説明

カーボンブラック組成物、カーボンブラック含有塗膜、およびこれを有する磁気記録媒体

【課題】カーボンブラックが溶媒中に高度に分散された組成物(カーボンブラック組成物)を提供すること。
【解決手段】カーボンブラックと、脂肪族三級モノアミンおよび脂環式三級アミンからなる群から選ばれる有機三級アミンと、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むことを特徴とするカーボンブラック組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック組成物に関するものであり、詳しくは、溶媒中でのカーボンブラックの高度な分散状態を実現し得るカーボンブラック組成物に関するものである。
更に本発明は、上記カーボンブラック組成物から得られるカーボンブラック含有塗膜、および上記塗膜を有する磁気記録媒体にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、着色材料、導電性材料、充填剤等として、印刷インキ、塗料、化粧品、電池等の様々な分野に使用されている。また、磁気記録分野では、磁気テープや磁気ディスクの帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上等のために磁性層、非磁性層、バックコート層等にカーボンブラックを添加することが広く行われている。
【0003】
上記の通りカーボンブラックは様々な分野において使用される有用な素材であるが、溶媒中でストラクチャーと呼ばれる高次構造を形成し凝集する性質を有し、微粒子になるほどその性質が顕在化し各種弊害をもたらす。例えば塗布型磁気記録媒体においては、塗布液中でカーボンブラックが凝集すると、該塗布液を支持体上に塗布、乾燥させて形成される磁性層等の塗膜の平滑性を大きく低下させることとなる。また、印刷インク中でカーボンブラックが凝集すると、このインクを用いた印刷物における色ムラや色調悪化の原因となる。
【0004】
そのため従来、溶媒中でのカーボンブラックの分散性を高めるために様々な試みがなされてきた。例えば磁気記録分野では、各種芳香族化合物を分散剤として使用することでカーボンブラックの分散性を高めることが提案されている(例えば特許文献1〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4149648号明細書
【特許文献2】特開2002−140813号公報
【特許文献3】特開2003−168208号公報
【特許文献4】特開2005−222630号公報
【特許文献5】特開2005−222631号公報
【特許文献6】特開2006−185525号公報
【特許文献7】特開2006−185526号公報
【特許文献8】特開2009−224009号公報
【特許文献9】特許第2602273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通りカーボンブラックは様々な分野において広く使用されており、その分散性向上(凝集防止)が常に求められている。しかしストラクチャーを形成するという特異な性質を有するが故にその分散性向上は容易ではなく、従来の方法により達成されるカーボンブラックの分散状態は、例えば高密度記録化のために高度な塗膜平滑性が求められる磁気記録分野などにおいて、必ずしも十分なものではなかった。
【0007】
かかる状況下、本発明は、カーボンブラックが溶媒中に高度に分散された組成物(カーボンブラック組成物)を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、カーボンブラックを、脂肪族三級モノアミンおよび脂環式三級アミンからなる群から選ばれる有機三級アミンと、特定のケトンまたはアルコール溶媒、具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールからなる群から選ばれる溶媒とともに含む系において、カーボンブラックの分散性が大きく改善されることを新たに見出した。この点について本発明者は、以下のように推察している。
カーボンブラックについては、その表面に水酸基やカルボキシル基からなる親水部分と、炭素からなる疎水部分を有すること、この炭素からなる疎水部分はグラファイト構造からなる芳香環であること、が知られている(例えば、接着の技術 Vol.30 No.4 (2011)通巻101号 5ページ 図1.7参照)。そしてカーボンブラックの分散性向上は、この親水部分または疎水部分のどちらかに親和性を有するユニットを持つ化合物によって親水部分または疎水部分を被覆することにより達成されると考えられる。ただし、親水部分または疎水部分が被覆される前にカーボンブラックが溶媒中でストラクチャーを形成してしまっては、どちらかの部分に親和性を有するユニットを持つ化合物を添加したとしても、ストラクチャーの形成を阻害することにより分散性向上を達成することは困難である。
これに対し本発明者が見出した上記の系では、その中でカーボンブラックがストラクチャーを形成しにくい溶媒であるメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールからなる群から選ばれる溶媒と親水部分に親和性を有する上記の有機三級アミンを組み合わせて使用することで、上記有機三級アミンによりカーボンブラック表面の親水部分を被覆してストラクチャーの形成を阻害することが可能となると考えられる。そしてこれによりカーボンブラックが高度に分散されたカーボンブラック組成物が得られると、本発明者は推察している。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0009】
即ち、上記目的は下記手段により達成された。
[1]カーボンブラックと、脂肪族三級モノアミンおよび脂環式三級アミンからなる群から選ばれる有機三級アミンと、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むことを特徴とするカーボンブラック組成物。
[2]前記脂肪族三級モノアミンは、下記一般式(1)で表される[1]に記載のカーボンブラック組成物。
【化1】

[一般式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基を表す。]
[3]一般式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基を表す[2]に記載のカーボンブラック組成物。
[4]前記有機溶媒はメチルエチルケトンおよび/またはシクロヘキサノンを含む[1]〜[3]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物。
[5]前記有機溶媒はエタノールを含む[1]〜[4]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物。
[6]前記有機溶媒はイソホロンを含む[1]〜[5]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物。
[7]結合剤樹脂を含まない状態で、動的光散乱法による液中粒子径が70nm以下の分散状態で前記カーボンブラックを含んでなる[1]〜[6]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物。
[8]結合剤樹脂を更に含む[1]〜[6]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物。
[9]前記結合剤樹脂はビニル系共重合体およびポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる[8]に記載のカーボンブラック組成物。
[10]動的光散乱法による液中粒子径が50nm以下の分散状態で前記カーボンブラックを含んでなる[8]または[9]に記載のカーボンブラック組成物。
[11]磁気記録媒体形成用塗料組成物として、またはその調製のために使用される、[1]〜[10]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物。
