説明

カーボンナノチューブ高配合樹脂粒状物およびその製造方法

【課題】カーボンナノチューブを高配合で粒状化させ、カーボンナノチューブの飛散性の大幅な低減とともに加工性・ハンドリング性等の作業性・ポリマーマトリックスとの濡れ性・分散性・導電性・機械的物性を著しく向上させたカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂100重量部に対して、100〜1500重量部のカーボンナノチューブを配合し、カーボンナノチューブを前記熱可塑性樹脂でコーティングすることを特徴とするカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ(以下CNTと記す)高配合樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CNTは直径が数nm〜約500nmで、長さが10nm〜数10μm程度でアスペクト比が大きく、チューブ状構造の炭素の結晶である。その種類は多岐にわたり、単層構造を有するシングルウォールカーボンナノチューブ、多層構造を有するマルチウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブの範疇に入る二層のダブルウォールカーボンナノチューブなどがあり、また、その両端が封鎖されているものから、片末端のみが封鎖されているもの、両末端とも開いているものがあり、また、その丸め方の構造にもアームチェアー型等いくつか種類がある。CNTの製造方法もアーク放電型、触媒気相製造法、レーザーアブレーション法やその他の方法があり、それぞれ一長一短がある。
また、CNTは次世代材料として注目を浴びており、帯電防止剤や導電性付与材剤としての使用はもちろん、半導体、燃料電池電極、ディスプレーの陰極線等に用途開発されている。
【0003】
一般に、種々の合成樹脂(以下樹脂と略す)にCNTを配合して、樹脂に電気伝導性や高強度、高弾性、熱伝導性等を付与することが知られている。
ところが、CNTは嵩密度が1〜5g/100ccと非常に低く、多量の空気を巻き込んでいるため飛散性が高い。製造業者においては、飛散による環境汚染に対する取り扱いの困難性、空送時等の貯蔵タンク内でのブリッジの発生、嵩密度の低さゆえ工程内での輸送時間および梱包時の充填時間が長い等安全上、作業上の多くの課題を抱えている。一方、使用する顧客においては、運搬時および樹脂や液体ポリマーマトリックスへの配合・混合・混練時における取り扱いにおいて定量性を確保することは困難である。さらに、CNTのポリマーマトリックスとの濡れ性が悪く、特に樹脂への配合においては、配合の初期段階において非常に馴染みにくいため、両者の混練には長時間を要し合わせて分散性も悪い等の課題がある。
【0004】
CNTと同様に嵩密度の低い粉体としては、カーボンブラックがあり、これを樹脂やエラストマー等の固体もしくは液体エラストマーマトリックスへ高配合する場合、コンパクターに掛けたり、固体マトリックスをパウダー状態にしたりと様々な工夫がなされている。一方、カーボンブラックを始めとする導電性フイラーの製造者においては、従来これらを造粒化し嵩密度を上げ、粒硬度を高めて使用してきた。
【0005】
このような状況から、CNTの造粒化も容易に想像されるものの、一次粒子が球状であるカーボンブラックと比較してCNTは結晶構造が大きく発達しており、表面官能基が少なく、チューブ状かつ繊維状で大きなアスペクト比を持ち、弾力性が高く、嵩密度がカーボンブラックに比較してさらに低いため、造粒化技術には大きな課題があった。
この課題を解決するため、特許文献1と同文献2に示したような高速気流中衝撃法が提案されている。また、特許文献3に示すように、水溶性樹脂の析出によるCNT樹脂組成物の製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開2005−239531号公報
【特許文献2】特開2006−143532号公報
【特許文献3】特開2009−62461号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記従来の技術においては、次の様な課題を有していた。
(1)(特許文献1)又は(特許文献2)に開示の技術においては、高速気流中で粉体を解砕し、さらに複合化する装置が用いられている。この装置の本来の用途は、粉体母粒子表面に異種の粉体微粒子を高速気流衝撃により付着させるというものであり、一種類のCNTのみの造粒化は極めて困難であるだけでなく、もし出来たとしてもその造粒物の粒子径は200μm以下と非常に小さいものであり、ミリメートルオーダーの粒状化は困難であった。
そのため、飛散性にともなう安全性や環境汚染性、ハンドリング性について課題を残している。
(2)さらに、バインダーを用いない通常の造粒物の場合、粉状物を用いる場合より輸送、充填時等での飛散性や環境汚染度さらには、樹脂や液体ポリマーマトリックス等への配合・混合・混練は格段に向上するものの、昨今益々厳しくなってきている、「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応」を満足するには、飛散性一つを取っても十分といえない。また、樹脂等への配合時の初期配合性や分散性も満足いくものではないという課題を有していた。
