説明

カーボンブラック分散液およびこれを用いた半導電性ポリイミドベルトの製造方法

【課題】電気抵抗値のばらつきが小さく、画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用し得、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラを生じることなく、良好な画質を転写することが可能となる中間転写ベルトを実現できる半導電性ポリイミドベルトを提供する。
【解決手段】10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤の存在下、カーボンブラックを溶媒中に分散させたカーボンブラック分散液であって、カーボンブラックの濃度が5〜30重量%である分散液にテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を溶解して重合させ、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製し、該カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜からポリイミド膜を生成させることによって得られる、半導電性ポリイミドベルト。好適には、表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8.0〜14である半導電性ポリイミドベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック分散液、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液、並びに、半導電性ポリイミドベルト及びその製造方法に関し、特に、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等における電子写真方式や静電印刷方式の画像形成プロセスを採用した画像形成装置に使用される機能性ベルトとして特に有用なシームレス状(無端状、無端管状と同義である)の半導電性ポリイミドベルト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式や静電印刷方式等の画像形成プロセスを採用した画像形成装置として、複写機、レーザープリンタ、ビデオプリンタ、ファクシミリ及びそれらの複合機等が知られている。この種の装置では、装置寿命の向上などを目的として、また、フルカラー画像形成のための多色の記録剤(トナー)の重ね合わせを効率よく行うために、感光体等の像担持体上に形成されたトナー画像を紙などの被記録媒体上に直接定着させる方式を回避すべく、中間転写ベルトに一旦転写(一次転写)し(フルカラー画像を形成する場合は、各色毎のトナー像を中間転写ベルトに一旦転写する)、それを紙などの被記録媒体上に転写(二次転写)してから定着を行う中間転写方式が採用されている。また、装置の小型化等を目的に、転写ベルトに紙などの被記録媒体の搬送も兼ねさせる転写ベルトを使用する方式も検討されている。
【0003】
一方、ポリイミドは、機械特性、電気絶縁性、耐熱性に優れることから、電気・電子材料、耐熱材料、OA機器の種々の機能材料等の各分野において幅広く使用されており、上記の画像形成装置における中間転写ベルトや紙などの被記録媒体の搬送も兼ねさせる転写ベルトへの適用も試みられている。そして、このような機能性ベルトにはある程度の導電性が要求されるので、通常、ポリイミドの耐熱性、機械特性を活かしつつ、所要の導電性(半導電性)を付与するために、ポリイミドに導電性フィラーが添加される。例えば、中間転写ベルト等に使用する半導電性ポリイミドベルトの一例として、特許文献1には、ポリイミド系樹脂に導電性フィラーとしてアセチレンブラック等のカーボンブラックを分散させたものが提案されている。
【0004】
また、このような中間転写ベルト等に用いる半導電性ポリイミドベルトの製造方法の一例として、有機溶媒中にカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散液にテトラカルボン酸二無水物成分またはその誘導体とジアミン成分を溶解して重合させることによってカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製し、該カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜からポリイミド膜を生成させることによって、カーボンブラックを分散させたシームレス状のポリイミドベルトを製造する方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
しかし、汎用カーボンブラックをポリイミド系樹脂に分散させたベルトの場合、温度、湿度等の環境変化に対するベルト全体の電気抵抗値の変動は小さいが、カーボンブラックをポリイミド系樹脂に均一に分散させることは非常に難しく、カーボンブラックは二次凝集を起こしやすい。かかるカーボンブラックの二次凝集が生じると、凝集体による導通経路が生じ、ベルト内での電気抵抗値のばらつきにつながり、ベルトを画像形成装置の中間転写ベルトとして用いた場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け、トナーのチリ(飛散)等)が生じるなどの問題がある。
【0006】
