐには、分散剤の比重を1とすると、表面積1mあたり1.5mgの分散剤が必要である。液中に存在する分散剤の半分が表面に吸着すると仮定すると、必要な分散剤量は、カーボンナノチューブの表面積1mあたり3mgということになる。一方、カーボンナノチューブの表面に7.5nmの厚さの吸着層を形成して上記の強い凝集も防ぐには、表面積1mあたり7.5mgの分散剤が必要である。従って、やはり液中の分散剤の半分が吸着すると仮定すると、必要な分散剤量は、カーボンナノチューブの表面積1mあたり15mgとなる。ただし、分散剤の量が多くなりすぎると、前記のように、カーボンナノチューブの相対的な濃度の低下や、分散剤の架橋による別のタイプの凝集を引き起こすことにつながるため、これ以上に分散剤を多く添加するのは好ましくないと考えられる。
【0018】
本発明に用いるカーボンナノチューブは特に限定されるものではなく、各種方法で合成された単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブなどを適用することができ、その直径についても、上記の計算例でも示しているように、一般的な5nmから15nm程度のものが使用できる。また、これよりも直径の大きいナノチューブに関しても、計算上はvan der Waalsエネルギーが大きくなって、より多量の分散剤が必要になるが、実際には大粒径のものの方が攪拌などの効果が及びやすいので、この範囲の分散剤量で十分に対応可能であると期待される。
【0019】
本発明に用いる分散剤としては、使用する溶媒への溶解性が高く、カーボンナノチューブへの吸着能を有するものであればよい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などのアクリルモノマーの共重合体や、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン、ポリアセタール、ポリエステル、セルロース誘導体等のポリマーまたはこれらの共重合体、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウムなどの各種界面活性剤などが、目的に応じて使用可能である。
【0020】
溶媒としては、用途や分散剤に適するものを用いればよく、水、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなど、種々の溶媒を単独で、あるいは複数種を混合して使用することができる。
【0021】
分散組成物の作製方法も特に限定されるものではないが、例えば、カーボンナノチューブを分散剤と共に溶媒に投入し、超音波照射やビーズミルなどの手法で均一に混合する方法や、カーボンナノチューブと分散剤と少量の溶媒とをニーダーなどを用いて混練した後、所定の濃度に希釈する方法などが適用できる。
【0022】
本発明のカーボンナノチューブ分散組成物には、他の成分が添加されていてもよい。例えば、成膜性や接着性を持たせるためのアクリル、エポキシ、ポリエステル、ウレタンなどの樹脂成分が含まれていてもよく、後の工程で硬化させるための反応性モノマーや架橋剤、重合開始剤などが添加されていてもよい。また、シリカやアルミナ、硫酸バリウムなどの無機フィラー、シリカゾルなどの金属酸化物ゾル、金属アルコキシドなどを添加することもできる。さらには、カーボンブラックやフラーレンなどの別種の炭素材料と組み合わせることも可能である。
【0023】
本発明を構成する第2の発明は、第1の発明のカーボンナノチューブ分散組成物から溶媒を除去してなるカーボンナノチューブ含有組成物である。具体的な形態としては、基材に塗布して乾燥させた塗膜や、それを基材から剥離した独立薄膜、プラスティックやゴムなどの他成分と共に固めた成型物、粉体や焼結体などとの複合物等が挙げられる。なお、ここで言う「溶媒を除去する」とは、作製する際に用いた溶媒を、それぞれの用途に適した程度に取り除くことを指し、必ずしも溶媒を完全に除去することを意味しているわけではない。
【0024】
塗膜の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートなどのフィルムや成型物に塗布した導電膜、帯電防止膜が挙げられる。透明基材の場合はその透明性を、着色基材の場合はその下地の色を大きく損なうことなく導電性を付与することが可能であり、透明電極材の他に、電子部品の包装、搬送に用いる包装材、トレイ、キャリアテープ、カバーテープ、電子回路を形成した部材を保護するスペーサーテープ、帯電防止機能を持った間仕切り用のフィルムなどに適用することができる。また、電磁波遮蔽能を有する窓材や、カーボンナノチューブを発熱体とするヒーターを作製することも可能である。さらには、柔軟性のある基材に塗布すれば、柔軟性、衝撃緩和性のある電極材として用いることもできる。
【0025】
