説明

ガスケット用材料、ガスケット及びハードディスク装置、並びにガスケットの製造方法

【課題】常温でディスペンサーでの吐出が可能であり、かつ吐出後の形状保持性に優れたガスケット用材料、ガスケット及び該ガスケットを用いたハードディスク装置、並びに前記ガスケットの製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマー、(B)(メタ)アクリレートモノマー及び(C)無機充填剤を含有するガスケット用材料であって、降伏応力が30Pa以上であり、かつ剪断速度10s-1における粘度(η10)が100Pa・s以下であるガスケット用材料。さらには、該ガスケット用材料に活性エネルギー線を照射してなるガスケット、及び該ガスケットを用いたハードディスク装置、並びに前記ガスケットの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温でディスペンサーでの吐出が可能であり、かつ吐出後の形状保持性に優れたガスケット用材料、ガスケット及び該ガスケットを用いたハードディスク装置、並びに前記ガスケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのハードディスク装置(HDD;ハードディスクドライブ)においては、高性能化、小型化が進み、複雑な回路構成を有するようになっており、わずかな塵や水分によっても障害が起こるため、実用上、防塵や水分侵入の防止の必要性が高まっており、ガスケットを使って塵や水分の侵入を防ぐことが一般に行われている。
近年、かかるHDDの小型化に伴い、又は設備投資や加工費削減などを図るために、従来のインジェクションによる成形から、光硬化性組成物をディスペンサーによって被着体に塗布し、成形した後、活性エネルギー線により硬化させることにより、ガスケットを製造する方法が採られるようになってきた(例えば、特許文献1〜3参照)。なお、ガスケットとしての十分なシール性を得るため、前記光硬化性組成物には、硬化物が低硬度のものとなるように、主成分としてウレタンアクリレートオリゴマーが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第96/10594号パンフレット
【特許文献2】特開2003−7047号公報
【特許文献3】特開2004−26919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、HDD用ガスケットに用いられる材料は、紫外線硬化性材料が主流である。その成形方法は、液状の材料をディスペンサーのシリンジに充填し、これをエアー又は機械で押し出して細い針先から吐出し、カバープレートに塗布する。塗布後はまだ液状であるため、ここに紫外線を照射することで硬化(成形)する。シリンジから材料を押し出す方法としては、価格面及び運用面より、エアー式が主流である。エアー式ディスペンサーで材料を塗布する場合、材料の配合上、以下の2項目が重要である。
(1)スムーズに吐出させるため、吐出時の粘度が一定値以下であること。
(2)寸法を精密に管理するため、塗布してから紫外線照射により硬化させるまでの間に形状が変化し難いこと。
単に上記項目(1)及び(2)を実現するには、チクソトロピー性を付与する方法が挙げられる。しかし、主流であるエアー式ディスペンサーを使用することを考慮すると、エアー圧力(通常、数百kPa程度)で吐出することができ、かつ塗布後の形状変化が極めて小さいガスケット材料はこれまでに知られていない。そのため、現在では下記(i)又は(ii)の手法によって対応している。
(i)材料の粘度を高めに調整して、形状保持性を重視する。そして、シリンジを加温することで、吐出性を確保する。
(ii)材料の粘度を低めに調整して、吐出性を重視する。形状保持性を確保するために、ディスペンサーの針先近くにLEDタイプの小型紫外線照射装置を取り付け、塗布と同時に半硬化(仮固め)させる。
しかし、上記(i)の手法では、加温するための装置が必要になること、及びシリンジの温度が一定になるまで待つ必要があり、生産効率が悪いという問題がある。また、上記(ii)の手法では、LEDタイプの小型紫外線照射装置一式が高価であるという問題がある。
【0005】
よって、本発明の課題は、常温でディスペンサーでの吐出が可能であり、かつ吐出後の形状保持性に優れたガスケット用材料、ガスケット及び該ガスケットを用いたハードディスク装置、並びに前記ガスケットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマーを主成分とし、かつ(メタ)アクリルモノマーを含有する材料であって、降伏応力と高剪断領域の粘度を特定範囲にした材料であれば、常温(例えば5〜35℃程度)におけるディスペンサーでの吐出が可能であり、かつ吐出後の形状保持性に優れることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[11]に関する。
[1](A)(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマー、(B)(メタ)アクリレートモノマー及び(C)無機充填剤を含有するガスケット用材料であって、降伏応力が30Pa以上であり、かつ剪断速度10s-1における粘度(η10)が100Pa・s以下であるガスケット用材料。
[2]前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して5〜90質量部である、上記[1]に記載のガスケット用材料。
[3](C)無機充填材の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して3〜20質量部である、上記[1]又は[2]に記載のガスケット用材料。
[4](B)(メタ)アクリレートモノマーが、アクリロイルモルホリン、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のガスケット用材料。
