説明

ガイドワイヤ

【課題】先端側の第1ワイヤと基端側の第2ワイヤとの連結部への応力集中を防止または緩和し、強度および操作性に優れたガイドワイヤを提供すること。
【解決手段】ガイドワイヤは、先端側に配置され、金属材料で構成されたた線状の第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置され、金属材料で構成された線状の第2ワイヤ3と、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが溶接により連結された溶接部14とを有する。また、第1ワイヤ2は、第2ワイヤ3の構成材料より弾性率が小さい材料で構成されている。また、溶接部14には、外周方向に突出する突出部15が形成されており、突出部15の最大外径部から外れた位置に、溶接部14の溶接面が位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤ、特に血管のような体腔内にカテーテルを導入する際に用いられるガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤは、例えばPTCA術(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty:経皮的冠状動脈血管形成術)のような、外科的手術が困難な部位の治療、または人体への低侵襲を目的とした治療や、心臓血管造影などの検査に用いられるカテーテルを誘導するのに使用される。PTCA術に用いられるガイドワイヤは、ガイドワイヤの先端をバルーンカテーテルの先端より突出させた状態にて、バルーンカテーテルと共に目的部位である血管狭窄部付近まで挿入され、バルーンカテーテルの先端部を血管狭窄部付近まで誘導する。
【0003】
血管は、複雑に湾曲しており、バルーンカテーテルを血管に挿入する際に用いるガイドワイヤには、適度の曲げに対する柔軟性および復元性、基端部における操作を先端側に伝達するための押し込み性およびトルク伝達性(これらを総称して「操作性」という)、さらには耐キンク性(耐折れ曲がり性)等が要求される。それらの特性の内、適度の柔軟性を得るための構造として、ガイドワイヤの細い先端芯材の回りに曲げに対する柔軟性を有する金属コイルを備えたものや、柔軟性および復元性を付与するためのガイドワイヤの芯材にNi−Ti等の超弾性線を用いたものがある。
【0004】
従来のガイドワイヤは、芯材が実質的に1種の材料から構成されており、ガイドワイヤの操作性を高めるために、比較的弾性率の高い材料が用いられ、その影響としてガイドワイヤ先端部の柔軟性は失われている。また、ガイドワイヤの先端部の柔軟性を得るために、比較的弾性率の低い材料を用いると、ガイドワイヤの基端側における操作性が失われる。このように、必要とされる柔軟性および操作性を、1種の芯材で満たすことは困難とされていた。
【0005】
このような欠点を改良するため、例えば芯材にNi−Ti合金線を用い、その先端側と基端側とに異なった条件で熱処理を施し、先端部の柔軟性を高め、基端側の剛性を高めたガイドワイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような熱処理による柔軟性の制御には限界があり、先端部では十分な柔軟性が得られても、基端側では必ずしも満足する剛性が得られないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−171570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、先端側の第1ワイヤと基端側の第2ワイヤとの連結部への応力集中を防止または緩和し、強度および操作性に優れたガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(3)の本発明により達成される。
(1) 先端側に配置され、金属材料で構成された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい金属材料で構成された線状の第2ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、溶接により連結され、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部には、外周方向に突出する突出部が形成されており、
前記突出部の最大外径部から外れた位置に、前記溶接部の溶接面が位置していることを特徴とするガイドワイヤ。
【0009】
(2) 先端側に配置され、金属材料で構成された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい金属材料で構成された線状の第2ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、溶接により連結され、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部には、外周方向に突出する突出部が形成されており、
前記溶接部の溶接面は、前記突出部内において先端側または基端側に偏った位置にあることを特徴とするガイドワイヤ。
【0010】
(3) 前記第1ワイヤは、Ni−Ti系合金により構成され、
前記第2ワイヤは、ステンレス鋼またはコバルト系合金により構成されている上記(1)または(2)に記載のガイドワイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、先端側に配置された第1ワイヤと、第1ワイヤの基端側に配置された第2ワイヤとを設けたことにより、操作性に優れたガイドワイヤを提供することができる。特に、金属材料で構成された第1ワイヤと、第1ワイヤより弾性率の大きい材料で金属材料で構成された第2ワイヤとを設けたことにより、柔軟性に優れた先端部と剛性に富んだ基端部とを有し、押し込み性、トルク伝達性および追従性に優れたガイドワイヤが構成できる。
【0012】
また、第1ワイヤと第2ワイヤとを溶接により連結し、この溶接部に突出部を形成したことにより、連結部(溶接部)の結合強度が高く、第2ワイヤから第1ワイヤへねじりトルクや押し込み力を確実に伝達することができる。
【0013】
