説明

ガスクロマトグラフ用のヘリウム保存装置

【課題】ガスクロマトグラフ用のヘリウム保存装置を提供する。
【解決手段】ガスクロマトグラフシステムにおいてヘリウムガスを保存するための装置は、分析分離の大部分の際、ヘリウムがキャリアガスとして使用され、補助の非ヘリウムガスが入口を加圧するのに使用され、セプタムパージ及びスプリットベントフローを提供することを特徴とする。注入期間に先立って、同軸ヘリウムフローがカラム入口に形成され、この同軸ヘリウムフローはカラムフローよりも少ない。注入及び試料移送期間の後、同軸ヘリウムフローが形成され、このフローはカラムフローよりも多い。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来のガスクロマトグラフ用のスプリット/スプリットレス(SSL)即ち昇温気化型(PTV)注入口は一般的に、実際の分析分離(カラムフロー)に利用されることよりも、スプリットベント及びセプタムパージベントで使用されることによって多量のキャリアガスを消費する。例示されるように、約1標準立方cm/分(sccm)のキャピラリーカラムフローは、50sccm以上のスプリットフローと5sccmのセプタムパージフローとを有してもよい。このような消費を低減させる1つの従来技術の方法、例えば「ガスセーバー」は、注入期間の後のスプリットフローを低減させることができる。しかしながら、スプリットフローを低すぎる値に低減させると、基準線を上昇させるという望ましくない結果を生じさせることがある。これは、試料マトリックスから導入される高分子量の不純物の頻繁な脱ガス化、Oリング、注入口セプタム、及び/又はこのようなセプタムのコアリングのようなポリマーシールの脱ガス化によって引き起こされることがあり、或いはセプタムから逆拡散した高濃度の酸素によるカラム固定相の酸化によって引き起こされることがある。これらの不純物の低減は、従来は、多量のスプリットフローの使用による希釈によって行われてきた。
【0002】
図1は、従来技術の典型的なガスクロマトグラフ入口システムを例示する。このシステムは、液体試料を注入するためのスプリット/スプリットレス(SSL)インジェクタを含む。キャリアガスが、電子式圧力コントローラを介してインジェクタに送出される。ガス供給、例えばヘリウムが、圧力を受けて、ガス取付具に導入される。微細フィルタ、例えばステンレス鋼フリットが、比例弁の動作を詰まらせることがある、あらゆる粒状物を除去する。比例弁は、インジェクタの本体内の設定圧力を維持して、分析カラムの計算フローを形成する。制御回路(図示せず)へのフィードバックループを提供する圧力センサを使用してインジェクタの圧力を検知することによって、比例弁を制御することができる。必要ならば、潜在的な不純物、例えば炭化水素及び/又は酸素のキャリアガスを除くため、ケミカルトラップを備える。付加的な比例弁が、レストリクタにおける圧力低下を計算することによって、セプタムパージベント及びスプリットベントからそれぞれ送出されたキャリアガスの一部のパージ及びベントを可能にする。
【0003】
図2は、図1に示される従来技術のSSLインジェクタの詳細な例を例示する。セプタムナットによって適所に保持されたセプタムに、小さなシリンジ(図示せず)の針が突き刺されており、液体を入口ライナー内でフラッシュ気化させる。ヒータブロックの温度は、ヒータ組立体(図示せず)によって調節される。インジェクタ組立体に入るガスの供給が、キャピラリーカラム中のフローを形成する。2つの作動モード、即ちスプリットとスプリットレスがある。
【0004】
スプリット注入モードでは、スプリットラインを出るスプリットフローが形成される。スプリットラインを出るフローは、図1の電子式圧力コントローラによって制御される。このモードは、カラムの過負荷又はカラムの末端で使用される検出システムの飽和を回避するため、濃縮された分析物の注入に使用される。
【0005】
スプリットレス作動モードでは、スプリットラインは、注入時に閉鎖され、試料材料の大部分をキャピラリーカラムに移送させる。規定の時間の後、スプリットベントを開放して残留溶剤蒸気をベントし、汚染された表面からガス抜けするあらゆる不純物を希釈する。