[5](B)(メタ)アクリレートモノマーが下記一般式(1)で表される、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のガスケット用材料。
【化1】

(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は、炭素数4〜18の鎖式飽和脂肪族炭化水素基を表す。Wは、エチレン基又はプロピレン基を表す。また、nは、0〜2の整数を表す。)
[6](C)無機充填材が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び粘土鉱物から選択される少なくとも1種である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のガスケット用材料。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかに記載の材料に活性エネルギー線を照射して得られるガスケット。
[8]ハードディスクドライブ用である、上記[7]に記載のガスケット。
[9]上記[8]に記載のガスケットを用いたハードディスク装置。
[10](I)上記[1]〜[6]のいずれかに記載のガスケット用材料を、ディスペンサーによって被着体に塗布する工程、及び
(II)前記工程(I)にて塗布された未硬化ガスケットを、活性エネルギー線を照射して硬化させる工程、
を有するガスケットの製造方法。
[11]前記ディスペンサーが、空気圧0.02〜0.7MPaのエアー式ディスペンサーである、上記[10]に記載のガスケットの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスケット用材料は、常温での高剪断領域における粘度が低いため、ディスペンサー(特にエアー式ディスペンサー)によって塗布することが可能であり、ガスケットを簡便に製造できる。また、本発明のガスケット用材料は、吐出後の形状保持性に優れるため、ガスケットを安定的に製造できる。該材料から得られる本発明のガスケットは、圧縮耐久性が高く、かつHDD用のヒートショック試験に充分に耐え得るものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ガスケット用材料]
本発明のガスケット用材料は、(A)成分として(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマー、(B)成分として(メタ)アクリレートモノマー、そして(C)成分として無機充填剤を含有するものであり、降伏応力が30Pa以上、かつ剪断速度10s-1における粘度(η10)が100Pa・s以下の材料である。
降伏応力が30Pa未満であると、形状保持性が不十分となるため、高価なLEDタイプの小型紫外線照射装置を使用する必要性が生じる。この観点から、降伏応力は、好ましくは32Pa以上、より好ましくは35Pa以上、より好ましくは40Pa以上、さらに好ましくは45Pa以上、特に好ましくは55Pa以上である。剪断速度10s-1における粘度(η10)が100Pa・sを超えると、ディスペンサー(特にエアー式ディスペンサー)による吐出ができなくなる。この観点から、η10は、好ましくは95Pa・s以下、より好ましくは92Pa・s以下、さらに好ましくは80Pa・s以下である。
なお、ガスケット用材料における降伏応力及びη10の制御は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分それぞれの種類及び添加量を調整することによって行なうことができる。
ここで、本明細書において、η10及び降伏応力は、実施例に記載の方法によって算出した値である。
以下、本発明のガスケット用材料の各成分について詳細に説明する。
【0010】
((A)エネルギー線硬化型液状オリゴマー)
本発明のガスケット用材料においては、(A)成分として、(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマーが用いられる。本明細書で、「液状」とは、常温及び常圧にて液状であることを言い、重量平均分子量が好ましくは5,000〜40,000、より好ましくは6,000〜30,000のものである。このエネルギー線硬化型液状オリゴマーとしては、得られるガスケットの性能及び加工性などの観点から、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを、好適に用いることができる。1分子中の(メタ)アクリロイル基の個数は、通常、好ましくは2〜6個程度、より好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2個である。
なお、上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を指す。
【0011】
(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型オリゴマーとしては、特に制限はなく、例えばウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマー及びその水素添加物などを挙げることができる。
ここで、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カーボネートジオールなどとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
ポリエステル系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0012】
ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエーテルポリオールオリゴマーの両末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリカーボネートポリオールオリゴマーの両末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。