(3)(特許文献3)に開示の技術においては、析出作業が煩雑であるうえ、CNTの被覆に使用する樹脂が水溶性でなければならず、水溶性でない場合には水溶性を付与する官能基を導入しなければならない等、使用できる樹脂に制限があることに加え、当文献によるCNT樹脂組成物のCNT配合量が高々10%程度にしかならない等の課題があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、官能基の導入など煩雑な作業がなく、親水性・疎水性問わず熱可塑性樹脂をバインダーとしてCNTを被覆(コーティング)し集合体の内部へ浸透させることで、CNTを高配合で粒状化させ、飛散性の大幅な低減とともに加工性・ハンドリング性等の作業性・ポリマーマトリックスとの濡れ性・分散性・導電性・機械的物性を著しく向上させたCNT高配合樹脂組成物を提供する事を目的としている。
また、本発明は、官能基の導入など煩雑な作業がなく、親水性・疎水性問わず熱可塑性樹脂をバインダーとしてCNTを被覆(コーティング)し、更にCNT内部へ樹脂を浸透させることで、CNTを高配合で粒状化させ、飛散性の大幅な低減とともに加工性・ハンドリング性等の作業性・ポリマーマトリクスとの濡れ性・分散性・導電性・機械的物性を著しく向上させたCNT高配合樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のCNT高配合樹脂組成物及びその製造方法は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のCNT高配合樹脂組成物は熱可塑性樹脂100重量部に対して、100〜1500重量部のCNTを配合し、CNTを前記熱可塑性樹脂でコーティングされた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)CNTの表面を樹脂がコーティングし、更にCNTの集合体の内部にも樹脂が浸透し被覆するので、CNTの粉体が粒状化されCNTの飛散度合が極端に低くなり、取扱性を著しく向上させる。
(2)本発明のCNT高配合樹脂組成物はCNT内部が樹脂で満たされ、外表面は樹脂で被覆されており、かつCNT−CNT間での強い凝集のない状態で嵩密度の大きい造粒物となっているので、分散媒体であるポリマーマトリクス(以下基体樹脂と記す)に分散させた場合、著しく優れた濡れ性・分散性を発揮する。
(3)基体樹脂へ配合した場合、高い分散性や濡れ性のため高い導電性の付与や機械物性の向上などの優れた物性を付与することができ、また加工性に優れる。
【0009】
ここで、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、低分子量ポリエチレン(数平均分子量1000〜7000)等種々のものが使用される。
【0010】
CNTは、カーボンブラック、ダイヤモンド、黒鉛やフラーレンなどと違い、直径が数nm〜約500nm、長さが数10nm〜数10μmというアスペクト比の大きなチューブ状の炭素同位体である。
このCNTには、その製造法や後処理などにより様々なものがあるが、大きく分けると、シングルウォールカーボンナノチューブ、ダブルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブなどがある。ここではこれらを総称してカーボンナノチューブとする。ここで、マルチウォールカーボンナノチューブについては、その直径や長さが製法や後処理法により分布をもちうるが、ここでは、その平均値を、そのCNTの直径と長さとして表記する。
【0011】
CNTの製造方法としては、アーク放電法、触媒気相製造法、レーザーアブレーション法やその他の方法がある。これらの製造法によりCNTの最終形状がかわる。特に、一部の製造方法では、CNTが凝集体としてえられる。それらは強いバンドルなどによる凝集と、CNTが複雑に絡み合った状態を形成しており、そのままではCNTとしての特性を発揮することができない。したがって、実用的には、副生成物や不純物を取り除き精製された状態にすること、および,樹脂や溶剤中でCNTの凝集体を「解砕」し繊維としての特性を引き出すことが重要である。そのために、CNTの極めて細い繊維を、0.1Kg/l以下、かつ、CNTの繊維間に空隙が確認される程度に、非常に嵩高い(見かけ比重の低い)状態にすることが重要である。本発明で、使用されうるCNTについては、特に制限はないが、通常、短径が数nm〜約500nm、長さが数10nm〜数10μmのものである。これらに関して、単独使用する場合、複数種を使用する場合、両方についてのその制限はないが、単独使用の場合は、直径が200nm以下、長さが数μm程度のものが好適である。
【0012】
本発明のCNT高配合樹脂組成物中のCNT配合量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜1500重量部、好ましくは200〜1000重量部である。
