説明

カーボンナノチューブ生成法

【課題】狭小な分布の直径を有するカーボン単層ナノチューブの制御可能な合成のための方法及びプロセスを提供する。
【解決手段】超伝導量子干渉デバイス(SQUID)磁力計が、担体物質に分散された金属触媒の粒径を求めるために用いられ、この方法により求められた、担体物質に分散された状態での平均直径が2nm未満である金属触媒と炭素前駆体ガスとを接触させることにより、狭い直径分布を有する単壁カーボンナノチューブが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の発明者は、ハルチュンヤン,アヴェティック、フェルナンデス,エレナ,モーラ及び徳根敏生である。
【0002】
本発明は、化学気相成長法を用いたカーボン単層ナノチューブの生成(合成)のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
カーボンナノチューブは、フラーレン分子の半分で覆われた各端を有するシームレスなチューブを形成する炭素原子の六角形網状構造である。カーボンナノチューブは、最初、炭素をアーク放電内で蒸着することにより複層同心チューブすなわち複層カーボンナノチューブを製造したSumio Iijimaによって1991年に報告された。彼らは、最大七つまでの壁を有するカーボンナノチューブを報告した。1993年には、Iijimaのグループ及びDonald Bethuneにより統率されたIBMチームが、単層ナノチューブがアーク生成器内で鉄、コバルト等の遷移金属とともに炭素を蒸着することにより生成可能であることを、それぞれ独立して発見した(Iijima et al. Nature 363:603 (1993); Bethune et al., Nature 363:605 (1993) and U.S.patent No.5,424,054 を参照)。当初の合成は、大量の煤及び金属粒子が混合された少量の不定形ナノチューブを製造するものであった。
【0004】
現在、単層カーボンナノチューブ及び複層カーボンナノチューブを合成するための、三つの主要なアプローチが存在する。これらは、カーボンロッドの電気アーク放電(Journe
t et al. Nature 388:756 (1997))、炭素のレーザ切断(Thess et al. Science 273:483 (1996))及び炭化水素の化学気相成長(Ivanov et al. Chem.Phys.Lett 223:329 (1994); Li et al. Science 274:1701 (1996))である。単層カーボンナノチューブが未だにグラム規模で製造されるのに対し、複層カーボンナノチューブは、触媒による炭化水素の熱分解により商業規模で製造可能である。
【0005】
一般的に、単層カーボンナノチューブは、固有の機械的特性及び電子特性を有するので、複層カーボンナノチューブよりも好ましい。複層カーボンナノチューブは不飽和炭素結合価間で架橋を形成することにより偶発的な欠陥を補償したものが残ってしまうのに対し、単層カーボンナノチューブは欠陥を補償するための隣接した壁を有していないので、単層カーボンナノチューブにおいて、欠陥が発生する可能性は低い。欠陥の無い単層カーボンナノチューブは、チューブの直径、同心的な構造の数及びキラリティを変化させることにより調節可能な、顕著な機械的特性、電子特性及び磁気特性を有することが期待される。
【0006】
一般的には、小さい直径のカーボンナノチューブの成長のためには、3nm未満の小さい触媒粒子が好ましいことが知られている。しかし、小さい触媒粒子は、カーボンナノチューブの合成のために必要な高温で、容易に凝集してしまう。Huang et al.による米国特許出願第2004/0005269号明細書は、Fe、Co及びNiの少なくとも一つの元素と、ランタノイドの少なくとも一つの担体元素と、を含む触媒混合物を開示している。ランタノイドは合金を形成することにより触媒の融点を下げると言われているので、カーボンナノ構造体は、低温で成長可能である。
【0007】
触媒のサイズだけでなく、反応室の温度もカーボンナノチューブの成長のために重要である。Zhang et al.による米国特許第6,764,874号明細書は、アルミナ担体を形成するためにアルミニウムを融解し、アルミナ担体上にニッケルナノ粒子を形成するためにニッケル薄膜を融解することによってナノチューブを生成するための方法を開示している。触媒は、反応室内において850℃未満で用いられる。共にDai et al.による米国特許第6,401,526号明細書及び米国特許出願第2002/00178846号明細書は、原子間力顕微鏡法のためのナノチューブを形成する方法を開示している。担体構造の一部が、溶媒に溶けた金属含有塩及び長鎖分子化合物を含む液相前駆体物質で被覆される。カーボンナノチューブが、850℃の温度で生成される。
【0008】
製造されたSWNTの直径が触媒粒子のサイズに比例することは公知である。小さい直径のナノチューブを合成するためには、小さい粒径(約1nm未満)の触媒粒子が必要である。狭い分布を有する小さい平均粒径の触媒は、合成することが困難である。その上、特に触媒粒子が担体粉末に担持され、担体粉末の細孔内に埋設されている場合に、触媒粒径分布を決定するための認められた方法は、現時点では存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、狭小な分布の直径を有するカーボン単層ナノチューブの制御可能な合成のための方法及びプロセスが必要とされている。したがって、本発明は、狭小な分布の直径を有するSWNTの合成のための触媒の生成及び最適化のために利用可能な、触媒粒子の平均粒径及び粒径分布を決定するための新規な方法及びプロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、SQUIDを用いて金属触媒の磁化曲線を得て、磁化曲線から平均粒径を決定することによって、金属触媒の平均粒径を決定するための方法を提供する。金属触媒は、V族金属、VI族金属、VII族金属、VIII族金属、ランタノイド、遷移金属又はこれらの組み合わせとすることができる。触媒は、約1nmから約10nmの間の粒径を有することが好ましい。触媒は、Al、SiO、MgO等の粉末状酸化物上に担持可能であり、ここで、触媒及び担体は、約1:1から約1:50の比率である。
