説明

カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液および電子写真用ポリイミドベルト

【課題】カーボンブラックの分散性と保存安定性に優れたポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液と、それを用いた、表面抵抗値のばらつきが小さく、耐屈曲性に優れた電子写真用ポリイミドベルトを提供すること。
【解決手段】カーボンブラックと、トリアジン誘導体と、有機溶剤と、ポリアミド酸とを含むポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液およびそれを使用して形成されてなる電子写真用ポリイミドベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液に関する。さらに前記ポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用して形成されてなる電子写真用ポリイミドベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、レーザープリンタ、ビデオプリンタ、ファクシミリ及びそれらの複合機には、電子写真方式や静電印刷方式等の画像形成プロセスを採用した画像形成装置が用いられている。この種の装置では、フルカラー画像形成のための多色のトナーの重ね合わせを効率よく行うために、中間転写ベルトに一旦転写し、それを紙などの被記録媒体上に転写(二次転写)してから定着を行う中間転写方式が採用されている。また、装置の小型化等を目的に、転写ベルトに紙などの被記録媒体の搬送も兼ねさせる転写ベルトを使用する方式も検討されている。
【0003】
前記、中間転写ベルトには、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等の熱可塑性樹脂からなる無端ベルト(シームレスベルト)等が提案されているが、その中でも特に、ポリイミドは、機械特性、電気絶縁性、耐熱性に優れることから、広く用いられている。また、中間転写ベルトは、静電的にトナーを転写する方法を用いる場合には半導電性が要求されるので、ポリイミドに導電性フィラーが添加されることが一般的である。例えば、導電性フィラーとしてアセチレンブラック等のカーボンブラックをポリイミド系樹脂に分散させたものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
前記のカーボンブラックを用いた半導電性ポリイミドベルトの製造方法では、白抜け、トナーのチリ等の転写ムラを無くす為にベルト中での電気抵抗値のバラツキを抑える必要がある。そのため、カーボンブラックの二次凝集等を抑制した分散工程が必要となるが、カーボンブラックと溶剤だけでは、分散安定化が困難である為、アミン系界面活性剤等の分散剤を添加、分散した後にポリイミド前駆体と混合し、ベルト化する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながら、上記のアミン系界面活性剤では、カーボンの分散性能が不十分であり、仕込み時のハンドリング性の低下ならびに、電気抵抗のバラツキの抑制も不十分であった。
【0005】
また、ポリイミドベルトの耐屈曲性と、反復耐電圧性に優れた半導電性全芳香族ポリイミド無端環状フィルムを得る方法としてpKb≧5の塩基性有機化合物、例えばヘテロ窒素原子1個を含む6員環芳香族複素環化合物、ヘテロ窒素原子1個を含む5員環芳香族複素環化合物と、カーボンブラックと、全芳香族ポリイミド前駆体とを、主成分にした成型原液を金属製円筒内に塗布し、加熱し、成型する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら上記の方法では、全芳香族ポリイミド前駆体固形分に対して、0.6〜3重量%も塩基性有機化合物を添加する必要があり、成型原液の保存安定性が劣化することもあった。
【0006】
以上より、ポリイミド前駆体は芳香族カルボン酸と芳香族アミンである為、反応性が高く、適切な添加剤と添加量を選択しなければ、硬化阻害を起し、ブツを生じやすいという問題を有している。このような現象は膜強度の劣化、膜表面の抵抗バラツキが増大を引き起こす為、好ましくない。よって、ポリイミドベルトに用いるカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液には、カーボンブラックの均一分散と、硬化阻害を起さない分散剤の選択、ならびに、膜強度の向上を同時に達成できることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−311263
【特許文献2】特開2010−195879
【特許文献3】特開2003−213014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、カーボンブラックが良好に分散され、保存安定性が良好なポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を提供することである。さらに、このポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用して形成されてなる電子写真用ポリイミドベルトにおいて、表面抵抗のばらつきが抑制され、耐折強度に優れた、長期間良好な画像形成を行うことができる電子写真用ポリイミドベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トリアジン誘導体を用いてカーボンブラックを分散することによって、カーボンブラックの凝集の少ない分散状態にできると共に、その状態が安定に保持された保存安定性が良好なポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得ることが可能であることを見出した。また、このポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用して得られる電子写真用ポリイミドベルトは、表面抵抗値のばらつきが小さく、さらに、耐屈曲性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、カーボンブラックと、トリアジン誘導体と、有機溶剤と、ポリアミド酸とを含むポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液に関する。
【0011】
また、本発明は、前記ポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用して形成されてなる電子写真用ポリイミドベルトに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、分散剤としてトリアジン誘導体を使用することにより、カーボンブラックが良好に分散され、保存安定性が良好なカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得ることが可能となり、該溶液を用いて作成されるポリイミドベルトは、表面抵抗ばらつきを抑制でき、耐折強度を大幅に向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<カーボンブラック>
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解して製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラック等の各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0014】
これらのカーボンブラックの種類は、目的とする導電性により適宜選択することができ、中間転写ベルトや転写搬送ベルト等の中抵抗から高抵抗域(表面抵抗率108 〜1014 Ω/□、体積抵抗率108 〜1014 Ω・cm)において制電性が必要である場合は、特にチャンネルブラックやファーネスブラックが好適に用いられる。カーボンブラックの含有量については、その目的に応じ、添加するカーボンブラックの種類により適宜決定されるが、画像形成装置用機能性ベルトとしてはその機械的強度等から、ポリイミド樹脂固形分に対し3〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%である。
【0015】
具体的には、ファーネスブラックとして、デグサ・ヒュルス社製の「Special Black 550」、「Special Black 350」、「Special Black250」、「Special Black 100」、「Printex 35」、「Printex 25」、三菱化学社製の「#52」、「#45」、「#33」、「#260」、「#20」、「#10」、「MA 7」、「MA 77」、「MA 8」、「MA 11」、「MA 100」、「MA 100R」、「MA 220」、「MA 230」、キャボット社製、「MONARCH 1300」、「MONARCH 1100」、「MONARCH 1000」、「MONARCH 900」、「MONARCH 880」、「MONARCH 800」、「MONARCH 700」、「MOGUL L」、「REGAL 400R」、「VULCAN XC−72R」等が挙げられ、チャンネルブラックとして、デグサ・ヒュルス社製の「Color Black FW200」、「Color Black FW2」、「Color Black FW2V」、「Color Black FW1」、「Color Black FW18」、「Special Black 6」、「Color Black S170」、「Color Black S160」、「Special Black 5」、「Special Black 4」、「Special Black 4A」、「Printex 150T」、「Printex U」、「Printex V」、「Printex 140U」、「Printex 140V」等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して、使用することができる。
【0016】
<トリアジン誘導体>
トリアジン誘導体は、カーボンブラックの分散剤として機能する。したがって、カーボンブラックを分散することができれば、どのようなトリアジン誘導体を使用しても構わない。このため、本明細書では、トリアジン誘導体を、単に「分散剤」と記載することがある。トリアジン誘導体は、大別すると酸性官能基あるいは塩基性官能基を有するトリアジン誘導体を使用することができる。特にその中でも官能基としてベンズイミダゾロン構造を有するトリアジン誘導体が、耐折強度向上の観点から好ましい。また、トリアジン誘導体は単独、もしくは、2種類以上を併用して用いる事ができる。
【0017】
[酸性官能基を有するトリアジン誘導体]
酸性官能基を有するトリアジン誘導体は、下記一般式(1)で示されるトリアジン誘導体を使用することができる。
【0018】
【化1】

