説明

ガスクロマトグラフ装置

【課題】本発明は、ガスクロマトグラフ装置において、ガスの無駄な消費を減らし、かつ、分析開始時の装置立ち上げ時間を短縮することを目的とする。
【解決手段】本発明は、分析カラムと、前記分析カラムにキャリヤガスを供給するキャリヤガス供給部と、前記キャリヤガス供給部から前記分析カラムに供給されるキャリヤガスの流量を調節するキャリヤガス流量調節手段と、前記キャリヤガス流量調節手段から前記分析カラム流通供給される前記キャリヤガスに試料を導入する試料導入部と、前記キャリヤガスによって成分毎に分離され、前記分析カラムから流出する前記試料の成分を検出する検出器と、前記検出器に供給検出器ガスの流量を調節する検出器ガス流量調節手段を有し、前記検出器ガス流量調節手段と前記検出器を連通する検出器ガス流通路が開閉される検出器ガス流通路開閉バルブを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の成分をキャリヤガスによって分離して検出するガスクロマトグラフに係わり、特に検出器ガスを要する検出器を含めた検出器を備えたガスクロマトグラフに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ装置は、特開平7−218490号公報(特許文献1)に示されてように、キャリヤガスや検出器ガスとして、各種のガスを用いている。
【0003】
ガスクロマトグラフ装置には、圧力調整バルブ、質量流量調節器(マスフローコントローラー)、圧力計などが複雑に配置接続され、高圧ボンベなどから供給された高純度のガスが、設定された流量で装置内を流れるように調整されている。
【0004】
ガスクロマトグラフ装置は、検出器、ガスの供給部、元圧調整用の圧力調整バルブ、圧力計、質量流量調節器(マスフローコントローラー)、分析カラムから導入される試料、カラム接続部、排気口を有する。
【0005】
ガスの供給部から供給されたガスは圧力調整バルブで圧力を調整された後、質量流量調節器で流量を設定され、検出器に導入される。このとき、圧力計で、圧力が監視される。
【0006】
検出器に導入されたガスは、カラム接続部に接続された分析カラムからの試料に、直接、あるいは間接的に作用し、排気口から排気される。
【0007】
【特許文献1】特開平7−218490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ガスクロマトグラフ装置において、これらのガスは、安定した性能維持、高感度な分析のために、高純度を維持する必要がある。
【0009】
ガスを供給部から供給し続けている限り、装置内のガスの純度は維持されるが、装置未使用時などに、供給部からのガスの供給を止めると、流路内が大気圧になってしまうため、排気口から検出器の内部に外気が拡散により逆流して来る。
【0010】
検出器内に逆流した外気は、拡散を続け、圧力計や質量流量調節器、さらには圧力調整器にまで逆流して来る。
【0011】
分析時には、供給部からのガスの供給を再開し、再度装置流路内のガスの純度を上げる必要があるが、一旦流路内に逆流した外気は、容易に供給ガスと置換せず、分析に必要な純度に戻るまでには、相当の時間を必要とする。
【0012】
そのため、分析開始時に短時間で装置を使える状態にしたい場合は、たとえ未使用時であっても、ガスを流したままにするのが、常識となっている。
【0013】
しかし、未使用時にもガスを流したままにしておくことは、ガスが無駄である。
【0014】
また、分析準備時間に余裕がある場合は、未使用時にガスの供給を止めてしまっても、ガス供給を再開した後、長時間放置すればやがて純度は上がり、分析に使用できる状態になるが、その場合も長時間にわたって流し続けるガスは、分析そのものに使われることなく消費されることになり、無駄である点では同じである。
【0015】
本発明は、上記の課題に対処し、キャリヤガスや検出器ガスを含む各種のガスの無駄な消費を減らし、かつ、分析開始時のガスクロマトグラフ装置の立ち上げ時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、分析カラムと、前記分析カラムにキャリヤガスを供給するキャリヤガス供給部と、前記キャリヤガス供給部から前記分析カラムに供給されるキャリヤガスの流量を調節するキャリヤガス流量調節手段と、前記キャリヤガス流量調節手段から前記分析カラム流通供給される前記キャリヤガスに試料を導入する試料導入部と、前記キャリヤガスによって成分毎に分離され、前記分析カラムから流出する前記試料の成分を検出する検出器と、前記検出器に供給される検出器燃焼ガス及び検出器助燃ガスを総称した検出器ガスの流量を調節する検出器ガス流量調節手段を有し、前記検出器ガス流量調節手段と前記検出器を連通する検出器ガス流通路が開閉される検出器ガス流通路開閉バルブを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガスクロマトグラフ装置の未使用時にガスの供給を止めても、検出器の排気口から外気が流路内に逆流することがないため、分析開始時に短時間で装置が使用できるようになり、時間の節約ができる。
【0018】
また、未使用時には一切ガスを使用せず、ガスクロマトグラフ装置の立ち上げ時に使用するガスも最少にできるため、ガスの無駄を最小限にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず、図1に示す実施例1のガスクロマトグラフ装置について説明する。