【0006】
両方のモードにおいて、スプリットフロー及びセプタムパージフローのために、分析分離を実施するガスクロマトグラフィ(GC)カラムフローに必要とされるよりもかなり多量のキャリアガスが使用される。スプリット又はスプリットレス注入の後、典型的には、多量のスプリットフローが維持され、残留不純物の脱ガスを希釈する。これにより、高純度のガス、例えばヘリウムが大量に消費されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ヘリウムは、次第に高価になり、世界のいくつかの地域において調達するのが困難になっている。ヘリウムは多くの場合、感度、効率性、化学的不活性、安全性、又は他の事柄のため、選択するのが好ましいガスである。代わりのキャリアガス、例えば、水素又は窒素は、場合によっては使用することができる。質量分析計検出に基づくシステムでは、水素は、電子衝撃イオン化(EI)に対する感度を低減させ、イオン源に脱ハロゲン化水素反応を発生させることがあり、窒素は、電荷交換反応を生じさせることがあり、キャリアガスとしての有効性が乏しいことが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるガスクロマトグラフシステムをパージする方法は、第1モードと第2モードを選択することを含む。第1モードは、最大のヘリウム保存を可能にし、第2モードは、最小の方法衝撃、例えば、保持時間及び検出器の応答を可能にする。
【0009】
最大のヘリウム保存が選択されると、入口に、非ヘリウムである補助ガスが供給される。非ヘリウムガスの圧力は、所定のカラムフローに対応するように設定される。注入期間の際、同軸ヘリウムフローが、分析キャピラリーカラムの端部のまわりに形成され、同軸ヘリウムフローは、カラムフローよりも少ない。注入期間の後、同軸ヘリウムフローが、分析キャピラリーカラムの端部のまわりに形成され、同軸ヘリウムフローは、カラムフローよりも多い。
【0010】
最小の方法衝撃が選択されると、入口にヘリウムが供給され、ヘリウムガスの圧力は、所定のカラムフローに対応するように設定される。注入期間の際、同軸ヘリウムフローが、分析キャピラリーカラムの入口端部のまわりに形成され、同軸ヘリウムフローは、カラムフローよりも少ない。注入期間の後、同軸ヘリウムフローが、分析カラムの入口端部のまわりに形成され、同軸ヘリウムフローは、カラムフローよりも多い。次いで、入口に補助ガスが供給される。補助ガスは、水素、窒素、又はアルゴンであってもよい。
【0011】
本発明によるガスクロマトグラフ(GC)システムに関する一実施形態は、ヘリウムガス源と、非ヘリウム補助ガス源とを備えている。導管が、分析カラムの入力端部を取り囲む。三方弁が補助ガスとヘリウムのうちの一方を受け入れる。電子式圧力コントローラ(EPC)が、三方弁に接続し、上述の両方の作動モードを可能にする。別のオン/オフ弁が、ヘリウムを目盛付きフローレストリクタから受け入れる。弁は、インジェクタと分析カラムとの間に置かれたTコネクタのところで2つのフローレベルの設定を可能にする。ガスクロマトグラフ検出器が、分析カラムの出力部に接続される。インジェクタは、動作のスプリットで作動させても又はスプリットレスモードで作動させてもよい。場合により、加熱したプレカラムが、インジェクタの出力部とTコネクタとの間に置かれてもよい。
【0012】