このように電気抵抗値のばらつきが中間転写に影響するのは、半導電性ポリイミドベルトの帯電抑制能の不均一化や、導電抑制能の不均一化により局所的な剥離放電や導電が生じやすくなるためと考えられる。かかる帯電抑制能や導電抑制能の不均一化に係わる不具合を抑える観点から、中間転写ベルトや転写ベルトを含む、機能性ポリイミドベルトは、種類や用途にもよるが、所要の半導電性(したがってある一定の範囲の電気抵抗値)を有しつつ、ポリイミドベルトの全体にわたって電気抵抗値が均一であるほど好ましい。とりわけ中間転写ベルトにおいては、その機能から電気抵抗値の均一性が高い(ばらつきが小さい)ことが必要であり、電気抵抗値の均一性が十分ではない場合、上記転写ムラなどの問題が生じやすく、最終画像(トナー定着画像)の画質の安定性、信頼性を低下させることとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−311263号公報
【特許文献2】特開2003−277502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み成されたものであり、その解決しようとする課題は、電気抵抗値のばらつきが小さく、画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用し得、中間転写ベルトとして使用した場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け、トナーのチリ等)を生じることなく、良好な画質を転写することが可能となる中間転写ベルトを実現できる半導電性ポリイミドベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、N−メチルピロリドン等の有機極性溶媒に、カーボンブラックとともに分散剤として界面活性剤を添加して分散処理を行うと、カーボンブラックを凝集が少ない分散状態に分散できるとともにその良好な分散状態が安定に保持されること、特に、特定のアミン価を有するアミン系界面活性剤を用いた場合、カーボンブラックを高い分散状態に分散でき、その分散状態が長期間安定に保持されることを知見した。そして、かくして得られたカーボンブラック分散液を用いて、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の調製、さらにこれを用いたポリイミドベルトの作製を行い、さらに研究を進めた結果、重合反応の阻害やカーボンブラックの凝集が起こることなく、ポリアミド酸、さらにはポリイミド樹脂が生成すること、ならびに電気抵抗値のばらつきが小さく、画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用し得る電気抵抗値を有する半導電性ポリイミドベルトを実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)分散剤として10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤を含有してなるカーボンブラック分散液。
(2)カーボンブラックの濃度が5〜30重量%である、前記(1)記載のカーボンブラック分散液。
(3)10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤を配合した有機極性溶媒にカーボンブラックを分散させたものである、前記(1)又は(2)記載のカーボンブラック分散液。
(4)有機極性溶媒がN−メチル−2−ピロリドンである、前記(3)記載のカーボンブラック分散液。
(5)10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤の濃度が0.01〜2重量%である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のカーボンブラック分散液に、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミンを溶解し、重合させて得られた、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液。
(7)前記(6)記載のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を用いて得られる、半導電性ポリイミドベルト。
(8)表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8.0〜14である、前記(7)記載の半導電性ポリイミドベルト。
(9)画像形成装置の中間転写ベルト用である、前記(7)または(8)記載の半導電性ポリイミドベルト。
(10)前記(6)記載のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜から溶媒を除去し、イミド化反応を進行させることを特徴とする、半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
(11)加熱によってイミド化反応を進行させる、前記(10)記載の製造方法。
(12)カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜を遠心成形して塗膜を均一化した後、該塗膜の加熱を行う、前記(11)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカーボンブラック分散液、およびカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、カーボンブラックの分散性が高く、また長期保管におけるカーボンブラックの分散の安定性が高い。よって、かかるカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を用いて作製した半導電性ポリイミドベルトは、カーボンブラックの分散性が高く、電気抵抗値のばらつきが小さいものとなる。
【0012】
