説明

ガスクロマトグラフ装置

【課題】装置の小型化が可能で、耐久性に優れ、しかも低コストのガスクロマトグラフ装置を提供する。
【解決手段】キャリヤガス入口10aから排出口10bまでの主流路10に、減圧弁CV1、圧力計P1、三方弁SV1、計量管M、三方弁SV2、三方弁SV3、三方弁SV4、三方弁SV5、分離カラムC、三方弁SV6、三方弁SV7、検出器Dが順次設けられており、三方弁SV1〜SV7の総てがオンのときに主流路10をキャリヤガスが通過できるようになっている。三方弁SV1の上流側と三方弁SV3とを繋ぐ第1バイパス11と、三方弁SV4と三方弁SV6とを繋ぐ第2バイパス12と、三方弁SV5と三方弁SV7の切換手段とを繋ぐ第3バイパス13が設けられている。三方弁SV2には試料ガス供給路14が、三方弁SV1には試料ガス流出路17が繋がれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ装置、特に大気中のメタンと、メタン以外の炭化水素(非メタン炭化水素)を測定するのに適したガスクロマトグラフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、計量したサンプルガスを所定の間隔でカラムに導入し、継続的に自動分析を行うガスクロマトグラフ装置が知られている。例えば、大気中のメタンと、メタン以外の炭化水素(非メタン炭化水素)を測定するための炭化水素計として、ガスクロマトグラフ装置が用いられている(特許文献1)。
特許文献1に記載されているように、このようなガスクロマトグラフ装置では、サンプルガスやキャリヤガス等の流路変更を行うために10方弁等の多方弁が使用されている。
【0003】
多方弁には、ロータリー式とスライド式があるが、例えば、複数のポートが一定の間隔で形成されたボディー部と、隣り合うポートを接続する接続流路が形成されたローター部の位置関係をずらすことによって、連結するポートを選択できるようになっている。ボディー部とローター部の位置関係をずらすための駆動源としては、圧縮空気やモーター等が用いられている。
【0004】
図3に、圧縮空気を駆動源とする10方弁を用いた、従来のガスクロマトグラフ装置の概略構成図を示す。
図3において、1は10方弁で、10個のポート(図中、時計回り方向に付した10個の符号a〜jで示す)を備えている。この10方弁1は、オンのとき、図中で仮想線にて示すようにポート間が連通し、オフのとき、実線にて示すようにポート間が連通するように構成されている。
【0005】
10方弁1は、10のポート(ポートa、b、c、d、e、f、g、h、i)が円周上に等間隔で形成されたボディー部と(図示せず)と、ポートaとポートb、ポートbとポートcのように隣り合うポートを接続する接続流路が、円周上に等間隔で5つ形成されたローター部(図示せず)と、エアアクチュエーター1aを備えている。エアアクチュエーター1aは、4方弁1bを経由して導入される圧縮空気により進退するようになっている。そして、この進退が、ボディー部とローター部の位置関係を時計回りに36°、又は反時計回りに36°ずらす回転に変換されることによって、オンとオフとが切り換えられるようになっている。
【0006】
ポートaには、キャリヤガスCGを導入する導入ライン2が接続されている。また、ポートbとポートfとを接続する流路3には第1カラムCL1が、ポートcとポートdとを接続する流路4には第2カラムCL2が、各々設けられている。ポートeには検出ライン5が接続されており、この検出ライン5には、検出器Dが設けられている。
ポートiには試料ガスSを導入するサンプリングライン6が、ポートhには試料ガスSを排出する排出ライン7が、各々接続されている。ポートgとポートjとを接続する流路8には計量管Mが設けられている。
【0007】
図3のガスクロマトグラフ装置の測定手順は、以下のとおりである。まず、10方弁1をオフとする。これにより、サンプリングライン6、流路8、排出ライン7の順で流路が連通する。その結果、試料ガスSは、ポートiからポートgの向きに流路8を通過し、計量管Mに試料ガスSが満たされる。
また、ポートaから導入されたキャリヤガスCGはポートbからポートfの向き(実線の矢印方向)に流路3を通過する。これにより、第1カラムCL1がバックフラッシュされ、前回の測定で吸着された成分が除去される。
【0008】