一般式(1)中、
101は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X103−Y101−X104−であり、
102、及びX104は、それぞれ独立に、−NH−、又は−O−であり、
103は、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
101は、炭素数1〜20の置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
101は、−SO3101、−COOM101、又は−P(O)(−OM1012であり、
101は、1〜3価のカチオンの一当量であり、
101は、−O−R102、−NH−R102、ハロゲン基、−X101−R101、又は−X102−Y101−Z101であり、
102は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアルケニル基であり、
101は、1〜4の整数であり、
101は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は下記一般式(2)で表される基である。
【0019】
【化2】

一般式(2)中、
201は、−NH−、又は−O−であり、
202、及びX203は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、又は−CH2NHCOCH2NH−であり、
201、及びR202は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基、又は−Y201−Z201であり、
201は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
201は、−SO3201、−COOM201、又は−P(O)(−OM2012であり、
201は、1〜3価のカチオンの一当量である。
【0020】
101、R201、R202における有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素等の有機色素残基が挙げられる。とりわけ、アゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、およびジオキサジン系色素から選ばれる少なくとも1種の有機色素残基が、金属による電池の短絡を抑制する効果が高く、カーボンブラックに対する分散効果が高いため好ましい。
【0021】
101、R201、R202における置換基を有していてもよい複素環残基および置換基を有していてもよい芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン等の残基が挙げられる。とりわけ、少なくともS、N、Oのヘテロ原子のいずれかを含む複素環残基が、カーボンブラックに対する分散効果が高いため好ましい。
【0022】
一般式(1)のY101及び一般式(2)の及びY201は、炭素数1〜20の置換基を有していてもよいアルキレン基、アルケニレン基またはアリーレン基を表すが、好ましくは置換されていてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、又は炭素数1〜10の置換基を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
【0023】
102において、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基は、好ましくは炭素数20以下のものであり、更に好ましくは炭素数が10以下のアルキル基が挙げられる。置換基を有するアルキル基又は置換基を有するアルケニル基とは、アルキル基又はアルケニル基の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、若しくは臭素原子等のハロゲン基、水酸基、又はメルカプト基等に置換された基である。
【0024】
101、M201は、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素原子(プロトン)、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。また、トリアジン誘導体構造中にM101、M201を2つ以上有する場合、M101、M201は、プロトン、金属カチオン、又は4級アンモニウムカチオンのいずれか一種のみでも良いし、二種以上の組み合わせでも良い。
ここで、金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、又はコバルト等の金属原子のカチオンが挙げられる。
また、4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(3)で示される構造を有する。
【0025】
【化3】

