説明

ガイドワイヤ

【課題】
ガイドワイヤの最先端部の形状を最適化して、ガイドワイヤの血管閉塞病変部に対する優れた挿入性と通過性とを向上させ、且つ、生産性に優れたガイドワイヤを提供することを課題とする。
【解決手段】
ガイドワイヤ1は、コアシャフト2と、そのコアシャフト2の先端部を覆うコイル体3と、コイル体3の先端とコアシャフト2の先端とが金属ハンダによって固着させることで形成された最先端部5とを備えており、最先端部5は、先端方向に向って直線的に外径が減少している外径減少部5bと外径減少部5bの先端に位置する半球形状部6とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して、目的部位へ医療デバイス等を案内するために使用される種々のガイドワイヤが提案されてきた。また、近年では、虚血性疾患の原因となる血管閉塞病変部に対して、ガイドワイヤを用いた内科的な治療が多く行われるようになってきた。このような中、この血管閉塞病変部内に、細かな経路(以下、マイクロチャネルと記す)が存在していることが分かり、現在開発されているガイドワイヤには、この血管閉塞病変部内のマイクロチャネルに対するガイドワイヤの挿入性と通過性の向上が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたガイドワイヤは、その先端に溶接によって形成された先端チップを備え、この先端チップは、先端方向に向って外径が減少またはチゼル形状に形成されており、血管閉塞病変部に対しての挿入性の向上を図っている。
【0004】
また、特許文献2に記載されたガイドワイヤは、遠位端側先端チップの先端に突起を有しており、血管閉塞病変部に対しての挿入性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開第2007/0185415号明細書
【特許文献2】特開2007−089901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたガイドワイヤは、先端チップを溶接で形成している為、先端チップの周囲のコア又はコイルの材料を一度溶融させる必要があり、この溶接時の熱影響によってコア又はコイルが焼き鈍し状態となって機械的強度が大きく減少していた。また、コアやコイルが異種金属で形成されている場合には、コアの融点とコイルの融点とが異なる為、十分な溶接強度を得ることができず、先端チップの機械的強度をさらに減少させる原因となっていた。このため、特許文献1に記載のガイドワイヤを血管閉塞病変部に対して挿入した際には、ガイドワイヤの先端部が変形してしまい、血管閉塞病変部に対して十分な挿入性を有していなかった。
さらに、先端チップを球形に形成することが難しく、その後のテーパー形状を施す際に多くの作業時間を要する問題も有していた。
【0007】
また、引用文献2に記載されたガイドワイヤは、遠位端側先端チップの先端に設けられた突起部によって血管閉塞病変部への挿入性は高まるものの、この突起部の基端から先端チップの先端にかけての外径が急激に増加しているため、血管閉塞病変部に対する大きな抵抗となってしまい、その結果、特許文献2に記載のガイドワイヤは、血管閉塞病変部に対して十分な通過性を有していなかった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ガイドワイヤの血管閉塞病変部に対する優れた挿入性と通過性とを有し、且つ、生産性に優れたガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>本願請求項1に係る発明は、コアシャフトと、前記コアシャフトを覆うコイル体と、前記コイル体の先端と前記コアシャフトの先端とを金属ハンダによって固着した最先端部と、を備え、前記最先端部は、前記最先端部の先端方向に向って、前記最先端部の外径が減少している外径減少部と、前記外径減少部の先端に設けられた半球形状部と、を有し、前記半球形状部の基端の外径は、前記外径減少部の先端の外径と同一であるガイドワイヤを特徴とする。
【0010】
<2>請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガイドワイヤにおいて、前記外径減少部と前記半球形状部との境界部は、曲線を描くように前記外径減少部と前記半球形状部とが接続されているガイドワイヤを特徴とする。
【0011】
<3>請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤにおいて、前記コイル体は、前記コイル体の先端に向ってコイル外径が減少するテーパー部を有しており、前記外径減少部の外径の減少度は、前記テーパー部のコイル外径の減少度よりも大きいガイドワイヤを特徴とする。
【0012】
<4>請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記最先端部は、潤滑性コーティングが施されているガイドワイヤを特徴とする。
【0013】
<5>請求項5に係る発明は、請求項4に記載のガイドワイヤにおいて、湿潤状態において、前記半球形状部の生体組織との摩擦抵抗は、前記外径減少部の生体組織との摩擦抵抗よりも高いガイドワイヤを特徴とする。
【0014】