また、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、液状スチレン−ブタジエン共重合体をアクリル変性して得られるSBRジアクリレート、ポリイソプレンをアクリル変性して得られるポリイソプレンジアクリレートなどが挙げられる。水素添加共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば両末端に水酸基を有する、水素添加ポリブタジエン又は水素添加ポリイソプレンの前記水酸基を、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを指し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を指す。
【0013】
本発明においては、前記(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ガスケット用途に用いる場合には、前記オリゴマーの中で、得られるガスケットの性能及び加工性などの観点から、2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマー、水素添加共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーが好適である。なお、2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーとは、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーの1分子中に、(メタ)アクリロイル基が2個含まれていることを意味する。
前記2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子内にヒドロキシ基2個を有する、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、カーボネートジオールなどと、ポリイソシアナートとの反応により、得ることができる。
【0014】
前記のヒドロキシ基2個を有するポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール及び1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビスフェノールA等に、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド等が付加した化合物などを用いることができる。
前記のヒドロキシ基2個を有するポリエステルポリオールは、アルコール成分と酸成分とを反応させて得ることができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ビスフェノールA等にエチレンオキシド又はプロピレンオキシド等が付加した化合物、あるいは、ε−カプロラクトンが付加した化合物等をアルコール成分とし、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸等の二塩基酸及びその無水物を酸成分として使用することができる。上記のアルコール成分、酸成分及びε−カプロラクトンの三者を同時に反応させることによって得られる化合物も、ポリエステルポリオールとして使用することができる。
【0015】
前記のカーボネートジオールは、例えば、ジフェニルカーボネート、ビス−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、フェニル−トルイル−カーボネート、フェニル−クロロフェニル−カーボネート、2−トリル−4−トリル−カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアリールカーボネート類又はジアルキルカーボネート類とジオール類(例えば、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール)、又は前記ジオール類とシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸との反応生成物又はε−カプロラクトンとの反応生成物であるポリエステルジオール等とのエステル交換反応によって得ることができる。
このようにして得られるカーボネートジオールは、分子中にカーボネート構造を二つ以上有するポリカーボネートジオールである。
【0016】
本発明のガスケット用材料においては、2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーとして、前記のポリエーテルポリオール又はポリエステルポリオールに、有機ジイソシアナートを反応させて得られる化合物が好ましい。上記有機ジイソシアナートとしては、例えばイソホロンジイソシアナート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート及びヘキサメチレンジイソシアナートなどの脂環式や脂肪族ジイソシアナートが好ましく用いられる。
本発明においては、当該2官能ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ハンドリング性などの観点から、数平均分子量4,000〜8,000程度のオリゴマーが好適である。また、共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーや水素添加共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、重量平均分子量5,000〜40,000程度(より好ましくは6,000〜30,000)のオリゴマーが好適である。なお、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0017】