【0011】
他の態様において、本方法は、炭素前駆体ガスを担体上の約2nm未満の平均直径を有する触媒と接触させることにより、狭い直径分布を有するSWNTが形成されるステップを含む。金属触媒の平均粒径は、SQUIDを用いて金属触媒の磁化曲線を得て、磁化曲線から平均粒径を決定することによって決定される。炭素前駆体ガスは、アルゴン、水素等の他のガスをさらに含有することが可能なメタンとすることができる。触媒は、V族金属、VI族金属、VII族金属、VIII族金属、ランタノイド、遷移金属又はこれらの組み合わせとすることができる。触媒は、約1nmから約50nmの間の粒径を有することが好ましい。触媒は、Al、SiO、MgO等の粉末状酸化物上に担持可能であり、ここで、触媒及び担体は、約1:1から約1:50の比率である。SQUIDによって測定される様に、触媒の所望の粒径が得られると、得られた粒径は、高品質のSWNTの製造のために利用可能である。
【0012】
他の態様において、本発明は、触媒の融点と触媒及び炭素の共融点との間の温度で炭素前駆体ガスを担体上の触媒と接触させるプロセスによって製造されたカーボンナノチューブ構造体を提供する。炭素前駆体ガスは、アルゴン、水素等の他のガスをさらに含有することが可能なメタンとすることができる。触媒は、V族金属、VI族金属、VII族金属、VIII族金属、ランタノイド、遷移金属又はこれらの組み合わせとすることができる。触媒は、約1nmから約15nmの間の粒径を有することが好ましい。触媒は、Al、SiO、MgO等の粉末状酸化物上に担持可能であり、ここで、触媒及び担体は
、約1:1から約1:50の比率である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、狭小な分布の直径を有するSWNTの合成のための触媒の生成及び最適化のために利用可能な、触媒粒子の平均粒径及び粒径分布を決定するための新規な方法及びプロセスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】aは1nm未満、bは5nm、cは9nmの平均直径を有する、酸化アルミニウム粉末上に担持された鉄ナノ粒子(Fe:Al)の磁化曲線と、dは1nm未満、eは5nm、fは9nmの平均触媒直径を有するカーボンSWNT成長の合成のために用いられた後のFe:Alの磁化曲線と、をそれぞれ提供する図である。差込図は、800℃で90分間Ar処理された後の、1nm未満の平均直径を有する初期触媒に関する磁化曲線を示す図である。磁化の値は、Fe1グラムに対して表されている。
【図2】aは1nm未満、bは約5nm、cは約9nmの平均直径を有するFeナノ粒子を用いて成長したカーボンSWNTのラマンスペクトル(λ=532nm励起)を示す図である。
【図3】Feと担体アルミニウム粉末との異なる比率を有する触媒の磁化曲線を示す図である。図3(a)では、Fe:Al比は1:14.2であり、図3(b)では、Fe:Al比は1:15である。
【図4】200℃での加熱処理後(図4(a))及び800℃での加熱処理後(図4(b))における、1:14.2の比率を有するFe:Alの磁化曲線を説明する図である。
【図5】200℃での加熱処理後(図5(a))及び800℃での加熱処理後(図5(b))における、1:15の比率を有するFe:Alの磁化曲線を説明する図である。
【図6】加熱処理及びSWNT合成中における、最適化された触媒(Fe:Mo:Al=1:0.2:16.9)を用いて成長したカーボンSWNTのラマンスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<1.定義>
特に指定しない限り、明細書及び特許請求の範囲を含む本出願において用いられる以下の用語は、以下で与えられる定義を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられている単数形は、文脈が特に明確に指示しなくても、複数形を含むことに留意されたい。標準的な化学用語の定義は、Carey and Sundberg (1992) "Advanced organic Chemistry 3rd. Ed" Vols. A and B, Plenum Press, New York及びCotton et al. (1999) "Advanced Inorganic Chemistry 6th Ed." Wiley, New Yorkを含む参考資料から入手可能である。
【0016】
本明細書で用いられる「磁性体」という用語は、例えば、強磁性物質、常磁性物質、超常磁性物質であるがこれらに限定されず、磁場に影響される全てのタイプの物質を含む。
【0017】
「磁性物質」という用語は、少なくともいくらかの磁性内容物を有し、0%よりも多く100%までの範囲の量の磁性物質を有する任意の物質である。
【0018】
本明細書で用いられる「強磁性体」という用語は、鉄、ニッケル又はコバルト、及び非常に高い透磁率、特性飽和点及び磁気ヒステリシスを示す様々な合金を指す。
【0019】
「常磁性体」という用語は、生じる磁化が磁場の強度の強さに平行であり比例する物質の原子内において不対電子を有する物質を指す。
【0020】
