説明

ガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源

【課題】イオン化室の交換時に、ガス接続部の取り付けや解除作業の煩雑さをなくし、工具等を使用せずとも、いっぺんにイオン化室を交換できる構造を持ったガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源を提供する。
【解決手段】ベースチャンバーは、イオン源ブロックを固定支持する支柱を備え、イオン源ブロックは、イオン化室、前記支柱を受け入れる縦穴、および前記支柱と交差する向きに突き出しているガスクロマトグラフ接続部と標準試料ガス導入接続部の2つの自在継手を受け止めるために設けられた2つの絶縁受けを備え、前記イオン源ブロックをベースチャンバーに固定する際には、所定の扇角で突き出している前記2つの自在継手と2つの絶縁受けを当接させて、該当接部位を支点にしてベースチャンバーに対し円弧を描くようにイオン源ブロックを動かして、前記支柱と縦穴を嵌め合わせるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ質量分析装置のイオン源に関し、より詳しくは、ガスクロマトグラフ質量分析装置に容易に着脱可能なイオン化室を備えたイオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のガスクロマトグラフ質量分析装置におけるガスクロマトグラフ装置と質量分析装置の接続部を示したものである。
【0003】
ガスクロマトグラフ質量分析装置において、イオン化室7の汚れを洗浄したり、イオン化室7を交換したりする場合、真空に置かれていたイオン源部を大気圧に戻し、イオン源フランジを開け、ガスクロマトグラフ装置のカラム端部8と標準試料ガスをイオン源に導入する標準試料ガス導入部9の合わせて2ヶ所の接続を解除し、更に図示しない電気配線接続部を外し、図示しないイオン化室取り付けネジを外してから、イオン化室7を取り出していた。
【0004】
電子衝撃イオン化(EI)法を用いる場合に較べ、化学イオン化(CI)法を用いる場合は、イオン化室7に気密接続が要求されるため、漏れに対して確実な接続方式が要求される。このため、接続部は図1に示すように、球面とテーパー面を組み合わせたものが実用化されている。
【0005】
【特許文献1】実開昭60−114958号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その場合、イオン化室の交換時には、接続部の球面とテーパー面を外したり取り付けたりするのに、図2に示すように、専用の工具を用いて、イオン源ブロックを取り外す前に自在継手を外すなどの煩雑な工程が必要となり、ガス接続部の取り付けや解除に長い時間がかかっていた。
【0007】
本発明は、上述した点に鑑み、イオン化室の交換時に、ガス接続部の取り付けや解除作業の煩雑さをなくし、工具等を使用せずとも、いっぺんにイオン化室を交換できる構造を持ったガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明にかかるガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源は、
イオン源ブロックを固定支持する支柱を有するベースチャンバーを備え、該ベースチャンバーの支柱に該イオン源ブロックが着脱可能に取り付けられたガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源において、
該イオン源ブロックは、イオン化室、前記支柱を受け入れる縦穴、および前記支柱と交差する向きに突き出しているガスクロマトグラフ接続部と標準試料ガス導入接続部の2つの自在継手を受け止めるために設けられた2つの受け部を備え、
前記イオン源ブロックをベースチャンバーに固定する際には、所定の扇角で突き出している前記2つの自在継手と2つの受け部を当接させて、該当接部位を支点にしてベースチャンバーに対し円弧を描くようにイオン源ブロックを動かして、前記支柱と縦穴を嵌め合わせることにより、イオン源ブロックをベースチャンバーに固定するようにしたことを特徴としている。
【0009】
また、前記自在継手の扇角は120°以下であることを特徴としている。
【0010】
また、前記自在継手の扇角は20°〜80°であることを特徴としている。
【0011】
また、前記支柱は、前記縦穴と容易に嵌合できるようテーパ状になった先端部と、イオン源ブロックを固定支持できるように縦穴の内径とほぼ同じ太さに加工された非テーパ部とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源によれば、
イオン源ブロックを固定支持する支柱を有するベースチャンバーを備え、該ベースチャンバーの支柱に該イオン源ブロックが着脱可能に取り付けられたガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源において、
該イオン源ブロックは、イオン化室、前記支柱を受け入れる縦穴、および前記支柱と交差する向きに突き出しているガスクロマトグラフ接続部と標準試料ガス導入接続部の2つの自在継手を受け止めるために設けられた2つの受け部を備え、
前記イオン源ブロックをベースチャンバーに固定する際には、所定の扇角で突き出している前記2つの自在継手と2つの受け部を当接させて、該当接部位を支点にしてベースチャンバーに対し円弧を描くようにイオン源ブロックを動かして、前記支柱と縦穴を嵌め合わせることにより、イオン源ブロックをベースチャンバーに固定するようにしたので、
イオン化室の交換時に、ガス接続部の取り付けや解除作業の煩雑さをなくし、工具等を使用せずとも、いっぺんにイオン化室を交換できる構造を持ったガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
[実施例1]
図3は、本発明にかかるガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源の一実施例である。図中1は、イオン化室である。このイオン化室1は、電子衝撃イオン化(EI)法用のイオン化室であっても、化学イオン化(CI)法用のイオン化室であっても良い。
【0015】
イオン化室1には、バネとテーパー面と球面の組み合わせから成る第1の自在継手で構成されるガスクロマトグラフ接続部2と、同じくバネとテーパー面と球面の組み合わせから成る第2の自在継手で構成される標準試料ガス導入接続部3が設けられている。両者の扇角はおおよそ120°以内であり、より好ましくは20°〜80°である。
【0016】