((B)(メタ)アクリレートモノマー)
本発明のガスケット用材料においては、(B)成分として、(メタ)アクリレートモノマーを用いる。該(B)成分と(A)成分との組合せにより、ガスケット用材料の常温(5〜35℃程度)での高剪断領域における粘度が低くなり、ディスペンサー(特にエアー式ディスペンサー)による吐出が可能となる。
(メタ)アクリルモノマーとしては、分子量1,000未満の(メタ)アクリルモノマーが好ましく、例えばアクリロイルモルホリン、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
他にも、(メタ)アクリレートモノマーとしては、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーが好ましく挙げられる。特に、ガスケット用材料に下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを配合することにより、圧縮耐久性が高く、かつHDD用のガスケットを対象としたヒートショック試験に対する耐久性の高いガスケットを製造することができる。
【0018】
【化2】

【0019】
前記一般式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は、炭素数4〜18の鎖式飽和脂肪族炭化水素基を表す。Wは、エチレン基又はプロピレン基を表す。また、nは、0〜2の整数を表す。
1としては、入手容易性の観点から、水素原子が好ましい。
2が表す炭素数4〜18の鎖式飽和脂肪族炭化水素基としては、合計の炭素数が4〜18の範囲の鎖式飽和脂肪族炭化水素基であれば特に制限はないが、例えばn−ブチル基(C4)、イソブチル基(C4)、s−ブチル基(C4)、n−ヘキシル基(C6)、エチルヘキシル基(C8)、n−オクチル基(C8)、イソオクチル基(C8)、各種デシル基(C10)(「各種」とは、直鎖及びあらゆる分岐鎖を含むことを示す。以下、同様である。)、各種ドデシル基(C12)、各種トリデシル基(C13)、各種ヘキサデシル基(C16)、各種オクタデシル基(C18)等が挙げられる。これらの中でも、ヒートショック試験における耐久性の観点から、炭素数7〜18の分岐状の鎖式飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、エチルヘキシル基、イソオクチル基(6−メチルヘプチル基)、n−ドデシル基(ラウリル基)、イソミリスチル基、イソステアリル基がより好ましい。
該R2の炭素数が炭素数4〜18の鎖式飽和脂肪族炭化水素基であることにより、HDD用のガスケットを対象としたヒートショック試験に充分に耐えられるガスケットが得られる傾向にある。
また、Wとしては、入手容易性の観点から、エチレン基が好ましい。
(B)成分の(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、好ましくは5〜90質量部、より好ましくは5〜80質量部である。特に、(A)成分がウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーである場合、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは5〜35質量部である。また、(A)成分が共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は水素添加共役ジエン重合体系(メタ)アクリレートオリゴマーである場合、(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは50〜90質量部、より好ましくは60〜90質量部、さらに好ましくは65〜80質量部である。
【0021】
((C)無機充填材)
本発明のガスケット用材料においては、(C)成分として、無機充填剤を含有させる。該(C)成分により、ガスケット用材料の形状保持性が一層優れたものとなる。無機充填剤としては、シリカ(SiO2)、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び粘度鉱物などが挙げられる。粘土鉱物としてはタルクなどが挙げられる。
これらの中でも、(C)成分としては、形状保持性の観点から、シリカ、アルミナが好ましく、シリカがより好ましい。より具体的には、乾式法により微粉化したシリカ微粉末(例えば、日本アエロジル(株)製の「アエロジル90」、「アエロジル300」、旭化成ワッカーシリコーン(株)製の「HDK N20」)などが挙げられる。
無機充填剤の平均粒径(平均一次粒子径)は、形状保持性の観点から、5〜200nmが好ましく、5〜100nmがより好ましく、5〜50nmがさらに好ましい。
(C)成分の含有量は、ディスペンサーによる吐出容易性及び吐出後の形状保持性の観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは3〜20質量部、より好ましくは3〜15質量部、さらに好ましくは4〜13質量部である。
【0022】
本発明のガスケット用材料は、活性エネルギー線硬化型である。該活性エネルギー線としては、紫外線;電子線;α線、β線、γ線などの電離性放射線を用いることができるが、操作性、生産性及び経済性などの観点から、紫外線を用いることが好ましい。紫外線を用いる場合には、本発明のガスケット用材料は、後述する(D)光重合開始剤を含むことが好ましい。なお、電子線やγ線のような電離性放射線を用いる場合には、光重合開始剤を含有させなくても、速やかに硬化を進めることができる。
【0023】
((D)光重合開始剤)
成分である光重合開始剤としては、公知のものを広く用いることができ、特に制限されるものではない。