本発明の方法により得られる半導電性ポリイミドベルトは、電気抵抗値のばらつきが小さく、電気抵抗値が特定の範囲にあることから、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等における電子写真方式や静電印刷方式の画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用し得、中間転写ベルトとして使用した場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け、トナーのチリ等)を生じることなく、良好な画質を転写することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、導電性フィラーとしてカーボンブラックが均一性の高い分散状態で分散されたシームレス状(無端管状)のポリイミドベルトである。その表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)は、好適な態様において8.0〜14であり、より好適な態様において8.5〜10.5である。かかる表面抵抗率を有することから、本発明の半導電性ポリイミドベルトは、電子写真方式や静電印刷方式の画像形成装置における機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用され得るものである。すなわち、表面抵抗率の常用対数値がかかる範囲にあることで、中間転写ベルトに使用した場合、像担持体上に形成されたトナー像を良好に中間転写ベルトに転写(一次転写)することができ、各種機能性ベルトとして使用した場合も、局所的な剥離放電や導電に起因する不具合が生じない。
【0014】
前述のとおり、ポリイミドにカーボンブラック等の導電性フィラーを添加した半導電性ポリイミドベルトは公知であり、また、かかる半導電性ポリイミドベルトを得る方法として、例えば、有機溶媒中にカーボンブラックを分散させたカーボンブラック分散液にテトラカルボン酸二無水物成分またはその誘導体とジアミン成分を溶解して重合させることによってカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製し、該カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜からポリイミド膜を生成させることによって、カーボンブラックを分散させたシームレス状ポリイミドベルトを製造する方法が知られている(特許文献2)。
【0015】
本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造方法は、このようなカーボンブラック分散液(以下、単に分散液ともいう)を調製し、続いてこれを用いてカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製し、その塗膜からポリイミド膜を生成させる方法において、カーボンブラックと溶媒との親和性を高めるため、カーボンブラックとともに分散剤として界面活性剤、好ましくは10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤を添加して分散処理を行うことを主たる特徴とする。このようにして得られる本発明のカーボンブラック分散液は、カーボンブラックの分散性が高く、カーボンブラックの粒径が小さい状態に分散されたものとなり、カーボンブラックの凝集や沈殿が起こりにくく、保管時にその粘度と良好な分散状態が長期間安定に保持される。また、該カーボンブラック分散液は、テトラカルボン酸二無水物成分またはその誘導体とジアミン成分との重合反応を阻害することなく、本発明のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を生成させることができる。このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液も、カーボンブラックの分散性が高く、カーボンブラックの粒径が小さい状態に分散されたものであり、したがって、該カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を用いて作製した本発明の半導電性ポリイミドベルトも、カーボンブラックの分散性が高く、電気抵抗値のばらつきが小さいものとなる。
【0016】
本発明におけるカーボンブラック分散液は、カーボンブラックとともに界面活性剤を、カーボンブラックに対する界面活性剤の重量比(カーボンブラック:界面活性剤)が好ましくは1:0.001〜1:0.2、より好ましくは1:0.005〜1:0.1となる割合で使用して、これら両者を溶媒に添加し、カーボンブラックを界面活性剤の存在下に分散させることによって得ることができる。
【0017】
カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの濃度は、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。カーボンブラックの濃度が30重量%を超えると分散が困難となり、カーボンブラックの凝集・沈殿が発生しやすく、分散液の保存安定性が著しく低下する。カーボンブラックの濃度が5重量%未満であると、カーボンブラックの凝集物は生じにくくなるが、生産性やコストで実用上若干の不利がある。
【0018】
10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤の化学構造は特に限定されず、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキシド、ラウリルアミン、ジメチルラウリルアミンなどが例示される。アミン系界面活性剤は、単独で用いてもよく、また2種類以上を併用してもよい。また、市販品を使用することもでき、市販品としては、例えばDISPERBYK-116(ビックケミー・ジャパン(株)製、アミン価65mgKOH/g、不揮発分100%)、DISPERBYK-182(ビックケミー・ジャパン(株)製、アミン価13mgKOH/g、不揮発分43%)を例示することができる。