一般式(3)中、R301、R302、R303、及びR304は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、又は置換基を有してもよいアリール基のいずれかである。
【0026】
一般式(3)のR301、R302、R303、及びR304は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R301、R302、R303、及びR304が、炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。炭素数が40を超えると導電性が低下する懸念がある。
【0027】
4級アンモニウムカチオンの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、又はステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
上記トリアジン誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特公昭39−28884号公報、特公昭45−11026号公報、特公昭45−29755号公報、特公昭64−5070号公報、又は特開2004−217842号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0029】
トリアジン誘導体のうち、例えば酸性官能基としてスルホン酸もしくはその塩を有するものについては、発煙硫酸、濃硫酸および、クロロスルホン酸などのスルホン化剤を用いてスルホン化するのが一般的である。この場合、酸性官能基の数は分布を有し、例えば、無置換体、一置換体、ニ置換体等の混合物となり得る。スルホン酸およびその塩に限らず、カルボン酸、リン酸についても、合成方法により酸性官能基の数が異なるものの混合物となる可能性がある。トリアジン誘導体としては、この様な酸性官能基数の異なるトリアジン誘導体の混合物を用いることも可能である。
【0030】
[塩基性官能基を有するトリアジン誘導体]
本発明に用いる塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、下記一般式(5)で示されるトリアジン誘導体が挙げられる。
【0031】
【化4】

一般式(5)中、
501は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X502−Y501−X503−であり、
502は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−または、−NHSO2−であり、
503は、それぞれ独立に−NH−、又は−O−であり、
501は、炭素数1〜20の、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
501は、下記一般式(6)、(7)または、(8)のいずれかで示される置換基であり、
501は、−O−R502、−NH−R502、ハロゲン基、−X501−R501または、下記一般式(6)、一般式(7)、または一般式(8)のいずれかで示される置換基であり、
502は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基または、置換基を有してもよいアリール基であり、
501は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基または、下記一般式(9)で示される基であり、
501は、1〜4の整数である。
【0032】
【化5】

一般式(6)中、
601は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−または、−X602−Y601−X603−であり、
602は、−NH−、又は−O−であり、
603は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−または、−CH2−であり、
601は、炭素数1〜20の、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
vは、1〜10の整数であり、R601 およびR602は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または、R601 とR602とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環残基である。
【0033】
【化6】

一般式(7)中、
701は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−または、−X702−Y701−X703−であり、
702は、−NH−、又は−O−であり、
703は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−または、−CH2−であり、
701は、炭素数1〜20の、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または、置換基を有してもよいアリーレン基であり、
701 およびR702は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または、R701 とR702とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む置換されていてもよい複素環残基である。
【0034】
【化7】

一般式(8)中、
801は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−、−CH2−または、−X802−Y801−X803−であり、
802は、−NH−、又は−O−であり、
803は、直接結合、−SO2−、−CO−、−CH2NHCOCH2−、−CH2NHCONHCH2−または、−CH2−であり、
801は、炭素数1〜20の、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
801 、R802 、R803 および、R804は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアリール基であり、
805は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、又は置換されていてもよいアリール基である。
【0035】
【化8】

