説明

カーボンブラックおよびこれを含むポリマー

ABSコンパウンド等の種々のポリマーコンパウンド中で有用なカーボンブラック、さらに該カーボンブラックおよびポリマーコンパウンドを製造する方法が記載される。該カーボンブラックは、望ましい黒色度および衝撃強さ、さらにポリマー中での良好な分散を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なカーボンブラックに関し、さらに該カーボンブラックを含むポリマー、およびポリマー性能等のような特性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)成形用途で見られるもの等の多くのポリマーコンパウンド中に使用されている。カーボンブラック充填されたABSおよびABSアロイ(ABSと他のポリマーとのブレンド物)等のカーボンブラック充填ポリマーコンパウンドは、色味、機械特性および表面外観のバランスが優先される多くの高性能ポリマー用途で使用されている。該ポリマー中に使用されるカーボンブラックの種類および量はコンパウンドの特性において種々の効果を奏することができる。例えば、カーボンブラックの充填量を増大させることにより色味を改善(例えば、コンパウンドが高い黒色度を有する)できるが、機械特性および/または表面外観はより高い充填量では低下する場合がある。ポリマー工業においては、現状の従来の充填量よりも低い充填量でではあるが、ポリマー中にコンパウンドされる際に同等またはより良好な黒色度、青色、衝撃強さ、および/または表面外観(平滑性)を実現可能なカーボンブラックを有することへの要望がある。より低い充填量での同等の色味の実現としては、より高い表面積のカーボンブラックの使用を挙げることができる。しかし、カーボンブラックの表面積を増大させることは、典型的にはカーボンブラックの分散が困難になる原因となる。さらに、カーボンブラックの分散が悪いことは機械特性および/または表面外観の損失をもたらす。よって、ABS等のポリマー中に好ましく迅速に分散して種々の機械特性(耐衝撃性等)および表面外観の許容できるレベルに達することができる高表面積カーボンブラックを開発することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の特徴は、より低い充填量でポリマーコンパウンド中において同等の色味を好ましく与え、さらに機械特性および表面外観を維持するための許容できるレベルまで分散可能なカーボンブラックを提供することにある。
【0004】
本発明のさらなる特徴は、ABS等のポリマー中にコンパウンドされる際に黒色度(jetness)、青色、衝撃強さ、および表面外観等の特性の許容できるバランスを与えるカーボンブラックを提供することにある。
【0005】
本発明のさらなる特徴および利点は、以下に続く詳細な説明の部分に記載され、ある部分は該記載から明らかとなり、または本発明の実施により理解できよう。本発明の目的および他の利点は、該記載および特許請求の範囲において具体的に指摘される要素および組み合わせによって理解および到達されよう。
【0006】
これらのおよび他の利点を実現するために、そしてここで具体化されかつ広範に記載される本発明の目的に関連し、本発明は、
(a)ヨウ素数の約150から約600mg/g、
(b)DBP吸収量の約40から約90cc/100g、および
(c)窒素表面積/統計的厚さ表面積(N2SA/STSA)の約1.25から約1.70、
を有することを特徴とするカーボンブラックに関し、かつ該カーボンブラックは、さらに以下の特性、
(d)Terlon L*によって測定される黒色度が1.7以下、および/または
(e)水拡張圧が23.0J/m2以下、
の一方または両方を有する。
【0007】
本発明はさらに、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン中に、コンパウンド材の全質量を基にした充填量1.5wt%以下でコンパウンドされたときに、得られるコンパウンド材がコンパウンド黒色度(L*)4.6以下を有し、かつ以下の特徴、
(a)コンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さが13,600J/m2以上、および/または
(b)プレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級が4.0以下、
の一方または両方を有するカーボンブラックに関する。
【0008】
また本発明は、1種以上の本発明のカーボンブラックを含むABSコンパウンドに関する。
【0009】
さらに本発明は、1種以上の本発明のカーボンブラックを含むポリマーに関する。
【0010】
さらに本発明は、本発明の1種以上のカーボンブラックを含むポリマーマスターバッチまたはポリマー濃厚物に関する。
【0011】
さらに本発明は、本発明のカーボンブラックを製造する方法および本発明のポリマーコンパウンドを製造する方法に関する。
【0012】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両者は例示および説明に過ぎず、クレームされる本発明のさらなる説明を与えることを意図していることを理解すべきである。
【0013】
本願に組み入れられかつ本願の一部をなす添付の図面は、本発明のある態様を示し、かつ詳細な説明とともに本発明の理念を説明する役割を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、新規なカーボンブラックおよび該カーボンブラックを製造するための方法に関する。本発明はまた、これらのカーボンブラックの、これに限定されないがアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)等の種々のポリマー中での使用に関する。
【0015】
カーボンブラックに関し、本発明のカーボンブラックは、カーボンブラックのABS成形用途のようなポリマー用途での使用等の種々の用途で有利となる、望ましいモルホロジーおよび界面特性を有する。
【0016】
より詳細には、少なくとも1つの態様において、本発明のカーボンブラックは、好ましくは、以下の3つの特徴の1つ以上を有し、好ましくは以下の3つの特徴のすべてを有する。
【0017】
(a)ヨウ素数が約150から約600mg/g。他の範囲としては、ヨウ素数の約265から約600mg/g、約350mg/gから約600mg/g、または約400mg/gから約600mg/gを挙げることができる。
【0018】
(b)DBP吸収量が約40から約90cc/100g。他の範囲としては、約50から約90cc/100g、約60から約90cc/100g、または約70から約90cc/100gを挙げることができる。
【0019】
(c)窒素表面積/統計的厚さ表面積の比が約1.25から約1.70。他の範囲としては、約1.30から約1.7または約1.40から約1.70を挙げることができる。
【0020】
さらに、少なくとも1つの態様において、本発明のカーボンブラックは以下のさらなる特性の1つ以上を有する。
【0021】
(d)Terlon L*により測定される黒色度値が1.7以下。他の範囲としては、約0.4から約1.7、または約0.4から約1.1を挙げることができる。
【0022】
(e)水拡張圧値が23.0mJ/m2以下。他の範囲としては、約12.0から約23.0mJ/m2、または約12.0から約21.5mJ/m2が挙げられる。
