説明

ガスケットのシールビード構造

【課題】組み付けの相手方であるフランジにガスケット内側のビードラインを跨ぐ鋳巣が発生しても、この鋳巣から流出する密封流体がボルト穴に到達しにくく、よってボルト穴を経由しての漏れが発生しにくい構造を提供する。
【解決手段】金属ガスケットにおける2つのボルト穴間に設けられたボルト間ビードおよび各ボルト穴の回りに設けられたボルト直下ビードが連続して設けられているガスケットのシールビード構造において、ボルト間ビードは、断面台形の台形ビードまたは断面円弧形のフルビードよりなり、ボルト直下ビードは、ボルト穴の内側を巡る内側ハーフビードおよびボルト穴の外側を巡る外側ハーフビードの組み合わせよりなる。ボルト直下ビードには、ボルト穴の回りを全周に亙って取り囲むことにより全周シール性を発揮する2段目ハーフビードが一体に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置の一種であるガスケットに係り、更に詳しくは、金属ガスケットにおける2つのボルト穴間に設けられたボルト間ビードおよび各ボルト穴の回りに設けられたボルト直下ビードが連続して設けられているガスケットのシールビード構造に関するものである。本発明のガスケットは例えば、自動車関連の分野で用いられ、またはその他の分野で用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば自動車関連のウォーターポンプに用いられる密封装置(シール部品)として平板状の金属ガスケット(ソフトメタル(登録商標)等の、金属基板の厚み方向両面または片面にゴム状弾性体製の被膜部(ゴム層)を被着した構造の金属ガスケットを含む、以下同じ)が知られており、この金属ガスケットにおいて、ボルト直下部はボルト穴からの漏れを防止するため、ボルト穴の内側(シール側すなわち密封流体側)に少なくとも1本のビードライン(ビードによるシールライン)を形成する必要がある。手法としては、
(1)
図8に示すように、ボルト間ビード51が断面円弧形のフルビードf(図8(B))、断面台形の台形ビードd(図8(C))または断面段差形のハーフビードh(図8(D))である場合に、このフルビードf(図8(B))、台形ビードd(図8(C))またはハーフビードh(図8(D))をそのままボルト直下ビード52としてボルト穴53の内側(図では左側)のみに通す方法、
(2)
図9に示すように、ボルト間ビード51がフルビードf(図9(B))である場合に、このフルビードfをそのままボルト直下ビード52としてボルト穴53の内側および外側(大気側、図では右側)双方に通す方法(図9(D))、または前記フルビードf(図9(B))から連続するハーフビードhをボルト直下ビード52としてボルト穴53の内側および外側双方に通す方法(図9(E))、
(3)
同じく図9に示すように、ボルト間ビード51が台形ビードd(図9(C))である場合に、この台形ビードd(図9(C))から連続するハーフビードhをボルト直下ビード52としてボルト穴53の内側および外側双方に通す方法(図9(E))
がある。
【0003】
このうち、ボルトピッチが短い(50mm以下)、相手フランジ剛性が高い(材質Al、厚み20mm以上)等の、ボルト間ビード51を十分に圧縮できる場合は上記図8の手法で対応可能であるが、ボルトピッチが長い(100mm以上)、相手フランジ剛性が低い(厚み10mm以下)等の、ボルト間ビード51を十分に圧縮できない場合は上記図8の手法に加えてボルト直下ビード52の幅をボルト間ビード51の幅より広くすることを採用し、また、ボルト直下部シール幅が狭くよってビード幅を十分に広くできない場合(*1)は上記図9(E)の手法を採用し、これらによりボルト直下ビード52をボルト間ビード51より剛性の低い(圧縮性良好な)ビードとすることで、ボルト間ビード51を圧縮できるようなビード設計をする必要があり、従来技術として広く使用されている。
【0004】
*1:必要シール幅:台形ビード(幅5mm)>フルビード(幅4mm)>ハーフビード(幅3mm)
【0005】
現在、ガスケットを組み付ける相手方であるフランジやハウジング(以下、単にフランジと称する)の軽量化・コスト低減により、フランジ剛性低下・ボルトピッチ増加・シール面鋳巣発生といった状況下でのシールが必要になってきており、特に鋳巣をシールするためには、ビードラインを増やす(ビードを複数本形成する)、または、1本当たりのビード接触幅を増加(ビード圧縮量UP)させる必要がある。ビードラインを増やす場合、相手面シール幅に制限があり現実的ではないため、上記図9(E)の手法が選択されている。