一般式(9)中、
901は、−X902−R901または、W901であり、
901は、−X903−R902または、W902であり、
901および、W902は、それぞれ独立に、−O−R903、−NH−R903、ハロゲン基または、前記一般式(6)、(7)もしくは、一般式(8)のいずれかで示される置換基であり、
903は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基または、置換基を有してもよいアリール基であり、
901は、−NH−または、−O−であり、
902、及びX903は、それぞれ独立に、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−または−CH2NHCOCH2NH−であり、
901は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
901および、R902は、それぞれ独立に、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基または、置換基を有していてもよい芳香族環残基である。
【0036】
一般式(5)のR501、並びに、一般式(9)のR901および、R902で表される有機色素残基としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素等の有機色素残基が挙げられる。
【0037】
一般式(5)のR501、並びに、一般式(9)のR901および、R902で表される置換基を有していてもよい複素環残基および置換基を有していてもよい芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、トリアジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、及びアクリドン等の残基が挙げられる。これらの置換基を有していてもよい複素環残基、及び置換基を有していてもよい芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、及びジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、及びブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、及びフッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン等で置換されていてもよい)、並びに、フェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、又はハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
【0038】
601、R602、R701および、R702は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基もしくは、R601とR602または、R701とR702とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む、置換されていてもよい複素環残基である。
【0039】
一般式(5)〜(9)のY501、Y601、Y701、Y801および、Y901は、それぞれ独立に、炭素数1〜20の置換基を有していてもよいアルキレン基、アルケニレン基または、アリーレン基を表すが、好ましくは置換基を有していてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または、炭素数1〜20のアルキレン基が挙げられる。
【0040】
一般式(6)及び(7)中のR601、R602、R701および、R702は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアリール基もしくは、R601とR602または、R701とR702とで一体となって更なる窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含む、置換基を有していてもよい複素環残基である。
【0041】
一般式(6)〜(8)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、
ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジ ン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、及び1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0042】
本発明の塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではないが、特開昭54−62227号公報、特開昭56−118462号公報、特開昭56−166266号公報、特開昭60−88185号公報、特開昭63−305173号公報、特開平3−2676号公報、又は特開平11−199796号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0043】
例えば、有機色素に、一般式(11)〜一般式(14)で示される置換基を導入した後、これら置換基とアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミン、若しくは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等)を反応させることによって、合成することができる。
一般式(11):−SO2Cl
一般式(12):−COCl
一般式(13):−CH2NHCOCH2Cl
一般式(14):−CH2Cl
また、例えば、一般式(11)で示される置換基を導入する場合には、有機色素をクロロスルホン酸に溶解して、塩化チオニル等の塩素化剤を反応させるが、このときの反応温度、反応時間等の条件により、有機色素に導入する一般式(11)で示される置換基数をコントロールすることができる。
【0044】
また、一般式(12)で示される置換基を導入する場合には、まずカルボキシル基を有する有機色素を公知の方法で合成した後、ベンゼン等の芳香族溶媒中で塩化チオニル等の塩素化剤を反応させる方法等が挙げられる。
【0045】
一般式(11)〜一般式(14)で示される置換基とアミン成分との反応時には、一般式(11)〜一般式(14)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素が水酸基に置換することがある。その場合、一般式(11)で示される置換基はスルホン酸基となり、一般式(12)で示される置換基はカルボン酸基となるが、いずれも遊離酸のままでもよく、また、1〜3価の金属若しくは、上記のアミンと塩を形成していてもよい。
【0046】
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、一般式(6)〜(8)または、一般式(15)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分又はカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系有機色素誘導体を製造することもできる。
【0047】
【化9】