【0023】
ヨウ素数に関し、この数はASTM D1510に従って測定される。DBP吸収量に関し、この特性はASTM D2414に従って測定される。窒素表面積および統計的厚さ表面積に関し、これらの測定は、ASTM D6556に従って行った。
【0024】
Terlon L*によって測定される黒色度に関し、この手順はCIELABカラースケールを用いる。L*は、油性ペーストの製造後のカーボンブラックの黒色度の指標であり、値が低いほど黒色度が高い。絶対L*値が用いられる。黒色度の測定において、カーボンブラックは125℃で3時間乾燥した後、ミキサー内で45秒間調整した。次いで、2.0gのTerlon #1オイルをHoover Mullerの下板に添加し、ここに100mgのカーボンブラックをスパチュラでゆっくり添加した。下板の中央に材料を収集した後、上板を所定位置に置き、Hoover Muller板を50回転回転させてオイルとカーボンブラックとを混合した。次いで該板を開け、材料の収集および50回転の回転のプロセスをさらに3回繰り返した。次いで、ペーストの全量をガラス板上にのばした。該板上の異なる4箇所で、VSIを備えたHunter Labscan XEを用い、以下の条件を用いて1976 CIELAB L*値を測定した。モード=0/45、ポートサイズ=1.2インチ、エリアビュー=1インチ、UVフィルター=アウト、光源=視野10°のD65である。記録される値は、4つの絶対L*値の中央値である。同時に、1976 CIELAB b*値(青色)もHunter Labscanにより類似の方法で測定および記録した。
【0025】
水拡張圧は、カーボンブラック表面と水蒸気との間の相互作用エネルギーの指標である。該拡張圧は、制御された環境からサンプルが水を吸着することによる該サンプルの重量増加を観察することによって測定される。試験では、サンプル周辺の環境の相対湿度(RH)を0%(純窒素)から〜100%(水飽和窒素)に増大させる。サンプルおよび環境が常に平衡状態にある場合には、該サンプルの水拡張圧(πe)は、
【0026】
【数1】

【0027】
(但し、Rは気体定数、Tは温度、Aはサンプルの比表面積、Γはサンプル上に吸着された水の量(モル/gmに変換されたもの)、Pは環境中の水の分圧、およびP0は環境中の飽和蒸気圧である)のように定義される。実際には、表面上の水の平衡吸着は、1または(好ましくは)幾つかの離れた分圧で測定され、積分値は、カーブの下の面積によって見積もられる。または、界面特性または表面エネルギーの測定を、例えば、表面積で除することなく、または水拡張圧を表す他の界面特性または表面エネルギーを加えることによって、または少数、場合によってはわずか1であっても、のデータポイントで積分値を近似することによって、または他のガスを用いて、規定できる。
【0028】
水拡張圧を測定するための手順は、”Dynamic Vapor Sorption Using Water, Standard Operating Procedure”rev.02/08/05(参照によりその全部がここに組み入れられる)に説明され、ここに要約される。分析に先立ち、分析される100mgのカーボンブラックを、オーブン内で125℃で30分間乾燥した。表面測定装置DVS1機器(SMSインスツルメンツ,モナークビーチ,カリフォルニア,により提供)内のインキュベータを25℃で2時間確実に安定にした後、サンプルおよび対照の両チャンバー内にサンプルカップを装填した。10分間目標RHを0%にセットしてカップを乾燥させ、安定な質量ベースラインを構築した。静電気を放電させ、そして風袋を差し引いた後、およそ8mgのカーボンブラックをサンプルチャンバー内のカップに添加した。サンプルチャンバーを密閉した後、サンプルが0%RHで平衡状態になるようにした。平衡後、サンプルの初期質量を記録した。次いで、窒素雰囲気の相対湿度をおよそ5,10,20,30,40,50,60,70,78,87,および92%RHのレベルまで、各RHレベルで系が20分間平衡状態になるようにしながら連続的に上昇させた。各湿度レベルで吸着した水の質量を記録し、ここから水拡張圧を算出した(上記参照)。測定は2つの別個のサンプルで2度行って平均値を記録した。
【0029】
本発明の他の態様において、本発明は、以下の特定の手順に従ってABS中にコンパウンドされたときに所定の特性を実現することが可能なカーボンブラックに関する。より詳細には、本発明のある態様において、該カーボンブラックは、コンパウンド材の全質量を基にしたカーボンブラック充填量1.5wt%以下(例えば、カーボンブラック充填量0.1wt%から1.5wt%)でABS中にコンパウンドされたときに、コンパウンドL*として測定される(コンパウンド材全体における)黒色度の4.6以下(コンパウンド材に対する他の黒色度値は、例えば、3.0から4.6または3.0から4.4であることができる)を実現し、かつ該カーボンブラックによってコンパウンド材が以下の特性、
(a)コンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さが13,600J/m2以上(他の範囲としては、約13,600J/m2から約18,000J/m2,約14,000から約17,000J/m2が挙げられる)、および/または
(b)プレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級が4.0以下(他の範囲としては、例えば、約1.0から約4.0または約1.0から約3.0が挙げられる)
の一方または両方を有する。
【0030】
この態様におけるカーボンブラックは、これらの特性を、1.5wt%以下の範囲である少なくとも1つのカーボンブラック充填量レベルに対して有する。
【0031】
ABS中にコンパウンドされる際にカーボンブラックがABS中で発現するこれらのパラメータに関しては、以下の試験手順が用いられる。
【0032】
ABSコンパウンドは、3ステップコンパウンド手順(時に「3ステップABSコンパウンド手順」と称される)で製造した。まず、30%SANマスターバッチを調製し、次いでこれを、最終的な射出成形ステップで追加のABSにより0.50%から1.50%に低下させる前に、ABSで5%に希釈した。
【0033】
マスターバッチコンパウンド:SANマスターバッチは、カーボンブラック(CB)、Tyril 124 SAN(密度=1080kg/m3,230℃/3.8kg MFI=22g/10分),およびステアリン酸亜鉛(ZnSt)を、以下の質量比率:30.0% CB,69.5% SAN,および0.5% ZnStで、3成分の全質量を1413gとして混合することにより調製した。該成分は、バンバリー内部ミキサー(1570ml)内で、以下の設定:ロータースピード=設定2,動圧=3kg/cm2,初期温度=70℃,ポストフラックス混合時間(Post Flux Mixing Time)=90秒、および供給係数(Feeding Factor)=75%、で混合した。
【0034】
