説明

ガスクロマトグラフのためのヘリウム回収システムおよびその方法

【課題】ヘリウム回収およびリサイクルシステムにおいて、携帯性および汎用性を高め、稼働コストを下げる。
【解決手段】キャリアガスの入口および分流ベントまたはセプタムパージベントを含む少なくとも1つの出口ベントを有するガスクロマトグラフのためのキャリアガスとして使用されるヘリウムガスを収集し、再加圧し、精製し、再使用するためのシステムであって、このシステムは、キャリアガスの入口に精製されたヘリウムガスを供給するための精製されたヘリウムガスのソースを含み、このシステムは、(i)少なくとも1つの前記出口ベントに流体結合され、このベントからヘリウムを含むガスを受けるブラッダーの内部を含むフレキシブルブラッダーと、(ii)内部に前記ブラッダーが含まれるコンパートメントの内部を有するコンパートメントと、(iii)前記コンパートメントの内部に流体結合されており、前記加圧された空気またはガスを前記コンパートメントの内部に供給し、ヘリウムを含むガスを含む前記フレキシブルブラッダーなブラッダーを圧縮するための加圧された空気またはガスのソースと、(iv)前記ブラッダーの内部に流体結合されており、前記圧縮されたブラッダーの内部から前記ヘリウムを含むガスを受けるガスリザーバと、(v)前記ガスリザーバに流体結合されており、前記ガスリザーバからの前記ヘリウムを含むガスを受け、前記ヘリウムを含むガスからのヘリウム以外のガス成分を除去するように働く少なくとも1つのガス精製モジュールとを含み、前記少なくとも1つのガス精製モジュールの出力は、前記キャリアガスの入口に流体結合されていることを特徴とするシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスクロマトグラフィーシステムおよびその方法に関し、より詳細には、ガスクロマトグラフで使用されたヘリウムキャリアガスを回収、すなわちリサイクルするためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィーは、材料サンプルの化学的組成を識別するための周知の方法であり、化学化合物を識別することに依存している種々の業界で用途がある。このガスクロマトグラフィープロセスは、材料サンプルを蒸発させ、これをガスクロマトグラフィーのカラム内に導入するステップを必要としており、ここで、材料サンプルは、不活性のガス状キャリア、例えば窒素(N2)、水素(H2)またはヘリウム(He)の流れによってカラムを通過するように輸送される。
【0003】
最近のガスクロマトグラフは、サンプル材料の分離を実行するために、溶融シリカ毛細カラムを一般に使用している。かかるカラムを使用する際に、検出器の飽和またはカラムのフェーズの飽和を防止するために、サンプルの多くを分流したり、残留溶剤蒸気または低蒸気圧マトリックス、例えばオイルによって生じるベースラインの上昇を防止するために、供給ガスの多くを分流しなければならないことが多い。実際に、消費されるガスの大部分は、ガスクロマトグラフィーとは直接は関係なく、大気中に廃棄されている。例えば代表的なガスクロマトグラフは、50ml/分以上のガスを分流しており、恐らくは、クロマトグラフィー技術では50:1の分流比に対応する 1ml/分しか使用していないであろう。従って、かかるクロマトグラフは、分析のためにクロマトグラフカラムを通過させるように、サンプルを実際に搬送するのに必要とされるガス量の50倍をベントしている。一般に「ガスセーバー」と称される多くのガスクロマトグラフで見られる自動化された特徴により、ガスを保存するために、注入の後で、より少ない分流流れを設定することが可能となっている。ガスを節約する特徴の結果、ヘリウムの消費量がより少なくなっているが、少ない分流流れを使用することとその後の求める汚染レベル(すなわちベースラインの上昇)との間で妥協が図られていることが分かっている。従って、分析的にはより多量の分流流れを維持することが望ましいが、経済的にはより少ない分流流れを使用することが望ましい。従って、毎分50の標準立方cm(sccm)以上の多量の分流流れを使用することが望ましく、使用されたガスのほとんどをリサイクルするための手段を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリアガスのリサイクルを行うシステムに関する記載がこれまで多く存在する。例えば、ボンマーティ(Bonmati)外を発明者として発行された米国特許第4,230,464号は、大ガス流量で多量のキャリアガス(毎分5〜200立方メートルのキャリアガス)を使用する工業的スケールの準備クロマトグラフについて述べている。(広く異なるマトリックス内の微量の化学的成分を識別し、定量化することを目的とする研究室規模の分析設定と異なり)既知の成分を大規模に物理的に分離し、精製するクロマトグラフィープロセスのために使用されたガスに対して、精製が行われる。ウィルソン(Wilson)を発明者として発行された米国特許第6,063,166号は、ハロゲン化金属貯蔵システムを使用するシステムにおける水素ガスの閉ループ再循環について述べている。ボストロム(Bostrom)外を発明者とする米国公開特許出願第2007/0125233A1号は、地下流体を現場で分析するための野外に持ち出せる「ダウンホール」器具について述べている。この分析は、キャリアガスのソースおよび保管リザーバとして、固定された温度のハロゲンバ化金属のリザーバーを使用する。ウィルソンを発明者として発行された米国特許第6,074,461号は、クロマトグラフに結合されたガスリサイクルシステムを使用することを教示しており、ここで、リサイクルシステムは、キャリアガスの精製およびキャリアガスの加圧のそれぞれの作業を実行するための第1ステージおよび第2ステージを含む。クロマトグラフの特定の実施形態で作動できる特定のキャリアガスに従ってガス精製ステージを設計でき、このガス精製ステージは、水素だけを透過できる分子ふるい、膜または同様なデバイスのようなパックされたトラップ、ヘリウムゲッター、別のキャリアガスに対して最適にされたヘリウムクリーニング用のパックされたベッドトラップまたはヘリウムだけを透過するのに効率的なポリマーバリアを含むことができることをウィルソンは更に指摘している。従来技術の上記ガス精製方法は、ボンマーティ外の発明では、非効率性および不良なスケーラビリティの点で問題があり、ボストロム外の発明およびウィルソンの発明では、コスト、複雑さ、分析欠陥および/または安全性の点で問題がある。水素に基づくリサイクルシステムを検討する場合も、このことが当てはまる。
【0005】