<6>請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記コイル体の内側に、前記コアシャフトを覆う多条コイル体を有し、前記多条コイル体の基端は前記コアシャフトに固着され、前記多条コイル体の先端は、前記コイル体の先端より先端側に配置され、前記外径減少部内で前記最先端部を介して前記コアシャフトに固着されているガイドワイヤを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
<1>請求項1に記載のガイドワイヤは、金属ハンダによって形成されているため、コアシャフトやコイルへの熱影響を低減することができ、ガイドワイヤの先端の機械的強度を減少させることがなく、血管閉塞病変部にガイドワイヤを挿入した場合においても、ガイドワイヤの先端部の変形を防止して、ガイドワイヤの血管閉塞病変部に対する挿入性を向上させることができる。また、金属ハンダを用いることで、ガイドワイヤの先端に容易に最先端部を形成することができ、生産性にも優れている。さらに、最先端部の先端に最先端部よりも外径の小さい半球形状部が設けられているので、血管閉塞病変部内のマイクロチャネルを捉えることができ、さらに、外径減少部から半球形状部に移行する際の外径が同一であるので、血管閉塞病変部内での引っ掛かりを防止して、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤの挿入性と通過性とを向上させることができる。
【0016】
<2>請求項2に記載のガイドワイヤは、外径減少部の先端と半球形状部の基端との境界部が曲線を描くように外径減少部の先端と半球形状部の基端とが接続されているので、血管閉塞病変部内での最先端部の引っ掛かりをさらに防止することができ、延いては、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤの通過性をさらに向上させることができる。
【0017】
<3>請求項3に記載のガイドワイヤは、外径減少部の外径の減少度が、前記テーパー部のコイル外径の減少度よりも大きいので、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤの通過性を大幅に向上させることができる。
【0018】
<4>請求項4に記載のガイドワイヤは、最先端部に潤滑性コーティングが施されているので、血管閉塞病変部に対する通過性をさらに向上させることができる。
【0019】
<5>請求項5に記載のガイドワイヤは、半球形状部の生体組織との摩擦抵抗が、外径減少部の生体組織との摩擦抵抗よりも高いので、ガイドワイヤの最先端に位置する半球形状部の滑りを防止して、血管閉塞病変部内のマイクロチャネルをさらに捉え易くなり、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤの挿入性を著しく向上させることができる。
【0020】
<6>請求項6に記載のガイドワイヤは、コイル体の先端部の内側に多条コイル体を設け、この多条コイル体の基端がコアシャフトに固着され、この多条コイル体の先端が、コイル体の先端よりも先端側に配置され、最先端部の外径減少部内で最先端部を介してコアシャフトに固着されているので、ガイドワイヤの手元側の押し込み特性を最先端部にさらに伝達し易くすることから、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤの挿入性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態を示すガイドワイヤの構成図であり、(a)はガイドワイヤの全体図であり、(b)は(a)の最先端部を拡大した図であり、(c)は(b)のガイドワイヤの先端から基端方向に向って見た場合の図であり、(d)及び(e)は第1実施形態の変形例であり、最先端部を拡大した図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示すガイドワイヤの構成図であり、(a)はガイドワイヤの全体図であり、(b)は(a)の最先端部を拡大した図であり、(c)及び(d)は第3実施形態の変形例であり、最先端部の部分を拡大した図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示すガイドワイヤの構成図であり、(a)はガイドワイヤの全体図であり、(b)は第4実施形態の変形例であり、最先端部を拡大した図である。
【0022】
以下、本発明のガイドワイヤを図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1(a)は、本発明の第1実施形態のガイドワイヤ1を示す全体図である。
【0024】
なお、図1では、説明の都合上、左側を「基端側」、右側を「先端側」として説明する。
また、図1では、理解を容易にするため、ガイドワイヤ1の長さ方向を短縮し、全体的に模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0025】
図1(a)において、ガイドワイヤ1は、コアシャフト2と、コアシャフト2の先端部を覆うコイル体3と、コイル体3の先端とコアシャフト2の先端とを固着する最先端部5とを備えている。最先端部5の基端方向では、コイル体3とコアシャフト2とが、中間固着部7によって固着され、コイル体3の基端とコアシャフト2とが、基端固着部9によって固着されている。