例えば分子内開裂型の光重合開始剤が挙げられ、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系光重合開始剤;2,2−ジエトキシアセトフェノン、4’−フェノキシ−2,2−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系光重合開始剤;2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4−モルフォリノブチルフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4’−ドデシル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−エチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン系光重合開始剤;アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、アルキルフェノン系光重合開始剤が好ましく、中でもプロピオフェノン系光重合開始剤がより好ましく、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンがさらに好ましい。
また、その他水素引き抜き型の光重合開始剤としてベンゾフェノン/アミン系光重合開始剤、ミヒラーケトン/ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン/アミン系光重合開始剤等を挙げることができる。
また、未反応光重合開始剤のマイグレーションを避けるために、非抽出型光重合開始剤を用いることができる。例えばアセトフェノン系開始剤を高分子化したもの、ベンゾフェノンにアクリル基の二重結合を付加したものがある。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明のガスケット用材料に(D)成分を含有させる場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、好ましくは0.1〜10質量部程度、より好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。また、上記光重合開始剤と共に、公知の光増感剤を併用することもできる。
【0024】
(任意成分)
本発明のガスケット用材料においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ、任意成分として、有機系チクソ性付与剤、カップリング剤、酸化防止剤(老化防止剤)、光安定剤、カルボジイミド類などや、その他にも、ステアリン酸などの脂肪酸;ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アミド;脂肪酸エステル;ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの内部離型剤;プロセスオイルなどの軟化剤;着色剤;レベリング剤などを含有させることができる。本発明のガスケット用材料は、基本的には無溶媒であるが、必要に応じて各種溶媒を配合してもよい。
以下、これらの任意成分について説明する。
【0025】
(有機系チクソ性付与剤)
有機系チクソ性付与剤としては、水添ひまし油、アマイドワックス又はこれらの混合物が好ましい。具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、ズードケミー触媒(株)製、商品名:ADVITROL100、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305など]及びアンモニアの水素をアシル基で置換した化合物である高級アマイドワックス[例えば、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500など]などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のガスケット用材料に有機系チクソ性付与剤を含有させる場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0026】
(カップリング剤)
カップリング剤は、ガスケット付き部材を作製する場合、ガスケットと基材との密着性を向上させるために、本発明のガスケット用材料に、必要に応じて適宜量用いてもよい。このカップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などがあるが、中でもシラン系カップリング剤が好適である。
上記シラン系カップリング剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの不飽和基含有シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのグリシジル基含有シランカップリング剤;γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらのシラン系カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のガスケット用材料にカップリング剤を含有させる場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常、好ましくは0.1〜20質量部程度、より好ましくは1〜15質量部、さらに好ましくは3〜15質量部である。
【0027】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール,ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−プチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニルブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3'−ビス−(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、α−トコフェロール等が挙げられる。
