カーボン含有金属酸化物中空粒子及びその製造方法
【課題】 白色以外の鮮やかな発色を示す単分散性の金属酸化物中空粒子、及びこれを効率良く製造する方法を提供すること。
【解決手段】 水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散液と、金属アルコキシド(Y)の溶液とを混合し、ゾルゲル反応を行う工程、前記工程で得られた、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応で得られた金属酸化物(Y’)で被覆された単分散性ポリマー微粒子(X)を単離し焼成する工程、を有することを特徴とするカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法、および金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とする殻からなり、殻壁の厚さが5nm〜30nmで、且つ平均粒子径が50nm〜1000nmの単分散性中空粒子であることを特徴とするカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【解決手段】 水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散液と、金属アルコキシド(Y)の溶液とを混合し、ゾルゲル反応を行う工程、前記工程で得られた、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応で得られた金属酸化物(Y’)で被覆された単分散性ポリマー微粒子(X)を単離し焼成する工程、を有することを特徴とするカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法、および金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とする殻からなり、殻壁の厚さが5nm〜30nmで、且つ平均粒子径が50nm〜1000nmの単分散性中空粒子であることを特徴とするカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンを含有する金属酸化物中空粒子、より詳しくは空隙率が高く、単一粒径分布であることを特徴とする、カーボンを高度に複合化してなる金属酸化物中空粒子、および該カーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空粒子は、その粒子内部に種々の機能物質を包含したマイクロカプセルとして広く利用されており、また内部空孔による特異な光散乱特性を利用して、紙、繊維、皮革、ガラス、金属等へのコーティング・塗料や化粧料等の分野において、光輝、光沢、不透明度、白色度などの性能を付与するための光散乱剤、光散乱助剤としても有用であることが知られている。さらに、内部が中空であるため、嵩高軽量化や遮音、断熱効果も期待できる。中空粒子の中でも、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の中空粒子は、構造安定性、化学的安定性に優れることから、工業的に特に有用であり、中空構造に基づく大きな表面積を利用した触媒、もしくは触媒担持体としての応用も期待される。
【0003】
このような金属酸化物中空粒子の製造方法として幾つかの方法が提案されている。例えば、液−液界面での反応を利用する方法として、先ずアルカリ金属の塩を含む無機化合物の水溶液を調製し、これに有機溶剤を添加混合して水中油滴型(O/W型)乳濁液とし、さらにこの乳濁液を親油性界面活性剤を含む有機溶剤中に添加混合して油中水中油滴型(O/W/O型)乳濁液とする。最後に上記無機化合物との水溶液反応によって水不溶性沈澱を形成しうる化合物の水溶液に、上記乳濁液を混合して無機中空微粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、無機化合物水溶液を界面活性剤を用いて有機溶媒と混合乳化し、油中水滴型(W/O型)乳濁液を作り、これを別の水溶液と混合することにより水滴界面で沈殿反応を起こさせ、無機質殻を形成した後、副生物や界面活性剤等を除去することによって中空粒子を得る方法が開示されている。しかしながら、これらの方法は界面活性剤を用いて乳化する複雑な工程を含んでおり、製造に熟練が必要であるうえに得られる中空粒子の粒径分布は広く、強度や粒径の再現性も良くないという問題点があった。
【0004】
粒径分布が単分散である金属酸化物中空粒子を得る方法として、単分散性の粒子をテンプレートとし、この表面に金属酸化物の層を形成させたコア−シェル型粒子を作製し、金属酸化物のシェル層を壊すことなく内部のテンプレートを除去する方法が提案されている。例えば、テンプレートを用いてポリマー−金属酸化物のコア−シェル型微粒子を作製する方法の一つに交互積層法が挙げられる(例えば、特許文献3参照。)。これは、コロイド粒子を反対荷電のナノ粒子及び高分子電解質の交互の層で被覆し、コロイドコアを除去することによって中空粒子を得る方法である。
【0005】
また同様に、交互積層法を用いて酸化チタンの微粒子やチタニアナノシート、酸化チタン前駆体モノマーを静電的にポリマー微粒子上に積層した後、ポリマー成分を除去することによって酸化チタン中空粒子が得られることも提案されている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。
【0006】
この様な交互積層法では、核となるテンプレート粒子上への積層数を任意に代えることで任意の厚みの殻を有する金属酸化物中空粒子を得ることが利点であるが、テンプレート粒子上への吸着操作毎に吸着しなかった余剰成分を遠心分離操作などによって除去洗浄した後に粒子を再分散させる必要があり、テンプレート除去前の操作が非常に繁雑な工程となり、実用性に乏しい。
【0007】
一方、シランカップリング剤を用いて表面がシラノール(Si−OH)基で修飾された単分散性ポリマー粒子を合成し、これを種粒子として表面にシリカを堆積させ、この後、中心のポリマーを除去することによってシリカの中空粒子を得る方法が開示されている(例えば、非特許文献4参照。)。この方法によれば、液中にはシリカ単独の粒子が生成せず、シリカの縮合反応はポリマー粒子上で選択的に起こるため、最終的に中空でないシリカ単独粒子を除去する必要のないことが大きな利点である。また、シリカは共有結合によってポリマー粒子上に強固に結合され、20nm程度の厚さの殻を有する安定な粒子を得ることができると報告されている。
【0008】
しかし、表面にシラノール基を有するポリマーテンプレートの合成は、重合反応の進行途中で3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを後添加する過程を必要とするため、精密な反応制御が必要であることや、シリカ源であるテトラエトキシシランのエタノール溶液を滴下する際、1ml/hといった非常に小さい添加速度で行う必要があり、長時間を要するという問題があった。
【0009】
一方、コアポリマー粒子の存在下、金属アルコキシドもしくは金属塩の加水分解を行う操作で、単分散性ポリマー粒子上に金属酸化物膜を形成する方法も提案されている(例えば、非特許文献5参照。)。また、シリコンアルコキシド、あるいはチタニウムアルコキシドのアルコール溶液中に単分散性ポリマー粒子を分散させておき、このアルコール溶液もしくはアルコール/水溶液中でシリコンアルコキシドやチタニウムアルコキシド等を加水分解させて形成される金属化合物をコア−ポリマー粒子上に被覆させた後、焼成によって中空粒子を得る方法も開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
この方法においては、ポリマー粒子表面と加水分解された金属イオン、または加水分解により生成した錯体がコアポリマー粒子表面上に吸着し被覆層を形成していく、もしくは非常に小さい金属化合物微粒子が形成され、これがコアポリマー微粒子表面上に吸着し、その粒子表面で金属化合物層が成長していくといったメカニズムが考えられており、吸着の機構は主として静電的な相互作用によるものである。従ってコアポリマー粒子は、必然的に被覆層を形成する金属酸化物と逆の表面電荷を有するポリマー微粒子となる。これらの手法においては、ポリマーテンプレートと金属酸化物の前駆体溶液を混合する一回の操作によってポリマーテンプレート上に金属酸化物の被覆層を形成することができることが有利な点であるが、被覆する金属酸化物によって表面電荷の異なるテンプレート粒子を用意しなければならないこと、しばしばポリマー表面上に吸着しない金属酸化物のみの粒子が系中に残留し、焼成などの中空化処理前にこれを除去しておかなければならないことが問題であった。
【0011】
また、両性イオン表面を有するポリマー粒子をテンプレートとする方法も報告されている(例えば、非特許文献6参照。)。この方法では、アミノ基およびカルボキシレート基で修飾されたポリスチレンの分散液を、珪酸ナトリウム水溶液中に加えて撹拌することにより、ポリマーテンプレート上にシリカ被膜を形成することができる。しかしながら、本方法は、ポリマーテンプレート上へシリカを被覆するために、pHの調整を行ったうえで24時間の長い反応時間を要するものであった。
【0012】
アミノ基で表面修飾されたポリマー粒子に、さらにポリ−L−リシンを吸着させ、これをポリマーテンプレートとして用いる方法も報告されている。この方法によれば、ポリマー粒子上のアミンが塩基性触媒として働き、珪酸のポリマーテンプレート上での縮合反応を促進して効率良くシリカやチタニアの被膜層を形成すると考えられている(例えば、非特許文献7参照。)。
【0013】
この様に、ポリマーテンプレート上への金属酸化物皮膜の形成方法は多数知られており、このポリマー粒子−金属酸化物被膜のコア−シェル型粒子を焼成、もしくはコアポリマーの溶媒による抽出によりコア成分を除去することによって単分散性の金属酸化物中空粒子を得ることができる。
【0014】
しかしながら、従来提案された金属酸化物中空粒子においては、前述のエマルジョンを用いる方法、コアポリマーを用いる方法ともに、テンプレートとなる有機物は可能な限り除去しやすいものを選択し、粒子構造を形成するために用いた液体やコアを完全に除去することで純度の高い金属酸化物からなる中空粒子を得ることを目的とするものである。この場合、シリカ、チタニア、ジルコニア等、それ自身可視光領域に吸収の無い、つまり色の無い金属酸化物の中空粒子は、発色用材料としては、白色顔料、もしくは白色光散乱体としての用途に限られていた。
【特許文献1】特開昭63−258642号公報
【特許文献2】特開平6−330606号公報
【特許文献3】特表2003−522621号公報
【特許文献4】特開平6−142491号公報
【非特許文献1】Rachel A. Caruso,Andrei Susha,and Frank Caruso、Chem.Mater.、2001,13,400−409
【非特許文献2】Masaki Iida, Takayoshi Sasaki,and Mamoru Watanabe、Chem.Mater.、1998,10,3780−3782
【非特許文献3】Frank Caruso,Xiangyang Shi,Rachel A. Caruso,and Andrei Susha、Adv.Mater.、2001,13,No.10,May17、740−744
【非特許文献4】I.Tissot,J.P.Reymond,F.Lefebvre,and E.Bourgeat−Lami,Chem.Mater.、2002,14,1325−1331
【非特許文献5】Arnout Imhof、Langmuir、2001、17、3579−3585
【非特許文献6】Jeroen J.L.M.Cornelissen,Eric.F.Connor,Ho−Cheol Kim,Victor Y.Lee,Teddie Magibitang,Philip M.Rice,Willi Volksen,Linda K.Sundberg and Robert D.Miller,Chem.Commun.,2003,1010
【非特許文献7】Jian Yang,Johan U.Lind,and William C.Trogler、Chem.Mater.、2008,20,2875−2877
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記実情を鑑み、本発明の課題即ち目的は、白色以外の鮮やかな発色を示す単分散性の金属酸化物中空粒子、及びこれを効率良く製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基とをともに有する単分散性ポリマー微粒子をテンプレートとし、この表面に金属酸化物の被膜を形成した後、焼成によって該ポリマー微粒子を除去することによって、カーボンを高度に複合化した金属酸化物からなる厚みの薄い単分散性中空粒子が効率良く得られ、その粒径サイズに依存して異なる色の鮮やかな発色を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。尚、本発明での単分散とは、粒径分布でのヒストグラムが単一ピークを示すことであり、その単一ピークでの粒径分布の標準偏差を平均粒径で割った変動係数(以下、分散係数と略記する。)が0.1以下であることを意味するものである。
【0017】
すなわち本発明は、カーボンを含有する金属酸化物からなる中空粒子、より詳しくは、単一の粒径分布を持ち、空隙率の高い、カーボン含有単分散性金属酸化物中空粒子とその簡便な製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鮮やかな発色を示す単分散性で空隙率の高い、カーボンを含有した金属酸化物からなる中空粒子を提供することが出来る。該カーボン含有金属酸化物中空粒子は、本発明の製造方法である、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基とをともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子をテンプレートとし、この表面に金属酸化物の被膜を形成した後、焼成によって該ポリマー微粒子を除去することによって簡便、且つ再現性の良い方法で得ることが出来る。得られるカーボン含有金属酸化物中空粒子は、その粒径、及びカーボンの含有率によって発色が異なり、種々の色を表示することができる。また、該金属酸化物中空粒子は、光源の位置や観察方向に依存して異なる発色を示すこともできる。
【0019】
従って、本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子はコーティング・塗料等の分野においてその特異な発色特性を利用し、紙、繊維、皮革、プラスチック、金属等、各種基材上に鮮やかな発色を付与するための顔料として応用できる。また、光源の位置や観察方向に依存して異なる発色を示す特性を利用したセキュリティラベル等へも応用も可能である。さらに、中空構造による光拡散性や吸水性、吸油性を利用した化粧品への応用が可能であり、インクジェット受理層としても利用できる。さらに、中空構造のため、熱の伝導や音の伝導を抑制できるので、断熱材や断音材としても応用でき、また同一体積での質量が小さくできるので軽量化剤としても利用できる。さらに本発明のカーボン複合化単分散性中空金属酸化物粒子は、各種触媒および触媒担持体としても応用が可能である。
【0020】
更に、本発明の金属酸化物中空粒子の製造方法は、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基をともに有する単分散性ポリマー微粒子、もしくは水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基、さらにカルボキシ基をともに有する単分散性ポリマー微粒子をテンプレートとすることにより、該単分散性ポリマー微粒子の分散液に金属酸化物前駆体の溶液を混合して短時間撹拌するだけで、該ポリマー微粒子の表面に選択的に金属酸化物の被膜を形成することができ、さらにこの後、焼成によって該ポリマー微粒子を除去しつつ、その一部を炭化して金属酸化物の被膜と複合化する操作によって、単一粒径分布を持ち、空隙率の高い、カーボン含有金属酸化物中空粒子を製造するものであり、再現性が良く、また高効率であり、実用上も簡便であることからその有用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子は、内部が空洞の中空粒子であって、金属酸化物とカーボンとを主構成成分とする殻からなり、その殻壁の厚さが5nm〜30nmで、且つ平均粒子径が50nm〜1000nmの単分散性の粒子である。金属酸化物とカーボンとを有する、詳しくは、金属酸化物とカーボンとがナノメートルオーダーで複合化されることにより、中空構造に由来する特有の屈折率の分布によるランダムな光散乱が抑制され、特定の回折光や反射光が強調される結果、鮮やかな発色をも示す材料となる。この点において、従来の金属酸化物を主構成成分とする中空粒子が白色以外の発色を示さないことと大きく異なるものである。
【0022】
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法は、主として以下の段階によるものである。すなわち、水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)、もしくは水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)、さらにカルボキシ基(x3)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)を水性媒体に分散させ、当該単分散性ポリマー微粒子(X)をテンプレートとし、その表面に金属酸化物(Y’)の被膜を形成させる第一段階と、この後、焼成によって該単分散性ポリマー微粒子(X)を除去しつつ、その一部を炭化させて金属酸化物の被膜と複合化させ、カーボン含有金属酸化物中空粒子を得る第二段階と、を有する。
【0023】
ここで、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層(x1)とは、ポリマー微粒子表面に単に親水性の官能基が存在していることではなく、水性媒体中において、当該ポリマー微粒子表面から一定の空間的な広がりを有するポリマー鎖が存在することを意味しており、この点において、前記非特許文献6とは異なるものである。すなわち、本発明でテンプレートとして使用する単分散性ポリマー微粒子(X)は、水性媒体中に溶解しない核(コア)ポリマー微粒子の外側に、親水性のコロナもしくは親水性のシェル層を有する、コア−コロナ型もしくはコア−シェル型の微粒子である。本発明においては、この親水性ポリマー層(x1)中に金属アルコキシド(Y)が濃縮され、ここに存在するアミノ基(x2)、さらにはカルボキシ基(x3)が、金属アルコキシド(Y)の加水分解及び縮合反応(ゾルゲル反応)の触媒として効率良く機能し、容易に当該単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)の被膜を形成させることができる。また、形成された金属酸化物(A)からなる被膜は、親水性ポリマー層(x1)との水素結合により、また、親水性ポリマーがヒドロキシ基を有する場合には、さらに脱水縮合反応を起こすことによってこの親水性ポリマー層(x1)と複合化するため、焼成過程によって容易に金属酸化物(A)とカーボンとの複合化を実現しうるものである。また、ゾルゲル反応によって金属酸化物(Y’)と親水性ポリマー層(x1)が複合化した金属酸化物の被覆層が形成された後でも親水性ポリマー層の一部は最表面に存在するので、焼成後、内部のみならず最表面にもカーボンが存在するという特殊な形態を実現しうる。
【0024】
水性媒体に溶媒和して一定の空間的な広がりを有する親水性ポリマー層(x1)の存在は、例えば、該単分散性ポリマー微粒子(X)を重水素化した水性媒体中に分散させた状態で1H−NMR測定を行うことによって確認することができる。また、この親水性ポリマー層(x1)が乾燥状態では実質的な体積をほとんど持たないことを利用して、乾燥状態での粒径を電子顕微鏡や表面プローブ顕微鏡などで観察し、これを動的光散乱法で見積もられる水性媒体中での粒子サイズと比較することによっても、親水性ポリマー層(x1)の存在及び空間的な広がりの大きさを確認することができる。又、例えば、N−置換アクリルアミドやN,N−ジ置換アクリルアミド等からなる重合体やこれらをその原料の一部として用いて得られた共重合体が微粒子の外側に存在している場合には、下限臨界共溶温度が存在することが知られている。この下限臨界共溶温度よりも高温の場合には、当該外側の層は疎水性を示すので水性媒体に溶媒和しないものの、低温の場合には親水性になって溶媒和するという特有の性質を有する。従って、この様な外側に特定のポリマーが存在する微粒子の場合には、水性媒体中での粒子サイズが温度に依存して変化することになり、この様な相違から水性媒体に溶媒和して一定の空間的な広がりを有する親水性ポリマー層(x1)の存在並びにその層の厚さを見積もることができる。
【0025】
本発明において、前述の水性媒体中における親水性ポリマー層(x1)の空間的な広がりの大きさは、5nm〜200nmのものを好適に用いることができるが、密度の高い金属酸化物(Y’)の被覆層を効率良く形成するためには5nm〜100nmのものを用いることが好ましい。
【0026】
本発明で用いる水性媒体としては、水を単独で用いる他、水にメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を単独、もしくは複数種混合した混合溶媒を挙げることができる。
【0027】
[単分散性ポリマー微粒子(X)]
本発明でテンプレートとして用いる単分散性ポリマー微粒子(X)は、上記条件を満たすものであればよく、その製造方法としてなんら制限されるものではない。例えば、エマルジョン重合、沈澱重合、分散重合法など、種々の微粒子製造方法によって得ることができる。
