説明

ガスの分析方法及びサンプリング装置

【課題】 封入ガスを高い精度で分析できる分析方法及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ガス封入管1内に封入された封入ガスを分析する封入ガスの分析方法であって、ガス封入管1とガス封入管1よりも内圧が低くされたサンプリング容器5とを配管Pにより連通させてガス封入管1内の封入ガスをサンプリング容器5に移送する移送工程と、ガス封入管1とサンプリング容器5との連通を遮断する遮断工程と、遮断工程の後にサンプリング容器5とガス分析装置8aとを連通させてサンプリング容器5内の封入ガスの分析をする分析工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス封入管内に封入されたガスの分析方法及びサンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネオン放電管、蛍光表示管、PDP(プラズマディスプレイパネル)等のガス封入管内には種々のガスが封入されている。このような封入ガスは、通常混合ガスであり、このような封入ガスの組成比を分析することは、工程管理上極めて重要である。
【0003】
このような封入ガスの分析方法として、例えば、ガス封入管と分析装置とを配管により連通し封入ガスを分析装置に導く方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2001−349870号公報
【特許文献2】特開2002−150942号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の方法では、ガスの分析精度が十分でないという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、封入ガスを高い精度で分析できるガスの分析方法及びサンプリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが検討したところ、ガス封入管とガス分析装置とを配管により直接連通させてガス封入管内の封入ガスを直接配管により分析装置に供給すると、ガス封入管と分析装置との間の配管は通常細く長いため、この配管内を移送される際に封入ガスの各成分の分子量の差に基づく移動度の差に応じて、移送の初期に分析装置に到達するガスと、移送の終期に分析装置に到達するガスとの間に組成の差が生じることを見出した。そして、このガスの組成の差によって、分析精度が劣化していることが判明した。
【0007】
そこで、本発明に係る封入ガスの分析方法は、ガス封入管内に封入された封入ガスを分析する封入ガスの分析方法であって、ガス封入管とガス封入管よりも内圧が低くされたサンプリング容器とを配管により連通させてガス封入管内の封入ガスをサンプリング容器に移送する移送工程と、ガス封入管とサンプリング容器との連通を遮断する遮断工程と、遮断工程の後にサンプリング容器とガス分析装置とを連通させてサンプリング容器内の封入ガスの分析をする分析工程と、を備える。
【0008】
本発明によれば、ガス封入管と分析装置とが連通される前に、ガス封入管とサンプリング容器とが連通され、ガス封入管内のガスがまずサンプリング容器内に移送される。そして、この連通を十分な時間維持することによって、ガス封入管内とサンプリング容器内とでガスの組成を互いに十分に均一にすることができる。続いて、サンプリング容器とガス分析装置との連通が遮断された後、サンプリング容器と分析装置とが連通されてサンプリング容器内のガスが分析装置に供給される。したがって、ガス封入管と分析装置との間が離れていても、ガス封入管内と殆ど同一のガス組成とされたサンプリング容器内を分析装置の近くに配置してこのサンプリング容器から分析装置にガスを供給できるので、配管による実質的なガス移送距離を短くでき、封入ガスの分析精度を高めることができる。
【0009】
ここで、本発明は、移送工程において、ガス封入管の壁の一部を破壊することによってガス封入管とサンプリング容器とを連通する場合に特に好適である。
【0010】