水素をガスクロマトグラフのキャリアガスとして使用するときには、火災または爆発が発生する潜在的な危険があり、水素は、他のある分析的欠陥にも関連している。例えばガスクロマトグラフィー/質量スペクトロメトリ(GCMS)用途のために、水素キャリアガスを使用すると、感度が低下し、入口での不良な化学反応(例えば、水素添加反応)またはイオンソースでの不良な化学反応(脱水素反応)が生じ得る。従って、多くの普通の研究所用、またはフィールドをベースとする分析用では、キャリアガスとして専らヘリウムを使用することが望ましい。不幸なことに、ヘリウムのコストが高い結果、特に一部の開発途上国では、ガスクロマトグラフィーのためにキャリアとしてヘリウムガスを使用することは不可能となる。例えばこれらの国では1本のガスシリンダに500ユーロもかかってしまう。従来技術(例えばヘリウムゲッタリング)で使用されるガス精製の伝統的な方法は、汚染されていない純粋なヘリウムから微量の汚染物を除去することを保証するために、反応性金属合金を利用している。この技術は、容量が限られていること、およびこのタイプのトラップで生じる不可逆性化学反応のため、何1マイクロリットルの溶剤を除染するには非実用的である。同様に、従来の設計の分子ふるいトラップは、どこでも使用されており、強力に吸収される微量の汚染物を除去するのに有効であるが、大量の吸収剤を使用しない場合、またはトラップのまわりでごく低温状態が維持されない場合、比較的短い時間インターバルでトラップを通過する際に、より軽く、より弱く結合している化学薬品が分解してしまう。この性質の大容量のインライントラップも、合成多孔質ポリマーのコストが高いため、非実用的である。
【0006】
リサイクルされたガスストリームを再圧縮するのに関与する圧縮サイクルは、大気圧ガスの流入を防止するために必ず閉ループシステムとなっている。このように、大気圧ガスの流入を防止しない場合、ガスストリームが汚染され得る。専用の回転翼ポンプ、ピストンポンプなどを使用する従来のポンピングシステムは、オイルをベースとする潤滑剤が必要であるために、コストの点で不利であり、ガスストリームに炭化水素汚染物が流入するという性質を有する。更にこれらポンプは、ポンプのガス回収側で真空を発生する自由走行タイプのポンプとなっている。低圧力を扱うためのガスクロマトグラフの電子圧力制御を特別に変更しない場合、またはポンプに送られる流れをスロットリングするための複雑な手段を設けない場合、GCユニットおよびGCMSユニットの現行の設備に対してこれら方法を使用することはできない。
【0007】
従って、現行のほとんどの普通の研究所またはフィールドをベースとするクロマトグラフにおいて、ヘリウム回収およびリサイクルシステムを使用することが更に好ましい。できるだけ携帯性および汎用性を高め、稼働コストを下げるには、このヘリウム回収およびリサイクルシステムは、(a)クロマトグラフシステムの正常な稼働を妨害することなく、実質的に任意の分析用ガスクロマトグラフシステムに容易に適合できること、(b)回収されたヘリウムの純度を周期的に自動分析するための設備を含まなければならないこと、および(c)多量の溶剤を必要としなくなるように、回収システムのクリーニングの質を再生できることが必要である。本発明は、かかるニーズを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、ガスクロマトグラフの注入サイクル中、およびその後の、比較的純粋な分流ガスヘリウムの収集を可能にする方法およびシステムを提供するものである。これら方法およびシステムにより、ヘリウムのシリンダを交換をしなくても数年にわたって寿命を維持することが可能となる。例えば本発明の要旨に係わるシステム例は、ガスクロマトグラフの分流ベントおよびセプタムパージ出力からの実質的に大気圧にあるヘリウムを(残留溶剤および被検体と共に)収集し、収集したガスを再圧縮し、ヘリウムを適当な純度まで精製し、ガスクロマトグラフの上流に精製されたガスを再導入する。
【0009】
本発明の第1の様相では、キャリアガスの入口および分流ベントまたはセプタムパージベントを含む少なくとも1つの出口ベントを有するガスクロマトグラフのためのキャリアガスとして使用されるヘリウムガスを収集し、再加圧し、精製し、再使用するためのシステムであって、このシステムは、キャリアガスの入口に精製されたヘリウムガスを供給するための精製されたヘリウムガスのソースを含み、このシステムは、(i)少なくとも1つの前記出口ベントに流体結合され、このベントからヘリウムを含むガスを受けるブラッダーの内部を含むフレキシブルブラッダーと、(ii)内部に前記ブラッダーが含まれるコンパートメントの内部を有するコンパートメントと、(iii)前記コンパートメントの内部に流体結合されており、前記加圧された空気またはガスを前記コンパートメントの内部に供給し、ヘリウムを含むガスを含む前記フレキシブルブラッダーなブラッダーを圧縮するための加圧された空気またはガスのソースと、(iv)前記ブラッダーの内部に流体結合されており、前記圧縮されたブラッダーの内部から前記ヘリウムを含むガスを受けるガスリザーバと、(v)前記ガスリザーバに流体結合されており、前記ガスリザーバからの前記ヘリウムを含むガスを受け、前記ヘリウムを含むガスからのヘリウム以外のガス成分を除去するように働く少なくとも1つのガス精製モジュールとを含み、前記少なくとも1つのガス精製モジュールの出力は、前記キャリアガスの入口に流体結合されていることを特徴とするシステムが開示されている。
【0010】
第2の様相では、ガスクロマトグラフの分流ベントまたはセプタムパージベントから出力されるヘリウムガスを回収またはリサイクルするための方法であって、(a)前記分流ベントまたは前記セプタムパージベントからフレキシブルブラッダーの内部への前記ヘリウムガスを含むガス混合物の流れを受けるステップと、(b)前記フレキシブルブラッダーを圧縮し、前記ブラッダー内部からリザーバへ前記ガス混合物を排出するステップと、(c)精製されたヘリウムを回収するように、前記ガス混合物からのヘリウム以外のガス成分を除去する少なくとも1つのガス精製モジュールを通して、前記ガス混合物を前記リザーバから流すステップとを特徴とする、ヘリウムガスを回収またはリサイクルするための方法が開示されている。
【0011】
本発明の更に別の様相では、ガスクロマトグラフのためのキャリアガスとして使用されるヘリウムガスを収集し、再加圧し、精製し、再使用するためのシステムであって、
(i)入力ポートを有するバルブを含み、このバルブの入力ポートは、ガスクロマトグラフの分流ベントまたはセプタムパージベントを含む少なくとも1つの出口ベントに流体結合されており、前記少なくとも1つの出力ベントから出力されるヘリウムを含むガスを受けるようになっており、更に、
(ii)前記バルブの出力ポートに流体結合され、前記バルブからのヘリウムを含むガスを受けるようになっている内部容積部を有する容積可変ガス貯蔵手段と、
(iii)前記ヘリウムを含むガスを含む前記内部容積を圧縮するように作動する容積可変ガス蓄積手段に物理的に結合された圧縮手段と、
(iv)前記圧縮されたブラッダーの内部からの前記ヘリウムを含むガスを受けるように、前記内部容積に流体結合されたガスリザーバと、
(v)前記ガスリザーバからの前記ヘリウムを含むガスを受けるように前記リザーバに流体結合されると共に、前記ヘリウを含むガスからヘリウム以外のガス成分を除去するように作動できる少なくとも1つのガス精製モジュールとを備え、前記ガスクロマトグラフのキャリアガスの入口に前記少なくとも1つのガス精製モジュールの出力が流体結合されているシステムが開示されている。
【0012】