本発明によるガスクロマトグラフ(GC)システムに関する別の実施形態は、末端にねじ込みステムを有するインジェクタを備えている。ねじ込みステムは、ねじ込みステムの上端に入力部及びねじ込みステムの下端に出力部を有する導管を備えている。インジェクタ本体の内部に、注入口ライナーと、注入口ライナー内の導管と、導管に収容された分析カラムと、導管のまわりに注入口ライナー内に同軸に位置決めされたフェルールと、インジェクタ本体に隣接し、フェルールが圧縮されるように、ねじ込みステム付近に位置決めされたライナー支持体及びベースとが設けられる。溝付きガスケットがベースとねじ込みステムとの間に置かれる。溝付きガスケットの各面は、環状溝を含む。バイアが環状溝の間に延びている。弁が、ヘリウムをインジェクタのベースに供給する導管の入力端部と連通する。2つのヘリウム流量の一方を分析カラムの入力端部に形成するために、フローレストリクタが利用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術のスプリット/スプリットレス注入システムを示す。
【図2】従来技術のスプリット/スプリットレスインジェクタを示す。
【図3】本発明の短い幅狭ボア組立体を使用する図2のスプリット/スプリットレスインジェクタの下端部を示す。
【図4】既存のインフィールド・ガスクロマトグラフに適用される本発明の別の実施形態を例示する。
【図5】ヘリウムを保存する本発明の作動を説明するフローチャートを例示する。
【図6】補助ガスとして窒素を、キャリアガスとしてヘリウムを使用して収集されたスプリットレスデータを例示する。
【図7】従来のやり方でのみヘリウムを使用して収集されたスプリットレスデータを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図3は、本発明の実施形態を例示する。この実施形態では、SSLインジェクタの下部分が、ヘリウムガスを分析カラムの端部の上を選択的に通過させるように設計されている。入口を加圧し、スプリットフロー及びセプタムパージフローを提供するために、ヘリウム以外のガスを従来のやり方でインジェクタに導入する。新規なSSLインジェクタ本体を、図1に開示されたシステムにおいて使用してもよい。
【0015】
導管の上端、例えば、奪活された溶融シリカ管38の短部分が、注入口ライナー(図示せず)の領域の範囲内に配置される。分析カラム40が、管38の内部に配置される。ライナー支持体42及びベース44が、封入グラファイトフェルール48を圧縮させるように、ねじ込みステム46のところでネジで固定されている。これは、溶融シリカ管38とベース44とのガス密シールを維持する。軟質金属製のガスケット50が、ベース44とインジェクタの末端10Aとの間に位置決めされ、ベース44とインジェクタ本体10とのシールを形成する。保持ナット(図示せず)が、ベース44をインジェクタ本体10のねじ部分52に固定する。
【0016】
溶融シリカ管38の短部分は、分析カラム40の外径よりも僅かに大きい内径を有するように選択されている。例えば、内径0.25mm又は0.32mmの大多数の分析カラムに対して、内径0.53mmのメガボア管が適している。好ましくは、管は、不活性化されており、固定相を含んでいない。或いは、管のこの部分を、ガラスで内張りされたステンレス鋼管、Silcosteel(登録商標)管、又は他の適当な不活性材料で製造することができる。
【0017】
この例示的な例では、分析カラム40は、好ましくは管38の最上端の1cmの範囲内まで延びている。これは、カラムの入口を高温インジェクタ本体内に置くのを可能にし、間隙容積の影響を最小にし、分析の際、補助ガスに対する十分な逆拡散バリアを可能にする。ガスケット50は、金属製のガスケット50の各面に設けられた環状溝の切れ目の形態の一対のガス流路54A、54Bを含む。平面図において11として示されるガスケット50はまた、上部溝通路54Aと下部溝通路54Bとの流体連通を形成するため、ガスケット50の中心線上に置かれた穴56を含む。ベース44の末端58は、保持ナット及びフェルール(簡単のため図示せず)が分析カラム40とベース44との間にシールを形成することができるように、ねじ込まれる。導管60が、ヘリウムフローを上部溝流路54Aに供給する。ヘリウムは、穴56に到達するまで、上部溝流路のまわりを流れる。次いで、ヘリウムは、穴56を通って下部溝流路54Bに入り、ベース44の入口個所55に至る。ベース44は、ヘリウムが溶融シリカ管38の外側のまわりを流下して間隙容積をスイープし、次いで管38内を上方に進み、分析カラム40の入力端部を通過した後、最後にインジェクタ内部に至るのを可能にする。導管60内に形成されたフローは、注入期間の後にカラム40に送出される計算カラムフローよりも僅かに多くするべきである。例示すると、1sccmの計算カラムフローに対して2sccmの導管フローを使用することができる。
