説明

カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含んだ難燃性複合材料及び製品

カーボン・ナノチューブを含む難燃性複合材料が本明細書で開示されている。難燃性複合材料は、外層と少なくとも1つの内層を含み、それぞれ、第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックスを含んでいる。前記外層が、外面と、第1の繊維材料と長さが約50μmを超える第1の複数のカーボン・ナノチューブとを含む第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、を有する。ある実施形態では、少なくとも1つの内層が、第2の繊維材料及び/又は第2の繊維材料と第2の複数のカーボン・ナノチューブとを含む第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料もまた含む。存在する場合、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、一般的に、第1の複数のカーボン・ナノチューブよりも長さは短い。外層におけるカーボン・ナノチューブの配列は、複合材料の内層を避けて熱を伝達する。また、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む難燃性製品も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、複合材料に関し、より詳しくは、カーボン・ナノチューブを含む複合材料に関する。
【0002】
(関連出願の参照)
本願は、米国特許法(35U.S.C.セクション119)に基づき2009年12月14日出願の米国仮出願第61/286,340号の優先権の特典を主張するものであり、その全ては、参照により本明細書に組み込まれる。また、本願は、2009年11月2日出願の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号及び第12/611,103号にも関連し、これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
(連邦政府の資金提供による研究開発の記載)
適用なし。
【背景技術】
【0004】
難燃性は、発火源を取り除いた場合に自己消火をもたらす材料の特性である。難燃性を定量化するための工業的に用いられる試験は、ASTM D6413(Standard Test Method for Flame Resistance of Textiles)である。衣類や同様の織物(textile)を含む製品では、難燃性の織物(fabric)は、著しく身体の組織の損傷を軽減でき、着用者の生存率を高める。同様に、構造物用途に使用される場合、自己消火性、難燃性の複合材料は、難燃性ではない同等の複合材料と比較して、おそらく表面の損傷においてさえも被る損傷は著しく軽い。難燃性複合材料が構造物用途に関してこれまでも大きな関心を集めてきたが、これらのシステムには更なる開発の必要性が残されている。
【0005】
多くの要因が、難燃性複合材料の開発と実施を妨げてきた。複合材料の高分子マトリックスを、難燃性を付与するために適した多くの難燃剤(例えば、臭素、ハロゲン化合物、金属水酸化物、金属水和物、遷移金属化合物及びリン・窒素化合物)で処理することはできるが、これら合成物の多くは、人体に及ぼす影響が知られている。これら難燃剤に関する更に重大な問題は、これら難燃剤が複合材料の構造的性質に悪影響を与えることが知られており、それによって、前記複合材料の応用範囲を制限する点である。難燃剤に加えて、補助的なコーティング材及び/又は断熱材を、複合材料に難燃性を付与するために添加することができる。しかしながら、これらの保護手段は、複合材料に不必要な重量と嵩張りをもたらし、それによって、多くの高パフォーマンス用途に適さない複合材料を作り出す。更に、補助的なコーティング材や断熱材の追加は、生産コストを増加させる。高分子マトリックスの中には、難燃性を本来備えている(例えば、フェノール樹脂)が、これら高分子マトリックスを基にした複合材料は、比較的機械強度が低いために構造的用途には一般的に使用されない。
【0006】
前述のことを考慮すると、高パフォーマンスの構造的用途に適した機械特性を維持する難燃性複合材料は、当技術分野では大いに有用である。本明細書で開示された実施形態は、このニーズを満たし、更に、関連する利点も提供する。また、複合材料に難燃性を付与する本明細書で開示された特徴は、難燃性製品や非構造的用途の織物(textile)を作るためにも有効に使用されるであろう。
【発明の概要】
【0007】
ある実施形態において、本明細書に開示された難燃性複合材料は、外層と少なくとも1つの内層を含む。前記外層が、外面を有し、第1の高分子マトリックスと第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む。前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、第1の複数のカーボン・ナノチューブと第1の繊維材料を含み、この場合、前記第1の複数のカーボン・ナノチューブは、長さが約50μmを超える。前記少なくとも1つの内層は、第2の高分子マトリックスを含む。
【0008】
ある実施形態において、本明細書に開示された難燃性複合材料は、外層と少なくとも1つの内層を有するエポキシマトリックスを含み、前記外層内に第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と前記少なくとも1つの内層内に第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む。前記外層が、外面を有し、約0.005”から約0.1”の範囲の厚さを有する。前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、第1の複数のカーボン・ナノチューブと第1の繊維材料を含み、この場合、前記第1の複数のカーボン・ナノチューブは、約50μmを超える長さである。前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、第2の複数のカーボン・ナノチューブと第2の繊維材料を含む。
【0009】
他の実施形態において、本明細書に開示された難燃性製品は、外層と内部層とを含む。前記外層は、外面を有し、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む。前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複数のカーボン・ナノチューブと繊維材料を含む。前記内部層は、外層に不可欠で、カーボン・ナノチューブの存在しない織物(textile)を含む。
【0010】
前述では、後述の詳細な説明をより良く理解するために、本開示の特徴をある程度広く概説してきた。本開示の更なる特徴及び利点は後述されるが、これらは特許請求の範囲の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】炭素繊維に浸出したカーボン・ナノチューブのTEM画像例である。
【図2】目標長さ40μmの±20%以内であるカーボン・ナノチューブで浸出された炭素繊維のSEM画像例である。
【図3】カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維の織物(fabric weave)内の繊維トウのSEM画像例である。
【図4】それぞれ複数の繊維を含む複数の繊維トウを有するロービングの概略図である。
【図5】略平行に配列されたカーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が製造されるまでの化学プロセス例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示及びその利点を十分に理解するために、以下の詳細な説明を、本開示の特定の実施形態を説明する添付図面と併せて説明する。
【0013】
本開示は、1つには、難燃性複合材料及びカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む織物(textiles)を対象とする。また、本開示は、1つには、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む難燃性製品とカーボン・ナノチューブの存在しない織物(textile)も対象とする。
【0014】
繊維材料と高分子マトリックスを含む複合材料において、繊維材料の物理的及び/又は化学的性質が、高分子マトリックスに付与され、これにより、両構成要素の望ましい特徴を有するハイブリッド材料を生産する。本複合材料において、繊維材料と高分子マトリックス双方の難燃性は、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出することによって改善され、有益な機械的性質は、通常の複合材料そのままで維持される。有利には、本開示の複合材料及び製品は、高価な或いは有毒な難燃剤及び/又は追加の熱シールドを付加する必要もなく難燃性を改善する。
【0015】
理論もしくはメカニズムに拘束されるものではないが、本複合材料及び製品の改善された難燃性は、カーボン・ナノチューブの熱酸化安定性とカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料におけるカーボン・ナノチューブの被覆密度によるものと考えられる。繊維材料に浸出された十分な量のカーボン・ナノチューブを本難燃性複合材料及び製品の外層内に含むことによって、効果的なフレーム・バリヤー(flame barrier)を形成できる。このフレーム・バリヤーは、発火源存在下で複合材料の外面や製品に犠牲炭化層を形成するが、内層への熱伝達や内層における熱分解はほんのわずかである。その外層は炭化形成によって損傷を受けるが、複合材料及び製品の内部部分は、比較的無傷のまま残り、構造的性質にほとんど影響を及ぼさない結果となる。
【0016】
難燃性特性に加えて、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複合材マトリックス内へカーボン・ナノチューブを導入するための万能プラットフォームである。複合材料にカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を使用することにより、そこに組み込まれるカーボン・ナノチューブに付随する重大な問題を克服することが可能となる。更に、繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブの長さや被覆密度を変化させることによって、カーボン・ナノチューブの異なる性質が、選択的に複合材料に付与される。例えば、より短いカーボン・ナノチューブは、一般的に、複合材料の構造的性質を改善するのに適している。また、より長いカーボン・ナノチューブも構造的サポートを付与できるが、複合材料における導電或いは熱伝導の経路を確立するために、より効果的に用いられる。更に、より長いカーボン・ナノチューブは、本開示の複合材料及び製品に最大限の難燃性を付与すると考えられる。複合材料の異なる領域におけるカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の不均一或いは傾斜配置は、複合材料の所定領域へ所望の性質(例えば難燃性等)を選択的に付与するために用いることができる。
【0017】
本明細書では、用語「繊維材料」とは、その基本構成成分として繊維質成分を有するあらゆる材料をいう。前記用語は、連続或いは不連続繊維、フィラメント、ヤーン、トウ、テープ、織物及び不織布、プライ(plies)、マット等を包含する。
【0018】
本明細書では、用語「浸出する」とは結合されることをいい、用語「浸出」とは結合処理をいう。そのため、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、結合されたカーボン・ナノチューブを有する繊維材料をいう。繊維材料へのカーボン・ナノチューブの結合は、機械的連結、共有結合、イオン結合、π−π相互作用、及び/又はファン・デル・ワールス力の介在による物理吸着等が含まれ得る。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブは繊維材料に直接結合される。他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長を仲介するために用いられるバリア・コーティング及び/又は触媒ナノ粒子を介して繊維材料に間接的に結合される。カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出させる具体的な方法は、「結合モチーフ(bonding motif)」と呼ばれる。
【0019】
本明細書では、用語「難燃性の」又は「難燃性」とは、発火源が除かれたときに少なくともある程度自己消火する材料をいう。
【0020】
本明細書では、用語「ナノ粒子」とは、球の等価直径が約0.1nmから約100nmの間の直径を有する粒子をいうが、ナノ粒子は球形である必要はない。
【0021】
本明細書では、用語「サイジング剤(sizing agent)」又は「サイジング(sizing)」とは、繊維材料を完全な状態で保護するか、繊維材料と複合材料マトリックス間の界面相互作用を高めるか、及び/又は、繊維材料の特定の物理的性質を変える及び/又は高めるためのコーティングとしての役割を果たす繊維材料の製造において用いられる材料をいう。
【0022】
本明細書では、用語「巻き取り可能な寸法」とは、カーボン・ナノチューブ浸出後に繊維材料をスプール(spool)又はマンドレル(mandrel)に巻き取っておくことが可能な、長さの限定されない、繊維材料の有する少なくとも1つの寸法をいう。「巻き取り可能な寸法」の繊維材料は、繊維材料へのカーボン・ナノチューブ浸出のためのバッチ処理又は連続処理のいずれかの使用を示す少なくとも1つの寸法を有する。市販の巻き取り可能な寸法の例示的な炭素繊維材料は、800テックス(1テックス=1g/1,000m)又は620ヤード/ポンドの寸法を有するAS4 12k炭素繊維トウ(Grafil, Inc., Sacramento, CA)である。特に、工業用の炭素繊維のトウは、例えば、5、10、20、50及び100ポンドのスプールで入手されるが、より大きなスプールには特注を必要とする場合もある。
【0023】
本明細書では、用語「遷移金属」とは、周期表のd‐ブロックにおけるあらゆる元素又はその合金をいう。また、用語「遷移金属塩」とは、あらゆる遷移金属化合物(例えば、遷移金属元素の酸化物、炭化物、窒化物等)をいう。カーボン・ナノチューブを合成するために適した触媒ナノ粒子を形成する例示的な遷移金属は、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au、Ag、並びにこれらの合金、塩及び混合物が挙げられる。
【0024】
本明細書では、「長さが均一」とは、約1μmから約500μmの範囲にあるカーボン・ナノチューブ長に関して、カーボン・ナノチューブが、カーボン・ナノチューブの全長の±約20%又はそれ未満の許容誤差を伴う長さを有する状態をいう。極めて短いカーボン・ナノチューブ長(例えば、1μm〜4μm等)では、この誤差は、±約1μm、即ち、カーボン・ナノチューブの全長の約20%よりも若干大きくなるであろう。
【0025】
本明細書では、「密度分布が均一」とは、繊維材料上のカーボン・ナノチューブ密度が、カーボン・ナノチューブで覆われる繊維材料表面積に関して被覆率±約10%の許容誤差を有する状態をいう。
【0026】
本明細書では、用語「高分子マトリックス」とは、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、例えば、ランダム方向、整列方向、垂直方向、平行方向及びこれらの組み合わせ等、特定の方向に組織化できるバルク高分子材料をいう。
【0027】