本発明の要旨に係わるシステムの収集および再圧縮部分は、バッグ閉じ込め容器の内部に収納された膜材料を含むガスバリアバッグを含むことができる。この膜材料は、好ましくはテドラー(Tedlar)(登録商標)のようなフレキシブルガスバリア材料、またはより好ましくはSorbentsystems.com.からのPAKVF4のような低透過率の金属フォイル−ポリマーラミネートフィルムを含む。分流ベントおよびセプタムパージ出力から収集されたガスによりバッグが膨張することによって、注入時間に続き、実質的に大気圧でヘリウムを収集することが可能となる。これによって正しいカラム流を維持するために、カラムヘッドの圧力が重要であるが、分流流れが重要でない注入後の時間インターバル中に収集をすることが可能となる。ほぼ大気圧で収集することにより、ガスクロマトグラフの分流およびパージ制御を過度に変更しないで、現在のガスクロマトグラフで本願に開示したシステムを利用することも可能となる。その後、バルブによりバッグが分流ベントおよびセプタムパージ出口からアイソレートされた状態になっているときに、低コストの空気コンプレッサまたは家庭用空気供給器を使って閉じ込め容器を加圧し、膜のガス圧縮を実行する。このガスバッグの圧縮により、収集されたガス部分が一方向チェックバルブを通してリザーバへ移される。必要な場合に、閉じ込め容器からノイズ抑制器へ圧縮された空気をベントし、サイクルを繰り返すことができる。圧縮器およびバルブの作動は、光学的に、または膜の近くにあるリードスイッチまたは接触スイッチを介して起動するように構成できる。これとは異なり、確立されたガスの流れと一致するように、膜を間欠的に圧縮するように、簡単なタイマー機構を設定してもよい。
【0013】
一部の実施形態では、このシステムの精製部分は、可能な場合には金属触媒を使用する熱分解路を内蔵でき、この金属触媒を使って残留汚染物が、妨害しない低分子量の化合物に反応的に変換されるのを保証できる。一部の実施形態では、精製部分は分子ふるいトラップを含むことができ、このシステムは、トラップの漏出を防止し、永久的ガスのような残留汚染物がガスストリーム内に累積しないことを保証するように、新鮮なヘリウムでトラップをバックフラッシングするための設備を含むことができる。好ましくは、本願に開示したシステムの構成によりガスクロマトグラフおよび/またはマススペクトロメータにより、回収されたキャリアガスの純度をモニタすることにより、ガスの自動検査またはトラップの漏出の識別を可能にする。
【0014】
縮尺どおりに描かれていない添付図面を参照し、単なる例として使用した次の説明から、本発明の上記およびそれ以外の種々の様相が明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の要旨に係わるヘリウム回収およびリサイクル能力を有する第1ガスクロマトグラフシステムの略図である。
【図2a】本発明の要旨に係わるヘリウム回収およびリサイクル能力を有する第2ガスクロマトグラフシステムの略図である。
【図2b】本発明の要旨に係わるヘリウム回収およびリサイクル能力を有する第3ガスクロマトグラフシステムの略図である。
【図3】本発明の要旨に係わるヘリウム回収およびリサイクル能力を有する第4ガスクロマトグラフシステムの略図である。
【図4】本発明の要旨に係わる自動化されたヘリウム回収およびリサイクル能力を有するガスクロマトグラフシステムの略図である。
【図5】組み合わされた、小寸法のテナックス(Tenax)(登録商標)、活性炭、シリカゲルトラップで塩化メチレン/ヘキサンが50:50の混合物の1マイクロリットル(μl)を注入した場合の漏出時間を示す収集データである。
【図6】再生バックラッシュ後の同じトラップで1μlの塩化メチレンを多数回注入した場合の漏出時間を示す収集データである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次の記載は、当業者が本発明を製造し、使用できるように記載したものであり、特定の用途およびその条件に関連して本発明について述べたものである。当業者には、ここに記載した実施形態の種々の変形例が容易に明らかとなろう。本願に記載の包括的原理は、他の実施形態にも適用できる。従って、本発明は、図示した実施形態および実施例だけに限定されるものでなく、本願に示し、記載した特徴事項および原理に従って可能な最も広い範囲に従うべきである。次の説明と共に、添付した図1〜6を参照すれば、本発明の特定の特徴および利点がより明らかとなろう。これら図では、マークを付した種々の部品を接続するラインは、ガス通路またはラインを示すものであり、これらラインは種々のチューブまたは毛管によって物理的に具現化でき、かかるガスライン上に記載した実線の矢印は、正常なクロマトグラフの稼働中、またはガス回収部品の回収部品におけるガスの流れを示す。図1〜3における点線の矢印は、本願で後述するように、バックラッシュ中のヘリウムの流れを示す。
【0017】
図1には、本要旨に係わる第1ヘリウム回収およびリサイクルシステム100が示されている。圧力レギュレータ102が外付けされているメインヘリウムガスソース101は、ガスクロマトグラフ108の入口ポート(一般的注入器)へ精製されたヘリウムキャリアガスをまず供給する。(簡潔にするために、前記クロマトグラフの空気圧制御システムしか図示されていない。)業務上入手できる超高純度ガスは、100万分の10までの微量成分を含むことがあるので、微量の水、酸素および炭化水素を除去するために、ガス供給部101とガスクロマトグラフ108との間に従来通り組み合わせトラップ134および可能な場合には酸素表示トラップ136を設けてもよい。ガスクロマトグラフ108は、注入期間中、公知の態様で、サンプルガス(図示せず)と多量の過剰なヘリウムキャリアガスとを混合させ、(分流注入の場合には)その結果生じる混合物の一部または(無分流注入の場合には)その混合物のほぼすべてをクロマトグラフのカラム112へ向ける。サンプルガスは、揮発性溶剤ガスとあらかじめ混合された被検体ガスを含むことができる。クロマトグラフのカラムは、サンプルガスをイオン化するためのイオンソースを有する質量スペクトルメータ(図示せず)へ出力できる。
【0018】
一般的なケースのように、ガスクロマトグラフシステム108は、キャリアガスフローを3つの部分に分流できる。すなわちクロマトグラフカラム112を通過するようにサンプル材料を推進するのに使用される第1部分と、クロマトグラフの入口システムのうちの入口セプタム(図示せず)をパージするのに使用される第2部分と、(分流注入の場合では)過剰なサンプル材料または(無分流注入の場合では)残留溶剤の溶液を運搬して除去するのに使用される第3部分とに分流できる。上記のように、組み合わされて、カラム112に送られる部分よりも容積が何倍かになっていることが多い第2部分と第3部分は、それぞれセプタムパージベント114aおよび部分ベント114bである出力ベントにより、クロマトグラフシステム108から出力される。キャリアガス回収システムがない場合、キャリアガスのこれら第2部分および第3部分はシステムから失われる。
【0019】