具体的には、例えば、ガス封入管に設けられたゲッターバルブ等のガラス封止部や、ガス封入管の壁の一部に設けられた窪み部等を破壊して小さな開口を生じさせ、この開口を介してガス封入管とサンプリング容器とが連通させることが考えられる。この場合、開口は通常小さいために、この開口においても封入ガスの流れの抵抗が大きくなり、ガス封入管から排出するガスの組成に不均一性が一層生じやすくなる場合が多い。しかしながら、本発明では、ガス封入管と分析装置とが連通される前に、ガス封入管とサンプリング容器とが連通されて封入ガスがまずサンプリング容器に移送されるので開口の小ささは殆ど問題とならない。
【0011】
ここで、ガス封入管とサンプリング容器とを連通させてからこの連通を遮断するまでの時間が1秒以上であることが好ましく、より好ましくは1分〜60分、さらに好ましくは10〜60分である。
【0012】
これによれば、ガス封入管とサンプリング容器との間で十分にガスの混合や拡散が起こり、サンプリング容器内の封入ガスの組成比と、ガス封入管内に封入されていた封入ガスの組成比との同一性を極めて高くすることができる。
【0013】
また、遮断工程後、分析工程の前に、サンプリング容器内に封入ガスの構成成分とは異なるリファレンスガスを供給してサンプリング容器内を所定の圧力に昇圧する昇圧工程をさらに備えることが好ましい。
【0014】
これによれば、分析工程において封入ガスの各成分のモル分率の和を取得すると、昇圧工程で設定した所定の圧力に基づいてサンプリング容器内の封入ガスの分圧が求められる。さらに、移送工程前の封入ガスの体積、すなわち、ガス封入管の内容積と、移送工程後の封入ガスの体積と、に基づいて、ガス封入管内に封入されていた封入ガスの圧力が得られる。
【0015】
また、封入ガスがXeを含むことが好ましい。Xeは原子量が131.3と非常に重いガスであり、Xeを含む封入ガスを従来のように分析するとXeが偏在しやすく、したがって分析精度が悪化しやすいが、本発明の分析方法によれば極めて高精度な分析が可能である。
【0016】
本発明に係るサンプリング装置は、ガス封入管内に封入された封入ガスをサンプリングする封入ガスのサンプリング装置であって、サンプリング容器と、サンプリング容器とガス封入管とを連通可能とする配管と、を備える。
【0017】
本発明によれば、上述の分析方法に用いるのに適する。
【0018】
ここで、配管は、ガス封入管の器壁を破壊する器壁破壊具を有することが好ましい。また、封入ガスがXeを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、封入ガスを高い精度で分析できる。したがって、ガス封入管の開発や製造管理に大きく資することができて工業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態を図1〜図3を参照して説明する。本実施形態では、ガス封入管としてのプラズマディスプレイパネル1内に封入されたガスを分析対象とする。
【0021】
図1に示すように、サンプリング装置100は、プラズマディスプレイパネル1の器壁を破壊する器壁破壊具2、サンプリング容器5、器壁破壊具2とサンプリング容器5とを接続するラインL1、ラインL1の接続点Aに接続されたラインL2及びラインL3を主として備えている。ラインL1及び器壁破壊具2がプラズマディスプレイパネル1とサンプリング容器5とを連通する配管Pを構成する。
【0022】
プラズマディスプレイパネル1は、図2に示すように、ガラス板1a,1a間に封入ガス1bが封じ込められたものであり、公知のものを利用可能である。封入ガスは、複数種のガスを含んでいる。封入ガスとしては、Xe,Ne,He等の希ガスを主として含むものや、これら希ガスの混合ガスを主として含むもの等が挙げられる。特に、Xeは原子量が131.3と重くて偏在しやすいため、従来の如き分析方法ではXeを含む封入ガスの分析精度が著しく低下しやすいが、本実施形態によればこのようなXeを含む封入ガスの分析精度が極めて向上する。封入ガスの圧力P1は、例えば、30000〜70000Pa程度である。また、プラズマディスプレイパネル1の内容積をV1とする。プラズマディスプレイパネル1内には、放電を行わせるための電極1eが上下に設けられている。
【0023】