【0028】
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート等が挙げられる。
またリン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0029】
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のガスケット用材料に酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、その種類に応じて適宜選定されるが、(A)成分100質量部に対して、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0030】
(光安定剤)
光安定剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系又はトリアジン系の紫外線吸収剤や、ヒンダードアミン系光安定剤などが挙げられるが、これらの中でも、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル−メタクリレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔〔3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル,N,N',N'',N'''−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン−1,3,5−トリアジン−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]ヘネイコサン−21−オン、β−アラニン,N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]ヘネイコサン−21−オン、2,2,4,4−テトラメチル−21−オキサ−3,20−ジアザジシクロ−[5.1.11.2]−ヘネイコサン−20−プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステルプロパンジオイックアシッド、〔(4−メトキシフェニル)−メチレン〕−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3−ベンゼンジカルボキシアミド−N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等が挙げられる。
【0031】
光安定剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のガスケット用材料に光安定剤を含有させる場合、その含有量は、その種類に応じて適宜選定されるが、(A)成分100質量部に対して、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0032】
(カルボジイミド類)
カルボジイミド類としては、例えば「Elastostab H01」(日清紡績株式会社製)などの市販品を使用することができる。
本発明のガスケット用材料にカルボジイミド類を含有させる場合、その含有量は、その種類に応じて適宜選定されるが、(A)成分100質量部に対して、通常、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0033】
(接着性向上剤)
本発明のガスケット用材料において、所望により用いられる接着性向上剤としては、例えばテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体などが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
[ガスケット用材料の調製]
本発明のガスケット用材料の調製方法に特に制限はなく、公知の方法を適用することができる。例えば、前記の(A)成分、(B)成分及び所望により用いられる光重合開始剤や前記任意成分を、温度調節可能な混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラネタリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサーなどを用いて混練することにより、調製することができる。
【0035】
[ガスケット]
本発明のガスケットは、前述した本発明のガスケット用材料に活性エネルギー線を照射して得られるガスケットである。エネルギー線としては、前述したように操作性や生産性及び経済性などの観点から、紫外線を用いることが好ましい。紫外線を用いる場合には、上記ガスケット用材料は、光重合開始剤を含むものを用いることが好ましい。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。照射雰囲気温度は、通常10〜200℃とすることができる。また、照射時間は、通常、好ましくは10秒〜60分であり、積算光量は、通常、好ましくは1,000〜20,000mJ/cm2である。
【0036】
当該ガスケット用材料のエネルギー線、好ましくは紫外線照射による硬化方法としては、得られるガスケットの用途に応じて、適宜選択することができる。
次に、当該ガスケットを、コンピュータのHDD用ガスケットのようなガスケット付き部材を作製する場合の例を挙げ、その製造方法の好ましい態様について説明する。
【0037】
[ガスケットの製造方法]
(I)本発明のガスケット用材料を、ディスペンサーによって被着体に塗布する工程、及び
(II)前記工程(I)にて塗布された未硬化ガスケットを、活性エネルギー線を照射して硬化させる工程、
を有するガスケットの製造方法を利用することにより、簡便かつ安定的にガスケット付き部材を製造することができる。