【0026】
また、最先端部5は、コイル体3の先端とコアシャフト2の先端とを固着している基端側最先端部5aと、先端方向に向って直線的に外径が減少している外径減少部5bと、外径減少部5bの先端に設けられた半球形状部6とを有している。
【0027】
また、図1(b)において、外径減少部5bの先端と半球形状部6との基端との境界部は、同じ外径を有しており、外径減少部5bのような直線的に外径が減少する形態から、半球形状部6のように曲線的に外径が減少する形態へと滑らかに移行している。
【0028】
また、図1(b)のガイドワイヤ1の先端から基端方向に向って目視すると、外径減少部5bと半球形状部6とは、図1(c)に示すように共に特定の方向に特異的に変形していない円形状となっている。
【0029】
このように、ガイドワイヤ1の最先端部5は、外径が先端方向に向って直線的に減少している外径減少部5bと、外径減少部5bの先端に設けられた半球形状部6とを有し、且つ、外径減少部5bの先端と半球形状部6の基端との境界部における外径が同じである為、血管閉塞病変部のマイクロチャネルの入口に半球形状部6を挿入し易くなり、さらに、血管閉塞病変部内を通過する際にも大きな抵抗を受けることなく、ガイドワイヤ1を血管閉塞病変部内に通過させ易くすることができる。このガイドワイヤ1の形態によって、血管閉塞病変部内へのガイドワイヤ1の挿入性と通過性とを向上させることができる。
【0030】
また、外径減少部5bは、その外径が先端方向に向って直線的に減少していることから、血管閉塞病変部内へガイドワイヤ1を挿入している際に受ける抵抗をより低減させることが出来る為、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ1の挿入性をさらに向上させることができる。
【0031】
また、外径減少部5bと半球形状部6は、共に特定の方向に特異的に変形していない円形状となっていることから、半球形状部6を血管閉塞部内のマイクロチャネルへ挿入する際に、マイクロチャネルの入口での引っ掛かりを防止できるので、ガイドワイヤ1を血管閉塞部内のマイクロチャネルに挿入していくことができると共に、ガイドワイヤ1を推し進めて血管閉塞病変部内を通過させたり、回転させながら血管閉塞病変部内を通過させたりする場合にも、血管閉塞病変部内での抵抗を受けにくい。よって、外径減少部5bと半球形状部6とをこのような形状にすることで、血管閉塞病変部内に対するガイドワイヤ1の挿入性と通過性とをさらに向上させることができる。
【0032】
図1(d)は、第1実施形態の変形例である。半球形状部16は、図1(a)に記載の半球形状部6と比較して、完全な半球形態(即ち、断面視が真円の半円形態)となっている。完全な半球形態としたことで、半球形状部16がガイドワイヤ1の先端方向へ突出した形態となる。また、外径減少部5bの先端と半球形状部16との基端との境界部は、曲線R1を描くように外形減少部5bの先端と半球形状部16との基端とが接続されている。
【0033】
このように、完全な半球形態を有する半球形状部16をガイドワイヤ1に設けたことで、半球形状部16がガイドワイヤ1の先端方向により突出した形態となり、この結果、血管閉塞病変部内のマイクロチャネルをより捉え易くなり、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ1の挿入性をさらに高めることができる。
【0034】
さらに、外径減少部5bの先端と半球形状部16の基端との境界部は、曲線R1を描くように外径減少部5bの先端と半球形状部16の基端とを接続しているため、この外径減少部5bの先端と半球形状部16の基端との境界部が、血管閉塞病変部内を通過する際に、抵抗をより低減することができる。これにより、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ1の通過性をさらに向上させることができる。
【0035】
図1(e)も第1実施形態の変形例である。半球形状部26は、紡錘型の半球形態を有している。これにより、半球形状部26は、図1(a)の半球形状部6と比較して、ガイドワイヤ1の先端方向により突出した形態となっている。また、外径減少部5bの先端と半球形状部26の基端との境界部は、曲線R2を描くように外形減少部5bの先端と半球形状部26の基端とが接続されている。
【0036】
このように、紡錘形状の半球形状部26はガイドワイヤ1の先端方向により突出することから、血管閉塞病変部内のマイクロチャネルをより捉え易くなり、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ1の挿入性をさらに高めることができる。また、外径減少部5bの先端と半球形状部26の基端との境界部が、曲線R2を描くように外形減少部5bの先端と半球形状部26の基端とが接続されている。これにより、この外径減少部5bの先端と半球形状部26の基端との境界部が、血管閉塞病変部内を通過する際に、抵抗をより低減することができる。これにより、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ1の通過性をさらに向上させることができる。
【0037】