独立薄膜としては、例えばウレタンなどの樹脂を添加したカーボンナノチューブ分散液を離型フィルムに塗布し、乾燥させた後に剥離することで得られる導電性のシートなどを挙げることができる。このような薄膜は、柔軟性のある電極材や電磁波遮蔽用のシート、ヒーターの発熱体などに用いることが可能である。
【0026】
カーボンナノチューブ分散組成物を、プラスティックやゴムなどの他成分と共に固める場合には、加熱して軟化、溶融したプラスティックやゴムにカーボンナノチューブ分散組成物を添加して混練し、成型した後、冷却して固化させるのが一般的である。あるいは、プラスティックやゴムの前駆体に添加して混練し、成型後に硬化反応を起こさせて成型物を得ることもできる。これらの成型物は、カーボンナノチューブの特性により、導電性、強度、寸法安定性などの向上が期待できる。あるいは、ある程度の流動性を有する接着性材料と混合し、機能性接着剤として用いることもできる。このような接着剤は、カーボンナノチューブに基づく導電性を有していると同時に、固化後には、カーボンナノチューブによる強度向上も図れる。
【0027】
粉体との複合物としては、電極材料への添加が挙げられる。リチウムイオン電池などの電極材は、金属酸化物やカーボンなどの粉末をバインダーと混合して、所定の形状に塗布あるいは成型したものであるが、材料粉末間の電気抵抗が電池の内部抵抗を増加させ、電池性能を低下させる原因になる場合がある。本発明のカーボンナノチューブ分散組成物をこれらの電極材に塗布、あるいは含浸させた後に溶媒を除去すれば、良好に分散したカーボンナノチューブが材料粉末間をつなぐ働きをすることにより、電極内部の抵抗を低減することが可能になる。
【実施例】
【0028】
以下に、例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、以下において、「部」は重量部を表す。
【0029】
〔実施例1〕
メチルエチルケトン100部に、分散剤としてメチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート共重合物(分散剤Aとする)1.6部を溶解させた。この溶液に、平均径12nm、平均層数10層のカーボンナノチューブ(幾何学的な比表面積は175m/g)3部を加えて、超音波を3時間照射し、カーボンナノチューブ分散液を調製した。この条件では、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3.0mgの分散剤が含まれていることになる。得られた分散液には、目視で確認できる凝集物はなく、均一に分散していた。この分散液をメチルエチルケトンで10倍に希釈し、6番のワイヤーバーを用いて厚さ0.1mmのPETフィルムに塗布した。80℃で10分間加熱して溶媒を蒸発させ、カーボンナノチューブ塗膜を得た。この塗膜の表面抵抗を、三菱化学製LorestaGPにて測定したところ、3×10Ω/sqであった。
【0030】
〔実施例2〜8〕
カーボンナノチューブ(CNT)の種類と分散剤Aの量を表1に示すように変えて、実施例1と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を作製した。目視による分散状態の評価結果、および実施例1と同様の方法で塗布して表面抵抗を測定した結果は、表1に示すとおりであった。なお表1の中で、「分散剤量」とは、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり何mgの分散剤が組成物中に含まれているかを表している。また、分散状態の評価基準は以下のとおりである。
○=目視で確認できる凝集物がなく、カーボンナノチューブが均一に分散している。△=目視で確認できる凝集物はないが、器壁への付着にムラがあり、不均一である。×=目視で確認できる凝集物がある。
【0031】
〔実施例9〕
エタノール100部に、分散剤としてヒドロキシプロピルセルロース(分散剤Bとする)1.6部を溶解させた。この溶液に、平均径12nm、平均層数10層のカーボンナノチューブ(幾何学的な比表面積は175m/g)3部を加えて、超音波を3時間照射し、カーボンナノチューブ分散液を調製した。この条件では、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3.0mgの分散剤が含まれていることになる。得られた分散液には、目視で確認できる凝集物はなく、均一に分散していた。この分散液をエタノールで10倍に希釈し、6番のワイヤーバーを用いて厚さ0.1mmのPETフィルムに塗布した。80℃で10分間加熱して溶媒を蒸発させ、カーボンナノチューブ塗膜を得た。この塗膜の表面抵抗を、三菱化学製LorestaGPにて測定したところ、5×10Ω/sqであった。
【0032】
〔実施例10〜13〕