【0028】
本発明で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)の平均粒子径は、目的に応じて選択するものである。しかしながら、該ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)からなる被膜を形成させた後に焼成を行って得られる金属酸化物中空粒子が、充分な強度を有し、且つ目的とする発色の強度を高められる点から、乾燥状態における該ポリマー微粒子(X)の平均粒子径が50nm以上1000nm以下の粒子であることが好ましい。
【0029】
ポリマー微粒子への親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)の導入は、重合開始剤及び単量体の組み合わせによって微粒子の重合時に導入しても良く、先に単分散性のポリマー微粒子を合成しておき、このポリマー微粒子の表面に化学反応によって導入することにより、コア−コロナ型、もしくはコア−シェル型の粒子としても良い。また、親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とは別々に導入しても良く、アミノ基(x2)を有する親水性ポリマー層(x1)を導入しても良い。さらに、アミノ基(x2)を有する親水性ポリマー層(x1)とは別に、さらにポリマー微粒子表面にアミノ基(x2)を導入して用いることもできる。さらにまた、シェル層を形成するアミノ基含有ポリマー鎖とコア部を形成するポリマー鎖とを有する両親媒性ポリマーからなる単分散性ポリマー微粒子を用いても良い。
【0030】
又、本発明の製造方法による金属酸化物中空粒子を得るにあたって、ゾルゲル反応がより効果的に進行する点から、単分散性ポリマー微粒子(X)が更にカルボキシ基(x3)を有するものであることが好ましい。表面上に親水性ポリマー層(x1)、アミノ基(x2)、カルボキシ基(x3)を有するポリマー微粒子の作製は、アミノ基(x2)導入時に、アミノ基(x2)とカルボキシル基(x3)とを有するアミノ酸、もしくはアミノ酸残基を有するポリマーを用いることで好適に行うことができる。
【0031】
具体的には、表面に親水性ポリマー層(x1)を有する単分散性ポリマー微粒子(X)の一つの形態は、既に本発明者が特開2007−291359号として提供している中空ポリマー微粒子であり、詳しくは、ラジカル重合性の水溶性モノマー(α1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(α2)とを水性媒体中で擬エマルジョン形式のラジカル重合反応を行うことにより得られる中空ポリマー微粒子そのもの、もしくはこれにアミノ基(x2)を導入したものである。この中空ポリマー微粒子は、表面に親水性ポリマー層(x1)を有し、コア−シェル型のポリマー粒子として作用する。
【0032】
特にアミノ基(x2)を容易に導入することができる点から、ラジカル重合性の水溶性単量体(α1)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(α2)とを含有する単量体群(α)を、アミノ基含有開始剤を用いて重合して得られる共重合体を主構成成分とする殻壁からなるものであることが好ましく、又得られる金属酸化物中空粒子の発色性を強めることができる点から、該殻壁の厚さが5nm〜80nmである中空ポリマー微粒子を用いることが好ましい。この手法で得られる中空ポリマー微粒子には、当該開始剤由来のアミノ基がその表面に導入されており、そのまま本発明のテンプレートとして好適に用いることができる。
【0033】
前記アミノ基含有開始剤としては、特に制限されるものではなく、種々のものを使用することができるが、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)二塩酸塩四水和物、等が挙げられ、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を用いるのが特に好ましい。
【0034】
親水性ポリマー層(x1)を有する単分散性ポリマー微粒子の別の一つの形態は、コア粒子上に架橋された親水性ポリマーのシェル層を設けたものである。該コア−シェル型微粒子は、コア部とシェル層を連続的に調製しても良いし、コア部となる微粒子を調製しておき、これをシードとしてシェル層を別途調製しても良い。
【0035】
例えば、コア部とシェル層とを段階的に別々に調製する場合、該コア−シェル型微粒子のコア部は、単分散性粒子であれば中空であっても中実であっても好適に用いることができる。中実ポリマー微粒子は、ミクロゲル法、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード乳化重合法、二段階膨潤法、分散重合法、懸濁重合法等、種々の方法によって調製することが可能であり、また、市販の単分散性ポリマー微粒子を用いても良い。中実ポリマー微粒子を合成する目的で用いる単量体としては、特に制限は無く、ラジカル重合性の水溶性モノマーとしてアミド基を有する水溶性モノマーとしては、例えばアクリルアミドやN−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N―ジメチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミドやN−ジ置換(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性モノマーとしては、例えば、アリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。また、カルボキシ基を有する水溶性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する水溶性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等を挙げることができる。スルホン酸基を有する水溶性モノマーとしては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチルエステル、スチレンスルホン酸シクロヘキシルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。さらにビニルピリジンやグリシジルメタクリレートに有機アミンを反応させて合成したモノマーを四級化させて得られる、四級化モノマーを用いても良い。
【0036】
更に、ラジカル重合性の非水溶性モノマーとして、アクリレートとしては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸グリシジル、tert−ブチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、1−アダマンチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を挙げることが出来る。また、メタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン等を挙げることが出来る。これらのモノマーは、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。以下、本文中で使用する(メタ)アクリレートは特に断りのない限り、アクリレート単独、メタクリレート単独及びそれらの混合物を総称するものとして用いる。
【0037】
又、非水溶性モノマーとして、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の環状エーテル構造を有するものも挙げられる。
【0038】
前記非水溶性モノマーとしては、(メタ)アクリレート以外の、例えば、スチレン系化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビスビニル化合物等を単独で、または2種以上を併用して用いても良い。
【0039】
前記スチレン系化合物は、スチリル基を有する化合物であって、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、p−メトキシスチレン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルピレン等が挙げられる。
【0040】
前記ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチルプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
更に又、前記モノマーと併用して二官能のジ(メタ)アクリレート、例えば、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレン(メタ)アクリレート、トリエチレンジ(メタ)アクリレート等のポリエチレンジ(メタ)アクリレート類、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、等のポリプロピレンジ(メタ)アクリレート類、グリセロールジ(メタ)アクリレート等も単独で、または2種以上を併用して用いることができる。そのほか、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の中から1種類、もしくは2種以上を共重合させることによってコア粒子を製造することも可能である。
【0043】
水性媒体中で重合反応を行う場合、重合開始剤としては、種々の水溶性重合開始剤を用いれば良く、特にアミノ基含有開始剤を用いた場合には、開始剤由来のアミノ基が微粒子の表面に導入されるため、より好ましい。
【0044】
シェル層の調製は、例えば、前記コア微粒子をシード粒子として、その水性媒体分散液中に水溶性の重合性単量体および架橋剤を加えてエマルジョン重合を行うことにより、コア部の外側に親水性ポリマー層(x1)のシェル層を設けることができる。
【0045】
シェル層の合成に用いる水溶性の重合性単量体としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N−エチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリドン、N−アクリロイルピペリドン、N−アクリロイルメチルホモピペラジン、N−アクリロイルメチルピペラジン等のアクリルアミド系単量体のうちから1種類、もしくは、これらの2種以上を重合させた高分子の架橋体を好適に用いることができる。また、これらとアクリル酸、メタクリルアミド−プロピル−トリメチル−アンモニウムクロライド、1−ビニルイミダゾール、メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウムメチルスルフェイトなどを共重合させたものも好適に用いることができる。
【0046】
シェル層の合成に用いる架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びジビニルベンゼンを用いる事が好ましい。
【0047】
シェル層の合成に用いる重合開始剤は、水溶性の重合開始剤であれば特に限定されるものではないが、過硫酸塩又はアミノ基含有アゾ化合物を用いる事が好ましく、例えば、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウム(APS)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)二塩酸塩四水和物、等が挙げられる。これらの中でも、コア粒子の表面電荷が正の場合には、アミノ基含有アゾ化合物を、コア粒子の表面電荷が負の場合には過硫酸塩を用いると、重合過程における凝集を防ぐことができるので好ましい。
【0048】
〔アミノ基(x2)の導入〕
上述した単分散性ポリマー微粒子は、前記の様に、粒子合成時に単量体として例えば、アリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基を有する重合性単量体を用いるか、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアミノ基を有する開始剤を用いれば、この微粒子をそのまま本発明のテンプレートとして好適に用いることができる。
【0049】
一方、アミノ基(x2)を持たない重合性単量体や開始剤を用いた場合には、前記中空ポリマー微粒子、コア−架橋親水性ポリマーシェル微粒子いずれの場合も、微粒子表面に共有結合によってアミノ基(x2)の導入を行うことにより、本発明のテンプレートとして用いることができる。アミノ基(x2)の導入は、例えば、単分散性微粒子の製造時、重合性単量体として、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の環状エーテル構造を有する単量体を用いた場合には、微粒子表面に存在するグリシジル基又はオキセタン基に対して、アミノ基(x2)を有する化合物を反応させることによって、アミノ基(x2)を導入することが可能である。更にカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、及びチオール基の1種もしくは複数種とアミノ基とを有する化合物を用いる場合には、これらグリシジル基、もしくはオキセタン基とアミノ基の反応を利用しても良いし、アミノ基と共にカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、及びチオール基の1種もしくは複数種を有する化合物を用いて、これらの官能基との反応を利用しても良い。
【0050】
前記アミノ基(x2)を有する化合物としては、その構造中にアミノ基を一つ以上有していれば良く、一級、二級、三級アミンのいずれであっても良い。また、これらのアミノ基(x2)は塩基のまま、または中和された形で用いることができる。アミノ基(x2)を中和する酸としては、塩酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、硫酸等の各種の酸類を用いることができ、またアミノ基(x2)が四級化されたものであっても良い。
【0051】
前記化合物として具体的には、構造中にアミノ基を一つ有するアミノ基含有化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノプロパノール、アミノエタンチオール等を、また、ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、スペルミジン、スペルミン等を挙げることができ、前記のようにこれらの塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩等も利用可能である。
【0052】
また、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、グルタミン、ヒスチジン、アスパラギン、セリン、リシン、アルギニン、メチオニン、トレオニン、バリンなどのアミノ酸残基の一種、もしくは複数種が結合したオリゴペプチド、またはポリペプチドの骨格が含まれる低分子・高分子化合物からなる群から選ばれる低分子・高分子化合物、および、これらの化合物中のアミノ基を塩酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、硫酸等の各種の酸類を用いて中和した化合物も挙げることができる。これらアミノ酸残基を有する化合物は、アミノ基(x2)とカルボキシ基(x3)とを同時に有しており、アミノ基(x2)の導入とともにカルボキシ基(x3)も同時に導入することが可能であり、前記、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)、さらにカルボキシ基(x3)をともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子を作製できるので、特に好適に用いることができる。
【0053】
また、アミノ基含有ポリマーの例としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリリシン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノアクリレート、キトサンの骨格が含まれるポリマーからなる群から選ばれる単独重合体または共重合体、及びこれらの化合物中のアミノ基を塩酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、硫酸等の各種の酸類を用いて中和した化合物を挙げることができる。
【0054】
又、表面に親水性ポリマー層(x1)を有する単分散性ポリマー微粒子(X)の別の形態としては、アミノ基(x2)を有する親水性ポリマーが直接コア部に相当するポリマー微粒子の表面に結合したものである。このような微粒子は、例えば、ポリアミンの存在下で疎水性モノマーのエマルジョン重合を行う方法を用いて合成できる。具体的な方法としては、例えば、水または水と親水性溶媒の混合溶液中で、アミノ基含有ポリマー、過酸化物、及びアミノ基を含まないラジカル重合可能な疎水性モノマーを共存させ、加熱する方法が挙げられる。これにより、過酸化物がアミノ基と反応してラジカルを発生し、アミンラジカルを開始剤とするラジカル反応が進行する。この際、アミノ基含有ポリマーは親水性が強いためシェル部に多く存在し、ラジカル重合によってできたポリマーは疎水性を示すため、コア部に多く存在する。その結果、乳化剤などを用いることなく、自発的に粒径のそろったコア−シェル粒子を合成することができる。
【0055】
この反応におけるアミノ基含有ポリマーとしては、過酸化物との反応性が高く、ラジカル反応の転化率が良好であることから、1級アミノ基を有するポリアミンを特に好適に使用できる。なかでも、分岐構造を有するポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどが入手のしやすさなどから最も好適である。
【0056】
前記特許文献3の交互積層法や前記非特許文献7では、前述のように物理的な吸着によって表面に親水性ポリマーとアミノ基との導入を行っているが、物理吸着する親水性ポリマーは、コアとなる微粒子の表面に、薄い被膜状に付着するにとどまるものであって、水性媒体中で溶媒和して均一な空間的広がりを有するものではない。従って、この様な物理吸着された親水性ポリマーと金属酸化物とのナノメートルオーダーでの複合化が容易ではなく、従って、得られた複合体を焼成してもポリマー由来のカーボンと金属酸化物との複合体からなる殻を形成できるものではない。一方、本発明でテンプレートとして用いる前述の単分散性ポリマー微粒子(X)は、水性媒体中で親水性ポリマー層(x1)が空間的広がりを有することから、金属アルコキシド(Y)の濃縮・ゾルゲル反応・金属酸化物(Y’)との複合化が容易であり、ひいては焼成後、金属酸化物(Y’)とカーボンとの複合化が容易である点、また、ゾルゲル反応によって金属酸化物(Y’)と親水性ポリマー層(x1)が複合化した金属酸化物の被覆層が形成された後でも、親水性ポリマー層の一部は最表面に存在するので、焼成後、内部のみならず最表面にもカーボンが存在するという特殊な形態となる点から、前記公知文献とは異なるものである。
【0057】
〔金属アルコキシド(Y)及び金属酸化物(Y’)〕
本発明の製造方法の第一段階は、上述した単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散体に、金属アルコキシド(Y)の溶液を混合し、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応を単分散性ポリマー微粒子(X)の表面上で行うものであり、金属酸化物(Y’)からなる被膜を単分散性ポリマー微粒子(X)上に形成させるものである。
【0058】
金属アルコキシド(Y)はM−(OR)nで表されるもので、Mは金属、−ORはアルコキシド基(Oは酸素、Rはアルキル基)を示す。nは金属Mの価数を示す。この様な金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応(加水分解・縮合反応)により、金属酸化物(Y’)のネットワークからなる被膜を形成させるものであり、強固な被膜が得られる点から、加水分解可能なアルコキシド基を三価以上有する金属アルコキシドを用いることが好ましい。特にテトラアルコキシシラン等の四価以上の金属アルコキシドを使用する場合には、単分散性ポリマー微粒子(X)上に形成される被膜の硬度を高くすることができるため好ましい。硬度を高くする目的で官能基数の多い金属アルコキシドを使用する場合には、全金属アルコキシド(Y)中の四価以上の金属アルコキシドの含有率が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0059】
前記金属アルコキシド(Y)の金属種Mとしては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム、亜鉛等が挙げられ、これらの中でもゾルゲル反応が容易である点から、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムであることが好ましく、工業的入手容易性の点からケイ素であることが特に好ましい。
【0060】
ケイ素を金属種Mとして有する金属アルコキシドとしては、反応性の官能基を有していても良いアルコキシシラン等を挙げることができる。尚、本発明において特に断りのない限り、アルコキシシランは加水分解反応によりオリゴマー化しているものも含む。オリゴマー化したものは、シラノールとなったシリカゾル状態で使用しても良い。オリゴマー化したアルコキシシランとしては、その平均重合度が2〜20のものを好適に使用することができる。
【0061】