次に、10方弁1をオンとする。これにより、ポートaから導入されたキャリヤガスCGは、ポートjを経由して流路8を通過し、計量管M内の試料ガスSをポートgへと押し流す。そして、ポートfからポートbの向き(仮想線の矢印方向)に流路3を通過する。これにより、第1カラムCL1により試料ガスS中の成分が分離される。次いで、キャリヤガスCGは、ポートcからポートdの向きに流路4を通過する。これにより、第2カラムCL2により試料ガスS中の成分がさらに分離される。
分離された試料ガスS中の成分は、キャリヤガスCGと共にポートeから検出ライン5へと送られて検出器Dにより順次検出される。これにより、試料ガスSの成分毎の測定が行われる。
なお、10方弁1をオンとしている間、サンプリングライン6から導入された試料ガスSは、そのままポートi、hを経由して排出ライン7から排出される。
以後、10方弁1のオフとオンとを繰り返すことにより、一定間隔をおいて、継続的に測定を行うことができる。
【特許文献1】特開平10−260170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図3のガスクロマトグラフ装置のように、圧縮空気を駆動源とする多方弁を用いる場合、圧縮空気の供給が必要である。しかも、10のポートが形成されたボディー部と接続流路が形成されたローター部の間は、例えばローター部自体を耐熱性、耐食性、気密性等に優れたシール材で構成することによってシールされており、このシールの摩擦抵抗を受けながら駆動しなければならないので、0.3MPa程度の高い圧力の圧縮空気が必要である。
圧縮空気は、工場など計装エアの供給が可能なところであれば容易に得ることができる。しかし、大気環境を測定するような現場では、一般に計装エアの供給を受けることはできないので、ガスクロマトグラフ装置内にコンプレッサー、さらに、コンプレッサーに空気を供給するためのエアフィルターや除湿器等を配置しておかなければならない。そのため、ガスクロマトグラフ装置全体が大型化せざるを得なかった。
【0010】
一方、モーターを駆動源とする多方弁を用いる場合、コンプレッサー等を使用する必要はないので、装置の大型化は問題とならない。
しかし、モーター駆動の場合、所定の駆動量で駆動を止めることが困難なため、ボディー部とローター部の位置関係を、一定の角度(図3の10方弁の場合36°)だけずらすようにするためにストッパーを設けなければならない。そして、シールの摩擦抵抗を受けながら駆動しなければならないので、モーターのトルクも有る程度の大きさが必要である。そのため、ストッパーは強いトルクを受けて消耗しやすく、大気環境測定のように継続的に使用する用途には適さない。
【0011】
また、駆動源が圧縮空気であってもモーターであっても、多方弁、特にポートの数が多い多方弁は、構造が複雑なため高価であり、かつ、メンテナンスが煩雑なものであった。
なお、検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を用いるガスクロマトグラフ装置の場合、FIDに燃料水素と助燃空気を供給しなければならない。図3のガスクロマトグラフ装置のように、圧縮空気を駆動源とする多方弁を用いる場合、助燃空気もコンプレッサーから供給を受けることが通常であった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、装置の小型化が可能で、耐久性に優れ、しかも低コストのガスクロマトグラフ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]サンプリング部に試料ガスを導入するサンプリング状態と、サンプリング部に導入した試料ガスを分離カラムに供給する分析状態とを切り換えて試料ガス中の成分を分離するガスクロマトグラフ装置であって、分析状態のときにキャリヤガスが通過する主流路を備え、該主流路には、第1の切換手段、サンプリング部、第2の切換手段、第3の切換手段、第4の切換手段、第5の切換手段、分離カラム、第6の切換手段、第7の切換手段が順次設けられ、第1の切換手段の上流側と第3の切換手段とを繋ぐ第1バイパスと、第4の切換手段と第6の切換手段とを繋ぐ第2バイパスと、第5の切換手段と第7の切換手段とを繋ぐ第3バイパスとを備えると共に、第1の切換手段及び第2の切換手段の一方に試料ガス供給路が、他方に試料ガス流出路が繋がれており、前記第1及び第2の切換手段は、サンプリング状態のときに、試料ガスが試料ガス供給路からサンプリング部を介して試料ガス流出路に流れるように切り換えられるものであり、前記第3〜第7の切換手段は、サンプリング状態のときに、キャリヤガスが前記第1〜第3のバイパスを通過するように切り換えられるものであり、前記第1〜第7の切換手段は、いずれも電磁弁で構成されていることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【0014】