本発明のCNT高配合樹脂組成物(以下、樹脂組成物と略す)は、例えば樹脂組成物がフィラーとして使用される熱可塑性樹脂と同種の樹脂または異種の樹脂の基体樹脂と混練して用いられる。本発明の樹脂組成物中のCNT配合量が200重量部より少なければ、基体樹脂に混練する際に、多量の樹脂組成物が必要となりマスターバッチとしての有用性に欠ける傾向があり、100重量部よりも少ないとその傾向が著しいので好ましくない。
また、本発明の樹脂組成物を異種の基体樹脂と混練する場合には、異種の基体樹脂に対する本発明の樹脂組成物の混合割合が多くなると、衝撃強度などの樹脂物性が低下することがある。従って、基体樹脂に対する本発明の樹脂組成物の混合割合は少ないことが望ましいが、本発明は、CNTが著しく高配合された樹脂組成物なので本発明の組成物を少量配合するだけでCNTの配合量は可及的に多くすることができる。
一方、本発明のCNT高配合樹脂組成物中のCNT配合量が1000重量部を超えると、他の樹脂と混練するとき、粒状物が粉化し樹脂組成物中のCNTの一部が飛散し、環境面や安全面で好ましくない傾向があり、1500重量部を超えるとこの傾向が著しい。すなわち、CNT高配合樹脂組成物中のCNT配合量が多すぎると、樹脂を被覆(コーテイング)していない造粒物と同じような効果しか発現しない傾向がある。
【0013】
本発明の樹脂組成物と基体樹脂との混練は両者を適当な割合で配合し、130〜270℃に加熱して樹脂を溶融させた状態でミキシングロール、エキストルーダー、バンバリーミキサー等を用いて行われる。
本発明の樹脂組成物を用いることにより、作業現場でのCNTの飛散がなく安全性に優れ、且つ、短い混練時間で基体樹脂に所望量のCNTを含有させることができ作業性に優れる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のCNT高配合樹脂組成物であって、前記CNTの繊維径が1〜200nm、繊維長が1〜100μmである構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下の様な作用が得られる。
(1)CNTへの樹脂による被覆が斑なく、均一に行われ、この結果粒状化により嵩密度が増大し飛散性の改善が著しく、また、基体樹脂への分散性を著しく向上させることができる。
なお、CNTの繊維径が200nm、または繊維長が100μmを超えると、造粒化は可能なものの、CNTによる導電性の付与・機械的物性の向上がなされず、CNT高配合樹脂組成物とした場合に基体樹脂へ混錬等により応用しても性能を向上させることが出来ないので好ましくない。CNTの繊維径が1nm、または繊維長が1μmのものは高収率での製造が不可能で使用できない。
【0015】
請求項3に記載の発明は、CNT高配合樹脂組成物の製造方法であって、
(1)非水溶性の溶剤に熱可塑性樹脂を溶解させて樹脂バインダー溶液を調製する溶解工程と、(2)前記樹脂バインダー溶液中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜1500重量部に相当するCNTを水にへ添加させ、均一に懸濁して懸濁液を得る懸濁工程と、(3)前記溶解工程で得られた前記樹脂バインダー溶液を前記懸濁工程で得られた前記懸濁液に添加して混合液を調製する混合工程と、(4)前記混合液を攪拌することでCNTを水相から樹脂相へ移行させる攪拌工程と、(5)その後前記混合液から水相と樹脂相とを分離除去し、樹脂相を乾燥することでCNT高配合樹脂組成物を得る、分離・乾燥行程と、を備えた構成を有している。
この構成により以下の様な作用が得られる。
(1)熱可塑性樹脂を溶解させて、CNTと水との均一懸濁液に添加・攪拌することで、十分に解きほぐされたCNTがフラッシング作用により、水相から樹脂層へ移行し、このときCNTが十分に解きほぐされた状態で樹脂バインダーによって被覆されながらこの移行が進行していくので、CNTの熱可塑性樹脂による被覆(コーティング)が斑なく均一に得られ易い。
(2)攪拌工程では、攪拌によって樹脂相を整粒する効果が得られるので、CNT高配合樹脂組成物が、CNTの取り扱い上有利となる大きさの粒状物にまで造粒化でき、使用時の飛散性の改善・ハンドリング性、作業性などの取扱性の向上・及び基体樹脂中への成型時における分散性の向上を図ることができ、かつ後の分離・乾燥行程で水と樹脂組成物の分離をごく簡単に行えるので生産性に優れる。
(3)CNT周辺を樹脂で被覆(コーティング)し造粒化しているので、粉体強度が高く飛散し難いCNTが高配合された樹脂組成物が得られる。
【0016】
溶解工程は、熱可塑性樹脂を非水溶性の溶剤に溶解させる工程である。ここで使用する溶媒は請求項4に記載の通り、非水溶性の溶剤の他に、水溶性の溶剤を使用することもできる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化酢酸ビニル、ポリスチレン、低分子量ポリエチレン(数平均分子量1000〜7000)等、種々のものが使用される。
溶剤は、熱可塑性樹脂を溶解し得る非水溶性の種々任意のものを使用できる。溶解の程度を簡易的に調べる方法としては、アドバンテック社製の円形ろ紙#5Cで全ての液がろ過できる程度が目安となり、ろ過残が少しでも存在する場合は溶剤を変更する必要がある。