【0019】
アミン系界面活性剤のアミン価が10mgKOH/g未満である場合、カーボンブラックの分散効率が低く、また、アミン価が160mgKOH/gを超えると、カーボンブラックの分散自体が困難になり、いずれの場合も、分散液がゲル化してしまう。従って、アミン系界面活性剤のアミン価は、10〜160mgKOH/gであり、10〜100mgKOH/gが好ましく、10〜70mgKOH/gがより好ましい。なお、本明細書中、アミン系界面活性剤のアミン価とは、JIS K7237に記載される電位差滴定法、または指示薬滴定法によって求められる特性のことをいい、試料1g中に含まれる全塩基性窒素を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数を指す。
【0020】
アミン系界面活性剤を用いてカーボンブラックを分散させる際には、カーボンブラックの凝集を極力少なくしたカーボンブラック分散液、およびこれを用いたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を調製し、かかるカーボンブラックの凝集が極力少ないカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜からポリイミド膜を生成させる(すなわち、ポリアミド酸のイミド転化を行う)ことが重要である。すなわち、カーボンブラックの凝集が極力少ないカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜からポリイミド膜を生成させることによって、表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が好適な態様において8.0〜14であり、より好適な態様において8.5〜10.5である本発明の半導電性ポリイミドベルトを実現することができる。
【0021】
本発明のカーボンブラック分散液中の10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤の濃度は、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%である。本発明のカーボンブラック分散液のカーボンブラックに対する当該アミン系界面活性剤の重量比(カーボンブラック:アミン系界面活性剤)は、好ましくは1:0.001〜1:0.2であり、より好ましくは1:0.005〜1:0.1である。
【0022】
好適な態様において、カーボンブラックとともに10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤を、好ましくは0.01〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の濃度で溶媒に添加して、カーボンブラックを微細かつ一様に分散させた、カーボンブラック濃度が5〜30重量%のカーボンブラック分散液を調製し、かかる分散液を用いて調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜からポリイミド膜を生成させることにより、表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8.0〜14である本発明の半導電性ポリイミドベルトを得ることができる。
【0023】
カーボンブラック分散液中のアミン系界面活性剤の濃度が0.01重量%未満であるとカーボンブラックの高い分散性が得られず、2重量%よりも大きい場合、アミン系界面活性剤の濃度の増大に伴うカーボンブラックの分散性向上の効果が飽和し、好ましくない。同様に、カーボンブラックに対するアミン系界面活性剤の重量比(カーボンブラック:アミン系界面活性剤)が1:0.001未満の数値であると、カーボンブラックの高い分散性が得られず、1:0.2を超える数値であると、アミン系界面活性剤の濃度の増大に伴うカーボンブラックの分散性向上の効果が飽和し、好ましくない。
【0024】
このようなアミン系界面活性剤を使用してカーボンブラックの凝集粒子を極力減少させたカーボンブラック分散液から調製したカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を使用することで、表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8.0〜14である半導電性ポリイミドベルトを得ることができるのは、カーボンブラックの凝集粒子のない良好な分散状態が、テトラカルボン酸二無水物成分またはその誘導体とジアミン成分の重合反応の過程、及びポリアミド酸のイミド化反応の過程でも持続することから、得られるポリイミド膜(ベルト)にカーボンブラックの凝集による導電経路が生じないためと考えられる。また、一般に、カーボンブラックは、酸化処理が行われて製造され、表面官能基として、カルボキシル基、フェノール基などの酸性官能基を多く有するため、酸性を示すカーボンブラックに対して、アミン系界面活性剤が酸塩基相互作用を示し、高い分散の効果を示すことにもよると考えられる。
【0025】
本発明で使用するカーボンブラックとしては、この種の半導電性ポリイミドベルトの導電性フィラーとして知られている公知のカーボンブラックを制限なく使用することができ、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。カーボンブラックはいずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。これらのカーボンブラックの種類は、目的とする導電性により適宜選択することができ、中間転写ベルトや転写搬送ベルト等の中抵抗から高抵抗域(表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8〜14)において制御が必要である場合は、特にチャンネルブラックやファーネスブラックが好適に用いられる。また、カーボンブラックは、酸化処理、グラフト処理等により酸化劣化を防止したものや溶媒への分散性を向上させたものを用いることができる。
