説明

カーボンブラック組成物およびカーボンブラック含有塗膜

【課題】カーボンブラックが溶媒中に高度に分散された組成物(カーボンブラック組成物)の提供。
【解決手段】カーボンブラックと、アルカンニトリルと、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むことを特徴とするカーボンブラック組成物であり、結合剤樹脂を更に含み、前記結合剤樹脂はビニル系共重合体およびポリウレタン樹脂からなる群から選ばれ、アルカンニトリルがアセトニトリルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラック組成物に関するものであり、詳しくは、溶媒中でのカーボンブラックの高度な分散状態を実現し得るカーボンブラック組成物に関するものである。
更に本発明は、上記カーボンブラック組成物から得られるカーボンブラック含有塗膜にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、着色材料、導電性材料、充填剤等として、印刷インキ、塗料、化粧品、電池等の様々な分野に使用されている。また、磁気記録分野では、磁気テープや磁気ディスクの帯電防止、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上等のために磁性層、非磁性層、バックコート層等にカーボンブラックを添加することが広く行われている。
【0003】
上記の通りカーボンブラックは様々な分野において使用される有用な素材であるが、溶媒中でストラクチャーと呼ばれる高次構造を形成し凝集する性質を有し、微粒子になるほどその性質が顕在化し各種弊害をもたらす。例えば塗布型磁気記録媒体においては、塗布液中でカーボンブラックが凝集すると、該塗布液を支持体上に塗布、乾燥させて形成される磁性層等の塗膜の平滑性を大きく低下させることとなる。また、印刷インク中でカーボンブラックが凝集すると、このインクを用いた印刷物における色ムラや色調悪化の原因となる。
【0004】
そのため従来、溶媒中でのカーボンブラックの分散性を高めるために様々な試みがなされてきた。例えば磁気記録分野では、各種芳香族化合物を分散剤として使用することでカーボンブラックの分散性を高めることが提案されている(例えば特許文献1〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4149648号明細書
【特許文献2】特開2002−140813号公報
【特許文献3】特開2003−168208号公報
【特許文献4】特開2005−222630号公報
【特許文献5】特開2005−222631号公報
【特許文献6】特開2006−185525号公報
【特許文献7】特開2006−185526号公報
【特許文献8】特開2009−224009号公報
【特許文献9】特許第2602273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通りカーボンブラックは様々な分野において広く使用されており、その分散性向上(凝集防止)が常に求められている。しかしストラクチャーを形成するという特異な性質を有するが故にその分散性向上は容易ではなく、従来の方法により達成されるカーボンブラックの分散状態は、例えば高密度記録化のために高度な塗膜平滑性が求められる磁気記録分野などにおいて、必ずしも十分なものではなかった。
【0007】
かかる状況下、本発明は、カーボンブラックが溶媒中に高度に分散された組成物(カーボンブラック組成物)を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、カーボンブラックを、アルカンニトリルと、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群から選ばれる溶媒とともに含む系において、カーボンブラックの分散性が大きく改善されることを新たに見出した。この点について本発明者は、以下のように推察している。
カーボンブラックについては、その表面に水酸基やカルボキシル基からなる親水部分と、炭素からなる疎水部分を有すること、この炭素からなる疎水部分はグラファイト構造からなる芳香環であること、が知られている(例えば、接着の技術 Vol.30 No.4 (2011)通巻101号 5ページ 図1.7参照)。そしてカーボンブラックの分散性向上は、この親水部分または疎水部分のどちらかに親和性を有するユニットを持つ化合物によって親水部分または疎水部分を被覆することにより達成されると考えられる。ただし、親水部分または疎水部分が被覆される前にカーボンブラックが溶媒中でストラクチャーを形成してしまっては、どちらかの部分に親和性を有するユニットを持つ化合物を添加したとしても、ストラクチャーの形成を阻害することにより分散性向上を達成することは困難である。
これに対し本発明者が見出した上記の系では、その中でカーボンブラックがストラクチャーを形成しにくい溶媒であるメチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群から選ばれる溶媒と親水部分に親和性を有するアルカンニトリルを組み合わせて使用することで、アルカンニトリルによりカーボンブラック表面の親水部分を被覆してストラクチャーの形成を阻害することが可能となると考えられる。そしてこれによりカーボンブラックが高度に分散されたカーボンブラック組成物が得られると、本発明者は推察している。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0009】
即ち、上記目的は下記手段により達成された。
[1]カーボンブラックと、アルカンニトリルと、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むことを特徴とするカーボンブラック組成物。
[2]前記アルカンニトリルは、アセトニトリルである[1]に記載のカーボンブラック組成物。
[3]結合剤樹脂を更に含む[1]または[2]のカーボンブラック組成物。