[12]磁気記録媒体の非磁性層形成用塗料組成物として、またはその調製のために使用される、[11]に記載のカーボンブラック組成物。
[13]磁気記録媒体のバックコート層形成用塗料組成物として、またはその調製のために使用される、[11]に記載のカーボンブラック組成物。
[14][1]〜[10]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物を乾燥させてなるカーボンブラック含有塗膜。
[15]非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
[14]に記載のカーボンブラック含有塗膜を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
[16]前記カーボンブラック含有塗膜は、非磁性支持体と磁性層との間に位置する非磁性層である、[15]に記載の磁気記録媒体。
[17]前記カーボンブラック含有塗膜は、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面上に位置するバックコート層である[15]に記載の磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カーボンブラックが溶媒中に高度に分散したカーボンブラック組成物を提供することができる。かかる本発明のカーボンブラック組成物は、塗布型磁気記録媒体用塗布液、印刷インク等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカーボンブラック組成物は、カーボンブラックと、脂肪族三級モノアミンおよび脂環式三級アミンからなる群から選ばれる有機三級アミンと、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むものである。先に説明したように本発明者は、ストラクチャーを形成しにくい溶媒である上記有機溶媒中でカーボンブラックと上記有機三級アミンを共存させると、上記有機三級アミンがカーボンブラックの親水部分を被覆する結果、カーボンブラックの高度な分散状態を実現することができると推察している。
以下、本発明のカーボンブラック組成物について、更に詳細に説明する。
【0012】
脂肪族三級モノアミンおよび脂環式三級アミンは、いずれも、窒素原子に芳香族基が直接結合していない。本発明において、当該有機三級アミンを使用する理由は、窒素原子に芳香族基が直接置換した三級アミンでは、上記有機溶媒と併用したとしてもカーボンブラックの分散性を高度に高めることが困難であるからであるが、これは窒素原子に芳香族基が直接置換した三級アミンはカーボンブラック表面の親水部分に選択的に吸着する性質に乏しいためと推察される。
【0013】
脂肪族三級モノアミンとしては、カーボンブラックの分散性をより一層高めるうえでは、下記一般式(1)で表される脂肪族三級モノアミンを使用することが好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
一般式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基を表す。上記アルキル基は、無置換であることができ、または置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1〜6のアルキル基)、水酸基、アルコキシル基(例えば炭素数1〜6のアルコキシル基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えばフェニル基)等を挙げることができる。ここで置換基を有する場合の「炭素数」とは、置換基を含まない部分の炭素数を意味するものとする。また、本発明において、「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。なお一般式(1)において、R、RおよびRは、すべて同一構造であってもよく異なっていてもよい。なお上記の通り、窒素原子に芳香族基が直接置換した三級アミンはカーボンブラック表面の親水部分に選択的に吸着する性質に乏しいと推察されるが、これはカーボンブラックの疎水部分に芳香族基が吸着することがアミン部分が親水部分を被覆することの妨げとなるためと考えられる。一方、アルキル基の置換基として芳香族基が含まれている場合には、芳香族基はアルキレン基を介してアミンと連結している。アルキレン基を介することでアミン部分が自由回転可能となるため、芳香族基がカーボンブラックの疎水部分に吸着したとしても、これに妨げられることなくアミン部分は親水部分に吸着できると考えられる。これがアルキル基の置換基として芳香族基を含む脂肪族三級モノアミンによっても、所定の溶媒との組み合わせにおいて、カーボンブラックの高度な分散状態が達成される理由と推察される。
【0016】
上記アルキル基の炭素数は1〜18の範囲であり、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1〜8の範囲である。上記範囲内であれば、前記溶媒中でカーボンブラックをより一層高度に分散できるため好ましい。上記アルキル基は直鎖であっても分岐していてもよい。
【0017】
上記脂環式三級アミンに含まれる脂肪族環は、飽和または不飽和脂肪族環であって、単環、架橋環、縮合環のいずれであってもよい。上記脂肪族環は、カーボンブラックの分散性をより一層高めるためには、好ましくは4〜8員環であり、より好ましくは5〜7員環である。また、環内で複数の窒素がアミジン構造を形成する脂環式三級アミンは、より一層すぐれた分散性向上効果を示すため好ましい。これはアミジン構造を有することで塩基性が強くなることによるものと考えられる。
【0018】
以上説明した有機三級アミンの好ましい具体例としては、後述する実施例で使用した各種有機三級アミンを挙げることができる。
【0019】
本発明のカーボンブラック組成物に含まれるカーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック等の各種カーボンブラックを用途に応じて選択して使用することができる。本発明において使用可能なカーボンブラックについては、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0020】
例えば塗布型磁気記録媒体では、非磁性層にカーボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすること、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。また、非磁性層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。非磁性層に使用されるカーボンブラックの比表面積は通常、50〜500m/g、好ましくは70〜400m/g、DBP吸油量は通常、20〜400ml/100g、好ましくは30〜400ml/100gである。非磁性層に使用されるカーボンブラックの平均一次粒子径は通常、5〜80nm、好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。
また、塗布型磁気記録媒体のバックコート層に微粒子カーボンブラックを添加することで、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。バックコート層に使用される微粒子カーボンブラックとしては、平均一次粒子径が5〜30nmの範囲にあり、比表面積が60〜800m2/gの範囲にあり、DBP吸油量が50〜130ml/100gの範囲にあり、pHが2〜11の範囲にあるものが好ましい。
上記カーボンブラックの詳細については、例えば特許第4149648号明細書段落[0033]、[0053]を参照できる。また、磁性層に含まれるカーボンブラックの詳細については、特許第4149648号明細書段落[0067]を参照できる。本発明のカーボンブラック組成物は、上記カーボンブラックを任意に添加される各種成分とともに含むことで、塗布型磁気記録媒体形成用塗料組成物として、または該塗料組成物の調製のために使用することができる。例えば、塗布型磁気記録媒体の非磁性層またはバックコート層形成用塗料組成物として、または該塗料組成物の調製のために、本発明のカーボンブラック組成物を使用することで、カーボンブラックが高度に分散した非磁性層、バックコート層を有する塗布型磁気記録媒体を得ることができる。