また、突出部の最大外径部から外れた位置に、溶接部の溶接面を位置させることにより、溶接部への応力集中を防止または緩和することができる。よって、第2ワイヤから第1ワイヤへねじりトルクや押し込み力が作用した際に、溶接部への応力集中による溶接部の破損をより確実に防止することができる。
【0014】
このように、本発明は、溶接部への応力集中による溶接部の破損の防止と、円滑な移動とを両立している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガイドワイヤの構成例を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すガイドワイヤにおける第1ワイヤと第2ワイヤとを接続する手順を示す図である。
【図3】図1に示すガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。
【図4】図1に示すガイドワイヤの使用例を説明するための模式図である。
【図5】ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。
【図6】ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。
【図7】ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。
【図8】ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。
【図9】ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。
【図10】ガイドワイヤにおける突出部の形状の例を示す縦断面図である。
【図11】ガイドワイヤにおける突出部の形状の例を示す縦断面図である。
【図12】ガイドワイヤにおける突出部の形状の例を示す縦断面図である。
【図13】本発明のガイドワイヤの好適な実施形態を示す縦断面図である。
【図14】ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、ガイドワイヤの構成例を示す縦断面図、図2は、図1に示すガイドワイヤにおける第1ワイヤと第2ワイヤとを接続する手順を示す図である。なお、説明の都合上、図1中の右側を「基端」、左側を「先端」という。また、図1、図2中では、見易くするため、ガイドワイヤの長さ方向を短縮し、ガイドワイヤの太さ方向を誇張して模式的に図示したものであり、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは大きく異なる(後述する図5〜図14についても同様)。
【0018】
図1に示すガイドワイヤ1Aは、カテーテルに挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3と、螺旋状のコイル4とを有している。ガイドワイヤ1Aの全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。また、ガイドワイヤ1Aの外径は、特に限定されないが、通常、0.2〜1.2mm程度であるのが好ましい。
【0019】
第1ワイヤ2は、弾性を有する線材である。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
【0020】
図示の構成では、第1ワイヤ2は、先端方向へ向かって外径が漸減する外径漸減部16を有している。これにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1Aは、先端部に良好な柔軟性を得て、血管への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
【0021】
外径漸減部16の長さ(図1中のLで示す長さ)は、特に限定されないが、10〜1000mm程度であるのが好ましく、20〜300mm程度であるのがより好ましい。Lが前記範囲にあると、長手方向に沿った剛性の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。
【0022】
図示の構成では、外径漸減部16は、その外径が先端方向に向かってほぼ一定の減少率で連続的に減少するテーパ状をなしている。換言すれば、外径漸減部16のテーパ角度は、長手方向に沿ってほぼ一定になっている。これにより、図示の構成のガイドワイヤ1Aでは、長手方向に沿った剛性の変化をより緩やか(滑らか)にすることができる。なお、このような構成と異なり、外径漸減部16の先端方向に向かっての外径の減少率(外径漸減部16のテーパ角度)は、長手方向に沿って変化していても良く、例えば、外径の減少率が比較的大きい個所と比較的小さい個所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。なお、その場合、外径漸減部16の先端方向に向かっての外径の減少率がゼロになる個所があってもよい。
【0023】
第1ワイヤ2の構成材料は、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等)、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む。)などの各種金属材料を使用することができるが、超弾性合金であるのが好ましい。超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに復元性があり、曲がり癖が付き難いので、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1Aは、その先端側の部分に十分な曲げに対する柔軟性と復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1Aの使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
【0024】
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線がいずれの形状のものも含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