ある実施形態では、本開示の難燃性複合材料は、外層と少なくとも1つの内層を含む。前記外層は外面を有し、第1の高分子マトリックスと第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む。前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、長さが約50μmを超える第1の複数のカーボン・ナノチューブと第1の繊維材料を含む。前記少なくとも1つの内層は、第2の高分子マトリックスを含む。ある実施形態では、前記少なくとも1つの内層は、第2の複数のカーボン・ナノチューブと第2の繊維材料を含む第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、更に含み、この場合、前記第2の複数のカーボン・ナノチューブは、長さが約50μm未満である。
【0028】
ある実施形態では、本開示の難燃性複合材料は、外層と内層を有するエポキシマトリックスを含み、前記外層には第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含み、そして、前記内層には第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む。前記外層は、外面を有し、約0.005”から約0.1”の範囲の厚さを有する。前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、第1の複数のカーボン・ナノチューブと第1の繊維材料を含み、この場合、前記第1の複数のカーボン・ナノチューブは、約50μmを超える長さである。前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、第2の複数のカーボン・ナノチューブと第2の繊維材料を含む。
【0029】
カーボン・ナノチューブが浸出した繊維材料(炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維及びガラス繊維等)は、2009年11月2日に全て出願され、同時係属中である出願人の米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号及び第12/611,103号に記載されており、各出願について、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。カーボン・ナノチューブの浸出に関するより詳しい説明は後に詳述する。図1は、炭素繊維に浸出したカーボン・ナノチューブの例示的なTEM画像を示す。図2は、カーボン・ナノチューブが浸出した炭素繊維の例示的なSEM画像を示しており、ここでは、カーボン・ナノチューブは目標長さ40μmの±20%以内の長さである。図1及び2の画像において、カーボン・ナノチューブは多層カーボン・ナノチューブであるが、単層カーボン・ナノチューブ、2層カーボン・ナノチューブ及び2層を上回る多層カーボン・ナノチューブ等のあらゆるカーボン・ナノチューブを、本難燃性複合材料及び製品の繊維材料に浸出させるために用いることができる。一般的に、単層カーボン・ナノチューブは、複数層のカーボン・ナノチューブよりも熱伝導性がよいが、本実施形態における浸出したカーボン・ナノチューブの総合的性能は、熱伝導性に加えて熱酸化安定性の機能である。図1及び図2は炭素繊維材料へのカーボン・ナノチューブの浸出を示すが、これらの画像は、カーボン・ナノチューブで浸出され本複合材料や製品に含まれた繊維材料の形態の1つを単に示しているだけである。種々の実施形態において、カーボン・ナノチューブで浸出され本難燃性の複合材料や製品に含まれた繊維材料は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、及び有機繊維(例えばアラミド繊維)等を含む。第1の繊維材料と第2の繊維材料の両方が存在する実施形態において、前記第1の繊維材料と前記第2の繊維材料は、例えば、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維等の繊維、又はこれらのあらゆる組み合わせから単独で選択される。
【0030】
炭素繊維は、繊維の生成に用いられる前駆体(そのいずれもが本明細書に記載される様々な実施形態に使用可能)、即ち、レーヨン、ポリアクリロニトリル(PAN)及びピッチ(pitch)に基づいて3種類に分類される。セルロース系材料であるレーヨン前駆体から作られる炭素繊維は、炭素含有量が約20%と比較的低く、その繊維は低強度かつ低剛性の傾向にある。対照的に、PAN前駆体が提供する炭素繊維は、炭素含有量が約55%であり、表面欠陥が最小限であるため、極めて優れた引張強度を有する。石油アスファルト、コールタール及びポリ塩化ビニルに基づくピッチ前駆体もまた、炭素繊維を生成するために用いられる。ピッチは、比較的低コストで炭素収率が高いが、得られる炭素繊維に対する既知のバッチ処理に不均一性という問題がある。
【0031】
本難燃性複合材料及び製品の繊維材料に浸出するカーボン・ナノチューブの種類は、通常、限定されることなく様々である。様々な実施形態において、繊維材料に浸出するカーボン・ナノチューブは、例えば、単層カーボン・ナノチューブ(SWNTs)、2層カーボン・ナノチューブ(DWNTs)、多層カーボン・ナノチューブ(MWNTs)及びこれらのあらゆる組み合わせ等、フラーレン族のうち円筒形状のあらゆる炭素の同素体であってよい。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブは、フラーレン様構造で閉塞される。換言すれば、このような実施形態では、カーボン・ナノチューブは閉塞端を有するということである。また一方、他の実施形態では、カーボン・ナノチューブは端部が開口した状態である。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブは他の物質を封入する。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブは、繊維材料に浸出した後に共有結合的に機能化される(covalently functionalized)。機能化は、特定の高分子マトリックスに対するカーボン・ナノチューブの親和性を向上するために用いられる。ある実施形態において、プラズマプロセスは、カーボン・ナノチューブの機能化を促進するために用いられる。
【0032】
繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブ長は、広範囲にわたって変化する。ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブの平均長は、約1μmから約10μmである。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば、せん断強度を向上させる用途に有用である。他の実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブの平均長は、約5μmから約70μmである。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば、引張強度向上等の用途、特に、カーボン・ナノチューブが繊維材料の長手軸と略平行に配列された場合に有用である。また他の実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブの平均長は、約10μmから約100μmである。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば、機械的性質に加えて、電気的及び熱的な伝導性も向上させるのに有用である。ある実施形態において、浸出したカーボン・ナノチューブの平均長は、約100μmから約500μmである。このような長さを有するカーボン・ナノチューブは、例えば、電気的及び熱的な伝導性を向上させるために特に有益である。
【0033】
本難燃性複合材料の種々の実施形態では、前記外層の第1の繊維材料に浸出した前記第1の複数のカーボン・ナノチューブは、長さが約50μmを超えている。本出願人は、複合材料において、より短いカーボン・ナノチューブ(即ち、長さが50μm未満のカーボン・ナノチューブ)は、より長いカーボン・ナノチューブ(即ち、長さが50μmを超えるカーボン・ナノチューブ)に比べて単位重量当たりの構造的強度の度合が大きいことを見出した。より長いカーボン・ナノチューブは、ある程度の構造的強度を提供できるが、複合材料の重量増によるコスト高を招き、特定の高パフォーマンス用途には適さない。しかしながら、本出願人は、より長いカーボン・ナノチューブが、複合材料に難燃性を付与するのに特に適していることを見出した。本難燃性複合材料の外層により長いカーボン・ナノチューブを含めることによって、出願人は、良好な構造的性質及び軽量を維持しつつ、その外側が良好な難燃性を有する複合材料を開発した。ある実施形態では、前記外層の第1の繊維材料に浸出した前記第1の複数のカーボン・ナノチューブは、約50μmから約100μmの範囲の長さである。他の実施形態では、前記外層の第1の繊維材料に浸出した前記第1の複数のカーボン・ナノチューブは、約100μm超、約200μm超、約300μm超、約400μm超、約500μm超、或いは、これらの値の間のあらゆる範囲の長さである。
【0034】
本難燃性複合材料の実施形態では、少なくとも1つの内層もまた、例えば、第2の繊維材料、第2の複数のカーボン・ナノチューブ及び第2の繊維材料を含んだ第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料、及びこれらの組み合わせ等の少なくとも1つの構成要素を含むことができる。ある実施形態では、第1の繊維材料と第2の繊維材料は同じ材料である。他の実施形態では、第1の繊維材料と第2の繊維材料は異なる材料である。ある実施形態では、少なくとも1つの内層の繊維材料は、カーボン・ナノチューブを含まない。例えば、種々の実施形態における本開示の難燃性複合材料は、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維、カーボン・ナノチューブ浸出ガラス繊維、カーボン・ナノチューブ浸出セラミック炭素繊維、及び/又はカーボン・ナノチューブ浸出有機繊維を外層内に含むことができ、更に、少なくとも1つの内層は、カーボン・ナノチューブの浸出がない炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、及び/又は有機繊維を含む。しかしながら、種々の実施形態における本開示の難燃性複合材料は、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維、カーボン・ナノチューブ浸出ガラス繊維、カーボン・ナノチューブ浸出セラミック炭素繊維、及び/又はカーボン・ナノチューブ浸出有機繊維を外層内に含むことができ、更に、少なくとも1つの内層もまた、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維、カーボン・ナノチューブ浸出ガラス繊維、カーボン・ナノチューブ浸出セラミック炭素繊維、及び/又はカーボン・ナノチューブ浸出有機繊維を含む。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料とカーボン・ナノチューブの浸出がないマトリックスもまた、少なくとも1つの内層に含むことができる。
【0035】
ある実施形態では、内層の第2の繊維材料に浸出した第2の複数のカーボン・ナノチューブは、第1の複数のカーボン・ナノチューブより長さが短い。例えば、この特徴により、第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料には、難燃性を付与するよりはむしろ構造的強度又は複合材料の別の性質(例えば、引張強度、ヤング率、せん断強度、せん断弾性係数(shear modulus)、硬度(toughness)、圧縮強度、圧縮係数、密度、電磁波吸収率/反射率、音響透過率、電気伝導性及び/又は熱伝導性等)を目指すことが可能となる。更に、難燃性複合材料における不要な重量の増大を回避する。ある実施形態では、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、約50μm未満の長さである。他の実施形態では、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、約20μm未満の長さである。更に他の実施形態では、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、約1μmから約10μmの範囲の長さである。
【0036】
しかしながら、別の実施形態では、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、第1の複数のカーボン・ナノチューブ以上の長さを有する。例えば、ある実施形態では、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、約50μmを超える長さである。例えば、導電性又は熱伝導性の難燃性複合材料が必要とされる場合、複合材料の内層により長いカーボン・ナノチューブを有することは望ましい。そのような実施形態では、外層の第1の複数のカーボン・ナノチューブが、複合材料に難燃性を付与する働きをし、内層の第2の複数のカーボン・ナノチューブが、複合材料における導電経路又は熱伝導経路を確立する働きをするが、これにより、外層が火炎事故で損傷した後でさえも元の状態を維持することが可能となる。
【0037】
更に他の実施形態では、内層の第2の複数のカーボン・ナノチューブは、あるものは第1の複数のカーボン・ナノチューブより長く、またあるものは第1の複数のカーボン・ナノチューブより短いカーボン・ナノチューブの混合物を含む。そのような実施形態では、内層のより長いカーボン・ナノチューブが、複合材料における導電経路又は熱伝導経路を確立する働きをする一方、内層のより短いカーボン・ナノチューブが、例えば、複合材料の構造的性質を向上させる働きをする。限定されない例として、ある実施形態において、第1の複数のカーボン・ナノチューブは、約50μmを超える長さであり、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、50μm未満の長さであるカーボン・ナノチューブ部分と、50μmを超える長さであるカーボン・ナノチューブ部分とを含む。
【0038】
上述したように、本難燃性複合材料は、複合材料の他の場所の構造的性能に与える影響を制限するために、主に外層に難燃性を付与する。火炎状態に晒された場合、本複合材料の外層は、発火源を除去すると更なる燃焼を妨げる犠牲炭化層を形成する。このような状態下では、複合材料の内層は実質的に影響を受けず複合材料の構造的性質は本質的に変わらないままである。
【0039】
複合材料の外層の厚さは、広範囲の着火条件を有する特定の用途に合わせることができる。例えば、燃え盛る炎を伴う高温用途では、厚い外層により良好な難燃性が提供される。しかしながら、着火条件に晒される時間が比較的短いか又は炎が特に激しくない場合、薄い外層でも十分である。ある実施形態では、外層の厚さは、約0.005”から約0.1”の範囲である。ある実施形態では、外層の厚さは、約0.005”から約0.015”又は約0.015”から約0.05”の範囲である。更に他の実施形態では、約0.1”から約1”の範囲である。
【0040】
ある実施形態では、第1の複数のカーボン・ナノチューブは、外層の約0.1重量%から約20重量%の範囲の量で存在している。他の実施形態では、外層の約0.1重量%から約5重量%の範囲又は約5重量%から約10重量%の範囲の量で存在している。外層におけるカーボン・ナノチューブの量に対する制御により、難燃性の度合を特定の用途に合わせることが可能となる。
【0041】
存在する場合、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、少なくとも1つの内層の約0.1重量%から約10重量%の範囲の量で存在している。他の実施形態では、少なくとも1つの内層の約0.1重量%から約3重量%又は約3重量%から約5重量%の範囲の量で存在している。他の性質のうちで、少なくとも1つの内層におけるカーボン・ナノチューブの量に対する制御により、複合材料の機械特性を特定用途に適合させるように変更することが可能となる。
【0042】