[2]前記試料ガスが大気であり、前記第7の切換手段の下流側に水素炎イオン化検出器が設けられており、前記水素炎イオン化検出器に水素を供給する燃料水素供給路と、前記水素炎イオン化検出器に大気を供給する助燃ガス供給路と、該助燃ガス供給路の上流側に第8の切換手段を介して接続する助燃ガス導入路と、前記助燃ガス供給路に設けられたポンプを備え、前記試料ガス流出路の下流側が前記第8の切換手段を介して前記助燃ガス供給路の上流側に接続されており、前記第8の切換手段は、サンプリング状態のときに前記試料ガス流出路と前記助燃ガス供給路とを連通させ、分析状態のときに前記助燃ガス導入路と前記助燃ガス供給路とを連通させるように切り換えられるものである[1]に記載のガスクロマトグラフ装置。
【発明の効果】
【0015】
[1]の発明では、切換手段を総て電磁弁で構成しているので、ポートの数が多い高価な多方弁を使用する必要がない。また、多方弁の動力源としてコンプレッサーを用意する必要もないので、装置を小型化できる。また、多方弁の動力源としてモーターを使用した場合のような耐久性の問題も生じない。
さらに、[2]の発明では、試料ガスが大気であればこれを助燃ガスとしても使用できることに着目し、サンプリング部を通過した後の試料大気を助燃ガスとする構成としたので、サンプリングと助燃ガスの供給を1台のポンプで行うことが可能である。
したがって、本発明のガスクロマトグラフ装置は、小型で、耐久性に優れ、しかも低コストの装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るガスクロマトグラフ装置を、図1を参照しつつ説明する。図1のガスクロマトグラフ装置は、計量管M(サンプリング部)に試料ガスである大気を導入するサンプリング状態と、計量管Mに導入した大気を分離カラムCに供給する分析状態とを切り換えて、大気中のメタンと、メタン以外の炭化水素(非メタン炭化水素)とを分離して測定するガスクロマトグラフ装置である。
なお、図1に示した各三方弁はいずれも電磁弁であり、図中白の三角で示したポートはオフのときのみに開となる常開ポート、図中黒の三角で示したポートはオンのときのみに開となる常閉ポート、図中白と黒の三角で示したポートは、オンオフにかかわらず開となる共通ポートである。また、図1に示した各二方弁はいずれも電磁弁であり、オンのときのみに2つのポートが連通する開閉弁である。
【0017】
本実施形態のガスクロマトグラフ装置は、キャリヤガス入口10aから排出口10bまでの主流路10を備えている。この主流路10には、キャリヤガス入口10a側から、減圧弁CV1、圧力計P1、三方弁SV1(第1の切換手段)、計量管M(サンプリング部)、三方弁SV2(第2の切換手段)、三方弁SV3(第3の切換手段)、三方弁SV4(第4の切換手段)、三方弁SV5(第5の切換手段)、分離カラムC、三方弁SV6(第6の切換手段)、三方弁SV7(第7の切換手段)、検出器Dが順次設けられている。
三方弁SV1〜SV7は、いずれも共通ポートと常閉ポートを用いて主流路10に設けられており、三方弁SV1〜SV7の総てがオンのときに主流路10をキャリヤガスが通過できるようになっている。本実施形態では、図示しない制御装置により、三方弁SV1〜SV7の総てがオンとなる分析状態と、三方弁SV1〜SV7の総てがオフとなるサンプリング状態とを、交互に切り換えられるようになっている。
【0018】
主流路10には、第1バイパス11と、第2バイパス12と、第3バイパス13とが接続されている。第1バイパスは、圧力計P1の下流側であり三方弁SV1の上流側である位置と、三方弁SV3とを繋いで主流路10に接続されている。第2バイパスは、三方弁SV4と三方弁SV6とを繋いで主流路10に接続されている。第3バイパスは、三方弁SV5と三方弁SV7とを繋いで主流路10に接続されている。これら各バイパスは、いずれも各三方弁の常開ポートに繋がれている。
【0019】
また、三方弁SV2の常開ポートには試料ガス供給路14が繋がれている。試料ガス供給路14の上流側には、三方弁SV8を介して試料ガス導入路15とスパンガス導入路16とが繋がれている。試料ガス導入路15の上流端は試料大気入口15aとされている。試料大気入口15a近傍にはフィルター15bが設けられており、粉塵等が取り除かれた状態で試料ガス供給路14に大気を供給できるようになっている。スパンガス導入路16の上流端はスパンガス入口16aとされている。本実施形態のガスクロマトグラフ装置は、大気中のメタンと、メタン以外の炭化水素(非メタン炭化水素)とを測定するので、スパンガスとしては、メタンと非メタン(プロパン、オルト-キシレン等)を含むガスが通常使用される。