また、上記カーボンブラックは、印刷インクの顔料としても好適に使用されるものであり、これを含有する本発明のカーボンブラック組成物は、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷方式用の黒色インキとして好適に使用することができる。
【0021】
カーボンブラックの分散性をより一層向上する観点からは、カーボンブラック100質量部に対して1〜50質量部の割合で前記有機三級アミンを使用することが好ましく、1〜20質量部の割合で使用することがより好ましい。また、同様の理由から本発明のカーボンブラック組成物において、カーボンブラックに対する溶媒の総量は、カーボンブラック100質量部に対して100〜1000質量部とすることが好ましい。
【0022】
本発明のカーボンブラック組成物における必須溶媒は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールからなる群から選ばれるものである。これら必須溶媒以外の溶媒を使用する場合には、予めカーボンブラックと有機三級アミンを上記必須溶媒中で混合することで、有機三級アミンによりカーボンブラック表面を被覆することが好ましい。これにより、その後に他の溶媒が添加されたとしても、カーボンブラックの分散性を良好に維持することができる。
【0023】
上記の通り本発明のカーボンブラックにおける必須溶媒は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールであり、中でもカーボンブラックの分散性向上効果の点からはメチルエチルケトンおよび/またはシクロヘキサノンが少なくとも含まれることが好ましい。上記必須溶媒は1種単独で用いてもよく、任意の比率で2種以上組み合わせて用いてもよい。メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールは、いずれも入手が容易であるため、磁気記録分野、印刷分野、化粧品分野等の各種分野において広く用いられている有機溶媒である。本発明のカーボンブラック組成物は、これら溶媒を必須溶媒として含むため、上記の各種分野における有用性が高い。この点も本発明のカーボンブラック組成物の利点の1つである。また、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびエタノールは、比較的低沸点であり安全性も高いため、取扱いが容易である。メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびエタノールは、この点からも好ましい溶媒である。
【0024】
本発明のカーボンブラック組成物は、上記必須溶媒以外の溶媒を含むこともできるが、その場合には必須溶媒が溶媒全量の50質量%以上を占めることが好ましく、50〜95質量%を占めることがより好ましい。併用可能な溶媒としては、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒等の各種溶媒を挙げることができる。併用可能なケトン系溶媒の具体例としては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等を挙げることができる。ただし、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族系溶媒はカーボンブラックのストラクチャー形成を促進する可能性があるため併用しないことが好ましく、併用する場合は溶媒全量の5質量%未満とすることが望ましい。
【0025】
微粒子の分散性を高める一般的手法としては、結合剤樹脂により微粒子表面を被覆する方法が知られているが、本発明のカーボンブラック組成物は上記必須溶媒と前記有機三級アミンを組み合わせることで、結合剤樹脂を併用しないとしてもカーボンブラックの高度な分散状態を実現することができる。具体的には、本発明のカーボンブラック組成物は、結合剤樹脂を含まない状態でも、例えば動的光散乱法により測定される液中粒子径が150nm以下、好ましくは70nm、更に好ましくは50nm以下というカーボンブラックの高度な分散状態を実現することができる。
ここで光散乱法により測定される液中粒子径とは、本発明のカーボンブラック組成物におけるカーボンブラックの存在状態、即ち分散状態の指標であり、この値が小さいほどカーボンブラックが凝集を起こさず一次粒子に近い状態で良好に分散していることを意味する。動的光散乱法による測定は、例えばHORRIBA社製動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500を用いて行うことができる。なお、測定精度を高めるために測定対象の液を希釈したうえで液中粒径を測定することも可能である。この場合、測定精度をよりいっそう高めるためには、希釈溶媒として測定対象の液に含まれる溶媒を使用することが好ましく、測定対象の液と同一の溶媒を使用することがより好ましい。
【0026】
また、本発明のカーボンブラック組成物は結合剤樹脂を含むことで、カーボンブラックをより一層高度に分散させることができる。結合剤樹脂を併用することで、上記の液中粒子径として50nm以下、更には40nm以下という、きわめて高度な分散状態でカーボンブラックを分散させることも可能となる。なお結合剤樹脂の使用の有無にかかわらず、上記液中粒子径の下限値はカーボンブラックの一次粒子径または平均一次粒子径となる。
【0027】
使用可能な結合剤樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などを挙げることができ、中でもビニル系共重合体、ポリウレタン樹脂の使用が好ましい。結合剤樹脂は、カーボンブラック100質量部に対して、例えば1〜100質量部の割合で使用することができる。
【0028】
本発明におけるカーボンブラック等の粉末の平均粒子サイズは、以下の方法により測定することができる。
粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の磁性体を選びデジタイザーで粉体の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。上記方法により測定される粒子サイズの平均値を当該性粉末の平均粒子サイズとする。
【0029】
本発明において、粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
【0030】
本発明のカーボンブラック組成物は、以上説明した必須溶媒、有機三級アミン、およびカーボンブラックを同時または順次混合することにより調製することができる。カーボンブラックの分散性をより一層高度に高めるためには、必須溶媒以外の溶媒や本発明のカーボンブラック組成物の用途に応じて選択して使用される各種添加剤等の任意成分は、上記必須成分を混合した後に添加することが好ましい。
【0031】
以上説明した本発明のカーボンブラック組成物は、塗布型磁気記録媒体、印刷インキ、塗料、化粧品、電池等のカーボンブラックを高度に分散することが求められる各種分野への使用に適するものである。
【0032】
更に本発明は、本発明のカーボンブラック組成物を乾燥させてなるカーボンブラック含有塗膜にも関するものである。
【0033】
先に説明した本発明のカーボンブラック組成物は高度な分散状態のカーボンブラックを含むことができるので、かかる組成物を、例えば支持体上に塗布して乾燥させることで、カーボンブラックの凝集による表面荒れのない、優れた表面平滑性を有する塗膜を得ることができる。本発明の塗膜の一態様は、磁気記録媒体のバックコート層、非磁性層、磁性層等であるがこれに限定されるものではなく、帯電防止シート等の各種形態で使用可能である。
【0034】
更に本発明は、非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、上記の本発明のカーボンブラック組成物を乾燥させてなるカーボンブラック含有塗膜を含むことを特徴とする磁気記録媒体にも関する。本発明の磁気記録媒体に含まれる前記カーボンブラック含有塗膜は、通常、結合剤を含む。結合剤の詳細については、先に説明した通りである。