【0018】
導管60によって送出されるフローを、数学的モデルを使用して計算することができ、又はカラム40に送出されるガス中の補助ガスの存在を監視しつつ当該フローを調整することによって実験的に最適化することができる。例示されるように、窒素がインジェクタに送出される補助ガスであり、検出システムが質量分析計を利用している場合には、カラム流出物中の窒素の存在量に対して、空気/水スペクトルを監視することができる。従って、カラム内への窒素の過度の逆拡散を防止しつつ、ヘリウムの消費を最小にするように、ヘリウムフローを調整することができる。
【0019】
図3のインジェクタ10内への試料の注入の際、導管60内へのヘリウムフローをオン/オフ弁62を閉鎖することによって遮断することができ、これにより送出されるヘリウムフローをカラムフロー以下に低減させる。その際、補助ガスは、分析カラム40上に試料成分をスイープする。間隙容積のスイープを支援し、ピークテーリングを低減させ、ガスライン中への溶剤蒸気の逆拡散を防止するため、カラムフローの一部を(完全に停止させるのではなく)低い値、例えば0.05sccmまで低減させるのが好ましい。試料の注入及び分析カラム40への試料の移送の後、弁62を開放することによって導管60内にヘリウムフローを再形成し、補助ガスを使用してインジェクタをパージしつつ、クロマトグラフ処理は多量の分析分離に対してヘリウムを利用する。
【0020】
図3の実施形態は、成分の回転位置決めを免除される再組み立てを可能にしつつ、メンテナンス及びカラムの位置決め目的のためシステムから取り除いてもよいハードウェアを使用する。これは、顕著な使い易さを提供する。
【0021】
GCキャピラリーカラムを通るフローは典型的には、入口圧力を設定することによって形成される。以下のポアズイユの式を使用して、ガス粘度、カラム寸法、及び入口圧力と出口圧力に関する従来の知識によって、フローを計算して制御することができる。
【数1】

式中、
iは入口圧力
oは出口圧力
Lはカラムの長さ
ηはガスの粘度
rはカラムの内半径
【0022】
入口圧力が既知であるので、導管60を電磁弁62及び既知の寸法のフローレストリクタ64にオーブン(図示せず)の外部で固有に接続することができ、従って、分析カラムの入力端部におけるヘリウムフローに影響を及ぼすように、圧力をその上流で設定することができる。カラムの端部付近における長さ約1cm、内径0.53mmの管に生ずる小さな圧力低下は、電子式圧力制御を維持し、従来技術の方法とほぼ同一の保持時間が得られることを確実にする。電子式圧力制御(EPC)の機能は、図3の管38へのヘリウム送出の作動によって損なわれない。カラムへのヘリウムフローは、インジェクタ中の補助ガスの水頭圧力によって維持され、過剰なヘリウムは、インジェクタ内で上方に単にそらされ、そこで多量の補助ガスのパージに寄与する。不活性化された溶融シリカ管38の不活性性質は、その短い長さと共に、最小の表面活性及び効率的な試料移送を確実にする。
【0023】
この例示的な例では、導管60は、304ステンレス鋼の管(外径0.9mm、内径0.5mm、長さ300mm)で形成してもよい。導管は、高温のインジェクタ本体10に取り付けられ、反対側の端部が、電動弁、例えば、低死容積電磁弁62及びGCオーブン(図示せず)の外部に周囲温度で搭載されたキャピラリーレストリクタ64に取り付けられている。キャピラリーレストリクタ64は、内径を50ミクロン、長さを500mmにすることができる。レストリクタ64が入口端部66のところで100psigに加圧されるとき、弁62を開放し、インジェクタを周囲圧力付近で作動させると、2.8sccmのヘリウムフローが再形成される。レストリクタの入力が比較的高圧に維持されるので、レストリクタのフローが過度に低下することなしに、インジェクタ10を高圧で作動させることができる。これにより、ハードウェアの実装が簡素化される。例えば、インジェクタの圧力を30psigに増加させると、レストリクタフローが2.4sccmに低減し、分析(1.0sccm)と例えば内径0.25mmの分析カラムの小孔に対する顕著な逆拡散の防止の両方に関して十分なフローを可能にする。同様にして、レストリクタ68は、電磁弁62の閉鎖時に0.05sccmの少量の残留パージを送出するため、内径15ミクロン、長さ200mmにすることができる。