システム100の残りのコンポーネントは、ヘリウムキャリアガス回収コンポーネントを含む。図1に示されるように、分流ベントとパージベントとの組み合わせ出力は、収集され、ブラッダー120へ向けられる。これとは異なり、ブラッダー(貯気槽)120は、「収集バッグ」とも称される。ブラッダー120へ流入する分流/パージガスの流れは、ガスクロマトグラフの分流ベントおよびパージベントとブラッダーとの間に設置された第1の三方向バルブ116aによって制御できる。第1の構造では、第1バルブ116aが分流/パージガスをブラッダー内へ向け、このブラッダーはベントポート127もブロックしながら、ガスを収集する際に膨張する。第2の構成では、第1バルブ116aは、ブラッダーへの流れをブロックしながら、分流/パージガスを排出ベント127に向けるだけであり、この排出ベントでは、このベントにおいてシステムからガスが出るようになっている。ブラッダー120からの分流/パージガスの排除は、ブラッダーコンポーネント118と加圧空気(またはガス)ソース122、例えば空気コンプレッサ、研究室の空気ライン、または空気もしくはその他のガスの加圧シリンダとの間に設置された第2の三方向バルブ116bによって制御できる。ブラッダー120は加圧ガスソース122によって時々加圧されるブラッダーコンポーネント118内に密閉されている。第1の構成では、ガスが収集されている間、すなわち第1バルブ116aが第1の構成となっているときには、第2バルブ116bはポート124を通ってブラッダー120の外部にあるガスが出ることを可能にする。これと同時にバルブ116bは、ガスソース122がコンパートメント118を加圧することを防止する。第2の構成では、第2バルブ116bは、ソース122からのガスがポート124をブロックしながらブラッダー120を加圧できるようにする。バルブ116aが第2の構成となっている時間インターバル中に、この第2の構成が適用され、よってブラッダーから収集リザーバ129へ収集された分流/パージガスが変位可能とする。
【0020】
システム100の稼働中、ブラッダー120は分流ベントおよびパージベントから収集されたガスにより実質的に大気圧で繰り返し膨張する。ブラッダーの圧縮時間とブラッダーの膨張時間とが交互に続く。ブラッダーの圧縮期間中は、バルブ116aは(分流ベントおよびセプタムパージベントとブラッダーとの間の流体の連通を遮断し、分流/パージガスをベント127へ向けるよう)第2の構成となる。次にコンパートメント118が加圧され、ブラッダー120を圧縮し、よって収集されたガスを迅速にブラッダーからリザーバ129へ移動させる。ブラッダー120とリザーバ129との間に設置されている1方向チェックバルブ126は、リザーバからの収集されたガスのバックフローを防止する。ブラッダーの膨張時間中、コントローラ(図示せず)は加圧された空気ソース122が加圧された空気またはガスをブラッダーのコンポーネント118へ送らないこと、および第2バルブ116bがブラッダーの外部のガスがポンプベント124を通って排出できるようにすることを保証する。ブラッダー120は、フレキシブルなガスバリア膜材料、例えば塩化ビニールのポリマー(例えばテドラー(Tedlar)(登録商標))から製造されたフィルムまたはシートもしくは低透過率の金属フォイルポリマーラミネートフィルム、例えばsorbentsystems.comからのPAKVF4を含むことが好ましい。
【0021】
サンプルの初期注入によって揮発性溶剤の初期の高濃度パルスが生じ得る。したがって、この初期注入時間中、バルブ116aを第2の構成、すなわち「ベント」構成に維持し、よって収集されたヘリウムを過度に防止することなく揮発性溶剤およびマトリックス成分がベントできるようにする。注入期間中は、収集ブラッダーの、低いが重大な背圧分流モード注入のために分流ベント流量に悪影響を与えないよう、バルブ116aをこの状態に維持することも望ましい。注入に続く所定の時間インターバルにおいて、GC時限事象によってバルブ116aは第1の構成すなわち「収集」構成となり、よってブラッダーコンパートメント118内に収納されたブラッダー120内でほぼ大気圧にて、分流/パージガスを収集できるようにする。センサ(図示せず)がバッグフル状態を検出するか、または所定のインターバルが経過したときに、第1バルブ116aは第2の構成、すなわち「ベント」構成となり、クロマトグラフ108からブラッダー120への流れを防止し、第2バルブ116bは、第2の構成、すなわち「圧縮」構成となるので、収集されたヘリウムはブラッダー120から収集リザーバ129へ変位される。センサは、光センサを含んでもよいし、これとは異なり、バッグフル状態において膜の接近により作動されるスイッチ、例えばリードスイッチを含んでもよい。この「バッグフル」状態は、円形のフレームワーク内に一対の膜が取り付けられており、膜構造体の周辺が過度にしわが寄ることなく屈曲できるようになった状態となることが好ましい。これによって膜の寿命を長くすることが可能となる。
【0022】
上記ブラッダーの圧縮は所定の時間インターバル後、バルブ116bを第1の構成、すなわち「逆圧縮」構成にすることにより停止される。次に、収集された加圧ガスは、流れ制限器130および全体が132で示されている1つ以上の化学的トラップ、フィルタまたは反応器を通ってブリードできる。
【0023】
上記のように、ガスバリア膜を使用することによってキャリアモジュールの分流およびパージ制御の過度の乱れを生じることなく、ほぼ大気圧でガスを収集することが可能になる。分流流れレギュレーションがクリチカル、すなわち分流モードの注入となり得る注入時間中には、低い差圧が加えられないので、このようなことが可能である。加圧ガスの作用により、弾性限度内で膜は屈曲することが可能である。この膜はフレキシブルであるので、膜の前後で実質的に透過的な圧力が維持され、その結果、寿命が長くなる。
【0024】
以下に例について述べる化学的トラップ、フィルタまたは反応器132はシステム100の精製部分を含み、収集ガス内の汚染物を除去し、分解し、または(分析的な意味において)無害にする。かかる汚染物として、水、酸素、非分析物を溶解または希釈するのに使用される微量の溶剤、微量の分析物または他の炭化水素化合物を挙げることができる。システムの精製部分を出る精製されたヘリウムは、次にガスラインに再び流入する。このガスラインは、ガスクロマトグラフ108のキャリアガスの入口に接続されている。リザーバ129内で十分なガス圧が発生されると、回収システムからキャリアガスが完全に供給されるよう、レギュレータ102に作用するより高い圧力により、メインヘリウムガス供給部101が閉じられる。注入中にGCコラムを通してヘリウムが失われるか、または除去されるように分流されるにつれ、ガスの作動容積が再び確立されるように、レギュレータ102によって圧力の低下が補償される。流れ制限器130は、粒状または多孔質のガス透過性フリットを含んでもよいし、オリフィスまたは毛管を含んでもよい。この流れ制限器は、ガスクロマトグラフ108の圧力コントローラへ送られる圧力のサージをダンピングするだけでなく、十分な汚染物の除去が続くように、化学トラップまたは反応器132を通る流量も制限するように働く。
【0025】
図2aは、システム100(図1)の改善された変形例を示す、本要旨に係わる第2システム150を示す。このシステム150では、化学トラップまたはフィルタ135にはオプションとして加熱要素133が設けられており、この加熱要素133は、化学トラップを所定の温度まで加熱し、集められたヘリウムから除去された汚染物を脱着する。リザーバ129から入るヘリウムを選択的にブロックし、第2流れ制限器130bの後で、化学トラップ135からベントを通過する脱着された汚染物のガス発生を可能にするように、第3の三方向バルブ116cを設けることができる。同時に、流れ制限器130cを通過するヘリウムのバックフラッシュ流量を少なくするように、この三方向バルブ116cおよび第4の三方向バルブ116dを選択的に位置させることができる。