本開示の種々の実施形態において、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、存在する場合、第1の複数のカーボン・ナノチューブよりも難燃性複合材料における重量パーセントをより低くできる。そのような実施形態では、上述したような、高い濃度のカーボン・ナノチューブは、外層に用いられるが、一方低い濃度のカーボン・ナノチューブは、例えば、構造的強度等の所望の性質に対応するため少なくとも1つの内層に用いるとよい。種々の実施形態において、第1の複数のカーボン・ナノチューブと第2の複数のカーボン・ナノチューブは、トータルで、難燃性複合材料の約20重量%未満で存在する。ある実施形態では、第1の複数のカーボン・ナノチューブと第2の複数のカーボン・ナノチューブは、トータルで、難燃性複合材料の約0.1重量%から約10重量%の範囲で存在する。他の実施形態では、第1の複数のカーボン・ナノチューブと第2の複数のカーボン・ナノチューブは、トータルで、難燃性複合材料の約0.5重量%から約9重量%の範囲又は約1重量%から約7.5重量%の範囲、及びこれらの値の間のあらゆる範囲で存在する。本発明の利点として当業者は、外層の難燃性と少なくとも1つの内層の機械特性をそれぞれ最適化するために、上記範囲内に総カーボン・ナノチューブ濃度を維持しながら、カーボン・ナノチューブの適切な含有量の調整が可能であるということを認識するであろう。
【0043】
本発明の難燃性複合材料を形成するために用いることができる高分子マトリックスは、通常の繊維強化高分子複合材料に一般的に用いられるあらゆる高分子マトリックスである。ある実施形態では、第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックスは同じものである。この状態により、外層と少なくとも1つの内層との間の最大限の適合性は保証され、これによりしばしば最適な構造的性質が生み出される。しかしながら、別の実施形態では、第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックスが異なっている。当業者は、第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックスに関して異なる性質を持つことから恩恵を受けることを考えて特定の条件を認識するであろう。例えば、ある用途において、重い(heavy)耐衝撃性高分子マトリックスを含有する薄い外層及び異なる高分子マトリックスを含有する密度の小さい内層を有することは有効であろう。
【0044】
ある実施形態では、相応しい高分子マトリックスとしては、例えば、エポキシ、ポリエステル、ビニルエステル、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、フェノールホルムアルデヒド、又はビスマレイミド等が挙げられる。より一般的には、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー及び弾性ポリマーは、適切な高分子マトリックスである。相応しい熱硬化性高分子マトリックスとしては、例えば、フタル酸/リンゴ酸型ポリエステル類(phthalic/maelic type polyesters)、ビニルエステル類(vinyl esters)、エポキシ類(epoxies)、フェノール類(phenolics)、シアン類(cyanates)、ビスマレイミド類(bismaleimides)、及びナディック エンド‐キャップト ポリイミド類(nadic end-capped polyimides)(例えば、PMR‐15)が挙げられる。相応しい熱可塑性高分子マトリックスとしては、例えば、ポリスルホン類(polysulfones)、ポリアミド類(polyamides)、ポリカーボネート類(polycarbonates)、ポリフェニレン酸化物類(polyphenylene oxides)、ポリサルファイド類(polysulfides)、ポリエーテルエーテルケトン類(polyether ether ketones)、ポリエーテルスルホン類(polyether sulfones)、ポリアミド-イミド類(polyamide-imides)、polyetherimides、ポリイミド類(polyimides)、ポリアリレート類(polyarylates)、及び液晶ポリエステル類(liquid crystalline polyesters)等が挙げられる。
【0045】
ある実施形態では、第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックス双方が、エポキシである。当業者は、エポキシマトリックスが、通常、構造的用途に用いられる複合材料に含まれており、これらエポキシマトリックスの多くが、本発明の難燃性複合材料に包含するのに適しているということを認識するであろう。更に、エポキシは、二液型エポキシ或いは自己硬化型である。
【0046】
本難燃性複合材料に用いられる繊維材料の形態は、広範囲にわたって変化できる。様々な実施形態において、前記繊維材料は、連続又は不連続のフィラメント(filament)、ロービング(rovings)、ヤーン(yarns)、繊維トウ(fiber tows)、テープ、繊維編組(fiber-braids)、織物(woven fabric)、不織布(non-woven fabric)、繊維プライ(fiber plies)(例えば、一方向繊維プライ)、及び、他の3次元の織物又は不織布構造体の限定されない形態である。例えば、繊維材料が炭素繊維である実施形態において、繊維材料は、連続又は不連続炭素フィラメント、炭素ロービング、炭素繊維ヤーン、炭素繊維トウ、炭素テープ、炭素繊維編組、炭素織物、不織炭素繊維マット(no-woven carbon fiber mat)、炭素繊維プライ、及び、他の3次元の織物又は不織布構造体等の限定されない形態であってよい。図3は、カーボン・ナノチューブ浸出炭素繊維の織物(fabric weave)内の繊維トウのSEM画像例である。様々な実施形態において、均一な長さ及び均一な分布のカーボン・ナノチューブは、巻き取り可能な長さのフィラメント、繊維トウ、テープ、織物及び他の3次元織物構造体に浸出される。様々なフィラメント、繊維トウ、ヤーン、マット、織物及び不織布等にカーボン・ナノチューブを直接浸出させることができる一方、カーボン・ナノチューブ浸出繊維でできた元となる繊維トウ、ヤーン等からこのような高い規則構造を生成することも可能である。例えば、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、カーボン・ナノチューブ浸出繊維トウでできた織物に変えることができる。ある実施形態では、織物は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維及び/又は有機繊維等の繊維タイプのマトリックスを含むことができる。
【0047】
フィラメントには、大きさが約1μmから約100μmまでの直径を有する高アスペクト比の繊維が含まれる。ロービングには、撚り合わされ、細くされた不純物のない繊維からなる柔らかいストランド(strands)が含まれる。
【0048】
繊維トウは、通常、フィラメントを密に結合した束(bundle)であり、ある実施形態では、これが撚り合わされてヤーンとなる。ヤーンには、撚り合わされたフィラメントを密に結合した束が含まれるが、この場合、ヤーンにおける各フィラメントの直径は、比較的均一である。ヤーンには、「テックス(tex)」(1000リニアメーター当たりのグラム重量として示される)又は「デニール(denier)」(10,000ヤード当たりのポンド重量として示される)で表される様々な重量がある。ヤーンに関して、標準的なテックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスまでである。
【0049】
繊維組物(fiber braids)は、繊維が高密度に詰め込まれたロープ状構造体を示す。このようなロープ状構造体は、例えば、ヤーンから組まれる。組上げ構造体は中空部分を含んでもよく、或いは、別のコア材料の周囲に組まれてもよい。
【0050】
繊維トウは、撚り合わされていないフィラメントを結合した束も含むことができる。ヤーンと同様に、繊維トウにおけるフィラメントの直径は概して均一である。また、繊維トウも様々な重量を有し、テックス範囲は、通常、約200テックスから約2000テックスの間である。加えて、繊維トウは、例えば、12Kトウ、24Kトウ、48Kトウ等の繊維トウ内にある数千のフィラメントの数により、しばしば特徴付けられる。
【0051】
テープは、例えば、織物又は不織の扁平繊維トウとして組まれる繊維材料である。テープは様々な幅を持ち、通常、リボン同様の両面構造体である。本明細書に記載される様々な実施形態において、カーボン・ナノチューブは、テープの一面又は両面の繊維材料に浸出する。また、種類、直径又は長さの異なるカーボン・ナノチューブが、テープの各面で成長可能である。テープのそれぞれの面で種類、直径又は長さの異なるカーボン・ナノチューブを有するテープは、本難燃性複合材料の実施形態おいて有利となり得る。同時係属中である出願人の米国特許出願に記載されるように、巻いたテープへのカーボン・ナノチューブの浸出は、連続的な方法で実施される。
【0052】
ある実施形態において、繊維材料は、織物又はシート状構造体に構成される。これらには、前述のテープに加えて、例えば、織物、不織布マット及び繊維プライが含まれる。このようなより高い規則構造は、カーボン・ナノチューブが既に浸出した状態の、元となる繊維トウ、ヤーン、フィラメント等から作ることができる。テープと同様に、このような構造体もまた、カーボン・ナノチューブの連続的な浸出のための基材として機能する。
【0053】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブを、織る前のトウ或いはロービング段階で繊維材料に浸出させる。そのような実施形態では、カーボン・ナノチューブは、高いカーボン・ナノチューブ担持量を達成するためにトウ内及びトウ間の両空間を満たす。図4は、それぞれ複数の繊維405を含んだ複数の繊維トウ401を有するロービング400の概略図を示す。トウ間空間402とトウ間空間403が、図示されている。別の実施形態では、カーボン・ナノチューブの浸出は、特定の織物構造にトウやロービングを織り込んだ後に、本明細書に記載した手順に従って行われる。
【0054】
本明細書で記載したプロセスに従って作られたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、他の方法で生成されたものよりも非常に高いカーボン・ナノチューブ担持量割合を有する。この特徴により、旧来の技術で生成された複合材料に比べると本発明の複合材料の方は非常に高い割合のカーボン・ナノチューブ担持量を含むことが可能となる。特に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料により、充分に混ざったカーボン・ナノチューブ複合材料が得られるようになる。一般的に、本発明のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、約1重量%から約30重量%の範囲のカーボン・ナノチューブを含むことができる。ある実施形態では、最高40重量%までのカーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出できる。種々の実施形態において、外層の第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、約1重量%から約30重量%の範囲のカーボン・ナノチューブを含む。存在する場合、少なくとも1つの内層の第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料もまた、約1重量%から約30重量%の範囲のカーボン・ナノチューブ、又は必要に応じて異なる範囲のカーボン・ナノチューブ重量を含む。
【0055】
出願人の同時係属中である出願に記載されるように、繊維材料は、カーボン・ナノチューブをその上に成長させるために当該繊維材料上に触媒ナノ粒子層(通常は単分子層のみ)を提供するよう変更される。種々の実施形態において、カーボン・ナノチューブ成長を促進するために用いられる触媒ナノ粒子は、遷移金属及びこれらの種々の塩である。ある実施形態では、触媒ナノ粒子を、例えば、浸漬コーティング、スプレーコーティング、プラズマ蒸着、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に周知の他のプロセス等の技術を用いて繊維材料に付着する。
【0056】
カーボン・ナノチューブは、そのキラリティーに応じて、金属的、半金属的又は半導体的となり得る。カーボン・ナノチューブのキラリティーを示すために確立された命名方式が当業者に受け入れられており、2つの指数(n,m)を用いて識別している。ここで、nとmは、六方晶系のグラファイトが管状構造に形成される場合、グラファイトの切断部及び巻き方を表す整数である。また、それらのキラリティーに加えて、カーボン・ナノチューブの直径も、その電気伝導性と熱伝導性関連の性質とに影響を与える。カーボン・ナノチューブの合成において、カーボン・ナノチューブの直径は、一定サイズの触媒ナノ粒子を用いることにより制御可能である。カーボン・ナノチューブの直径は、通常、その形成に触媒作用を及ぼす触媒ナノ粒子の略直径と等しい。このため、カーボン・ナノチューブの性質は、例えば、カーボン・ナノチューブの合成に用いられる触媒ナノ粒子のサイズを調整することで、更に制御される。限定しない例として、直径約1nmの触媒ナノ粒子を用いることにより、繊維材料に単層カーボン・ナノチューブが浸出する。より大きい触媒ナノ粒子は、主に、多層カーボン・ナノチューブを作製するために用いられるが、これらは、その複数のナノチューブ層であるため、或いは、単層及び多層カーボン・ナノチューブの混合であるため、より大きな直径を有する。多層カーボン・ナノチューブは、通常、電流を不均一に再分配する個々のナノチューブ層の間における層間反応のために、単層カーボン・ナノチューブよりも複雑な導電率プロファイル(conductivity profile)を有する。一方、単層カーボン・ナノチューブの異なる部分を通る電流は変化しない。
【0057】
ある実施形態において、繊維材料には、更にバリア・コーティングが含まれる。例示的なバリア・コーティングには、例えば、アルコキシシラン、メチルシロキサン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子が挙げられる。例えば、1つの実施形態では、バリア・コーティングはAccuglass(登録商標)T−11のスピンオンガラス(Honeywell International Inc., Morristown, NJ)である。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブ合成のための触媒ナノ粒子は、未硬化のバリア・コーティング材と混合されて、その後、共に繊維材料に塗布される(applied)。他の実施形態において、バリア・コーティング材は、触媒ナノ粒子の付着(deposition)前に繊維材料に加えられる。バリア・コーティング材は、通常、カーボン・ナノチューブ成長のための炭素原料ガスに対する触媒ナノ粒子の曝露が十分可能な薄さである。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、触媒ナノ粒子の有効径未満か、或いは、それと略等しい。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nmから約100nmの範囲である。他の実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、40nmを含む、約10nmから約50nmの範囲である。ある実施形態では、バリア・コーティングの厚さは、約10nm未満であり、約1nm、約2nm、約3nm、約4nm、約5nm、約6nm、約7nm、約8nm、約9nm及び約10nmと、これらの中間の全ての値とその端数を含む。