一般式(15)中、
1501は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−CH2NHCOCH2NH−、又は−X1502−Y1501−X1503−であり、
1502は、−NH−、−O−、−CONH−、−SO2NH−、−CH2NH−、−NHCO−、又は−NHSO2−であり、
1503は、それぞれ独立に、−NH−、又は−O−であり、
1501は、炭素数1〜20の、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基、又は置換基を有してもよいアリーレン基であり、
1501は、上記一般式(6)、(7)または、(8)のいずれかで示される置換基であり、
1501は、−O−R1501、−NH−R1501、ハロゲン基、−X1501−R1502もしくは、一般式(6)、(7)または、(8)のいずれかで示される置換基であり、
1501は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基又は、置換基を有してもよいアルケニル基または、置換基を有してもよいアリール基であり、
1502は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基または、一般式(9)で示される基である。
【0048】
また、塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に上記一般式(6)〜(8)、又は一般式(15)で示される置換基を形成するアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、若しくはN−メチルピペラジン等)を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミン又はアルコール等を反応させることによって得られる。
【0049】
<有機溶剤>
有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド(以下DMAcと略記する)、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略記する)、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ − ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独あるいは混合溶媒として用いるのが望ましい。溶媒は、ポリアミド酸を溶解するものであれば、特に限定されないが、DMAc、NMPが特に好ましい。
【0050】
<カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液>
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、カーボンブラックが分散剤としてトリアジン誘導体を用いて分散した状態でポリアミド酸中に存在する溶液を指す。上記の分散状態を得ることができれば、その分散順序に限定されることはない。例えば、カーボンブラックをトリアジン誘導体を用いて一旦有機溶剤中に分散し、ポリアミド酸溶液に添加してもいいし、カーボンブラックをトリアジン誘導体を用いてポリアミド酸溶液中にて分散しても良い。また、ポリアミド酸の前駆体である芳香族カルボン酸無水物あるいはその誘導体と芳香族ジアミンの溶液中にカーボンブラックを分散し、前駆体を反応させ、カーボンブラックを分散したポリアミド酸溶液を得てもよい。
【0051】
分散方法としては、顔料分散等に通常用いられている分散機が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
続いて、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の組成について説明する。カーボンブラックの含有量については、その目的に応じ、添加するカーボンブラックの種類により適宜決定されるが、画像形成装置用機能性ベルトとしてはその機械的強度等から、ポリイミド樹脂固形分に対し3〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%である。また、一旦、カーボンブラックとトリアジン誘導体にて有機溶剤中に分散する工程を含む場合には、ポリアミド酸溶液に添加する前の分散液中のカーボンブラック濃度は、使用するカーボンブラックの比表面積や表面官能基量などのカーボンブラック固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、50重量%以下が好ましく、更に好ましくは5重量%以上、35重量%以下である。カーボンブラックの濃度が低すぎると生産効率が悪くなり、カーボンブラックの濃度が高すぎると分散液の粘度が著しく高くなり、分散効率や分散液のハンドリング性が低下する場合がある。
【0053】
トリアジン誘導体から選ばれる1種以上の分散剤の添加量は、用いるカーボンブラックの比表面積等により決定される。一般には、炭素材料100重量部に対して、0.5重量部以上、40重量部以下、好ましくは1重量部以上、20重量部以下、さらに好ましくは、2重量部以上、10重量部以下である。トリアジン誘導体の量が少ないと十分な分散効果が得られず、過剰に添加しても顕著な分散向上効果は得られない。
【0054】
<ポリアミド酸>
ポリアミド酸は、芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体と芳香族ジアミンとの反応によって得られ、通常、溶液として得ることができる。
【0055】
上記芳香族多価カルボン酸無水物の具体例としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシルフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
【0056】
次に、芳香族多価カルボン酸無水物と反応させる芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’ − ジアミノジフェニルエーテル、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、1,1−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,1−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、1,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エタン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ブタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホキシド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ベンゼン、4,4’−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ベンゾフェノン、4,4’−ビス〔4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、ビス〔4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル〕スルホン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル〕ベンゼン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。