【0025】
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。
【0026】
第1ワイヤ2の基端部には、第2ワイヤ3の先端部が連結(接続)されている。第2ワイヤ3は、弾性を有する線材である。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましい。
【0027】
第2ワイヤ3は、通常、第1ワイヤ2とは、異なる弾性率(ヤング率(縦弾性係数)、剛性率(横弾性係数)、体積弾性率)を有する材料で構成されている。このように、異なる弾性率を有するワイヤを接合して用いることにより、ガイドワイヤ1Aは、操作性に優れたものとなる。
【0028】
また、第1ワイヤおよび/または第2ワイヤは、異なる材料にて内・外層を形成する等、いわゆる複合材料にて構成され得る。このような場合においても、第1ワイヤよりも第2ワイヤの剛性のほうが高いことが好ましい。
【0029】
第2ワイヤ3の構成材料(素材)は、特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等SUSの全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性合金などの各種金属材料を使用することができる。
【0030】
この中でも、コバルト系合金は、ワイヤとしたときの弾性率が高く、かつ適度な弾性限度を有している。このため、コバルト系合金で構成された第2ワイヤ3は、特に優れたトルク伝達性を有し、座屈等の問題を極めて生じ難い。コバルト系合金としては、構成元素としてCoを含むものであれば、いかなるものを用いてもよいが、Coを主成分として含むもの(Co基合金:合金を構成する元素中で、Coの含有率が重量比で最も多い合金)が好ましく、Co−Ni−Cr系合金を用いるのがより好ましい。このような組成の合金を、第2ワイヤ3の構成材料として用いることにより、前述した効果がさらに顕著なものとなる。また、このような組成の合金は、常温における変形においても可塑性を有するため、例えば、使用時等に所望の形状に容易に変形することができる。また、このような組成の合金は、弾性係数が高く、かつ高弾性限度としても冷間成形可能で、高弾性限度であることにより、座屈の発生を十分に防止しつつ、小径化することができ、所定部位に挿入するのに十分な柔軟性と剛性を備えるものとすることができる。
【0031】
Co−Ni−Cr系合金としては、例えば、28〜50wt%Co−10〜30wt%Ni−10〜30wt%Cr−残部Feの組成からなる合金や、その一部が他の元素(置換元素)で置換された合金等が好ましい。置換元素の含有は、その種類に応じた固有の効果を発揮する。例えば、置換元素として、Ti、Nb、Ta、Be、Moから選択される少なくとも1種を含むことにより、第2ワイヤ3の強度のさらなる向上等を図ることができる。なお、Co、Ni、Cr以外の元素を含む場合、その(置換元素全体の)含有量は30wt%以下であるのが好ましい。
【0032】
また、Co、Ni、Crの一部は、他の元素で置換してもよい。例えば、Niの一部をMnで置換してもよい。これにより、例えば、加工性のさらなる改善等を図ることができる。また、Crの一部をMoおよび/またはWで置換してもよい。これにより、弾性限度のさらなる改善等を図ることができる。Co−Ni−Cr系合金の中でも、Moを含む、Co−Ni−Cr−Mo系合金が特に好ましい。
【0033】
Co−Ni−Cr系合金の具体的な組成としては、例えば、<1>40wt%Co−22wt%Ni−25wt%Cr−2wt%Mn−0.17wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、<2>40wt%Co−15wt%Ni−20wt%Cr−2wt%Mn−7wt%Mo−0.15wt%C−0.03wt%Be−残部Fe、<3>42wt%Co−13wt%Ni−20wt%Cr−1.6wt%Mn−2wt%Mo−2.8wt%W−0.2wt%C−0.04wt%Be−残部Fe、<4>45wt%Co−21wt%Ni−18wt%Cr−1wt%Mn−4wt%Mo−1wt%Ti−0.02wt%C−0.3wt%Be−残部Fe、<5>34wt%Co−21wt%Ni−14wt%Cr−0.5wt%Mn−6wt%Mo−2.5wt%Nb−0.5wt%Ta−残部Fe等が挙げられる。本発明でいうCo−Ni−Cr系合金とはこれらの合金を包含する概念である。
【0034】
また、第2ワイヤ3の構成材料として、ステンレス鋼を用いた場合、ガイドワイヤ1Aは、より優れた押し込み性およびトルク伝達性が得られる。
【0035】
また、本発明では、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを異種の合金で構成することが好ましく、また、第1ワイヤ2が、第2ワイヤ3の構成材料より弾性率が小さい材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1Aは、先端側の部分が優れた柔軟性を有するとともに、基端側の部分が剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)に富んだものとなる。その結果、ガイドワイヤ1Aは、優れた押し込み性やトルク伝達性を得て良好な操作性を確保しつつ、先端側においては良好な柔軟性、復元性を得て血管への追従性、安全性が向上する。
【0036】
また、第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3との具体的な組合せとしては、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成し、第2ワイヤ3をCo−Ni−Cr系合金またはステンレス鋼で構成することが特に好ましい。これにより、前述した効果はさらに顕著なものとなる。
【0037】
なお、図示の構成では、第2ワイヤは、ほぼ全長にわたってほぼ一定の外径を有するものであるが、その長手方向に外径が変化する部位を有するものであってもよい。
【0038】
また、第1ワイヤ2を構成する超弾性合金としてNi−Ti系合金を用いることが、先端側の柔軟性と復元性の点から好ましい。