一態様によれば、前記カーボンブラック含有塗膜は、非磁性支持体と磁性層との間に位置する非磁性層であることができる。また、他の一態様によれば、前記カーボンブラック含有塗膜は、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面上に位置するバックコート層であることができる。または、更に別の態様によれば、前記カーボンブラック含有塗膜は、磁性層であることができる。非磁性層、バックコート層、磁性層に含まれるカーボンブラックについては、先に説明した通りである。
【0035】
塗布型磁気記録媒体の非磁性層は、非磁性粉末および結合剤を含む。前記カーボンブラック含有塗膜が、塗布型磁気記録媒体の非磁性層である場合、非磁性層に含まれる非磁性粉末の全量がカーボンブラックであってもよく、カーボンブラックとともに他の非磁性粉末が含まれていてもよい。
【0036】
本発明の磁気記録媒体の層構成については、非磁性支持体の好ましい厚さは3〜80μmである。磁性層の厚さは、用いる磁気ヘッドの飽和磁化量やヘッドギャップ長、記録信号の帯域により最適化されるものであるが、高容量化の観点から、好ましくは10nm〜100nmであり、より好ましくは20nm〜80nmである。磁性層は少なくとも一層あればよく、磁性層を異なる磁気特性を有する2層以上に分離してもかまわず、公知の重層磁性層に関する構成が適用できる。非磁性層の厚さは、0.6〜3.0μmであることが好ましく、0.6〜2.5μmであることがより好ましく、0.6〜2.0μmであることがさらに好ましい。バックコート層の厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.1〜0.7μmが更に好ましい。
なお、本発明の磁気記録媒体が非磁性層を有する場合、該非磁性層は、実質的に非磁性であればその効果を発揮するものであり、例えば不純物として、あるいは意図的に少量の磁性体を含んでいても、本発明の効果を示すものであり、本発明の磁気記録媒体と実質的に同一の構成とみなすことができる。なお、実質的に同一とは、非磁性層の残留磁束密度が10mT(100G)以下または抗磁力が7.96kA/m(100 Oe)以下であることを示し、好ましくは残留磁束密度と抗磁力を持たないことを意味する。
【0037】
本発明の磁気記録媒体については、少なくとも一層が前記カーボンブラック含有塗膜である点以外、前述の特許文献1〜9に記載の技術をはじめとする磁気記録媒体に関する公知技術を、何ら制限なく適用することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0039】
1.結合剤樹脂未含有カーボンブラック組成物の実施例・比較例
【0040】
[実施例1]
下記カーボンブラック1.0質量部、トリエチルアミン0.019質量部をエタノール20質量部に懸濁させた。懸濁液に0.1mmΦジルコニアビーズ(ニッカトー製)50質量部を添加し、15時間分散させてカーボン分散液を得た。
後述の方法で分散粒子径(動的光散乱法による液中粒子径)を測定したところ44nmであった。
カーボンブラック:三菱化学社製#950
平均一次粒子径:18nm
窒素吸着比表面積:260m/g
DBP吸油量:79ml/100g(粉状)
pH:7.5
【0041】
分散粒子径(動的光散乱法による液中粒子径)の測定方法
カーボン分散液を、分散に用いた有機溶媒と同一のものを用いて固形分濃度0.2質量%に希釈した(固形分とはカーボンブラック・アミン添加剤・結合剤樹脂の合計質量を表す。したがって、結合剤樹脂を含まない系について固形分とはカーボンブラック・アミン添加剤の合計質量を表す)。
得られた希釈液について、HORRIBA社製動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500を用いて測定した平均粒子径を分散粒子径とした。分散粒子径が小さいほど、カーボンブラックが凝集せず分散性が良好であることを意味する。
【0042】
[実施例2]
トリエチルアミン0.019質量部をN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.024質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ45nmであった。
【0043】
[実施例3]
トリエチルアミン0.019質量部をトリプロピルアミン0.027質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ45nmであった。
【0044】
[実施例4]
トリエチルアミン0.019質量部をトリブチルアミン0.035質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ44nmであった。
【0045】
[実施例5]
トリエチルアミン0.019質量部をトリアミルアミン0.043質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ41nmであった。
【0046】
[実施例6]
トリエチルアミン0.019質量部をトリヘキシルアミン0.051質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ43nmであった。
【0047】
[実施例7]
トリエチルアミン0.019質量部をトリヘプチルアミン0.059質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ51nmであった。
【0048】
[実施例8]
トリエチルアミン0.019質量部をトリオクチルアミン0.066質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ62nmであった。
【0049】
[比較例1]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ120nmであった。
【0050】
[比較例2]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例2と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ96nmであった。
【0051】
[比較例3]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例3と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ100nmであった。
【0052】
[比較例4]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例4と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ98nmであった。
【0053】
[比較例5]
エタノール20質量部をイソプロピルアルコール20質量部に変更した点以外は実施例4と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ108nmであった。
【0054】
[比較例6]
エタノール20質量部を2−ブタノール20質量部に変更した点以外は実施例4と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ140nmであった。
【0055】
[比較例7]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例5と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ94nmであった。
【0056】
[比較例8]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例6と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ105nmであった。
【0057】