【0006】
しかしながら、上記手法、特にボルト間ビード51として台形ビードd(図9(C))またはフルビードf(図9(B))を選択するとともにボルト直下ビード52としてハーフビードh(図9(E))を選択した場合、図10に示すようにガスケット内側のビードラインBLを跨ぐ鋳巣cがフランジ54に発生すると、同図に矢印FおよびGで示すようにこの鋳巣cおよびボルト穴53を経由しての漏れが発生してしまう。
【0007】
尚、図10で二点鎖線は各ビード51,52によるビードラインBLを示し、これに対し図8および図9で一点鎖線は各ビード51,52の幅方向中心線を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−110827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて、組み付けの相手方であるフランジにガスケット内側のビードラインを跨ぐ鋳巣が発生しても、この鋳巣から流出する密封流体がボルト穴に到達しにくく、よってボルト穴を経由しての漏れが発生しにくいガスケットにおけるシールビード構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のガスケットのシールビード構造は、金属ガスケットにおける2つのボルト穴間に設けられたボルト間ビードおよび前記各ボルト穴の回りに設けられたボルト直下ビードが連続して設けられているガスケットのシールビード構造において、前記ボルト間ビードは、断面台形の台形ビードまたは断面円弧形のフルビードよりなり、前記ボルト直下ビードは、前記ボルト穴の内側を巡る内側ハーフビードおよび前記ボルト穴の外側を巡る外側ハーフビードの組み合わせよりなり、さらに前記ボルト直下ビードには、前記ボルト穴の回りを全周に亙って取り囲むことにより全周シール性を発揮する2段目ハーフビードが一体に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記構成を備える本発明のシールビード構造において、ボルト間ビードが断面台形の台形ビードよりなる場合は、この台形ビードにおけるガスケット内側の上端角部(ビード凸側の角部)が組み付けの相手方である上側フランジに密接するとともにボルト直下ビードにおける内側ハーフビードの上端角部が同じく上側フランジに密接することによりガスケット内側のビードラインが形成され、またこの台形ビードにおけるガスケット外側の上端角部が上側フランジに密接するとともにボルト直下ビードにおける外側ハーフビードの上端角部が同じく上側フランジに密接することによりガスケット外側のビードラインが形成される。したがって上側フランジにガスケット内側のビードラインを跨ぐ鋳巣が発生すると、この鋳巣から流出する密封流体が容易にボルト穴に到達し、よって上記したとおりボルト穴を経由しての漏れが発生することになる。
【0012】
また同様に、ボルト間ビードが台形ビードよりなる場合は、この台形ビードにおけるガスケット内側の下端角部(ビード凹側の角部)が組み付けの相手方である下側フランジに密接するとともにボルト直下ビードにおける内側ハーフビードの下端角部が同じく下側フランジに密接することによりガスケット内側のビードラインが形成され、またこの台形ビードにおけるガスケット外側の下端角部が下側フランジに密接するとともにボルト直下ビードにおける外側ハーフビードの下端角部が同じく下側フランジに密接することによりガスケット外側のビードラインが形成される。したがって下側フランジにガスケット内側のビードラインを跨ぐ鋳巣が発生すると、この鋳巣から流出する密封流体が容易にボルト穴に到達し、よって上記したとおりボルト穴を経由しての漏れが発生することになる。
【0013】