5%ABSコンパウンド:まずSANマスターバッチをすりつぶして粉塵および小さい粒子を除去した。次いで、250gのSANマスターバッチを1250gのCycolac GPM5500 ABS(密度=1050kg/m3,220℃/10kg MFI=24g/10分,23℃切り欠きアイゾッド衝撃(ISO 180/1A)=18000J/m2)と混合して、5%ABSコンパウンドを製造した。この手順は、分配混合ヘッドを備えるBetol BK32単軸押出機(キャビティートランスファミキサー(CTM))で行い、その分散能力を改善した。押出機は、フィーダーからダイまで以下の温度設定:ゾーン1=180℃,ゾーン2=185℃,ゾーン3=190℃,ゾーン4=195℃,CTM=210℃,ダイ=200℃とした。スクリュー速度は80rpmとし、コンパウンド中ワンパスを用いた。
【0035】
0.50−1.50%ABSコンパウンド:5%ABSコンパウンドを、Battenfeld BA500/200CD射出成形機内でこれらの最終充填量まで希釈した。用いた材料の全質量は600gであり、比率を5%ABSコンパウンドとし、かつ正確な最終充填量を与えるように選択した純粋なCycoloac GPM5500 ABSを用いた。
【0036】
射出前に、ABSコンパウンドおよびABSレジンを17時間80℃で減圧下にて乾燥させた。各サンプルの間には、500gの純ABSを射出して設備を洗浄した。パーツが受けるべき試験による正確な射出成形パラメータは(以下参照):
色味(L*)プラーク:90x55x2mmのプラークを、射出成形機上の以下の温度設定を用いて色味分析のために準備した:ノズル=225℃,ゾーン1=235℃,ゾーン2=250℃,ゾーン3=250℃,成形=60℃。射出速度は20%であった。
【0037】
アイゾッド衝撃棒:63.5x12.7x6.4mmの棒(ISO 180 タイプ3)を、アイゾッド衝撃試験のために、射出成形機上の以下の温度設定を用いて準備した:ノズル=225℃,ゾーン1=235℃,ゾーン2=250℃,ゾーン3=250℃,成形=25℃。射出速度は60%であった。
【0038】
コンパウンドに対する黒色度に関し、コンパウンドL*は絶対値である。L*はコンパウンドの黒色度の指標であり、値が低いほどより黒色である。コンパウンドL*の測定のために、上記の射出成形により所望の充填量の6つの90x55x2mm色味プラークを準備した。すべてのプラークが表面に均一な色味を確実に有するようにこれらを検査し、斑点または縞がないか点検した。これらの基準に合致しなかったプラークは廃棄した。次いで、各プラークにつき、一度に、DATACOLOR SF600分光光度色彩計で以下の条件を用いて1976 CIELAB L*値を試験した:キャリブレーションモード=リフレクタンス,反射鏡扉=閉鎖,可視化=LAV(30mm),UV=含む,条件=% R LAV SC E UV inc.,光源=視野10°のD65。記録される値は6つのプラークの平均でかつ絶対L*値であり、サンプルと対照との間の差ではない。同時に、コンパウンドの1976 CIELAB b*値(青色)を、Datacolor機器によって類似の方法で測定および記録した。
【0039】
コンパウンド材の切り欠きアイゾッド衝撃強さ測定に関し、試験は一般的にはISO 180−1982基準に基づいて行ったが、試験棒の射出成形手順は相違した。試験方法を以下に記載する。
【0040】
所望の充填量の10本の63.5x12.7x6.4mmの棒(ISO 180 タイプ3)を上記の射出成形によって準備した。次いで、切り欠き装置(CEAST 6530)で各々の棒に単一の切り欠き(ISO 180 タイプA)をカットした。切り欠きを衝撃方向に対向させてサンプルを装填し、5.5−J 振子型ハンマー(CEAST 6545/000)で試験した。棒が破断点に沿って気泡または穴を示した場合にはこれを廃棄した。条件を満たすサンプルの測定された衝撃強さを記録し、報告値は10本の棒の平均である。非切り欠きアイゾッド衝撃強さは、試験棒内に切り欠きをカットしないものの以下の同じ手順で測定できる。
【0041】
コンパウンド材のプレスアウト試験における分散等級を以下に説明する。該分散等級はコンパウンド中のカーボンブラックの分散の半定量的な指標であり、値が低いほど分散が良好である。
【0042】
3つの異なる色のプラーク(上記した作製)から2つの0.3mgの「ボタン」を切り取り、6つのボタンを得た。各ボタンを清浄な顕微鏡スライド上に置き、他のスライドでカバーした。5mmのボタン径を得るのに十分な圧力でアセンブリを210℃で3分間プレスアウトした。各ボタンを、光学顕微鏡内で200Xおよび100Xの倍率で観察した。次いで、各ボタンに等級1−5を割り当て、1は良好な分散に対応し、5は悪い分散に対応する。分散等級の割り当てにおいて、良好な分散は、数個の黒点が視認されたことを意味する一方、悪い分散は多数の黒点またはより大きい凝集体が視認されたことを意味する。より具体的には、分散等級は、100Xの倍率下で651μmx487μmの領域内に1μmよりも大きい視認される粒子の数をカウントすることによって割り当てられる。粒子の数により分散等級が評価され:1=0−10粒子,2=11−30粒子,3=31−60粒子,4=61−150粒子,5=150超の粒子、である。各サンプルの分散等級は6つのボタンの平均である。図1は分散等級が1から5であるコンパウンドの例を示す写真である。
【0043】
カーボンブラックの製造に関し、該カーボンブラックは以下のように製造することができる。本発明のカーボンブラックは、参照によりその全部がここに組み入れられる米国特許番号6,156,837および5,877,250に記載されるのと同様に管型ファーネス反応器内で製造することができる。該特許の図1に示される該反応器は、(a)初期燃焼ゾーン、(b)第2燃焼ゾーン、(c)反応ゾーン、および(d)クエンチングゾーンを有する。
【0044】
本発明においては、米国特許番号6,156,837および5,877,250に示されるような反応を、ここに記載されるように調整して用いる。初期燃焼ゾーンにおいて、燃料および酸化剤を混合および反応させて、高温燃焼ガス流を形成する。高温燃焼ガスを生成するために好適な燃料としては、天然ガス、水素、一酸化炭素、メタン、アセチレン、または液体炭化水素原料等の、任意の容易に燃焼可能な流体が挙げられる。酸化剤は、予熱された空気または予熱された酸素に富む空気のいずれかで、酸素(体積)含有量が21から30%の間で温度が300から750℃の間のものであることができる。好ましくは、酸化剤の酸素含有量は21から25%の間であり、温度は450から750℃の間である。燃料が天然ガスである場合、この初期ゾーンにおける酸化剤の燃料に対する比は、ストイキオメトリー状態での燃焼に必要な酸化剤の量の1から4倍の間、そして好ましくは1から2倍の間である。
【0045】
このゾーンに第2燃焼ゾーンが続き、ここで該高温燃焼ガスがアルカリ塩と易揮発性の液体炭化水素原料との混合物に接触する。好適な液体原料としては、不飽和炭化水素、飽和炭化水素、オレフィン、芳香族化合物、ならびに、ケロシン、ナフタレン、テルペン、エチレンタール、および芳香族環状原料等の他の炭化水素、さらに上記のすべての混合物が挙げられる。多くの場合、原料は、高温初期燃焼ガスと容易に混合される複数の流れ中に射出され、これにより、カーボンブラック生成原料が分解してカーボンブラックに変化する。本発明の方法において、酸化剤の両燃料に対する全体比(第1ゾーンにおける該比を含む)は、ストイキオメトリー状態での燃焼のために必要な酸化剤の量の0.15から0.50倍の間である。好ましくは、該全体比は0.25から0.40の間である。原料中のアルカリ塩の濃度は、0.03から0.15質量%の範囲である。
【0046】