プラズマディスプレイパネル1のガラス板1aの表面には、あらかじめ凹部1cが形成されている。器壁破壊具2は、図2に示すように、管部2aを有し、管部2aはガラス板1a上の凹部1cを覆うようにガラス板1aに対して真空用エポキシ接着剤25により接着されている。管部2aにはラインL1が接続されている。ラインL1が真空引きされると、管部2a内も真空引きされる。さらに、器壁破壊具2は、管部2a内の気密性を保ったまま外部からの操作によってプラズマディスプレイパネル1のガラス板1aの凹部1cを破壊するためのハンマ2bを有している。
【0024】
図1に戻って、サンプリング容器5は、気密性があり、内部を真空にしても破損しない容器である。気密性は、10−3Paの真空度まで到達できるものが好ましく、10−5Paの真空度まで到達できるものであることがより好ましい。容量としては、プラズマディスプレイパネル1(ガス封入管)におけるガスが封入される空間の容積(以下、内容積という)の1/10以上100倍以下が好ましく、具体的には、10cm以上〜1000cm以下が好ましい。
【0025】
サンプリング容器5の材質は特に限定されず、例えば、ステンレス、ニッケル等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ABS樹脂等の合成樹脂;ガラス繊維または炭素繊維で強化した合成樹脂;ガラス;アルミナ磁器、ジルコニア磁器等のセラミクス等を使用できる。
【0026】
ラインL1には接続点Aよりも器壁破壊具2側に開閉可能なバルブV1が接続され、接続点Aよりもサンプリング容器5側に、バルブV5及びバルブV6が接続されている。バルブV5及びバルブV6の間には、切り離し可能なジョイントJ1,J1が接続されており、ジョイントJ1の接続を切り離すことによってサンプリング装置100からのサンプリング容器5の取り外しが可能となっている。
【0027】
ラインL1の接続点Aに接続するラインL3の端部にはバルブV4が接続されている。また、ラインL3における、バルブV4と接続点Aとの間には低真空用真空計GL及び高真空用真空計GHが接続されている。さらに、ラインL3のバルブV4の先には、リファレンスガス供給源80が接続されたラインL80が接続され、ラインL80には開閉可能なパージバルブPV2を有するパージラインL82が接続されている。リファレンスガスは、プラズマディスプレイパネル1内に封入された成分とは異なる成分のガスであり、例えば、窒素等を用いることができる。
【0028】
一方、ラインL1の接続点Aに接続されたラインL4の端部にはバルブV3が接続されている。バルブV3の先には、ターボ分子ポンプ3及びロータリポンプ4が接続されている。
【0029】
また、このサンプリング装置100は、器壁破壊具2、サンプリング容器5、ラインL1、バルブV1,V5,V6、ジョイントJ1,J1、ラインL3、バルブV4、ラインL4、バルブV3を、110℃以上150℃未満の温度に加熱可能なヒータ10が設けられている。このヒータ10は、ベーキング用のものであり、各バルブやラインの耐熱温度によっては、これ以上の温度に加熱してベーキングを行ってもよい。
【0030】
ラインL1〜L4としては、例えば、外径1/4インチのステンレス管等を用いることができ、ジョイントJ1としてはVCRジョイント等を用いることができる。
【0031】
続いて、本実施形態に係るサンプリング装置を用いたサンプリング方法について説明する。
【0032】
まず、バルブV4を閉じ、バルブV1,V3,V5及びV6を開け、ターボ分子ポンプ3及びロータリポンプ4を稼動し、ヒータ10でサンプリング容器5やラインL1等をベーキングしながら、サンプリング容器5、ラインL1、ラインL3、ラインL4、及び器壁破壊具2内を、プラズマディスプレイパネル1の内部の圧力P1よりも十分に低く、例えば、(P1/10)程度以下になるまで減圧する。減圧後の圧力は、1×10−3Pa、より好ましくは1×10−5Pa程度にまですることが好ましい。
【0033】
次に、移送工程を行う。ここでは、ベーキングを行ったまま、バルブV3を閉め、その後、器壁破壊具2のハンマ2bを操作して、プラズマディスプレイパネル1のガラス板(器壁)1aの凹部1cを破壊し、プラズマディスプレイパネル1の内部とサンプリング容器5の内部とを配管Pによって連通し、プラズマディスプレイパネル1内の封入ガスを器壁破壊具2及びラインL1を介してサンプリング容器5内に移送する。ここで、封入ガスの体積は、プラズマディスプレイパネル1、器壁破壊具2、ラインL1、ラインL3、ラインL4及びサンプリング容器5の総内容積V2となる。このときの圧力をP2とする。