[比較例9]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例7と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ100nmであった。
【0058】
[比較例10]
エタノール20質量部をアセトン20質量部に変更した点以外は実施例8と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ125nmであった。
【0059】
[実施例9]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ35nmであった。
【0060】
[実施例10]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例2と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ35nmであった。
【0061】
[実施例11]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例3と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ34nmであった。
【0062】
[実施例12]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例4と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ34nmであった。
【0063】
[実施例13]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例5と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ31nmであった。
【0064】
[実施例14]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例6と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ31nmであった。
【0065】
[実施例15]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例7と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ31nmであった。
【0066】
[実施例16]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン20質量部に変更した点以外は実施例8と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ31nmであった。
【0067】
[実施例17]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ35nmであった。
【0068】
[実施例18]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例2と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ34nmであった。
【0069】
[実施例19]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例3と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ35nmであった。
【0070】
[実施例20]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例4と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ34nmであった。
【0071】
[実施例21]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例5と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ31nmであった。
【0072】
[実施例22]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例6と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ29nmであった。
【0073】
[実施例23]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例7と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ30nmであった。
【0074】
[実施例24]
エタノール20質量部をシクロヘキサノン20質量部に変更した点以外は実施例8と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ30nmであった。
【0075】
[実施例25]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ31nmであった。
【0076】
[実施例26]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例2と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ29nmであった。
【0077】
[実施例27]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例3と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ32nmであった。
【0078】
[実施例28]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例4と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ31nmであった。
【0079】
[実施例29]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例5と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ30nmであった。
【0080】
[実施例30]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例6と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ32nmであった。
【0081】
[実施例31]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例7と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ29nmであった。
【0082】
[実施例32]
エタノール20質量部をメチルエチルケトン10質量部、シクロヘキサノン10質量部に変更した点以外は実施例8と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ30nmであった。
【0083】
[比較例11]
実施例1で使用したカーボンブラック1.0質量部、トリエチルアミン0.019質量部をトルエン20質量部に懸濁させた。懸濁液に0.1mmΦジルコニアビーズ(ニッカトー製)50質量部を添加し、15時間分散させてカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0084】
[比較例12]
トリエチルアミン0.019質量部をN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.024質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0085】
[比較例13]
トリエチルアミン0.019質量部をトリプロピルアミン0.027質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0086】
[比較例14]