【0026】
図中の点線矢印はバルブ116cおよび130cがそれらのバックフラッシュ位置にあるときのバックフラッシュ流れを示す。バルブ116dは、回収されたガスに対して使用される通路の一部をバイパスするバックフラッシュ流れのクリーンなヘリウムパージガスのための別個の通路を提供するように構成できる。このオプションの別個の通路は、オプションの真空ポンプ131が使用されているときに、バックフラッシュパージガスが第3の流れ抵抗器130cを通過できるようにし、(オプションで加熱可能な)化学的トラップ(例えば分子ふるい)モジュール135内の真空状態を安定化するようになっている。このオプションの真空ポンプ131は、トラップが加熱されているときの脱着時間インターバル中に真空にすることにより、トラップの効率的な脱着を補助するのに使用できる。このことは、トラップに戻る空気の拡散によって生じる悪影響を生じることなく、効率的なパージを行うには、数sccmのヘリウムだけでよいので、無駄にされるヘリウムを最小にすることも可能にする。真空ポンプ131は、現行のGCMS真空システムの一部とすることができるので、コストを全くまたはほとんど増加させることなく、これら利点を得ることができる。
【0027】
図2bは、システム150に対し、改善された変形例を提供する本発明の要旨に係わる第3のガスクロマトグラフシステム300の略図である。図2bに示されたシステム300は、ほとんどの点でシステム150に類似しているが、精製システムがオプションの一対の加熱可能な化学トラップ135を含むという点で異なっている。したがって、システム300は、2つのトラップラインの間で切り替わることができる第5バルブ116eを含む。システム300の第2トラップラインは、第6バルブ116fと、第4流れ制限器130dと、オプションの第2真空ポンプ131と、第5流れ制限器130eと、第4バルブ116gと、第2のオプションの加熱可能な化学トラップ135とを含む。これらコンポーネントは、図2aを参照して既に説明した第1トラップの対応するコンポーネントに対し、並列な配置に構成されている。この実施形態によって、他のトラップが再生されている間、1つの化学トラップがリサイクルされて入力されるヘリウムをアクティブに精製できるようになる。このトラップの選択は、別のバルブ116eの位置に従って行われる。図2bの実施形態により、中断することなく、GCまたはGCMCの連続稼働が可能となる。再生は、ランツーラン(run−to−run)方式で生じ得るからである。この化学トラップモジュール135は、多くのタイプの化学汚染物を吸着し得る分子ふるい材料、例えば微細粒子の活性炭を含むことができる。これとは異なり、かかる分子ふるい材料は、他の一般的な電子ふるい材料、例えばアルミノシリケートミネラル、粘土、ゼオライトまたは効率的な合成多孔質ポリマー、例えばTenax(登録商標)、Carbosieve(商標)、Carboxen(商標)などのうちの1つ以上を含むことができる。吸着材料またはトラップモジュール135は、サンプルマトリックス、例えばマトリックスを希釈するのに存在したり使用したりできるガスまたは溶剤に基づいて仕様を変えることができる。多くの共通する有機化合物対種々の溶剤の漏出容積は、文献に公開されており、例えば米国ニュージャージー州リンゴーのサイエンティフィックインストラメントサービスから入手できる。種々の溶剤に適す吸着温度も利用可能である。
【0028】
図3は、本要旨に係わる第4のガスクロマトグラフシステム450の略図である。図3に示されたシステム450は、図2aを参照してこれまで説明し、図示されたシステム150と多くの点で類似しているが、システム450は、化学トラップモジュール135の他に熱分解路132aを含む点で異なっている。この熱分解路132aは、不純物の熱漏出を生じさせるのに使用され、この不純物は可能な場合にはヒーターを貫通するチューブ内に触媒、例えばニッケルチューブまたは粉状Ni金属が存在しているときに、ガスストリームの分子ふるいトラップを透過していることがある。この結果、熱分解ブレークダウン生成物が生じ、この生成物は、炭質デポジットとして、加熱されたチューブ内に付着するか、低分子量ガス(例えばホルムアルデヒド)として出て、その後、上記のようにトラップされ、パージされ、またはシステムからバックフラッシュされる。
【0029】
システム150、300および450(図2a、2bおよび3)のバックフラッシュ能力によって化学トラップモジュール135の分子ふるい材料の周期的なクリーニングが可能となり、分析後の、または数回の分析サイクルの後(例えば毎日)、この材料の吸着能力を再生できる。ヒーター133が含まれる場合、システムから汚染物が除去されるように、収集された汚染物の脱着を促進するように、バックフラッシュ中に加熱可能な化学トラップモジュール135を加熱できる。かかる稼働中、バルブ116c、116fは、汚染物を支持するパージガスがベントラインに向けられるように構成されている。トラップされた汚染物の急速な変化を補助し、少量のヘリウムだけを使って再生が可能となるようにオプションの真空ポンプ131を使用できる。クロマトグラフ108がガスクロマトグラフィー/スペクトロメトリ(GCMS)システムの一部を含む場合、質量スペクトロメータの現行の真空ポンプへベントラインを向けてもよい。
【0030】
上記バックフラッシュの稼働は、クロマトグラフ108が稼働していないときに通常実行されるようになっている。しかしながら、サンプルの1回のバッチの完了前に分子ふるいトラップ(特に小さいトラップ)の漏出時間が生じるようにすることもできる。図5を参照すると、ここにはSupelcoの部品番号21061-UとしてSigma-Aldrichから入手できる「タイプC」の組み合わされたTenax(商標)、シリカゲル、活性炭トラップから収集されたデータが示されている。このトラップは、EPA方法624に従った水サンプルのパージおよびトラップ分析のために一般に使用されるトラップである。50:50の塩化メチレン/ヘキサン混合物1マイクロリットルを1回注入した場合、50sccmのヘリウムの流量で10時間稼働させた後でも、トラップの漏出は生じないことが表示された。しかしながら、トラップが飽和すると、早期の漏出容積が課されることが知られている。図6は、図5と同じトラップを使用しているが、ある期間にわたって何回も注入を行う、より代表的なシナリオを使用した場合のデータを示す。この実験では、時間ゼロで開始し、その後、10分ごとのインターバルで1マイクロリットルの塩化メチレンの注入を行った。このデータは、小さいトラップ(使用されたトラップの大きさは、外径が約0.32cm(1/8”)×長さが約30.5cm(12”)である)に1マイクロリットルの塩化メチレンを多数回注入した場合、例えば14回注入し、2時間稼働させた後でもトラップの漏出は生じないことを示している。迅速な再生を行い、高いコストを回避するには、トラップの寸法を小さく保つことが望ましい。その理由は、合成の高効率の多孔性ポリマーの多くは高価であるからである。バックフラッシュ稼働に続くガス消費をなくすために流れ制限要素130bの後に別のオン/オフバルブを配置することもできる。