【0039】
コイル4は、線材(細線)を螺旋状に巻回してなる部材であり、第1ワイヤ2の先端側の部分を覆うように設置されている。図示の構成では、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内側のほぼ中心部に挿通されている。また、第1ワイヤ2の先端側の部分は、コイル4の内面と非接触で挿通されている。なお、図示の構成では、コイル4は、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士の間にやや隙間が空いているが、図示と異なり、外力を付与しない状態で、螺旋状に巻回された線材同士が隙間なく密に配置されていてもよい。
【0040】
コイル4は、金属材料で構成されているのが好ましい。コイル4を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金等が挙げられる。特に、貴金属のようなX線不透過材料で構成した場合には、ガイドワイヤ1AにX線造影性が得られ、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。また、コイル4は、その先端側と基端側とを異なる材料で構成しても良い。例えば、先端側をX線不透過材料のコイル、基端側をX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼など)のコイルにて各々構成しても良い。なお、コイル4の全長は、特に限定されないが、5〜500mm程度であるのが好ましい。
【0041】
コイル4の基端部および先端部は、それぞれ、固定材料11および12により第1ワイヤ2に固定されている。また、コイル4の中間部(先端寄りの位置)は、固定材料13により第1ワイヤ2に固定されている。固定材料11、12および13は、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料11、12および13は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル4の固定方法は、固定材料によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管内壁の損傷を防止するために、固定材料12の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。
【0042】
図示の構成では、このようなコイル4が設置されていることにより、第1ワイヤ2は、コイル4に覆われて接触面積が少ないので、摺動抵抗を低減することができ、よって、ガイドワイヤ1Aの操作性がより向上する。
【0043】
なお、図示の構成の場合、コイル4は、線材の横断面が円形のものを用いているが、これに限らず、線材の断面が例えば楕円形、四角形(特に長方形)等のものであってもよい。
【0044】
このようなガイドワイヤ1Aでは、第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3とは、溶接により互いに連結(固定)されている。これにより、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接部(接続部)14は、高い結合強度(接合強度)が得られる。
【0045】
特に、図示の構成では、溶接部14に、外周方向に突出する突出部15が形成されている。このような突出部15が形成されることにより、第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3との接合面積が大きくなり、これらの接合強度は、特に高いものとなる。これにより、ガイドワイヤ1Aは、第2ワイヤ3からのねじりトルクや押し込み力が確実に第1ワイヤ2に伝達される。
【0046】
また、突出部15が形成されることにより、例えば、X線透視下で、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との溶接部14を容易に視認することが可能となる。その結果、X線透視像を確認することにより、血管内などにおけるガイドワイヤ1A、カテーテルの進行状況を容易かつ確実に把握することができ、施術時間の短縮、安全性の向上に寄与することができる。
【0047】
なお、図示の構成では、突出部15は、その縦断面における一方側(図1中上側)およびその反対側(図1中下側)の輪郭形状がそれぞれ略円弧状をなし、突出部15の最大外径部に溶接部14が位置している。これにより、溶接部14の溶接面の面積を大きくとることができ、より高い結合強度(溶接強度)が得られるという利点がある。また、ガイドワイヤ1Aが曲げられたときに、最大外径部分に溶接部14の溶接面があるために応力が突出部15の近くの外径の小さい部分に分散されて、溶接部14に集中することがない。なお、本発明では、突出部15の形状および突出部15に対する溶接部14の位置はこれに限定されないことは、言うまでもない。
【0048】
また、上述したように、第1ワイヤ2、第2ワイヤ3は、通常、異なる弾性率を有する材料で構成されている。このため、突出部15が設けられることにより、術者が、ガイドワイヤ1Aの弾性率が比較的大きく変化する部位を容易かつ確実に認識することが可能となる。その結果、ガイドワイヤ1Aは、操作性に優れたものとなり、施術時間の短縮、安全性の向上に寄与することができる。
【0049】
また、このような突出部15が形成されると、ガイドワイヤ1Aとともに用いられるカテーテルの内壁との接触面積を小さくすることができる。これにより、ガイドワイヤ1Aとカテーテルとを相対的に移動させる際の摩擦抵抗が低減され、摺動性が向上する。その結果、カテーテル内でのガイドワイヤ1Aの操作性が良好なものとなる。
【0050】
突出部15の高さは、特に限定されないが、0.001〜0.3mmであるのが好ましく、0.01〜0.05mmであるのがより好ましい。突出部15の高さが前記下限値未満であると、第1ワイヤ2、第2ワイヤ3の構成材料などによっては、前述した効果が十分に発揮されない可能性がある。一方、突出部15の高さが前記上限値を超えると、バルーンカテーテルに挿入するルーメンの内径が決まっているので、突出部15の高さと比較して、基端側の第2ワイヤ3の外径を細くせざるを得なくなり、第2ワイヤ3の物性を十分に発揮するのが困難になる場合がある。