前記アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(2−エタノール)オルソシリケート、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン等が挙げられる。
【0062】
更に官能基を有するアルコキシシランとしては、例えば、ハロゲンを有するシラン類として、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランといったクロロシラン等が挙げられる。
【0063】
チタンを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のアルコキシチタンが挙げられ、また、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコール、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセテート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート等、チタンの金属アルコキシドから調製される種々のチタンキレートを用いても良い。アルミニウムを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、トリエトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウムが挙げられる。
【0064】
また、ジルコニウムを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウムおよびテトラ−t−ブトキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウムが挙げられ、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、塩化ジルコニウム化合物アミノカルボン酸等、ジルコニウムの金属アルコキシドから調製される種々のジルコニウムキレートを用いても良い。
【0065】
これらの金属アルコキシド(Y)は、単独で用いても、二種以上を混合して用いても良いが、アルコキシシランとチタン、ジルコニウム、アルミニウム等、その他の金属のアルコキシドとを混合して用いる場合には、反応速度の違いによりテンプレート微粒子上に形成される金属酸化物が不均一になるのを防ぐために、アルコキシシランに対するこれらその他の金属のアルコキシドの使用割合を30質量%以下にするのが好ましい。
【0066】
これらの金属アルコキシド(Y)は、溶液の状態で単分散性ポリマー微粒子(X)が分散した水性媒体と混合して用いるものであるが、混合液中では金属アルコキシド(Y)は加水分解されてM−OH構造が生成し、単分散性ポリマー微粒子(X)表面に存在する親水性ポリマー層(x1)に濃縮されることになる。ここで、単分散性ポリマー微粒子(X)表面に存在するアミノ基(x2)、更にカルボキシ基(x3)は、金属アルコキシド(Y)の加水分解、及び縮合反応を促進する触媒として働き効率良く金属酸化物(Y’)が生成する。この金属酸化物(Y’)は親水性ポリマー層(x1)との水素結合により、また親水性ポリマーがヒドロキシ基を有する場合にはさらに脱水縮合反応を起こすことによって、微粒子表面と金属酸化物(Y’)の間に共有結合が形成され、強固に結合した被膜層を形成する。この機構によって、金属アルコキシド(Y)の加水分解・縮合反応は、ほぼ選択的に単分散性ポリマー微粒子(X)上で進行することになる。
【0067】
金属アルコキシド(Y)を溶解する溶媒は、該金属アルコキシド(Y)が可溶で、単分散性ポリマー微粒子(X)を分散させた水性媒体と混合可能な溶媒を用いることができるが、取り扱いの容易さからメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類やアセトン等を単独、もしくは2種以上を混合させて用いることができる。また、これらの溶媒と水が混合されていても良い。この時、金属アルコキシド(Y)が、キレート化されていないチタン、ジルコニウム、アルミニウム等の金属アルコキシド単独である場合には、急激な加水分解、縮合反応が起こり、単分散性ポリマー微粒子(X)上でなく溶液中に単独で金属酸化物を形成したり、該微粒子の凝集をひきおこしたりする可能性があるので、これを防ぐために水を混合しないアルコール類を用いることが好ましい。一方、金属アルコキシド(Y)が、キレート化された水溶性の化合物である場合、例えば、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、ジヒドロキシビス(ヒドロキシカルボキシラート)チタン、チタンペルオキソクエン酸アンモニウム、塩化ジルコニウム化合物アミノカルボン酸等は、溶媒として水を単独で用いることも可能である。
【0068】
これら金属アルコキシド(Y)の溶液は、10〜90質量%のものを適宜選択して用いることができるが、濃度が低すぎると被膜形成(ゾルゲル反応)に時間を要すること、一方濃度が高すぎると微粒子の凝集を引き起こす可能性が高いことから、当該濃度が30〜70質量%のものを用いることがより好ましい。
【0069】
本発明において、単分散性ポリマー微粒子(X)を分散させる水性媒体としては、前記の様に、水を単独で用いる他、水にメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を単独、もしくは複数種混合した混合溶媒を挙げることができるが、単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)の被膜を形成させる目的で用いる金属アルコキシド(Y)が、キレート化されていないチタン、ジルコニウム、アルミニウム等の金属アルコキシド単独である場合に限り、溶液中に単独で金属酸化物を形成したり、微粒子の凝集をひきおこしたりする可能性があるので、これを防ぐために、水の含有率が5質量%以下のもの、より好ましくは、水の含有率が1質量%以下のものを用いることが好ましい。
【0070】
単分散性ポリマー微粒子(X)の分散液の濃度は、高すぎると微粒子間の凝集を引き起こしやすく、低すぎると被膜形成に時間を要することから、1〜40質量%で調整したものを用いるのが好ましく、2〜20質量%のものを用いるのがより好ましい。
【0071】
また、単分散性ポリマー微粒子(X)上への金属酸化物(Y’)被膜の形成のために、単分散性ポリマー微粒子(X)の分散液と金属アルコキシド(Y)の溶液を混合し、撹拌する時間は5〜180分であることが好ましい。5分以下の短時間では、形成される金属酸化物(Y’)からなる被膜は薄すぎて、後の焼成過程により崩壊する可能性がある。撹拌時間が長くなるに伴い縮合反応が進行して単分散性ポリマー微粒子(X)上の金属酸化物(Y’)からなる被膜も厚くなり、より強固な皮膜を形成するので、必要に応じ撹拌時間を長くすると良い。しかしながら、膜厚の増加は、90分程度でほぼ飽和するので、90〜180分程度の時間撹拌を取れば良い。
【0072】
単分散性ポリマー微粒子(X)上に形成する金属酸化物(Y’)からなる被膜の膜厚は、目的に応じて5nm〜30nmのものを調製可能であるが、焼成工程後に充分な強度の中空粒子構造を維持するために、10〜30nmのものを調製するのがより好ましい。この様な膜厚を簡便に得られる点から、単分散性ポリマー微粒子(X)と金属アルコキシド(Y)との質量割合(有効成分として)が5:1〜1:5になるように混合することが好ましい。
【0073】
金属酸化物(Y’)からなる被膜で被覆された単分散性ポリマー微粒子(X)は、ろ過、遠心分離や、凍結乾燥、エバポレータ等の操作によって溶媒を除去した後、焼成過程に供される。
【0074】
〔焼成工程〕
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造における第二段階は、前記の様に、単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)の被膜を形成した後、焼成によって該ポリマー微粒子(X)を除去しつつ、その一部を炭化させてカーボンとし金属酸化物(Y’)の被膜と複合化させる工程である。
【0075】
焼成温度の選択によって、金属酸化物(Y’)と複合化するカーボンの含有率を調整することができるので、単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)からなる被膜を形成した同じ粒子から、異なる発色を示すカーボン含有金属酸化物中空粒子を得ることが可能である。
【0076】
焼成温度は、原料として用いた単分散性ポリマー微粒子(X)や金属アルコキシド(Y)の種類や目的によって、250〜1300℃の温度範囲から適宜選択でき、単分散性ポリマー微粒子(X)や金属アルコキシド(Y)由来の有機成分が完全に分解消失しない条件で焼成を行えば良い。有機成分が完全に分解消失しない条件は、例えば熱重量分析などを用いて、予め加熱分解挙動について測定しておくことによって設定することができる。
【0077】
さらに、焼成時の雰囲気を空気存在下から、窒素下、アルゴン下等に変えることによって、単分散性ポリマー微粒子(X)−金属酸化物(Y’)複合体中の有機成分を効率良く炭化させ、金属酸化物(Y’)とカーボンとを複合化させる方法も有効である。雰囲気の変更は、目的によって、加熱焼成前に完全に雰囲気を交換して加熱焼成を行っても良いし、加熱段階で雰囲気を変更しても良い。
【0078】
焼成には、一般に知られているマッフル炉、雰囲気炉、赤外線炉等の各種の焼成炉の他、マイクロウェーヴオーブンや噴霧乾燥器も用いることができる。
【0079】
〔カーボン含有金属酸化物中空粒子〕
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子は、前記工程によって得られるものであり、目的に応じて、金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とする殻壁の厚さが5nm〜30nmで、平均粒径が50nm〜1000nmのものを調製可能であるが、中空構造を維持する充分な強度を有し、かつ、良好な発色性を有する点から、隔壁の厚さが10nm〜30nmで、平均粒径が150nm〜500nmのものがより好ましい。又、金属酸化物(Y’)としては、シリカであることが汎用性が高い点から好ましいものである。なお、本発明において、金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とするとは、焼成条件が甘いことによって単分散性ポリマー微粒子由来のカーボン以外の成分が若干含まれることがあること以外、意図的にその他の成分を併用しない限りにおいて、金属酸化物(Y’)とカーボンとからなる殻で形成されていることを示すものである。
【0080】
殻中におけるカーボンの質量割合は、1〜80質量%のものを作製可能であり、白色以外の発色性を効果的に有する点と、カーボン含有金属酸化物中空粒子の強度とのバランスに優れる点から5〜70質量%であることが好ましい。この質量割合は前記焼成過程において、焼成温度及び焼成雰囲気の設定により調整可能である。有機成分が完全に分解消失せずにカーボンとなって殻中に複合化される条件は、例えば熱重量分析などを用いて、予め加熱分解挙動について測定しておくことによって設定することができる。
【0081】
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の形態は、基本的に真球状であるが、表面の一部が窪んだ形態のものであっても良い。
【0082】
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の使用方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、コーティング・塗料等の分野においては、内部空孔による特異な光散乱特性、発色性を利用して、紙、繊維、皮革等への光輝着色、光沢、不透明度などの性能を付与するための着色剤、光散乱剤、光散乱助剤として、また中空構造による光拡散性や吸水性、吸油性を利用した化粧品への応用が可能であり、インクジェット受理層としても利用できる。さらに、中空構造のため、熱の伝導や音の伝導を抑制できるので、断熱材や断音材としても応用でき、また、同一体積での質量が小さくできるので軽量化剤としても利用できる。更にまた、内部に種々の化学物質を包含した化学物質保持剤としても用いることができ、化学物質徐放性放出剤、DDS材料としても利用できる。また、カーボンが複合化された中空構造であるため、物質吸着力にも優れ、種々の吸着剤としても利用可能であり、さらに、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の中空粒子は、構造安定性、化学的安定性に優れることから、工業的に特に有用であり、中空構造に基づく大きな表面積を利用した触媒、もしくは触媒担持体としての応用も期待される。この様な用途への使用にあたり、本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子が単分散であることは、該用途で要求される種々の性能を効率的に均一に発現させるためには有効であると考えられ、その有用性は高いものである。
【実施例】
【0083】
次に本発明をより詳細に説明するために実施例及び比較例を掲げるが、これらの説明によって本発明が何等限定されるものでないことは勿論である。以下、実施例中、金属アルコキシドのゾルゲル反応をその表面で行うことが可能な単分散性ポリマー微粒子(X)をテンプレート粒子と表記することがある。
【0084】
水性媒体中で溶媒和した親水性ポリマー層の確認は、日本電子株式会社製JNM−LA300を用いて、1H−NMRスペクトルを測定することにより行った。水に分散した状態での粒子の粒径測定は、大塚電子株式会社製の粒径測定装置FPAR−1000を用いて、動的光散乱法により測定した。水分散状態における粒子の表面電位の測定には、大塚電子株式会社製、ゼータ電位・粒径測定システムELS−Z2を用いた。
【0085】
微粒子の形状及び中空性の確認には、キーエンス社製三次元リアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800を用いたSEM観察を行い、中空粒子の殻の厚みは、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡JEM−2200FSを用いて粒子構造の観察を行い、観察像から殻部の厚みを見積り、30個の測定値の平均値を殻の厚みとした。また、カーボン含有金属酸化物中空粒子中のカーボンは、日本電子株式会社製高分解能透過型電子顕微鏡JEM−2010MXを用いて確認した。単分散性ポリマー微粒子上に形成された金属酸化物の量、及びカーボン含有金属酸化物中空粒子中のカーボンの量は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、示差熱熱重量同時測定装置(EXSTAR6000 TG/DTA)を用いて測定した。
【0086】
中空粒子を構成する殻中の金属酸化物と複合化されたカーボンの存在は、レニショー社製のラマンレーザー顕微鏡を用いて確認を行った。カーボン含有金属酸化物中空粒子の発色性を確認する反射スペクトルの測定は、オーシャンフォトニクス社のUSB−4000スペクトロメータを用いて行った。
【0087】
〔単分散性ポリマー微粒子の合成例〕
合成例1(表面に親水性ポリマー層を有する単分散性ポリマー微粒子の合成)
2gのN−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)を溶解した水溶液300mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)12gを加え、さらに、アミノ基含有水溶性重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.15gを溶解した後、窒素フローしながら攪拌し、系中の酸素を除去した。この液を65℃、100rpmの撹拌速度で1時間攪拌することにより単分散性中空ポリマー粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径310nmの単分散真球状の粒子であった(図1)。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され(図2)、単分散性中空ポリマー粒子にはその外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚さは、25℃と50℃において動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約20nmであると考えられる(テンプレート粒子A)。
【0088】
合成例2〜7
撹拌速度を変更した以外は、合成例1と同じ条件で反応を行うことにより、表1の粒径を有する単分散性中空ポリマー粒子の分散液を得た。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され、単分散性中空ポリマー粒子にはその外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。
【0089】
【表1】
【0090】
(アミノ基の導入)
アミノ基導入例1
合成例2の方法で合成した、表面に親水性ポリマー層を有する単分散性ポリマー粒子Bの3質量%水溶液100mlに、ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミン SP−200)1質量%水溶液100mlを加えて3日間撹拌した後、透析及び遠心分離操作によって洗浄を行い、単分散粒子の表面にポリエチレンイミンを結合させたアミン修飾テンプレート粒子を得た。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルに加えて、2−3ppm付近にポリエチレンイミン由来のシグナルが観測され(図3)、ポリマー粒子表面にポリエチレンイミンが導入され、該ポリエチレンイミン層が溶媒中に溶解した状態であることが確認できた。該ポリエチレンイミン層の厚みは、ポリエチレンイミンの導入前と導入後の動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約30nmであった(アミノ基修飾テンプレート粒子1)。
【0091】
アミノ基導入例2〜4
導入例1と同様にして、表面に親水性ポリマー層を有する単分散性ポリマー微粒子の3質量%水溶液100質量部に、下表のアミノ基含有化合物0.5質量%水溶液100質量部を加えて撹拌した後、透析及び遠心分離操作によって洗浄を行い、単分散ポリマー微粒子の表面にアミノ基含有化合物を導入したアミノ基修飾テンプレート粒子を得た。アミノ基の導入は、反応前後の粒子の元素分析により、粒子組成中の窒素量が増加することから確認した。表2に表面修飾に用いたアミノ基含有分子と、修飾後のアミノ基の増加量をまとめた。
【0092】
尚、本実施例で用いたアミノ基導入分子について、以後、以下の略称を用いる。
ポリエチレンイミン:PEI
2−アミノエタンチオール:AET
L−システイン:Cys
L−アラニン:Ala
L−セリン:Ser
L−ロイシン:Leu
L−リシン:Lys
グリシン:Gly
【0093】
【表2】
【0094】
アミノ基導入例5〜11
導入例1と同様にして、単分散性ポリマー微粒子の表面に、表3のアミノ基含有化合物を導入して、アミノ基修飾テンプレート粒子を得た。アミノ基含有化合物の導入は、反応前後のテンプレート粒子のゼータ電位の変化によって確認を行った。
【0095】
【表3】
【0096】
合成例8
2gのN−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)を溶解した水溶液300mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)12gを加え、さらに、水溶性重合開始剤として、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)0.15gを溶解した後、窒素フローしながら攪拌し、系中の酸素を除去した。この液を65℃で1時間攪拌することにより中空ポリマー粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径300nmの単分散真球状の粒子であった。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され、中空ポリマー粒子の外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶解した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚みは、25℃と50℃において動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から約5nmであった。
【0097】
アミノ基導入例12
合成例8の方法で合成した、表面に親水性ポリマー層を有する単分散性中空ポリマー粒子の3質量%水溶液100mlに、ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミン SP−200)1質量%水溶液100mlを加えて3日間撹拌した後、透析及び遠心分離操作によって洗浄を行い、単分散粒子の表面にポリエチレンイミンを結合させたテンプレート粒子12を得た。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルに加えて、2−3ppm付近にポリエチレンイミン由来のシグナルが観測され、粒子表面にポリエチレンイミンが導入され、該ポリエチレンイミン層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該ポリエチレンイミン層の厚みは、ポリエチレンイミンの導入前と導入後の動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約20nmであった。