また、ボルト間ビードが断面円弧形のフルビードよりなる場合は、このフルビードにおけるガスケット内側の下端角部が組み付けの相手方である下側フランジに密接するとともにボルト直下ビードにおける内側ハーフビードの下端角部が同じく下側フランジに密接することによりガスケット内側のビードラインが形成され、またこのフルビードにおけるガスケット外側の下端角部が下側フランジに密接するとともにボルト直下ビードにおける外側ハーフビードの下端角部が同じく下側フランジに密接することによりガスケット外側のビードラインが形成される。したがって下側フランジにガスケット内側のビードラインを跨ぐ鋳巣が発生すると、この鋳巣から流出する密封流体が容易にボルト穴に到達し、よって上記したとおりボルト穴を経由しての漏れが発生することになる。
【0014】
そこで、本発明ではこれらの状況に対策するため、ボルト直下ビードに、ボルト穴の回りを全周に亙って取り囲むことにより全周シール性を発揮する2段目ハーフビードを一体に設け、この2段目ハーフビードによりボルト穴の回りをシールする。したがって鋳巣から流出する密封流体があってもこの流体は2段目ハーフビードでシールされてボルト穴に到達しないことになり、よってボルト穴を経由しての漏れが発生するのを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0016】
すなわち以上説明したように本発明によれば、ボルト間ビードが台形ビードまたはフルビードよりなるとともにボルト直下ビードが内側ハーフビードおよび外側ハーフビードよりなる場合に組み付けの相手方であるフランジに内側のビードラインを跨ぐ鋳巣が発生しても、ボルト直下ビードに全周シール性を発揮する2段目ハーフビードを設けたことにより、密封流体をシールすることができる。したがって本発明所期の目的どおり、鋳巣から流出する密封流体がボルト穴に到達しにくく、よってボルト穴を経由しての漏れが発生しにくいガスケットにおけるシールビード構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施例に係るガスケットのシールビード構造を示す図で、図1(A)は同ガスケットの要部平面図、図1(B)は図1(A)におけるL−L線断面図、図1(C)は図1(A)におけるM−M線断面図
【図2】図2(A)は同ガスケットにおけるビードラインの配置を示す説明図、図2(B)は同ガスケットの締結状態を示す説明図
【図3】本発明の第二実施例に係るシールビード構造を備えるガスケットの平面図
【図4】図4(A)は図3におけるN−N線拡大断面図、図4(B)は図3におけるO−O線拡大断面図
【図5】本発明の第三実施例に係るガスケットのシールビード構造を示す図で、図5(A)は同ガスケットの要部平面図、図5(B)は図5(A)におけるP−P線断面図、図5(C)は図5(A)におけるQ−Q線断面図
【図6】図6(A)は同ガスケットにおけるビードラインの配置を示す説明図、図6(B)は同ガスケットの締結状態を示す説明図
【図7】同ガスケットの締結状態を示す断面図
【図8】従来例に係るガスケットのシールビード構造を示す図で、図8(A)は同ガスケットの要部平面図、図8(B)(C)(D)はそれぞれ図8(A)におけるH−H線断面図であってかつI−I線断面図
【図9】他の従来例に係るガスケットのシールビード構造を示す図で、図9(A)は同ガスケットの要部平面図、図9(B)(C)はそれぞれ図9(A)におけるJ−J線断面図、図9(D)(E)はそれぞれ図9(A)におけるK−K線断面図
【図10】図10(A)は同ガスケットにおけるビードラインの配置を示す説明図、図10(B)は同ガスケットの締結状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
構成・・・
ボルト間にビード接触幅より大きく1ラインビードを跨ぐ鋳巣が発生した場合に、ボルト直下部からの漏れ防止のため、ボルト直下部のみ、もう一段ハーフビードを設定する。2段目ハーフビードの高さは必ずしも1段目と同一でなくてもよい。
効果・・・
ボルト間にビード接触幅より大きく1ラインビードを跨ぐ鋳巣が発生してもボルト直下部に設けた2段目ハーフビードにより漏れを防止できるため、従来のビードより鋳巣シール性を向上させることができる。
ハーフビードはビード高さの約50%圧縮時より反力が発生するため、従来ビードライン設定よりボルト直下部のシール性を向上させることができる。かつ、ハーフビードは同高さで比較した場合、他のビードより反力が小さいため、ボルト間ビード圧縮性への影響を最小限に抑えつつ上記効果を達成できる。
【実施例】
【0019】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0020】