【0058】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とカーボン・ナノチューブの間の中間層として機能し、また、繊維材料に対してカーボン・ナノチューブを機械的に浸出させる。このような機械的な浸出により、繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織化するための基盤として機能する強固なシステムが提供される一方で、カーボン・ナノチューブの有益な特性が繊維材料に付与される。更に、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分に晒されることに起因した化学的損傷、及び/又は、カーボン・ナノチューブ成長を促進するために用いられる高温での熱的損傷から、繊維材料を保護するという点にもある。
【0059】
触媒ナノ粒子の付着後、カーボン・ナノチューブを成長させるための化学蒸着(CVD)ベースのプロセス又は他のプロセスが用いられ、これにより、繊維上でカーボン・ナノチューブを連続的に成長させる。得られるカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、それ自体が複合材料構造である。カーボン・ナノチューブ合成のための例示的なプロセスには、例えば、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマCVD法、レーザー・アブレーション、アーク放電、及び高圧一酸化炭素法(HiPCO)による合成等、当業者に既知のあらゆるプロセスが含まれる。ある実施形態では、CVDベースの成長プロセスは、成長プロセス中にカーボン・ナノチューブが電界方向に従うように電界を与えることによってプラズマ助長されるであろう。
【0060】
ある実施形態において、繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に略垂直である。換言すれば、繊維材料に浸出するカーボン・ナノチューブは、繊維表面に対し、その周囲で垂直である。他の実施形態において、繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に対して略平行である。
【0061】
ある実施形態において、繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブは、束になっておらず、これにより、繊維材料とカーボン・ナノチューブとの間の強力な相互作用を促進する。束になっていないカーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの有益な特性を本複合材料によく発現させるようにする。他の実施形態では、繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの合成中に成長密度を減少させることにより、高均一で、絡み合った(entangled)カーボン・ナノチューブのネットワークの形態で作られる。
【0062】
繊維材料上のカーボン・ナノチューブ密度の均一性に関して、ある実施形態では、繊維材料に浸出したカーボン・ナノチューブは、通常、密度分布が均一である。前述に定義したように、密度分布の誤差は、カーボン・ナノチューブが浸出した繊維材料の表面積全体で±約10%である。限定しない例として、この誤差は、直径8nmの5層カーボン・ナノチューブの場合、1平方マイクロメートル当たり±約1500のカーボン・ナノチューブに相当する。このような形状ではカーボン・ナノチューブの内部空間を充填可能と仮定している。ある実施形態において、繊維材料のパーセント被覆率(即ち、カーボン・ナノチューブで被覆される繊維材料の表面積の百分率)として表されるカーボン・ナノチューブ密度の最大値は、ここでも直径8nmの5層カーボン・ナノチューブにおいて内部空間を充填可能と仮定すると、約55%にもなる。55%の表面積被覆率は、前述の寸法を有するカーボン・ナノチューブの場合、1平方マイクロメートル当たり最大約15,000のカーボン・ナノチューブに相当する。ある実施形態において、繊維材料上のカーボン・ナノチューブ被覆の密度は、1平方マイクロメートル当たり最大約15,000のカーボン・ナノチューブである。当業者であれば、繊維材料表面上における触媒ナノ粒子の配置、カーボン・ナノチューブの成長条件に対する曝露時間、及び、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるために用いられる実際の成長条件自体を変えることにより、幅広いカーボン・ナノチューブ密度が得られることを認識するであろう。
【0063】
理論又はメカニズムに拘束されるものではないが、本出願人は、本複合材料の難燃性が、カーボン・ナノチューブの熱酸化安定性と外層の第1の繊維材料の被覆密度によるものと考える。外層の第1の複数のカーボン・ナノチューブは、複合材料の内層へ熱分解を大幅に進行させることなく複合材料の外面上に犠牲炭化層を形成する熱バリアとして機能する。更に、カーボン・ナノチューブの高熱伝導性は、複合材料の外層に熱を通すために用いられる一方、内層への熱転写を制限する。内層への熱転写の制限は、第1の繊維材料の長手軸に略平行に第1の複数のカーボン・ナノチューブを配列することによって容易に達成できる。第1の複数のカーボン・ナノチューブを略平行方向に配列することによって、熱を複合材料の内層の中へというよりはむしろ第1の繊維材料に沿って導くことができる。
【0064】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が形成されれば、機械的手段、電気機械的手段、化学的手段、プラズマを用いること、或いは当業者に周知の他の方法によって、カーボン・ナノチューブを略平行方向へ配列させることができる。限定しない例として、略平行方向に配列されたカーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、同時継続中である本出願人の2010年2月2日出願の米国仮出願第61/300,783号(これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれている)に開示された方法によって形成できる。ある実施形態では、略平行方向にカーボン・ナノチューブを配列するプロセスは、カーボン・ナノチューブ間、カーボン・ナノチューブと繊維材料間、及び/又はカーボン・ナノチューブと高分子マトリックス間のπ‐スタッキング相互作用及び/又は共有結合を形成することを伴うことができる。ある実施形態では、略平行方向にカーボン・ナノチューブを配列するプロセスは、本明細書で開示されたカーボン・ナノチューブ成長工程を繰り返すことによって繊維材料上にカーボン・ナノチューブの多重層を成長させることを伴う。或いは、カーボン・ナノチューブの略平行な配列は、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出するプロセル中に行われる。
【0065】
略平行方向にカーボン・ナノチューブを配列する機械的手段は、例えば、押出し、引抜成形、ガス圧力支援金型、通常の金型、及びマンドレルが挙げられる。繊維材料の長手軸方向にせん断力を加えるこれらの技術や他の関連技術を用いることで、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料内のカーボン・ナノチューブを、略垂直方向から繊維材料の長手軸と略平行な方向に再編成することができる。
【0066】
略平行方向にカーボン・ナノチューブを配列する電気機械的手段は、例えば、カーボン・ナノチューブ成長中に繊維材料に平行な電界又は磁界が挙げられ、これによりカーボン・ナノチューブは、前記成長プロセス中に繊維材料の長手軸に略平行に配列されるようになる。カーボン・ナノチューブ形成において、カーボン・ナノチューブは加えられた電界又は磁界の方向に成長する傾向にある。適切にプラズマスプレーの形状や電界或いは磁界を調整することによって、略平行に配列されたカーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を容易に形成できる。この技術の利点は、カーボン・ナノチューブの浸出後に略平行に配列するようにカーボン・ナノチューブを再編成する必要がないことである。
【0067】
カーボン・ナノチューブを配列する化学的手段には、例えば、溶剤、界面活性剤及びマイクロエマルション等の使用が挙げられ、これらは、これら化学物質を含む液体から繊維材料を引き出すときに被覆効果をもたらす。従って、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を液体から引き出すことは、略平行方向にカーボン・ナノチューブを再編成することができる。ある実施形態では、化学的配列は、共有結合及びπ‐スタッキング相互作用の形成を介してニ官能性ポリマーを持つ隣接する垂直配向カーボン・ナノチューブ間の架橋結合をも含むことができる。架橋結合したカーボ・ナノチューブは、その後、前述の方法のいずれかを介して略平行な配列に誘導することができる。カーボン・ナノチューブの架橋結合に特に適したニ官能性ポリマーは、Zyvex Technologies社から入手できるKENTERA(商標名)である。
【0068】
図5は、略平行に配列されたカーボン・ナノチューブを有するカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を作成する化学的プロセスを示す。繊維材料500をスタートとして、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料501を、本明細書で述べたいくつかの方法によって初めに作成する。カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料501は、繊維表面に対して略垂直方向に繊維材料に浸出させたカーボン・ナノチューブを有する。次に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料501を、カーボン・ナノチューブ間の架橋結合を形成するために処理し、架橋結合されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料502を形成する。その後、架橋結合されたカーボン・ナノチューブを、略平行な方向に変更し、平行配向したカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料504が得られる。必要に応じて、カーボン・ナノチューブを形成するのに適した触媒ナノ粒子を、平行配向したカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料504に付着してもよい。その後、追加のカーボン・ナノチューブ層を形成し、多層の平行配向したカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料505を得る。必要に応じて、触媒ナノ粒子を、各層を積層した後に除去してもよい。
【0069】
本発明の難燃性複合材料のある実施形態では、第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複合材料の外面に略平行に配列される。更なる実施形態では、第1の複数のカーボン・ナノチューブもまた、第1の繊維材料の長手軸に略平行に配列されている。従って、そのような実施形態では、第1の複数のカーボン・ナノチューブもまた、繊維材料の外面に略平行に配列されている。また更なる実施形態では、第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料における各繊維は、外層において略平行に配列されている。従って、そのような実施形態では、繊維材料とカーボン・ナノチューブの両方が、略平行方向に配列されている。更に、そのような実施形態では、繊維材料とカーボン・ナノチューブの双方が、複合材料の外面に略平行に配列されている。上述したように、カーボン・ナノチューブと繊維材料の平行配列は、複合材料の内層への熱伝達を抑制するのに有効である。更に、カーボン・ナノチューブ及び/又は繊維材料の平行配列は、複合材料により高い機械的強度を付与するのに有効である。
【0070】
更なる実施形態において、難燃性複合材料の内層におけるカーボン・ナノチューブ及び/又は繊維材料もまた、略平行方向に配列されている。この場合、一般には熱伝達を促進するためには用いられないが、カーボン・ナノチューブ及び/又は第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の略平行な配列は、複合材料の内層の機械的強度を向上させることができる。
【0071】
更に、ある実施形態では、複合材料の内層の第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、クロスプライパターン(cross-ply pattern)で配向してもよい。即ち、ある実施形態では、第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が複数の内層に配向され、第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む各内層が、互いに略平行に配列され、且つ、別の内層に略平行に配列した第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料に対して略垂直に配列される。そのようなクロスプライパターンは、当業者には周知であり、従来の複合材料製造技術(例えば、堆積技術等)よって作成することができる。内層内の第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料のクロスプライ配向は、2次元で内層の機械的強度を向上するのに役立つであろう。
【0072】
第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の略平行な配向又はクロスプライ配向のいずれかにおいて、カーボン・ナノチューブを、第2の繊維材料上で所望の配向にすることが可能である。ある実施形態では、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、第2の繊維材料の長手軸に略平行である。他の実施形態では、第2の複数のカーボン・ナノチューブは、第2の繊維材料の長手軸に略垂直である。
【0073】
本発明の難燃性複合材料において、外層と内層のいずれかのカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、連続繊維及び/又は短繊維の形態をとる。本明細書で用いられる場合、短繊維は巻き取り可能な寸法ではない繊維材料である。短繊維は、一般的には、連続したカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を短い寸法(一般的には約1インチ以下)に切断して作られる。本明細書で用いられる場合、連続繊維は、巻き取り可能な寸法の長さを有する。連続繊維は本発明の難燃性複合材料において種々の長さを有するが、一般的に、短繊維の長さより長いことは確かである。更に、本発明の難燃性複合材料の連続繊維の長さは、複合材料の設計や目的の用途に基づいて変化する。
【0074】
ある実施形態では、第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料又は第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料のうちの少なくとも1つは、短繊維を含む。ある実施形態では、第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料又は第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料のうちの少なくとも1つは、連続繊維を含む。ある実施形態では、外層内の第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、短繊維を含み、内層内の第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が短繊維を含む。別の実施形態では、外層内の第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、短繊維を含み、内層内の第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が連続繊維を含む。ある実施形態では、外層内の第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、連続繊維を含み、内層内の第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が連続繊維を含む。ある実施形態では、外層内の第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、連続繊維を含み、内層内の第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が短繊維を含む。ある実施形態では、連続繊維及び短繊維の混合物が、外層及び/又は内層のいずれかに用いられる。第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含まない実施形態では、第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、短繊維、連続繊維或いはこれらの組み合わせのいずれかである。