【0026】
カーボンブラックは、ベルト内の抵抗ばらつきを抑え、画質を均一化する観点から、粒子径が50〜800μmの範囲にあるものが好ましく、50〜400μmの範囲にあるものがより好ましい。なお、ここでいうカーボンブラックの粒子径とは、カーボンブラックの一次粒子の平均粒子径であり、粒径分布測定装置LB−500((株)堀場製作所製)等で測定される、算術平均径である。
【0027】
本発明の半導電性ポリイミドベルトにおけるカーボンブラックの使用量は、その目的に応じ、添加するカーボンブラックの種類により適宜決定される。一般的には、画像形成装置用機能性ベルトとして使用する場合、ベルトの機械的強度、導電性、カーボンブラックの分散性等の観点から、ポリイミドベルト中のカーボンブラックの含有量は、ポリイミド樹脂固形分に対し3〜40重量%が好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。
【0028】
溶媒としては有機極性溶媒が好ましい。有機極性溶媒としては、カーボンブラックの分散性を高めるものであれば特に制限されないが、カーボンブラックの分散用と重合反応の溶媒用として兼用できるものが好適に使用される。かかる有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等のN,N−ジアルキルアミド類の他、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン(N−メチルピロリドン(NMP))、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられ、これらはいずれかを単独で使用しても、2種以上を併せて用いても差し支えない。これらの中でもポリアミド酸ワニスの保存性、皮膜成形性の観点からNMPが好ましい。
【0029】
カーボンブラックの分散方法は、特に、限定されず、例えば、ナノマイザー、超音波、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ホモジナイザー等の公知の方法を適宜選択して用いることができる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
分散処理の条件は、特に限定はされず、カーボンブラックの種類、採用する分散方法(機械的分散方法)等によっても異なるが、カーボンブラック分散液のカーボンブラック粒径(メジアン径)が0.12μm未満になるまで分散処理を行えばよい。かかるメジアン径は、例えば調製したカーボンブラック分散液を採取し、必要に応じてその濃度を適切な濃度に調整し、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500((株)堀場製作所製)のような機器を用いて測定することができる。また、カーボンブラック分散液中のカーボンブラックの分散状態は光学顕微鏡(例えばECLIPSE ME600L、(株)ニコン製)等によって観察することもでき、定期的に分散液を観察しながら、カーボンブラックの凝集物(粒径が0.12μm以上の凝集物)が観察されない状態まで、分散処理を行ってもよい。
【0031】
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、上記のようにして調製されたカーボンブラック分散液に、必要に応じて溶媒を追加し、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン成分を溶解し、重合させることによって得ることができる。ここで、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン成分とは通常等モル量使用される。カーボンブラック分散液に溶媒を追加する場合は、ポリアミド酸濃度が5〜30重量%となる程度に追加しておけばよい。
【0032】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0033】
また、ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン(PDA)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−6−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0034】
テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体、ジアミン成分はいずれも、単独で用いてもよく、2種以上のものを併用してもよい。
【0035】
重合反応の際のモノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物成分またはその誘導体とジアミン成分の濃度)は、種々の条件に応じて設定されるが、通常、5〜30重量%程度が好ましい。また反応温度は、イミド化反応によるポリイミドの析出を抑える観点から、5〜80℃に設定することが好ましく、5〜50℃に設定することがより好ましい。
【0036】
得られるポリアミド酸溶液は、重合によりその粘度が上昇するが、そのまま加熱を行うとポリアミド酸溶液の粘度が低下する。この現象を利用して、ポリアミド酸溶液を所定の粘度に調整することができる。このときの加熱温度は50〜90℃が好ましい。
【0037】
このようにして得られたカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜を加熱して溶媒を除去し、イミド転化(イミド化反応)を進行させることによって、本発明の半導電性ポリイミドが得られる。