【0020】
図1に示すように、ガスクロマトグラフ装置は、試料の成分を水素炎を用いて検出する水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)を有する。
【0021】
さらにガスクロマトグラフ装置は、イオン化検出器7(検出器)に供給される燃焼ガス(水素ガス)及び助燃ガス(空気)の流量を調節するFIDガス流量調節手段8(検出器ガス流量調節手段)、試料の成分をキャリヤガスによって分離するキャピラリーカラム4(分析カラム)、キャピラリーカラム4(分析カラム)を一定温度に保持するカラム恒温槽5、キャピラリーカラム4に供給されるキャリヤガスの流量を調節するキャリヤガス流量調節手段1を有する。
【0022】
キャピラリーカラム4(分析カラム)の入口には試料注入口3が設けられる。この試料注入口3の試料導入口2よりキャピラリーカラム4(分析カラム)に流入するキャリヤガス中に試料が導入される。
【0023】
FIDガス流量調節手段8(検出器ガス流量調節手段)は、水素炎イオン化検出器7(検出器)に連通する燃焼ガス側検出器ガス流通路81及び助燃ガス側検出器ガス流通路82を備える。
【0024】
燃焼ガス側検出器ガス流通路81は、燃焼ガス用の検出器ガス取り入れ口150、検出器燃焼ガス流量調節器17、検出器燃焼ガス元圧調整用圧力調整バルブ16、検出器燃焼ガス元圧圧力計21を有する。検出器燃焼ガス取り入れ口150は、燃焼ガス用の検出器燃焼ガスが溜まる検出器燃焼ガス供給部15に連通するように接続される。
【0025】
助燃ガス側検出器ガス流通路82は、助燃ガス用の検出器燃焼ガス取り入れ口120、検出器燃焼ガス流量調節器14、検出器燃焼ガス元圧調整用圧力調整バルブ13、検出ガス元圧圧力計20を有する。助燃ガス用の検出器ガス取り入れ口120は、助燃ガス用の検出器助燃ガスが溜まる検出器助燃ガス供給部12に連通するように接続される。
【0026】
検出器燃焼ガス及び検出器助燃ガスを総称した検出器ガスと言う。検出器ガスが水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)内で、燃焼して火炎が生成される。
【0027】
キャリヤガス流量調節手段1は、キャリヤガス流通路100を有する。
【0028】
キャリヤガス流通路100は、キャリヤガス取り入れ口90、キャリヤガス流量調節器11、キャリヤガス元圧圧力計18、キャリヤガスカラム入り口圧力圧力計19、キャリヤガス元圧調整用圧力調整バルブ10を有する。
【0029】
キャリヤガス取り入れ口90は、キャリヤガスが溜まるキャリヤガス供給部9に連通するように接続される。
【0030】
キャリヤガス流通路100より試料注入口3に流下したキャリヤガスに、前述したように試料注入口3の試料導入部2から試料が導入される。
【0031】
水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)は、キャピラリーカラム4(分析カラム)、燃焼ガス側検出器ガス流通路81、助燃ガス側検出器ガス流通路82に連通するように接続される。
【0032】
また、水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)は排気口6を有する。この排気口6から燃焼したガスや検出後のガスが大気中(外部)に排気される。
【0033】
水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)は、FIDガス流量調節手段8(検出器ガス流量調節手段)を通じて供給される検出器燃焼ガス及び検出器助燃ガスの燃焼で火炎が生成される。この火炎で、キャピラリーカラム4(分析カラム)により分離された試料の成分がイオン化し、イオン電流値として試料の成分は検出される。
【0034】
次に本発明の主要部について説明する。
【0035】
燃焼ガス側用の検出器ガス流通路開閉バルブ23は、燃焼ガス側検出器ガス流通路81に備えられる。助燃ガス側用の検出器ガス流通路開閉バルブ22は、助焼ガス側検出器ガス流通路82に備えられる。
【0036】
燃焼ガス側検出器ガス流通路81、及び助焼ガス側検出器ガス流通路82を総称して検出器ガス流通路と言う。
【0037】
燃焼ガス側用の検出器ガス流通路開閉バルブ23、及び助燃ガス側用の検出器ガス流通路開閉バルブ22を総称して検出器ガス流通路開閉バルブと言う。
【0038】
検出器ガス流通路(燃焼ガス側検出器ガス流通路81・助焼ガス側検出器ガス流通路82)を通じて水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)に供給される燃焼ガス及び助燃ガスは、検出器ガス流通路開閉バルブ(燃焼ガス側用の検出器ガス流通路開閉バルブ23・助燃ガス側用の検出器ガス流通路開閉バルブ22)の開け閉めにより流れたり、止められたりする。
【0039】
このように、検出器ガス流通路開閉バルブが設けられているので、ガスクロマトグラフ装置の未使用時に検出器ガス流通路開閉バルブを閉じることにより、助燃用の検出器ガス流量調節器14や燃焼用の検出器ガス流量調節器17の閉め忘れないし閉鎖不良があってもガスの無駄な流出を防止できる。
【0040】