【0031】
図4は、本発明の要旨に係わる別のヘリウム回収およびリサイクルシステム170を略図で示す。図4は、図1を参照し、これまで図示し、説明したコンポーネントのすべてを示しており、自動化された稼働を行うためにシステムをどのように設定できるかも示している。図4における点線は、電気接続または電子信号接続を示す。コンピュータまたはその他のロジックコントローラ142は、センサ121、第1アクチュエータ123aおよび第2アクチュエータ123bと電気的な通信をする。オプションとして、このコンピュータまたはその他のロジックコントローラ142は、加圧空気またはガスソース122と電気的に通信するようにもできる。第1アクチュエータ123aおよび第2アクチュエータ123bは、それぞれ第1バルブ116aおよび第2バルブ116bの作動をそれぞれ機械的に制御するようになっている。
【0032】
光学センサまたは機械センサとすることができる自動化されたシステム170(図4)のセンサ121は、ブラッダー120が十分膨張したことを検出し、この情報をコンピュータまたは他のロジックコントローラ142に伝えるようになっている。ブラッダーが十分膨張すると、コンピュータまたはロジックコントローラ142は、第1アクチュエータ123aへ信号を送り、第1バルブ116aがベント114a、114bとブラッダー120との間の流体連通を遮断するようにする。コンピュータまたはロジックコントローラ142は、第2アクチュエータ123bにも信号を送り、第2バルブ116bが加圧空気またはガスソース122とブラッダーコンパートメント118の内部とを流体連通させる。更に、加圧空気またはガスソース122が空気ポンプを含む場合、コンピュータまたはロジックコントローラ142はかかる空気ポンプを附勢するための信号を送ることができる。バルブおよび加圧空気またはガスソース122がこのように構成された場合、ブラッダーへ加えられるガス圧はブラッダーを圧縮し、ブラッダーの内部に含まれる収集されたガスを排出する。バルブ116aは、このようなときにブラッダーからのガス流をブロックするように構成されているので、収集されたかかるガスのすべてがリザーバ129の方向に押し出される。更に、このとき第1バルブのクロマトグラフ108からベントされたガスを、ベント127に向けるようになっているので、クロマトグラフの正常な稼働が損なわれることはない。
【0033】
ブラッダーが圧縮されているプリセット時間の後で、コンピュータまたはロジックコントローラ142142は第1アクチュエータ123aへ信号を送り、ベント114a、114bをブラッダー120に流体連通させるように、第1バルブ116aの構成を定める。コンピュータまたはロジックコントローラ142は、第2アクチュエータ123bにも信号を送り、第2バルブ116bが、加圧された空気またはガスソース122とブラッダーコンポーネント118内部との間の流体連通を遮断するようにする。更に、加圧空気またはガスソース122が空気ポンプを含む場合、コンピュータまたはロジックコントローラ142は、かかる空気ポンプの作動を停止するための信号を送ることができる。そうでない場合、ブラッダー120の外部のガスがベント124に向けられている間、加圧ガスの流れを116bのようなバルブを使って単にブロックすることができる。このような構成の場合、センサが再びバッグのフル状態を検出する時間まで、ブラッダーはセプタムパージベント114aおよび分流ベント114bからのヘリウムを支持するガスを再び収集し、このような全サイクルが繰り返される。コントローラ142は、注入シーケンス中にガスクロマトグラフからのディスエーブル信号を受け入れることができることも理解されよう。これによって、コントローラ142は、注入サイクル中のガスの収集を停止させることができ、これによって溶剤の蒸気のベントを可能にするだけでなく、ブラッダー収集バッグ120によって加えられる背圧を防止できる。
【0034】
本願に開示されたシステムおよび方法は、従来のガスクロマトグラフ回収システムよりも優れたいくつかの利点を有する。第1の利点は、本発明の要旨により、ベントされるヘリウムが大気圧で収集されることから得られるものである。この特徴によって、制御装置の乱れをほとんど、または全く生じることなく、または制御装置を変更することなく、ガスクロマトグラフの電子圧力制御装置を作動させることが可能となっている。従って、本願に記載の回収機能および方法は、スタンドアローン設備およびGC−MS設備の双方を含む実質的にすべての現行のガスクロマトグラフで実施できる。第2の利点は、本願に記載したシステムは低コストで実現でき、これによって、関連する爆発の恐れなく、または分析上の欠陥を生じることなく、水素発生器に対してシステムをコスト的に競争できるようにしていることである。第3の利点は、本願の要旨が(特にGC−MSシステムのターボポンプの相互ステージまたは機械式ポンプ内への)主要トラップの熱バックフラッシングを考慮していることに関係する。この特徴によって、再生されるガスを過度に消費することなく、効率的かつ迅速な再生が可能となっている。更に、吸着される全汚染物を半定量的に測定するように、デソープサイクル中に機械式ポンプの前方圧力をモニタできる。最後に、本発明の要旨は、ガスストリームの自動検査を考慮している。この自動検査はGC−MSと組み合わせるので、バックフラッシュ組成を含む、再循環プロセス内の任意のポイントにおけるヘリウムの検査を含むことができる。質量スペクトロメータのイオンソースに対し、またはGC−MS分析前のクロマトグラフィのフォーカシングにより、直接サンプリングに必要な別のハードウェアを追加してもよい。これによってハードウェアは、メンテナンス、例えばトラップの交換を行うまで、ハードウェアは自動的に再循環部をバイパスすることができる。透過チューブから生じる揮発性の非妨害化学種のような低分子量のドーパントを、トラップインフルエントに設けるか、または永続的なガス種または熱分解生成物の累積物のモニタを、トラップ漏出のためのインジケータとして使用できる。再生サイクル(例えば全システムの真空化またはパージサイクル)の開始のためのトリガーとして、分析中の濃度のモニタを使用してもよいし、または別のトラップへのバイパスをトリガーしたり、別のトラップへの切り換えたりするためにこのモニタを使用してもよい。
【0035】
本願に記載された説明は、基本的な説明として役立つように意図したものである。図示し、記載した種々の実施形態に従ってこれまで本発明について説明したが、当業者であればこれら実施形態の変形例が存在でき、これら変形例は本発明の要旨の範囲内にあることを容易に認識できよう。特定の説明は、可能なすべての実施形態を明示的に説明したものではなく、多くの代替例が内在することについて読者は気づくはずである。
【0036】