「超常磁性体」という用語は、磁気異方性エネルギーが熱エネルギー未満となるサイズを有する粒子を指す。その場合には、熱変動が、磁区の磁気モーメントを、当該磁区のエネルギー最小値間でランダムに変動させる。
【0021】
「単層カーボンナノチューブ」又は「一次元カーボンナノチューブ」という用語は、交換可能に用いられ、主として単層の炭素原子からなる壁を有し、黒鉛型の結合を有する六角結晶構造に配列された炭素原子の円筒形状の薄いシートを指す。
【0022】
本明細書で用いられる「複層カーボンナノチューブ」という用語は、一よりも多い同心チューブからなるナノチューブを指す。
【0023】
「金属有機物」又は「有機金属」という用語は、交換可能に用いられ、有機化合物と、金属、遷移金属又は金属ハロゲン化物と、からなる配位化合物を指す。
【0024】
<2.概説>
本発明は、触媒粒子のサイズを決定することにより、触媒の品質を制御可能とするための方法及びプロセスを開示する。このように製造された触媒は、化学気相成長法を用いたカーボン単層ナノチューブ(SWNT)及び構造体の製造に利用可能である。本発明の方法により製造された触媒は、カーボンSWNTの高い収率及び高い品質を提供する。
【0025】
本発明は、粒子、詳細には担体物質上の金属触媒のサイズ分布を決定するための方法及びプロセスを提供する。本発明によると、予め選択された直径分布のSWNTは、炭素含有ガスを担体上に担持された触媒と接触させることにより製造可能である。触媒粒子は、狭い範囲の直径を有するように合成されている。
触媒粒子の直径は、担体の有無に関わらず、SQUID磁力計を用いることにより評価可能であり、触媒合成プロセス(金属/担体比率の変化)は、狭い範囲の直径を有する触媒粒子が得られるまで継続可能である。このようにして得られた触媒は、炭素含有ガスを分解してSWNTの成長を生じるのに十分な温度で炭素含有ガスと接触させることが可能である。したがって、SWNTの直径分布は、狭い範囲の直径を有する触媒粒子を用いることにより制御可能である。
【0026】
<3.触媒>
触媒組成は、化学気相成長プロセスで日常的に用いられている、当業者にとって知られた触媒組成とすることができる。触媒粒子は、フェリ磁性又は強磁性を示す物質とすることができる。好都合なことに、粒子は、例えば、鉄、酸化鉄、又はコバルト、ニッケル、クロム、イットリウム、ハフニウム、マンガン等のフェライト、等の磁性金属又は合金とすることができる。本発明に係る好適な粒子は、最大で50nmから約1μmまでの全体平均粒径を有することが好ましいが、一般的に、個々の粒子に関する粒径は、約400nmから約1μmとすることができる。触媒粒子は、少なくとも単一の磁区サイズであることが好ましく、一般的には約2nm未満である。
【0027】
カーボンナノチューブ成長プロセスにおいて用いられる触媒の機能は、炭素前駆体を分解し、規則的な炭素の堆積を促進することである。本発明の方法及びプロセスは、金属触媒として金属ナノ粒子を用いることが好ましい。触媒として選択された金属又は金属の組み合わせが、所望の粒径及び直径分布を得るために処理可能である。続いて、金属ナノ粒子は、後記する金属成長触媒を用いたカーボンナノチューブの合成中に、担体としての利用に好適な物質上に担持されることにより分離可能である。担持される前及び後における触媒粒子の粒径が、超伝導量子干渉デバイス(SQID)磁力計を用いて決定可能である。公知のように、担体は、触媒粒子を互いに分離することにより、触媒組成における広大な表面領域を触媒物質に提供するために利用可能である。このような担体物質としては、結晶シリコン、ポリシリコン、シリコン窒化物、タングステン、マグネシウム、アルミニウム及びこれらの酸化物の粉末が挙げられ、好ましくは、オプションとして添加元素により改質された、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化マグネシウム若しくは二酸化チタン又はこれらの組み合わせが、担体粉末として用いられる。シリカ、アルミナ及び他の公知の物質が、担体として用いられてもよく、アルミナが担体として用いられることが好ましい。
【0028】
金属触媒は、V、Nb等のV族金属及びこれらの混合物、Cr、W、Mo等のVI族金属及びこれらの混合物、Mn、Re等のVII族金属、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt等のVIII族金属及びこれらの混合物、Ce、Eu、Er、Yb等のランタノイド及びこれらの混合物、又は、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Sc、Y、La等の遷移金属及びこれらの混合物から選択可能である。本発明により採用可能な、バイメタル触媒等の触媒混合物の具体例としては、Co−Cr、Co−W、Co−Mo、Ni−Cr、Ni−W、Ni−Mo、Ru−Cr、Ru−W、Ru−Mo、Rh−Cr、Rh−W、Rh−Mo、Pd−Cr、Pd−W、Pd−Mo、Ir−Cr、Pt−Cr、Pt−W及びPt−Moが挙げられる。金属触媒は、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、又はFe−Mo、Co−Mo、Ni−Fe−Mo等のこれらの混合物であることが好ましい。
【0029】