図示しない制御装置により、三方弁SV8は、通常はオフとされて試料ガス導入路15と試料ガス供給路14とを連通させ、校正時にはオンとされてスパンガス導入路16と試料ガス供給路14とを連通させるようになっている。
【0020】
また、三方弁SV1の常開ポートには試料ガス流出路17が繋がれている。試料ガス流出路には、流量センサ18及び二方弁SV11が設けられている。二方弁SV11は、三方弁SV1〜SV7の総てがオンとなるタイミング(分析状態)と同期して閉となり、三方弁SV1〜SV7の総てがオフとなるタイミング(サンプリング状態)と同期して開となるように、図示しない制御装置によって制御されている。
【0021】
本実施形態では、検出器DはFIDである。そのため、検出器Dに水素を供給する燃料水素供給路20と、大気を供給する助燃ガス供給路30とを備えている。
燃料水素供給路20には、水素ガス入口20a側から、二方弁SV12、減圧弁CV2、圧力計P2、バッファー21、絞り22が設けられている。ここで、二方弁SV12は、電源断となったときに水素ガスの供給を遮断するための弁であり、電源が供給されガスクロマトグラフ装置が稼働中の間は開とされている。また、バッファー21は、電源断とされたとき、検出器Dへの水素の供給が急に停止しないようにするためのものである。また、絞り22は減圧弁CV2で絞られた水素ガスの流れをさらに絞り、所定の流量の水素ガスを検出器Dに供給できるようにするものである。
【0022】
助燃ガス供給路30の上流側には、二方弁SV13を介して助燃ガス導入路31が接続されている。助燃ガス導入路31の上流端は助燃ガス入口31aとされている。助燃ガス入口31a近傍にはフィルター31bが設けられており、粉塵等が取り除かれた状態で助燃ガス供給路30に大気を供給できるようになっている。また、助燃ガス供給路30には、二方弁SV13側から、ポンプ32、ドライヤ33、燃焼炉34、減圧弁CV3、圧力計P3が順次設けられている。ここで、ドライヤ33は大気中の水分を除くものであり、燃焼炉34は大気中の可燃成分を燃焼させるものである。ドライヤ33と燃焼炉34により、精製された大気が検出器Dに供給できるようになっている。
【0023】
二方弁SV13は、三方弁SV1〜SV7の総てがオンとなるタイミング(分析状態)と同期して開となり、三方弁SV1〜SV7の総てがオフとなるタイミング(サンプリング状態)と同期して閉となるように、図示しない制御装置によって制御されている。つまり、二方弁SV13は二方弁SV11が開のとき閉となり、二方弁SV11が閉のときに開となる。
したがって、二方弁SV11及び二方弁SV13は、協働してサンプリング状態のときに試料ガス流出路と助燃ガス供給路とを連通させ、分析状態のときに助燃ガス導入路と助燃ガス供給路とを連通させるように切り換える機能を有するもので、二方弁SV11と二方弁SV13の2つの弁により第8の切換手段が構成されている。
【0024】
なお、本実施形態では、各流路は、例えば、アルミブロック中に形成されたいわゆるマニホールドであり、このアルミブロックの表面等に各三方弁や二方弁等を配置するようにできる。その場合、各流路の長さを短くして、デッドボリュームを最小限に抑えることができる。また、各流路を配管で形成しなくても良いので、装置全体の小型化、低コスト化が可能である。
【0025】
本実施形態のガスクロマトグラフ装置は、以下の(1)サンプリング状態と(2)分析状態とを繰り返すことにより、大気中のメタンおよび非メタン一定間隔をおいて継続的に測定することができる。
【0026】
(1)サンプリング状態
サンプリング状態では、三方弁SV1〜SV7をオフとすると共に、二方弁SV11を開、二方弁SV12を開、二方弁SV13を閉とする。また、三方弁SV8はオフとしておく、
この状態では、大気がポンプ32の吸引力により試料大気入口15aから導入され、試料ガス導入路15、試料ガス供給路14、計量管M、試料ガス流出路17、助燃ガス供給路30の順に流れる。これにより、計量管M内の気体は新たに測定する大気に置換される。また、計量管Mを通過した大気が検出器Dに助燃ガスとして供給される。一方水素ガスが燃料水素供給路20を流れて検出器Dに供給される。
【0027】
また、キャリヤガスは各バイパスを経由して検出器Dに至る。具体的には、圧力計P1を通過した後第1バイパス11を流れ、サンプリング中の計量管Mを迂回して主流路10に戻る。