変形をどのように行うことができるかの一例として、添付図面1〜4に示されたバルブ、ガス流ラインおよびその他の部品の特定の構造または配置は、説明上の単なる例として挙げたものであり、当業者であれば本発明の要旨を維持しながら、これら構造について多くの変形例を想到することができよう。第2の例として、ブラッダー内部から収集されたガスを排出するように、可撓性ブラッダーを圧縮する行為を、ブラッダーの外側に高い空気またはガス圧を加えることによって、簡単かつストレートフォワードに実行すると説明したが、他の多くの圧縮機構も想到できると理解できよう。例えば互いに接近する2つのアンビル、プレート、アームまたはジョーの間に収集ガスを含むブラッダーを配置し、ブラッダーを物理的に圧搾し、ブラッダーの圧縮およびガスの排出を実行することもできる。これとは異なり、2つのローラの間、または単一のローラと別のハードな表面との間にブラッダーを配置し、ブラッダーの長手方向に沿ってローラを移動させると、ブラッダー内部に蓄積されているガスの排出を生じさせることができる。
【0037】
広い意味において、ブラッダー自身を一般的なクラスの容積可変ガス蓄積システムの1つの部材として見なすことができる。本願に記載の同じ機能を達成できるこの種の部材の別の明らかな例として、内燃機関で使用されるようなシリンダ内ピストンの配置がある。このピストンは、ガス密であるが、低摩擦シールに沿って関連するシリンダ内をスライドできる。シリンダとピストンによって形成されたチャンバ内にバルブまたはポートを通してヘリウを含むガスが進入すると、内圧を大幅に上昇させることなく、ピストンは外側に移動させられ、チャンバ容積を拡大する。これとは異なり、分流ポートおよびパージ出口ポートを実質的に大気圧に維持するように、モニタされた圧力に応答して機械式ドライブ機構を使って、ピストンの位置を変えることもできる。後にガスを排出するために、ピストンに対して外部の力を加え、ピストンをシリンダ内に移動させ、同じまたは異なるバルブもしくはポートを通してガスを排出することができる。更に、これまで説明したガス膜構造体を液圧流体、例えば鉱物油内に浸漬することもできる。液圧流体は、圧縮されるガスの消費量が少ないという利点を有しながら、これを機械式または空気圧式に圧縮できる。このような実現例は、不良なガス透過品質を有するような弾性度の大きい膜も内蔵できる。従って、液圧流体は、膜を通る酸素ガスの拡散を最小にする第2機能を奏すことができる。
【0038】
従って、本発明の要旨から逸脱することなく、当業者により多くの変形を行うことができる。本明細書の説明も、その用語も、発明の範囲を限定するものではない。本明細書で引用されている刊行物、特許または公開特許出願全体を本願で参考例として明確に援用する。
【符号の説明】
【0039】
100 回収およびリサイクルシステム
101 ヘリウムガスソース
102 圧力レギュレータ
108 ガスクロマトグラフ
112 クロマトグラフカラム
114a セプタムパージベント
114b 分流ベント
116a 第1三方向バルブ
116b 第2三方向バルブ
118 ブラッダーコンパートメント
120 ブラッダー
122 加圧空気ソース
124 ポート
127 排出ベント
129 リザーバ
130 流れ制限器
132 トラップ
134 組み合わせトラップ
136 酸素表示トラップ
150 第2システム
300 第3システム
450 第4システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスの入口および分流ベントまたはセプタムパージベントを含む少なくとも1つの出口ベントを有するガスクロマトグラフのためのキャリアガスとして使用されるヘリウムガスを収集し、再加圧し、精製し、再使用するためのシステムであって、このシステムは、キャリアガスの入口に精製されたヘリウムガスを供給するための精製されたヘリウムガスのソースを含み、このシステムは、
(i)少なくとも1つの前記出口ベントに流体結合され、このベントからヘリウムを含むガスを受けるブラッダーの内部を含むフレキシブルブラッダーと、
(ii)内部に前記ブラッダーが含まれるコンパートメントの内部を有するコンパートメントと、
(iii)前記コンパートメントの内部に流体結合されており、前記加圧された空気またはガスを前記コンパートメントの内部に供給し、ヘリウムを含むガスを含む前記フレキシブルブラッダーなブラッダーを圧縮するための加圧された空気またはガスのソースと、
(iv)前記ブラッダーの内部に流体結合されており、前記圧縮されたブラッダーの内部から前記ヘリウムを含むガスを受けるガスリザーバと、
(v)前記ガスリザーバに流体結合されており、前記ガスリザーバからの前記ヘリウムを含むガスを受け、前記ヘリウムを含むガスからのヘリウム以外のガス成分を除去するように働く少なくとも1つのガス精製モジュールと、を有し、
前記少なくとも1つのガス精製モジュールの出力は、前記キャリアガスの入口に流体結合されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
(vi)前記少なくとも1つの出口ベントと前記ブラッダーの内部との間に流体結合され、前記ブラッダーの圧縮機に少なくとも1つの出口ベントと前記ブラッダーの内部との間の流体連通を遮断するように作動可能なバルブを更に有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バルブは、前記ブラッダーの圧縮中に前記ヘリウムを含むガスを排出ベントに向けるように更に作動できる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
(vi)前記ガスリザーバと少なくとも1つのガス精製モジュールとの間に流体結合された流れ制限器を更に有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
(vi)前記ブラッダーの内部と前記ガスリザーバとの間に流体結合されており、前記ガスリザーバから前記ブラッダーの内部への前記ヘリウムを含むガスの流れを防止するように働く一方向バルブを更に有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのガス精製モジュールは、熱分解路を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガス精製モジュールは、更に分子ふるいモジュールを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガス精製モジュールは、前記ガスリザーバからの前記ヘリウムを含むガスを受けるように構成された入力端および出力端を有する分子ふるいモジュールを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
(vi)前記出力端を通して前記分子ふるいモジュール内に前記精製されたヘリウムガスの流れを供給するための、前記精製されたヘリウムガスのソースと前記ふるいモジュールの前記出力端との間の流体結合と、
(vii)前記リザーバと前記分子ふるいモジュールの前記入力端との間に流体結合されており、前記分子ふるいモジュールの前記入力端からの前記精製されたヘリウムガスの流れを受け、前記精製されたヘリウムガスの前記流れを排出ベントへ向けるように構成可能なバルブを更に有することを特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