【0075】
ある実施形態では、難燃性複合材料は、外層と少なくとも1つの内層との間に遷移層を含むが、この場合遷移層は少なくとも1つの第1の高分子マトリックス又は第2の高分子マトリックスを含む。これら実施形態の中には、第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックスが同じものがある。一般的に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含まない高分子マトリックスは、むしろ不十分な熱伝体である。従って、外層と少なくとも1つの内層との間に遷移層を含むことにより、少なくとも1つの内層への熱伝達は更に抑制される。ある実施形態では、遷移層にはカーボン・ナノチューブと繊維材料の双方が含まれない。他の実施形態では、遷移層は、カーボン・ナノチューブが存在しない第3の繊維材料を、更に含む。遷移層に繊維材料を含むことにより、複合材料に構造的な「弱い所(weak spot)」の形成を避けることができる。
【0076】
外層と少なくとも1つの内層との間の遷移層は、火災時において少なくとも1つの内層への熱伝達を抑制するのに十分ないずれの厚さであってよい。ある実施形態では、遷移層は、約0.001”から約0.02”の範囲の厚さを有する。他の実施形態では、遷移層は、約0.001”から約0.005”の範囲又は約0.005”から約0.01”の範囲の厚さを有する。
【0077】
別の実施形態では、難燃性製品が、本開示によって期待される。ある実施形態では、難燃性製品は、上述したような構造的複合材料であるが、これらに限定されるものではない。他の実施形態では、難燃性製品(例えば、難燃性の織物(textiles)を含む衣類や他の消費財等)が本明細書に記載されている。
【0078】
難燃性が役立つ構造的複合材料を含む例示的な製品としては、例えば、航空宇宙や弾道部品[例えば、ミサイルのノーズコーン、航空機の翼の前縁、主要航空機構造部品(例えば、フラップ、エアロフォイル、プロペラ及びエアブレーキ、小型飛行機の胴体、ヘリコプターのシェル(shell)及びローターブレード等)、補助航空機構造部品(例えば、フロアー、ドア、シート、空調装置及び補助タンク等)並びに航空機の動力部品等]、掃海船体(mine sweeper hulls)、ヘルメット、レードーム、ロケットノズル、救助ストレッチャー、及びエンジン部品等が挙げられる。同様に、建造物及び建築物において、外部の主要物(例えば、柱、ペディメント(pediments)、ドーム、コーニス(cornices)及び型枠(formwork)等)や室内の主要物(例えば、ブラインド、衛生陶器、壁材、窓枠等)に、構造的強化や難燃性が役立つ。海洋産業において、ボートの船体、ストリンガー(stringer)、マスト、プロペラ、舵及び甲板等は、構造的強化及び/又は難燃性が役立つ。また、本複合材料は、大規模運輸業において、例えば、トレーラー壁面の大型パネル、鉄道車両の床板、トラックの運転室、車体外部鋳造品(exterior body molding)、バスの車体、及び貨物コンテナ等にも用いられる。自動車用途において、本複合材料は、内部部品(例えば、トリミング(trimming)、シート及び計器盤等)、外部構造体(例えば、車体パネル、開口部、車体底面部、並びに、フロント及びリアモジュール等)、並びに、エンジンルーム及び燃料機械エリア部品(例えば、アクスル及びサスペンション、燃料及び排気システム、並びに、電気的及び電子的構成部品等)に用いられる。
【0079】
難燃性の織物(textiles)を含む衣類やその他の消費財は、エンドユーザーに多大の安全性便益を提供する。難燃性の織物(textiles)を組み込むことができる例示的な難燃性製品としては、例えば、難燃性が望ましい衣類(例えば、消防士の制服、子供のパジャマ及びハロウィーンの衣装等)、寝具(例えば、シーツ、毛布、マットレス、マットレスカバー等)及び犠牲火炎毛布(sacrificial fire blankets)等が挙げられる。ある実施形態では、難燃性の織物(textiles)を有する製品は、単一層を含む。他の実施形態では、難燃性の織物(textiles)を有する製品は、多重層を含み、その中には、例えば付加的な熱遮蔽或いはカーボン・ナノチューブを含まない織物(textile)もある。
【0080】
ある実施形態では、難燃性製品は、外層と内部層(interior layer)を含む。前記外層は、外面を有しカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む。前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、複数のカーボン・ナノチューブと繊維材料を含む。前記内部層は、外層にとって不可欠であり、カーボン・ナノチューブが存在しない織物(textile)を含む。
【0081】
外層の内部層への結合は、当業者に周知のあらゆる方法によって行うことができる。外層の内部層への結合のための具体的方法は、例えば、縫製、接着、リベット、ラミネート及び加硫が挙げられる。
【0082】
ある実施形態では、外層は、織ったカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料から形成される。他の実施形態では、外層は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が織り込まれたカーボン・ナノチューブの存在しない複数の織物繊維(textile fibers)を、更に含む。当業者によく知られたいずれの織物繊維(textile fibers)にも、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を織り込むことができる。例示的な繊維タイプとしては、例えば、天然繊維(例えば、綿、亜麻、黄麻、麻(hemp)、モーダル(modal)、竹、絹、シニュー(sinew)、ウール、腸線(catgut)、アンゴラ、モヘア、アルパカ及びカシミア)や合成繊維(たとえば、ナイロン、レーヨン、アラミド、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン及びエラストマー)が挙げられる。ある実施形態では、複数の織物繊維は、弾性繊維(例えば、スパンディック繊維(ポリウレタン‐ポリ尿素共重合体)、天然ゴム、合成ゴム、ブチルゴム、二トリルゴム、シリコンゴム、クロロプレン、スチレン‐ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、及びフッ素)である。
【0083】
ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料で織り合わされた離散的な織物繊維(textile fibers)を有するよりはむしろ、弾性マトリックスを外層に更に含む。例えば、ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、フィルム等の薄い層の形態である弾性マトリックスに配置することができる。その後、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含んだフィルム等の薄い層は、内部の織物(textile)層に結合され、上述したような製品を形成する。
【0084】
一般的に、難燃性製品を作るのに適した繊維材料は、前述したいずれかのタイプである。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料における繊維材料は、例えば、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維(例えばアラミド)、及びこれらの組み合わせである。同様に、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料で織り合わされるカーボン・ナノチューブの存在しない更なる織物繊維(textile fiber)は、これらのタイプ或いは上述した天然繊維又は合成繊維のいずれかである。
【0085】
難燃性製品のある実施形態では、複数のカーボン・ナノチューブは、約50μmを超える長さである。他の実施形態では、外層の複数のカーボン・ナノチューブが、約50μmから約100μmの範囲の長さである。更に他の実施形態では、外層の複数のカーボン・ナノチューブが、約100μm超、200μm超、約300μm超、400μm超、或いは約500μm超、或いは、これらの値の間のあらゆる範囲にある長さである。
【0086】
難燃性製品のある実施形態では、外層は、約0.005”から約0.1”の範囲の厚さを有する。他の実施形態では、外層は、約0.005”から約0.015”の範囲又は約0.015”から約0.05”の範囲の厚さを有する。そのような厚さは、難燃性及び/又は熱遮断特性を維持しながら軽量且つ容易に曲がる外層を形成するのに役立つ。
【0087】
上述の複合材料のように、本発明の難燃性製品にとっても、繊維材料及び/又はそこに浸出したカーボン・ナノチューブの略平行な配向は有益となり得る。上述したように、繊維材料及び/又はカーボン・ナノチューブの略平行な配向により、内部層を避けて熱を分散することが可能となる。熱分散は、難燃性製品が外部熱を着用者からそらすような衣類である場合に、特に役立つ。ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、外層の外面に略平行に配列される。ある実施形態では、複数のカーボン・ナノチューブは、繊維材料の長手軸に略平行に配列される。これらの実施形態の中には、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の各繊維は、外層の他の繊維に略平行に配列されるものもある。これらの実施形態の中には、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の各繊維は、外層の他の繊維に略平行に配列され、且つ、複数のカーボン・ナノチューブが、繊維材料の各繊維の長手軸に略平行に配列されるものもある。
【0088】
本明細書で開示された実施形態は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれた、米国特許出願第12/611,073号、第12/611,101号及び第12/611,103号に記載された方法によって容易に作られるカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を用いる。その後のカーボン・ナノチューブ浸出プロセスは、例えば、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、及び本明細書で記載された難燃性複合材料及び製品に用いるための有機繊維等を含むいずれかのタイプの繊維にも適用できる。繊維材料へのカーボン・ナノチューブの浸出は、多くの機能(例えば、湿気、酸化、磨耗、燃焼及び圧縮等から生じる損傷を防ぐためのサイジング剤として等)を果たす。また、カーボン・ナノチューブベースのサイジング剤は、複合材料における繊維材料と高分子マトリックス間の橋渡し役としての役目も果たす。また、当業者に知られたサイジング剤には、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料におけるカーボン・ナノチューブベースのサイジング剤も含められる。例示的な従来のサイジング剤は、タイプと機能で大きく異なり、例えば、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、シロキサン類、アルコキシシラン、アミノシラン類、シラン類、シラノール類、ポリビニルアルコール、でんぷん、及びこれらの組み合わせを含む。そのような二次的なサイジング剤は、カーボン・ナノチューブそのものを保護するため、或いは浸出したカーボン・ナノチューブによっては付与されない更なる特性を繊維材料に付与するために用いることができる。
【0089】
繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出するため、カーボン・ナノチューブを繊維材料上に直接合成する。ある実施形態では、これは、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒(例えば、触媒ナノ粒子)を最初に配置することによって達成される。多くの準備プロセスをこの触媒付着の前に行うことができる。
【0090】
ある実施形態では、繊維材料を必要に応じてプラズマで処理して、触媒を受け入れるための表面を作ることができる。例えば、プラズマ処理されたガラス繊維により、カーボン・ナノチューブ形成触媒が付着する粗面化されたガラス繊維表面がもたらされる。また、ある実施形態では、プラズマは、繊維表面を「浄化(clean)」する機能をも果たす。このように繊維表面を「粗面化(roughing)」するためのプラズマプロセスにより、触媒の付着は促進される。粗さ(roughness)は、通常、ナノメートルのスケールである。プラズマ処理プロセスにおいて、深さ及び直径がナノメートル単位のクレーター又は窪みが形成される。このような表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、窒素及び水素等、種々の異なる1以上のあらゆるガスのプラズマを用いても達成される。
【0091】
ある実施形態では、使用される繊維材料が、これに付随するサイジング剤を有する場合、そのようなサイジング剤を、触媒の付着前に必要に応じて除去してもよい。ある実施形態では、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブの合成中又は予熱工程におけるカーボン・ナノチューブの合成直前に行われる。他の実施形態では、サイジング剤の中には、カーボン・ナノチューブ合成プロセスの全体にわたって残存できるものもある。
【0092】
カーボン・ナノチューブ形成触媒の付着前、又はこれと同時に行われる更にもう1つの工程として、繊維材料に対するバリア・コーティングの塗布がある。バリア・コーティングは、繊細な繊維材料(例えば、炭素繊維、有機繊維、金属繊維等)の健全性を保護するための不材料である。このようなバリア・コーティングは、例えば、アルコキシシラン、アルモキサン、アルミナナノ粒子、スピンオンガラス(spin on glass)及びガラスナノ粒子を挙げることができる。一実施形態において、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、未硬化のバリア・コーティング材に加えられて、その後、共に繊維材料に塗布されてもよい。他の実施形態において、バリア・コーティング材は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の付着前に繊維材料に加えられる。このような実施形態の場合、バリア・コーティングは、触媒の付着前に部分的に硬化してよい。バリア・コーティング材は、後続のCVD成長のための炭素原料ガスにカーボン・ナノチューブ形成触媒を晒すことが十分に可能な薄さである。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径未満か、それに略等しい。カーボン・ナノチューブ形成触媒及びバリア・コーティングが適切に配置されたなら、バリア・コーティングを十分に硬化させることができる。ある実施形態において、バリア・コーティングの厚さは、触媒へのカーボン・ナノチューブ原料ガスのアクセスがまだ可能な限りは、カーボン・ナノチューブ形成触媒の有効径よりも大きくてよい。このようなバリア・コーティングは、カーボン・ナノチューブ形成触媒に対する炭素原料ガスのアクセスが可能となる程度に十分多孔質であってよい。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料とバリア・コーティングとの間に存在しており、これによって、触媒はカーボン・ナノチューブの繊維材料への浸出点として機能する。そのような場合も、バリア・コーティングは、カーボン・ナノチューブ成長を始めるために炭素原料ガスが触媒へアクセスできる程度に十分薄い。