次に、第2バイパス12を流れ、三方弁SV6から三方弁SV5の方向に分離カラムCを流れ、次いで第3バイパス13を経由して主流路10に戻り検出器Dへと流れる。その結果、分離カラムCがバックフラッシュされ、前回の測定で吸着された成分が除去されて分析状態への移行が可能となる。
【0028】
(2)分析状態
分析状態では、三方弁SV1〜SV7をオンとすると共に、二方弁SV11を閉、二方弁SV12を開、二方弁SV13を開とする。また、三方弁SV8はオフとしておく、
これにより、大気がポンプ32の吸引力により助燃ガス入口31aから導入され、助燃ガス導入路31、助燃ガス供給路30の順に流れ、検出器Dに助燃ガスとして供給される。一方水素ガスが燃料水素供給路20を流れて検出器Dに供給される。すなわち、検出器Dへの助燃ガスと水素ガスの供給は、サンプリング状態か分析状態かにかかわらず継続される。
試料ガス導入路15、試料ガス供給路14、計量管M、試料ガス流出路17内の大気は、二方弁SV11を閉じることにより大気圧となり、大気圧下での計量が可能となる。
【0029】
また、キャリヤガスは、主流路10を流れ、計量管M内の大気を押し流しつつ、三方弁SV5から三方弁SV6の方向に分離カラムCを流れる。これにより、分離カラムCにより大気中の成分が分離される。分離された大気中の成分は、キャリヤガスと共に検出器Dに送られ、順次検出される。これにより、大気中のメタンと非メタンを分離して測定することができる。
【0030】
なお、三方弁SV8をオンとして試料大気に換えてスパンガスを導入するようにするほかは、上記(1)、(2)と同様にすれば、スパン構成を行うことができる。
スパン校正は、要求される測定精度等に応じて適宜のタイミングで行えばよい。
【0031】
本発明では、切換手段を総て電磁弁で構成しているので、キャリヤガスの圧力は、0.2MPa以下であることが好ましい。キャリヤガスの圧力は、分離カラムCの充填長が長いほど高圧とする必要があるので、分離カラムCの充填長は分離に支障のない範囲で短くすることが好ましい。
本実施形態のように、メタン及び非メタンを測定する場合、一般に、上流側の充填剤を珪藻土系の充填剤、下流側の充填剤をエチルビニルベンゼンとジビニルベンゼンの共重合体とすることが行われるが、これらの充填剤のさらに下流側に活性炭を充填することが好ましい。これにより、全体の充填長を短くしても良好な分離が可能となる。
【0032】
本実施形態では、第1〜第7の切換手段を総て三方弁で構成したが、各々2つの二方弁に変更してもよい。また、第8の切換手段を2つの二方弁で構成したが、これらを纏めて1つの三方弁に変更してもよい。
また、本実施形態では、サンプリング部を計量管としたが、サンプリング部は分離カラムに送る試料ガスをサンプリングできるものであればよく、例えば濃縮管をサンプリング部としてもよい。
また、本実施形態では、三方弁SV2に試料ガス供給路14を、三方弁SV1に試料ガス流出路17を繋いだが、三方弁SV1に試料ガス供給路14を、三方弁SV2に試料ガス流出路17を繋いでもよい。
また、本実施形態は大気中のメタン及び非メタンを分離測定するものとしたが、本発明[2]は、大気中の全炭化水素の測定にも使用することができる。
また、本発明[1]の測定対象は大気に限られず、自動サンプリングと分離カラムのバックフラッシュが必要な総てのガスクロマトグラフ装置に用いることができる。例えば、有機溶媒中の炭化水素の測定にも使用することができる。
なお、検出器は、測定対象に応じて適宜選択すればよい。また、分離だけ行って検出は手分析等で行う場合、検出器は不要である。
【実施例】
【0033】
図1のガスクロマトグラフ装置を用いて測定を行った。なお、測定条件等は以下のとおりである。
[試料]
スパンガスと大気の測定を行った。スパンガスとしては、大気に、メタンガスを0.0075mg/mL、プロパンガスを0.0055mg/mLの濃度で加えたものを用いた。
計量管としては、内径2.18mm、長さ300mm(体積1119.2mm)のものを用いた。
【0034】
[カラム]
内径2.18mmのカラムに、流入側から流出側に向かって、以下の充填剤1〜3を順次充填したものを使用した。充填剤1の充填長は500mm(充填量:1865.3mm)、充填剤2の充填長は500mm(充填量:1865.3mm)、充填剤3の充填長は100mm(充填量:373.1mm)とした。
充填剤1:セライト社製、クロモソルブWAW(40/60)、珪藻土系
充填剤2:ウオーターズ社製、ポラパックQ(50/80)、エチルビニルベンゼンとジビニルベンゼンの共重合体