【0024】
限定するわけではないが、プログラマブル圧力及び/又はフローコントローラ、手動の空気圧駆動式コントローラ及びレギュレータ、副入口圧力コントローラを含む最新の技術で知られる任意の手段によって、例えば、(目盛付きレストリクタを加圧する副GC入口空気圧駆動式モジュールから)導管60へのヘリウムフローを形成することができる。注入期間の際にヘリウムフローを補助ガスとして使用させる別の構成も可能であるが、ヘリウムの消費量が多くなるであろう。
【0025】
図4は、既存のインフィールド・クロマトグラフでどのようにして使用することができるかを例示する本発明の別の実施形態を例示する。PTV又はSSLインジェクタ72と電子式フローコントローラ74とを備える入口システム70に、プレカラム76の短部分及び小さな加熱帯域80内に収容された低死容積のT部品78が装備されている。加熱帯域80の温度制御を、外部コントローラによって、又は一般的なGCシステムでよく見られるような新品の補助ヒータ溝によって行うことができる。プレカラム76は、できるだけ短いものであるのが好ましく、長さが数cm、内径が0.53mmの溶融シリカ管、鋼被覆溶融シリカ管、ガラスで内張りされたステンレス鋼管等を含む。分析カラム82の入口は、T部品78を通過し、好ましくは最上端まで1cm以内の、加熱したプレカラム76内で終わっている。三方電磁選択弁84は、供給個所86における補助ガス又は供給個所88で送出されるヘリウムのうち一方の選択を可能にする。弁84は、注入期間に、(場合により)ヘリウムと補助ガスとの選択を可能にする。或いは、三方弁84は、ヘリウムと補助ガスとの隔離を優先させようとする場合には、一対のオン/オフ弁を備えることができる。オン/オフ型式の第2弁90が、2sccmのような分析カラムフローの上方にフローが設定されたキャピラリーレストリクタ92を介して、供給個所88からヘリウムフローを受け入れる。レストリクタの寸法は、インジェクタ72の圧力の振れ幅に基づき所定のフロー範囲を形成するように、供給個所88の入力圧力に基づいて選択することができる。実際のフローは、性能に影響を及ぼすことなしに、例えば2〜4sccmで変動することができる。キャピラリーレストリクタ94が、間隙容積の影響の補整用に低パージフローを送出するため、導管96のフロー経路に配置される。キャピラリーレストリクタ94によって送出されるフローは、分析カラムフロー以下であり、例示の目的のため、0.05sccmとすることができる。第2電磁弁90を操作して、ランタイムの期間の際に2sccmのフローをT部品78に送出し、或いは注入の期間の際、GCオーブンのクールダウンの際、又は任意の非ランタイム期間の際に、第2電磁弁90のスイッチをオフにすることができる。非ランタイムの際における弁のオフへの切り換えは、器具が使用されずに代わりにカラムフローに対して補助ガスが利用されるとき、ヘリウム消費量をほぼゼロ(0.05)に低減させることができる。最新のガスクロマトグラフの時間事象プログラム機能を使用して、電磁弁84、90の起動を行うことができる。
【0026】