第一実施例・・・
図1は、本発明の第一実施例に係るガスケット1のシールビード構造を示している。すなわち図1(A)は同ガスケット1の要部平面図、図1(B)は図1(A)におけるL−L線断面図、図1(C)は図1(A)におけるM−M線断面図をそれぞれ示している。
【0021】
当該実施例に係るガスケット1は、所定の平面形状を備える平板状の金属ガスケットであって、その平面内に複数(図では1つのみ示す)のボルト穴2が所定の間隔を開けて設けられるとともにシールビード構造がガスケット全周に亙って設けられ、シールビード構造は、2つのボルト穴2間に設けられたボルト間ビード3と、各ボルト穴2の回りに設けられたボルト直下ビード4とが連続して設けられた構造とされている。図1(A)では各ビード3,4の幅方向中心線を一点鎖線で示している。また、図1の各図ではガスケット1の左側がガスケットの内側(シール側すなわち密封流体側)とされるとともにガスケット1の右側がガスケットの外側(大気側)とされ、ガスケット1は内外を画し、内側に存する密封流体が外側へ漏れないようにシールする。
【0022】
ボルト間ビード3は、図1(B)に示すように、断面台形の台形ビードdよりなり、すなわちビード立ち上げの基準面となるガスケット基板部5に対し内外一対の斜面部6,7および平坦部8を一体に備える形状とされている。
【0023】
一方、ボルト直下ビード4は、図1(C)に示すように、ボルト穴2の内側を巡る内側ハーフビードh1と、ボルト穴2の外側を巡る外側ハーフビードh2との組み合わせにより構成されている。
【0024】
内側ハーフビードh1は、ガスケット基板部5に対し斜面部9および平坦部10を一体に備える形状とされている。内側ハーフビードh1の斜面部9はボルト間ビード3の内側斜面部6に対し連続して形成され、平坦部10はボルト間ビード3の平坦部8に対し連続して形成されている。
【0025】
外側ハーフビードh2は、これもガスケット基板部5に対し斜面部11および平坦部12を一体に備える形状とされている。外側ハーフビードh2の斜面部11はボルト間ビード3の外側斜面部7に対し連続して形成され、平坦部12はボルト間ビード3の平坦部8に対し連続して形成されている。
【0026】
上記構成の各ビードがボルト締めによって一対のフランジ41,42(図2(B))間に締結されると、台形ビードdにおけるガスケット内側の上端角部(ビード凸側の角部)13が上側フランジ41の下面に密接するとともに内側ハーフビードh1における上端角部14が同じく上側フランジ41の下面に密接し、これにより図2(A)に示すようにボルト間ビード3およびボルト直下ビード4に亙って一連の、ガスケット内側のビードラインBL1が形成され、同様に台形ビードdにおけるガスケット外側の上端角部15が上側フランジ41の下面に密接するとともに外側ハーフビードh2における上端角部16が同じく上側フランジ41の下面に密接することにより一連のガスケット外側のビードラインBL2が形成される。したがって上側フランジ41の下面に前者のガスケット内側のビードラインBL1を跨ぐような鋳巣cが発生すると、この鋳巣cから流出する密封流体が容易にボルト穴2に到達してボルト穴2を経由しての漏れが発生することになり、これに対策するため当該シールビード構造では以下の構造が追加されている。
【0027】
すなわち図1(A)および(C)に示すように、ボルト直下ビード4の内周端部に位置して、ボルト穴2の回りを全周に亙って取り囲むことにより全周シール性を発揮する環状の2段目ハーフビードh3が一体に設けられ、これにより密封流体をシールすることが可能とされている。図1(A)ではこのビードh3の幅方向中心線を一点鎖線で示している。
【0028】
図1(C)に示すように、2段目ハーフビードh3は、上記1段目のハーフビードh1,h2の各平坦部10,12に対し環状の斜面部17および同じく環状の平坦部18を一体に備える形状とされ、図2(B)に示すように、この2段目ハーフビードh3がボルト締めによって一対のフランジ41,42間に締結されると、その環状の上端角部19が上側フランジ41の下面に密接し、これにより図2(A)に示すように、1本の環状のビードラインBL3がボルト穴2の回りに形成される。したがって上記したとおり密封流体がこのビードラインBL3でシールされてボルト穴2に到達しなくなるため、ボルト穴2を経由しての漏れを抑制することができる。