以下、本実施の形態における各要素の材料について記述する。コアシャフト2を形成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼(SUS304)、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線等の材料を使用することができる。
【0038】
コアシャフト2とコイル体3とを固着する最先端部5、中間固着部7、及び基端固着部9の材料としては、例えば、Sn−Pb合金、Pb−Ag合金、Sn−Ag、Au−Sn合金等の金属ハンダなどがある。尚、コアシャフト2やコイル体3の熱影響による機械的強度の低下を抑える為に、上述した材料のようにコアシャフト2やコイル体3を形成する材料の融点よりも低い融点を有する金属ハンダを用いることが好ましく、さらに、コアシャフト2やコイル体3への熱影響による機械的強度の減少を確実に防止するためにも500度以下の融点を有する金属ハンダを用いることがより好ましい。
【0039】
特に、最先端部5においては、金を主成分とした、例えば、Au−Sn合金のような金属ハンダを用いることが好ましい。このようなAu−Sn合金のような金属ハンダは剛性が高いことで知られており、Au−Sn合金で最先端部5を形成した場合には、最先端部5に適度な剛性を持たせることができ、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ1の挿入性を高めることができる。また、Au−Sn合金の融点は400度以下であり、コアシャフト2やコイル体3への熱影響による機械的強度の減少を防止できる金属ハンダである。
【0040】
また、Au−Sn合金のような金属ハンダは、優れた放射線不透過性を有しているため、ガイドワイヤ1の最先端部5の放射線透視画像下での視認性を向上させることができる。この結果、術者は、血管閉塞病変部内でのガイドワイヤ1の位置が明確に把握しながら、ガイドワイヤ1の操作を行うことができることから、血管閉塞病変部内にガイドワイヤ1を通過させていく際に有利に働く。
【0041】
また、金属ハンダを用いて、コアシャフト2とコイル体3とを組み付ける際には、固着を行なう位置に予めフラックスを塗布しておくことが好ましい。これにより、金属ハンダとコアシャフト2とコイル体3との濡れ性が良好となり、固着強度が増加する。
【0042】
このようにガイドワイヤ1の最先端部5を金属ハンダで形成することで、ガイドワイヤ1のコアシャフト2やコイル体3に対して熱影響による機械的強度の減少を抑えることができ、これにより、ガイドワイヤ1の先端部の機会的強度を確保できるので、ガイドワイヤ1の血管閉塞病変部に対する挿入性を向上させることができる。また、金属ハンダは後述するようにハンダごて等を用いることで最先端部5を容易に形成することができるので、ガイドワイヤ1の最先端部5を形成する際の生産性にも優れている。
【0043】
また、コイル体3を形成する材料としては、放射線不透過性を有する素線、又は放射線透過性を有する素線を用いることができる。
放射線不透過性を有する素線の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、金、白金、タングステン、又はこれらの元素を含む合金(例えば、白金−ニッケル合金)等を使用することができる。
また、放射線透過性を有する素線の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼(SUS304やSUS316等)、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線等を使用することができる。
【0044】
本実施形態のガイドワイヤ1は、次の方法で作製することができる。
まず、金属線の一端をセンタレス研磨機によって外周研削し、先端部の外径が減少したコアシャフト2を作製する。
次に、コイル素線をコイル用芯金に巻回して、コイル素線がコイル用芯金に巻回された状態で熱処理を行い、その後、コイル用芯金を抜き取ってコイル体3を作製する。
【0045】
次に、コアシャフト2の先端をコイル体3の基端から挿入し、コイル体3の基端とコアシャフト2とをハンダごて等を用いて金属ハンダで固着して、基端固着部9を形成する。
【0046】
次に、コイル体3の先端とコアシャフト2の先端とをハンダごて等を用いて金属ハンダで固着する。この時、コイル体3の内部に金属ハンダが入り込みコアシャフト2の先端と固着する基端側最先端部5aと、その基端側最先端部5aの先端側に全体的に半球状の前駆形態部とを形成する。
【0047】
次に、基端側最先端部5aの基端方向にて、コアシャフト2とコイル体3と金属ハンダで固着して、中間固着部7を形成する。
【0048】
そして、最後に、前駆形態部をリューター等の装置によって、研磨して外径減少部5bと半球形状部6を形成する。
【0049】
尚、外径減少部5bと半球形状部6とは、強度の観点から一体的に形成することが好ましいが、外径減少部5bを形成した後に、さらに金属ハンダ等で半球形状部6の前駆体を形成してから、再度、リューター等によって研磨し形状を調整することもできる。外径減少部5bから形成した後に、さらに金属ハンダ等を用いる場合は、異なる材料を用いることができるが、溶融温度と、外径減少部5bとの接合強度を考慮すると、同一の金属ハンダを用いることが好ましい。
【0050】