金属、バイメタル又は金属の組み合わせが、規定された粒径及び直径分布を有する金属ナノ粒子を生成するために利用可能である。金属ナノ粒子は、Harutyunyan et al., NanoLetters 2, 525 (2002)に記載された文献の手順を用いて生成可能である。また、金属ナノ粒子は、同時継続であり共同所有である米国特許出願第10/304,316号明細書に記載されたように、不動態化塩に添加された、対応する金属塩の熱分解と、金属ナノ粒子を提供するために調節された溶媒の温度と、により生成可能であり、又は、公知の他の手法によっても生成可能である。金属ナノ粒子の粒径及び直径は、不動態化溶媒内の好適な濃度の金属を用いること、及び、反応が熱分解温度で進むように時間の長さを制御することにより、制御可能である。金属塩は、いかなる金属の塩であってもよく、金属塩の融点が不動態化溶媒の沸点未満となるように選択可能である。したがって、金属塩は、金属イオン及び対イオンを備え、対イオンは、硝酸塩、窒化物、過塩素化塩、硫酸塩、硫化物、酢酸塩、ハロゲン化物、メトキシドやエトキシド等の酸化物、アセチルアセトネート等となることができる。例えば、金属塩は、酢酸鉄(FeAc)、酢酸ニッケル(NiAc)、酢酸パラジウム(PdAc)、酢酸モリブデン(MoAc)等、及びこれらの組み合わせとすることが可能である。金属塩の融点は、好ましくは沸点よりも約5℃−50℃低く、より好ましくは不動態化溶媒の沸点よりも約5℃−約20℃低い。溶媒は、グリコールエーテル、2−(2−ブトキシトキシ)エタノール、H(OCHCHO(CHCH等のエーテルとすることができ、以下、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等の一般名を用いて呼ぶこととする。
【0030】
約0.01nmから約20nm、より好ましくは約0.1nmから約3nm、最も好ましくは約0.3nmから2nmの平均粒径を有する金属ナノ粒子が生成可能である。すなわち、金属ナノ粒子は、0.1,1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10nm、及び最大で約20nmまでの粒径を有することができる。他の態様において、金属ナノ粒子は、粒径の幅、すなわち直径分布を有することができる。例えば、金属ナノ粒子は、大きさ約0.1nmから約5nm、大きさ約3nmから約7nm、又は、大きさ約5nmから約11nmの幅の粒径を有することができる。
【0031】
製造される金属ナノ粒子のサイズ及び分布は、好適な手法によって検証可能である。検証の一手法が、透過型電子顕微鏡法(TEM)である。好適なモデルとしては、FEI Company of Hillsboro,ORから市販されているPhillips CM300 FEG TEMが挙げられる。金属ナノ粒子のTEM顕微鏡写真を撮影するために、一滴以上の金属ナノ粒子/不動態化溶媒溶液が、TEM顕微鏡写真を得るために好適な炭素薄膜格子又は他の格子に設置される。続いて、TEM装置が、生成されたナノ粒子のサイズ分布を決定するために利用可能なナノ粒子の顕微鏡写真を得るために用いられる。
【0032】
他の方法において、ナノ粒子のサイズ及び分布は、SQUIDを用いて決定可能である。SQUID磁力計は、カリフォルニア州サンディエゴのバイオマグネティックテクノロジーズ株式会社、ドイツのシーメンスAG等の会社から市販されており、多くの位置で同時に磁場を検出することができるシングル及びマルチチャンネルデバイスを備えている。
SQUID磁力計は、一般的に、超伝導ピックアップコイルと、超伝導ワイヤのループ内に挿入される一以上のジョセフソン接合を含む検出システム(SQUID)と、を備えている。かかるループ内の磁束は、量子化され、ピックアップコイルにより経験される磁場の変化が、検出器を介した電流の検出可能な変化を生じる。SQUID磁力計は、例えば、10−14テスラといった非常に小さい磁場を測定することが可能である。この技術は、多くの分野で利用されている。
【0033】
合成プロセスの開始時又はプロセスの終了時における触媒粒子の磁気特性は、SQUIDを用いて測定可能である。SQUIDの操作の詳細は、当業者にとって公知であり、C. Hilbert and J. Clarke, Journal of Low Temperature Physics 61, 237 and 261 (1985)に開示されている。本発明の電気誘導現象の検出に関連する信号は小さい。したがって、本システムにおけるノイズレベルの低減は、好都合であり、熱的に誘導されるノイズレベルを低減させるために、オプションとして、液体ヘリウム環境等の低温で測定を実施することにより実現可能である。
【0034】
約1.5nm未満の粒径を有する触媒の磁化曲線は、常磁性であり、約2nmよりも大きい粒径の磁化曲線は、超常磁性であり、4nmよりも大きいと、強磁性であることが見出されている。したがって、一態様において、触媒粒子の磁気特性の進化が、所望の粒径を有する触媒粒子の合成のために利用可能である。SQUIDにおいて観察された磁化曲線が所望の粒径に期待される磁化曲線と同様でない場合には、金属/担体物質モル比は、変更可能である。SQUIDにおいて観察された磁化曲線が所望の粒径に期待される磁化曲線と同様である場合には、モル比は、固定可能である。
【0035】
すなわち、所望の平均粒径が1nmから約3nmの間等、約2nm以上である場合には、SQUID測定が、粒子が超常磁性であることを示す磁化曲線を提供するまで、金属/担体物質比の変化が継続される。所望の平均粒径が0.5nm、0.8nm、1nm等、約1nmよりも小さい場合には、SQUID測定が、粒子が常磁性であることを示す磁化曲線を提供するまで、金属/担体物質比の変化が継続される。
【0036】
前記した熱分解により形成され、オプションとしてSQUIDにより特性が明らかにされた金属ナノ粒子等の金属ナノ粒子は、固体の担体上に担持可能である。固体の担体は、シリカ、アルミナ、MCM−41、MgO、ZrO、アルミニウム−安定化酸化マグネシウム、ゼオライト又は他の公知の酸化物担体、及びこれらの組み合わせとすることができる。例えば、Al−SiO混合担体が使用可能である。担体は、酸化アルミニウム(Al)又はシリカ(SiO)であることが好ましい。固体の担体として用いられる酸化物は、粉末化されることによって小さい粒径及び大きい表面積を提供する。粉末状酸化物は、好ましくは約0.01μmから約100μm、より好ましくは約0.1μmから約10μm、さらに好ましくは約0.5μmから約5μm、最も好ましくは約1μmから約2μmの間の粒径を有する。粉末状酸化物は、約50−約1000m/gの表面積、より好ましくは約200−約800m/gの表面積を有する。粉末状酸化物は、新たに生成可能であり、市販もされている。