【0034】
この移送の際、ラインL1は通常細く長く、また、器壁破壊具2により凹部1cに形成される開口も通常小さい場合が多い。一方、封入ガスには様々な成分のガスが含まれる。したがって、ガス成分の分子量の差によって、移動しやすさ(コンダクタンス)に差を生じ、分子量の小さいガスがプラズマディスプレイパネル1から最初に流れ出てサンプリング容器5に到達しやすく、分子量の大きいガスがサンプリング容器5に到達しにくい。しかしながら、本実施形態では、移送工程時には、プラズマディスプレイパネル1が分析装置と連通しておらず、また、サンプリング容器5とプラズマディスプレイパネル1との連通を所定時間維持し、サンプリング容器5とプラズマディスプレイパネル1内との間でのガスの拡散や混合を十分に行わせることにより、サンプリング容器5内のガスの組成がプラズマディスプレイパネル1に封入されていたガスの組成とほぼ同じになる。
【0035】
その後、バルブV1を閉め、封入ガスのサンプリングを終了する(遮断工程)。ここで、プラズマディスプレイパネル1とサンプリング容器5との連通を維持する時間、すなわち、プラズマディスプレイパネル1とサンプリング容器5との連通を開始してから連通を遮断するまでの時間は、1秒以上とすることが好ましく、1〜60分程度とすることがより好ましく、10〜60分程度とすることが一層好ましい。
【0036】
その後、昇圧工程に入る。ここでは、まず、パージバルブPV2を開けた状態でリファレンスガス供給源80からリファレンスガスをラインL80に供給してラインL80内のガスを十分にラインL80及びパージラインL82からパージした後、パージバルブPV2を閉める。その後、バルブV4を少しずつ開放してリファレンスガスをラインL3やサンプリング容器5内に供給してサンプリング容器5内を昇圧し、サンプリング容器5内の圧力が所定の圧力P3、例えば、1気圧に到達したら、バルブV4を閉じる。これで昇圧工程が終了する。
【0037】
そして、その後、バルブV5及びV6を閉めて、ジョイントJ1,J1の結合を解除してサンプリング容器5が接続されたラインL1をジョイントJ1から切り離し、図3の(a)又は(b)に示すように、このジョイントJ1を、分析装置150のジョイントJ2又はジョイントJ3に接続し、ガスクロマトグラフ分析を行ったり、マススペクトルグラフ分析を行ったりする。
【0038】
分析装置150は、図3の(a)に示すように、ジョイントJ2とガスクロマトグラフ装置8aとが、バルブV10を有するラインL5により接続されている装置である。ジョイントJ1とジョイントJ2とを接続した後にバルブV6及びバルブV10を開けて、サンプリング容器5内のガスをガスクロマトグラフ装置8aに送り込んで分析させればよい。
【0039】
また、分析装置160は、図3の(b)に示すように、ジョイントJ3と四重極質量分析装置8bとが、バルブV6及びV7を有するラインL6により接続されている装置である。バルブV7とバルブV8との間からはバルブV8を有するラインL7が分岐しており、ラインL7の先にはターボ分子ポンプ6及びロータリポンプ7が接続されている。
【0040】
この場合、あらかじめ、バルブV7を閉め、バルブV8、V9を開けた状態で2つのポンプにより真空引きを行い、その後、ジョイントJ1をジョイントJ3に接続し、バルブV7を開け、その後、バルブV6を開けてサンプリング容器5内のガスを四重極質量分析装置8bに供給すればよい。
【0041】
分析装置150や160で分析する際は、ヒータ170を用いてサンプリング容器5を、サンプリング時のベーキング温度よりも高い温度に加熱して、サンプリング容器5内に吸着したガスを十分に放出させることが好ましい。
【0042】
分析装置150を用いた分析によれば、リファレンスガス及び封入ガスによる信号がガスクロマトグラフスペクトルにピークとして現れ、ガスの組成比が判明する。スペクトル全体の強度は、昇圧工程で調整された圧力P3、例えば、1気圧であるので、ガスの組成比から、サンプリング容器5内のリファレンスガス以外の封入ガスの各成分の分圧及びこれらの分圧の和P2を取得することができる。
【0043】