【0029】
尚、図2(B)に示したように2段目ハーフビードh3が締結されたとき、この2段目ハーフビードh3はその上端角部19が上側フランジ41の下面に密接するのみでなくその下端角部25もしくは内周端部26が下側フランジ42の上面に密接するので、上側フランジ41の下面に鋳巣cが発生する場合のみでなく下側フランジ42の上面に鋳巣cが発生する場合にも対応することが可能である。以下この場合を説明する。
【0030】
図1は、本発明の第一実施例に係るガスケット1のシールビード構造を示している。すなわち図1(A)は同ガスケット1の要部平面図、図1(B)は図1(A)におけるL−L線断面図、図1(C)は図1(A)におけるM−M線断面図をそれぞれ示している。
【0031】
当該実施例に係るガスケット1は、所定の平面形状を備える平板状の金属ガスケットであって、その平面内に複数(図では1つのみ示す)のボルト穴2が所定の間隔を開けて設けられるとともにシールビード構造がガスケット全周に亙って設けられ、シールビード構造は、2つのボルト穴2間に設けられたボルト間ビード3と、各ボルト穴2の回りに設けられたボルト直下ビード4とが連続して設けられた構造とされている。図1(A)では各ビード3,4の幅方向中心線を一点鎖線で示している。また、図1の各図ではガスケット1の左側がガスケットの内側(シール側すなわち密封流体側)とされるとともにガスケット1の右側がガスケットの外側(大気側)とされ、ガスケット1は内外を画し、内側に存する密封流体が外側へ漏れないようにシールする。
【0032】
ボルト間ビード3は、図1(B)に示すように、断面台形の台形ビードdよりなり、すなわちビード立ち上げの基準面となるガスケット基板部5に対し内外一対の斜面部6,7および平坦部8を一体に備える形状とされている。
【0033】
一方、ボルト直下ビード4は、図1(C)に示すように、ボルト穴2の内側を巡る内側ハーフビードh1と、ボルト穴2の外側を巡る外側ハーフビードh2との組み合わせにより構成されている。
【0034】
内側ハーフビードh1は、ガスケット基板部5に対し斜面部9および平坦部10を一体に備える形状とされている。内側ハーフビードh1の斜面部9はボルト間ビード3の内側斜面部6に対し連続して形成され、平坦部10はボルト間ビード3の平坦部8に対し連続して形成されている。
【0035】
外側ハーフビードh2は、これもガスケット基板部5に対し斜面部11および平坦部12を一体に備える形状とされている。外側ハーフビードh2の斜面部11はボルト間ビード3の外側斜面部7に対し連続して形成され、平坦部12はボルト間ビード3の平坦部8に対し連続して形成されている。
【0036】
上記構成の各ビードがボルト締めによって一対のフランジ41,42(図2(B))間に締結されると、台形ビードdにおけるガスケット内側の下端角部(ビード凹側の角部)21が下側フランジ42の上面に密接するとともに内側ハーフビードh1における下端角部22が同じく下側フランジ42の上面に密接し、これにより図2(A)に示すようにボルト間ビード3およびボルト直下ビード4に亙って一連の、ガスケット内側のビードラインBL1が形成され、同様に台形ビードdにおけるガスケット外側の下端角部23が下側フランジ42の上面に密接するとともに外側ハーフビードh2における下端角部24が同じく下側フランジ42の上面に密接することにより一連のガスケット外側のビードラインBL2が形成される。したがって下側フランジ42の上面に前者のガスケット内側のビードラインBL1を跨ぐような鋳巣cが発生すると、この鋳巣cから流出する密封流体が容易にボルト穴2に到達してボルト穴2を経由しての漏れが発生することになり、これに対策するため当該シールビード構造では以下の構造が追加されている。
【0037】
すなわち図1(A)および(C)に示すように、ボルト直下ビード4の内周端部に位置して、ボルト穴2の回りを全周に亙って取り囲むことにより全周シール性を発揮する環状の2段目ハーフビードh3が一体に設けられ、これにより密封流体をシールすることが可能とされている。図1(A)ではこのビードh3の幅方向中心線を一点鎖線で示している。
【0038】