【0051】
図示の構成では、第1ワイヤ2の第2ワイヤ3に対する接続端面21と、第2ワイヤ3の第1ワイヤ2に対する接続端面31は、それぞれ、両ワイヤの軸方向(長手方向)にほぼ垂直な平面になっている。これにより、接続端面21、31を形成するための加工が極めて容易であり、ガイドワイヤ1Aの製造工程を複雑化することなく上記効果を達成することができる。
【0052】
なお、図示の構成と異なり、接続端面21、31は、両ワイヤの軸方向(長手方向)に垂直な平面に対し傾斜していてもよく、また、凹面または凸面になっていてもよい。
【0053】
第1ワイヤ2と、第2ワイヤ3との溶接の方法としては、特に限定されず、例えば、レーザを用いたスポット溶接、バットシーム溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられるが、突き合わせ抵抗溶接であるのが好ましい。これにより、溶接部14は、より高い結合強度が得られる。
【0054】
以下、図2を参照して、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを突き合わせ抵抗溶接の一例であるバットシーム溶接により接合する場合の手順について説明する。同図には、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とをバットシーム溶接により接合する場合の手順<1>〜<3>が示されている。
【0055】
手順<1>では、図示しないバット溶接機に固定(装着)された第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とが示される。
【0056】
手順<2>にて、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは、バット溶接機によって、所定の電圧を印加されながら第1ワイヤ2の基端側の接続端面21と第2ワイヤ3の先端側の接続端面31とが加圧接触される。この加圧接触により、接触部分には溶融層(溶接面)が形成され、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは強固に接続される。この際、溶接部14に、外周方向に突出した突出部15が形成される。突出部15の大きさ(高さ)は、例えば、印加電圧や、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との押し付け圧力などを調節することにより、コントロールすることができる。また、突出部15の大きさ(高さ)は、研磨などにより調整してもよい。
【0057】
次いで、手順<3>にて、第1ワイヤ2の先端側を研磨して外径が先端方向に向かって漸減する外径漸減部16を形成する。
【0058】
図3および図4は、それぞれ、ガイドワイヤ1AをPTCA術に用いた場合における使用状態を示す図である。
【0059】
図3および図4中、符号40は大動脈弓、符号50は心臓の右冠状動脈、符号60は右冠状動脈開口部、符号70は血管狭窄部である。また、符号30は大腿動脈からガイドワイヤ1Aを確実に右冠状動脈に導くためのガイディングカテーテル、符号20はその先端部分に拡張・収縮自在なバルーン201を有する狭窄部拡張用のバルーンカテーテルである。
【0060】
図3に示すように、ガイドワイヤ1Aの先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入する。さらに、ガイドワイヤ1Aを進め、先端から右冠状動脈内に挿入し、先端が血管狭窄部70を超えた位置で停止する。これにより、バルーンカテーテル20の通路が確保される。なお、このとき、ガイドワイヤ1Aの溶接部14は、大動脈弓40の基部付近(生体内)に位置している。
【0061】
次に、図4に示すように、ガイドワイヤ1Aの基端側から挿通されたバルーンカテーテル20の先端をガイディングカテーテル30の先端から突出させ、さらにガイドワイヤ1Aに沿って進め、右冠状動脈開口部60から右冠状動脈50内に挿入し、バルーンが血管狭窄部70の位置に到達したところで停止する。
【0062】
次に、バルーンカテーテル20の基端側からバルーン拡張用の流体を注入して、バルーン201を拡張させ、血管狭窄部70を拡張する。このようにすることによって、血管狭窄部70の血管に付着堆積しているコレステロール等の堆積物は物理的に押し広げられ、血流阻害が解消できる。
【0063】
図5は、ガイドワイヤの他の構成例を示す縦断面図である。以下、この図を参照して本発明のガイドワイヤの他の構成例について説明するが、前述したガイドワイヤとの相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0064】
図示の構成のガイドワイヤ1Bは、外径漸減部16が第2ワイヤ3に形成されており、第1ワイヤ2は、突出部15を除いて、ほぼ全長に渡りほぼ一定の外径を有している。すなわち、ガイドワイヤ1Bでは、溶接部14より基端側に外径漸減部16が設けられている。
【0065】
また、図示の構成のガイドワイヤ1Bでは、コイル4が、その基端側で突出部15に当接するように配されている。
【0066】
図6は、ガイドワイヤのさらに他の構成例を示す縦断面図である。以下、この図を参照してガイドワイヤの構成例について説明するが、前述したガイドワイヤとの相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0067】
図示の構成のガイドワイヤ1Fでは、第1ワイヤ2が、外径漸減部16と該外径漸減部16より基端側に設けられた外径漸減部18とを有している。このように、第1ワイヤ2(第2ワイヤ3)には、複数の部位に外径漸減部が形成されていてもよい。
【0068】
また、図示の構成のガイドワイヤ1Fでは、第2ワイヤ3が、その先端付近に外径漸減部16’を有している。すなわち、第2ワイヤ3は、その先端部付近に設けられた第1の部位と、該第1の部位より基端側に設けられかつ第1の部位よりも剛性の高い第2の部位とを有する。ガイドワイヤ1Fにおいては、外径漸減部16’が第1の部位を構成する。これにより、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との弾性移行が滑らかに変化するという効果が得られる。また、該第1の部位として外径漸減部16’の先端側に外径一定部を設けて外径漸減部16’と外径一定部とをあわせて第1の部位としてもよい。当該外径一定部は、第1ワイヤ2とほぼ同じ剛性を有することが好ましい。