また、分析装置160を用いた分析によれば、リファレンスガス及び封入ガスによる信号がマススペクトルにピークとして現れ、ガスの組成比が判明する。マススペクトル全体の強度は、昇圧工程で調整された圧力P3、例えば、1気圧であるので、ガスの組成比から、サンプリング容器5内のリファレンスガス以外の封入ガスの各成分の分圧及びこれらの分圧の和P2を取得することができる。
【0044】
さらに、移送工程において、封入ガスの移送後の体積V2とプラズマディスプレイパネル1の内容積V1とはそれぞれ既知であるので、P1=P2・V2/V1によりプラズマディスプレイパネル1における封入ガスの圧力P1を取得できる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、プラズマディスプレイパネル1と分析装置とが連通される前に、プラズマディスプレイパネル1とサンプリング容器5とが連通され、プラズマディスプレイパネル1内の封入ガスがまずサンプリング容器内に移送される。そして、この際に、組成比の均一性を高めるのに十分な時間を与えることができ、プラズマディスプレイパネル1内とサンプリング容器5内とでガスの組成を互いに十分に均一にすることができる。そして、サンプリング容器とガス分析装置との連通を遮断した後、サンプリング容器5と分析装置150,160とが連通されてサンプリング容器5内のガスが分析装置150,160に供給される。したがって、プラズマディスプレイパネル1と分析装置150,160との間が離れている場合でも、プラズマディスプレイパネル1内と殆ど同一のガス組成とされたサンプリング容器5を分析装置150,160の近くに配置してこのサンプリング容器5から分析装置150,160にガスを供給できる。したがって、配管による実質的なガスの移送距離を短くでき、封入ガスの分析精度を高めることができる。
【0046】
特に、本実施形態では、プラズマディスプレイパネル1の壁の一部を破壊して開口を形成することによってプラズマディスプレイパネル1とサンプリング容器5とを連通している。この場合、開口は通常極めて小さいために、この開口においても封入ガスが流れ出す際に抵抗が大きく、プラズマディスプレイパネル1から排出するガスの組成比の不均一性は一層高くなる傾向がある。しかしながら、本実施形態では、プラズマディスプレイパネル1とサンプリング容器5との連通が維持される時間を十分確保すれば開口の小ささは殆ど問題とならない。
【0047】
また、遮断工程後、分析工程の前に、サンプリング容器内に封入ガスの構成成分とは異なるリファレンスガスを供給してサンプリング容器内を所定の圧力P3に昇圧する昇圧工程をさらに備えているので、サンプリング容器内の封入ガスの分圧P2、さらに、ガス封入管内に封入されていた封入ガスの圧力P1が得られる。
【0048】
(第二実施形態)
続いて、第二実施形態について説明する。本実施形態の分析システム(サンプリング装置)200は、第一実施形態に係るサンプリング装置100に、第一実施形態の分析装置150及び分析装置160を結合したものである。
【0049】
具体的には、ラインL4のバルブV3と接続点Aとの間に接続点Bをさらに設け、接続点Bに対して、分析装置150のラインL5が接続されると共に、接続点Bに対して、分析装置160のラインL6が接続されている。
【0050】
本実施形態では、ヒータ10によって、さらに接続点BからラインL6のバルブV7までの部分、及び、接続点BからラインL5のバルブV10までの部分も加熱可能となっている。
【0051】
このようなシステムでは、第一実施形態と同様にしてプラズマディスプレイパネル1からサンプリング容器5へ封入ガスを移送し、バルブV1を閉じた後、サンプリング容器5を取り外さずに、サンプリング容器5と分析装置150及び/又は分析装置160とを連通できるので、迅速な測定ができる。また、第一実施形態と同様の作用効果を奏することはいうまでもない。
【0052】
(第三実施形態)
続いて、第三実施形態について説明する。本実施形態の分析システム(サンプリング装置)300が第二実施形態にかかる分析システム200と異なる点は、複数のサンプリング容器5がそれぞれラインL1を介して器壁破壊具2と接続されている点である。具体的には、ラインL1は、接続点Aよりもサンプリング容器側で各サンプリング容器5の数に対応して分岐しており、各サンプリング容器5は、それぞれ、サンプリング容器5側から、バルブV6、ジョイントJ1,J1、及び、バルブV5を介して接続点Aに接続されている。