反応の第3ゾーンにおいては、燃焼ガスとカーボンブラックとの混合物が、反応器の第4ゾーンに到達するまで下流に流れることによって反応を続け、該第4ゾーンでは、反応を停止させるためにクエンチング流体が導入される。好ましいクエンチング流体としては、水、水と蒸気との混合物、または水と空気との混合物が挙げられる。クエンチの理想的な位置(およびこれによる反応の滞留時間)は、ガスの流速およびファーネスの径に左右される。一般的には、反応の滞留時間は、10から200ms、そして好ましくは60から150ms(ミリ秒)の間であるのが良い。
【0047】
クエンチング流体の添加後、該混合物は、ベンチュリ冷却器または熱交換器等の任意の従来の冷却装置を通過し、この時点で、沈降分離装置、遠心分離器、またはバグフィルター等の従来の手段によってカーボンブラックがガス流から分離される。所望により、任意の湿式または乾式の手段でカーボンブラックをペレット化することができる。
【0048】
本発明のカーボンブラックは、上記の反応パラメータを変えることによって製造し、所望のモルホロジー、界面特性および特有の黒色度を実現することができる。酸化剤の燃料に対するストイキオメトリー比が増大するとヨウ素数が増大し、一方、アルカリ塩の量が増大するとDBP吸収量が低減する。既知のモルホロジーで、界面特性は、酸化剤流の酸素濃縮および(クエンチ位置を動かすことによって)反応の滞留時間を操ることによって制御できる。例えば、酸化剤流の酸素濃縮を増大させると、モルホロジーおよび/または界面特性が変化してカーボンブラックがより高いTerlon L*値を有するようになる。滞留時間を増大させると、N2SA/STSA比が増大し、かつ水拡張圧が増大する。
【0049】
本発明のポリマー組成物に使用されるカーボンブラックは、任意に、バインダーおよび/または界面活性剤等の種々の処理剤でさらに処理できる。参照によりその全部がここに組み入れられる米国特許番号5,725,650;5,200,164;5,872,177;5,871,706;および5,747,559に記載される処理剤は、本発明のカーボンブラックの処理に使用できる。界面活性剤および/またはバインダー等の他の好ましい処理剤としては、これに限定されないが、ポリエチレングリコール;プロピレンオキサイドおよび/またはエチレンオキサイド、リグノ硫酸ナトリウム等のアルキレンオキサイド;エチル−ビニルアセテート等のアセテート;ソルビタンモノオレエートおよびエチレンオキサイド;エチレン/スチレン/ブチルアクリレート/メチルメタクリレートバインダー;ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体;等を使用できる。このようなバインダーは、ユニオンカーバイド、ダウ、ICI、ユニオンパシフィック、ワッカー/エアプロダクツ、インターポリマーコーポレーション、およびB.F.グッドリッチのような製造者から市販により入手可能である。これらのバインダーは、好ましくは商標名:Vinnapas LL462,Vinnapas LL870,Vinnapas EAF650,Tween 80,Syntran 1930,Hycar 1561,Hycar 1562,Hycar 1571,Hycar 1572,PEG 1000,PEG 3350,PEG 8000,PEG 20000,PEG 35000,Synperonic PE/F38,Synperonic PE/F108,Synperonic PE/F127,およびLignosite−458で販売される。一般的には、本発明のカーボンブラックとともに使用される処理剤の量は、上記特許に列挙される量であることができ、例えば、処理されたカーボンブラックの約0.1質量%から約50質量%の量であることができるが、所望の特性および使用する具体的な1種または2種以上の処理剤の種類に応じて他の量も使用できる。本発明のポリマー組成物中に使用されるカーボンブラックを修飾して、付属する少なくとも1つの有機基を有する修飾カーボンブラックを形成することもできる。有機基の種類は使用するポリマーおよび所望の性能特性に応じて変わり得る。これにより、修飾カーボンブラックを特定の用途に合わせることで柔軟性をより大きくすることができる。
【0050】
カーボンブラックは、有機基をカーボンブラックに付属させる当業者に公知の方法を用いて修飾できる。これにより、ポリマー、界面活性剤等の吸着基と比べて該基をカーボンブラック上により安定に付属させることができる。例えば、修飾カーボンブラックは、参照により全部がここに組み入れられる米国特許番号5,554,739、5,851,280、6,042,643、5,707,432および5,837,045、ならびにPCT公開WO99/23174に記載される方法を用いて調製できる。
【0051】
また、本発明の目的に対し、カーボンブラックは、ABS中にコンパウンドされたときのその特性能力により規定される、ヨウ素数、DBP吸収量、窒素表面積/統計的厚さ表面積比、Terlon L*により測定される黒色度、および/または水拡張圧特性に関する上記の特性の1以上を有することができる。同様に、ヨウ素数、DBP吸収量、および窒素表面積/統計的厚さ表面積比を有するカーボンブラック特性は、上記のようにABS中にコンパウンドされたときに測定される1以上のカーボンブラック特性を有することができる。
【0052】
本発明のさらなる態様において、本発明は、ABSと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドに関する。さらに本発明は、ABSと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドであって、上記のカーボンブラック充填量の他、上記のコンパウンド黒色度、およびコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さを有するABSコンパウンドに関する。
【0053】
本発明の他の態様において、本発明は、ABSと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドであって、上記のカーボンブラック充填量の他、上記のコンパウンド黒色度、および上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を有するABSコンパウンドに関する。
【0054】
本発明のさらなる態様において、本発明は、ABSと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドであって、上記のカーボンブラック充填量の他、上記のコンパウンド黒色度、上記のコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さ、および上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を有するABSコンパウンドに関する。
【0055】
本発明のさらなる態様は、ABSと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドであって、上記のコンパウンド黒色度および上記のコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さを、カーボンブラック充填量が何ら限定されることなく有するABSコンパウンドに関する。
【0056】