【0037】
一態様において、金属ナノ粒子は、補助的な分散及び抽出を介して固体の担体に担持される。補助的な分散は、熱分解反応後に、酸化アルミニウム(Al)、シリカ(SiO)等の粉末状酸化物の粒子を反応槽内に導入することによって開始する。1−2μmの粒径及び300−500m/gの表面積を有する好適なAl粉末は、Alfa Aesar of Ward Hill, MA又はDegussa, NJから市販されている。粉末状酸化物は、粉末状酸化物と金属ナノ粒子を形成するために用いられる金属の初期量との間の所望の重量比を実現するために追加可能である。一般的に、重量比は、約10:1と約15:1との間とすることができる。例えば、100mgの酢酸鉄が始めの金属として用いられている場合には、約320−480mgの粉末状酸化物が溶液内に導入可能である。粉末状酸化物に対する金属ナノ粒子の重量比は、例えば、1:11、1:12、2:25、3:37、1:13、1:14等のように約1:10から1:15の間とすることができる。
【0038】
当業者にとって自明であるように、このように生成された触媒は、後で利用するために保存可能である。他の態様において、金属ナノ粒子は、予め生成され、不動態化溶媒から分離され、精製されており、その後、好適な量の同様又は異なる不動態化溶媒内の粉末状酸化物に添加される。金属ナノ粒子及び粉末状酸化物は、前記したように、均一に分散され、不動態化溶媒から抽出され、有効な表面積を増大させるために処理される。金属ナノ粒子及び粉末状酸化物の混合物を生成するための他の方法は、当業者にとって自明である。
【0039】
アルミナ上に担持された鉄触媒の異なる三つのグループが生成され、これらの磁化曲線がSQUIDを用いて得られており、図1a,b,cに示されている。担体の細孔内における鉄ナノ粒子のその場形成によるものであり、約2nm未満の平均粒径を有する、アルミナ担体粉末上の触媒粒子(Fe:Al=1:15 モル:モル)は、5Kという低い温度の場合と同様に、室温でも常磁性挙動を示した(図1a及び1g)。対照的に、約2nm以上の平均直径を有する、担体粉末上の触媒粒子は、室温で超常磁性挙動を示した(図1b,c)。
【0040】
このように形成された金属ナノ粒子は、化学気相成長(CVD)プロセスによるカーボンナノチューブ、ナノファイバ及び他の一次元カーボンナノ構造体の合成のための成長触媒として利用可能である。
【0041】
<4.炭素前駆体>
カーボンナノチューブは、炭素含有ガス等の炭素前駆体を用いて合成可能である。一般的に、最大で800−1000℃までの温度でも熱分解しない炭素含有ガスが利用可能である。炭素含有ガスの好適な例としては、一酸化炭素と、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、エチレン、アセチレン、プロピレン等の飽和脂肪族炭化水素及び不飽和脂肪族炭化水素と、アセトン、メタノール等の含酸素炭化水素と、ベンゼン、トルエン、ナフタレン等の芳香族炭化水素と、例えば一酸化炭素及びメタンといった前記物質の混合物と、が挙げられる。一般的に、一酸化炭素及びメタンが単層カーボンナノチューブの形成のための供給ガスとして好ましいのに対し、アセチレンの利用は、複層カーボンナノチューブの形成を促進する。オプションとして、炭素含有ガスは、水素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン又はこれらの混合物等の希釈ガスと混合さ
れてもよい。
【0042】
<5.カーボンナノチューブの合成>
本発明の方法及びプロセスは、狭い直径分布を有するSWNTの合成を提供する。カーボンナノチューブ直径の狭い分布は、最も低い共融点を反応温度として選択することによって、合成中に小さい直径の触媒粒子を選択的に活性化させることによって得られる。
【0043】
本発明の一態様において、Harutyunyan et al., NanoLetters 2, 525 (2002)に記載された文献の方法によって、粉末状酸化物に担持された金属ナノ粒子が反応温度で炭素源と接触可能である。また、酸化物粉末に担持された金属ナノ粒子は、エアロゾル化されて反応温度に維持された反応炉内に導入可能である。同時に、炭素前駆体ガスが、反応炉内に導入される。反応炉内における反応物質の流れは、反応炉の壁上の炭素製造物の堆積が減少するように制御可能である。
このように製造されたカーボンナノチューブは、収集及び分離可能である。
【0044】
酸化物粉末に担持された金属ナノ粒子は、公知の手法によりエアロゾル化可能である。一手法において、担持された金属ナノ粒子は、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等の不活性ガスを用いてエアロゾル化される。好ましくは、アルゴンが用いられる。一般的に、アルゴン又は他のガスは、粒子インジェクタを介して反応炉内に押し出される。粒子インジェクタは、担持された金属ナノ粒子を含むことが可能であり、担持された金属粒子を攪拌する手段を有する容器である。したがって、粉末状の多孔性酸化物基板に堆積した触媒は、機械的攪拌器が取り付けられたビーカ内に設置可能である。担持された金属ナノ粒子は、アルゴン等の搬送ガス内の触媒の同伴をアシストするために攪拌又は混合可能である。
【0045】