[4]前記結合剤樹脂はビニル系共重合体およびポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる[3]に記載のカーボンブラック組成物。
[5]動的光散乱法による液中粒子径が50nm以下の分散状態で前記カーボンブラックを含んでなる[1]〜[4]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のカーボンブラック組成物を乾燥させてなるカーボンブラック含有塗膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カーボンブラックが溶媒中に高度に分散したカーボンブラック組成物を提供することができる。かかる本発明のカーボンブラック組成物は、印刷インク、塗布型磁気記録媒体用塗布液等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカーボンブラック組成物は、カーボンブラックと、アルカンニトリルと、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むものである。先に説明したように本発明者は、ストラクチャーを形成しにくい溶媒である上記有機溶媒中でカーボンブラックとアルカンニトリルを共存させると、アルカンニトリルがカーボンブラックの親水部分を被覆する結果、カーボンブラックの高度な分散状態を実現することができると推察している。
以下、本発明のカーボンブラック組成物について、更に詳細に説明する。なお以下において置換基を有する場合の「炭素数」とは、置換基を含まない部分の炭素数を意味するものとする。下記の置換基としては、例えばハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)等を挙げることができる。また、本発明において、「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0012】
本発明のカーボンブラック組成物に含まれるアルカンニトリル(RCN:Rはアルキル基を表す)におけるアルキル基は、置換または無置換の直鎖または分岐のアルキル基であって、カーボンブラックの親水部分への吸着性の点から、炭素数1〜6の無置換の直鎖アルキル基が好ましい。即ち、上記アルカンニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ヘキサンニトリルを好ましい具体例として挙げることができる。中でも、カーボンブラックの分散性向上効果と入手容易性の観点からは、アセトニトリルが特に好ましい。
【0013】
本発明のカーボンブラック組成物に含まれるカーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック等の各種カーボンブラックを用途に応じて選択して使用することができる。本発明において使用可能なカーボンブラックについては、例えば、「カーボンブラック便覧」(カーボンブラック協会編)を参考にすることができる。
【0014】
例えば塗布型磁気記録媒体では、非磁性層にカーボンブラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rsを下げること、光透過率を小さくすること、所望のマイクロビッカース硬度を得ることができる。また、非磁性層にカーボンブラックを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも可能である。非磁性層に使用されるカーボンブラックの比表面積は通常、50〜500m2/g、好ましくは70〜400m2/g、DBP吸油量は通常、20〜400ml/100g、好ましくは30〜400ml/100gである。非磁性層に使用されるカーボンブラックの平均一次粒子径は通常、5〜80nm、好ましくは10〜50nm、さらに好ましくは10〜40nmである。
また、塗布型磁気記録媒体のバックコート層に微粒子カーボンブラックを添加することで、バックコート層の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。バックコート層に使用される微粒子カーボンブラックとしては、平均一次粒子径が5〜30nmの範囲にあり、比表面積が60〜800m2/gの範囲にあり、DBP吸油量が50〜130ml/100gの範囲にあり、pHが2〜11の範囲にあるものが好ましい。
上記カーボンブラックの詳細については、例えば特許第4149648号明細書段落[0033]、[0053]を参照できる。また、磁性層に含まれるカーボンブラックの詳細については、特許第4149648号明細書段落[0067]を参照できる。本発明のカーボンブラック組成物は、上記カーボンブラックを任意に添加される各種成分とともに含むことで、塗布型磁気記録媒体形成用塗料組成物として、または該塗料組成物の調製のために使用することができる。また、上記カーボンブラックは、印刷インクの顔料としても好適に使用されるものであり、これを含有する本発明のカーボンブラック組成物は、インクジェット印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷方式用の黒色インキとして好適に使用することができる。
【0015】
カーボンブラックの分散性をより一層向上する観点からは、カーボンブラック100質量部に対して1〜50質量部の割合でアルカンニトリルを使用することが好ましく、1〜20質量部の割合で使用することがより好ましい。また、同様の理由から本発明のカーボンブラック組成物において、カーボンブラックに対する溶媒の総量は、カーボンブラック100質量部に対して100〜1000質量部とすることが好ましい。
【0016】
本発明のカーボンブラック組成物における必須溶媒は、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群から選ばれるものである。これら必須溶媒以外の溶媒を使用する場合には、予めカーボンブラックとアルカンニトリルを上記必須溶媒中で混合することで、アルカンニトリルによりカーボンブラック表面を被覆することが好ましい。これにより、その後に他の溶媒が添加されたとしても、カーボンブラックの分散性を良好に維持することができる。