【0098】
合成例9
1.3gのN,N−ジメチルアクリルアミド(株式会社興人製)を溶解した水溶液300mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)9.4gを加え、さらに、水溶性重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.1gを溶解した後、窒素フローしながら攪拌し、系中の酸素を除去した。この液を65℃で1時間攪拌することによりテンプレート粒子13の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径250nmの単分散真球状の粒子であった。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N、N−ジメチルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され、粒子の外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚みは、乾燥状態と動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から約50nmであった。
【0099】
合成例10
水200ml中に、N−イソプロピルアクリルアミド2.6g、スチレン16gを加え、70℃で窒素気流下、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.25gを溶解した水20mlを加えて、撹拌しながら17時間重合させて粒子14の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径270nmの単分散真球状の粒子であった。25℃と50℃において、動的光散乱法によって求めた平均粒径に差は無く、粒子表面に、水和する親水性層の存在は確認できなかった。
【0100】
合成例11
合成例10で得られた、N−イソプロピルアクリルアミドとスチレンとの共重合体からなる粒子14の3.6質量%水溶液100mlに、N−イソプロピルアクリルアミド0.8g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.08gを溶解した水40mlを加え、70℃で窒素気流下、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.08gを溶解した水10mlを加えて、撹拌しながら4時間重合させて、粒子14の表面に、架橋されたポリN−イソプロピルアクリルアミドのシェル層を有するコア−シェル型のテンプレート粒子15の分散液を得た。この粒子の形状をSEM観察したところ、乾燥状態では、コア粒子(粒子14)と同じ平均粒径270nmの単分散真球状の粒子であった。溶媒中に溶解したテンプレート粒子表面の親水性ポリマー層の厚みは、25℃と50℃における動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約15nmであった。
【0101】
合成例12
水200ml中に、N−イソプロピルアクリルアミド2.6g、スチレン16gを加え、70℃で窒素気流下、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)0.25gを溶解した水20mlを加えて、撹拌しながら17時間重合させて粒子16の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径280nmの単分散真球状の粒子であった。25℃と50℃において、動的光散乱法によって求めた平均粒径に差は無く、粒子表面に水和する親水性層の存在は確認できなかった。
【0102】
合成例13
ポリエチレンイミン(Across社製、Mw 60,000、50wt%水溶液)から水を除去した後、クロロホルム30mlに溶解した。この溶液にグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.28gを加えて1時間撹拌した後、水100mlを加え、エバポレータによりクロロホルムを除去した。さらに300mlの水を加え、塩酸により、溶液のpHを7に調整した。この溶液に16gのメタクリル酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を加え、窒素気流下で30分間攪拌した。この後、t−ブチルハイドロパーオキサイド(Aldrich社製、70wt%水溶液)9mgを溶解した水溶液20mlを加え、80℃で2時間攪拌(300rpm)することにより、ポリメチルメタクリレートコア、ポリエチレンイミンのシェル層を有するコア−シェル型のテンプレート粒子17の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径170nmの単分散真球状の粒子であった(図4)。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリエチレンイミン由来のシグナルのみが観測され(図5)、テンプレート粒子上に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚みは、乾燥状態と動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約70nmであった。
【0103】
実施例1(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例およびアミノ基導入例に従って作製された、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基をともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子の5質量%水分散液100質量部と、シリカ源としてMS−51(コルコート株式会社製)の50質量%エタノール溶液12.5質量部を混合し、3時間撹拌することによってテンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させた。この後、遠心分離操作により複合化した粒子の洗浄を行い、乾燥の後、電気炉を用いて空気存在下500℃で30分間焼成することにより、鮮やかな発色を示すカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化したシリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン含有金属酸化物中空粒子の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色について表4にまとめた。
【0104】
【表4】
【0105】
得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた〔粒子5を用いて作製した中空粒子のラマンスペクトルを例示(図6)〕。この粒子は、SEM観察により単分散で球形の形状であり(図7)、押し潰して観察すると中身が中空の粒子であることが確認できた(図8)。
【0106】
実施例2
テンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させる段階で、テンプレート粒子とシリカ源のエタノール溶液の混合時間を、3時間から、10、30、60、90分に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行いシリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色ついて表5にまとめた。
【0107】
【表5】
【0108】
得られた中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、中身が中空の粒子であることが確認できた〔テンプレート粒子3(AET修飾粒子)を用いて攪拌時間30,60,90分で作製した試料のSEM観察像を例示(図9)、押しつけて、一部を破壊〕。さらにTEM観察により、粒子の中空構造を確認できた(図10)。
【0109】
実施例3
テンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させる段階で、テンプレート粒子の5%水分散液100質量部と混合するシリカ源のエタノール溶液の添加量を、12.5質量部から、6.25質量部、25質量部、37.5質量部に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色について表6にまとめた。
【0110】
【表6】
【0111】
実施例4
焼成時の雰囲気を、空気存在下から、窒素雰囲気下に変えた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。表7に、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色についてまとめた。
【0112】
【表7】
【0113】
得られたシリカ中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、中身が中空の粒子であることが確認できた。さらに高分解能TEM観察により、粒子の中空構造及びシリカ殻の内外層に鱗状のカーボンが複合化されていることを確認できた(図11)。
【0114】
実施例5
焼成時の雰囲気を、空気存在下から窒素雰囲気下に変え、かつ、焼成温度を500℃から800℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。表8に、得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子の示す発色、中空粒子中の複合化カーボン量、殻厚についてまとめた。
【0115】
【表8】
【0116】
得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、一部の破壊した粒子の形態から、中身が中空の粒子であることが確認できた。粒子6を用いて作製した中空粒子の可視光反射スペクトル測定より、焼成温度や焼成雰囲気を空気存在下から窒素下に変更することによって(実施例1、4、5において、粒子6を用いて作製した中空粒子の反射スペクトルを例示)、同じシリカ−テンプレート粒子の焼成物でも、異なった発色を示すことが確認できた(図12)。
【0117】
実施例6(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例1に従って作製された、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基、さらにカルボキシル基をともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子の3%水分散液100質量部と、シリカ源としてMS−51の50質量%エタノール溶液7.3質量部を混合し、3時間撹拌することによってテンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させた。この後、遠心分離操作により複合化した粒子の洗浄を行った。乾燥後、電気炉を用いて空気存在下500℃で30分間焼成することにより、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる球状の中空粒子を得た。シリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色について表9にまとめた。
【0118】
【表9】
【0119】
得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、一部の破壊した粒子の形態から、中身が中空の粒子であることが確認できた。
【0120】
実施例7(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
シリカ源として、MS−51の代わりに、MS−51と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−403)の1:1混合物を用いた以外は、実施例6と同様にしてカーボン含有金属酸化物中空粒子の作製を行った。表10に、テンプレート粒子上に複合化されたシリカ(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色についてまとめた。
【0121】
【表10】
【0122】
比較例1
テンプレート粒子として、合成例8で作製した表面にアミノ基を持たないポリマー粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、500℃の焼成によって粒子は完全に消失し中空粒子を得ることはできなかった。
【0123】
実施例8
テンプレート粒子として、アミノ基導入例12で作製した、テンプレート粒子12を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、11.2%であった。このカーボン複合化シリカ中空粒子は黄緑色を示し、その平均殻厚は8nmで複合カーボン量は20.4%であった
【0124】
実施例9
テンプレート粒子として、合成例9で合成した粒子13を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、3.5%であった。このカーボン含有金属酸化物中空粒子は濃紫色を示し、その平均殻厚は5nmで複合カーボン量は51.2%であった。
【0125】
比較例2
テンプレート粒子として、前記合成例10に従って作製された、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層が無く、開始剤残基のアミノ基を表面に有する単分散性ポリマー微粒子14を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、シリカ中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、15.5%であった。この中空粒子は着色せず、白色で、ラマン散乱スペクトルの測定でも、カーボンの存在は確認できなかった。
【0126】
実施例10
前記合成例11に従って作製された、表面に親水性ポリマーシェル層を有し、開始剤残基のアミノ基を表面に有する単分散性ポリマー微粒子15を用いた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる濃紫色の中空粒子を得た。このカーボン含有金属酸化物中空粒子の平均殻厚は12nmで、複合カーボン量は41.4%であった。
【0127】
比較例3
テンプレート粒子として、合成例12で作製した、表面にアミノ基を持たないポリマー粒子16を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、500℃の焼成によって粒子は完全に消失し、中空粒子を得ることはできなかった。
【0128】
実施例11(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例13に従って作製された、ポリエチレンイミン層を表面に有する単分散性ポリマー微粒子17を用いた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる濃褐色のカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、30.7%であった。この中空粒子の平均殻厚は25nmで、複合カーボン量は1.1%であった。
【0129】
実施例12(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例1、アミノ基の導入例1に従って作製された、ポリエチレンイミン層を表面に有する単分散性ポリマー微粒子の8%水分散液100質量部と、酸化チタン源としてチタニウム(IV)ビス(アンモニウムラクテート)ジハイドロオキサイド(アルドリッチ社製)の25質量%水溶液100質量部とを混合し、30分撹拌することによってテンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させた後、遠心分離操作により複合化した粒子の洗浄を行った。テンプレート粒子上に複合化された酸化チタンの量は、2.7%であった。
【0130】
(焼成による金属酸化物中空粒子の作製)
表面にチタンを複合化させたポリマーテンプレート微粒子を乾燥した後、電気炉を用いて空気存在下500℃で30分間焼成することにより、酸化チタンとカーボンを複合化させた殻壁からなる薄水色の中空粒子を得た。このカーボン複合化シリカ中空粒子の平均殻厚は5nmで、複合カーボン量は3.1%であった。また、ラマンスペクトルより、この酸化チタンは、アナターゼ型結晶であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】合成例1で得られた単分散性ポリマー微粒子のSEM観察像である。
【図2】合成例1で得られた単分散性ポリマー微粒子を重水に分散して測定した1H−NMRスペクトルである。
【図3】導入例1で得られたテンプレート粒子1を重水に分散して測定した1H−NMRスペクトルである。
【図4】合成例13で得られたテンプレート粒子17のSEM観察像である。
【図5】合成例13で得られたテンプレート粒子17を重水に分散して測定した1H−NMRスペクトルである。
【図6】実施例1において、粒子5を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルである。
【図7】実施例1において、粒子5を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のSEM観察像である。
【図8】実施例1において、粒子5を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のSEM観察像である。
【図9】実施例2において、粒子3を用いて異なる攪拌時間で作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のSEM観察像である。
【図10】実施例2において、粒子3を用いて攪拌時間90分の条件で作製したカーボン複合化中空粒子のTEM観察像である。
【図11】実施例4で得られた、粒子6を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のTEM観察像である。
【図12】実施例1、実施例4、及び実施例5において、粒子6を用いて、異なる焼成条件で作製されたカーボン複合化シリカ中空粒子の反射スペクトルである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンを含有する金属酸化物中空粒子、より詳しくは空隙率が高く、単一粒径分布であることを特徴とする、カーボンを高度に複合化してなる金属酸化物中空粒子、および該カーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空粒子は、その粒子内部に種々の機能物質を包含したマイクロカプセルとして広く利用されており、また内部空孔による特異な光散乱特性を利用して、紙、繊維、皮革、ガラス、金属等へのコーティング・塗料や化粧料等の分野において、光輝、光沢、不透明度、白色度などの性能を付与するための光散乱剤、光散乱助剤としても有用であることが知られている。さらに、内部が中空であるため、嵩高軽量化や遮音、断熱効果も期待できる。中空粒子の中でも、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の中空粒子は、構造安定性、化学的安定性に優れることから、工業的に特に有用であり、中空構造に基づく大きな表面積を利用した触媒、もしくは触媒担持体としての応用も期待される。
【0003】
このような金属酸化物中空粒子の製造方法として幾つかの方法が提案されている。例えば、液−液界面での反応を利用する方法として、先ずアルカリ金属の塩を含む無機化合物の水溶液を調製し、これに有機溶剤を添加混合して水中油滴型(O/W型)乳濁液とし、さらにこの乳濁液を親油性界面活性剤を含む有機溶剤中に添加混合して油中水中油滴型(O/W/O型)乳濁液とする。最後に上記無機化合物との水溶液反応によって水不溶性沈澱を形成しうる化合物の水溶液に、上記乳濁液を混合して無機中空微粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、無機化合物水溶液を界面活性剤を用いて有機溶媒と混合乳化し、油中水滴型(W/O型)乳濁液を作り、これを別の水溶液と混合することにより水滴界面で沈殿反応を起こさせ、無機質殻を形成した後、副生物や界面活性剤等を除去することによって中空粒子を得る方法が開示されている。しかしながら、これらの方法は界面活性剤を用いて乳化する複雑な工程を含んでおり、製造に熟練が必要であるうえに得られる中空粒子の粒径分布は広く、強度や粒径の再現性も良くないという問題点があった。
【0004】
粒径分布が単分散である金属酸化物中空粒子を得る方法として、単分散性の粒子をテンプレートとし、この表面に金属酸化物の層を形成させたコア−シェル型粒子を作製し、金属酸化物のシェル層を壊すことなく内部のテンプレートを除去する方法が提案されている。例えば、テンプレートを用いてポリマー−金属酸化物のコア−シェル型微粒子を作製する方法の一つに交互積層法が挙げられる(例えば、特許文献3参照。)。これは、コロイド粒子を反対荷電のナノ粒子及び高分子電解質の交互の層で被覆し、コロイドコアを除去することによって中空粒子を得る方法である。
【0005】