【0093】
理論に拘束されるものではないが、バリア・コーティングは、繊維材料とカーボン・ナノチューブの中間層として機能し、また、繊維材料に対するカーボン・ナノチューブの機械的な浸出もサポートする。このような機械的な浸出は、繊維材料がカーボン・ナノチューブを組織化するための基盤として更に機能する強固なシステムを提供し、そして、バリア・コーティングを備えた機械的な浸出の利点は、本明細書で前述した間接型の結合と同様である。また、バリア・コーティングを含むことの利点は、水分に晒されることに起因した化学的損傷、又は、カーボン・ナノチューブ成長を促進するために用いられる温度で繊維材料を加熱することに起因したあらゆる熱的損傷から、繊維材料を直接保護するという点にある。カーボン・ナノチューブと繊維材料との間に形成される実際の結合モチーフの性質に拘わらず、浸出したカーボン・ナノチューブは、繊維材料にしっかりと付着し、カーボン・ナノチューブの性質及び/又は特徴を材料に伝達する。ある実施形態では、バリア・コーティングでは難燃性材料をも含むことができる。
【0094】
更に、後述するように、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、遷移金属ナノ粒子としてのカーボン・ナノチューブ形成触媒を含有する液体溶液として作られる。合成されたカーボン・ナノチューブの直径は、前述の遷移金属ナノ粒子の大きさに関係する。
【0095】
カーボン・ナノチューブの合成は、高温で生じる化学蒸着(CVD)プロセスに基づく。具体的な温度は触媒の選択によるが、通常は、約500℃〜1000℃の範囲である。従って、カーボン・ナノチューブの合成には、前記範囲の温度まで繊維材料を加熱して、これによりカーボン・ナノチューブの成長をサポートすることが含まれる。
【0096】
その後、触媒を含んだ繊維材料上でCVDにより促進されるカーボン・ナノチューブ成長が行われる。CVDプロセスは、例えば、炭素含有原料ガス(アセチレン、エチレン及び/又はエタノール)により進められる。カーボン・ナノチューブ合成プロセスでは、主要なキャリアガスとして、一般に、不活性ガス(窒素、アルゴン及び/又はヘリウム)が用いられる。炭素含有原料ガスは、通常、混合物全体の約0%から約15%の範囲で供給される。CVD成長のための略不活性環境は、成長チャンバーから水分及び酸素を除去して準備される。
【0097】
カーボン・ナノチューブ合成プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブの成長に作用する遷移金属触媒ナノ粒子のある場所で成長する。強プラズマ励起電界の存在を任意に用いて、カーボン・ナノチューブの成長に影響を与えることができる。即ち、成長は、電界方向に従う傾向がある。プラズマスプレー及び電界の配置(geometry)を適切に調節することにより、垂直配列の(即ち、繊維材料の長手軸に対して垂直な)カーボン・ナノチューブを合成できる。一定の条件下では、プラズマがない場合であっても、密集したカーボン・ナノチューブは成長方向を略垂直に維持して、結果として、カーペット(carpet)又はフォレスト(forest)に似た高密度配列のカーボン・ナノチューブが生じる。
【0098】
繊維材料上に触媒ナノ粒子を配置する工程は、溶液のスプレー若しくは浸漬コーティングにより、又は、例えば、プラズマプロセスを介した気相蒸着により可能である。このように、ある実施形態では、溶媒に触媒を含んだ溶液を形成した後、その溶液で繊維材料をスプレー若しくは浸漬コーティングすることにより、又はスプレー及び浸漬コーティングを組み合わせることにより、触媒が塗布される。単独で或いは組み合わせて用いられるいずれか一方の手法は、1回、2回、3回、4回、或いは何回でも使用され、これにより、カーボン・ナノチューブの形成に作用する触媒ナノ粒子が十分均一にコーティングされた繊維材料を提供することができる。例えば、浸漬コーティングが使用される場合、繊維材料は、第1の浸漬槽において、第1の滞留時間、第1の浸漬槽内に置かれる。第2の浸漬槽を使用する場合、繊維材料は、第2の滞留時間、第2の浸漬槽内に置かれる。例えば、繊維材料は、浸漬の形態及びラインスピードに応じて約3秒〜約90秒の間、カーボン・ナノチューブ形成触媒の溶液に晒される。スプレー又は浸漬コーティングを用いることにより、約5%未満から約80%もの表面被覆率の触媒表面密度を有する繊維材料が得られる。より高い表面密度(例えば、約80%)の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子は略単分子層である。ある実施形態において、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒をコーティングするプロセスにより単分子層だけが生成される。例えば、積み重ねたカーボン・ナノチューブ形成触媒上におけるカーボン・ナノチューブ成長は、カーボン・ナノチューブが繊維材料へ浸出する程度を低下させることがある。他の実施形態において、遷移金属触媒ナノ粒子は、蒸着技術、電解析出技術、及び当業者に既知の他のプロセス(例えば、遷移金属触媒を、有機金属、金属塩又は気相輸送を促進する他の組成物として、プラズマ原料ガスへ添加すること等)を用いて繊維材料上に付着する。
【0099】
カーボン・ナノチューブ浸出繊維を製造するためのプロセスを連続的にするために、巻き取り可能な繊維材料は、一連の槽で浸漬コーティングを施すことが可能である(この場合、浸漬コーティング槽は空間的に分離されている)。例えば、炉から新たに形成されたガラス繊維等、発生期の繊維が新たに生成されている連続プロセスにおいて、カーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬又はスプレーは、新たに形成された繊維材料を十分に冷却した後の第1段階となり得る。ある実施形態において、新たに形成されたガラス繊維の冷却は、カーボン・ナノチューブ形成触媒粒子を分散させた冷却水の噴流で実施される。
【0100】
ある実施形態では、連続プロセスにおいて、繊維を生成してこれにカーボン・ナノチューブを浸出させる場合、サイジング剤の塗布に代えてカーボン・ナノチューブ形成触媒の塗布が行われる。他の実施形態において、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、他のサイジング剤の存在下で新たに形成された繊維材料に塗布される。このようなカーボン・ナノチューブ形成触媒及び他のサイジング剤の同時塗布により、繊維材料と表面接触したカーボン・ナノチューブ形成触媒を供給してカーボン・ナノチューブの浸出を確実にすることができる。また更なる実施形態において、繊維材料が十分に軟化した状態にある間、例えば、焼きなまし温度近傍又はそれ未満の状態にある間に、カーボン・ナノチューブ形成触媒をスプレー又は浸漬コーティングにより発生期の繊維に塗布し、これにより、カーボン・ナノチューブ形成触媒が繊維材料の表面に僅かに埋め込まれる。例えば、高温のガラス繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着させる場合、ナノ粒子が溶融して結果的にカーボン・ナノチューブの特性(例えば、直径)が制御不能とならないように、カーボン・ナノチューブ形成触媒の融点を超えないように配慮する必要がある。
【0101】
カーボン・ナノチューブ形成触媒溶液は、あらゆるd‐ブロック遷移金属の遷移金属ナノ粒子溶液であってよい。また、ナノ粒子には、元素形態及び塩形態のd‐ブロック金属からなる合金や非合金の混合物、並びにこれらの混合物が含まれてよい。このような塩形態には、限定するものではないが、酸化物、炭化物、窒化物、酢酸塩、硝酸塩等が含まれる。限定しない例示的な遷移金属ナノ粒子には、例えば、Ni、Fe、Co、Mo、Cu、Pt、Au及びAgと、これらの塩と、これらの混合物と、が含まれる。ある実施形態において、このようなカーボン・ナノチューブ形成触媒は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を直接繊維材料に塗布或いは浸出させることにより、繊維材料上に配置される。多くのナノ粒子遷移金属触媒が、例えば、Ferrotec Corporation(Beford, NH)等の様々なサプライヤーから市販されており容易に入手できる。
【0102】
繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布するために用いられる触媒溶液は、カーボン・ナノチューブ形成触媒が全域にわたって均一に分散可能ないかなる共通溶媒でもよい。このような溶媒には、限定するものではないが、水、アセトン、ヘキサン、イソプロピルアルコール、トルエン、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、シクロヘキサン、又はカーボン・ナノチューブ形成触媒ナノ粒子の適切な分散系を形成するために極性が制御された他のいかなる溶媒も含まれる。触媒溶液中におけるカーボン・ナノチューブ形成触媒の濃度は、触媒対溶媒で、およそ1:1から1:10000の範囲内である。
【0103】
ある実施形態において、繊維材料にカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布した後、繊維材料は軟化温度まで任意に加熱される。この工程は、繊維材料の表面にカーボン・ナノチューブ形成触媒を埋め込むのに役立ち、これにより、種結晶成長(seeded growth)を促して、成長するカーボン・ナノチューブの先端に触媒が浮き上がる(float)先端成長を阻止することが可能である。ある実施形態において、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を付着した後、繊維材料の加熱は、約500℃から約1000℃の間の温度で行われてよい。カーボン・ナノチューブの成長のために用いられるこのような温度への加熱により、繊維材料上にある既存のサイジング剤の除去が促進され、これにより、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を直接付着させることが可能となる。また、ある実施形態では、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、加熱前に、サイジング剤のコーティング表面上に配置されてもよい。加熱工程は、カーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料表面上に配置したまま、サイジング剤を除去するために用いられる。この温度での加熱は、カーボン・ナノチューブ成長のための炭素原料ガスの導入前に、又はこれと略同時に行われる。
【0104】
ある実施形態において、カーボン・ナノチューブを繊維材料に浸出させるプロセスには、繊維材料からサイジング剤を除去すること、サイジング剤除去後にカーボン・ナノチューブ形成触媒を繊維材料に塗布すること、繊維材料を少なくとも約500℃まで加熱すること、及び、繊維材料上にカーボン・ナノチューブを合成することが含まれる。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの工程には、繊維材料からサイジング剤を除去すること、繊維材料に対してカーボン・ナノチューブ形成触媒を塗布すること、カーボン・ナノチューブの合成温度まで繊維を加熱すること、及び、触媒を含有する繊維材料上へ炭素プラズマをスプレーすること、が含まれる。このように、工業用のガラス繊維材料が使用される場合、カーボン・ナノチューブ浸出繊維を構成するためのプロセスには、繊維材料上に触媒を配置する前に、繊維材料からサイジング剤を除去する個別の工程が含まれる。工業用サイジング剤の中には、存在する場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒と繊維材料との面接触を防止して、繊維材料に対するカーボン・ナノチューブの浸出を抑制できるものがある。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブの合成条件下でサイジング剤を確実に除去する場合には、サイジング剤の除去は、カーボン・ナノチューブ形成触媒付着後であって炭素含有原料ガスの供給直前又は供給中に行われる。
【0105】
カーボン・ナノチューブを合成する工程には、限定するものではないが、マイクロキャビティ(micro-cavity)、熱又はプラズマ助長CVD法、レーザー・アブレーション、アーク放電、及び高圧一酸化炭素法(HiPCO)といった、カーボン・ナノチューブを形成するための多数の手法が含まれる。CVD中、特に、サイジングされた繊維材料が、これにカーボン・ナノチューブ形成触媒を配置した状態で直接用いられる。ある実施形態において、従来のいかなるサイジング剤もカーボン・ナノチューブの合成中に除去可能である。ある実施形態において、他のサイジング剤は除去されないが、サイジング剤を介した炭素原料ガスの拡散のため、繊維材料へのカーボン・ナノチューブの合成及び浸出を妨げることはない。ある実施形態において、アセチレンガスはイオン化されて、カーボン・ナノチューブ合成のための低温炭素プラズマジェットを形成する。プラズマは触媒を含む繊維材料に向けられる。このように、ある実施形態では、繊維材料上におけるカーボン・ナノチューブの合成には、(a)炭素プラズマを形成すること、及び(b)繊維材料上に配置された触媒に炭素プラズマを向けること、が含まれる。成長するカーボン・ナノチューブの直径は、カーボン・ナノチューブ形成触媒の大きさにより決定される。ある実施形態において、サイジングされた繊維材料は約550℃〜約800℃に加熱され、カーボン・ナノチューブの合成を促進する。カーボン・ナノチューブの成長を開始させるために、反応器には2つ以上のガス、即ち、不活性キャリアガス(例えば、アルゴン、ヘリウム又は窒素)及び炭素含有原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール又はメタン)が注入される。カーボン・ナノチューブは、カーボン・ナノチューブ形成触媒のある場所で成長する。
【0106】
ある実施形態において、CVD成長はプラズマで助長される。プラズマは、成長プロセス中に電界を与えることにより生成される。この条件下で成長するカーボン・ナノチューブは電界方向に従う。従って、反応器の配置を調節することにより、垂直配向のカーボン・ナノチューブが、円筒状の繊維の周囲から放射状に成長する(即ち、放射状成長)。ある実施形態では、繊維の周囲に放射状に成長させるために、プラズマは必要とされない。明確な面を有する繊維材料(例えば、テープ、マット、織物、パイル等)の場合、カーボン・ナノチューブ形成触媒は、繊維材料の一面又は両面に配置可能である。これに対応して、このような条件下、カーボン・ナノチューブもまた、繊維材料の一面又は両面で成長する。
【0107】
前述のように、カーボン・ナノチューブ合成は、巻き取り可能な繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させる連続プロセスを提供するのに十分な速度で行われる。以下に例示されるように、このような連続的な合成は、多くの装置構成により容易になる。
【0108】