したがって、ナノチューブ合成は、一般的には、2003年12月3日に出願された、同時継続及び共有出願である米国特許出願10/727,707号明細書に記載されたように発生する。一般的に、不活性搬送ガス、好ましくはアルゴンガス、は粒子インジェクタを経由する。粒子インジェクタは、粉末状の多孔性酸化物基板に担持された成長触媒を含むビーカ又は他の容器とすることができる。粒子インジェクタ内の粉末状の多孔性酸化物基板は、アルゴンガスフロー内の粉末状多孔性酸化物基板の同伴をアシストするために攪拌又は混合可能である。オプションとして、不活性ガスは、ガスを乾燥させる乾燥システムを経由可能である。アルゴンガスは、同伴された粉末状多孔性酸化物を含んでおり、このガスフローの温度を約400℃から約500℃に上昇させるために予熱器を経由可能である。続いて、同伴された粉末状多孔性酸化物は、反応室に供給される。メタン又は他の炭素供給源ガス及び水素の流れも、反応室に供給される。一般的な流量は、アルゴンで500sccm、メタンで400sccm、ヘリウムで100sccmとすることができる。さらに、500sccmのアルゴンガスが、反応室の壁上の炭素製造物の堆積を低減させるためにらせん流吸気口に向けて方向付けられてもよい。反応室は、加熱器を用いた反応中に、約300℃から900℃の間に加熱可能である。温度は、炭素前駆体ガスの分解温度未満に維持されることが好ましい。例えば、1000℃を超える温度では、メタンは、金属成長触媒を用いてカーボンナノ構造体を形成するよりもむしろ、直接煤に分解してしまうことが知られている。反応室で合成されたカーボンナノチューブ及び他のカーボンナノ構造体は、収集され、特徴が明らかにされる。
【0046】
他の態様において、触媒サイズの分布内の粒子直径の範囲は、SWNTの製造が実行される温度を選択することにより、SWNTの合成のために選択可能である。触媒ナノ粒子の合成は、一般的に、粒径のガウス分布をもたらす。したがって、例えば、1nmのFe触媒の合成は、1nmを中心とする大多数の粒子直径を有し、約0.01nmから約5nmまでの範囲の粒子直径の分布を有することができる。通常、触媒は、触媒粒径の狭い分布を得るためにさらに処理される。一方、現在の方法及びプロセスは、さらなる処理が無くても、触媒粒子の狭い分布の選択を可能とする。本発明の方法において、反応温度は、当該反応温度が共融点の近く又は共融点を超えて、平均よりも小さい触媒粒径が始めにSWNTの合成に用いられるように選択可能である。これらの触媒が排出されるので、反応温度は、平均に近いサイズの触媒粒子がSWNTの合成に用いられるように上昇可能である。反応温度は、上のほうの範囲近くのサイズの触媒粒子がSWNTの合成に用いられるようにさらに上昇可能である。このように、本発明の方法及びプロセスは、触媒の合成中に触媒の粒径が厳格に制御される必要がなく、SWNTの経済的な製造を提供することができるといった利点を有している。
【0047】
本発明の一態様において、合成されたSWNTの直径分布は、実質的に均一である。したがって、SWNTの約90%が、平均直径の約25%内、より好ましくは平均直径の約20%内、さらに好ましくは平均直径の約15%の直径を有する。したがって、合成されたSWNTの直径分布が、平均直径の約10%から約25%、より好ましくは平均直径の約10%から約20%、さらに好ましくは平均直径の約10%から約15%となることができる。
【0048】
カーボンSWNTは、約4重量%から約15重量%(鉄/アルミナ触媒に対する炭素の重量%)の範囲の収率で合成された。9nmの鉄ナノ粒子を用いて製造されたSWNTの透過型電子顕微鏡(TEM)画像の分析は、約10nmから約15nmの平均直径を有する束状構造を示した。5nmの鉄触媒を用いて製造されたSWNTのTEM画像の分析は、約7nmから約12nmの平均直径を示した。1nmの鉄ナノ粒子を用いて製造されたSWNTのTEM画像の分析は、多くの個別のSWNTと同様の、約5nmから約10nmの直径を有する束状構造を示した。全ての場合において、0.8nmから2nmのSWNT直径の分布が観察された。TEMから測定された直径は、六つの異なるレーザ励起(λ=1064,785,614,532,514,488nm)を用いたラマン分光スペクトルによって観察された、直径方向に振動するモードから確認された。図2には、λ=785nmレーザ励起に関するカーボンSWNTのラマンスペクトルが示されている。
【0049】
SWNT成長の後、触媒ナノ粒子の磁気特性もSQUIDを用いて測定された(図3d,e,f)。SWNT成長の後、1nm未満の平均直径を有する触媒は、室温及び5Kの両方で超常磁性特性を示した(図3d)。5nm,9nmの平均直径を有する触媒は、室温であっても強磁性を示した。大きい触媒(9nm)は、小さい粒径を有する触媒(図3d,eにおいて、300KでHc=43Gs及びHc=0Gs)と比較して、SWNT成長後に、より大きい保磁力(300KでHc=145Gs)を示した。
【0050】
超微細な金属粉末に関する、磁気特性と粒子直径との相関関係が、常に研究されてきた。特に、金属粉末の保磁力(H)は、粒径に強く依存していることが分かっている(Gangopadhyay et al. Phys. Rev. B 45, 9778 (1992))。Kneller and Luborsky (J. Appl. Phys. 34, 656 (1963))により展開されたモデルによると、粒径の減少に伴うHの減少は、鉄であれば約20nmといった、単一の磁区未満のサイズを有する粒子において観察される熱運動による。保磁力(H)と温度(T)とに関して、以下の式が用いられる。
=H[1−(25kT/KV)1/2] (1)
ここで、Kはバルクの異方性定数であり、Vは粒子の体積であり、Hはゼロ温度での保磁力である。室温で、小さい粒子は小さい保磁力を有する。したがって、特定の理論に捉われなくても、ナノチューブ成長後の、触媒の保磁力の増大と、常磁性から超常磁性への、及び、超常磁性から強磁性への相転移とは、触媒粒子の直径の増大に起因している。このように、ナノチューブの成長は、大きい粒子の形成の原因である、泳動及び液化に付随して起こる。