図1(C)に示すように、2段目ハーフビードh3は、上記1段目のハーフビードh1,h2の各平坦部10,12に対し環状の斜面部17および同じく環状の平坦部18を一体に備える形状とされ、図2(B)に示すように、この2段目ハーフビードh3がボルト締めによって一対のフランジ41,42間に締結されると、その環状の下端角部25および同じく環状の内周端部26の何れか一方または双方が下側フランジ42の上面に密接し、これにより図2(A)に示すように、1本の環状のビードラインBL3がボルト穴2の回りに形成される。したがって上記したとおり密封流体がこのビードラインBL3でシールされてボルト穴2に到達しなくなるため、ボルト穴2を経由しての漏れを抑制することができる。
【0039】
第二実施例・・・
上記第一実施例において、図1(A)および図2(A)の各平面図はガスケット1の一部平面を示しているが、本発明においてガスケット1全体としての平面形状は特に限定されない。例えば第二実施例として示す図3および図4では、ガスケット1の平面形状が長方形の中央部を刳り抜いた額縁形状(いわゆる平面長方形のガスケット)とされており、ガスケット1の平面形状としてはこのようなものであっても良い。この図3および図4のガスケット1では長方形の四隅それぞれにボルト穴2が設けられ、各ボルト穴2の回りに2段目ハーフビードh3が設けられている。
【0040】
第三実施例・・・
上記第一および第二実施例において、ボルト間ビード3は断面台形の台形ビードdとされているが、これに代えて、ボルト間ビード3は断面円弧形のフルビードfであっても良い。以下この場合を説明する。
【0041】
図5は、本発明の第三実施例に係るガスケット1のシールビード構造を示している。すなわち図5(A)は同ガスケット1の要部平面図、図5(B)は図5(A)におけるP−P線断面図、図5(C)は図5(A)におけるQ−Q線断面図をそれぞれ示している。
【0042】
当該実施例に係るガスケット1は、所定の平面形状を備える平板状の金属ガスケットであって、その平面内に複数(図では1つのみ示す)のボルト穴2が所定の間隔を開けて設けられるとともにシールビード構造がガスケット全周に亙って設けられ、シールビード構造は、2つのボルト穴2間に設けられたボルト間ビード3と、各ボルト穴2の回りに設けられたボルト直下ビード4とが連続して設けられた構造とされている。図5(A)では各ビード3,4の幅方向中心線を一点鎖線で示している。また、図5の各図ではガスケット1の左側がガスケットの内側(シール側すなわち密封流体側)とされるとともにガスケット1の右側がガスケットの外側(大気側)とされ、ガスケット1は内外を画し、内側に存する密封流体が外側へ漏れないようにシールする。
【0043】
ボルト間ビード3は、図5(B)に示すように、断面円弧形のフルビードfよりなり、すなわちビード立ち上げの基準面となるガスケット基板部5に対し断面円弧形に立ち上げ成形された形状とされている。
【0044】
一方、ボルト直下ビード4は、図5(C)に示すように、ボルト穴2の内側を巡る内側ハーフビードh1と、ボルト穴2の外側を巡る外側ハーフビードh2との組み合わせにより構成されている。
【0045】
内側ハーフビードh1は、ガスケット基板部5に対し斜面部9および平坦部10を一体に備える形状とされ、この斜面部9および平坦部10は共にボルト間ビード3のフルビードf内周部に対し連続して形成されている。
【0046】
外側ハーフビードh2は、これもガスケット基板部5に対し斜面部11および平坦部12を一体に備える形状とされ、この斜面部11および平坦部12は共にボルト間ビード3のフルビードf外周部に対し連続して形成されている。
【0047】
上記構成の各ビードがボルト締めによって一対のフランジ41,42(図6(B))間に締結されると、フルビードfにおけるガスケット内側の下端角部(ビード凹側の角部)21が下側フランジ42の上面に密接するとともに内側ハーフビードh1における下端角部22が同じく下側フランジ42の上面に密接し、これにより図5(A)に示すようにボルト間ビード3およびボルト直下ビード4に亙って一連の、ガスケット内側のビードラインBL1が形成され、同様にフルビードfにおけるガスケット外側の下端角部23が下側フランジ42の上面に密接するとともに外側ハーフビードh2における下端角部24が同じく下側フランジ42の上面に密接することにより一連のガスケット外側のビードラインBL2が形成される。したがって下側フランジ42の上面に前者のガスケット内側のビードラインBL1を跨ぐような鋳巣cが発生すると、この鋳巣cから流出する密封流体が容易にボルト穴2に到達してボルト穴2を経由しての漏れが発生することになり、これに対策するため当該シールビード構造では以下の構造が追加されている。