ある実施形態において、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、「オール・プラズマ(all plasma)」プロセスで作られる。このような実施形態では、繊維材料は、多くのプラズマ介在工程を通って、最終的なカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を形成する。プラズマプロセスの第1には、繊維表面の改質工程が含まれる。これは、前述のように、繊維材料の表面を「粗面化(roughing)」して触媒の配置を容易にするためのプラズマプロセスである。また前述のように、表面改質は、限定するものではないが、アルゴン、ヘリウム、酸素、アンモニア、水素及び窒素等の種々異なる1以上のガスからなるプラズマを用いて達成される。
【0109】
表面改質後、繊維材料は触媒の塗布へと進む。本発明のオール・プラズマプロセスにおいて、この工程は、繊維材料上にカーボン・ナノチューブ形成触媒を配置するためのプラズマプロセスである。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、前述のように、通常、遷移金属である。遷移金属触媒は、例えば、磁性流体、有機金属、金属塩、これらの混合物、又は気相輸送の促進に適した他のあらゆる組成物等、限定しない形態の前駆体としてプラズマ原料ガスに添加され得る。カーボン・ナノチューブ形成触媒は、真空及び不活性雰囲気のいずれも必要とはせず、周囲環境の室温で塗布可能である。ある実施形態において、繊維材料は触媒の塗布前に冷却される。
【0110】
オール・プラズマプロセスを継続して行うと、カーボン・ナノチューブの合成がカーボン・ナノチューブ成長反応器内で起こる。カーボン・ナノチューブの成長はプラズマ助長化学蒸着を用いて実現されるが、この場合炭素プラズマが触媒を含む繊維にスプレーされる。カーボン・ナノチューブの成長は高温(触媒にもよるが、通常は約500℃〜約1000℃の範囲)で起こるので、触媒を含む繊維は炭素プラズマに晒される前に加熱される。カーボン・ナノチューブ浸出プロセスの場合、繊維材料は、軟化が始まるまで任意に加熱されてもよい。加熱後、繊維材料は炭素プラズマを受けられる状態になっている。炭素プラズマは、例えば、炭素を含む原料ガス(例えば、アセチレン、エチレン、エタノール等)を、ガスのイオン化が可能な電界中に通すことにより生成される。この低温炭素プラズマは、スプレーノズルにより繊維材料に向けられる。繊維材料は、プラズマを受けるために、例えば、スプレーノズルから約1センチメートル以内等、スプレーノズルにごく近接している。ある実施形態において、加熱器は、繊維材料の上側のプラズマスプレーに配置され、これにより繊維材料を高温に維持する。
【0111】
連続的なカーボン・ナノチューブ合成の別の構成には、カーボン・ナノチューブを繊維材料上に直接合成・成長させるための専用の矩形反応器が含まれる。その反応器は、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を生成するための連続的なインラインプロセス用に設計され得る。ある実施形態において、カーボン・ナノチューブは、CVDプロセスにより、大気圧、かつ、約550℃から約800℃の範囲の高温で、マルチゾーン反応器(multi-zone reactor)内で成長する。カーボン・ナノチューブの合成が大気圧で起こるということは、繊維材料にカーボン・ナノチューブを浸出させるための連続処理ラインに反応器を組み込むことを容易にする一因である。このようなゾーン反応器を用いた連続的なインライン処理に合致する別の利点は、カーボン・ナノチューブの成長が数秒で発生するということであり、当該技術分野で標準的な他の手法及び装置構成における数分(又はもっと長い)とは対照的である。
【0112】
一般に、本明細書で述べたように準備されたカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料は、長さが略均一であるカーボン・ナノチューブを有する。本発明で述べた連続プロセスでは、成長チャンバー内における繊維材料の滞留時間を、カーボン・ナノチューブの成長及び長さを制御するために調整することが可能であり、これにより、特定のカーボン・ナノチューブを制御する手段を提供することができる。また、カーボン・ナノチューブ長は、反応温度及び炭素原料ガスとキャリアガスの流量の調整を通して制御することもできる。
【0113】
様々な実施形態によるカーボン・ナノチューブ合成反応器には、以下の特徴が含まれる。
【0114】
(矩形に構成された合成反応器)
当該技術分野で既知の標準的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は横断面が円形である。これには、例えば、歴史的理由(研究所では円筒状の反応器がよく用いられる)及び利便性(流体力学は円筒状の反応器にモデル化すると容易になり、また、加熱器システムは円管チューブ(石英等)に容易に対応する)、並びに製造の容易性等の多くの理由がある。本開示は、従来の円筒形状を変えて、矩形横断面を有するカーボン・ナノチューブ合成反応器を提供する。変更の理由は以下の通りである。
【0115】
1)反応器体積の非効率的な使用。反応器により処理される多くの繊維材料は相対的に平面的である(例えば、形状が薄いテープやシート状、或いは、開繊したトウ若しくはロービング(roving)等)ので、円形横断面では反応器の体積を十分に使用していない。この不十分な使用は、円筒状のカーボン・ナノチューブ合成反応器にとって、例えば、以下のa)乃至c)に挙げるような、いくつかの欠点となる。a)十分なシステムパージの維持;反応器の体積が増大すれば、同レベルのガスパージを維持するためにガス流量の増大が必要となり、この結果、開放環境におけるカーボン・ナノチューブの大量生産には不十分なシステムとなる。b)炭素含有原料ガス流量の増大;前記a)のように、システムパージのための不活性ガス流を相対的に増大させると、炭素含有原料ガス流量を増大させる必要がある。例示的な12Kのガラス繊維ロービングが、矩形横断面を有する合成反応器の全体積に対して2000分の1の体積であることを考慮されたい。同等の円筒状反応器(即ち、矩形横断面の反応器と同じ平坦化されたガラス繊維材料を収容できるだけの幅を有する円筒状の反応器)では、ガラス繊維材料の体積は、反応器の体積の17,500分の1である。CVD等のガス蒸着プロセス(gas deposition processes)は、通常、圧力及び温度だけで制御されるが、体積は蒸着の効率に顕著な影響を与え得る。矩形反応器の場合、それでもなお過剰な体積が存在し、この過剰体積は無用の反応を促進する。しかしながら、円筒状反応器は、無用な反応の促進が可能なその体積が約8倍もある。このように競合する反応が発生する機会がより大きいと、所望の反応が有効に生じるには、円筒状反応器では一層遅くなってしまう。このようなカーボン・ナノチューブ成長の速度低下は連続的な成長プロセスの進行にとって問題となる。矩形反応器構成の別の利点は、矩形チャンバーの高さを更に低くすることで反応器の体積が低減され、これにより体積比が改善され反応が更に効率的になるという点である。本明細書に開示される実施形態の中には、矩形合成反応器の全体積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全体積に対して僅か約3000倍にしか過ぎないものがある。更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全体積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全体積に対して僅か約4000倍にしか過ぎないものもある。また更なる実施形態の中には、矩形合成反応器の全体積が、合成反応器を通過中の繊維材料の全体積に対して約10,000倍未満のものがある。加えて、円筒状反応器を使用した場合、矩形横断面を有する反応器と比較すると、同じ流量比を提供するためには、より大量の炭素含有原料ガスが必要である点に注目されたい。当然のことながら、他の実施形態の中には、矩形ではないがこれに比較的類似しており、かつ、円形横断面を有する反応器に対して、反応器の体積を同様に低減する多角形状で表される横断面を有する合成反応器がある。c)問題のある温度分布;相対的に小径の反応器を用いた場合、チャンバー中心からその壁面までの温度勾配はごく僅かである。しかし、例えば、工業規模の生産に用いられるような場合等には、サイズの増大に伴い、このような温度勾配は増加する。温度勾配は、繊維材料の全域で製品品質がばらつく(即ち、製品品質が半径位置に応じて変化する)原因となる。この問題は、矩形横断面を有する反応器を用いた場合に殆ど回避される。特に、平面的な基材が用いられる場合、基材のサイズが大きくなったときに、反応器の高さを一定に維持することができる。反応器の頂部と底部間の温度勾配は基本的にごく僅かであり、結果的に、生じる熱的な問題や製品品質のばらつきは回避される。
【0116】
2)ガス導入:当該技術分野では、通常、管状炉が使用されているので、一般的なカーボン・ナノチューブ合成反応器は、ガスを一端に導入し、それを反応器に通して他端から引き出している。本明細書に開示された実施形態の中には、ガスが、反応器の両側面又は反応器の頂面及び底面のいずれかを通して対称的に、反応器の中心又は対象とする成長ゾーン内に導入されるものがある。これにより、流入する原料ガスがシステムの最も高温の部分(カーボン・ナノチューブの成長が最も活発な場所)に連続的に補充されるので、全体的なカーボン・ナノチューブ成長速度が向上する。
【0117】
(ゾーン分け)
比較的低温のパージゾーンを提供するチャンバーは、矩形合成反応器の両端から延びる。出願人は、仮に高温ガスが外部環境(即ち、反応器の外部)と接触(mix)すると、繊維材料の劣化(degradation)が増加すると、結論を下した。低温パージゾーンは、内部システムと外部環境間の緩衝となる。当該技術分野で既知のカーボン・ナノチューブ合成反応器の構成では、通常、基材を慎重に(かつ緩やかに)冷却することが求められる。本願の矩形カーボン・ナノチューブ成長反応器の出口における低温パージゾーンは、連続的なインライン処理に必要とされるような短時間の冷却を実現する。
【0118】
(非接触、ホットウォール型、金属製反応器)
ある実施形態において、金属製ホットウォール型(hot-walled)反応器(例えば、ステンレス鋼)が用いられる。金属、特にステンレス鋼が炭素の付着(即ち、煤及び副生成物の形成)を受けやすいために、この種類の反応器の使用は常識に反するようにも考えられる。従って、大部分のカーボン・ナノチューブ合成反応器は、炭素の付着が殆どないため、また、石英は洗浄し易く、また試料の観察が容易であるため、石英から作られる。しかしながら、出願人は、ステンレス鋼上における煤及び炭素付着物が増加することにより、より着実、より効率的、より高速、かつ、より安定的なカーボン・ナノチューブ成長がもたらされるということを発見した。理論に拘束されるものではないが、大気圧運転(atmospheric operation)と連動して、反応器内で起こるCVDプロセスでは拡散が制限されることが示されている。即ち、カーボン・ナノチューブ形成触媒に「過度に供給される(overfed)」、つまり、過量の炭素が、(反応器が不完全真空下で運転している場合よりも)その相対的に高い分圧により反応器システム内で得られる。結果として、開放システム(特に清浄なもの)では、過量の炭素がカーボン・ナノチューブ形成触媒の粒子に付着して、カーボン・ナノチューブの合成能力を低下させる。ある実施形態において、反応器に「汚れが付いて(dirty)」いる、即ち、金属反応器壁に煤が付着している状態の場合に、矩形反応器を意図的に運転する。炭素が反応器壁上の単分子層に付着すると、炭素は、それ自体を覆って付着し易くなる。得られる炭素の中には、この機構により「回収される(withdrawn)」ものがあるので、ラジカルの形で残っている炭素原料が、カーボン・ナノチューブ形成触媒を被毒させない速度でこの触媒と反応する。既存のシステムでは「清浄に(cleanly)」運転するが、これは連続処理のために開放状態であれば、減速した成長速度で、はるかに低い収率でしかカーボン・ナノチューブを生産できないことになる。
【0119】
カーボン・ナノチューブの合成を、前述のように「汚れが付いて」いる状態で実施するのは概して有益であるが、それでも、装置のある部分(例えば、ガスマニフォールド及びガス入口)は、煤が閉塞状態を引き起こした場合、カーボン・ナノチューブの成長プロセスに悪影響を与える。この問題に対処するために、カーボン・ナノチューブ成長反応チャンバーの当該部分を、例えば、シリカ、アルミナ又はMgO等の煤抑制コーティングで保護してもよい。実際には、装置のこれらの部分は、煤抑制コーティングで浸漬コーティングが施される。INVAR(商標名)は高温におけるコーティングの適切な接着性を確実にする同様のCTE(熱膨張係数)を有し、重要なゾーンにおける煤の著しい堆積を防止するので、INVAR(商標名)等の金属が、これらのコーティングに用いられる。
【0120】
(触媒還元及びカーボン・ナノチューブ合成の組み合わせ)
本明細書に開示されたカーボン・ナノチューブ合成反応器において、触媒還元及びカーボン・ナノチューブ成長のいずれもが反応器内で起こる。還元工程が個別の工程として実施されると、連続プロセスに用いるものとして十分タイムリーに行えなくなるため、このことは重要である。当該技術分野において既知の標準的なプロセスにおいて、還元工程の実施には、通常1〜12時間かかる。本開示によれば、両工程は1つの反応器内で生じるが、これは、少なくとも1つには、炭素含有原料ガスを導入するのが、円筒状反応器を用いる当該技術分野では標準的となっている反応器の端部ではなく、中心部であることに起因する。還元プロセスは、繊維が加熱ゾーンに入ったときに行われる。この時点に至るまでに、ガスには、触媒を(水素ラジカルの相互作用を介して)還元する前に反応器壁と反応して冷える時間があるということである。還元が起こるのは、この移行領域である。システム内で最も高温の等温ゾーンでカーボン・ナノチューブの成長は起こり、反応器の中心近傍におけるガス入口の近位で最速の成長速度が生じる。
【0121】
ある実施形態において、例えば、トウ又はロービング等(例えば、ガラスロービングのように)、緩くまとまった(loosely affiliated)繊維材料が使用される場合、連続プロセスには、トウ又はロービングのストランド(strand)又はフィラメントを広げる工程が含まれる。このように、トウ又はロービングは、広げられるときには、例えば、真空ベースの開繊システム(vacuum-based fiber spreading system)を用いて開繊される。例えば、サイジングされて比較的堅いガラス繊維ロービングを使用する場合、ロービングを「軟化」して繊維の開繊を容易にするために、更なる加熱を用いることができる。個々のフィラメントを含んで構成される開繊繊維(spread fiber)は、フィラメントの全表面積を晒させるよう十分分離して開繊され、こうして後続の処理工程でロービングがより効率的に反応できるようにする。例えば、開繊トウ又は開繊ロービングは、前述のようにプラズマシステムで構成される表面処理工程を経る。その後、粗面化された開繊繊維はカーボン・ナノチューブ形成触媒の浸漬槽を通過する。その結果、表面で放射状に分布した触媒粒子を有するガラスロービングの繊維となる。触媒を含んだロービングの繊維は、その後、前述のように、例えば、矩形チャンバー等の適切なカーボン・ナノチューブ成長チャンバーに入るが、ここでは、大気圧CVD又はプラズマ助長CVDプロセスを通る流れを用いて、毎秒数ミクロンの速度でカーボン・ナノチューブを合成する。ロービングの繊維は、こうして放射状に配列されたカーボン・ナノチューブを備えて、カーボン・ナノチューブ成長反応器を出る。
【0122】