被着体としては、例えば、硬質樹脂からなるものも使用することができるが、加工性等から金属製のものが好ましい。金属としては特に制限はなく、例えば、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、マグネシウム板、マグネシウム合金板などの中から、適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。耐食性の点から、ニッケルめっき処理を施した金属が好適である。
また、ガスケット付き部材としては、HDD用等のガスケット、インクタンク用シール、液晶装置用シールなどが挙げられる。ガスケットの厚さは、用途により適宜選定することができるが、通常、0.1〜2mm程度である。
ディスペンサーとしては、エアー式ディスペンサーが簡便であり好ましい。該エアー式ディスペンサーのエアー圧力は、通常、200〜1,000kPa程度であり、ガスケット用材料としては、エアー圧力200〜600kPa程度で吐出可能であることが好ましい。
なお、前記工程(I)を繰り返すことにより、多段構造のガスケットを製造することもできる。
【0038】
上記ガスケット用材料の被着体への塗布は、ディスペンサーを用いる方法(ディスペンシング)以外の方法でも可能であり、上記材料を必要に応じて温度調節し、一定粘度に調整した塗液を用いて任意の方法で行うことができる。例えば、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、ディッピングなどの方法を用いることができるが、本発明の特徴が最も活かされるのがディスペンサーを用いる方法である。
【0039】
本発明のガスケットは、HDD用などのガスケットとして好適に用いられるほか、インクタンク用シール材、各種表示装置のシール材、土木、建築などの構造物用シール材、Oリングなどのパッキン、防振部材などの用途に用いることができる。
本発明はまた、前記本発明のガスケットを用いたハードディスク装置をも提供する。
【実施例】
【0040】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で得られたガスケット用材料について、以下の方法に従って、降伏応力及び剪断速度10s-1における粘度(η10)の測定を行なった。また、下記評価基準に従って、ディスペンサーからの吐出容易性と吐出後の形状保持性を評価した。
【0041】
(粘度及び降伏応力の測定)
η10は、レオメーター「RS−600」(ハーケ社製)を用いて測定した。センサーとしては、φ35mm、θ=2°のコーンプレートを使用した。まず、ガスケット用材料を25℃に調整し、ギャップ0.111mmで、剪断速度10s-1で60秒間測定してリセットした(Step 1)。次いで、剪断速度1s-1、2s-1、3s-1、・・・10s-1の順で各20秒間剪断応力を測定した(Step 2:往路)。さらに、剪断速度10s-1、9s-1、8s-1、・・・1s-1の順で各20秒間剪断応力を測定した(Step 3:復路)。Step 3(復路)における剪断速度と剪断応力の1/2乗(縦軸:剪断応力の1/2乗、横軸:剪断速度の1/2乗)をプロットしたキャッソンプロットから最小二乗法による近似線を引き、10s-1における粘度(η10)を算出した。また、当該近似線と前記縦軸との交点の2乗を降伏応力として算出した。
【0042】
(ディスペンサーからの吐出容易性の評価)
シリンジニードル径0.92mmのディスペンサーで、25℃にて、エアー圧力400kPa以下で吐出可能であった材料を「○」とし、吐出不可であったものを「×」とした。
(吐出後の形状保持性の評価)
シリンジニードル径0.92mmのディスペンサーで、25℃にて、エアー圧力400kPa以下で材料を吐出した。吐出直後(30秒以内に測定)の未硬化ガスケットの高さ(h0)を基準とし、吐出してから3分経過後の未硬化ガスケットの高さ(h1)の変化率([(h0−h1)/h0]×100)を調査した。該変化率が5%未満であった材料を「○」とし、5%以上であった材料を「×」とした。
【0043】
<製造例1>水添SBRジアクリレートオリゴマーの製造方法
アルゴン置換した内容積7Lの反応器に、脱水精製したシクロヘキサン1.90kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液2kg、20.0質量%のスチレンのシクロヘキサン溶液0.573kg、1.6mol/Lの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液130.4mlを添加した後、0.5mol/Lのジリチウム重合開始剤108.0mlを添加して重合を開始させた。混合液を50℃に昇温し、1.5時間重合を行なった後、1mol/Lのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液108.0mlを添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。
得られた共重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて、分子末端に水酸基を有するスチレンブタジエンゴム(スチレン含有量:20質量%、重量平均分子量18,000、分子量分布1.15)を得た。なお、重量平均分子量は、GPC法を用いて標準ポリスチレン換算により求めた。
【0044】
(水素添加処理)
上記で得られた分子末端に水酸基を有するスチレンブタジエンゴム120gを、十分に脱水精製したヘキサン1Lに溶解した後、予め別の容器で調整したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム及びブタジエン[それぞれ1:3:3(モル比)]の触媒液を、前記スチレンブタジエンゴムのブタジエン由来の構成単位1,000molに対してニッケル1molになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を2.758MPa(400psi)で加圧添加し、110℃にて4時間、水素添加反応を行なった。