【0017】
上記必須溶媒としては、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンのいずれか一方のみ用いてもよく、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンを任意の比率で組み合わせて用いてもよい。メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンは、いずれも比較的低沸点であり安全性も高いため、磁気記録分野、印刷分野、化粧品分野等の各種分野において広く用いられている有機溶媒である。本発明のカーボンブラック組成物は、これら溶媒を必須溶媒として含むため、上記の各種分野における有用性が高い。この点も本発明のカーボンブラック組成物の利点の1つである。
【0018】
本発明のカーボンブラック組成物は、上記必須溶媒以外の溶媒を含むこともできるが、その場合には必須溶媒が溶媒全量の50質量%以上を占めることが好ましく、50〜95質量%を占めることがより好ましい。併用可能な溶媒としては、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の各種溶媒を挙げることができる。併用可能なケトン系溶媒の具体例としては、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン等を挙げることができ、併用可能なアルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等を挙げることができる。ただし、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族系溶媒はカーボンブラックのストラクチャー形成を促進する可能性があるため併用しないことが好ましく、併用する場合は溶媒全量の5質量%未満とすることが望ましい。
【0019】
微粒子の分散性を高める一般的手法としては、結合剤樹脂により微粒子表面を被覆する方法が知られているが、本発明のカーボンブラック組成物は上記必須溶媒とアルカンニトリルを組み合わせることで、結合剤樹脂を併用しないとしてもカーボンブラックの高度な分散状態を実現することができる。具体的には、本発明のカーボンブラック組成物は、結合剤樹脂を含まない状態でも、例えば動的光散乱法により測定される液中粒子径が150nm以下、好ましくは70nm、更に好ましくは50nm以下というカーボンブラックの高度な分散状態を実現することができる。
ここで光散乱法により測定される液中粒子径とは、本発明のカーボンブラック組成物におけるカーボンブラックの存在状態、即ち分散状態の指標であり、この値が小さいほどカーボンブラックが凝集を起こさず一次粒子に近い状態で良好に分散していることを意味する。動的光散乱法による測定は、例えばHORRIBA社製動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500を用いて行うことができる。なお、測定精度を高めるために測定対象の液を希釈したうえで液中粒径を測定することも可能である。この場合、測定精度をよりいっそう高めるためには、希釈溶媒として測定対象の液に含まれる溶媒を使用することが好ましく、測定対象の液と同一の溶媒を使用することがより好ましい。
【0020】
また、本発明のカーボンブラック組成物は結合剤樹脂を含むことで、カーボンブラックをより一層高度に分散させることができる。結合剤樹脂を併用することで、上記の液中粒子径として50nm以下、更には40nm以下という、きわめて高度な分散状態でカーボンブラックを分散させることも可能となる。なお結合剤樹脂の使用の有無にかかわらず、上記液中粒子径の下限値はカーボンブラックの一次粒子径または平均一次粒子径となる。
【0021】
使用可能な結合剤樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレートなどを共重合したアクリル系樹脂、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアルキラール樹脂などを挙げることができ、中でもビニル系共重合体、ポリウレタン樹脂の使用が好ましい。結合剤樹脂は、カーボンブラック100質量部に対して、例えば1〜100質量部の割合で使用することができる。
【0022】
本発明におけるカーボンブラック等の粉末の平均粒子サイズは、以下の方法により測定することができる。
粉末を、日立製透過型電子顕微鏡H−9000型を用いて粒子を撮影倍率100000倍で撮影し、総倍率500000倍になるように印画紙にプリントして粒子写真を得る。粒子写真から目的の粉末を選びデジタイザーで粉体の輪郭をトレースしカールツァイス製画像解析ソフトKS−400で粒子のサイズを測定する。500個の粒子のサイズを測定する。上記方法により測定される粒子サイズの平均値を当該性粉末の平均粒子サイズとする。
【0023】
本発明において、粉体のサイズ(以下、「粉体サイズ」と言う)は、(1)粉体の形状が針状、紡錘状、柱状(ただし、高さが底面の最大長径より大きい)等の場合は、粉体を構成する長軸の長さ、即ち長軸長で表され、(2)粉体の形状が板状乃至柱状(ただし、厚さ乃至高さが板面乃至底面の最大長径より小さい)場合は、その板面乃至底面の最大長径で表され、(3)粉体の形状が球形、多面体状、不特定形等であって、かつ形状から粉体を構成する長軸を特定できない場合は、円相当径で表される。円相当径とは、円投影法で求められるものを言う。上記粉体サイズの定義(1)の場合は、平均粉体サイズを平均長軸長と言い、同定義(2)の場合は平均粉体サイズを平均板径と言い、(最大長径/厚さ乃至高さ)の算術平均を平均板状比という。同定義(3)の場合は平均粉体サイズを平均直径(平均粒径、平均粒子径ともいう)という。
また、該粉体の平均粉体サイズは、上記粉体サイズの算術平均であり、500個の一次粒子について上記の如く測定を実施して求めたものである。一次粒子とは、凝集のない独立した粉体をいう。
【0024】