本発明のさらなる態様は、ABSと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドであって、上記のコンパウンド黒色度および上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を、カーボンブラック充填量が何ら限定されることなく有するABSコンパウンドに関する。
【0057】
本発明のさらなる態様は、ABSと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドであって、上記のコンパウンド黒色度、上記のコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さおよび上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を、カーボンブラック充填量が何ら限定されることなく有するABSコンパウンドに関する。
【0058】
さらに本発明において、ABSコンパウンドは1種以上の他の種類のポリマーを含んでABSアロイを形成することができ、この用語は当業者に理解されるものである。該ABSコンパウンドまたはABSアロイは上記の少なくとも1種のカーボンブラックを含む。さらに、従来のカーボンブラック等の他の種類のカーボンブラックがさらに存在することができ、および/または、他の補強添加剤が存在することができる。また、本発明においてさらに存在することができる、ABSコンパウンドおよびABSアロイにおいて典型的に使用される他の従来の含有物としては、これに限定されないが、ポリマー組成物中に使用できる他の従来の成分が挙げられる。
【0059】
本発明のさらなる態様において、本発明は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むポリマーコンパウンドに関する。さらに本発明は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むポリマーコンパウンドであって、上記のカーボンブラック充填量の他、上記のコンパウンド黒色度、および上記のコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さを有するポリマーコンパウンドに関する。
【0060】
本発明の他の態様において、本発明は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むポリマーコンパウンドであって、上記のカーボンブラック充填量の他、上記のコンパウンド黒色度、および上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を有するポリマーコンパウンドに関する。
【0061】
本発明のさらなる態様において、本発明は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むポリマーコンパウンドであって、上記のカーボンブラック充填量の他、上記のコンパウンド黒色度、上記のコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さ、および上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を有するポリマーコンパウンドに関する。
【0062】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むポリマーコンパウンドであって、上記のコンパウンド黒色度および上記のコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さを、カーボンブラック充填量が何ら限定されることなく有するポリマーコンパウンドに関する。
【0063】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むポリマーコンパウンドであって、上記のコンパウンド黒色度および上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を、カーボンブラック充填量が何ら限定されることなく有するポリマーコンパウンドに関する。
【0064】
本発明のさらなる態様は、少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の本発明のカーボンブラックとを含むポリマーコンパウンドであって、上記のコンパウンド黒色度、上記のコンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さ、および上記のプレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級を、カーボンブラック充填量が何ら限定されることなく有するポリマーコンパウンドに関する。
【0065】
さらに、本発明において、ポリマーコンパウンドは1種以上のポリマーを含み、ポリマーアロイを形成することができ、ここでこの用語は当業者に理解される。ポリマーコンパウンドまたはポリマーアロイは、上記の少なくとも1種のカーボンブラックを含む。さらに、従来のカーボンブラック等の他の種類のカーボンブラック、および他の補強剤がさらに存在することができる。また、本発明においてさらに存在することができる、ポリマーコンパウンドおよびポリマーアロイにおいて典型的に使用される他の従来の含有物としては、これに限定されないが、ポリマー組成物中に使用できる他の従来の成分が挙げられる。
【0066】
より詳細には、本発明において使用されることになるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体型レジンは、主にアクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンの3成分を有する共重合体から構成されるものであり、市販で入手可能な製品を使用しても良い。例えば、芳香族ビニルモノマーおよびシアン化ビニルモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーのジエン系ゴムへのブロック重合またはグラフト重合により得られる共重合体、または該共重合体とのブレンド生成物を挙げることができる。該ジエン系ゴムは、ブタジエンを成分として重合させることにより得られるポリマーであり、その例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体およびスチレン−ブタジエン共重合体が挙げられる。芳香族ビニルモノマーは、例えば、スチレン、アルファ−メチルスチレンまたはアルキル置換スチレンであっても良い。シアン化ビニルモノマーは、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはハロゲン置換アクリロニトリルであっても良い。該共重合体および該共重合体とのブレンド生成物の具体例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元重合体および、ポリブタジエンをアクリロニトリル−スチレン共重合体にポリマーアロイすることにより得られるものが挙げられる。さらに、ゴム成分を含まないアクリロニトリル−スチレン共重合体もまた挙げられる。
【0067】