また同様に、交互積層法を用いて酸化チタンの微粒子やチタニアナノシート、酸化チタン前駆体モノマーを静電的にポリマー微粒子上に積層した後、ポリマー成分を除去することによって酸化チタン中空粒子が得られることも提案されている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。
【0006】
この様な交互積層法では、核となるテンプレート粒子上への積層数を任意に代えることで任意の厚みの殻を有する金属酸化物中空粒子を得ることが利点であるが、テンプレート粒子上への吸着操作毎に吸着しなかった余剰成分を遠心分離操作などによって除去洗浄した後に粒子を再分散させる必要があり、テンプレート除去前の操作が非常に繁雑な工程となり、実用性に乏しい。
【0007】
一方、シランカップリング剤を用いて表面がシラノール(Si−OH)基で修飾された単分散性ポリマー粒子を合成し、これを種粒子として表面にシリカを堆積させ、この後、中心のポリマーを除去することによってシリカの中空粒子を得る方法が開示されている(例えば、非特許文献4参照。)。この方法によれば、液中にはシリカ単独の粒子が生成せず、シリカの縮合反応はポリマー粒子上で選択的に起こるため、最終的に中空でないシリカ単独粒子を除去する必要のないことが大きな利点である。また、シリカは共有結合によってポリマー粒子上に強固に結合され、20nm程度の厚さの殻を有する安定な粒子を得ることができると報告されている。
【0008】
しかし、表面にシラノール基を有するポリマーテンプレートの合成は、重合反応の進行途中で3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレートを後添加する過程を必要とするため、精密な反応制御が必要であることや、シリカ源であるテトラエトキシシランのエタノール溶液を滴下する際、1ml/hといった非常に小さい添加速度で行う必要があり、長時間を要するという問題があった。
【0009】
一方、コアポリマー粒子の存在下、金属アルコキシドもしくは金属塩の加水分解を行う操作で、単分散性ポリマー粒子上に金属酸化物膜を形成する方法も提案されている(例えば、非特許文献5参照。)。また、シリコンアルコキシド、あるいはチタニウムアルコキシドのアルコール溶液中に単分散性ポリマー粒子を分散させておき、このアルコール溶液もしくはアルコール/水溶液中でシリコンアルコキシドやチタニウムアルコキシド等を加水分解させて形成される金属化合物をコア−ポリマー粒子上に被覆させた後、焼成によって中空粒子を得る方法も開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
この方法においては、ポリマー粒子表面と加水分解された金属イオン、または加水分解により生成した錯体がコアポリマー粒子表面上に吸着し被覆層を形成していく、もしくは非常に小さい金属化合物微粒子が形成され、これがコアポリマー微粒子表面上に吸着し、その粒子表面で金属化合物層が成長していくといったメカニズムが考えられており、吸着の機構は主として静電的な相互作用によるものである。従ってコアポリマー粒子は、必然的に被覆層を形成する金属酸化物と逆の表面電荷を有するポリマー微粒子となる。これらの手法においては、ポリマーテンプレートと金属酸化物の前駆体溶液を混合する一回の操作によってポリマーテンプレート上に金属酸化物の被覆層を形成することができることが有利な点であるが、被覆する金属酸化物によって表面電荷の異なるテンプレート粒子を用意しなければならないこと、しばしばポリマー表面上に吸着しない金属酸化物のみの粒子が系中に残留し、焼成などの中空化処理前にこれを除去しておかなければならないことが問題であった。
【0011】
また、両性イオン表面を有するポリマー粒子をテンプレートとする方法も報告されている(例えば、非特許文献6参照。)。この方法では、アミノ基およびカルボキシレート基で修飾されたポリスチレンの分散液を、珪酸ナトリウム水溶液中に加えて撹拌することにより、ポリマーテンプレート上にシリカ被膜を形成することができる。しかしながら、本方法は、ポリマーテンプレート上へシリカを被覆するために、pHの調整を行ったうえで24時間の長い反応時間を要するものであった。
【0012】
アミノ基で表面修飾されたポリマー粒子に、さらにポリ−L−リシンを吸着させ、これをポリマーテンプレートとして用いる方法も報告されている。この方法によれば、ポリマー粒子上のアミンが塩基性触媒として働き、珪酸のポリマーテンプレート上での縮合反応を促進して効率良くシリカやチタニアの被膜層を形成すると考えられている(例えば、非特許文献7参照。)。
【0013】
この様に、ポリマーテンプレート上への金属酸化物皮膜の形成方法は多数知られており、このポリマー粒子−金属酸化物被膜のコア−シェル型粒子を焼成、もしくはコアポリマーの溶媒による抽出によりコア成分を除去することによって単分散性の金属酸化物中空粒子を得ることができる。
【0014】
しかしながら、従来提案された金属酸化物中空粒子においては、前述のエマルジョンを用いる方法、コアポリマーを用いる方法ともに、テンプレートとなる有機物は可能な限り除去しやすいものを選択し、粒子構造を形成するために用いた液体やコアを完全に除去することで純度の高い金属酸化物からなる中空粒子を得ることを目的とするものである。この場合、シリカ、チタニア、ジルコニア等、それ自身可視光領域に吸収の無い、つまり色の無い金属酸化物の中空粒子は、発色用材料としては、白色顔料、もしくは白色光散乱体としての用途に限られていた。
【特許文献1】特開昭63−258642号公報
【特許文献2】特開平6−330606号公報
【特許文献3】特表2003−522621号公報
【特許文献4】特開平6−142491号公報
【非特許文献1】Rachel A. Caruso,Andrei Susha,and Frank Caruso、Chem.Mater.、2001,13,400−409
【非特許文献2】Masaki Iida, Takayoshi Sasaki,and Mamoru Watanabe、Chem.Mater.、1998,10,3780−3782
【非特許文献3】Frank Caruso,Xiangyang Shi,Rachel A. Caruso,and Andrei Susha、Adv.Mater.、2001,13,No.10,May17、740−744
【非特許文献4】I.Tissot,J.P.Reymond,F.Lefebvre,and E.Bourgeat−Lami,Chem.Mater.、2002,14,1325−1331
【非特許文献5】Arnout Imhof、Langmuir、2001、17、3579−3585
【非特許文献6】Jeroen J.L.M.Cornelissen,Eric.F.Connor,Ho−Cheol Kim,Victor Y.Lee,Teddie Magibitang,Philip M.Rice,Willi Volksen,Linda K.Sundberg and Robert D.Miller,Chem.Commun.,2003,1010
【非特許文献7】Jian Yang,Johan U.Lind,and William C.Trogler、Chem.Mater.、2008,20,2875−2877
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記実情を鑑み、本発明の課題即ち目的は、白色以外の鮮やかな発色を示す単分散性の金属酸化物中空粒子、及びこれを効率良く製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基とをともに有する単分散性ポリマー微粒子をテンプレートとし、この表面に金属酸化物の被膜を形成した後、焼成によって該ポリマー微粒子を除去することによって、カーボンを高度に複合化した金属酸化物からなる厚みの薄い単分散性中空粒子が効率良く得られ、その粒径サイズに依存して異なる色の鮮やかな発色を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。尚、本発明での単分散とは、粒径分布でのヒストグラムが単一ピークを示すことであり、その単一ピークでの粒径分布の標準偏差を平均粒径で割った変動係数(以下、分散係数と略記する。)が0.1以下であることを意味するものである。
【0017】
すなわち本発明は、カーボンを含有する金属酸化物からなる中空粒子、より詳しくは、単一の粒径分布を持ち、空隙率の高い、カーボン含有単分散性金属酸化物中空粒子とその簡便な製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鮮やかな発色を示す単分散性で空隙率の高い、カーボンを含有した金属酸化物からなる中空粒子を提供することが出来る。該カーボン含有金属酸化物中空粒子は、本発明の製造方法である、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基とをともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子をテンプレートとし、この表面に金属酸化物の被膜を形成した後、焼成によって該ポリマー微粒子を除去することによって簡便、且つ再現性の良い方法で得ることが出来る。得られるカーボン含有金属酸化物中空粒子は、その粒径、及びカーボンの含有率によって発色が異なり、種々の色を表示することができる。また、該金属酸化物中空粒子は、光源の位置や観察方向に依存して異なる発色を示すこともできる。
【0019】
従って、本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子はコーティング・塗料等の分野においてその特異な発色特性を利用し、紙、繊維、皮革、プラスチック、金属等、各種基材上に鮮やかな発色を付与するための顔料として応用できる。また、光源の位置や観察方向に依存して異なる発色を示す特性を利用したセキュリティラベル等へも応用も可能である。さらに、中空構造による光拡散性や吸水性、吸油性を利用した化粧品への応用が可能であり、インクジェット受理層としても利用できる。さらに、中空構造のため、熱の伝導や音の伝導を抑制できるので、断熱材や断音材としても応用でき、また同一体積での質量が小さくできるので軽量化剤としても利用できる。さらに本発明のカーボン複合化単分散性中空金属酸化物粒子は、各種触媒および触媒担持体としても応用が可能である。
【0020】
更に、本発明の金属酸化物中空粒子の製造方法は、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基をともに有する単分散性ポリマー微粒子、もしくは水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基、さらにカルボキシ基をともに有する単分散性ポリマー微粒子をテンプレートとすることにより、該単分散性ポリマー微粒子の分散液に金属酸化物前駆体の溶液を混合して短時間撹拌するだけで、該ポリマー微粒子の表面に選択的に金属酸化物の被膜を形成することができ、さらにこの後、焼成によって該ポリマー微粒子を除去しつつ、その一部を炭化して金属酸化物の被膜と複合化する操作によって、単一粒径分布を持ち、空隙率の高い、カーボン含有金属酸化物中空粒子を製造するものであり、再現性が良く、また高効率であり、実用上も簡便であることからその有用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子は、内部が空洞の中空粒子であって、金属酸化物とカーボンとを主構成成分とする殻からなり、その殻壁の厚さが5nm〜30nmで、且つ平均粒子径が50nm〜1000nmの単分散性の粒子である。金属酸化物とカーボンとを有する、詳しくは、金属酸化物とカーボンとがナノメートルオーダーで複合化されることにより、中空構造に由来する特有の屈折率の分布によるランダムな光散乱が抑制され、特定の回折光や反射光が強調される結果、鮮やかな発色をも示す材料となる。この点において、従来の金属酸化物を主構成成分とする中空粒子が白色以外の発色を示さないことと大きく異なるものである。
【0022】
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法は、主として以下の段階によるものである。すなわち、水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)、もしくは水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)、さらにカルボキシ基(x3)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)を水性媒体に分散させ、当該単分散性ポリマー微粒子(X)をテンプレートとし、その表面に金属酸化物(Y’)の被膜を形成させる第一段階と、この後、焼成によって該単分散性ポリマー微粒子(X)を除去しつつ、その一部を炭化させて金属酸化物の被膜と複合化させ、カーボン含有金属酸化物中空粒子を得る第二段階と、を有する。
【0023】
ここで、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層(x1)とは、ポリマー微粒子表面に単に親水性の官能基が存在していることではなく、水性媒体中において、当該ポリマー微粒子表面から一定の空間的な広がりを有するポリマー鎖が存在することを意味しており、この点において、前記非特許文献6とは異なるものである。すなわち、本発明でテンプレートとして使用する単分散性ポリマー微粒子(X)は、水性媒体中に溶解しない核(コア)ポリマー微粒子の外側に、親水性のコロナもしくは親水性のシェル層を有する、コア−コロナ型もしくはコア−シェル型の微粒子である。本発明においては、この親水性ポリマー層(x1)中に金属アルコキシド(Y)が濃縮され、ここに存在するアミノ基(x2)、さらにはカルボキシ基(x3)が、金属アルコキシド(Y)の加水分解及び縮合反応(ゾルゲル反応)の触媒として効率良く機能し、容易に当該単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)の被膜を形成させることができる。また、形成された金属酸化物(A)からなる被膜は、親水性ポリマー層(x1)との水素結合により、また、親水性ポリマーがヒドロキシ基を有する場合には、さらに脱水縮合反応を起こすことによってこの親水性ポリマー層(x1)と複合化するため、焼成過程によって容易に金属酸化物(A)とカーボンとの複合化を実現しうるものである。また、ゾルゲル反応によって金属酸化物(Y’)と親水性ポリマー層(x1)が複合化した金属酸化物の被覆層が形成された後でも親水性ポリマー層の一部は最表面に存在するので、焼成後、内部のみならず最表面にもカーボンが存在するという特殊な形態を実現しうる。
【0024】
水性媒体に溶媒和して一定の空間的な広がりを有する親水性ポリマー層(x1)の存在は、例えば、該単分散性ポリマー微粒子(X)を重水素化した水性媒体中に分散させた状態で1H−NMR測定を行うことによって確認することができる。また、この親水性ポリマー層(x1)が乾燥状態では実質的な体積をほとんど持たないことを利用して、乾燥状態での粒径を電子顕微鏡や表面プローブ顕微鏡などで観察し、これを動的光散乱法で見積もられる水性媒体中での粒子サイズと比較することによっても、親水性ポリマー層(x1)の存在及び空間的な広がりの大きさを確認することができる。又、例えば、N−置換アクリルアミドやN,N−ジ置換アクリルアミド等からなる重合体やこれらをその原料の一部として用いて得られた共重合体が微粒子の外側に存在している場合には、下限臨界共溶温度が存在することが知られている。この下限臨界共溶温度よりも高温の場合には、当該外側の層は疎水性を示すので水性媒体に溶媒和しないものの、低温の場合には親水性になって溶媒和するという特有の性質を有する。従って、この様な外側に特定のポリマーが存在する微粒子の場合には、水性媒体中での粒子サイズが温度に依存して変化することになり、この様な相違から水性媒体に溶媒和して一定の空間的な広がりを有する親水性ポリマー層(x1)の存在並びにその層の厚さを見積もることができる。
【0025】
本発明において、前述の水性媒体中における親水性ポリマー層(x1)の空間的な広がりの大きさは、5nm〜200nmのものを好適に用いることができるが、密度の高い金属酸化物(Y’)の被覆層を効率良く形成するためには5nm〜100nmのものを用いることが好ましい。
【0026】
本発明で用いる水性媒体としては、水を単独で用いる他、水にメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を単独、もしくは複数種混合した混合溶媒を挙げることができる。
【0027】
[単分散性ポリマー微粒子(X)]
本発明でテンプレートとして用いる単分散性ポリマー微粒子(X)は、上記条件を満たすものであればよく、その製造方法としてなんら制限されるものではない。例えば、エマルジョン重合、沈澱重合、分散重合法など、種々の微粒子製造方法によって得ることができる。
【0028】
本発明で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)の平均粒子径は、目的に応じて選択するものである。しかしながら、該ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)からなる被膜を形成させた後に焼成を行って得られる金属酸化物中空粒子が、充分な強度を有し、且つ目的とする発色の強度を高められる点から、乾燥状態における該ポリマー微粒子(X)の平均粒子径が50nm以上1000nm以下の粒子であることが好ましい。
【0029】
ポリマー微粒子への親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)の導入は、重合開始剤及び単量体の組み合わせによって微粒子の重合時に導入しても良く、先に単分散性のポリマー微粒子を合成しておき、このポリマー微粒子の表面に化学反応によって導入することにより、コア−コロナ型、もしくはコア−シェル型の粒子としても良い。また、親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とは別々に導入しても良く、アミノ基(x2)を有する親水性ポリマー層(x1)を導入しても良い。さらに、アミノ基(x2)を有する親水性ポリマー層(x1)とは別に、さらにポリマー微粒子表面にアミノ基(x2)を導入して用いることもできる。さらにまた、シェル層を形成するアミノ基含有ポリマー鎖とコア部を形成するポリマー鎖とを有する両親媒性ポリマーからなる単分散性ポリマー微粒子を用いても良い。
【0030】
又、本発明の製造方法による金属酸化物中空粒子を得るにあたって、ゾルゲル反応がより効果的に進行する点から、単分散性ポリマー微粒子(X)が更にカルボキシ基(x3)を有するものであることが好ましい。表面上に親水性ポリマー層(x1)、アミノ基(x2)、カルボキシ基(x3)を有するポリマー微粒子の作製は、アミノ基(x2)導入時に、アミノ基(x2)とカルボキシル基(x3)とを有するアミノ酸、もしくはアミノ酸残基を有するポリマーを用いることで好適に行うことができる。
【0031】
具体的には、表面に親水性ポリマー層(x1)を有する単分散性ポリマー微粒子(X)の一つの形態は、既に本発明者が特開2007−291359号として提供している中空ポリマー微粒子であり、詳しくは、ラジカル重合性の水溶性モノマー(α1)とラジカル重合性の非水溶性モノマー(α2)とを水性媒体中で擬エマルジョン形式のラジカル重合反応を行うことにより得られる中空ポリマー微粒子そのもの、もしくはこれにアミノ基(x2)を導入したものである。この中空ポリマー微粒子は、表面に親水性ポリマー層(x1)を有し、コア−シェル型のポリマー粒子として作用する。
【0032】
特にアミノ基(x2)を容易に導入することができる点から、ラジカル重合性の水溶性単量体(α1)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(α2)とを含有する単量体群(α)を、アミノ基含有開始剤を用いて重合して得られる共重合体を主構成成分とする殻壁からなるものであることが好ましく、又得られる金属酸化物中空粒子の発色性を強めることができる点から、該殻壁の厚さが5nm〜80nmである中空ポリマー微粒子を用いることが好ましい。この手法で得られる中空ポリマー微粒子には、当該開始剤由来のアミノ基がその表面に導入されており、そのまま本発明のテンプレートとして好適に用いることができる。
【0033】
前記アミノ基含有開始剤としては、特に制限されるものではなく、種々のものを使用することができるが、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)二塩酸塩四水和物、等が挙げられ、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩を用いるのが特に好ましい。
【0034】
親水性ポリマー層(x1)を有する単分散性ポリマー微粒子の別の一つの形態は、コア粒子上に架橋された親水性ポリマーのシェル層を設けたものである。該コア−シェル型微粒子は、コア部とシェル層を連続的に調製しても良いし、コア部となる微粒子を調製しておき、これをシードとしてシェル層を別途調製しても良い。
【0035】