【0051】
SWNTのラマンスペクトルは、約1590cm−1のGバンド、約1350cm−1のDバンド、及び、約100−300cm−1の半径方向への振動モード(RBM)といった、三つの主要なピークを有している。RBM周波数は、SWNTの直径の逆数に比例するので、SWNTの直径の算出に利用可能である。通常、RBMピークの赤方偏移は、SWNTの平均直径の増大に対応している。ラマン活性フォノンモードE2gに関連するタンジェンシャルモードGバンドは、二つのピークの重ね合わせである。約1550cm−1の広範なブライト−ウィグナー−Fnao線が金属SWNTに付与されているのに対し、約1593cm−1及び1568cm−1の二つのピークは、半導体SWNTに付与されている。したがって、Gバンドによって、金属SWNTと半導体SWNTとを区別することができる。Dバンド構造は、不規則な炭素、アモルファス炭素の存在、及び、sp炭素構造による他の欠陥に関係している。SWNTのラマンスペクトルにおけるDバンドに対するGバンドの比(I:I又はG/D比)が、製造されたSWNTの純度及び品質を決定するための指標として利用可能である。望ましくは、I:Iは、約1から約500であり、好ましくは約5から約400であり、より好ましくは約10よりも大きい。
【0052】
本発明の方法及びプロセスを用いて、約10から約40のI:Iを有するSWNTが製造可能である。SWNTの品質は、触媒の粒径に依存している。触媒粒子の粒径は、SQUIDを用いて決定可能である。合成プロセスは、触媒の粒径分布が狭い範囲内となるまで継続可能である。このようにして生成された触媒粒子の利用が、高い純度及び品質のSWNTを提供する。
【0053】
前記した方法及びプロセスによって製造されたカーボンナノチューブ及びカーボ・BR>塔Iノ構造体は、電界放出素子、メモリ素子(高密度メモリアレイ、メモリ論理スイッチングアレイ)、ナノMEM、AFM撮像プローブ、分散型診断センサ及び歪みセンサを含むアプリケーションに利用可能である。他の主要なアプリケーションとしては、熱制御材、超強力及び軽量強化材及びナノ複合材料、EMIシールド材、触媒担体、ガス貯蔵物質、高表面積電極、軽量導体ケーブル及びワイヤ等が挙げられる。
<実施例>
【0054】
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の例である。実施例は、説明を目的としてのみ言及されており、本発明の範囲を限定することを何ら意図したものではない。実施例は、用いられた数(例えば、量、温度等)に関連する正確さを保証するために実施されたが、当然、実験誤差及び偏差は許容されるべきである。
【実施例1】
【0055】
≪担持された触媒の生成≫
触媒は、担体物質を金属塩溶液内に含浸させることにより生成された。触媒粒子の三つの異なるグループが、合成され、CVDによりSWNTを成長させるために用いられた。約5nm及び約9nmの平均直径を有する狭い分散の鉄触媒の二つのグループが、窒素雰囲気下でグリコール溶液内の酢酸鉄の熱分解により得られた。反応時間及び酢酸鉄/グリコール比が、ナノ粒子のサイズを調節するために変えられた。一般的な手順において、メタノール内のFeAcは、Fe:Al=1:15のモル比で用いられた。窒素雰囲気下で、FeAcが、1mM:20mMのモル比となるように、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルに添加された。反応混合物が、磁気攪拌バーを用いて窒素雰囲気下で混合され、90分間還流下で加熱された。続いて、反応混合物が、室温まで冷却され、Al(15mM)がすぐに添加された(モル比Fe:Al=1:15)。反応溶液が、室温で15分間攪拌され、続いて、150℃で3時間加熱された。反応物が、溶剤を除去するために混合物上にNを流す間に、90℃に冷却された。黒い膜が、反応フラスコの壁に形成された。黒い膜は、微細な黒色粉末を得るために、収集され瑪瑙乳鉢を用いて粉砕された。
【0056】
触媒の第三のグループが、A. R. Hartyunyan, B. K. Pradhan, U. J. Kim, G. Chen, and P. C. Eklund, NanoLetters 2, 525 (2002)に記載されているように、硫化鉄(II)及びアルミナ担体粉末(モル比Fe:Al=1:15)を用いた、担体の細孔内の鉄ナノ粒子のその場形成による一般的なウェット触媒方法によって生成された。
【0057】
前記したように生成された触媒の三つのグループの磁化曲線は、SQUIDを用いて得られており、図1a,b,cに示されている。
【実施例2】
【0058】
≪カーボンナノチューブの合成≫
カーボンナノチューブが、Harutyunyan et al., NanoLetters 2, 525 (2002)に記載された実験装置を用いることによって合成された。三つの異なる触媒を用いたSWNTのCVD成長は、炭素源としてメタンを使用した(T=800℃、メタンガス流量60sccm)。全てのケースにおいて、炭素SWNTが、それぞれ、9,5nmの直径を有する触媒と鉄−硫酸分解により形成された触媒とに関し、〜4,7及び15重量%(鉄/アルミナ触媒に対する炭素の重量%)の収率で成功裏に合成された。9nmの鉄ナノ粒子を用いることにより製造されたSWNTの多くの透過型電子顕微鏡(TEM)画像の分析は、〜10−15nmの平均直径を有する束状構造を示し、5nmの鉄触媒のケースでは〜7−10nmであった。鉄−硫酸分解触媒は、多くの個別のSWNTと同様の、〜5−10nmの直径を有する束状構造を示した。全てのケースにおいて、0.8から2nmのSWNT直径の分布が観察された。図2には、λ=785nmレーザ励起に関する炭素SWNTのラマンスペクトルが示されている。このように製造された単層カーボンナノチューブは、TEMによって特性が明らかにされる。