非水溶性溶剤の例としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、テトロヒドロフラン、ベンゼン、シクロヘキサン等の有機溶剤等がある。
【0017】
懸濁工程では、前記熱可塑性樹脂100重量部に対し、100〜1500重量部、好ましくは200〜1000重量部に相当するCNTを水へ配合し、均一に懸濁する。懸濁液中のCNT濃度は、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。0.5重量%以下ではCNTの基体樹脂への分散が悪くなることに加え、基体樹脂への混錬時、CNTの配合率を上げるのに時間がかかるので生産効率が下がる傾向があり、0.1質量%以下ではその傾向が著しいので好ましくない。5重量%以上では水―CNT懸濁液の粘度が上昇し、CNTの分散を十分に行うことができず大きなCNT凝集塊が出来やすくなり、樹脂被覆が十分に行えないためCNT高配合樹脂組成物として性能が悪くなる傾向があり、10重量%以上ではその傾向が著しいので好ましくない。
CNTの水への分散の程度は、懸濁液をスポイトで硝子板上に取り、ヘラで展色し、未分散塊を目視と指で調べて、ザラザラとした質感・感触がなくなるまで懸濁させる。この処理によりCNTは凝集塊の状態から十分に解きほぐされた状態になる。
懸濁方法は、水等の分散媒に、CNTを機械的攪拌によって行うのが好ましい。また、超音波照射を併用してもよい。
この懸濁行程によって、CNTの凝集が解きほぐされ樹脂被覆が斑なく均一に行われ、CNTが高配合された樹脂組成物になっても、基体樹脂に混錬などにより分散する際、十分にCNTが解きほぐされた状態で分散される。
【0018】
混合行程では、樹脂溶解溶剤を、例えば60cc/分などの添加速度が均一の条件下で行う必要があり、不均一に混合するとCNTへの熱可塑性樹脂の吸着が不均一になって、最終性能に悪影響を及ぼす。
また、滴下はチューブポンプ、ダイアグラムポンプ、ギアポンプ等で行い、CNTと水との懸濁液の温度が50℃以下、好ましくは25℃以下の温度条件で行うのがよい。
【0019】
滴下状況に関して、液滴形状は必ずしも粒状でなくても良い。攪拌速度に応じて細い液柱状で連続した滴下状況であってもよい。
この際、添加液の温度には特に制限はなく、常温付近の温度範囲であればよい。
【0020】
攪拌工程では、懸濁溶液の液温にもよるが30分以内で攪拌を終了させるのが好ましい、30分以上攪拌を続けると、生成された球状の樹脂組成物が破砕されスラリー状になる傾向がある。
CNTと水との均一懸濁液の攪拌中に、樹脂バインダー溶液を液滴状あるいは細い液柱状で添加すると樹脂相と水相の二相が形成される。CNTは初め、主に水相中に存在するが、さらに攪拌を続けると、水相中のCNTは樹脂相中に移行(フラッシング作用)する。このとき溶剤が存在すると、攪拌下でCNTと樹脂とからなる粒状組成物を球状で得ることができるので、粒状組成物の取り扱いが容易となり有利である。CNTを樹脂相に移行させたのち、混合系から水と溶剤を除去することによりCNTと熱可塑性樹脂とからなる粒状組成物が得られる。
【0021】
分離・乾燥行程では、CNT高配合樹脂組成物がCNTの取り扱い上有利となるほどまでに大きな粒子に造粒化成長しているので、分離作業は篩を使用して簡単に行うことができる。乾燥は蒸気乾燥や真空乾燥などの方法で行うことができる。この際の温度としては蒸気乾燥器の場合は200℃以下または真空乾燥は150℃以下が好ましい。これよりも高い場合はCNTを被覆(コーティング)した熱可塑性樹脂が劣化し、最終性能が悪くなる。この乾燥温度は、使用する熱可塑性樹脂によって適宜適切な温度に設定する必要がある。また、乾燥機で乾燥する前に、バット等に造粒物を広げドラフト等で常温、自然乾燥させると後の工程が容易となる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、CNT高配合樹脂組成物の製造方法であって、
(1)水溶性の溶剤に熱可塑性樹脂を溶解させて樹脂バインダー溶液を調製する溶解工程と、(2)前記樹脂バインダー溶液中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜1500重量部に相当するCNTを水へ添加させ、均一に懸濁して懸濁液を得る懸濁工程と、(3)前記溶解工程で得られた前記樹脂バインダー溶液を前記懸濁工程で得られた前記懸濁液に添加して混合液αを調製する混合工程と、(4)前記混合工程で得られた前記混合液αに非水溶性の溶剤を添加して混合液βを調製する添加行程と、(5)前記添加工程で得られた前記混合液βを攪拌することでCNTを水相から樹脂相へ移行させる攪拌工程と、(6)前記攪拌工程で得られた前記混合液βから水相と樹脂相とを分離除去し、樹脂相を乾燥することでCNT高配合樹脂組成物を得る、分離・乾燥行程と、を備える構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)熱可塑性樹脂の溶剤を非水溶性の溶剤に限定することなく、熱可塑性樹脂の溶解に、水溶性の溶剤を用いた場合でもCNT高配合樹脂組成物の製造を可能にする。
【0023】