また、これに限らず、公知の方法によって最先端部5を形成しても良い。例えば、外径減少部5bと半球形状部6とが形付けられた金型を用いて、コアシャフト2の先端とコイル体3の先端とをセットし、金型に溶融した金属ハンダを流し込むことで、最先端部5を形成しても良い。
【0051】
また、第1実施形態では、コアシャフト2の先端は、基端側最先端部5a内に配置されているが、これに限定されることなく、外径減少部5bや半球形状部6内に配置させることもできる。コアシャフト2の先端を外径減少部5bや半球形状部6内に配置することで、ガイドワイヤ1の押し込み特性が向上するため、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ1の挿入性と通過性とを向上させることができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のガイドワイヤ11について、図2を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図2は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ11の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ11の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0053】
図2において、ガイドワイヤ11は、コイル体3の基端側が同一のコイル外径を持つ同一外径部13と、コイル体3の先端側が先端方向に向ってコイル外径が減少するテーパー部23とを備えている点、および、中間固着部7の基端方向にコアシャフト2とコイル体3とを固着する第2中間固着部17を有している点を除けば第1実施形態を有している。
【0054】
ここで、図2のコイル体3において、同一外径部13のコイル外周に接する接線を直線La、テーパー部23のコイル外周に接する接線を直線Lbとし、図2の最先端部5において、外径減少部5bの外周に接する接線を直線Lcとすると、直線Laと直線Lbとの成す角度は、角度θ1を有する。この角度θ1は、ガイドワイヤ11の長軸方向におけるガイドワイヤ11の中心軸に対するテーパー部23のテーパー角度を示す。また、直線Laと直線Lcとの成す角度は、角度θ2を有する。この角度θ2は、ガイドワイヤ11の長軸方向におけるガイドワイヤ11の中心軸に対する外径減少部5bの外径減少の角度である。
第2実施形態では、外径減少部5bの外径の減少度が、テーパー部23の外径の減少度よりもより大きくなるように、外径減少部5bの外径減少の角度θ2が、テーパー部23の角度θ1よりも大きな角度を有するように設定されている。
【0055】
このように、第2実施形態のガイドワイヤ11は、外径減少部5bの外径の減少度が、テーパー部23の外径の減少度よりもより大きい形態を有しているので、外径減少部5bの基端とテーパー部23の先端との境界部において、血管閉塞病変部内を通過する際の血管閉塞病変部内での抵抗を低減させることができる。これにより、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ11の通過性を向上させることができる。
【0056】
このような同一外径部13とテーパー部23とを有するコイル体3は、コイル用芯金に外径が一定の部分と外径が減少する部分とを設けて、この芯金をコイル体3の成形に用いることでコイル体3を作製することができる。
【0057】
尚、第2実施形態のガイドワイヤ11は、外径減少部5bの外径の減少度が、テーパー部23の外径の減少度よりもより大きい形態を有していれば良く、コイル体3のテーパー部23や最先端部5の外径減少部5bが、例えば、漸近線的に曲線を描くようにしてそれぞれの外径が減少していても良い。
【0058】
また、第2中間固着部17は、中間固着部7と同じ材料を用いることができる。第2実施形態のガイドワイヤ11では、コイル体3の同一外径部13とコアシャフト2とを固着する第2中間固着部17を設け、テーパー部23とコアシャフト2とを固着する中間固着部7を設けている。これにより、コイル体3の各部分とコアシャフト2とを固着することができるので、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ11の挿入性と通過性を向上させることができる。
【0059】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態のガイドワイヤ21について、図3(a)および(b)を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図3(a)は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ21の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ21の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。また、図3(b)は、図3(a)の最先端部5を拡大した図である。
【0060】