トリエチルアミン0.019質量部をトリブチルアミン0.035質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0087】
[比較例15]
トリエチルアミン0.019質量部をトリアミルアミン0.043質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0088】
[比較例16]
トリエチルアミン0.019質量部をトリヘキシルアミン0.051質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0089】
[比較例17]
トリエチルアミン0.019質量部をトリヘプチルアミン0.059質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0090】
[比較例18]
トリエチルアミン0.019質量部をトリオクチルアミン0.066質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0091】
[比較例19]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例11と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0092】
[比較例20]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例12と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0093】
[比較例21]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例13と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0094】
[比較例22]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例14と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0095】
[比較例23]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例15と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0096】
[比較例24]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例16と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0097】
[比較例25]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例17と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0098】
[比較例26]
トルエン20質量部を酢酸エチル20質量部に変更した点以外は比較例18と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0099】
[比較例27]
トリエチルアミンを使用しなかった点以外は実施例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0100】
[比較例28]
トリエチルアミンを使用しなかった点以外は比較例1と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ2000nm超であり凝集沈殿物を含んでいた。
【0101】
[比較例29]
トリエチルアミンを使用しなかった点以外は実施例9と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ200nmであった。
【0102】
[比較例30]
トリエチルアミンを使用しなかった点以外は実施例17と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ153nmであった。
【0103】
以上の結果を、下記表1にまとめて示す。
【0104】
【表1】

【0105】
2.結合剤樹脂含有カーボンブラック組成物および塗膜の実施例・比較例
【0106】
[実施例33]
実施例1で使用したカーボンブラック1.0質量部、トリエチルアミン0.019質量部、塩化ビニル樹脂(日本ゼオン製MR104)0.41質量部、ポリエーテルポリウレタン0.25質量部をメチルエチルケトン12質量部およびシクロヘキサノン8質量部からなる溶液に懸濁させた。懸濁液に0.1mmΦジルコニアビーズ(ニッカトー製)50質量部を添加し、15時間分散させてカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ25nmであった。
上記カーボン分散液を帝人社製PENベース上に19μmのギャップを持つドクターブレードを用いて塗布し、室温30分放置させて乾燥し塗膜を作製した。作製した塗膜の平均粗さを後述の方法で測定したところ1.6nmであった。
【0107】
表面粗さ測定方法
ZYGO社製汎用三次元表面構造解析装置NewView5022による走査型白色光干渉法にてScan Lengthを5μmとして、上記塗膜の表面粗さを測定した。対物レンズ:20倍、中間レンズ:1.0倍、測定視野は260μm×350μmである。測定した表面をHPF:1.65μm、LPF:50μmのフィルター処理して、中心線平均表面粗さRa値を求めた。
【0108】
[実施例34]
トリエチルアミン0.19質量部をN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.024質量部に変更した点以外は実施例33にしたがって分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ26nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.6nmであった。
【0109】
[実施例35]
トリエチルアミン0.019質量部をトリプロピルアミン0.027質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ24nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.4nmであった。
【0110】
[実施例36]
トリエチルアミン0.019質量部をトリブチルアミン0.035質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ26nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.3nmであった。
【0111】
[実施例37]
トリエチルアミン0.019質量部をトリアミルアミン0.043質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ30nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.3nmであった。
【0112】
[実施例38]
トリエチルアミン0.019質量部をトリヘキシルアミン0.051質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ26nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.3nmであった。
【0113】
[実施例39]
トリエチルアミン0.019質量部をトリヘプチルアミン0.059質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ26nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.3nmであった。
【0114】
[実施例40]