【0038】
前記イミド転化(イミド化反応)は、高温加熱による方法、あるいは触媒を単独で用いて、もしくは触媒と脱水剤を併用して、ポリアミド酸を低温加熱する方法のいずれを用いてもよい。
【0039】
加熱方法としては、加熱炉内を通過させる方法や加熱風を吹き付ける方法などが挙げられるが、特に制限されず、例えば、加熱炉としては放射型、循環風型などが挙げられ、加熱風を形成する機器としては、熱風器、遠赤外線ヒータなどが挙げられる。また、前記塗膜を形成するための金型の周囲にコイルを巻き、誘導加熱により直接金型を加温する方法も挙げられる。
【0040】
前記触媒としては、イミド転化(イミド化反応)を促進するものであれば特に限定されないが、例えばイミダゾール類、第2級アミン、第3級アミン等が挙げられ、具体的には例えば、2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、イミダゾール、イソキノリン等が挙げられる。触媒の添加量としては、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸1モル当量に対して0.1〜2モル当量添加することが好ましい。これらの触媒は脱水剤を使用しない加熱イミド化においても低温でのイミド化促進剤としても有効である。
【0041】
前記脱水剤としては、有機カルボン酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド類、低級脂肪酸ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、およびチオニルハロゲン化物等が挙げられる。
【0042】
半導電性ポリイミドを成形して、無端状(シームレス状)ベルトとするには、限定されないが、例えば次に例示する方法で、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜を遠心成形して塗膜を均一化した後、該塗膜の加熱を行って、溶媒を除去し、イミド化反応を進行させる。
【0043】
まず円筒金型内にカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を供給し、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により均一に展開する。このとき溶液の粘度はB型粘度計で1〜1000Pa・s(25℃)が好ましい。これ以外の場合は、遠心成形の際、均一に展開することが困難であり、ベルトの厚みばらつきの原因となる。製膜後、80〜150℃にて加熱を行い、溶媒を除去する。次いで300〜450℃の高温で加熱することにより、閉環イミド化反応を進行させる。カーボンブラックの分散状態のばらつきや、ベルトの抵抗値のばらつきを防止する観点から、この溶媒除去およびイミド化反応時の加熱は均等に行う必要がある。均等に加熱する方法としては、金型を回転させながら加熱する、溶媒を蒸発させるための熱風の循環を改善する等の方法や、低温で投入し、昇温速度を小さくするなどの方法がある。最後に、室温まで冷却した後、金型から取り出し、半導電性シームレスポリイミドベルトを得る。
【0044】
このようにして得られた半導電性ポリイミドベルトは、カーボンブラックの分散性が高く、電気抵抗値のばらつきが小さいことから、電子写真方式や静電印刷方式の画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用し得、中間転写ベルトとして使用した場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け、トナーのチリ等)の不具合を生じることなく、良好な画質を転写することが可能となる。
【0045】
本発明のポリイミドベルトは、好適な態様において、その表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8.0〜14の半導電性を示し、さらに導電性フィラーとしてのカーボンブラックの分散状態が良好であることから、安定した電気特性、機械的特性を示す。よって、中間転写ベルト以外に、電子写真方式や静電印刷方式の画像形成装置における紙などの被記録媒体の搬送も兼ねさせる転写ベルト等の他の機能性ベルトとしても、使用可能である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<評価方法>
以下の実施例、比較例において得られたカーボンブラック分散液、半導電性ポリイミドベルトは、分散液のゲル化により測定不能であった場合を除き、次の方法により特性の測定を行い、評価した。
【0048】
1.カーボンブラック分散液の粘度
分散液の温度を25℃に調整し、振動式粘度計ビスコメイトVM-1A-L(山一電機(株)製)を用いて測定した。
2.カーボンブラック分散液のカーボンブラック粒径
分散液10mlをN−メチルピロリドン(NMP)で100倍に希釈し、動的光散乱式粒径分布測定装置LB-500((株)堀場製作所製)を用いて測定し、メジアン径を評価した。
3.ポリイミドベルトの表面抵抗率
ポリイミドベルトを温度25±5℃、湿度60±5%RHの環境下でプローブUR-100を備えた抵抗率計ハイレスタIP MCP-HT260(三菱化学(株)製)を用いて、プローブをポリイミドベルト表面に押し当てて、100Vの電圧を印加し、1分後に表面抵抗率ρs(Ω/□)をその常用対数logρs(Ω/□)として測定した。実施例については12箇所にて1回ずつ測定を行い、その平均値を求めた。比較例については、12箇所にて1回ずつ測定を行った。得られたデータをベルトの電気抵抗値およびその均一性の指標とした。
【0049】
実施例1