本発明で使用される溶剤は、熱可塑性樹脂を溶解し得る水溶性の種々任意のものを使用できる。溶解の程度を簡易的に調べる方法としては、アドバンテック社製の円形ろ紙#5Cで全ての液がろ過できる程度が目安となり、ろ過残が少しでも存在する場合は溶剤を変更する必要がある。
また水溶性の溶剤の例としては、アセトン、ニトロメタン、メチルエチルケトン、エチルエーテル、ピリジン等の有機溶剤がある
【0024】
ここで、熱可塑性樹脂を水溶性の溶媒に溶解させる場合は、請求項3に記載の製造方法における混合行程と攪拌工程との間に、非水溶性の溶剤を添加する添加行程が次のように挿入される。
熱可塑性樹脂を溶解する溶剤として、水溶性の溶剤を使用した場合は、この溶剤を、CNTと水との懸濁液の温度が50℃以下、好ましくは25℃以下の条件で、例えば60cc/分などの速度一定条件下でCNT懸濁液中に添加した後、更に非水溶性の有機溶剤を粒状物が形成されるまで、例えば60cc/分などの速度一定条件下で添加することによりCNTを水相から樹脂相に移行させる。滴下はチューブポンプ・ダイアグラムポンプ・ギアポンプ等で行う。
【0025】
滴下状況に関しては、液滴形状は必ずしも粒状でなくても良く、細い液柱状のように連続した滴下状況であってもよい。
この際、添加液の温度には特に制限はなく、蒸発・熱分解・凝固等、反応に障害が発生しない程度の温度範囲であればよい。
【0026】
非水溶性の溶剤としては、SP値(ハンセン溶解度パラメーター)が9.5以下のものを用いるのが好ましい。9.5以上では水との親和性が高くなるので、樹脂相の形成が悪くなる。
【0027】
請求項5に記載の発明は、CNT高配合樹脂組成物の製造方法であって、請求項3に記載の製造方法において、前記非水溶性の溶剤の添加量が、カーボンナノチューブのDBP吸収量(JIS K 6221A法)の0.8〜1.5倍容量添加することを特徴とする構成を有している。
この構成によって、請求項3で得られる作用の他以下の様な作用を得ることができる
(1)請求項3に記載のCNT高配合樹脂組成物の製造方法において、熱可塑性樹脂によるCNTへの樹脂被覆とその組成物の造粒化は、添加した溶剤の量に左右され、CNTのDBP吸収量の0.8倍容量より少ないとCNT内部への溶剤浸透が弱く、樹脂被覆が悪くなる。1.5倍容量より多いとエマルジョン化して、造粒化が困難となってしまう。しかし、CNTのDBP吸収量の0.8〜1.5倍容量の間で添加することによって、CNT周辺を極めて薄い樹脂の層でコーティングし、さらに造粒化することが可能となることがわかった。
【0028】
ここで、DBP吸収量の測定は、カーボンブラックのオイル吸収量として定められている、JIS k 6221A法で求めるのが好ましい。
【0029】
請求項6に記載の発明は、CNT高配合樹脂組成物の製造方法であって、請求項4に記載の製造方法において、前記水溶性の溶剤と前記非水溶性の溶剤の添加量の和が、CNTのDBP吸収量(JIS K 6221A法)の0.8〜1.5倍容量添加することを特徴とする構成を有している。
この構成によって、請求項4で得られる作用のほか以下の様な作用を得ることができる
(1)熱可塑性樹脂の溶解に水溶性溶剤を用いた請求項4に記載のCNT高配合樹脂組成物の製造方法において、熱可塑性樹脂によるCNTへの樹脂被覆とその組成物の造粒化は、添加した水溶性溶剤量と非水溶性溶剤量の和に左右され、CNTのDBP吸収量の0.8倍容量より少ないとCNT内部への溶剤浸透が弱く、樹脂被覆が悪くなる。1.5倍容量より多いとエマルジョン化して、造粒化が困難となってしまう。しかし、CNTのDBP吸収量の0.8〜1.5倍容量の間で添加することによって、CNT周辺を極めて薄い樹脂の層でコーティングし、さらに造粒化することが可能となる。
【0030】
請求項7に記載の発明は、CNT高配合樹脂組成物の製造方法であって、請求項3乃至5いずれか一項に記載の製造方法において、前記攪拌工程の後、整粒工程を有する構成を有している。
この構成により、以下の様な作用が得られる。
(1)整粒工程を有することによって造粒物の形状を均一にそろえ、これによって生成されたCNT高配合樹脂組成物の使用時における飛散性の改善・ハンドリング性、作業性などの取扱性の向上・及び分散性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上の様に、本発明のCNT高配合樹脂組成物によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)粉体状で存在するCNTを単に粒状化し安全性を高めるだけではなくく、CNT粒子の周りを極めて少量の熱可塑性樹脂でコーテイング(マイクロカプセル化)した造粒物とすることにより、CNT自体の飛散度合いが極端に低くなり、取り扱い性が著しく向上する結果、CNT製造業者およびこれを使用する顧客における、取り扱い現場での作業環境が大幅に改善され、さらに、定量供給を要するさまざまな工程で著しい定量精度を確保できる様なCNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
(2)ポリマーマトリックスとの濡れ性が飛躍的に改善され、マトリックスへの濡れが良くなり分散時間が短縮でき、破断を抑えることもできるうえ、樹脂を被覆(コーテイング)していない造粒物や非造粒化物と比較して安定して高い導電性や他の物性を得ることができるし、ポリマーマトリックス中への高配合が可能となる、工業的利用価値が極めて高い、CNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