図3(a)および(b)において、ガイドワイヤ21は、最先端部5の外周に潤滑性コーティング8が施されている点を除けば、第1実施形態と同じ形態を有している。なお、第3実施形態では、図3(b)から潤滑性コーティング8が基端側最先端部5a、外径減少部5b、および半球形状部6の外周に被覆されている。
【0061】
このように、第3実施形態のガイドワイヤ21は、最先端部5の外周に潤滑性コーティング8が施されているので、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ21の通過性を向上させることができる。
【0062】
潤滑性コーティング8の材料としては、特に限定されるものではないが、シリコーンオイルやフッ素樹脂等の疎水性のコーティング材料、又は、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、ヒアルロン酸等の親水性のコーティング材料を使用することができる。また、ガイドワイヤ21の血管閉塞病変部に対する通過性の向上を図るには、潤滑性コーティング8は、親水性のコーティング材料を用いることが好ましい。
【0063】
図3(c)は、第3実施形態の変形例を示す図である。図3(c)において、最先端部5の基端側最先端部5aと外径減少部5bの外周には潤滑性コーティング8が被覆され、さらに、最先端部5の半球形状部6の外周には潤滑性コーティングよりも生体組織との摩擦抵抗が高い低潤滑性コーティング18が被覆されている。
【0064】
このように、基端側最先端部5aと外径減少部5bの外周に潤滑性コーティング8を被覆し、半球形状部6の外周に低潤滑性コーティング18を被覆することで、半球形状部6における生体組織との摩擦抵抗が、基端側最先端部5aと外径減少部5bにおける生体組織との摩擦抵抗よりも高く設定することができる。これにより、ガイドワイヤ21の最先端部6が、血管閉塞病変部の入り口に位置するマイクロチャネルを捉える際に、最先端部6の滑りを防止してマイクロチャネルを確実に捉えることができ、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ21の挿入性を著しく向上させることができる。また、ガイドワイヤ21の先端(半球形状部6)が血管閉塞病変部内に挿入された後は、外径減少部5bと基端側最先端部5aに被覆された潤滑性コーティング8の効果によって、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ21の通過性を向上させることができる。
【0065】
潤滑性コーティング8と低潤滑性コーティング18との材料の組合せとしては、例えば、潤滑性コーティング8が親水性コーティング剤で形成されているときには、低潤滑性コーティング18を疎水性コーティング剤で形成する。また、これに限らず、ポリアミド、ポリウレタン、および各種エラストマーのような樹脂を低潤滑性コーティング18の材料として用いても良い。
【0066】
また、第3実施形態の変形例である図3(d)のように、潤滑性コーティング8を最先端部5の基端側最先端部5aと外径減少部5bに被覆し、半球形状部6にはコーティングを施さない形態としても良い。
【0067】
図3(c)や図3(d)のようなコーティング形態を作製するには、例えば、基端側最先端部5aと外径減少部5bのみに潤滑性コーティング8を施した後に、半球形状部6へ低潤滑性コーティング18を施すことによって作製することができる。またこの方法に限定されることなく、最先端部5の外周全体に潤滑性コーティング8を施した後、潤滑性コーティング剤8の良溶媒である溶液を含浸させたシートでふき取るか、または、リューターのような器具を用いて半球形状部6に被覆された潤滑性コーティング剤8を削りとった後に、半球形状部6へ低潤滑性コーティング18を施すことによって作製しても良い。
【0068】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態のガイドワイヤ31について、図4(a)を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図4(a)は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ31の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ31の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0069】
図4(a)において、ガイドワイヤ31は、コイル体3の先端部、即ち、テーパー部23の内側で、コアシャフト2の先端部を覆う内側コイル体30が設けられている点、および最先端部5の半球形状部6以外の部分に潤滑性コーティング8が被覆されている点を除けば、第2実施形態のガイドワイヤ11と同じ形態を有している。
【0070】
内側コイル体30は、複数のコイル素線を撚合して形成した多条コイル体である。内側コイル体30の先端は、コイル体3の先端およびコアシャフト2の先端と共に最先端部5によって固着されている。また、内側コイル体30の基端は、最先端部5よりも基端方向で、且つ、中間固着部7よりも先端方向の位置でコアシャフト2に固着されている。尚、内側コイル体30の先端は、コイル体3の先端よりも先端側に配置され、最先端部5の外径減少部5b内に位置している。
【0071】