トリエチルアミン0.019質量部をトリオクチルアミン0.066質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ26nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.3nmであった。
【0115】
[実施例41]
トリエチルアミン0.019質量部を1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン0.029質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ30nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.8nmであった。
【0116】
[実施例42]
トリエチルアミン0.019質量部をN,N−ジメチルベンジルアミン0.025質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ39nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは2.5nmであった。
【0117】
[実施例43]
トリエチルアミン0.019質量部をN−ブチルジエタノールアミン0.030質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ39nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.6nmであった。
【0118】
[実施例44]
トリエチルアミン0.019質量部をヘキサメチレンテトラミン0.026質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ39nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.6nmであった。
【0119】
[実施例45]
トリエチルアミン0.019質量部をトリエチルアミン0.038質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ25nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.6nmであった。
【0120】
[実施例46]
トリエチルアミン0.019質量部をトリエチルアミン0.076質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ25nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.6nmであった。
【0121】
[実施例47]
メチルエチルケトン12質量部およびシクロヘキサノン8質量部をイソホロン20質量部に変更し、かつトリエチルアミン0.019質量部をトリオクチルアミン0.066質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ30nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは3.1nmであった。
【0122】
[比較例31]
トリエチルアミン0.019質量部をピリジン0.015質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ170nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0123】
[比較例32]
トリエチルアミン0.019質量部をα−ピコリン0.017質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ168nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0124】
[比較例33]
トリエチルアミン0.019質量部をβ−ピコリン0.017質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ188nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0125】
[比較例34]
トリエチルアミン0.019質量部をγ−ピコリン0.017質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ143nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0126】
[比較例35]
トリエチルアミン0.019質量部をN,N−ジメチルアニリン0.023質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ160nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0127】
[比較例36]
トリエチルアミン0.019質量部をN−フェニルジエタノールアミン0.034質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ84nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0128】
[比較例37]
トリエチルアミン0.019質量部をアニリン0.017質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ52nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは3.4nmであった。
【0129】
[比較例38]
トリエチルアミン0.019質量部をジブチルアミン0.024質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ80nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0130】
[比較例39]
トリエチルアミンを使用しなかった点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ140nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm超であった。
【0131】
[比較例40]
メチルエチルケトン12質量部およびシクロヘキサノン8質量部を4−メチル−2−ペンタノン20質量部に変更し、かつトリエチルアミン0.019質量部をトリオクチルアミン0.066質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。得られたカーボン分散液は不安定で前述の方法で分散粒子径の測定を試みたが測定前に沈降物を生じ、測定不可であった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは16nmであった。
【0132】
[比較例41]
メチルエチルケトン12質量部およびシクロヘキサノン8質量部を2,4−ジメチル−3−ペンタノン20質量部に変更し、かつトリエチルアミン0.019質量部をトリオクチルアミン0.066質量部に変更した点以外は実施例33と同様の操作でカーボン分散液を得た。得られたカーボン分散液は不安定で前述の方法で分散粒子径の測定を試みたが測定前に沈降物を生じ、測定不可であった。また、前述の方法で塗膜の作製を試みたが、PENベース上で液はじきが生じ塗膜を作製することができなかった。
【0133】
以上の結果を、下記表2にまとめて示す。
【0134】
【表2】

【0135】
上記表1、表2に示す結果により、脂肪族三級モノアミンおよび脂環式三級アミンからなる群から選ばれる有機三級アミンと、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよびアルコールからなる群から選ばれる溶媒との組み合わせによって、カーボンブラックを高度に分散することができ、更にはこれにより高い表面平滑性を有するカーボンブラック含有塗膜の形成が可能となることが示された。
【0136】
3.磁気記録媒体の実施例・比較例
下記の「部」の表示は「質量部」を示す。
【0137】
[実施例48]
磁性層形成用塗料組成物の処方
強磁性板状六方晶フェライト粉末:100部