【0032】
請求項2に記載の発明によれば、
(1)CNTの樹脂被覆を阻害されることがないので、CNT内部まで全体的に均一に樹脂被覆することが可能となり、物性が安定化するので、飛散性・分散性・取扱性・定量供給性に優れたCNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
【0033】
請求項3に記載の発明によれば、
(1)CNTの熱可塑性樹脂によるコーティングが斑なく均一に得られ易いので、物性が安定化し、他のバインダーを使用しないCNT造粒化物や粉体物よりも飛散性・分散性・取扱性が著しく向上するうえ、定量供給を要するさまざまな工程で著しい定量精度を確保できる様なCNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
(2)CNTが十分に解きほぐされた状態で樹脂により被覆され、かつ嵩密度を高く造粒化でき、そのうえCNT−CNT間の強い凝集がないので、従来のCNT樹脂組成物に比べて著しくCNTを高配合でき、かつ基体樹脂への分散性に優れたCNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
(3)懸濁液中のCNTをほとんど失うことなく高収率でコーティングしてCNT高配合熱可塑性樹脂組成物を生成し、かつ被覆に使用する樹脂が従来のCNT樹脂組成物に比べて少なくて済むので生産性に優れたCNT高配合樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【0034】
請求項4の発明によれば、請求項3の効果に加え、
(1)熱可塑性樹脂の溶解に水溶性溶剤も使用出来るので、CNTの被覆に使用する樹脂や製造コストあるいは反応条件等により非水溶性溶剤か水溶性溶剤かどちらか適切な溶剤を選択することのできる、CNT高配合樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【0035】
請求項5の発明によれば、請求項3の効果に加え、
(1)熱可塑性樹脂を溶解する非水溶性の溶剤量の条件を定めることで、CNT周辺をごく薄い樹脂の層で被覆(コーティング)してCNTを高配合させた樹脂組成物を生成し、かつCNTの取り扱い上有利となる大きさの粒状物にまで造粒化されたCNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
【0036】
請求項6の発明によれば、請求項4の効果に加え、
(1)熱可塑性樹脂を溶解する水溶性の溶剤量と、添加工程にて添加する非水溶性の有機溶剤量の和の条件を定めることで、熱可塑性樹脂の溶解に水溶性の溶剤を使用した場合でもCNT周辺をごく薄い樹脂の層でコーティングしてCNTを高配合させた樹脂組成物を生成し、かつCNTの取り扱い上有利となる大きさの粒状物にまで造粒化されたCNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
【0037】
請求項7の発明によれば、請求項3乃至5のうちいずれか一項の効果に加え、
(1)生成途中のCNT高配合樹脂組成物を過度の攪拌で破砕することなく、整粒作用によって造粒物の状態が均一に、かつCNTの取り扱い上有利となる大きさの粒状物にまで造粒化されたCNT高配合樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
CNTとして、触媒気相製造法により製造された表1に示す2種類を準備した。尚、マルチウォールカーボンナノチューブについては、その直径や長さが製法や後処理法により分布をもちうるが、ここでは、その平均値を、そのCNTの直径と長さとして表記する
(実施例1)
バインダー用の熱可塑性樹脂として、分子量3000、融点109℃の低分子量ポリエチレンであるハイワックス320P(三井化学社製)を用いた。非水溶性溶剤として、キシレンを用いた。基体樹脂として用いた熱可塑性樹脂を表2に示した。
まず、80〜90℃に加熱したキシレン(SP値8.8)に上記の樹脂を溶解し、3重量%のポリエチレンを含む樹脂バインダー溶液を作成した。この液は、円形濾紙#5Cで濾過した結果、濾過残物は皆無であった。
次に、表1に示したAのCNT50gと純水4950gを10Lのステンレス製丸型容器に入れホモジナイザー型撹拌機を用い6000rpmで30分分散させた。分散液を数滴スポイトで硝子板上に取りヘラで展色し、未分散塊を目視と指で調べた結果ザラザラした未分散塊は皆無であった。
次いで、撹拌機の羽根をパドル翼に変更し、1000rpmで撹拌しながら、ポリエチレンを溶解した上記の樹脂バインダー溶液300gを均一速度で5分間滴下した。全て滴下後撹拌機の回転を600rpmに落とし約5分間整粒し0.8〜1.3mm径の粒状物を得た。得られた粒状物を60mesh篩で水とCNTを分離後、ドラフト内で常温にて約20時間自然乾燥した後、真空乾燥機を用い90〜110℃で加熱し溶媒と残存する水が、150℃1時間における加熱減量として0.5%以下になるまで乾燥しCNT高配合樹脂組成物を得た。次いで、この樹脂組成物を表2に示す合成樹脂(基体樹脂)に配合して混練した。