補助ガスとして窒素を使用する実施形態が好ましい。窒素は、ヘリウムに十分近い粘度を有し、既存のインフィールド・クロマトグラフにおける多くの既存のセプタムパージ及びスプリットベントのハードウェア構成に関して、修正せずに適当なフロー制御を可能にする。粘度が同様であることは、注入の際、適当な試料負荷も可能にする。ヘリウムに対する例えば水素の粘度の大きな変動は、注入期間に補助ガスとしてヘリウムを使用することによって、又は注入の際にカラムの水頭圧力を変えることによって、補整することができる。本発明の実施形態と共に市販の水素又は窒素ガス発生器を使用することも、高圧シリンダの数及び/又は高圧シリンダを交換する必要頻度を大幅に低減させる。高圧シリンダを介して又は液体アルゴンデュアー瓶のガス出力弁からのガスとして送出される低コストの不活性ガスとして、アルゴンを利用するのも有益である。
【0027】
GC入口を加圧するのに一般には用いられないガス種も潜在的に使用することができることも想定される。例えば、二酸化炭素のような液化できるガスは低コストであり、ガスがシリンダの範囲内で液状形態で存在するので、シリンダ毎に多量のガス容積が利用可能である。
【0028】
図5は、ガスクロマトグラフの作動のためのヘリウム保存のフローチャートを示す。ステップ100では、試料の注入に際に入口に存在するガスの選択に関して、選択がなされる。ユーザは、最大ヘリウム保存にするか、最小方法衝撃、例えば早期溶出成分の保持時間の保全にするかを決定してもよい。
【0029】
最大ヘリウム保存については、好ましい選択は、窒素又はアルゴンのような非ヘリウムガスである。この事象の順序は経路Aで示される。ステップ104では、入口に非ヘリウムガスが供給される。ステップ106では、非ヘリウムガスの圧力は、所定のカラムフローに対応するように設定される。ステップ108では、注入期間の際、同軸ヘリウムフローが分析キャピラリーカラムの端部のまわりに形成される。このフローは、カラムフローよりも少ない。ステップ110では、注入期間の後、同軸ヘリウムフローが分析キャピラリーカラムの端部のまわりに形成され、これはカラムフローよりも多い。
【0030】
最大不活性及び早期溶出成分の保持時間の保全(最小方法効果)については、事象の順序は経路Bで示される。ステップ112では、入口にヘリウムガスが供給される。ステップ114では、ヘリウムガスの圧力は、所定のカラムフローに対応するように設定される。ステップ116では、注入期間の際、同軸ヘリウムフローが分析キャピラリーカラムの端部のまわりに形成される。このフローはカラムフローよりも少ない。ステップ118では、注入期間の後、同軸ヘリウムフローが分析カラムの入口端部のまわりに形成される。このフローはカラムフローよりも多い。ステップ120では、入口に非ヘリウムガスが供給される。
【符号の説明】
【0031】
10 インジェクタ
38 溶融シリカ管
40 分析カラム
42 ライナー支持体
44 ベース
46 ねじ込みステム
48 フェルール
50 ガスケット
54A、54B 溝流路
56 穴
60 導管
62 弁
64 レストリクタ
70 入口システム
72 インジェクタ
74 電子式フローコントローラ
76 プレカラム
78 T部品
80 加熱帯域
82 分析カラム
84 弁
86 供給箇所
88 供給箇所
90 弁
92 キャピラリーレストリクタ
94 キャピラリーレストリクタ
96 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクロマトグラフ(GC)システム用の装置であって、
ヘリウムガス源及び非ヘリウムガス源に接続されたインジェクタであって、前記非ヘリウムガス源が、分析カラムの入力端部を加圧して、スプリット又はパージガスフローのうち少なくとも一方を送出するように構成された前記インジェクタと、
前記分析カラムの前記入力端部を取り囲む導管と、この導管に接続されたコントローラと、を備えた導管組立体であって、前記コントローラが、前記カラムへの試料移送を行うため、注入期間の際に前記カラムフローよりも少ない同軸ヘリウムフローを送出する第1モードと、前記非ヘリウムガスが前記分析カラムに入るのを防止するため、注入期間の後、前記カラムフローよりも多いヘリウムの同軸フローを送出する第2モードと、を備えた前記導管組立体と、