【0053】
本実施形態では、ヒータ10によって、各サンプリング容器5、及び、各ラインL1、バルブV6、ジョイントJ1,J1、バルブV5がそれぞれ加熱可能となっている。
【0054】
この実施形態では、一つのプラズマディスプレイパネル1からの封入ガスを複数のサンプリング容器5に対して分配移送することができ、複数の方法で一つのサンプリングガスを分析するのに適する。また、サンプリングした一部のガスを保存しておくのにも便利である。
【0055】
(第四実施形態)
本実施形態では、ブロック化された分析システム(サンプリング装置)400を用いてサンプリング及び分析を行う。
【0056】
本実施形態の分析システム400は、器壁破壊部410、ガスサンプリング装置部420、真空ポンプ部430、分析装置160を有する。
【0057】
器壁破壊部410は、器壁破壊具2、及び、この器壁破壊具2に接続されたラインL41を備える。ラインL41の途中にはバルブV1が接続され、また、ラインL41の端部にはジョイントJ41が接続されている。
【0058】
ガスサンプリング装置部420は、サンプリング容器5と、サンプリング容器5の一端に接続されたラインL43及びサンプリング容器5の他端に接続されたラインL45を有する。ラインL45の途中にはバルブV11が接続され、ラインL45の端部にはジョイントJ45が接続されている。また、ラインL43の途中には、サンプリング容器5側から順に、バルブV6、ジョイントJ1,J1、バルブV5及びジョイントJ43が接続されている。
【0059】
ラインL43のバルブV5とジョイントJ43との間には、接続点Aが設けられ、接続点AからはラインL47及びラインL49が分岐している。
【0060】
ラインL47は、その途中にバルブV10を有し、ラインL47の先端にはジョイントJ49が接続されている。一方、ラインL49の途中には、低真空用真空計GL及び高真空用真空計GHが接続され、ラインL49の先端にはバルブV4が設けられている。バルブV4の先には、第三実施形態と同様に、ラインL80を介してリファレンスガス供給源80、が接続され、ラインL80からはパージバルブPV2を有するパージラインL82が分岐している。
【0061】
真空ポンプ部430は、ジョイントJ51、及び、このジョイントJ51に接続されたラインL51を有し、ラインL51には、ジョイントJ51側から、低真空用真空計GL、高真空用真空計GH、バルブV3、ターボ分子ポンプ3、及びロータリポンプ4が接続されている。ラインL51のバルブV3とジョイントJ51との間からは、パージバルブPV2を有するパージラインL84が分岐している。
【0062】
分析装置160は、第二実施形態の分析装置160と同様である。
【0063】
そして、器壁破壊部410のジョイントJ41がガスサンプリング装置部420のジョイントJ43と接続され、分析装置160のジョイントJ3がガスサンプリング装置部420のジョイントJ45に接続され、真空ポンプ部430のジョイントJ51がガスサンプリング装置部420のジョイントJ49に接続されている。なお、分析装置160に代えて、第二実施形態の分析装置150を採用してもよく、この場合には、ジョイントJ2をガスサンプリング装置部420のジョイントJ45と接続すればよい。
【0064】
本実施形態では、ヒータ10によって、サンプリング容器5、バルブV7からサンプリング容器5までの部分、器壁破壊具2、器壁破壊具2からサンプリング容器までの部分、ラインL49、ラインL47、ラインL51、及びパージラインL84が加熱されるようになっている。
【0065】
本実施形態では、ラインL43、及びラインL41及び器壁破壊具2が配管Pを構成する。
【0066】
続いて、本システム400の使用方法について説明する。ここでは、複数個のプラズマディスプレイパネル1を用意する。そして、プラズマディスプレイパネル1の数に対応して器壁破壊部410及びガスサンプリング装置部420を用意する。そして、各プラズマディスプレイパネル1に対して器壁破壊部410の器壁破壊具2を接着する。作業性を向上させる観点からは、器壁破壊具2を容器に接着してから、ジョイントJ41及びバルブV1を有するラインL41を器壁破壊具2に接続して器壁破壊部410とすることも好ましい。続いて、各器壁破壊部410のジョイントJ41と各ガスサンプリング装置部420のジョイントJ43とを接続する。すなわち、各プラズマディスプレイパネル1に応じた、器壁破壊部410及びガスサンプリング装置部420の組合せPA1,PA2,…ができることとなる。