【0048】
すなわち図5(A)および(C)に示すように、ボルト直下ビード4の内周端部に位置して、ボルト穴2の回りを全周に亙って取り囲むことにより全周シール性を発揮する環状の2段目ハーフビードh3が一体に設けられ、これにより密封流体をシールすることが可能とされている。図5(A)ではこのビードh3の幅方向中心線を一点鎖線で示している。
【0049】
図5(C)に示すように、2段目ハーフビードh3は、上記1段目のハーフビードh1,h2の各平坦部10,12に対し環状の斜面部17および同じく環状の平坦部18を一体に備える形状とされ、図6(B)に示すように、この2段目ハーフビードh3がボルト締めによって一対のフランジ41,42間に締結されると、その環状の下端角部25および同じく環状の内周端部26の何れか一方または双方が下側フランジ42の上面に密接し、これにより図6(A)に示すように、1本の環状のビードラインBL3がボルト穴2の回りに形成される。したがって上記したとおり密封流体がこのビードラインBL3でシールされてボルト穴2に到達しなくなるため、ボルト穴2を経由しての漏れを抑制することができる。
【0050】
また、このボルト間ビード3を断面円弧形のフルビードfとした第三実施例においては、以下の理由により、ガスケット1全体としてのシール性(鋳巣シール性)が向上されていると云うこともできる。
【0051】
すなわち図7に示すように、ボルト間ビード3を断面円弧形のフルビードfとした場合、そのフランジ41,42に対する接触幅はビード凸側の接触幅w1のほうがビード凹側の接触幅w2よりも大きくなるため(w1>w2)、ガスケット1全体としての鋳巣シール性は幅狭なビード凹側の接触幅w2で決定されるのが原則である。しかしながら上記第三実施例のように、ボルト直下ビード4に2段目ハーフビードh3が設けられてボルト直下ビード4が2段ハーフビード形状とされると、ビード凹側からの漏れをこの2段ハーフビード形状で防ぐことができるため、鋳巣シール性はもっぱら幅広なビード凸側の接触幅w1で決定されることになる(鋳巣の大きさが幅広なビード凸側の接触幅w1より更に大きくなければ漏れないことになる)。したがって2段ハーフビード形状を備えることなく鋳巣シール性が幅狭なビード凹側の接触幅w2で決定される従来のビード設定と比較して、ガスケット1全体としてのシール性(鋳巣シール性)を向上させることができる。
【0052】
尚、冒頭に記載のとおり、金属ガスケットとしては、金属基板の厚み方向両面または片面にゴム状弾性体製の被膜部(ゴム層)を被着したものであっても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 ガスケット
2 ボルト穴
3 ボルト間ビード
4 ボルト直下ビード
5 基板部
6,7,9,11,17 斜面部
8,10,12,18 平坦部
13,14,15,16,19 上端角部
21,22,23,24,25 下端角部
26 内周端部
41,42 フランジ
d 台形ビード
h1 内側ハーフビード
h2 外側ハーフビード
h3 2段目ハーフビード
f フルビード
BL1,BL2,BL3 ビードライン
c 鋳巣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ガスケットにおける2つのボルト穴間に設けられたボルト間ビードおよび前記各ボルト穴の回りに設けられたボルト直下ビードが連続して設けられているガスケットのシールビード構造において、
前記ボルト間ビードは、断面台形の台形ビードまたは断面円弧形のフルビードよりなり、
前記ボルト直下ビードは、前記ボルト穴の内側を巡る内側ハーフビードおよび前記ボルト穴の外側を巡る外側ハーフビードの組み合わせよりなり、
さらに前記ボルト直下ビードには、前記ボルト穴の回りを全周に亙って取り囲むことにより全周シール性を発揮する2段目ハーフビードが一体に設けられていることを特徴とするガスケットのシールビード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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