【0057】
上記芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分とを等モル原料として用いて、有機溶媒中で重合反応させることにより、ポリアミド酸を得ることができる。下記にポリアミド酸の製造方法について具体的に説明する。
【0058】
ポリアミド酸を製造する場合の例として、まず、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下において、1種あるいは複数種のジアミンを上記の有機溶媒に溶解するか、あるいはスラリー状に拡散させる。この溶液に、前記した少なくとも1種の芳香族多価カルボン酸無水物あるいは、その誘導体を添加(固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい)すると、発熱を伴って開環重付加反応が起こり、急速に溶液の粘度上昇が起こり、高分子量のポリアミド酸溶液が得られる。この際の反応温度は、−20℃〜100℃、望ましくは60℃以下に制御することが好ましい。反応時間は、30分〜12時間程度である。
【0059】
上記は一例であり、反応における上記添加手順とは逆に、まず芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体を有機溶媒に溶解または拡散させておき、この溶液中に前記ジアミンを添加させてもよい。ジアミンの添加は、固体状態のままでも、有機溶媒に溶解した溶液状態でも、スラリー状態でもよい。すなわち、酸二無水物成分と、ジアミン成分との混合順序は限定されない。さらには、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを同時に有機極性溶媒中に添加して反応させてもよい。
【0060】
上記のようにして、芳香族多価カルボン酸無水物あるいはその誘導体と、芳香族ジアミン成分とをおよそ等モル、有機溶媒中で重合反応することにより、ポリアミド酸溶液が得られる。
【0061】
ポリアミド酸は、上記のようにして合成したものを使用することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミド酸が溶解された状態の、いわゆるポリイミドワニスとして上市されているものを入手して使用することもできる。
ポリイミドワニスの例としては、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等が代表的なものとして挙げられる。
【0062】
<カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液>
本発明のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、カーボンブラックが、トリアジン誘導体によって均一に分散されたポリアミド酸、有機溶剤を含む溶液である。均一な分散状態であれば、その分散の順序に限定されることはない。例えば、カーボンブラックをトリアジン誘導体を用いて一旦有機溶剤中に分散した後、ポリアミド酸溶液に添加しても良いし、カーボンブラックとトリアジン誘導体とをポリアミド酸溶液中に添加して分散しても良い。また、ポリアミド酸の前駆体である芳香族カルボン酸無水物あるいはその誘導体と芳香族ジアミンとを含む溶液中に、カーボンブラックとトリアジン誘導体とを分散し、これら前駆体を反応させ、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得てもよい。
【0063】
分散方法としては、顔料分散等に通常用いられている業界公知の分散機が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の組成について説明する。カーボンブラックの含有量については、その目的に応じ、添加するカーボンブラックの種類により適宜決定されるが、通常、ポリアミド酸に対して、3〜40重量%、より好ましくは3〜30重量%である。また、一旦、ポリアミド酸溶液を含有しない状態で、カーボンブラックとトリアジン誘導体にて有機溶剤中に分散する際には、ポリアミド酸溶液を含有していない状態でのカーボンブラック濃度は、使用するカーボンブラックの比表面積や表面官能基量などのカーボンブラック固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、50重量%以下が好ましく、更に好ましくは5重量%以上、35重量%以下である。カーボンブラックの濃度が低すぎると生産効率が悪くなり、カーボンブラックの濃度が高すぎると分散液の粘度が著しく高くなり、分散効率や分散液の作業性が低下する場合がある。
【0065】
トリアジン誘導体の量は、用いるカーボンブラックの比表面積等により決定されるが、通常、カーボンブラック100重量部に対して、0.5重量部以上、40重量部以下、好ましくは1重量部以上、20重量部以下、さらに好ましくは、2重量部以上、10重量部以下である。トリアジン誘導体の量が少ないと、十分なカーボンブラックを分散することが困難となる恐れがある。逆に、過剰に添加しても顕著な分散向上効果は得られない。
【0066】
<電子写真用ポリイミドベルトの製造方法>
本発明の電子写真用ポリイミドベルトは、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を塗工した塗膜を加熱することで、有機溶剤を除去すると共に、イミド転化(イミド化反応)を進行させることによって、得ることができる。
【0067】
イミド転化(イミド化反応)は、加熱による方法、あるいは触媒を単独で用いて、もしくは触媒と脱水剤を併用して、ポリアミド酸を低温加熱する方法のいずれの方法でもよい。
【0068】
加熱方法としては、加熱炉内を通過させる方法や加熱風を吹き付ける方法などが挙げられるが、特に制限されず、例えば、加熱炉としては放射型、循環風型などが挙げられ、加熱風を形成する機器としては、熱風器、遠赤外線ヒータなどが挙げられる。また、前記塗膜を形成するための金型の周囲にコイルを巻き、誘導加熱により直接金型を加温する方法も挙げられる。
【0069】
前記触媒としては、イミド転化(イミド化反応)を促進するものであれば特に限定されないが、例えばイミダゾール類、第2級アミン、第3級アミン等が挙げられ、具体的には例えば、2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、イミダゾール、イソキノリン等が挙げられる。触媒の添加量としては、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸1モル当量に対して0.1〜2モル当量添加することが好ましい。これらの触媒は脱水剤を使用しない加熱イミド化においても低温でのイミド化促進剤としても有効である。
【0070】
前記脱水剤としては、有機カルボン酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、およびチオニルハロゲン化物等が挙げられる。
【0071】
電子写真用ポリイミドベルトを成形して無端状ベルト(シームレスベルト)とするには、以下に例示する方法が挙げられる。カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を用いて作製した塗膜を遠心成形して均一化した後、該塗膜の加熱を行って、有機溶剤を除去すると共に、イミド化反応を進行させて得ることができる。
【0072】