本発明のポリマー組成物中に存在するポリマーに関し、該ポリマーは、任意のポリマーコンパウンドであることができる。好ましくは、該ポリマーは、ポリオレフィン、ハロゲン化ビニルポリマー、ハロゲン化ビニリデンポリマー、パーフルオロポリマー、スチレンポリマー、アミドポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリケトン、ポリアセタール、ビニルアルコールポリマー、またはポリウレタン等の成形用途において有用であるものである。本発明の実施において有用なポリマーまたはレジンとしては、PETすなわちポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、PBTすなわちポリブチレンテレフタレートおよびPBTアロイ、ポリプロピレン、ポリウレタン、ABSすなわちアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、PVCすなわちポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、PP/PSすなわちポリプロピレンポリスチレンアロイ、ポリエチレン、ナイロン、ポリアセタール、SANすなわちスチレンアクリロニトリル、アクリル、セルロース、ポリカーボネートアロイおよびPPまたはプロピレンアロイが挙げられる。これらの材料の他の組み合わせを使用しても良い。上記の列挙は包括的であることを意味するものではなく、本発明の実施において有用な種々の材料の実例に過ぎない。これらのポリマー材料の1種以上を含むポリマーのブレンド物であって、記載されたポリマーが主成分としてまたは微量成分としてのいずれかで存在するもの、もまた使用して良い。ポリマーの具体的な種類は所望の用途に左右され得る。これらは以下でより詳細に説明する。
【0068】
所望の性能特性を実現するために特定のポリマーまたはブレンド物を使用することが好ましい場合がある。例えば、ポリマーは、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、プロピレンの共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン三元重合体(EPDM等)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルEPDMスチレン(AES)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA6,PA66,PA11,PA12,およびPA46等のPA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、およびポリフェニレンエーテル(PPE)を含むことができる。好ましいポリマーブレンドとしては、これに限定されるものではないが、PC/ABS,PC/PBT,PP/EPDM,PP/EPR,PP/PE,PA/PPO,およびPPO/PPが挙げられる。本発明のポリマー組成物は、黒色度、伝導性、堅牢性、剛性、平滑性、および引張特性等の所望の全体的な特性を実現するために最適化することができる。
【0069】
ポリマーとしては、熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、ポリエチレン(LLDPE,LDPE,HDPE,UHMWPE,VLDPE,およびmLLDPE等のPE)、ポリプロピレン、ポリプロピレンの共重合体、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエン三元重合体(EPDM等)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルEPDMスチレン(AES)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA6,PA66,PA1l,PA12,およびPA46等のPA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、テトラエチレンヘキサプロピレンビニリデンフルオライドポリマー(THV)、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、ポリヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリケトン(PK)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、共重合ポリエステル、ポリウレタン(PU)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、およびポリフェニレンエーテル(PPE)が挙げられる。好ましいブレンド物としては、PC/ABS,PC/PBT,PP/EPDM,PP/EPR,PP/PE,PA/PPO、およびPPO/PEが挙げられる。
【0070】
1種または2種以上の該ポリマーは熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであることができる。さらに、該ポリマー群は、単独重合体、共重合体、三元重合体、および/または任意の数の種々の繰り返し単位を含むポリマーであることができる。さらに、本発明において存在する該ポリマー群は、ランダム重合体、交互重合体、グラフト重合体、ブロック重合体、星状重合体、および/または櫛状重合体等の任意の種類のポリマー群であることができる。本発明において使用される該ポリマー群はまた、1種以上の重合ブレンド物であることができる。該ポリマー群は、相互貫入重合体ネットワーク(IPN)、同時相互貫入重合体ネットワーク(SIN)、または相互貫入エラストマーネットワーク(IEN)であることができる。
【0071】
ポリマーの具体例としては、これに限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリカプロラクタム(ナイロン)、ポリイソプレン等の線状高分子重合体が挙げられる。本発明の他の一般的な部類のポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、高分子電解質、ポリエステル、ポリエーテル、(ポリヒドロキシ)ベンゼン、ポリイミド、硫黄含有ポリマー(ポリスルフィド、(ポリフェニレン)スルフィド、およびポリスルホン等)、ポリオレフィン、ポリメチルベンゼン、ポリスチレンおよびスチレン共重合体(ABSが含まれる)、アセタールポリマー、アクリルポリマー、アクリロニトリルの重合体および共重合体、ハロゲン含有ポリオレフィン(ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデン等)、フルオロポリマー、アイオノマーポリマー、1または2以上のケトン基を含有するポリマー、液晶ポリマー、ポリアミドイミド、1または2以上のオレフィン二重結合を含有するポリマー(ポリブタジエン、ポリジシクロペンタジエン等)、ポリオレフィン共重合体、ポリフェニレンオキサイド、ポリシロキサン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー等である。ポリマーは、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエステル、またはこれらの混合物であることができる。
【0072】