酸素を除く組成(モル比):Ba/Fe/Co/Zn=1/9/0.2/1
Hc:183kA/m(2300Oe)、板径:25nm、板状比:3
BET比表面積:80m/g、σs:50A・m/kg(50emu/g)
ポリウレタン樹脂(官能基 SONa、官能基濃度70eq/t)8部
塩化ビニル樹脂(官能基:−OSOK、官能基濃度:70eq/t):14部
オレイン酸:0.2部
2,3−ジヒドロキシナフタレン:6部
α−Al(粒子サイズ0.15μm):5部
カーボンブラック(粒子サイズ 100nm):2部
シクロヘキサノン:150部
メチルエチルケトン:150部
ブチルステアレート:2部
ステアリン酸:1部
ステアリン酸アミド:0.1部
【0138】
非磁性層形成用塗料組成物の処方
カーボンブラック:100部
DBP吸油量:100ml/100g、pH:8
BET比表面積:250m/g、揮発分:1.5%
ポリウレタン樹脂 (官能基:−SONa、官能基濃度:70eq/t):20部
塩化ビニル樹脂(官能基:−OSOK、官能基濃度70eq/t):30部
トリエチルアミン:2部
シクロヘキサノン:140部
メチルエチルケトン:170部
ブチルステアレート:2部
ステアリン酸:2部
ステアリン酸アミド:0.1部
【0139】
上記磁性層形成用塗料組成物および非磁性層形成用塗料組成物のそれぞれについて、各成分をオープンニーダーで60分間混練した後、ジルコニアビ−ズ(平均粒径0.5mm)を用いたサンドミルで720分間分散した。得られた分散液を1μmの平均孔径を有するフィルターを用いて濾過し、各層形成用塗料組成物を調製した。
非磁性支持体上に、非磁性層形成用塗料組成物を厚さが1.5μmになるように塗布し、100℃で乾燥させた。更にその直後に磁性層形成用塗料組成物を乾燥後の厚さが0.08μmになるようにウェットオンドライ塗布し、100℃で乾燥した。この時、磁性層が未乾燥の状態で300mT(3000ガウス)の磁石で磁場配向を行った。更に、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで速度100m/min、線圧300kg/cm、温度90℃で表面平滑化処理を行った後、70℃で24時間加熱硬化処理を行い1/2インチ幅にスリットし磁気テープを作製した。
得られた磁気テープの磁性層の表面粗さを前述の方法で測定したところ、1.5nmであった。
【0140】
[実施例49]
非磁性層形成用塗料組成物のトリエチルアミン2部をトリブチルアミン3.3部に変更した点以外は実施例48と同様の方法で磁気テープの作製および磁性層の表面粗さの測定を行ったところ、表面粗さは1.3nmであった。
【0141】
[実施例50]
非磁性層形成用塗料組成物のトリエチルアミン2部をトリオクチルアミン6.3部に変更した点以外は実施例48と同様の方法で磁気テープの作製および磁性層の表面粗さの測定を行ったところ、表面粗さは1.3nmであった。
【0142】
[比較例42]
非磁性層形成用塗料組成物のトリエチルアミン2部を、磁気記録媒体における分散剤として知られているフェニルホスホン酸30部に変更した点以外は実施例48と同様の方法で磁気テープの作製および磁性層の表面粗さの測定を行ったところ、表面粗さは20nmであった。
【0143】
磁性層の表面平滑性は、電磁変換特性および走行安定性に大きく影響するところ、実施例48〜50では、比較例42と比べて磁性層の表面平滑性が大幅に向上した。これは、磁性層の下層に位置する非磁性層における非磁性粉末(カーボンブラック)の分散性が良好であることによるものである。
また、上記の非磁性層形成用塗料組成物と同様の処方により、バックコート層を形成することもできる。こうして形成されるバックコート層は、カーボンブラックが良好に分散されたものとなることも、上記実施例の結果から確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明は、磁気記録分野、印刷分野、化粧品分野等の各種分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックと、脂肪族三級モノアミンおよび脂環式三級アミンからなる群から選ばれる有機三級アミンと、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンおよびエタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むことを特徴とするカーボンブラック組成物。
【請求項2】
前記脂肪族三級モノアミンは、下記一般式(1)で表される請求項1に記載のカーボンブラック組成物。
【化1】

[一般式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基を表す。]
【請求項3】
一般式(1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜8の直鎖または分岐のアルキル基を表す請求項2に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒はメチルエチルケトンおよび/またはシクロヘキサノンを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項5】
前記有機溶媒はエタノールを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項6】
前記有機溶媒はイソホロンを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項7】
結合剤樹脂を含まない状態で、動的光散乱法による液中粒子径が70nm以下の分散状態で前記カーボンブラックを含んでなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項8】
結合剤樹脂を更に含む請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項9】
前記結合剤樹脂はビニル系共重合体およびポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる請求項8に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項10】
動的光散乱法による液中粒子径が50nm以下の分散状態で前記カーボンブラックを含んでなる請求項8または9に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項11】
磁気記録媒体形成用塗料組成物として、またはその調製のために使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項12】
磁気記録媒体の非磁性層形成用塗料組成物として、またはその調製のために使用される、請求項11に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項13】
磁気記録媒体のバックコート層形成用塗料組成物として、またはその調製のために使用される、請求項11に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物を乾燥させてなるカーボンブラック含有塗膜。
【請求項15】
非磁性支持体上に、強磁性粉末および結合剤を含む磁性層を有する磁気記録媒体であって、
請求項14に記載のカーボンブラック含有塗膜を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項16】
前記カーボンブラック含有塗膜は、非磁性支持体と磁性層との間に位置する非磁性層である、請求項15に記載の磁気記録媒体。
【請求項17】
前記カーボンブラック含有塗膜は、非磁性支持体の磁性層を有する面とは反対の面上に位置するバックコート層である請求項15に記載の磁気記録媒体。

【公開番号】特開2013−49832(P2013−49832A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145057(P2012−145057)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】