890.0gのN−メチル−2−ピロリドン中に、分散剤として界面活性剤DISPERBYK-116(ビックケミー・ジャパン(株)製、アミン価65mgKOH/g、不揮発分100%)を10.0g溶解し、100.0gのカーボンブラック(三菱化学(株)製、MA100、粒子径24nm)を超音波をかけながら添加した。次に、この溶液をボールミルにて室温にて12時間混合し、10wt%のカーボンブラック分散液を得た。
【0050】
この分散液800.0gにN−メチル−2−ピロリドン991.3gを投入し、次いで248.2gの3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と45.6gのp−フェニレンジアミンと84.4gの4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを室温、窒素雰囲気中で、投入、溶解し、重合させた。重合反応により増粘した溶液をスリーワンモーター(新東科学(株)製、FBL300)にて撹拌しながら70℃で15時間加熱することにより粘度を調整し(150Pa・s)、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を得た。この溶液を内径180mm、長さ500mmのドラム金型内周面に、ディスペンサにて最終の厚さが75μmとなるよう塗布し、1500rpmで10分間回転させて、均一な展開層を得た。熱風を均等に循環させた120℃の乾燥炉内にて250rpmでドラム金型を回転させながら、30分間加熱し、溶剤を除去した。さらに、前記回転速度で金型を回転させながら、2℃/minの速度で360℃まで昇温させ、そのまま10分加熱を続け、イミド化を進行させた。室温に冷却した後、金型内面より剥離し、ポリイミド樹脂100重量部に対してカーボンブラックを23重量部含む、厚さ75μmの半導電性ポリイミドベルトを得た。
【0051】
カーボンブラック分散液の保存安定性を評価するため、別途上記と同様に、カーボンブラック分散液を調製し、その全体を30日間、25℃にて密封して保管した。この保管した分散液を用いて、上記と同様にカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の調製、およびこれを用いたポリイミドベルトの作製を行い、ポリイミド樹脂100重量部に対してカーボンブラックを23重量部含む、厚さ75μmの半導電性ポリイミドベルトを得た。
【0052】
カーボンブラック分散液の粘度およびカーボンブラック粒径についての評価は、カーボンブラック分散液の調製時、および30日間保管後に行った。ポリイミドベルトの表面抵抗率の評価も、調製時のカーボンブラック分散液、30日間保管後のカーボンブラック分散液を用いて作製したそれぞれのポリイミドベルトについて行った。なお、30日間保管した分散液の粘度、およびカーボンブラック粒径の評価、ならびに該分散液を用いた半導電性ポリイミドベルトの作製は、保管した分散液を撹拌せず、そのまま使用して行った。
【0053】
実施例2
N−メチル−2−ピロリドンを876.7g使用したこと、分散剤として界面活性剤DISPERBYK-182(ビックケミー・ジャパン(株)製、アミン価13mgKOH/g、不揮発分43%)を23.3g使用したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、10wt%のカーボンブラック分散液を調製し、これを用いてポリイミド樹脂100重量部に対してカーボンブラックを23重量部含む、厚さ75μmの半導電性ポリイミドベルトを得た。
【0054】
カーボンブラック分散液の保存安定性を評価するため、別途上記と同様に、カーボンブラック分散液を調製し、実施例1と同様に30日間保管し、この保管した分散液を用いて、実施例1と同様に半導電性ポリイミドベルトの作製を行い、ポリイミド樹脂100重量部に対してカーボンブラックを23重量部含む、厚さ75μmの半導電性ポリイミドベルトを得た。
【0055】
カーボンブラック分散液の粘度およびカーボンブラック粒径、ならびにポリイミドベルトの表面抵抗率の評価は実施例1と同様に、得られたそれぞれのものについて行った。
【0056】
比較例1
N−メチル−2−ピロリドンを876.7g使用したこと、分散剤として界面活性剤DISPERBYK-130(ビックケミー・ジャパン(株)製、アミン価190mgKOH/g、不揮発分52%)を19.2g使用したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、10wt%のカーボンブラック分散液を調製し、これを用いてポリイミド樹脂100重量部に対してカーボンブラックを23重量部含む、厚さ75μmの半導電性ポリイミドベルトを得た。
【0057】
カーボンブラック分散液の保存安定性を評価するため、別途上記と同様に、カーボンブラック分散液を調製し、実施例1と同様に保管したところ、3日後にゲル化が起こり、ポリイミドベルトの製造に適さないものとなった。
【0058】
カーボンブラック分散液の粘度およびカーボンブラック粒径、ならびにポリイミドベルトの表面抵抗率の評価は、調製時のカーボンブラック分散液、およびこれを用いて得られたポリイミドベルトについて行った。
【0059】
比較例2
N−メチル−2−ピロリドンを875.0g使用したこと、分散剤として界面活性剤DISPERBYK-2000(ビックケミー・ジャパン(株)製、アミン価4mgKOH/g、不揮発分40%)を25.0g使用したこと以外は、実施例1と同様の操作にて、10wt%のカーボンブラック分散液を調製したが、カーボンブラックが均一に分散せず、分散液がゲル化し、ポリイミドベルトの製造に適した分散液は得られなかった。
【0060】
<評価結果>
評価結果を表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