CNT高配合樹脂組成物と基体樹脂との混練には、直径3インチの前ロールおよび後ロールの二本のロール(ロール間隙1.5mm)を有するミキシングロールを用いた。まず、ミキシングロールの前ロールおよび後ロールをそれぞれ15rpmおよび17rpm回転させた。次いで、前ロールに幅10cmで50gの基体樹脂を巻きつけ、両ロール間に本発明のCNT高配合樹脂組成物を少量ずつ投入しながら、両ロールの回転により130〜160℃(ABS樹脂は160℃、PVC樹脂は130℃)で基体樹脂と樹脂組成物の混練を行った。所定量の樹脂組成物を両ロール間に投入するのに要する時間を配合所要時間として表3に示す。混練後、得られた混練物を、150〜180℃、15〜20tのプレス機により押圧し、それぞれCNT含有合成樹脂(電導性樹脂)の試験片(100×100×2mm)を作成し体積固有抵抗を測定した。結果は、表4に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
(実施例2)
CNTとして表1に示したBを用いた以外は実施例1と全く同様に行った(表3参照)が、CNTのDBP吸収量が265cc/100gとAよりも小さいためキシレンの添加量は147gとした。
【0044】
(実施例3)
ポリ塩化ビニルP454(ヴィテック社製)を常温のメチルエチルケトン(SP値9.3.100ccの水に29g可溶)に溶解し、8重量%のポリ塩化ビニルを含むメチルエチルケトン溶液を作成した。この溶液は、円形濾紙#5Cでろ過した結果、ろ過残物は皆無であった。
次に、表1に示したAのCNTと水との分散液の作成方法ならびにこの分散液にポリ塩化ビニルを含むメチルエチルケトンを滴下し粒状物を作るまでの方法と条件は実施例1と同様に行った。しかしながら、メチルエチルケトン溶液を156g滴下しても粒状物は得られなかったので、キシレンを140g追加滴下し粒状物を得た。この樹脂組成物の乾燥工程や表2に示す合成樹脂(基体樹脂)に配合して混練する工程、成型工程等も実施例1と同様である。
【0045】
(実施例4、5)
実施例1の樹脂組成物中のCNT配合量を実施例4は200重量部、実施例5は1500重量部としたCNT高配合樹脂組成物を作成した。詳細の条件は、表3に示した通りである。
【0046】
(比較例1乃至3)
実施例1と2、3の樹脂組成物を用いず、CNT粉末を直接基体樹脂配合した場合の結果である。
【0047】
(比較例4、5)
実施例1 の樹脂を溶解した溶剤を表3に示したように、DBP吸収量の1.69倍と0.7倍添加した。比較例4は泥状の懸濁液になり粒状とならなかった。また、比較例5はCNTが水分散液から溶剤側に移行せず粒状とならなかった。
【0048】
(比較例6)
表3に示した条件で実施した。この際の、DBP吸収量当りの樹脂を溶解した溶剤添加量は、1.84であり溶剤滴下後の撹拌時間は3時間とした。結果的には、比較例4よりも泥状の状態が一段進んでおり、泥状というよりスラリー状態であった。
【0049】
〈試験例1(体積固有抵抗の測定)〉
体積固有抵抗は、試験片の抵抗が106Ω以上の場合は、ハイレスターUP(HT−450)(三菱化学製)を、また106Ω以下の場合はロレスターGP(T610)(三菱化学製)を用いて25℃、湿度60%の雰囲気で測定し、これより下記式に従って算出した。
体積固有抵抗(Ω・cm)=試験片の抵抗×RCF×t(cm)
RCF:抵抗率補正係数
t :試験片の厚み(cm)
得られた樹脂試験片の体積固有抵抗を表4に示す。
また、比較のため、比較例1〜3についても同様の方法で導電性を測定した。これらの結果を同じく表4に示す。
【0050】
〈試験例2(飛散率の測定)〉
実施例1〜5および比較例1〜3で実施の混煉作業時に飛散したCNTの飛散率(D)を以下の数1により求めた。結果を表4に記した。
(数1)
D=((R+C)−K)/(R+C)×100
ここで、Dは飛散量(%)、Rは基体樹脂の重量(g)、Cは本発明樹脂組成物又はCNT配合重量(g)、KはCNT配合後の樹脂全重量(g)である。
【0051】
〈試験例3(アイゾット衝撃強度の試験)〉
実施例1と比較例1については、衝撃強度測定装置ユニバーサルインパクトテスター(東洋精機株式会社製)を用い、JIS K6871に従って、アイゾット衝撃強度を測定した。結果は表4に示した。
【0052】
試験結果表4から実施例1と比較例1では、本発明のCNT高配合樹脂組成物はポリマーマトリクスとの濡れ性・分散性が著しく高いので、樹脂バインダーを用いなかったCNTと同じCNT配合濃度でも導電性が高く、アイゾット衝撃強度も優れている。
また、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3の比較で、本発明のCNT高配合樹脂組成物は、ポリマーマトリクスへの濡れ性に優れ、飛散性が著しく低く、さらに取扱性に優れているので、樹脂バインダーを用いなかったCNTよりも配合所要時間も配合時の飛散率も大幅に低減できていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