その後、3mol/m3の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。そして、分子末端に水酸基を有する水添スチレンブタジエンゴムをイソプロピルアルコール中に沈殿させ、さらに十分に乾燥させて、分子末端に水酸基を有する水添スチレンブタジエンゴム(スチレン含有量20質量%、重量平均分子量16,500、水素添加率98%、分子量分布1.1)を得た。
(分子末端への活性エネルギー線硬化性官能基の導入)
上記で得られた分子末端に水酸基を有する水添スチレンブタジエンゴムをシクロヘキサンに溶解し、40℃にて撹拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(「カレンズ(登録商標)AOI」、昭和電工株式会社製)をゆっくり滴下し、さらに4時間撹拌を行なった後、イソプロピルアルコール中に結晶を沈殿させ、末端変性水添スチレンブタジエンゴム(水添SBRジアクリレートオリゴマー)を得た。
【0045】
<実施例1〜15及び比較例1〜4>
表1に示す各成分を混合し、ガスケット用材料を調製した。該ガスケット用材料を用いて、上記方法に従って降伏応力及び剪断速度10s-1における粘度(η10)の測定を行なった。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
*1:ライトタックPUA−KH32M(共栄社化学株式会社製)
*2:製造例1で製造した水添SBRアクリレートオリゴマー
*3:ライトアクリレートEHDG−AT(共栄社化学株式会社製)、下記参照
*4:ライトアクリレートIM−A(共栄社化学株式会社製)、下記参照
*5:ライトアクリレートPO−A(共栄社化学株式会社製)、下記参照
*6:IBXA(大阪有機化学工業株式会社製)、下記参照
*7:ACMO(株式会社興人製)、アクリロイルモルホリン、下記参照
*8:HDK N20(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)
*9:アエロジル300(日本アエロジル株式会社製)
*10:アエロジル90(日本アエロジル株式会社製)
*11:アエロキシド Alu C(日本アエロジル株式会社製)
*12:DAROCUR 1173(BASFジャパン株式会社製)
*13:IRGACURE 369(BASFジャパン株式会社製)
【0048】
【化3】

【0049】
表1より、本発明のガスケット用材料は、25℃にてディスペンサーによって吐出することが可能であり、かつ、吐出後の未硬化ガスケットは形状保持性に優れていることが分かる。一方、降伏応力が30Pa未満であると(比較例1及び3)、吐出後の形状保持性に乏しかった。また、剪断速度10s-1における粘度(η10)が100Pa・sを超えていると(比較例2及び4)、25℃ではディスペンサーを用いて吐出することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のガスケット用材料は、HDD用ガスケットに有用であり、他にも、インクタンク用シール材、各種表示装置のシール材、土木、建築などの構造物用シール材、Oリングなどのパッキン、防振部材などの用途にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリロイル基を有するエネルギー線硬化型液状オリゴマー、(B)(メタ)アクリレートモノマー及び(C)無機充填剤を含有するガスケット用材料であって、降伏応力が30Pa以上であり、かつ剪断速度10s-1における粘度(η10)が100Pa・s以下であるガスケット用材料。
【請求項2】
前記(B)成分の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して5〜90質量部である、請求項1に記載のガスケット用材料。
【請求項3】
(C)無機充填材の含有量が、前記(A)成分100質量部に対して3〜20質量部である、請求項1又は2に記載のガスケット用材料。
【請求項4】
(B)(メタ)アクリレートモノマーが、アクリロイルモルホリン、シクロへキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のガスケット用材料。
【請求項5】
(B)(メタ)アクリレートモノマーが下記一般式(1)で表される、請求項1〜3のいずれかに記載のガスケット用材料。
【化1】

(式中、R1は、水素原子又はメチル基を表し、R2は、炭素数4〜18の鎖式飽和脂肪族炭化水素基を表す。Wは、エチレン基又はプロピレン基を表す。また、nは、0〜2の整数を表す。)
【請求項6】
(C)無機充填材が、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア及び粘土鉱物から選択される少なくとも1種である、請求項1〜5のいずれかに記載のガスケット用材料。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の材料に活性エネルギー線を照射して得られるガスケット。
【請求項8】
ハードディスクドライブ用である、請求項7に記載のガスケット。
【請求項9】
請求項8に記載のガスケットを用いたハードディスク装置。
【請求項10】
(I)請求項1〜6のいずれかに記載のガスケット用材料を、ディスペンサーによって被着体に塗布する工程、及び
(II)前記工程(I)にて塗布された未硬化ガスケットを、活性エネルギー線を照射して硬化させる工程、
を有するガスケットの製造方法。
【請求項11】
前記ディスペンサーが、空気圧0.02〜0.7MPaのエアー式ディスペンサーである、請求項10に記載のガスケットの製造方法。

【公開番号】特開2013−49805(P2013−49805A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189425(P2011−189425)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】