65mgKOH/g、または13mgKOH/gのアミン価を有する分散剤を使用して調製した、実施例1および2の調製時および30日保管時の各分散液は、カーボンブラックのメジアン径が0.09〜0.11μm、粘度が3.2〜4.8mPa・sの範囲にあり、30日間保管してもカーボンブラック粒径および粘度が増大しにくいものであった。これらの分散液は、カーボンブラックの分散性が高く(カーボンブラックのメジアン径は比較例1のメジアン径0.21μmの約1/2であった)、保存安定性を有していた。これらの分散液を使用して得られたポリイミドベルトの表面抵抗率の常用対数値9.1〜9.5は、特に中間転写ベルトとして好適な値である。かかる特性を有する実施例1および2において得られたポリイミドベルトは、画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして、好適に使用し得るものであり、これらの実施例において使用した分散剤は、半導電性ポリイミドベルトを製造するための分散剤として特に適している。
【0063】
比較例1においては、分散液内でカーボンブラックの分散が進まず、分散液調製時のカーボンブラックメジアン径は、実施例と比較して大きくなった。得られたポリイミドベルトも、表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8未満であり、カーボンブラック含有量が実施例と同じであるにもかかわらず(ポリイミド樹脂100重量部に対してカーボンブラックを23重量部含む)、実施例と比較して、該対数値が低くなっており、ポリイミドベルト内でのカーボンブラックの分散性が劣ることが示された。また分散液の経時安定性も低く、3日後に目視にてゲル化が観察され、カーボンブラックの良好な分散状態が保持されなかった。比較例2においては、分散液は、調製時においても流動性のあるものとならず、目視にてゲル化が観察され、カーボンブラックが均一な分散状態に達しなかった。これら比較例1および2において使用した分散剤(それぞれアミン価は190mgKOH/g、4mgKOH/g)は、いずれも半導電性ポリイミドベルトを製造するための分散剤として適さず、画像形成装置の機能性ベルトとして好適に使用し得るような半導電性ポリイミドベルトの製造に資するものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、カーボンブラックの分散性が高く、電気抵抗値のばらつきが小さく、電気抵抗値が特定の範囲にあることから、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等における電子写真方式や静電印刷方式の画像形成装置の機能性ベルトとして、特に中間転写ベルトとして好適に使用し得、中間転写ベルトとして使用した場合、印刷シートに転写したトナー像に転写ムラ(白抜け、トナーのチリ等)を生じることなく、良好な画質を転写することが可能となる。本発明のカーボンブラック分散液は、前記特性を有する本発明の半導電性ポリイミドベルトの製造に好適に使用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散剤として10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤を含有してなるカーボンブラック分散液。
【請求項2】
カーボンブラックの濃度が5〜30重量%である、請求項1記載のカーボンブラック分散液。
【請求項3】
10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤を配合した有機極性溶媒にカーボンブラックを分散させたものである、請求項1又は2記載のカーボンブラック分散液。
【請求項4】
有機極性溶媒がN−メチル−2−ピロリドンである、請求項3記載のカーボンブラック分散液。
【請求項5】
10〜160mgKOH/gのアミン価を有するアミン系界面活性剤の濃度が0.01〜2重量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンブラック分散液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンブラック分散液に、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミンを溶解し、重合させて得られた、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液。
【請求項7】
請求項6記載のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液を用いて得られる、半導電性ポリイミドベルト。
【請求項8】
表面抵抗率の常用対数値logρs(Ω/□)が8.0〜14である、請求項7記載の半導電性ポリイミドベルト。
【請求項9】
画像形成装置の中間転写ベルト用である、請求項7または8記載の半導電性ポリイミドベルト。
【請求項10】
請求項6記載のカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜から溶媒を除去し、イミド化反応を進行させることを特徴とする、半導電性ポリイミドベルトの製造方法。
【請求項11】
加熱によってイミド化反応を進行させる、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液の塗膜を遠心成形して塗膜を均一化した後、該塗膜の加熱を行う、請求項11記載の製造方法。


【公開番号】特開2010−195879(P2010−195879A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40276(P2009−40276)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】