このように、第4実施形態のガイドワイヤ31は、多条コイル体で形成された内側コイル体30の基端がコアシャフト2に固着され、この内側コイル体3の先端がコイル体3の先端よりも先端側に配置され、最先端部5の外径減少部5bの内側に位置した状態で、最先端部5を介してコアシャフト2の先端とコイル体3の先端に固着されている。これにより、ガイドワイヤ31の手元側の押し込み力等を最先端部5にさらに伝達し易くすることから、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ31の挿入性を大幅に向上させることができる。
【0072】
多条コイル体から形成された内側コイル体30は、コイル体3と同じ材料を用いることができるが、内側コイル体30を構成するコイル素線としては、ガイドワイヤ31の手元側の押し込み力等を伝達するという観点から、機械的強度の優れるステンレス鋼線等を用いることが好ましい。
【0073】
また、多条コイル体30を形成する方法としては、複数のコイル素線をコイル用芯金に巻きつける点を除けば、コイル体3を形成する方法と同じ方法を採用することができる。
【0074】
図4(b)は、第4実施形態の変形例を示した図である。図4(b)の最先端部5の外径減少部5bは、漸近線的に外径が減少している。外径減少部5bの形状をこのように変形することによって、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ31の挿入性を向上させることができる。
【0075】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想内において、当業者による種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、図4の第4実施形態のガイドワイヤ31の内側コイル体30について、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ31の挿入性と通過性とを向上させる目的において、内側コイル体30を多条コイル体で形成することが好ましいが、ガイドワイヤ31の先端部に柔軟性を求める場合には、一つのコイル素線から形成した単コイル体を用いて良い。
また、図4(b)のような漸近線的に外径が減少した最先端部5の半球形状部6を図1(e)に記載したような紡錘型の半球形状部26としても良い。これにより、血管閉塞病変部に対するガイドワイヤ31の挿入性をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1、11、21、31 ガイドワイヤ
2 コアシャフト
3 コイル体
13 同一外径部
23 テーパー部
30 内側コイル体
5 最先端部
5a 基端側最先端部
5b 外径減少部
6、16、26 半球形状部
7 中間固着部
17 第2中間固着部
8 潤滑性コーティング
18 低潤滑性コーティング
9 基端側固着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、
前記コアシャフトを覆うコイル体と、
前記コイル体の先端と前記コアシャフトの先端とを金属ハンダによって固着した最先端部と、を備え、
前記最先端部は、前記最先端部の先端方向に向って、前記最先端部の外径が減少している外径減少部と、
前記外径減少部の先端に設けられた半球形状部と、を有し、
前記半球形状部の基端の外径は、前記外径減少部の先端の外径と同一である、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤにおいて、
前記外径減少部と前記半球形状部との境界部は、曲線を描くように前記外径減少部と前記半球形状部とが接続されている、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤにおいて、
前記コイル体は、前記コイル体の先端に向ってコイル外径が減少するテーパー部を有しており、
前記外径減少部の外径の減少度は、前記テーパー部のコイル外径の減少度よりも大きい、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記最先端部は、潤滑性コーティングが施されている、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項4に記載のガイドワイヤにおいて、
湿潤状態において、前記半球形状部の生体組織との摩擦抵抗は、前記外径減少部の生体組織との摩擦抵抗よりも高い、ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記コイル体の内側に、前記コアシャフトを覆う多条コイル体を有し、
前記多条コイル体の基端は前記コアシャフトに固着され、
前記多条コイル体の先端は、前記コイル体の先端より先端側に配置され、前記外径減少部内で前記最先端部を介して前記コアシャフトに固着されている、ガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−249949(P2012−249949A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126468(P2011−126468)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】