一般的に、すべて参照によりその全部がここに組み入れられるEncyclopedia of Chemical Technology,KIRK−OTHMER,(1982),第328から887頁,第18号およびModern Plastics Encyclopedia ’98,第B−3からB−210頁,およびC.A.Danielsによる”Polymers:Structure and Properties,”,Technomic Publishing Co.,Lancaster,PA(1989)に記載されるポリマー群は、1種または2種以上の該ポリマーとして使用できる。該ポリマーは、多くの方法で調製でき、このような方法は当業者に公知である。上記で参照したKIRK−OTHMERのセクション,Modern Plastics Encyclopedia,およびC.A. Danielsの文献は、これらのポリマーを調製できる方法を提供する。
【0073】
本発明のポリマー組成物はまた、これらの公知の目的および量で好適な添加剤を含んでも良い。例えば、本発明の該組成物はまた、架橋剤、加硫剤、安定剤、顔料、色素、着色剤、金属不活性化剤、オイルエキステンダー、潤滑剤、および/または無機フィラー等としてこのような添加剤を含んでも良い。
【0074】
本発明のポリマー組成物は、市販で入手可能なミキサーを用いて種々の成分をともに混合すること等の従来技術を用いて調製できる。該組成物は、当該分野で周知のもののようなバッチ混合プロセスまたは連続混合プロセスにより調製しても良い。例えば、不連続内部ミキサー、連続内部ミキサー、往復単軸押出機、二軸および単軸の押出機等の設備を使用して配合物の原料を混合しても良い。カーボンブラックは、ポリマーブレンド内に直接導入しても良く、またはカーボンブラックは、あるポリマー内に、該ポリマーが他のポリマーとブレンドされる前に導入しても良い。自動車用途のための物品としてのこのような材料の加工における後の使用のために、本発明のポリマー組成物の成分を混合してペレットに形成しても良い。
【0075】
カーボンブラックの量に関し、所望の特性を実現するためにポリマー組成物中に任意の量を使用できる。例えば、ポリマー組成物の全質量を基にして約0.5wt%から約50wt%、そしてより好ましくは、ポリマー組成物の全質量を基にした質量で約0.5wt%から約10wt%を使用できる。
【0076】
本発明のさらなる態様において、本発明は、1種以上の本発明のカーボンブラックを含むマスターバッチまたは濃厚物に関する。該マスターバッチまたは濃厚物は、上記されたもの等の1種以上のポリマーを含むことができ、同様に、マスターバッチ量または濃厚物量の本発明のカーボンブラックを含むことができる。カーボンブラック充填量は、マスターバッチまたは濃厚物の全質量を基にして約10wt%から約50wt%等、マスターバッチまたは濃厚物において典型的に見られる任意の好適な量であることができる。
【0077】
本発明のカーボンブラックは、従来のカーボンブラックが使用される、例えばインク、コーティング、エラストマー製品、トナー、燃料電池、タイヤまたはその部品、成形部品、ケーブルまたはその部品等の任意の末端消費用途に、従来の量またはそれより少ない量で使用できる。
【0078】
本発明の例示であることが意図される以下の例によって本発明がさらに明確にされよう。
【0079】

”A” ”B”および”C”として特定される本発明の3つのカーボンブラックであって以下の表1に記載される特性を有するものを上記および表1に記載されるように調製した。これらのカーボンブラックは、以下の表で”X”および”Y”とされる、キャボットから市販で入手可能な2つのカーボンブラックと比較される。これらのカーボンブラックの各々に対する分析データは、同様に表中に記載されている。上記の手順を用い、これらのカーボンブラックのすべてを、ABSコンパウンド中に、該表でサンプル特定番号の次に示される充填量を用いて配合した。例えばカーボンブラック”X”は、ABSコンパウンドの全質量中のカーボンブラック充填量0.75質量%で配合し、カーボンブラック”X”はまた、コンパウンド全体中のカーボンブラック充填量0.5質量%等で配合した。比較として、いかなるカーボンブラックも含まないABSコンパウンド(以下の表で「純ABS」として表示される)を同様に分析した。上記の試験手順を用いて、コンパウンドされたポリマーの、切り欠きまたは非切り欠きアイゾッド衝撃強さ、プレスアウト分散等級、および黒色度(L*)等の種々の物理特性を、前述の手順を用いて測定した。表中に記載されるデータから分かるように、本発明のカーボンブラックでは、0.50%でコンパウンドされた際に、0.75%でコンパウンドされたカーボンブラック”X”と同等またはこれを超えるコンパウンド黒色度が得られた。加えて、本発明のカーボンブラックは、カーボンブラック”X”と同等またはより良好な黒色度を与えるようにコンパウンドされた際に、より優れた衝撃強さ(切り欠きおよび非切り欠きの両者)およびプレスアウト分散等級を有していた。このことは比較のカーボンブラック”Y”では見られず、カーボンブラック”Y”は、0.5%でコンパウンドされた際に、本発明のカーボンブラックと類似の黒色度を示したがより悪い衝撃強さおよびプレスアウト分散等級を示した。本発明のカーボンブラックは高表面積および強黒色度を有するが、易分散性を比較的維持している。
【0080】
【表1】

【0081】
出願人は特にこの開示におけるすべての引用文献の全記載を組み入れる。さらに、量、濃度もしくは他の値またはパラメータが範囲、好ましい範囲、または上端の好ましい値および下端の好ましい値の列挙のいずれかとして与えられる場合、このことは、範囲が別個に開示されているか否かにかかわらず、任意の範囲上限または好ましい値および任意の範囲下限または好ましい値の任意の対から形成されるすべての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。ここで数値範囲が列挙されている箇所では、特記がない限り該範囲はそれらの端点ならびに該範囲内のすべての整数および端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を規定する際に列挙される具体的な値に限定されることは意図されない。
【0082】
本発明の他の態様はここに開示される本明細書および本発明の実施を考慮して当業者に明らかとなろう。本明細書および例は例示のみと解釈され本発明の真の範囲および理念は特許請求の範囲およびその均等のものにより示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、サンプル分散等級を示す5つの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の3つの特徴、
(a)ヨウ素数が約150から約600mg/g;
(b)DBP吸収量が約40から約90cc/100g;
(c)窒素表面積/統計的厚さ表面積の比が、約1.25から約1.70;
を含み、かつ以下のさらなる特性、
(d)Terlon L*により測定される黒色度値が1.7以下;および/または
(e)水拡張圧値が23.0mJ/m2以下、
の1つ以上を有する、カーボンブラック。
【請求項2】
該ヨウ素数が約265から約600mg/gである、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項3】