イオン化室1は、4本の支柱4をイオン化室1に穿設された4つの縦穴に嵌め込むことにより、イオン源に固定されている。支柱4は、前記縦穴と容易に嵌合できるようテーパ状になった先端部と、イオン源ブロックをしっかりと固定支持できるように前記縦穴の内径とほぼ同じ太さに加工された非テーパ部とを備えている。
【0017】
図4は、このイオン化室の取り付け手順を示したものである。まず、中央にイオン化室1が設けられたイオン源ブロック5を斜めに傾けて、70°前後の扇角で突き出しているガスクロマトグラフ接続部2と標準試料ガス導入接続部3の2つの自在継手をイオン源ブロック5のガスクロマトグラフ用と標準試料ガス導入用の2つの開口(絶縁受けの凹部)に押し当てる。
【0018】
すると、2つの自在継手は、内蔵されたバネによって引っ込みながら、先端のテーパー凸面がイオン源ブロック開口側の窪んだ2つの球面(絶縁受けの凹部)に当接する。
【0019】
この状態で、前記ガスクロマトグラフ用/標準試料ガス導入用開口(絶縁受けの凹部)と直交する向きに穿設されたイオン源ブロック5の4つの縦穴のうち、前記開口側に位置する2つの縦穴の口を、レンズ群を備えたベースチャンバー6に設けられた4本の支柱4のうち、前記開口側に位置する2本の支柱の先端に宛がう。
【0020】
次に、2つの自在継手と2つの球面(絶縁受けの凹部)の当接部位を2ヶ所同時に支点にして、該2つの当接部位を結ぶ直線を回転軸としながら、ベースチャンバー6に対し大きく円弧を描くようにイオン源ブロック5を動かして、前記宛がわれた開口側の2本の支柱と2つの縦穴ばかりでなく、開口と反対側に位置する残り2本の支柱と2つの縦穴同士をも嵌め合わせる。
【0021】
これにより、ベースチャンバー6に設けられた4本の支柱は、イオン源ブロック5に設けられた4つの縦穴すべてに嵌合され、イオン源ブロック5をベースチャンバー6にワンタッチでセットさせることができる。
【0022】
その後、図示しない電気配線部を接続して真空引きすれば、イオン化室のイオン源への取り付けは完了する。
【0023】
一方、イオン化室のイオン源からの取り外し作業は、以上の工程を逆に進めることにより行なう。すなわち、まずイオン源を大気圧にしてから、電気配線接続部を外す。次にイオン化室を4本の支柱から引き離して外す。すると、ガスクロマトグラフ接続部2と標準試料ガス導入接続部3の2つの自在継手は、同時に自動的に接続が解除される。
【0024】
以上のように、取り付け作業および取り外し作業はきわめて簡単で確実である。
【0025】
尚、本実施例では、自在継手を受ける球面部を絶縁受けとしたが、これは、イオン源の電位設定に依存するものであり、例えば、イオン源をアース電位とし、質量分析計本体をマイナス電位に設定する場合には、自在継手を受ける球面部は、必ずしも絶縁体である必要はない。
【0026】
[実施例2]
上記実施例では、ガス導入系はガスクロマトグラフ接続部2と標準試料ガス導入接続部3の2つのみであったが、これは3系統以上であっても良い。
【0027】
[実施例3]
上記実施例では、支柱の数は4本であったが、この数は、最低2本まで減らすことができる。
【0028】
[実施例4]
上記実施例では、イオン源ブロック側に球面の凹部、自在継手側にテーパ状の凸部を設けたが、球面とテーパの組み合わせであれば、逆の配置であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
ガスクロマトグラフ質量分析装置に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源の一例を示す図である。
【図2】従来のガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源の取り外し方の一例を示す図である。
【図3】本発明にかかるガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源の一実施例を示す図である。
【図4】本発明にかかるガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源の取り付け方の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1:イオン化室、2:ガスクロマトグラフ接続部、3:標準試料ガス導入部、4:支柱、5:イオン源ブロック、6:ベースチャンバー、7:イオン化室、8:カラム端部、9:標準試料ガス導入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源ブロックを固定支持する支柱を有するベースチャンバーを備え、該ベースチャンバーの支柱に該イオン源ブロックが着脱可能に取り付けられたガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源において、
該イオン源ブロックは、イオン化室、前記支柱を受け入れる縦穴、および前記支柱と交差する向きに突き出しているガスクロマトグラフ接続部と標準試料ガス導入接続部の2つの自在継手を受け止めるために設けられた2つの受け部を備え、
前記イオン源ブロックをベースチャンバーに固定する際には、所定の扇角で突き出している前記2つの自在継手と2つの受け部を当接させて、該当接部位を支点にしてベースチャンバーに対し円弧を描くようにイオン源ブロックを動かして、前記支柱と縦穴を嵌め合わせることにより、イオン源ブロックをベースチャンバーに固定するようにしたことを特徴とするガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源。
【請求項2】
前記自在継手の扇角は120°以下であることを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源。
【請求項3】
前記自在継手の扇角は20°〜80°であることを特徴とする請求項2記載のガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源。
【請求項4】
前記支柱は、前記縦穴と容易に嵌合できるようテーパ状になった先端部と、イオン源ブロックを固定支持できるように縦穴の内径とほぼ同じ太さに加工された非テーパ部とを備えていることを特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフ質量分析装置用イオン源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−49826(P2010−49826A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210682(P2008−210682)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】