当然のことながら、本発明の様々な実施形態の働きに実質的に影響を与えない変更も、本明細書で提供された本発明の定義内に含まれる。従って、以下の実施例は、本発明を例示するものであって限定するものではない。本発明は開示された実施形態を参照して説明されたが、当業者であれば、これらが本発明の例示にすぎないことを容易に認識するであろう。当然のことながら、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例を考え出すことが可能である。場合によっては、周知の構造、材料、及び/又は工程を図示しないか、又は詳細に説明しないことにより、例示の実施形態の態様が曖昧になることを避けている。当然のことながら図面に図示された様々な実施形態は例示であり、必ずしも一定の縮尺で描かれたものではない。本明細書全体にわたって「一実施形態」又は「1つの実施形態」又は「ある実施形態(実施形態の中には)」についての言及は、特定の機能、構造、材料、又は(複数の)実施形態と関連して記載した特徴は、本発明の少なくとも1つの実施形態には含まれるが、必ずしも全ての実施形態に含まれるものではない、ということを意味する。従って、本明細書の全体にわたって様々な箇所で見られる表現「1つの実施形態において」、「一実施形態において」又は「ある実施形態において」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているものものとは限らない。更に、特定の機能、構造、材料、又は特徴は、1以上の実施形態においてあらゆる適切な方法により組み合わせることができる。従って、このような変形は、以下の特許請求の範囲及びその同等物の範囲内に含まれるものとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高分子マトリックスと第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料とを含む外層と、
第2の高分子マトリックスを含む少なくとも1つの内層と、
を含んで構成され、
前記外層が、外面を有し、前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、長さが約50μmを超える第1の複数のカーボン・ナノチューブと第1の繊維材料を含むことを特徴とする難燃性複合材料。
【請求項2】
前記少なくとも1つの内層は、第2の繊維材料、第2の複数のカーボン・ナノチューブと第2の繊維材料を含む第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1つの構成要素を、更に含んで構成された請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項3】
前記外層の厚さは、約0.005”から約0.1”の範囲である請求項2に記載の難燃性複合材料。
【請求項4】
前記第1の繊維材料と前記第2の繊維材料が同じである請求項2に記載の難燃性複合材料。
【請求項5】
前記第1の繊維材料と前記第2の繊維材料が異なる請求項2に記載の難燃性複合材料。
【請求項6】
前記第1の高分子マトリックスと前記第2の高分子マトリックスが同じである請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項7】
前記第1の高分子マトリックスと前記第2の高分子マトリックスが異なる請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項8】
前記外層の厚さは、約0.005”から約0.1”の範囲である請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項9】
前記少なくとも1つの内層は、第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を、更に含んで構成され、前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、第2の複数のカーボン・ナノチューブと第2の繊維材料とを含み、前記第2の複数のカーボン・ナノチューブは、長さが約50μm未満である請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項10】
前記外層と前記少なくとも1つの内層との間に遷移層(transition layer)を、更に含んで構成され、前記遷移層が、前記第1の高分子マトリックス又は前記第2の高分子マトリックスのうちの少なくとも1つを含んで構成された請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項11】
前記遷移層は、カーボン・ナノチューブの存在しない第3の繊維材料を、更に含んで構成された請求項10に記載の難燃性複合材料。
【請求項12】
前記第1の高分子マトリックスと第2の高分子マトリックスが、エポキシを含んで構成された請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項13】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料又は前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料のうちの少なくとも1つが、連続繊維を含んで構成された請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項14】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料又は前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料のうちの少なくとも1つが、短繊維を含んで構成された請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項15】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、前記外面に略平行に整列されている請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項16】
前記第1の複数のカーボン・ナノチューブが、前記第1の繊維材料の長手軸に略平行に整列されている請求項15に記載の難燃性複合材料。
【請求項17】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の各繊維が、前記外層内で略平行に整列されている請求項15に記載の難燃性複合材料。
【請求項18】
前記第1の複数のカーボン・ナノチューブが、前記外層の約0.1重量%から約20重量%の範囲である請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項19】
前記第2の複数のカーボン・ナノチューブが、前記少なくとも1つの内層の約0.1重量%から約10重量%の範囲である請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項20】
前記第1の繊維材料と前記第2の繊維材料が、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から単独で選択される請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項21】
前記少なくとも1つの内層は複数の内層を含んで構成され、各内層は、互いの内層に略平行に整列されている第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含み、
各内層内において略平行に整列されている前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、別の内層内で略平行に整列されている第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料に対して略垂直に整列されている請求項9に記載の難燃性複合材料。
【請求項22】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、短繊維を含んで構成される請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項23】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、連続繊維を含んで構成される請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項24】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、前記外面に略平行に整列されている請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項25】
前記第1の複数のカーボン・ナノチューブが、前記第1の繊維材料の長手軸に略平行に整列されている請求項24に記載の難燃性複合材料。
【請求項26】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の各繊維が、前記外層内で略平行に整列されている請求項24に記載の難燃性複合材料。
【請求項27】
前記第1の繊維材料が、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の難燃性複合材料。
【請求項28】
外面を有し約0.005”から約0.1”の範囲の厚さを有する外層と、少なくとも1つの内層と、を含むエポキシマトリックスと、
前記外層において、長さが約50μmを超える第1の複数のカーボン・ナノチューブと第1の繊維材料とを含む第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、
前記少なくとも1つの内層において、第2の複数のカーボン・ナノチューブと第2の繊維材料とを含む第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料と、
を含んで構成される難燃性複合材料。
【請求項29】
前記第2の複数のカーボン・ナノチューブが、長さが50μm未満である請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項30】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、連続繊維を含んで構成された請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項31】
前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、連続繊維、短繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された形態からなる請求項30に記載の難燃性複合材料。
【請求項32】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、短繊維を含んで構成された請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項33】
前記第2のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、連続繊維、短繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から選択された形態からなる請求項32に記載の難燃性複合材料。
【請求項34】
前記第1の繊維材料と前記第2の繊維材料が、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から単独に選択される請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項35】
前記外層と前記少なくとも1つの内層との間に配置されたエポキシマトリックスを含む遷移層を、更に含んで構成された請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項36】
前記遷移層は、カーボン・ナノチューブの存在しない第3の繊維材料を、更に含んで構成された請求項35に記載の難燃性複合材料。
【請求項37】
前記第1の複数のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、約1重量%から約30重量%の範囲のカーボン・ナノチューブを含んで構成された請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項38】
前記第1の複数のカーボン・ナノチューブと前記第2の複数のカーボン・ナノチューブが、難燃性複合部材の約10重量%未満である請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項39】
前記第1の複数のカーボン・ナノチューブが、前記外層の約0.1重量%から約20重量%の範囲である請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項40】
前記第2の複数のカーボン・ナノチューブが、前記少なくとも1つの内層の約0.1重量%から約10重量%の範囲である請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項41】
前記第2の複数のカーボン・ナノチューブが、第1の複数のカーボン・ナノチューブよりも難燃性複合材料における重量割合が少ない請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項42】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、前記外面に略平行に整列されている請求項28に記載の難燃性複合材料。
【請求項43】
前記第1の複数のカーボン・ナノチューブが、前記第1の繊維材料の長手軸に略平行に整列されている請求項42に記載の難燃性複合材料。
【請求項44】
前記第1のカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の各繊維が、前記外層内で略平行に整列されている請求項42に記載の難燃性複合材料。
【請求項45】
外面を有し、且つ、複数のカーボン・ナノチューブと繊維材料とを含むカーボン・ナノチューブ浸出繊維材料を含む外層と、
前記外層に不可欠で、カーボン・ナノチューブの存在しない織物(textile)を含む内部層と、
を含んで構成される難燃性製品。
【請求項46】
前記外層が、カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料で織られ、カーボン・ナノチューブの存在しない複数の織物繊維(textile fibers)を、更に含んで構成された請求項45に記載の難燃性製品。
【請求項47】
前記複数の織物繊維が、弾性繊維を含んで構成された請求項46に記載の難燃性製品。
【請求項48】
前記外層が、弾性繊維を、更に含んで構成された請求項45に記載の難燃性製品。
【請求項49】
前記複数のカーボン・ナノチューブが、約50μmを超える長さである請求項45に記載の難燃性製品。
【請求項50】
前記外層が、約0.005”から約0.1”の範囲の厚さを有する請求項45に記載の難燃性製品。
【請求項51】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料が、前記外面に略平行に整列されている請求項45に記載の難燃性製品。
【請求項52】
前記複数のカーボン・ナノチューブが、前記繊維材料の長手軸に略平行に整列されている請求項51に記載の難燃性製品。
【請求項53】
前記カーボン・ナノチューブ浸出繊維材料の各繊維が、前記外層内で略平行に整列されている請求項51に記載の難燃性製品。
【請求項54】
前記繊維材料が、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、有機繊維、及びこれらの組み合わせからなる群から単独で選択される請求項45に記載の難燃性製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−520328(P2013−520328A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543342(P2012−543342)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060358
【国際公開番号】WO2011/142785
【国際公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(511201392)アプライド ナノストラクチャード ソリューションズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (31)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED NANOSTRUCTURED SOLUTIONS, LLC
【Fターム(参考)】