【実施例3】
【0059】
≪担持された触媒の磁化挙動≫
Fe:Al=1:14.2のモル比を有する担持された触媒が、実施例1に記載された方法を用いて生成された。図3(a)には、磁化曲線が示されている。このようにして生成された触媒が、200℃又は800℃で15分間加熱することによって、加熱処理を受けた。図4(a)及び図4(b)には、磁化曲線がそれぞれ示されている。磁化曲線は、触媒の磁化挙動が合成後の加熱処理のために用いられた温度によって変化することを示している。
【0060】
実施例1で生成された、Fe:Al2O3=1:15のモル比を有する担持された触媒(図3(b))が、200℃又は800℃で15分間加熱することによって、加熱処理を受けた。図5(a)及び5(b)には、磁化曲線がそれぞれ示されている。磁化曲線は、触媒の磁化挙動が合成後の加熱処理のために用いられた温度によって変化しないことを示している。
【0061】
磁化挙動は、製造されたSWNTの品質に反映される。Fe:Al=1:14.2のモル比を有する担持された触媒の使用は、I:I比5を生じ、Fe:Al=1:14.2のモル比を有する担持された触媒の使用は、I:I比8を生じ、Fe:Mo:Al=1:0.2:16.9のモル比を有する担持された触媒は、I:I比21.5を生じる(図6)。したがって、金属触媒粒子の磁気特性を研究するSQUID磁力計は、触媒の品質を制御するために利用可能である。これらの触媒を用いて生成された場合に、カーボンナノチューブの収率及び品質が高くなる。
【0062】
以上、本発明について、特に好ましい実施形態及び様々な代替案としての実施形態を参照して説明したが、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で、形状及び細部において様々な変更が可能であることが、当業者にとって理解されるであろう。本明細書内で言及された全ての発行された特許及び刊行物が、参照により本明細書に組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、触媒粒子のサイズを算出し、及び/又は、担体物質上の触媒粒子のサイズを決定するための方法及びプロセスを提供する。触媒粒子は、高収率及び高品質の単層カーボンナノチューブを成長させるための方法及びプロセスにおいて利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単壁カーボンナノチューブ(SWNT)を生成するための化学気相成長方法であって、
炭素前駆体ガスを担体上の2nm未満の平均直径を有する触媒と接触させることにより、狭い直径分布を有するSWNTが形成される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記炭素前駆体ガスは、メタンである
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素前駆体ガスは、不活性ガス及び水素をさらに含む
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、水素又はこれらの組み合わせである
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒は、鉄、モリブデン又はこれらの組み合わせである
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒は、1nmから10nmの間の粒径を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒は、1nmの粒径を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒は、3nmの粒径を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒は、5nmの粒径を有する
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記担体は、粉末状酸化物である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記粉末状酸化物は、Al、SiO及びゼオライトからなるグループから選択される
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記粉末状酸化物は、Alである
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒と前記担体とは、1:1から1:50の比率である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記比率は、1:5から1:25である
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記比率は、1:10から1:20である
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111690(P2012−111690A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−286671(P2011−286671)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【分割の表示】特願2007−543215(P2007−543215)の分割
【原出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(504325287)ザ オハイオ ステート ユニバーシティー リサーチ ファウンデーション (24)
【Fターム(参考)】