該ヨウ素数が約350mg/gから約600mg/gである、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項4】
該ヨウ素数が約400mg/gから約600mg/gである、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項5】
該DBP吸収量が約50から約90cc/100gである、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項6】
該DBP吸収量が約60から約90cc/100gである、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項7】
該DBP吸収量が約70から約90cc/100gである、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項8】
該比が約1.30から約1.70である、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項9】
該比が約1.40から約1.70である、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項10】
該カーボンブラックが該黒色度値および該水拡張圧値を有する、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項11】
該黒色度値が約0.4から約1.7である、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項12】
該黒色度値が約0.4から約1.1である、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項13】
該水拡張圧値が約12.0から約23.0mJ/m2である、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項14】
該水拡張圧値が約12.0から約21.5mJ/m2である、請求項1に記載のカーボンブラック。
【請求項15】
3ステップABSコンパウンド手順を用い、コンパウンド材の全質量を基にしたカーボンブラック充填量を1.5wt%以下としてABS中にコンパウンドしてコンパウンド材を形成したときのカーボンブラックが、コンパウンド材全体におけるコンパウンド黒色度であるコンパウンドL*の4.6以下を実現し、かつ該カーボンブラックは、該コンパウンド材が以下の特性、
(a)コンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さが13,600J/m2以上、および/または
(b)プレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級が4.0以下、
の一方または両方を有するように供給することができる、カーボンブラック。
【請求項16】
該コンパウンド黒色度が3.0から4.6である、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項17】
該コンパウンド黒色度値が3.0から4.4である、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項18】
該コンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さが約13,600J/m2から約18,000J/m2である、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項19】
該コンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さが約14,000から約17,000J/m2である、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項20】
該コンパウンド分散等級が1.0から約4.0である、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項21】
該コンパウンド分散等級が約1.0から約3.0である、請求項15に記載のカーボンブラック。
【請求項22】
ABSと少なくとも1種の請求項1に記載のカーボンブラックとを含む、ABSコンパウンド。
【請求項23】
ABSと少なくとも1種の請求項15に記載のカーボンブラックとを含む、ABSコンパウンド。
【請求項24】
少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の請求項1に記載のカーボンブラックとを含む、ポリマーコンパウンド。
【請求項25】
少なくとも1種のポリマーと少なくとも1種の請求項15に記載のカーボンブラックとを含む、ポリマーコンパウンド。
【請求項26】
ABSと少なくとも1種のカーボンブラックとを含むABSコンパウンドであって、該ABSコンパウンドが、コンパウンドL*として測定される、コンパウンド材全体におけるコンパウンド黒色度の4.6以下を有し、かつ該ABSコンパウンドが、以下の特性、
(a)コンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さが13,600J/m2以上、および/または
(b)プレスアウト試験におけるコンパウンド分散等級が4.0以下、
の一方または両方を有する、ABSコンパウンド。
【請求項27】
該カーボンブラックが、該ABSコンパウンドの質量の約0.5%から約10wt%の量で存在する、請求項22に記載のABSコンパウンド。
【請求項28】
該カーボンブラックが、該ポリマーコンパウンドの質量の約0.5wt%から約10wt%の量で存在する、請求項24に記載のポリマーコンパウンド。
【請求項29】
少なくとも1種のポリマーと請求項1に記載のカーボンブラックとを含むポリマーマスターバッチまたはポリマー濃厚物であって、該カーボンブラックが、該ポリマーマスターバッチまたは該ポリマー濃厚物の全質量を基にして約10wt%から約50wt%の量で存在する、ポリマーマスターバッチまたはポリマー濃厚物。
【請求項30】
少なくとも1種のポリマーと請求項15に記載のカーボンブラックとを含むポリマーマスターバッチまたはポリマー濃厚物であって、該カーボンブラックが、該ポリマーマスターバッチまたは該ポリマー濃厚物の全質量を基にして約10wt%から約50wt%の量で存在する、ポリマーマスターバッチまたはポリマー濃厚物。
【請求項31】
該コンパウンド黒色度値が3.0から4.4であり、かつ該コンパウンド切り欠きアイゾッド衝撃強さが約14,000から約17,000J/m2である、請求項15に記載のカーボンブラック。

【図1】
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【公表番号】特表2008−540806(P2008−540806A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512400(P2008−512400)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/018723
【国際公開番号】WO2006/124773
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】