【0069】
また、図示の構成のガイドワイヤ1Fでは、その外表面(外周面)側に、被覆層7を有している。このように、本発明のガイドワイヤは、その外表面(外周面)の全部または一部を覆う被覆層を有するものであってもよい。このような被覆層7は、種々の目的で形成することができるが、その一例として、ガイドワイヤ1Fの摩擦(摺動摩擦)を低減し、摺動性を向上させることによってガイドワイヤ1Fの操作性を向上させることがある。
【0070】
このような目的のためには、被覆層7は、摩擦を低減し得る材料で構成されているのが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1Fとともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1Fの操作性がより良好なものとなる。また、ガイドワイヤ1Fの摺動抵抗が低くなることで、ガイドワイヤ1Fをカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1Fのキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に溶接部付近におけるキンクやねじれをより確実に防止することができる。
【0071】
このような摩擦を低減し得る材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、シリコーンゴム、その他各種のエラストマー(例えば、ポリアミド系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー)またはこれらの複合材料が挙げられるが、そのなかでも特に、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)が好ましく、PTFEがより好ましい。
【0072】
また、摩擦を低減し得る材料の他の好ましい例としては、親水性材料または疎水性材料が挙げられる。これらのうちでも特に、親水性材料が好ましい。
【0073】
この親水性材料としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0074】
このような親水性材料は、多くの場合、湿潤(吸水)により潤滑性を発揮し、ガイドワイヤ1Fとともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する。これにより、ガイドワイヤ1Fの摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1Fの操作性がより良好なものとなる。
【0075】
このような被覆層7の形成箇所は、ガイドワイヤ1Fの全長でも、長手方向の一部でもよいが、溶接部14を覆うように、すなわち溶接部14を含む箇所に形成されているのが好ましい。
【0076】
被覆層7は、外径漸減部16’および突出部15を被覆して、実質的に均一な外径になっている。なお、使用上支障のないようななだらかな外径の変化も「実質的に均一な外径」に含むものとする。
【0077】
被覆層7の厚さは、特に限定されないが、通常は、厚さ(平均)が1〜20μm程度であるのが好ましく、2〜10μm程度であるのがより好ましい。被覆層7の厚さが薄すぎると、被覆層7の形成目的が十分に発揮されないことがあり、また、被覆層7の剥離が生じるおそれがあり、また、被覆層7の厚さが厚すぎると、ワイヤの物性を阻害することがあり、また被覆層7の剥離が生じるおそれがある。
【0078】
なお、図示の構成では、ガイドワイヤ本体(第1ワイヤ2、第2ワイヤ3、コイル4等)の外周面(表面)に、被覆層7の密着性を向上するための処理(化学処理、熱処理等)を施したり、被覆層7の密着性を向上し得る中間層を設けたりすることもできる。
【0079】
また、被覆層7は、各部位でほぼ一定の組成を有するものであってもよいし、異なる組成を有するものであってもよい。例えば、被覆層7は、少なくともコイル4を被覆する領域(第1被覆層)と、該領域より基端側の領域(第2被覆層)とで、構成材料が異なるものであってもよい。具体的には、第1被覆層が親水性材料にて構成され、第2被覆層が疎水性材料にて構成されるものであってもよい。また、第1被覆層、第2被覆層は、図示のように、両者が長手方向に連続して形成されたものであってもよいが、第1被覆層の基端と第2被覆層の先端とが離間していてもよく、あるいは、第1被覆層と第2被覆層とが部分的に重なっていてもよい。
【0080】
なお、このような被覆層(親水性材料または疎水性材料による被膜を含む)は、例えば、前述したような構成のガイドワイヤ等に設けられるものであってもよい。
【0081】
以上、ガイドワイヤを図示の構成例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ガイドワイヤを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0082】
例えば、図7、図8に示すガイドワイヤ(ガイドワイヤ1C、1D)のように、溶接部14以外の部位に、外周方向に突出する他の突出部(突出部15以外の突出部)17を有していてもよい。このような突出部17が形成されることにより、例えば、ガイドワイヤとともに用いられるカテーテルの内壁との接触面積をさらに小さくすることができる。これにより、ガイドワイヤとカテーテルとを相対的に移動させる際の摩擦抵抗が低減され、摺動性はさらに向上する。その結果、カテーテル内でのガイドワイヤの操作性は特に良好なものとなる。
【0083】
また、前述の構成例では、2つのワイヤ(第1ワイヤ2と第2ワイヤ3)の接合部を、1ヶ所にのみ有する構成について説明したが、接合部は、2ヶ所以上に形成されるものであってもよい。すなわち、ガイドワイヤは、第1ワイヤ、第2ワイヤ以外のワイヤを有するものであってもよい。例えば、図9に示すガイドワイヤ1Eのように、第2ワイヤ3の基端側に、第3ワイヤ5を有するものであってもよい。これにより、ガイドワイヤの長手方向の各部位において、弾性等の特性をより詳細に設定することができ、ガイドワイヤ全体としての操作性をさらに向上させることが可能となる。
