説明

ガスケット用樹脂組成物およびその製造方法

【課題】 音響や振動特性、また種々のガス耐透過性等の用途上の要求仕様を全て満足し得る優れた特性のガスケットを作成可能なガスケット用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明のガスケット用樹脂組成物は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)100重量部に、あるいはこの混和物(I)100重量部に有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合して得られた混和物(II)100重量部に、有機過酸化物(D)を添加、混練して動的または静的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部の電子部品を気密に保護する必要のあるハードディスク装置などの電子機器に用いられるガスケットのシール特性を向上することのできるガスケット用樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の本体とその蓋との間のシール、燃料電池のセパレータ間のシール、携帯電話などの通信機器、OA機器、自動車に搭載の電子回路ボックスの防塵、防湿シールなどの湿気、排ガス、煤塵を嫌う各種電子機器の保護のためのシールには、弾性ガスケットが使用されている。
【0003】
例えば、電子機器として代表的な存在であるハードディスク装置においては、近年に到っては、従来からのコンピュータの外部記憶装置としてばかりではなく、テレビやビデオ等の家電製品、また自動車用の電子製品類の中にまで搭載される様になってきており、それらの新たな用途の広がりの中で、使用環境条件も多様化されて来ている。一方、他に台頭の目覚しい記録デバイスとして、DVDやメモリーフラッシュに代表される製品類も、各々のコスト・パフォーマンスでバランスのとれる用途分野から、徐々にその範囲を広げ普及し始めている。その為、ハードディスク装置は、記憶容量のアップはもとより、その廉価性をさらに向上することで市場を堅持する必要性に迫られている。そのような必要性から、最近のハードディスク装置においては、サイズ毎の少品種大量生産に適合した画一化された製法が以前にも増して強化されて来ている。
【0004】
従って、近い将来にかけ、ハードディスク装置の置かれる環境は、多様化される用途に対し、画一化された製法での製品対応を余儀なくされる一方で、使用環境に対する従来からの基本性能レベルが一段と高いものを求められる方向に向かうと予想されている。
【0005】
前述のような使用条件の多様化の中で、具体的にレベルアップを求められている諸性能の例には、アウトガス浸入防止、イオン性不純物の混入防止、等のクリーン化は勿論のこと、とりわけハードルの高いものに音響特性やそれらに係わる制振特性、また種々のガス耐透過性(耐透湿性、耐シリコンガス透過性)がある。このような特性は、ハードディスク装置のケーシング本体と蓋材間のシール性と制振性を担うガスケットに依存するところが大きい。
【0006】
従来から、ハードディスク装置のガスケット材は、その主流としてウレタンアクリレート系の反応硬化性材料をディスペンサー装置で先端ノズルからハードディスク装置の蓋材の内側面の周縁部に丸紐形状で吐出され、蓋材上で蒲鉾形状で固着されたものをUV等の光で硬化された材料で対応されてきた(特許文献1)。
【0007】
しかし、前記従来のディスペンサー方式によるガスケットにおいては、原材料の保存・保管面、および製造面で、原料が反応性である為に、保存・保管および製造時の温度や時間等の要因が、製品の品質に微妙に悪影響を与え易く、取り扱いが非常に悪い為、これらの要因を制御・管理する必要からコスト高になっている。また、ガスケットの取り付け対象であるハードディスク装置は、従来からその主流サイズの3.5inが現在でも圧倒的に多いが、最近では小さなタイプ(2.5インチサイズ以下)も増加傾向にあり、かかる小さなタイプの装置に用いるダンパ材やガスケット材の幅や厚みも、比較的に狭く薄いものになってきている。そして、かかるガスケット材やダンパ材においては、その寸法レベルの中で幅方向に対する厚み寸法はより厚いものが求められており、反応硬化性材料をディスペンサー方式を用いて所定の(厚み/幅)比以上の断面形状に仕上げる成形は、短時間では容易な情況にはなく(例えば、2重上塗りが必要になる等)、コスト高をもたらす要因として問題視されている。
【0008】
これらを解決する方法として、熱可塑性のエラストマー等を射出成形する技術(例えば、特許文献1,2,3)が提案され、成形性(例えば、(厚み/幅)比)やコスト面で、かなりな改善が図られて来ている。しかし、音響や振動特性および種々のガス耐透過性においては、レベルアップされた水準には未だ到達し得えてない状況にある。
【0009】
また、最近、前記ガスケット材料に架橋を施すことで、荷重に対し永久変形の小さなものに抑えられるよう改良されたものが出てきている(特許文献4)。しかし、かかる改良は、原料コストが更に高くなると同時に、架橋材料がハードディスクのクラッシュ原因を誘引するものとして避けるべき有機シリコン系から構成されているため、実際には、電子機器のガスケット材料に採用することができない。
【0010】
多様化に伴いますます厳しくなる使用条件の中で、アウトガスフリー、イオン性不純物フリー、また制振特性や種々のガス耐透過性に代表されるガスケット特性は、特にハードディスクや固体高分子型燃料電池用途で、より優れたものが求められて来ているが、現在そのコストパフォーマンスのバランスにおいて、適性なものがなく、これらを満足し得る材料組成の改質・改善が切望されている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−173691号公報
【特許文献2】特開2001−114975号公報
【特許文献3】特開2001−316562号公報
【特許文献4】特開2006−57000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来の事情に鑑みてなされたもので、その課題は、音響特性・制振特性に優れ、低気体透過性(耐透湿性、耐シリコンガス透過性)にも優れたガスケット用の樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物の他の構成は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)の100重量部に、前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合して得られた混和物(II)100重量部に対し、さらに有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物の他の構成は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練し、この混練物を後加熱で静的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物の他の構成は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)の100重量部に、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