本発明のカーボンブラック組成物は、以上説明した必須溶媒、アルカンニトリル、およびカーボンブラックを同時または順次混合することにより調製することができる。カーボンブラックの分散性をより一層高度に高めるためには、必須溶媒以外の溶媒や本発明のカーボンブラック組成物の用途に応じて選択して使用される各種添加剤等の任意成分は、上記必須成分を混合した後に添加することが好ましい。
【0025】
以上説明した本発明のカーボンブラック組成物は、印刷インキ、塗料、化粧品、電池、塗布型磁気記録媒体等のカーボンブラックを高度に分散することが求められる各種分野への使用に適するものである。
【0026】
更に本発明は、本発明のカーボンブラック組成物を乾燥させてなるカーボンブラック含有塗膜にも関するものである。
【0027】
先に説明した本発明のカーボンブラック組成物は高度な分散状態のカーボンブラックを含むことができるので、かかる組成物を、例えば支持体上に塗布して乾燥させることで、カーボンブラックの凝集による表面荒れのない、優れた表面平滑性を有する塗膜を得ることができる。本発明の塗膜の一態様は、磁気記録媒体のバックコート層、非磁性層、磁性層等であるがこれに限定されるものではなく、帯電防止シート等の各種形態で使用可能である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0029】
1.カーボンブラック組成物および塗膜の実施例・比較例
【0030】
[実施例1]
下記カーボンブラック1.0質量部、アセトニトリル0.019質量部、塩化ビニル樹脂(日本ゼオン製MR104)0.41質量部、ポリエーテルポリウレタン0.25質量部をメチルエチルケトン12質量部およびシクロヘキサノン8質量部からなる混合溶媒に懸濁させた。懸濁液に0.1mmΦジルコニアビーズ(ニッカトー製)50質量部を添加し、15時間分散させてカーボン分散液を得た。
カーボンブラック:三菱化学社製#950
平均一次粒子径:18nm
窒素吸着比表面積:260m2/g
DBP吸油量:79ml/100g(粉状)
pH:7.5
後述の方法で分散粒子径(動的光散乱法による液中粒子径)を測定したところ38nmであった。
上記カーボン分散液を帝人社製PENベース上に19μmのギャップを持つドクターブレードを用いて塗布し、室温30分放置させて乾燥し塗膜を作製した。作製した塗膜の平均粗さを後述の方法で測定したところ1.8nmであった。
【0031】
(1)分散粒子径(動的光散乱法による液中粒子径)の測定方法
カーボン分散液を、分散に用いた有機溶媒と同一のものを用いて固形分濃度0.2質量%に希釈した(固形分とはカーボンブラック・アルカンニトリル・結合剤樹脂の合計質量を表す)。
得られた希釈液について、HORRIBA社製動的光散乱式粒度分布測定装置LB−500を用いて測定した平均粒子径を分散粒子径とした。分散粒子径が小さいほど、カーボンブラックが凝集せず分散性が良好であることを意味する。
(2)表面粗さ測定方法
ZYGO社製汎用三次元表面構造解析装置NewView5022による走査型白色光干渉法にてScan Lengthを5μmとして、上記塗膜の表面粗さを測定した。対物レンズ:20倍、中間レンズ:1.0倍、測定視野は260μm×350μmである。測定した表面をHPF:1.65μm、LPF:50μmのフィルター処理して、中心線平均表面粗さRa値を求めた。
【0032】
[実施例2]
アセトニトリル0.019質量部を0.038質量部に変更した点以外は実施例1と同様の操作で分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ35nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは1.8nmであった。
【0033】
[比較例1]
アセトニトリルを使用しなかった点以外は実施例1と同様の操作で分散液を得た。前述の方法で分散粒子径を測定したところ140nmであった。また、前述の方法で塗膜の作製および平均粗さの測定を行ったところ、平均粗さは10nm以上であった。
【0034】
上記の結果により、アルカンニトリルと、所定の溶媒との組み合わせによって、カーボンブラックを高度に分散することができ、更にはこれにより高い表面平滑性を有するカーボンブラック含有塗膜の形成が可能となることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、磁気記録分野、印刷分野、化粧品分野等の各種分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックと、アルカンニトリルと、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機溶媒と、を含むことを特徴とするカーボンブラック組成物。
【請求項2】
前記アルカンニトリルは、アセトニトリルである請求項1に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項3】
結合剤樹脂を更に含む請求項1または2に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項4】
前記結合剤樹脂はビニル系共重合体およびポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる請求項3に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項5】
動的光散乱法による液中粒子径が50nm以下の分散状態で前記カーボンブラックを含んでなる請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンブラック組成物を乾燥させてなるカーボンブラック含有塗膜。

【公開番号】特開2013−49837(P2013−49837A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163183(P2012−163183)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】