例えば、コア部とシェル層とを段階的に別々に調製する場合、該コア−シェル型微粒子のコア部は、単分散性粒子であれば中空であっても中実であっても好適に用いることができる。中実ポリマー微粒子は、ミクロゲル法、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード乳化重合法、二段階膨潤法、分散重合法、懸濁重合法等、種々の方法によって調製することが可能であり、また、市販の単分散性ポリマー微粒子を用いても良い。中実ポリマー微粒子を合成する目的で用いる単量体としては、特に制限は無く、ラジカル重合性の水溶性モノマーとしてアミド基を有する水溶性モノマーとしては、例えばアクリルアミドやN−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N,N―ジメチルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミドやN−ジ置換(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。アミノ基を有する水溶性モノマーとしては、例えば、アリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。また、カルボキシ基を有する水溶性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられ、ヒドロキシ基を有する水溶性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート等を挙げることができる。スルホン酸基を有する水溶性モノマーとしては、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸エチルエステル、スチレンスルホン酸シクロヘキシルエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。さらにビニルピリジンやグリシジルメタクリレートに有機アミンを反応させて合成したモノマーを四級化させて得られる、四級化モノマーを用いても良い。
【0036】
更に、ラジカル重合性の非水溶性モノマーとして、アクリレートとしては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸グリシジル、tert−ブチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、1−アダマンチル−α−トリフルオロメチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等を挙げることが出来る。また、メタクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン等を挙げることが出来る。これらのモノマーは、単独でも2種以上を混合して用いることもできる。以下、本文中で使用する(メタ)アクリレートは特に断りのない限り、アクリレート単独、メタクリレート単独及びそれらの混合物を総称するものとして用いる。
【0037】
又、非水溶性モノマーとして、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の環状エーテル構造を有するものも挙げられる。
【0038】
前記非水溶性モノマーとしては、(メタ)アクリレート以外の、例えば、スチレン系化合物、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビスビニル化合物等を単独で、または2種以上を併用して用いても良い。
【0039】
前記スチレン系化合物は、スチリル基を有する化合物であって、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、p−メトキシスチレン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、ビニルアントラセン、ビニルピレン等が挙げられる。
【0040】
前記ビニルエステルとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
前記ビニルエーテル類としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチルプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
更に又、前記モノマーと併用して二官能のジ(メタ)アクリレート、例えば、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレン(メタ)アクリレート、トリエチレンジ(メタ)アクリレート等のポリエチレンジ(メタ)アクリレート類、プロピレンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジ(メタ)アクリレート、等のポリプロピレンジ(メタ)アクリレート類、グリセロールジ(メタ)アクリレート等も単独で、または2種以上を併用して用いることができる。そのほか、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等の中から1種類、もしくは2種以上を共重合させることによってコア粒子を製造することも可能である。
【0043】
水性媒体中で重合反応を行う場合、重合開始剤としては、種々の水溶性重合開始剤を用いれば良く、特にアミノ基含有開始剤を用いた場合には、開始剤由来のアミノ基が微粒子の表面に導入されるため、より好ましい。
【0044】
シェル層の調製は、例えば、前記コア微粒子をシード粒子として、その水性媒体分散液中に水溶性の重合性単量体および架橋剤を加えてエマルジョン重合を行うことにより、コア部の外側に親水性ポリマー層(x1)のシェル層を設けることができる。
【0045】
シェル層の合成に用いる水溶性の重合性単量体としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N―ジエチルアクリルアミド、N−エチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリドン、N−アクリロイルピペリドン、N−アクリロイルメチルホモピペラジン、N−アクリロイルメチルピペラジン等のアクリルアミド系単量体のうちから1種類、もしくは、これらの2種以上を重合させた高分子の架橋体を好適に用いることができる。また、これらとアクリル酸、メタクリルアミド−プロピル−トリメチル−アンモニウムクロライド、1−ビニルイミダゾール、メタクリロイルオキシフェニルジメチルスルホニウムメチルスルフェイトなどを共重合させたものも好適に用いることができる。
【0046】
シェル層の合成に用いる架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン等が挙げられ、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びジビニルベンゼンを用いる事が好ましい。
【0047】
シェル層の合成に用いる重合開始剤は、水溶性の重合開始剤であれば特に限定されるものではないが、過硫酸塩又はアミノ基含有アゾ化合物を用いる事が好ましく、例えば、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸アンモニウム(APS)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)二塩酸塩四水和物、等が挙げられる。これらの中でも、コア粒子の表面電荷が正の場合には、アミノ基含有アゾ化合物を、コア粒子の表面電荷が負の場合には過硫酸塩を用いると、重合過程における凝集を防ぐことができるので好ましい。
【0048】
〔アミノ基(x2)の導入〕
上述した単分散性ポリマー微粒子は、前記の様に、粒子合成時に単量体として例えば、アリルアミン、N,N―ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基を有する重合性単量体を用いるか、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアミノ基を有する開始剤を用いれば、この微粒子をそのまま本発明のテンプレートとして好適に用いることができる。
【0049】
一方、アミノ基(x2)を持たない重合性単量体や開始剤を用いた場合には、前記中空ポリマー微粒子、コア−架橋親水性ポリマーシェル微粒子いずれの場合も、微粒子表面に共有結合によってアミノ基(x2)の導入を行うことにより、本発明のテンプレートとして用いることができる。アミノ基(x2)の導入は、例えば、単分散性微粒子の製造時、重合性単量体として、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等の環状エーテル構造を有する単量体を用いた場合には、微粒子表面に存在するグリシジル基又はオキセタン基に対して、アミノ基(x2)を有する化合物を反応させることによって、アミノ基(x2)を導入することが可能である。更にカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、及びチオール基の1種もしくは複数種とアミノ基とを有する化合物を用いる場合には、これらグリシジル基、もしくはオキセタン基とアミノ基の反応を利用しても良いし、アミノ基と共にカルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、及びチオール基の1種もしくは複数種を有する化合物を用いて、これらの官能基との反応を利用しても良い。
【0050】
前記アミノ基(x2)を有する化合物としては、その構造中にアミノ基を一つ以上有していれば良く、一級、二級、三級アミンのいずれであっても良い。また、これらのアミノ基(x2)は塩基のまま、または中和された形で用いることができる。アミノ基(x2)を中和する酸としては、塩酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、硫酸等の各種の酸類を用いることができ、またアミノ基(x2)が四級化されたものであっても良い。
【0051】
前記化合物として具体的には、構造中にアミノ基を一つ有するアミノ基含有化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノプロパノール、アミノエタンチオール等を、また、ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン類、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、スペルミジン、スペルミン等を挙げることができ、前記のようにこれらの塩酸塩、酢酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩等も利用可能である。
【0052】
また、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、グルタミン、ヒスチジン、アスパラギン、セリン、リシン、アルギニン、メチオニン、トレオニン、バリンなどのアミノ酸残基の一種、もしくは複数種が結合したオリゴペプチド、またはポリペプチドの骨格が含まれる低分子・高分子化合物からなる群から選ばれる低分子・高分子化合物、および、これらの化合物中のアミノ基を塩酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、硫酸等の各種の酸類を用いて中和した化合物も挙げることができる。これらアミノ酸残基を有する化合物は、アミノ基(x2)とカルボキシ基(x3)とを同時に有しており、アミノ基(x2)の導入とともにカルボキシ基(x3)も同時に導入することが可能であり、前記、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)、さらにカルボキシ基(x3)をともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子を作製できるので、特に好適に用いることができる。
【0053】
また、アミノ基含有ポリマーの例としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリリシン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノアクリレート、キトサンの骨格が含まれるポリマーからなる群から選ばれる単独重合体または共重合体、及びこれらの化合物中のアミノ基を塩酸、酢酸、リン酸、ホウ酸、硫酸等の各種の酸類を用いて中和した化合物を挙げることができる。
【0054】
又、表面に親水性ポリマー層(x1)を有する単分散性ポリマー微粒子(X)の別の形態としては、アミノ基(x2)を有する親水性ポリマーが直接コア部に相当するポリマー微粒子の表面に結合したものである。このような微粒子は、例えば、ポリアミンの存在下で疎水性モノマーのエマルジョン重合を行う方法を用いて合成できる。具体的な方法としては、例えば、水または水と親水性溶媒の混合溶液中で、アミノ基含有ポリマー、過酸化物、及びアミノ基を含まないラジカル重合可能な疎水性モノマーを共存させ、加熱する方法が挙げられる。これにより、過酸化物がアミノ基と反応してラジカルを発生し、アミンラジカルを開始剤とするラジカル反応が進行する。この際、アミノ基含有ポリマーは親水性が強いためシェル部に多く存在し、ラジカル重合によってできたポリマーは疎水性を示すため、コア部に多く存在する。その結果、乳化剤などを用いることなく、自発的に粒径のそろったコア−シェル粒子を合成することができる。
【0055】
この反応におけるアミノ基含有ポリマーとしては、過酸化物との反応性が高く、ラジカル反応の転化率が良好であることから、1級アミノ基を有するポリアミンを特に好適に使用できる。なかでも、分岐構造を有するポリエチレンイミン、ポリアリルアミンなどが入手のしやすさなどから最も好適である。
【0056】
前記特許文献3の交互積層法や前記非特許文献7では、前述のように物理的な吸着によって表面に親水性ポリマーとアミノ基との導入を行っているが、物理吸着する親水性ポリマーは、コアとなる微粒子の表面に、薄い被膜状に付着するにとどまるものであって、水性媒体中で溶媒和して均一な空間的広がりを有するものではない。従って、この様な物理吸着された親水性ポリマーと金属酸化物とのナノメートルオーダーでの複合化が容易ではなく、従って、得られた複合体を焼成してもポリマー由来のカーボンと金属酸化物との複合体からなる殻を形成できるものではない。一方、本発明でテンプレートとして用いる前述の単分散性ポリマー微粒子(X)は、水性媒体中で親水性ポリマー層(x1)が空間的広がりを有することから、金属アルコキシド(Y)の濃縮・ゾルゲル反応・金属酸化物(Y’)との複合化が容易であり、ひいては焼成後、金属酸化物(Y’)とカーボンとの複合化が容易である点、また、ゾルゲル反応によって金属酸化物(Y’)と親水性ポリマー層(x1)が複合化した金属酸化物の被覆層が形成された後でも、親水性ポリマー層の一部は最表面に存在するので、焼成後、内部のみならず最表面にもカーボンが存在するという特殊な形態となる点から、前記公知文献とは異なるものである。
【0057】
〔金属アルコキシド(Y)及び金属酸化物(Y’)〕
本発明の製造方法の第一段階は、上述した単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散体に、金属アルコキシド(Y)の溶液を混合し、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応を単分散性ポリマー微粒子(X)の表面上で行うものであり、金属酸化物(Y’)からなる被膜を単分散性ポリマー微粒子(X)上に形成させるものである。
【0058】
金属アルコキシド(Y)はM−(OR)nで表されるもので、Mは金属、−ORはアルコキシド基(Oは酸素、Rはアルキル基)を示す。nは金属Mの価数を示す。この様な金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応(加水分解・縮合反応)により、金属酸化物(Y’)のネットワークからなる被膜を形成させるものであり、強固な被膜が得られる点から、加水分解可能なアルコキシド基を三価以上有する金属アルコキシドを用いることが好ましい。特にテトラアルコキシシラン等の四価以上の金属アルコキシドを使用する場合には、単分散性ポリマー微粒子(X)上に形成される被膜の硬度を高くすることができるため好ましい。硬度を高くする目的で官能基数の多い金属アルコキシドを使用する場合には、全金属アルコキシド(Y)中の四価以上の金属アルコキシドの含有率が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0059】
前記金属アルコキシド(Y)の金属種Mとしては、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム、亜鉛等が挙げられ、これらの中でもゾルゲル反応が容易である点から、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウムであることが好ましく、工業的入手容易性の点からケイ素であることが特に好ましい。
【0060】
ケイ素を金属種Mとして有する金属アルコキシドとしては、反応性の官能基を有していても良いアルコキシシラン等を挙げることができる。尚、本発明において特に断りのない限り、アルコキシシランは加水分解反応によりオリゴマー化しているものも含む。オリゴマー化したものは、シラノールとなったシリカゾル状態で使用しても良い。オリゴマー化したアルコキシシランとしては、その平均重合度が2〜20のものを好適に使用することができる。
【0061】
前記アルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等のジアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(2−エタノール)オルソシリケート、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(イソプロポキシ)シラン等のテトラアルコキシシラン等が挙げられる。
【0062】
更に官能基を有するアルコキシシランとしては、例えば、ハロゲンを有するシラン類として、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランといったクロロシラン等が挙げられる。
【0063】
チタンを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラプロポキシチタン等のアルコキシチタンが挙げられ、また、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコール、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセテート、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート等、チタンの金属アルコキシドから調製される種々のチタンキレートを用いても良い。アルミニウムを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、トリエトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウムが挙げられる。
【0064】
また、ジルコニウムを金属種として有する金属アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウムおよびテトラ−t−ブトキシジルコニウム等のアルコキシジルコニウムが挙げられ、ジルコウニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムトリブトキシモノステアレート、塩化ジルコニウム化合物アミノカルボン酸等、ジルコニウムの金属アルコキシドから調製される種々のジルコニウムキレートを用いても良い。
【0065】
これらの金属アルコキシド(Y)は、単独で用いても、二種以上を混合して用いても良いが、アルコキシシランとチタン、ジルコニウム、アルミニウム等、その他の金属のアルコキシドとを混合して用いる場合には、反応速度の違いによりテンプレート微粒子上に形成される金属酸化物が不均一になるのを防ぐために、アルコキシシランに対するこれらその他の金属のアルコキシドの使用割合を30質量%以下にするのが好ましい。
【0066】
これらの金属アルコキシド(Y)は、溶液の状態で単分散性ポリマー微粒子(X)が分散した水性媒体と混合して用いるものであるが、混合液中では金属アルコキシド(Y)は加水分解されてM−OH構造が生成し、単分散性ポリマー微粒子(X)表面に存在する親水性ポリマー層(x1)に濃縮されることになる。ここで、単分散性ポリマー微粒子(X)表面に存在するアミノ基(x2)、更にカルボキシ基(x3)は、金属アルコキシド(Y)の加水分解、及び縮合反応を促進する触媒として働き効率良く金属酸化物(Y’)が生成する。この金属酸化物(Y’)は親水性ポリマー層(x1)との水素結合により、また親水性ポリマーがヒドロキシ基を有する場合にはさらに脱水縮合反応を起こすことによって、微粒子表面と金属酸化物(Y’)の間に共有結合が形成され、強固に結合した被膜層を形成する。この機構によって、金属アルコキシド(Y)の加水分解・縮合反応は、ほぼ選択的に単分散性ポリマー微粒子(X)上で進行することになる。
【0067】
金属アルコキシド(Y)を溶解する溶媒は、該金属アルコキシド(Y)が可溶で、単分散性ポリマー微粒子(X)を分散させた水性媒体と混合可能な溶媒を用いることができるが、取り扱いの容易さからメタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類やアセトン等を単独、もしくは2種以上を混合させて用いることができる。また、これらの溶媒と水が混合されていても良い。この時、金属アルコキシド(Y)が、キレート化されていないチタン、ジルコニウム、アルミニウム等の金属アルコキシド単独である場合には、急激な加水分解、縮合反応が起こり、単分散性ポリマー微粒子(X)上でなく溶液中に単独で金属酸化物を形成したり、該微粒子の凝集をひきおこしたりする可能性があるので、これを防ぐために水を混合しないアルコール類を用いることが好ましい。一方、金属アルコキシド(Y)が、キレート化された水溶性の化合物である場合、例えば、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、ジヒドロキシビス(ヒドロキシカルボキシラート)チタン、チタンペルオキソクエン酸アンモニウム、塩化ジルコニウム化合物アミノカルボン酸等は、溶媒として水を単独で用いることも可能である。