【0067】
その後、最初のサンプルとなるプラズマディスプレイパネル1に関してサンプリングを行う。まず、一つの組合せPA1について、ガスサンプリング装置部420のジョイントJ49に対して真空ポンプ部430のジョイントJ51を接続する。
【0068】
そして、バルブV4、V11、PV3を閉じ、バルブV5,V6,V1,V10,V3を開ける。そして、ヒータ10により、サンプリング容器5やラインL43等を110〜150℃の温度範囲でベーキングする。そして、ベーキングしながら、ロータリポンプ4やターボ分子ポンプ3を稼動して、サンプリング容器5やラインL43内を圧力P1よりも低い圧力、例えば、10−5Paまで排気する。
【0069】
続いて、バルブV3及びV10を閉めると共にパージバルブPV3を開けて、バルブV3とバルブV10間を大気圧に戻し、ジョイントJ49及びジョイントJ51の接合を切り離し、真空ポンプ部430を切り離す。
【0070】
続いて、器壁破壊具2を操作してプラズマディスプレイパネル1の封入ガスをサンプリング容器5内に移送する。前述した所定時間経過の後、バルブV1を閉め、必要に応じて、第一実施形態と同様にして、バルブV4を介してリファレンスガス供給源80からリファレンスガスをサンプリング容器5等の内部に供給して、所定気圧P3(例えば、1気圧)にまで圧力を上げ、その後、バルブV4,V5,V6を閉める。
【0071】
続いて、ガスサンプリング装置部420のジョイントJ45に対して分析装置160のジョイントJ3を接続する。そして、バルブV7,V8,V9を開け、サンプリング容器5やラインL45等のさらなる高温でのベーキングを行いつつ、ターボ分子ポンプ6及びロータリポンプ7を用いてバルブV11から四重極質量分析装置8bまでの部分を排気する。排気は10−5Paまで到達させることが好ましい。
【0072】
その後、バルブV11を開けると共にバルブV8、V9を適切な値に調節して、サンプリング容器5内の封入ガスの分析を第一実施形態と同様に行い、測定終了後分析装置160をジョイントJ3から切り離す。なお、ガスサンプリング装置部420のジョイントJ1を介して他の分析装置150と接続することも可能である。
【0073】
一方、第一のサンプルに係る組合せPA1のガスサンプリング装置部420から既に切り離された真空ポンプ部430は、2番目のサンプルであるプラズマディスプレイパネル1に係る組合せPA2のガスサンプリング装置部420に対して接続され、上述と同様にして排気を行い、その後切り離される。組合せPA2に関しては、その後封入ガスをサンプリング容器5へ移送し、組合せPA1から切り離された分析装置をこの組合せPA2に接続し、ガス分析を行う。一方、組合せPA2から切り離された真空ポンプ部430は、組合せPA3に接続される。このように、ある組合せPAn+1に対して真空ポンプ部430を接続して真空に引いている間に、既に、真空引き及び封入ガスの移送が終了した組合せPAnに対して分析装置160を接続して分析を行えるので、第一〜第三実施形態のように、真空ポンプ部とガスサンプリング部とが一体化している場合に比べて、真空ポンプ部の効率的な利用ができる。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。例えば、上記実施形態では、ガス封入管として、プラズマディスプレイパネルを採用しているが、これ以外でも、ネオン放電管、蛍光表示管、蛍光灯、液晶ディスプレイのバックライト、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エキシマレーザー等、内部にガスが封入され管内の電極間に電圧が印加される他の放電管に本発明を好適に適用でき、さらに、放電管でなくても、電球等のガスが封入されたガス封入管であれば本発明を実施可能である。
【0075】