(viii)前記分子ふるいモジュールに結合されたヒーターを更に有することを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記排出ベントに流体結合された真空システムを更に有することを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記真空システムは、質量スペクトロメータの真空システムである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記排出ベントは、マススペクトロメータのイオンソースに流体結合されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記ブラッダーは、低透過率の金属フォイル−ポリマーラミネートフィルムであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記ブラッダーは、フッ化ビニールのポリマーから製造されたフィルムまたはシートを含むことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記ガスリザーバと少なくとも1つの精製モジュールとの間に流体結合された第1バルブと、
前記第1バルブに流体結合され、ヘリウムを含むガスからのヘリウム以外のガス成分を除くように作動できる少なくとも1つの別のガス精製モジュールと、を更に有し、前記第1バルブは、前記ヘリウムを含むガスを前記少なくとも1つの精製モジュールまたは前記少なくとも1つの別のガス精製モジュールのいずれかに向けるように構成でき、前記少なくとも1つの別のガス精製モジュールの出力は、前記ガスクロマトグラフの前記キャリアガスの入口に流体結合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つのガス精製モジュールは、前記第1分子ふるいモジュールの入力端および出力端を有する第1分子ふるいモジュールを含み、前記少なくとも1つの別のガス精製モジュールは、前記第2分子ふるいモジュールの入力端および出力端を有する第2分子ふるいモジュールを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記分子ふるいモジュールのそれぞれの入力端を通して前記精製されたヘリウムガスの流れを前記第1分子ふるいモジュール内へ、または前記第2分子ふるいモジュールのそれぞれの出力端を通して前記第2分子ふるいモジュール内へ、前記精製されたヘリウムガスの流れを供給するための精製されたヘリウムガスの前記ソースと前記第1および第2分子ふるいモジュールの出力端との間に設けられた流体カップリングと、
(ix)前記第1バルブと前記第1分子ふるいモジュールの前記入力端との間に流体結合されており、前記精製されたヘリウムガスを第1ベントに向けるように作動できる第2バルブと、
(x)前記第1バルブと前記第2分子ふるいモジュールの前記入力端との間に流体結合されており、前記精製されたヘリウムガスを第2ベントに向けるように作動できる第3バルブとを更に有することを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
(vi)前記ブラッダーの内部と前記少なくとも1つの出口ベントとの間の前記流体結合を調節するように作動できる第1アクチュエータと、
(vii)前記コンパートメントの内部と加圧空気またはガスの前記ソースとの間の流体結合を調節するように作動できる第2アクチュエータと、
(viii)前記フレキシブルブラッダーの膨張の程度を検出するよう、前記フレキシブルブラッダーに結合されたセンサと、
(ix)前記第1および第2アクチュエータ並びにセンサに電気結合された電子コントローラであって、前記電子コントローラは、前記センサから受信した信号に応答して前記第1および第2アクチュエータへ制御信号を送るように作動できる前記電子コントローラと、
を更に有することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
ガスクロマトグラフの分流ベントまたはセプタムパージベントから出力されるヘリウムガスを回収またはリサイクルするための方法であって、
(a)前記分流ベントまたは前記セプタムパージベントからフレキシブルブラッダーの内部への前記ヘリウムガスを含むガス混合物の流れを受けるステップと、
(b)前記フレキシブルブラッダーを圧縮し、前記ブラッダー内部からリザーバへ前記ガス混合物を排出するステップと、
(c)精製されたヘリウムを回収するように、前記ガス混合物からのヘリウム以外のガス成分を除去する少なくとも1つのガス精製モジュールを通して、前記ガス混合物を前記リザーバから流すステップと、を有することを特徴とする、ヘリウムガスを回収またはリサイクルするための方法。
【請求項21】
前記圧縮ステップ(b)は、前記フレキシブルブラッダーを圧縮し、前記ブラッダー内部から一方向チェックバルブを通して前記リザーバ内へ前記ガス混合物を排出することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記フレキシブルブラッダーの内部への前記ヘリウムガスを含むガス混合物の流れを受ける前記ステップ(a)を、実質的に常圧にて前記フレキシブルブラッダーの内部で実行し、前記ブラッダー内部から前記リザーバ内へ前記ガス混合物を排出するように前記フレキシブルブラッダーを圧縮する前記ステップ(b)は、常圧よりも高い圧力で前記ガス混合物を前記リザーバ内に進入させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記圧縮ステップ(b)は、
(b1)前記ガス混合物の前記流れを排出ベントへ向けるようにバルブを構成するステップと、
(b2)前記ブラッダーが圧縮されるように、前記ブラッダーを含むコンパートメントの内部へ加圧ガスを供給するステップを含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記リザーバから少なくとも1つの精製モジュールを通過するように前記ガス混合物を流す前記ステップ(c)は、熱分解路を通過するように前記ガス混合物を流すことを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記リザーバから少なくとも1つの精製モジュールを通過するように前記ガス混合物を流す前記ステップ(c)は、分子ふるいモジュールを通過するように前記ガス混合物を流すことを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
(d)前記回収され、精製されたヘリウムを前記ガスクロマトグラフのキャリアガスの入口に向けるステップを更に有することを特徴とする、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−513816(P2013−513816A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544660(P2012−544660)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/059967
【国際公開番号】WO2011/075417
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)