CNTの内部や外表面を熱可塑性樹脂で被覆(コーティング)することにより、CNTのハンドリング性が著しく向上し、基体樹脂との密着性が著しく向上し機械的物性などが良くなり、さらに混錬時のCNTの定量供給性が著しく向上するので、コンパウンドのロット内の品質バラツキが著しく安定し、また飛散性を大幅に低減するのでCNTのロスがなくなり、CNTを理論上の配合率まで確実に配合できるのでコンパウンドの物性が向上し、かつ人体に対する安全性も向上すると共に、粒状物の機械的強度が大きくハンドリング性・作業性などの取扱性に優れ、CNTのポリマーマトリックスとの濡れ性や分散性向上による、マトリックスへの分散時間の短縮と、ポリマーマトッリクスに配合した際に高い導電性や機械物性などの物性に優れたCNT高配合樹脂組成物の提供と、飛散させることなくCNTを定量でポリマーマトリックス中に供給できるとともに、ポリマーマトリックスとの濡れ性や分散性に優れ、ポリマーマトリックスの電気的・機械的物性を著しく向上させるCNT高配合樹脂組成物を低原価で量産できるCNT高配合樹脂組成物の製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂100重量部に対して、100〜1500重量部のカーボンナノチューブを配合し、カーボンナノチューブを前記熱可塑性樹脂でコーティングすることを特徴とするカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの繊維径が1〜200nm、繊維長が1〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載のCNT高配合樹脂組成物。
【請求項3】
(1)非水溶性の溶剤に熱可塑性樹脂を溶解させて樹脂バインダー溶液を調製する溶解工程と、
(2)前記樹脂バインダー溶液中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜1500重量部に相当するカーボンナノチューブを水へ添加させ、均一に懸濁して懸濁液を得る懸濁工程と、
(3)前記溶解工程で得られた前記樹脂バインダー溶液を前記懸濁工程で得られた前記懸濁液に添加して混合液を調製する混合工程と、
(4)前記混合工程で得られた前記混合液を攪拌することでカーボンナノチューブを水相から樹脂相へ移行させる攪拌工程と、
(5)前記攪拌工程で得られた前記混合液から水相と樹脂相とを分離除去し、樹脂相を乾燥することでカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物を得る、分離・乾燥行程と、
を備えたことを特徴とするカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
(1)水溶性の溶剤に熱可塑性樹脂を溶解させて樹脂バインダー溶液を調製する溶解工程と、
(2)前記樹脂バインダー溶液中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対して100〜1500重量部に相当するカーボンナノチューブを水へ添加させ、均一に懸濁して懸濁液を得る懸濁工程と、
(3)前記溶解工程で得られた前記樹脂バインダー溶液を前記懸濁工程で得られた前記懸濁液に添加して混合液αを調製する混合工程と、
(4)前記混合固定で得られた前記混合液αに非水溶性の溶剤を添加して混合液βを調製する添加行程と、
(5)前記添加工程で得られた前記混合液βを攪拌することでカーボンナノチューブを水相から樹脂相へ移行させる攪拌工程と、
(6)前記攪拌工程で得られた前記混合液βから水相と樹脂相とを分離除去し、樹脂相を乾燥することでカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物を得る、分離・乾燥行程と、
を備えたことを特徴とするカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記非水溶性の溶剤の添加量が、カーボンナノチューブのDBP吸収量(JIS K 6221A法)の0.8〜1.5倍容量添加することを特徴とする請求項3に記載のカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記水溶性の溶剤と前記非水溶性の溶剤の添加量の和が、カーボンナノチューブのDBP吸収量(JIS K 6221A法)の0.8〜1.5倍容量添加することを特徴とする請求項4に記載のカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記攪拌工程の後、整粒工程を有することを特徴とする請求項3乃至5のうちいずれか一項に記載のカーボンナノチューブ高配合樹脂組成物の製造方法。



【公開番号】特開2011−1410(P2011−1410A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143760(P2009−143760)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(509170279)株式会社ナノストラクチャー研究所 (3)
【Fターム(参考)】