【0084】
このガイドワイヤ1Eでは、第2ワイヤ3と第3ワイヤ5とが前記と同様の溶接部14を介して接合されており、この溶接部14には、好ましくは前述した突出部15と同様の突出部17が形成されている。
【0085】
また、前述した各構成例では、溶接部14は、コイル4の基端よりも基端側に位置しているものとして説明したが、溶接部14がコイル4の基端よりも先端側に位置していても良い。
【0086】
前述した各構成例のガイドワイヤにおいて、溶接部14に形成される突出部15は、種々の形状のものが挙げられる。以下、突出部15(または17)の形状の例について、図10〜図13を参照しつつ説明する。
【0087】
図10に示す突出部15は、縦断面における一方側(図中上方)およびその反対側(図中下方)の輪郭形状がそれぞれ台形をなすものである。すなわち、前述した各構成例では、突出部15は、縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状がそれぞれ凸状に湾曲した略円弧状をなすものであるが、これらの形状は、例えば、台形、三角形等の非円形(非円弧形状)でもよい。
【0088】
図10に示す形状では、突出部15の溶接部14付近、すなわち溶接部14を挟んでその基端側近傍および先端側近傍の領域(前記台形の上底に相当する部位)は、その外径がほぼ一定である。そして、この外径がほぼ一定の領域のほぼ中央に溶接部14が位置している。溶接部14は、突出部15の最も外径の大きい部分に位置している。このような構成とすることにより、溶接部14への応力集中を防止または緩和することができ、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、溶接部14への応力集中による溶接部14の破損をより確実に防止することができる。
なお、前述の外径がほぼ一定の領域に替えて、なだらかな円弧状であってもよい。
【0089】
図11〜図13に示す突出部15は、いずれも、溶接部14の溶接面(接続端面21、31)を境に基端側と先端側とが非対称の形状をなしている。
【0090】
図11に示す突出部15は、溶接部14の溶接面より先端側(第1ワイヤ2側)は、その縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状がそれぞれ前記各実施形態と同様の略円弧状をなし、溶接部14の溶接面より基端側(第2ワイヤ3側)は、その縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状がそれぞれ溶接部14から基端方向に向かってなだらかにかつ凹状に湾曲した湾曲形状をなしている。また、溶接部14は、突出部15の最も外径の大きい部分に位置している。
【0091】
このような構成とすることにより、剛性の移行がなだらかになるとともに、溶接部14の基端側部分への応力集中を防止または緩和することができ、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、応力集中による当該部分の破損、変形等をより確実に防止することができる。
【0092】
図12に示す突出部15は、前記図11とは逆であり、溶接部14の溶接面より基端側(第2ワイヤ3側)は、その縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状がそれぞれ前記各実施形態と同様の略円弧状をなし、溶接部14の溶接面より先端側(第1ワイヤ2側)は、その縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状がそれぞれ溶接部14から先端方向に向かってなだらかにかつ凹状に湾曲した湾曲形状をなしている。また、溶接部14は、突出部15の最も外径の大きい部分に位置している。
【0093】
このような構成とすることにより、溶接部14の先端側部分への応力集中を防止または緩和することができ、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、応力集中による当該部分の破損、変形等をより確実に防止することができる。
【0094】
もちろん、突出部15は、溶接部14の溶接面より先端側および基端側のいずれもが、その縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状がそれぞれ溶接部14から離間する方向に向かってなだらかにかつ凹状に湾曲した湾曲形状をなすものでもよい。
【0095】
次に、本発明のガイドワイヤの好適な実施形態について説明する。
図13は、本発明のガイドワイヤの好適な実施形態を示す縦断面図である。以下、この図を参照してガイドワイヤの好適な実施形態について説明するが、前述したガイドワイヤとの相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0096】
図13に示す突出部15は、その全体形状は、前記各構成例と同様の略円弧状をなすが、この突出部15内において、溶接部14の溶接面が基端側(第2ワイヤ3側)に偏った位置にある。なお、これとは逆に、突出部15内において、溶接部14の溶接面が先端側(第1ワイヤ2側)に偏った位置にあってもよい。
【0097】
このような構成とすることにより、溶接部14の溶接面が突出部15の軸方向中央部とならず、すなわち、溶接部14の溶接面が突出部15の最大外径部から外れた位置となるので、溶接部14への応力集中を防止または緩和することができ、よって、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、溶接部14への応力集中による溶接部14の破損をより確実に防止することができる。
【0098】
なお、上述したような溶接部14の溶接面が突出部15内で基端側または先端側に偏った位置にある構成は、例えば図10に示すような、突出部15の縦断面における一方側およびその反対側の輪郭形状が非円形(非円弧形状)のものについても適用することができる。
【0099】