【0068】
これら金属アルコキシド(Y)の溶液は、10〜90質量%のものを適宜選択して用いることができるが、濃度が低すぎると被膜形成(ゾルゲル反応)に時間を要すること、一方濃度が高すぎると微粒子の凝集を引き起こす可能性が高いことから、当該濃度が30〜70質量%のものを用いることがより好ましい。
【0069】
本発明において、単分散性ポリマー微粒子(X)を分散させる水性媒体としては、前記の様に、水を単独で用いる他、水にメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の多価アルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を単独、もしくは複数種混合した混合溶媒を挙げることができるが、単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)の被膜を形成させる目的で用いる金属アルコキシド(Y)が、キレート化されていないチタン、ジルコニウム、アルミニウム等の金属アルコキシド単独である場合に限り、溶液中に単独で金属酸化物を形成したり、微粒子の凝集をひきおこしたりする可能性があるので、これを防ぐために、水の含有率が5質量%以下のもの、より好ましくは、水の含有率が1質量%以下のものを用いることが好ましい。
【0070】
単分散性ポリマー微粒子(X)の分散液の濃度は、高すぎると微粒子間の凝集を引き起こしやすく、低すぎると被膜形成に時間を要することから、1〜40質量%で調整したものを用いるのが好ましく、2〜20質量%のものを用いるのがより好ましい。
【0071】
また、単分散性ポリマー微粒子(X)上への金属酸化物(Y’)被膜の形成のために、単分散性ポリマー微粒子(X)の分散液と金属アルコキシド(Y)の溶液を混合し、撹拌する時間は5〜180分であることが好ましい。5分以下の短時間では、形成される金属酸化物(Y’)からなる被膜は薄すぎて、後の焼成過程により崩壊する可能性がある。撹拌時間が長くなるに伴い縮合反応が進行して単分散性ポリマー微粒子(X)上の金属酸化物(Y’)からなる被膜も厚くなり、より強固な皮膜を形成するので、必要に応じ撹拌時間を長くすると良い。しかしながら、膜厚の増加は、90分程度でほぼ飽和するので、90〜180分程度の時間撹拌を取れば良い。
【0072】
単分散性ポリマー微粒子(X)上に形成する金属酸化物(Y’)からなる被膜の膜厚は、目的に応じて5nm〜30nmのものを調製可能であるが、焼成工程後に充分な強度の中空粒子構造を維持するために、10〜30nmのものを調製するのがより好ましい。この様な膜厚を簡便に得られる点から、単分散性ポリマー微粒子(X)と金属アルコキシド(Y)との質量割合(有効成分として)が5:1〜1:5になるように混合することが好ましい。
【0073】
金属酸化物(Y’)からなる被膜で被覆された単分散性ポリマー微粒子(X)は、ろ過、遠心分離や、凍結乾燥、エバポレータ等の操作によって溶媒を除去した後、焼成過程に供される。
【0074】
〔焼成工程〕
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造における第二段階は、前記の様に、単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)の被膜を形成した後、焼成によって該ポリマー微粒子(X)を除去しつつ、その一部を炭化させてカーボンとし金属酸化物(Y’)の被膜と複合化させる工程である。
【0075】
焼成温度の選択によって、金属酸化物(Y’)と複合化するカーボンの含有率を調整することができるので、単分散性ポリマー微粒子(X)上に金属酸化物(Y’)からなる被膜を形成した同じ粒子から、異なる発色を示すカーボン含有金属酸化物中空粒子を得ることが可能である。
【0076】
焼成温度は、原料として用いた単分散性ポリマー微粒子(X)や金属アルコキシド(Y)の種類や目的によって、250〜1300℃の温度範囲から適宜選択でき、単分散性ポリマー微粒子(X)や金属アルコキシド(Y)由来の有機成分が完全に分解消失しない条件で焼成を行えば良い。有機成分が完全に分解消失しない条件は、例えば熱重量分析などを用いて、予め加熱分解挙動について測定しておくことによって設定することができる。
【0077】
さらに、焼成時の雰囲気を空気存在下から、窒素下、アルゴン下等に変えることによって、単分散性ポリマー微粒子(X)−金属酸化物(Y’)複合体中の有機成分を効率良く炭化させ、金属酸化物(Y’)とカーボンとを複合化させる方法も有効である。雰囲気の変更は、目的によって、加熱焼成前に完全に雰囲気を交換して加熱焼成を行っても良いし、加熱段階で雰囲気を変更しても良い。
【0078】
焼成には、一般に知られているマッフル炉、雰囲気炉、赤外線炉等の各種の焼成炉の他、マイクロウェーヴオーブンや噴霧乾燥器も用いることができる。
【0079】
〔カーボン含有金属酸化物中空粒子〕
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子は、前記工程によって得られるものであり、目的に応じて、金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とする殻壁の厚さが5nm〜30nmで、平均粒径が50nm〜1000nmのものを調製可能であるが、中空構造を維持する充分な強度を有し、かつ、良好な発色性を有する点から、隔壁の厚さが10nm〜30nmで、平均粒径が150nm〜500nmのものがより好ましい。又、金属酸化物(Y’)としては、シリカであることが汎用性が高い点から好ましいものである。なお、本発明において、金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とするとは、焼成条件が甘いことによって単分散性ポリマー微粒子由来のカーボン以外の成分が若干含まれることがあること以外、意図的にその他の成分を併用しない限りにおいて、金属酸化物(Y’)とカーボンとからなる殻で形成されていることを示すものである。
【0080】
殻中におけるカーボンの質量割合は、1〜80質量%のものを作製可能であり、白色以外の発色性を効果的に有する点と、カーボン含有金属酸化物中空粒子の強度とのバランスに優れる点から5〜70質量%であることが好ましい。この質量割合は前記焼成過程において、焼成温度及び焼成雰囲気の設定により調整可能である。有機成分が完全に分解消失せずにカーボンとなって殻中に複合化される条件は、例えば熱重量分析などを用いて、予め加熱分解挙動について測定しておくことによって設定することができる。
【0081】
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の形態は、基本的に真球状であるが、表面の一部が窪んだ形態のものであっても良い。
【0082】
本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子の使用方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、コーティング・塗料等の分野においては、内部空孔による特異な光散乱特性、発色性を利用して、紙、繊維、皮革等への光輝着色、光沢、不透明度などの性能を付与するための着色剤、光散乱剤、光散乱助剤として、また中空構造による光拡散性や吸水性、吸油性を利用した化粧品への応用が可能であり、インクジェット受理層としても利用できる。さらに、中空構造のため、熱の伝導や音の伝導を抑制できるので、断熱材や断音材としても応用でき、また、同一体積での質量が小さくできるので軽量化剤としても利用できる。更にまた、内部に種々の化学物質を包含した化学物質保持剤としても用いることができ、化学物質徐放性放出剤、DDS材料としても利用できる。また、カーボンが複合化された中空構造であるため、物質吸着力にも優れ、種々の吸着剤としても利用可能であり、さらに、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の中空粒子は、構造安定性、化学的安定性に優れることから、工業的に特に有用であり、中空構造に基づく大きな表面積を利用した触媒、もしくは触媒担持体としての応用も期待される。この様な用途への使用にあたり、本発明のカーボン含有金属酸化物中空粒子が単分散であることは、該用途で要求される種々の性能を効率的に均一に発現させるためには有効であると考えられ、その有用性は高いものである。
【実施例】
【0083】
次に本発明をより詳細に説明するために実施例及び比較例を掲げるが、これらの説明によって本発明が何等限定されるものでないことは勿論である。以下、実施例中、金属アルコキシドのゾルゲル反応をその表面で行うことが可能な単分散性ポリマー微粒子(X)をテンプレート粒子と表記することがある。
【0084】
水性媒体中で溶媒和した親水性ポリマー層の確認は、日本電子株式会社製JNM−LA300を用いて、1H−NMRスペクトルを測定することにより行った。水に分散した状態での粒子の粒径測定は、大塚電子株式会社製の粒径測定装置FPAR−1000を用いて、動的光散乱法により測定した。水分散状態における粒子の表面電位の測定には、大塚電子株式会社製、ゼータ電位・粒径測定システムELS−Z2を用いた。
【0085】
微粒子の形状及び中空性の確認には、キーエンス社製三次元リアルサーフェスビュー顕微鏡VE−9800を用いたSEM観察を行い、中空粒子の殻の厚みは、日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡JEM−2200FSを用いて粒子構造の観察を行い、観察像から殻部の厚みを見積り、30個の測定値の平均値を殻の厚みとした。また、カーボン含有金属酸化物中空粒子中のカーボンは、日本電子株式会社製高分解能透過型電子顕微鏡JEM−2010MXを用いて確認した。単分散性ポリマー微粒子上に形成された金属酸化物の量、及びカーボン含有金属酸化物中空粒子中のカーボンの量は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、示差熱熱重量同時測定装置(EXSTAR6000 TG/DTA)を用いて測定した。
【0086】
中空粒子を構成する殻中の金属酸化物と複合化されたカーボンの存在は、レニショー社製のラマンレーザー顕微鏡を用いて確認を行った。カーボン含有金属酸化物中空粒子の発色性を確認する反射スペクトルの測定は、オーシャンフォトニクス社のUSB−4000スペクトロメータを用いて行った。
【0087】
〔単分散性ポリマー微粒子の合成例〕
合成例1(表面に親水性ポリマー層を有する単分散性ポリマー微粒子の合成)
2gのN−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)を溶解した水溶液300mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)12gを加え、さらに、アミノ基含有水溶性重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.15gを溶解した後、窒素フローしながら攪拌し、系中の酸素を除去した。この液を65℃、100rpmの撹拌速度で1時間攪拌することにより単分散性中空ポリマー粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径310nmの単分散真球状の粒子であった(図1)。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され(図2)、単分散性中空ポリマー粒子にはその外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚さは、25℃と50℃において動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約20nmであると考えられる(テンプレート粒子A)。
【0088】
合成例2〜7
撹拌速度を変更した以外は、合成例1と同じ条件で反応を行うことにより、表1の粒径を有する単分散性中空ポリマー粒子の分散液を得た。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され、単分散性中空ポリマー粒子にはその外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。
【0089】
【表1】
【0090】
(アミノ基の導入)
アミノ基導入例1
合成例2の方法で合成した、表面に親水性ポリマー層を有する単分散性ポリマー粒子Bの3質量%水溶液100mlに、ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミン SP−200)1質量%水溶液100mlを加えて3日間撹拌した後、透析及び遠心分離操作によって洗浄を行い、単分散粒子の表面にポリエチレンイミンを結合させたアミン修飾テンプレート粒子を得た。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルに加えて、2−3ppm付近にポリエチレンイミン由来のシグナルが観測され(図3)、ポリマー粒子表面にポリエチレンイミンが導入され、該ポリエチレンイミン層が溶媒中に溶解した状態であることが確認できた。該ポリエチレンイミン層の厚みは、ポリエチレンイミンの導入前と導入後の動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約30nmであった(アミノ基修飾テンプレート粒子1)。
【0091】
アミノ基導入例2〜4
導入例1と同様にして、表面に親水性ポリマー層を有する単分散性ポリマー微粒子の3質量%水溶液100質量部に、下表のアミノ基含有化合物0.5質量%水溶液100質量部を加えて撹拌した後、透析及び遠心分離操作によって洗浄を行い、単分散ポリマー微粒子の表面にアミノ基含有化合物を導入したアミノ基修飾テンプレート粒子を得た。アミノ基の導入は、反応前後の粒子の元素分析により、粒子組成中の窒素量が増加することから確認した。表2に表面修飾に用いたアミノ基含有分子と、修飾後のアミノ基の増加量をまとめた。
【0092】
尚、本実施例で用いたアミノ基導入分子について、以後、以下の略称を用いる。
ポリエチレンイミン:PEI
2−アミノエタンチオール:AET
L−システイン:Cys
L−アラニン:Ala
L−セリン:Ser
L−ロイシン:Leu
L−リシン:Lys
グリシン:Gly
【0093】
【表2】
【0094】
アミノ基導入例5〜11
導入例1と同様にして、単分散性ポリマー微粒子の表面に、表3のアミノ基含有化合物を導入して、アミノ基修飾テンプレート粒子を得た。アミノ基含有化合物の導入は、反応前後のテンプレート粒子のゼータ電位の変化によって確認を行った。
【0095】
【表3】
【0096】
合成例8
2gのN−イソプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)を溶解した水溶液300mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)12gを加え、さらに、水溶性重合開始剤として、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)0.15gを溶解した後、窒素フローしながら攪拌し、系中の酸素を除去した。この液を65℃で1時間攪拌することにより中空ポリマー粒子の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この微粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径300nmの単分散真球状の粒子であった。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され、中空ポリマー粒子の外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶解した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚みは、25℃と50℃において動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から約5nmであった。
【0097】
アミノ基導入例12
合成例8の方法で合成した、表面に親水性ポリマー層を有する単分散性中空ポリマー粒子の3質量%水溶液100mlに、ポリエチレンイミン(日本触媒製、エポミン SP−200)1質量%水溶液100mlを加えて3日間撹拌した後、透析及び遠心分離操作によって洗浄を行い、単分散粒子の表面にポリエチレンイミンを結合させたテンプレート粒子12を得た。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)由来のシグナルに加えて、2−3ppm付近にポリエチレンイミン由来のシグナルが観測され、粒子表面にポリエチレンイミンが導入され、該ポリエチレンイミン層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該ポリエチレンイミン層の厚みは、ポリエチレンイミンの導入前と導入後の動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約20nmであった。
【0098】
合成例9
1.3gのN,N−ジメチルアクリルアミド(株式会社興人製)を溶解した水溶液300mlにグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)9.4gを加え、さらに、水溶性重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.1gを溶解した後、窒素フローしながら攪拌し、系中の酸素を除去した。この液を65℃で1時間攪拌することによりテンプレート粒子13の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径250nmの単分散真球状の粒子であった。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリ(N、N−ジメチルアクリルアミド)由来のシグナルのみが観測され、粒子の外側に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚みは、乾燥状態と動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から約50nmであった。
【0099】
合成例10
水200ml中に、N−イソプロピルアクリルアミド2.6g、スチレン16gを加え、70℃で窒素気流下、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.25gを溶解した水20mlを加えて、撹拌しながら17時間重合させて粒子14の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径270nmの単分散真球状の粒子であった。25℃と50℃において、動的光散乱法によって求めた平均粒径に差は無く、粒子表面に、水和する親水性層の存在は確認できなかった。
【0100】
合成例11
合成例10で得られた、N−イソプロピルアクリルアミドとスチレンとの共重合体からなる粒子14の3.6質量%水溶液100mlに、N−イソプロピルアクリルアミド0.8g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.08gを溶解した水40mlを加え、70℃で窒素気流下、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製)0.08gを溶解した水10mlを加えて、撹拌しながら4時間重合させて、粒子14の表面に、架橋されたポリN−イソプロピルアクリルアミドのシェル層を有するコア−シェル型のテンプレート粒子15の分散液を得た。この粒子の形状をSEM観察したところ、乾燥状態では、コア粒子(粒子14)と同じ平均粒径270nmの単分散真球状の粒子であった。溶媒中に溶解したテンプレート粒子表面の親水性ポリマー層の厚みは、25℃と50℃における動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約15nmであった。
【0101】
合成例12
水200ml中に、N−イソプロピルアクリルアミド2.6g、スチレン16gを加え、70℃で窒素気流下、過硫酸カリウム(和光純薬工業株式会社製)0.25gを溶解した水20mlを加えて、撹拌しながら17時間重合させて粒子16の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径280nmの単分散真球状の粒子であった。25℃と50℃において、動的光散乱法によって求めた平均粒径に差は無く、粒子表面に水和する親水性層の存在は確認できなかった。
【0102】
合成例13
ポリエチレンイミン(Across社製、Mw 60,000、50wt%水溶液)から水を除去した後、クロロホルム30mlに溶解した。この溶液にグリシジルメタクリレート(和光純薬工業株式会社製)0.28gを加えて1時間撹拌した後、水100mlを加え、エバポレータによりクロロホルムを除去した。さらに300mlの水を加え、塩酸により、溶液のpHを7に調整した。この溶液に16gのメタクリル酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を加え、窒素気流下で30分間攪拌した。この後、t−ブチルハイドロパーオキサイド(Aldrich社製、70wt%水溶液)9mgを溶解した水溶液20mlを加え、80℃で2時間攪拌(300rpm)することにより、ポリメチルメタクリレートコア、ポリエチレンイミンのシェル層を有するコア−シェル型のテンプレート粒子17の分散液を得た。この分散液を遠心分離操作によって洗浄した後、この粒子の形状をSEM観察したところ、平均粒径170nmの単分散真球状の粒子であった(図4)。この粒子を重水中に分散させて1H−NMRの測定を行ったところ、ポリエチレンイミン由来のシグナルのみが観測され(図5)、テンプレート粒子上に親水性ポリマー層が存在し、該親水性ポリマー層が溶媒中に溶媒和した状態であることが確認できた。該親水性ポリマー層の厚みは、乾燥状態と動的光散乱法によって求めた平均粒径の差から、約70nmであった。