また、水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)は、排気口6を有する。ガスクロマトグラフ装置の未使用時に、外気が排気口6を逆流して水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)に流入する。
【0041】
さらに、その逆流した外気は検出器ガス流通路を遡り、検出ガス流量調節器14、17のところまで達する。検出器ガス流通路開閉バルブを設けることにより、外気の逆流を阻止できる。
【0042】
また、検出器ガス流通路は、水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)を介してキャピラリーカラム4(分析カラム)と連通している。ガスクロマトグラフ装置の未使用時に、キャピラリーカラム4(分析カラム)、検出器ガス流通路に残存したキャリヤガスや検出器ガスと逆流する外気との混合が検出器ガス流通路開閉バルブにより阻止される。
【0043】
このため、ガスクロマトグラフ装置の検査運転開始に際し、その混合したガスの排気が不用になり、装置の立ち上げ時間が短縮される。
【0044】
外気の検出器ガス流通路内への逆流、キャリヤガスや検出器ガスの混合をより効果的に阻止するには、検出器ガス流通路に設ける検出器ガス流通路開閉バルブをキャピラリーカラム4(分析カラム)に近接することが望ましい。
【0045】
図2に示す実施例2のガスクロマトグラフ装置について説明する。
【0046】
実施例2の特徴は、水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)の排気口6に排気開閉バルブ24を設けたところにある。
【0047】
その他は、前述した実施例1と共通であるので、共通の符号を付して説明は省略する。
【0048】
実施例2によれば、排気口6に設けられた排気開閉バルブ24により、水素炎イオン化検出器(FID)7(検出器)に外気が逆流しない。このため、キャリヤガス流量調節手段1に外気は逆流せず、キャリヤガスと外気の混合が生じないので、混合ガスの排気が不用になり、装置の立ち上げ時間が短縮される。
【0049】
なお、上記実施例では検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を用いたが、炎光光度検出器、その他の検出器を要する検出器を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1に係わるもので、ガスクロマトグラフ装置の概要を示している。
【図2】本発明の実施例2に係わるもので、ガスクロマトグラフ装置の概要を示している。
【符号の説明】
【0051】
1…キャリヤガス流量調節手段、2…試料導入部、3…試料注入口、4…キャピラリーカラム(分析カラム)、5…カラム恒温槽、6…排気口、7…水素炎イオン化検出器(FID)(検出器)、8…検出器ガス流量調節手段、9…キャリヤガス供給部、10…キャリヤガス元圧調整用圧力調整バルブ、11…キャリヤガス流量調節器(マスフローコントローラー)、12…検出器助燃ガス供給部、13…検出器助燃焼ガス元圧調整用圧力調整バルブ、14…検出器助燃焼ガス流量調節器(マスフローコントローラー)、15…検出器燃焼ガス供給部、16…検出器助燃焼ガス元圧調整用圧力調整バルブ、17…検出器助燃焼ガス流量調節器(マスフローコントローラー)、18…キャリヤガス元圧圧力計、19…キャリヤガスカラム入り口圧力圧力計、20…検出器助燃焼ガス元圧圧力計、21…検出器助燃焼ガス元圧圧力計、22…検出器助燃焼ガス流通路開閉バルブ、23…検出器ガス流通路開閉バルブ、24…排気開閉バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析カラムと、
前記分析カラムにキャリヤガスを供給するキャリヤガス供給部と、
前記キャリヤガス供給部から前記分析カラムに供給されるキャリヤガスの流量を調節するキャリヤガス流量調節手段と、
前記キャリヤガス流量調節手段から前記分析カラム流通供給される前記キャリヤガスに試料を導入する試料導入部と、
前記キャリヤガスによって成分毎に分離され、前記分析カラムから流出する前記試料の成分を検出する検出器と、
前記検出器に供給される検出器ガスの流量を調節する検出器ガス流量調節手段を有し、
前記検出器ガス流量調節手段と前記検出器を連通する検出器ガス流通路が開閉される検出器ガス流通路開閉バルブを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項2】
請求項1記載のガスクロマトグラフ装置において、
前記検出器ガス流通路として、二つ以上の検出器ガス流通路を有し、
前記二つ以上の検出器ガス流通路に検出器ガス流通路開閉バルブを夫々備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のガスクロマトグラフ装置において、
前記検出器は排気口を有し、
前記排気口を開閉する排気開閉バルブを備えたことを特徴とするガスクロマトグラフ装置。
【請求項4】
請求項3記載のガスクロマトグラフ装置において、
前記検出器の検出作動時には、前記検出器ガス流通路開閉バルブ及び前記排気開閉バルブを開放することを特徴とするガスクロマトグラフ装置。

【図1】
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【図2】
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