充填剤3:ジーエルサイエンス社製、活性炭(60/80)
【0035】
[測定条件]
キャリヤガス:窒素
キャリヤガス流量:45mL
カラム温度:60℃
検出器:東亜ディーケーケー社製FID
検出器温度:60℃
検出器への水素流量:40mL/分
検出器への助燃空気流量:300mL/分
【0036】
[測定結果]
図2(a)にスパンガスの測定結果を、図2(b)に大気の測定結果を示す。図2(a)に示すように、メタンとプロパンのピークが明確に分離して検出された。また、酸素のピークが流出初期に若干見られるが、メタンとプロパンの何れのピークにも妨害とならないものであった。また、図2(b)に示すように、大気を測定した場合も、メタンについては、スパンガスの場合とほぼ同じ流出時間でピークが得られた。また、非メタンについては、スパンガスのプロパンの場合とほぼ同じ流出時間でピークが得られた。
したがって、本発明のガスクロマトグラフ装置によって、大気中のメタンと非メタンの分離測定が可能であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るガスクロマトグラフ装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例に係る測定結果である。
【図3】従来技術に係るガスクロマトグラフ装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0038】
10…主流路、11…第1バイパス、12…第2バイパス、
13…第3バイパス、14…試料ガス供給路、15…試料ガス導入路、
16…スパンガス導入路、17…試料ガス流出路、
20…燃料水素供給路、30…助燃ガス供給路、31…助燃ガス導入路、
32…ポンプ、SV1〜SV8…三方弁、SV11〜SV13…二方弁、
M…計量管、C…分離カラム、D…検出器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング部に試料ガスを導入するサンプリング状態と、サンプリング部に導入した試料ガスを分離カラムに供給する分析状態とを切り換えて試料ガス中の成分を分離するガスクロマトグラフ装置であって、
分析状態のときにキャリヤガスが通過する主流路を備え、
該主流路には、第1の切換手段、サンプリング部、第2の切換手段、第3の切換手段、第4の切換手段、第5の切換手段、分離カラム、第6の切換手段、第7の切換手段が順次設けられ、
第1の切換手段の上流側と第3の切換手段とを繋ぐ第1バイパスと、第4の切換手段と第6の切換手段とを繋ぐ第2バイパスと、第5の切換手段と第7の切換手段とを繋ぐ第3バイパスとを備えると共に、
第1の切換手段及び第2の切換手段の一方に試料ガス供給路が、他方に試料ガス流出路が繋がれており、
前記第1及び第2の切換手段は、サンプリング状態のときに、試料ガスが試料ガス供給路からサンプリング部を介して試料ガス流出路に流れるように切り換えられるものであり、
前記第3〜第7の切換手段は、サンプリング状態のときに、キャリヤガスが前記第1〜第3のバイパスを通過するように切り換えられるものであり、
前記第1〜第7の切換手段は、いずれも電磁弁で構成されていることを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
前記試料ガスが大気であり、
前記第7の切換手段の下流側に水素炎イオン化検出器が設けられており、
前記水素炎イオン化検出器に水素を供給する燃料水素供給路と、前記水素炎イオン化検出器に大気を供給する助燃ガス供給路と、該助燃ガス供給路の上流側に第8の切換手段を介して接続する助燃ガス導入路と、前記助燃ガス供給路に設けられたポンプを備え、
前記試料ガス流出路の下流側が前記第8の切換手段を介して前記助燃ガス供給路の上流側に接続されており、
前記第8の切換手段は、サンプリング状態のときに前記試料ガス流出路と前記助燃ガス供給路とを連通させ、分析状態のときに前記助燃ガス導入路と前記助燃ガス供給路とを連通させるように切り換えられるものである請求項1に記載のガスクロマトグラフ装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−132686(P2007−132686A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323261(P2005−323261)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】