【0103】
実施例1(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例およびアミノ基導入例に従って作製された、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基をともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子の5質量%水分散液100質量部と、シリカ源としてMS−51(コルコート株式会社製)の50質量%エタノール溶液12.5質量部を混合し、3時間撹拌することによってテンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させた。この後、遠心分離操作により複合化した粒子の洗浄を行い、乾燥の後、電気炉を用いて空気存在下500℃で30分間焼成することにより、鮮やかな発色を示すカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化したシリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン含有金属酸化物中空粒子の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色について表4にまとめた。
【0104】
【表4】
【0105】
得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた〔粒子5を用いて作製した中空粒子のラマンスペクトルを例示(図6)〕。この粒子は、SEM観察により単分散で球形の形状であり(図7)、押し潰して観察すると中身が中空の粒子であることが確認できた(図8)。
【0106】
実施例2
テンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させる段階で、テンプレート粒子とシリカ源のエタノール溶液の混合時間を、3時間から、10、30、60、90分に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行いシリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色ついて表5にまとめた。
【0107】
【表5】
【0108】
得られた中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、中身が中空の粒子であることが確認できた〔テンプレート粒子3(AET修飾粒子)を用いて攪拌時間30,60,90分で作製した試料のSEM観察像を例示(図9)、押しつけて、一部を破壊〕。さらにTEM観察により、粒子の中空構造を確認できた(図10)。
【0109】
実施例3
テンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させる段階で、テンプレート粒子の5%水分散液100質量部と混合するシリカ源のエタノール溶液の添加量を、12.5質量部から、6.25質量部、25質量部、37.5質量部に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色について表6にまとめた。
【0110】
【表6】
【0111】
実施例4
焼成時の雰囲気を、空気存在下から、窒素雰囲気下に変えた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。表7に、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色についてまとめた。
【0112】
【表7】
【0113】
得られたシリカ中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、中身が中空の粒子であることが確認できた。さらに高分解能TEM観察により、粒子の中空構造及びシリカ殻の内外層に鱗状のカーボンが複合化されていることを確認できた(図11)。
【0114】
実施例5
焼成時の雰囲気を、空気存在下から窒素雰囲気下に変え、かつ、焼成温度を500℃から800℃に変えた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなるカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。表8に、得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子の示す発色、中空粒子中の複合化カーボン量、殻厚についてまとめた。
【0115】
【表8】
【0116】
得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、一部の破壊した粒子の形態から、中身が中空の粒子であることが確認できた。粒子6を用いて作製した中空粒子の可視光反射スペクトル測定より、焼成温度や焼成雰囲気を空気存在下から窒素下に変更することによって(実施例1、4、5において、粒子6を用いて作製した中空粒子の反射スペクトルを例示)、同じシリカ−テンプレート粒子の焼成物でも、異なった発色を示すことが確認できた(図12)。
【0117】
実施例6(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例1に従って作製された、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層とアミノ基、さらにカルボキシル基をともに表面に有する単分散性ポリマー微粒子の3%水分散液100質量部と、シリカ源としてMS−51の50質量%エタノール溶液7.3質量部を混合し、3時間撹拌することによってテンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させた。この後、遠心分離操作により複合化した粒子の洗浄を行った。乾燥後、電気炉を用いて空気存在下500℃で30分間焼成することにより、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる球状の中空粒子を得た。シリカ量(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色について表9にまとめた。
【0118】
【表9】
【0119】
得られたカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルを測定すると、カーボン由来のピークが現れ(1354、1548cm−1付近)、複合化されたカーボンの存在が確認できた。これらの粒子は、SEM観察により、単分散で球形の形状であり、一部の破壊した粒子の形態から、中身が中空の粒子であることが確認できた。
【0120】
実施例7(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
シリカ源として、MS−51の代わりに、MS−51と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM−403)の1:1混合物を用いた以外は、実施例6と同様にしてカーボン含有金属酸化物中空粒子の作製を行った。表10に、テンプレート粒子上に複合化されたシリカ(=シリカ層質量/シリカ層複合化テンプレート粒子質量)及び、焼成後に得られた中空粒子のシリカ層膜厚、カーボン複合化シリカ中空粒子中の複合カーボン量(=カーボン質量/カーボン複合化シリカ中空粒子質量)、発色についてまとめた。
【0121】
【表10】
【0122】
比較例1
テンプレート粒子として、合成例8で作製した表面にアミノ基を持たないポリマー粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、500℃の焼成によって粒子は完全に消失し中空粒子を得ることはできなかった。
【0123】
実施例8
テンプレート粒子として、アミノ基導入例12で作製した、テンプレート粒子12を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、11.2%であった。このカーボン複合化シリカ中空粒子は黄緑色を示し、その平均殻厚は8nmで複合カーボン量は20.4%であった
【0124】
実施例9
テンプレート粒子として、合成例9で合成した粒子13を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、3.5%であった。このカーボン含有金属酸化物中空粒子は濃紫色を示し、その平均殻厚は5nmで複合カーボン量は51.2%であった。
【0125】
比較例2
テンプレート粒子として、前記合成例10に従って作製された、水性媒体に溶媒和する親水性ポリマー層が無く、開始剤残基のアミノ基を表面に有する単分散性ポリマー微粒子14を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、シリカ中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、15.5%であった。この中空粒子は着色せず、白色で、ラマン散乱スペクトルの測定でも、カーボンの存在は確認できなかった。
【0126】
実施例10
前記合成例11に従って作製された、表面に親水性ポリマーシェル層を有し、開始剤残基のアミノ基を表面に有する単分散性ポリマー微粒子15を用いた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる濃紫色の中空粒子を得た。このカーボン含有金属酸化物中空粒子の平均殻厚は12nmで、複合カーボン量は41.4%であった。
【0127】
比較例3
テンプレート粒子として、合成例12で作製した、表面にアミノ基を持たないポリマー粒子16を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、500℃の焼成によって粒子は完全に消失し、中空粒子を得ることはできなかった。
【0128】
実施例11(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例13に従って作製された、ポリエチレンイミン層を表面に有する単分散性ポリマー微粒子17を用いた以外は、実施例1と同様にして、シリカとカーボンを複合化させた殻壁からなる濃褐色のカーボン含有金属酸化物中空粒子を得た。テンプレート粒子上に複合化されたシリカの量は、30.7%であった。この中空粒子の平均殻厚は25nmで、複合カーボン量は1.1%であった。
【0129】
実施例12(テンプレート粒子上への金属酸化物被膜の形成)
前記合成例1、アミノ基の導入例1に従って作製された、ポリエチレンイミン層を表面に有する単分散性ポリマー微粒子の8%水分散液100質量部と、酸化チタン源としてチタニウム(IV)ビス(アンモニウムラクテート)ジハイドロオキサイド(アルドリッチ社製)の25質量%水溶液100質量部とを混合し、30分撹拌することによってテンプレート粒子上に金属酸化物被膜を形成させた後、遠心分離操作により複合化した粒子の洗浄を行った。テンプレート粒子上に複合化された酸化チタンの量は、2.7%であった。
【0130】
(焼成による金属酸化物中空粒子の作製)
表面にチタンを複合化させたポリマーテンプレート微粒子を乾燥した後、電気炉を用いて空気存在下500℃で30分間焼成することにより、酸化チタンとカーボンを複合化させた殻壁からなる薄水色の中空粒子を得た。このカーボン複合化シリカ中空粒子の平均殻厚は5nmで、複合カーボン量は3.1%であった。また、ラマンスペクトルより、この酸化チタンは、アナターゼ型結晶であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】合成例1で得られた単分散性ポリマー微粒子のSEM観察像である。
【図2】合成例1で得られた単分散性ポリマー微粒子を重水に分散して測定した1H−NMRスペクトルである。
【図3】導入例1で得られたテンプレート粒子1を重水に分散して測定した1H−NMRスペクトルである。
【図4】合成例13で得られたテンプレート粒子17のSEM観察像である。
【図5】合成例13で得られたテンプレート粒子17を重水に分散して測定した1H−NMRスペクトルである。
【図6】実施例1において、粒子5を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のラマンスペクトルである。
【図7】実施例1において、粒子5を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のSEM観察像である。
【図8】実施例1において、粒子5を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のSEM観察像である。
【図9】実施例2において、粒子3を用いて異なる攪拌時間で作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のSEM観察像である。
【図10】実施例2において、粒子3を用いて攪拌時間90分の条件で作製したカーボン複合化中空粒子のTEM観察像である。
【図11】実施例4で得られた、粒子6を用いて作製したカーボン含有金属酸化物中空粒子のTEM観察像である。
【図12】実施例1、実施例4、及び実施例5において、粒子6を用いて、異なる焼成条件で作製されたカーボン複合化シリカ中空粒子の反射スペクトルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散液と、金属アルコキシド(Y)の溶液とを混合し、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応を単分散性ポリマー微粒子(X)の表面上で行う工程、
(II)(I)の工程で得られた、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応で得られた金属酸化物(Y’)で被覆された単分散性ポリマー微粒子(X)を単離し、焼成する工程、
を有することを特徴とする、カーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)が、さらに、カルボキシ基(x3)を有する粒子である請求項1記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)の平均粒子径が50nm〜1000nmの粒子である請求項1又は2記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(I)で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)が、ラジカル重合性の水溶性単量体(α1)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(α2)とを含有する単量体群(α)を、アミノ基含有開始剤を用いて重合して得られる共重合体を主構成成分とする殻壁からなり、且つ該殻壁の厚さが5nm〜80nmである中空ポリマー粒子である請求項1〜3の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(I)で用いる金属アルコキシド(Y)が、ケイ素を金属種として有する金属アルコキシドである請求項1〜4の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(I)における単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散液において、当該単分散性ポリマー微粒子(X)の濃度が1〜40質量%であり、金属アルコキシド(Y)の溶液の濃度が10〜90質量%であり、且つ、単分散性ポリマー微粒子(X)と金属アルコキシド(Y)との質量割合が有効成分として5:1〜1:5になるように混合する請求項1〜5の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記工程(I)におけるゾルゲル反応時間が1〜3時間である請求項1〜6の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項8】
金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とする殻からなり、殻壁の厚さが5nm〜30nmで、且つ平均粒子径が50nm〜1000nmの単分散性中空粒子であることを特徴とするカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【請求項9】
前記殻中におけるカーボンの質量割合が5〜80質量%である請求項8記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【請求項10】
前記金属酸化物(Y’)がシリカである請求項8又は9記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【請求項11】
白色以外の発色性を有する請求項8〜10の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【請求項1】
(I)水性媒体に溶媒和可能な親水性ポリマー層(x1)とアミノ基(x2)とを有する単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散液と、金属アルコキシド(Y)の溶液とを混合し、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応を単分散性ポリマー微粒子(X)の表面上で行う工程、
(II)(I)の工程で得られた、金属アルコキシド(Y)のゾルゲル反応で得られた金属酸化物(Y’)で被覆された単分散性ポリマー微粒子(X)を単離し、焼成する工程、
を有することを特徴とする、カーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)が、さらに、カルボキシ基(x3)を有する粒子である請求項1記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)の平均粒子径が50nm〜1000nmの粒子である請求項1又は2記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項4】
前記工程(I)で用いる単分散性ポリマー微粒子(X)が、ラジカル重合性の水溶性単量体(α1)と、ラジカル重合性の非水溶性単量体(α2)とを含有する単量体群(α)を、アミノ基含有開始剤を用いて重合して得られる共重合体を主構成成分とする殻壁からなり、且つ該殻壁の厚さが5nm〜80nmである中空ポリマー粒子である請求項1〜3の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程(I)で用いる金属アルコキシド(Y)が、ケイ素を金属種として有する金属アルコキシドである請求項1〜4の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項6】
前記工程(I)における単分散性ポリマー微粒子(X)の水性分散液において、当該単分散性ポリマー微粒子(X)の濃度が1〜40質量%であり、金属アルコキシド(Y)の溶液の濃度が10〜90質量%であり、且つ、単分散性ポリマー微粒子(X)と金属アルコキシド(Y)との質量割合が有効成分として5:1〜1:5になるように混合する請求項1〜5の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記工程(I)におけるゾルゲル反応時間が1〜3時間である請求項1〜6の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子の製造方法。
【請求項8】
金属酸化物(Y’)とカーボンとを主構成成分とする殻からなり、殻壁の厚さが5nm〜30nmで、且つ平均粒子径が50nm〜1000nmの単分散性中空粒子であることを特徴とするカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【請求項9】
前記殻中におけるカーボンの質量割合が5〜80質量%である請求項8記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【請求項10】
前記金属酸化物(Y’)がシリカである請求項8又は9記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【請求項11】
白色以外の発色性を有する請求項8〜10の何れか1項記載のカーボン含有金属酸化物中空粒子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−105840(P2010−105840A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278155(P2008−278155)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【出願人】(000173751)財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]