まず、円筒金型内にカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を供給し、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により均一に展開する。このとき溶液の粘度はB型粘度計で1〜1000Pa・s(25℃)が好ましい。これ以外の場合は、遠心成形の際、均一に展開することが困難であり、ベルトの厚みばらつきの原因となる。製膜後、80〜150℃にて加熱を行い、溶媒を除去する。次いで300〜450℃の高温で加熱することにより、閉環イミド化反応を進行させる。カーボンブラックの分散状態のばらつきや、ベルトの抵抗値のばらつきを防止する観点から、この有機溶剤除去およびイミド化反応時の加熱は均等に行う必要がある。均等に加熱する方法としては、金型を回転させながら加熱する、有機溶剤を蒸発させるための熱風の循環を改善する等の方法や、低温で投入し、昇温速度を小さくするなどの方法がある。最後に、室温まで冷却した後、金型から取り出し、電子写真用ポリイミドベルトを得る。
【0073】
このようにして得られた電子写真用ポリイミドベルトは、カーボンブラックの分散性が高く、電気抵抗値のばらつきが小さいことから、電子写真方式や静電印刷方式の画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用し得、中間転写ベルトとして使用した場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け、トナーのチリ等)の不具合を生じることなく、良好な画質を転写することが可能となる。
【0074】
本発明の電子写真用ポリイミドベルトは、好適な態様において、その表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8.0〜14の半導電性を示し、さらに導電性フィラーとしてのカーボンブラックの分散状態が良好であることから、安定した電気特性、機械的特性を示す。よって、中間転写ベルト以外に、電子写真方式や静電印刷方式の画像形成装置における紙などの被記録媒体の搬送も兼ねさせる転写ベルト等の他の機能性ベルトとしても、使用可能である。
【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例中、部は重量部を、%は重量%を、それぞれ表す。
【0076】
実施例及び比較例で使用したカーボンブラック、有機溶剤、ポリアミド酸原料ならびに溶液、トリアジン誘導体、トリアジン誘導体以外の分散剤、ポリイミドの耐折強度強化の為の添加剤を以下に示す。
【0077】
<カーボンブラック>
・#30(三菱化学社製):ファーネスブラック、一次粒子径30nm、比表面積74m2/g。
・#850(三菱化学社製):ファーネスブラック、一次粒子径17nm、比表面積220m2/g。
・#5(三菱化学社製):ファーネスブラック、一次粒子径76nm、比表面積29m2/g。
・MA77(三菱化学社製):酸化処理カーボンブラック、一次粒子径23nm、比表面積130m2/g。
・Special Black 4(デグサ・ヒュルス社製):チャンネルブラック、一次粒子径25nm、比表面積180m2/g、以下粒状品と略記する。
【0078】
<有機溶剤>
・N−メチル−2−ピロリドン(三菱化学社製、以下NMPと略記する。)
・N、N−ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学社製、以下DMAcと略記する。)
【0079】
<ポリアミド酸原料>
・3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(JFEケミカル社製)、以下BPDAと略記する。
・p−フェニレンジアミン(東京化成工業製)、以下PDAと略記する。
【0080】
<ポリアミド酸溶液>
・U−ワニス−A(宇部興産社製):ポリイミド前駆体N−メチル−2−ピロリドン溶液、不揮発分20%、以下U−ワニスと略記する。
【0081】
<分散剤>
[界面活性剤]
・DISPERBYK−112( ビックケミー・ジャパン社製):アクリル系共重合体、不揮発分43% 、以下BYK―112と略記する。
【0082】
[分散樹脂]
・アジスパーPB−821(味の素ファインテクノ社製):塩基性官能基含有共重合物、以下PB−821と略記する。
・ルビテックK30(BASF社製):ポリビニルピロリドン、平均分子量:50000、以下K―30と略記する。
【0083】
<ポリイミドの耐折強度強化の為の添加剤>
・2−フェニルイミダゾール(日本合成化学社製)、以下PIMと略記する。
【0084】
<トリアジン誘導体>
酸性官能基を有するトリアジン誘導体:A1、B1、C1、D1、E1、F1、G1
塩基性官能基を有するトリアジン誘導体:A2、B2、C2、D2、E2、F2、G2
表1および表2に酸性官能基を有するトリアジン誘導体、表3および表4に塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の構造を示す。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
[トリアジン骨格を有しない分散剤]
トリアジン骨格を有しない有機色素誘導体:A3〜F3
表5および表6に酸性官能基または塩基性官能基を有する有機色素誘導体の構造を示す。
【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
<ポリアミド酸NMP溶液の作製>
NMP80部に、BPDA14.6部とPDA5.4部とを室温にて溶解し、150℃にて重合することで固形分20%のポリアミド酸溶液を得た(以下、ワニスAと略記する)。
【0093】
<ポリアミド酸DMAc溶液の作製>
DMAc80部に、BPDA14.6部とPDA5.4部とを室温にて溶解し、150℃にて重合することで固形分20%のポリアミド酸溶液を得た(以下、ワニスBと略記する)。
【0094】
<ポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の製造方法>
[実施例1]
トリアジン誘導体としてトリアジン誘導体A1を0.6部、有機溶剤としてNMPを80.0部を混合して溶解した。次いで、カーボンブラックとして#30を19.4部添加し、さらに分散メディアとしてジルコニアビーズ(ビーズ径1.25mmφ)140部を添加して、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼社製)で8時間分散した後、ジルコニアビーズを濾別分離して、カーボンブラック分散体を得た。その後、ポリアミド酸溶液80部に対して、カーボン分散液20部を添加し、遠心式攪拌脱泡機(あわとり練太郎AR500、シンキー社製)にて2200rpmで2分間攪拌し、さらに2000rpmで30秒間攪拌して脱泡して、ポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得た。
【0095】
[実施例2〜16、18〜21、比較例1〜10]
表7に示すトリアジン誘導体または分散剤、有機溶剤、カーボンブラック、およびポリアミド酸溶液を用いて、表7の組成にした以外は、実施例1と同様にしてポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得た。
【0096】
[実施例17]
トリアジン誘導体A1を0.12部、NMP16部をUワニス80部に添加、溶解後、カーボンブラック3.88部をさらに添加し、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントシェーカーで20時間分散した。その後、遠心式攪拌脱泡機(あわとり練太郎AR500)にて2200rpmで2分間攪拌し、2000rpmで30sec脱泡し、ポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得た。
【0097】
【表7】