を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記コントローラは、注入期間に先立ち前記非ヘリウムガス源をヘリウムに一時的に切り換え、注入期間の後に、前記非ヘリウムガス源に戻すための空気圧駆動式スイッチを備えている請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラは、二次インジェクタである請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
補助ガス又はヘリウムのうち一方を受け入れる三方弁に接続された電子式圧力コントローラと、
2つのレベルのヘリウムフローを前記導管に送出するための二次弁及び目盛付きレストリクタと、
インジェクタと分析カラムとの間に置かれ、前記導管に接続する中間点を備えたTコネクタと、
前記分析カラムの前記出力部に接続されたガスクロマトグラフ検出器と、
を備えている請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ガスクロマトグラフ検出器は、質量分析計である請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記インジェクタは、スプリット/スプリットレス(SSL)インジェクタである請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記インジェクタは、昇温気化型インジェクタ(PTV)である請求項1記載の装置。
【請求項8】
補助ガスは、水素、窒素、及びアルゴンからなる群から選択される請求項1記載の装置。
【請求項9】
更に、前記昇温気化型インジェクタの前記出力部と前記Tコネクタとの間に置かれた加熱されたプレカラムを有する請求項7記載の装置。
【請求項10】
前記インジェクタは、
末端にねじ込みステムを備えた取り外し可能なツーピースインジェクタベースを備え、前記ねじ込みステムは、前記ねじ込みステムの上端に入力部及び前記ねじ込みステムの下端に出力部を備えた導管を有し、
前記取り外し可能なインジェクタベースの上方に、
注入口ライナーと、
前記注入口ライナー内の導管と、
前記導管内に位置決めされた分析カラムと、
前記導管のまわりに同軸に位置決めされたフェルールと
を備え、前記ツーピースベースが、前記フェルールが圧縮されるように、互いにねじ込まれており、
前記ヘリウムガス源と前記ベースとの流体連通を行うため、前記ベースと前記注入口との間に置かれた溝付きガスケットをさらに備えている請求項1記載の装置。
【請求項11】
前記分析カラムは、前記導管に収容されている請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記溝付きガスケットは、前記ガスケットの各面の環状溝と、この環状溝内のバイアと
を備えている請求項10に記載の装置。
【請求項13】
更に、前記導管の前記入力端部と連通する第1弁と、
この第1弁に直列に接続された少なくとも1つのキャピラリーレストリクタと、
前記少なくとも1つのキャピラリーレストリクタと流体連通する前記ヘリウムガス源であって、前記カラムへの試料の移送を行うため、前記カラムの前記流量よりも大きい流量で前記カラムの前記入力端部に前記ヘリウムガスを差し向ける第1モードと、前記カラムの前記入力端部における前記ヘリウムガスの前記フローを前記カラムの前記フローよりも少ない値まで低減させる第2モードと、を備えた前記ヘリウムガス源と、
を備えている請求項10記載の装置。
【請求項14】
補助ガスは、水素、窒素、及びアルゴンからなる群から選択される請求項10記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−93358(P2012−93358A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235039(P2011−235039)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(501192059)サーモ フィニガン リミテッド ライアビリティ カンパニー (42)