以上のように、突出部15を、溶接部14の溶接面を境に基端側と先端側とが非対称の形状とすることにより、溶接部14への応力集中を防止または緩和することができ、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、溶接部14への応力集中による溶接部14の破損をより確実に防止することができるという優れた効果が発揮される。
【0100】
次に、ガイドワイヤの他の構成例について説明する。
図14は、ガイドワイヤの他の構成例を示す図である。以下、この図を参照してガイドワイヤの他の構成例について説明するが、前述したガイドワイヤとの相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0101】
図14に示すように、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との連結部(溶接部14)付近は、他所よりも細径化されており、この細径部19の長手方向の途中に溶接部14および突出部15が形成されている。また、図14に示されているように、細径部19は、第1ワイヤ2の基端側に形成された第1ワイヤ細径部191と、第2ワイヤ3の先端側に形成された第2ワイヤ細径部192とを有している。
【0102】
このような構成とすることにより、溶接部14への応力集中を防止または緩和することができ、第2ワイヤ3から第1ワイヤ2へねじりトルクや押し込み力が作用した際に、溶接部14への応力集中による溶接部14の破損をより確実に防止することができる。
【0103】
ここで、突出部15の最大外径は、第1ワイヤ細径部191より先端側および第2ワイヤ細径部192より基端側の各部位の外径に比べ、ほぼ等しいかまたはそれ以下であるのが好ましい。これにより、カテーテルに対するガイドワイヤの移動をより円滑に行うことができる。
【0104】
また、図14に示されているように、第1ワイヤ細径部191は、先端側に設けられ、外径が先端方向に向かって漸増する外径漸増部191aと、基端側に設けられ、外径が先端方向に向かって漸減する外径漸減部191bと、外径漸増部191aと外径漸減部191bとの間に設けられ、外径が長手方向に沿ってほぼ等しい外径一定部191cとで構成されている。
【0105】
同様に、第2ワイヤ細径部192は、先端側に設けられ、外径が先端方向に向かって漸増する外径漸増部192aと、基端側に設けられ、外径が先端方向に向かって漸減する外径漸減部192bと、外径漸増部192aと外径漸減部192bとの間に設けられ、外径が長手方向に沿ってほぼ一定の外径一定部192cとで構成されている。
【0106】
このような第1ワイヤ細径部191と、第2ワイヤ細径部192とは、溶接部14(つまり溶接面)に対して対称的に形成されている。
【0107】
なお、図14に示す構成では、突出部15の形状は、図10に示すものとほぼ等しいが、これに限らず、例えば図1または図5〜図13のいずれかに示す形状を適用してもよい。
【0108】
また、以上のような図11〜図14に示す構成は、前述した各構成例のうちのいずれの構成例に対し適用されてもよい。特に、図6に示す構成例では、突出部17に対し図11〜図14に示す構成を適用することもできる。
【符号の説明】
【0109】
1A〜1F ガイドワイヤ
2 第1ワイヤ
21 接続端面
3 第2ワイヤ
31 接続端面
4 コイル
5 第3ワイヤ
7 被覆層
11、12、13 固定材料
14 溶接部
15 突出部
16、16’ 外径漸減部
17 突出部
18 外径漸減部
19 細径部
191 第1ワイヤ細径部
192 第2ワイヤ細径部
191a、192a 外径漸増部
191b、192b 外径漸減部
191c、192c 外径一定部
20 バルーンカテーテル
201 バルーン
30 ガイディングカテーテル
40 大動脈弓
50 右冠状動脈
60 右冠状動脈開口部
70 血管狭窄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に配置され、金属材料で構成された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい金属材料で構成された線状の第2ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、溶接により連結され、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部には、外周方向に突出する突出部が形成されており、
前記突出部の最大外径部から外れた位置に、前記溶接部の溶接面が位置していることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
先端側に配置され、金属材料で構成された線状の第1ワイヤと、
前記第1ワイヤの基端側に配置され、前記第1ワイヤの構成材料より弾性率が大きい金属材料で構成された線状の第2ワイヤとを備え、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとは、溶接により連結され、
前記第1ワイヤと前記第2ワイヤとの溶接部には、外周方向に突出する突出部が形成されており、
前記溶接部の溶接面は、前記突出部内において先端側または基端側に偏った位置にあることを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項3】
前記第1ワイヤは、Ni−Ti系合金により構成され、
前記第2ワイヤは、ステンレス鋼またはコバルト系合金により構成されている請求項1または2に記載のガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−161271(P2011−161271A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120270(P2011−120270)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【分割の表示】特願2007−226909(P2007−226909)の分割
【原出願日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】