カーボンナノチューブ(CNT)の種類と分散剤の量を表1に示すように組み合わせて、実施例9と同様にしてカーボンナノチューブ分散液を作製した。目視による分散状態の評価結果、および実施例9と同様の方法で塗布して表面抵抗を測定した結果は、表1に示すとおりであった。
【0033】
〔比較例1〕
メチルエチルケトン100部に、分散剤A1.3部を溶解させる。この溶液に、平均径12nm、平均層数10層のカーボンナノチューブ(幾何学的な比表面積は175m/g)3部を加えて、超音波を3時間照射し、カーボンナノチューブ分散液を調製した。この条件では、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり2.5mgの分散剤が含まれていることになる。得られた分散液には、凝集物が散在していた。この分散液をメチルエチルケトンで10倍に希釈し、6番のワイヤーバーを用いて厚さ0.1mmのPETフィルムに塗布して表面抵抗を測定したところ、3×10Ω/sqであった。
【0034】
〔比較例2〕
メチルエチルケトン100部に、分散剤A9.0部を溶解させる。この溶液に、平均径12nm、平均層数10層のカーボンナノチューブ(幾何学的な比表面積は175m/g)3部を加えて、超音波を3時間照射し、カーボンナノチューブ分散液を調製した。この条件では、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり17.1mgの分散剤が含まれていることになる。得られた分散液には目視で確認できる凝集物はなかったが、容器の壁への付着にムラが見られ、やや不均一な状態であった。この分散液をメチルエチルケトンで10倍に希釈し、6番のワイヤーバーを用いて厚さ0.1mmのPETフィルムに塗布して表面抵抗を測定したところ、9×10Ω/sqであった。
【0035】
〔比較例3〕
エタノール100部に、分散剤B1.3部を溶解させる。この溶液に、平均径12nm、平均層数10層のカーボンナノチューブ(幾何学的な比表面積は175m/g)3部を加えて、超音波を3時間照射し、カーボンナノチューブ分散液を調製した。この条件では、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり2.5mgの分散剤が含まれていることになる。得られた分散液には、凝集物が散在していた。この分散液をエタノールで10倍に希釈し、6番のワイヤーバーを用いて厚さ0.1mmのPETフィルムに塗布して表面抵抗を測定したところ、装置の測定可能範囲を超えていた。
【0036】
〔比較例4〕
エタノール100部に、分散剤B9.0部を溶解させる。この溶液に、平均径12nm、平均層数10層のカーボンナノチューブ(幾何学的な比表面積は175m/g)3部を加えて、超音波を3時間照射し、カーボンナノチューブ分散液を調製した。この条件では、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり17.1mgの分散剤が含まれていることになる。得られた分散液には目視で確認できる凝集物はなかったが、容器の壁への付着にムラが見られた。この分散液をエタノールで10倍に希釈し、6番のワイヤーバーを用いて厚さ0.1mmのPETフィルムに塗布して表面抵抗を測定したところ、5×10Ω/sqであった。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のカーボンナノチューブ分散組成物は、各種塗料や電極材料、樹脂組成物などを高機能化する添加材料として有効である。また、本発明の樹脂組成物から溶媒を除去してなる組成物は、電子部品の包装材、キャリアテープ、カバーテープ、TABスペーサーテープ等のフィルム材や間仕切り用フィルム材、電磁波遮蔽材、窓用透明材などの作製に好適に利用できる。さらには、カーボンナノチューブ含有導電性固体組成物を発熱体とする高効率のヒーターに適用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともカーボンナノチューブと分散剤と溶媒から成り、分散剤の量が、カーボンナノチューブの幾何学的な表面積1mあたり3mg以上15mg以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ分散組成物。
【請求項2】
請求項1記載のカーボンナノチューブ分散組成物から溶媒を除去してなるカーボンナノチューブ含有組成物。

【公開番号】特開2013−14448(P2013−14448A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146914(P2011−146914)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000231280)日本資材株式会社 (9)
【Fターム(参考)】