【0098】
<ポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の保存安定性評価>
実施例1〜21、比較例1〜10で得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の保存安定性は、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製直後(初期)と、25℃、10日間保存後(保存後)の粘度と分散粒径により評価した。
粘度は、B型粘度計(東機産業社製「BL」)を用いて、25℃、6rpmで測定した。保存後の粘度の変化率が±5%以内を合格とした。
分散粒径は、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて測定した平均粒径(D50)を分散粒径とした。尚、測定時の希釈溶剤としてはNMPを用いた。保存後の分散粒径の変化率が±5%以内を合格とした。
評価結果を表8に示す。
【0099】
【表8】

【0100】
表8よりトリアジン誘導体を使用したポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(実施例1〜21)は、他の分散剤を使用した(比較例1〜10)と比較して、保存後の粘度、分散粒径の変化率が小さいことから、保存安定性に優れることが明らかとなった。
【0101】
<電子写真用ポリイミドベルトの製造>
[実施例22〜42、比較例11〜20]
内径100mm、長さ300mmの内面を鏡面仕上げした金属製円筒を型として用い、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、実施例1〜17および比較例1〜11で作製したポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を、それぞれ、円筒内面に均一に流延するように流して塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜が満遍なく広がった時点で、回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に投入して、110℃まで徐々に昇温して60分間加熱した。さらに昇温して200℃で20分間加熱、次いで、300℃で30分間加熱した後、回転を停止して、徐冷して取り出し、形成された塗膜を円筒内面から剥離し、膜厚65μmの電子写真用ポリイミドベルトを得た。
【0102】
<電子写真用ポリイミドベルトの評価>
電子写真用ポリイミドベルトは、表面抵抗率、表面抵抗ばらつき、耐折強度により評価を行った。
表面抵抗は、ハイレスタ−IP MCP−HT260(三菱化学社製、プローブHR−100)を用いて測定し、100V/10秒印加時の表面抵抗を10点測定し、その平均値の対数値を表面抵抗率とした。さらに、得られた個々の表面抵抗率の最大値の対数値と最小値の対数値の差を表面抵抗ばらつきとした。表面抵抗ばらつきが、0.5以下を合格とした。
耐折強度は、MIT耐揉試験機DA(東洋精機社製)を用い、折り曲げ角度を135度、曲げ速度を175回/分、錘を1kg、サンプル幅を15mmにして試験を行い、ベルトが破断するまでの回数を耐折強度とした。耐折強度が、5000回以上を合格とした。
【0103】
実施例22〜42、比較例11〜20で製造した各電子写真用ポリイミドベルトの評価結果を表9に示した。
【0104】
【表9】

【0105】
表9より、トリアジン誘導体を使用したポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を用いた電子写真用ポリイミドベルト(実施例22〜42)は、他の分散剤を使用した(比較例1〜10)と比較して、表面抵抗ばらつきが大幅に改善すると共に、耐折強度が飛躍的に向上していることがわかる。中でも、ベンズイミダゾロン構造を官能基に有するトリアジン誘導体を用いた場合(実施例22〜28、31〜35、38〜42)には、耐折強度が向上していることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、保存安定性が良好であり、該溶液を使用して製造された電子写真用ポリイミドベルトは、表面抵抗ばらつきが低く抑制されている共に、耐折強度を向上させることが可能である。したがって、プリンタ等に用いられる中間転写ベルト、定着ベルト等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックと、トリアジン誘導体と、有機溶剤と、ポリアミド酸とを含むポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液。
【請求項2】
請求項1記載のポリイミドベルト用カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用して形成されてなる電子写真用ポリイミドベルト。

【公開番号】特開2013−112740(P2013−112740A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259832(P2011−259832)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】