また、上記実施形態では、器壁破壊具2を用いてガス封入管としてのプラズマディスプレイパネル1の器壁を破壊してガス封入管とサンプリング容器との連通を行っているが、中空針をガス封入管の管壁に貫通させることによって連通させてもよい。また、ガス封入管の製造工程において内部に封入ガスを封入して管を密閉する際に器壁の一部を溶融させることにより形成される封止部であるゲッターバルブをガス封入管が備えている場合にはこのバルブを破壊具により破壊し連通してもよく、さらに、ガス封入管が開閉可能なバルブを備えている場合にはガス封入管のそのバルブを開放することによって連通してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、昇圧工程を行っているが、昇圧工程は任意である。
【0077】
また、上記実施形態では、ガス分析装置として、ガスクロマトグラフ装置や四重極質量分析装置を用いているが、これ以外のガス分析装置を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、第一実施形態に係るサンプリング装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1の器壁破壊具及びその周辺の拡大図である。
【図3】図3は、第一実施形態に係る分析システムの概略構成図であり、(a)はガスクロマトグラフを有する分析システム、(b)は四重極質量分析装置を有する分析システムである。
【図4】図4は、第二実施形態に係るサンプリングシステムの概略構成図である。
【図5】図5は、第三実施形態に係るサンプリングシステムの概略構成図である。
【図6】図6は、第四実施形態に係るサンプリングシステムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0079】
1…プラズマディスプレイパネル、1a…器壁、1c…凹部、5…サンプリング容器、P…配管、150…ガスクロマトグラフ装置(ガス分析装置)、160…四重極質量分析装置(ガス分析装置)、100…サンプリング装置、200、300,400…分析システム(サンプリング装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス封入管内に封入された封入ガスを分析する封入ガスの分析方法であって、
前記ガス封入管と、前記ガス封入管よりも内圧が低くされたサンプリング容器と、を配管により連通させて前記ガス封入管内の封入ガスを前記サンプリング容器に移送する移送工程と、
前記ガス封入管と前記サンプリング容器との連通を遮断する遮断工程と、
前記遮断工程の後に、前記サンプリング容器とガス分析装置とを連通させて前記サンプリング容器内の封入ガスの分析をする分析工程と、
を備える封入ガスの分析方法。
【請求項2】
前記移送工程では、前記ガス封入管の壁の一部を破壊することによって前記ガス封入管と前記サンプリング容器とを連通する請求項1に記載の封入ガスの分析方法。
【請求項3】
前記ガス封入管と前記サンプリング容器とを連通させてから前記連通を遮断するまでの時間が1秒以上である請求項1又は2に記載の封入ガスの分析方法。
【請求項4】
前記遮断工程後、前記分析工程の前に、前記サンプリング容器内に前記封入ガスの構成成分とは異なるリファレンスガスを供給して前記サンプリング容器内を所定の圧力に昇圧する昇圧工程をさらに備える請求項1〜3の何れかに記載の封入ガスの分析方法。
【請求項5】
前記封入ガスはXeを含む請求項1〜4のいずれかに記載の封入ガスの分析方法。
【請求項6】
ガス封入管内に封入された封入ガスをサンプリングする封入ガスのサンプリング装置であって、
サンプリング容器と、前記サンプリング容器と前記ガス封入管とを連通可能とする配管と、を備えるサンプリング装置。
【請求項7】
前記配管は、前記ガス封入管の器壁を破壊する器壁破壊具を有する請求項6に記載のサンプリング装置。
【請求項8】
前記封入ガスはXeを含む請求項6又は7に記載のサンプリング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−10575(P2007−10575A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194161(P2005−194161)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)
【Fターム(参考)】