合して得られた混和物(II)の100重量部に対し、さらに有機過酸化物(D)を添加、混練し、この混練物を後加熱で静的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のガスケット用樹脂組成物の製造方法は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分の中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る混和工程と、前記混和物(I)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させる動的架橋工程と、を経て得ることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のガスケット用樹脂組成物の製造方法の他の構成は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る第1の混和工程と、前記混和物(I)100重量部に、前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合し、これを混和して混和物(II)を得る第2の混和工程と、前記混和物(II)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させる動的架橋工程と、を経て得ることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のガスケット用樹脂組成物の製造方法の他の構成は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る混和工程と、前記混和物(I)に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して混練物を得る混練工程と、前記混練物を加熱により部分架橋させる静的架橋工程と、を経て得ることを特徴とする。
【0020】
さらに、本発明のガスケット用樹脂組成物の製造方法の他の構成は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る第1の混和工程と、前記混和物(I)100重量部に、前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合し、これを混和して混和物(II)を得る第2の混和工程と、前記混和物(II)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して混練物を得る混練工程と、前記混練物を加熱により部分架橋させる静的架橋工程と、を経て得ることを特徴とする。
【0021】
本発明において「ガスケット材の柔軟性、圧縮復元性などのシール特性を高めるために寄与する物性値として特定したプロトンパルス核磁気共鳴によるT2時間30〜300μ秒の範囲の運動性」については、以下に本発明の樹脂組成物の構成成分を説明した後、詳しく説明する。
【0022】
(有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A))
本発明で用いられる有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)は、炭素原子数2〜20のα−オレフィン含有量が50モル%以上の無定形ランダムな弾性共重合体または結晶化度が50%以下の弾性共重合体であって、2種類以上のα−オレフィンからなる非結晶性α−オレフィン、あるいは2種類以上のα−オレフィンと非共役ジエン共重合体である。
【0023】
このようなオレフィン系共重合体ゴムの具体的な例としては、以下のようなゴムが挙げられる。
(a)エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(b)エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム
[エチレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(c)プロピレン・α−オレフィン共重合体ゴム
[プロピレン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
(d)ブテン・α−オレフィン共重合体ゴム
[ブテン/α−オレフィン(モル比)=約90/10〜50/50]
【0024】
上記、α−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
また、上記非共役ジエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられる。
【0026】
これらの共重合体ゴムのムーニー粘度[ML1.4(100℃)]は10〜250、特に40〜150が好ましい。
【0027】
また、上記(b)のエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴムは、ヨウ素価が25以下であることが好ましい。
【0028】
(有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B))
本発明に用いられる有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)とは、オレフィン系共重合ゴム(B)が、有機過酸化物と混合し、加熱下に置かれた状態において、共重合体を有機過酸化物と熱反応させた際に生じる分解反応と架橋反応の競争反応で、分解反応が多い結果、見かけ上の分子量が減少する反応現象が見られるオレフィン系共重合体ゴムを言う。
【0029】
かかる有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)としては、具体的には、ブチルゴム(IIR)、ポリイソブチレン、プロピレン含量が70%モル以上のプロピレン・エチイレン共重合体ゴム、プロピレン・1−ブテン共重合体ゴムなどが上げられる。これらの内ではブチルゴム、ポリイソブチレンが発泡時の流動性で好ましく、配合前のムーニー粘度[ML1.4(100℃)]が60以下のものが適当である。
【0030】
本発明で用いられる有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)との混合物において、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)との合計100重量部に対して、好ましくは5〜95重量部、さらに好ましくは15〜80重量部、特に好ましくは30〜70重量部で用いられる。この範囲の好ましさは、目的とするガスケットの柔軟性、音響・振動特性、耐ガス(湿気、シリコン)透過性、さらにガスケット成形時の金型内での流動性等のバランスから特定される。
【0031】
(有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C))
本発明にかかるガスケット用樹脂組成物において任意に添加される有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C)とは、結晶性オレフィン樹脂が、有機過酸化物と混合し、加熱下に置かれた状態において、樹脂を有機過酸化物と熱反応させた際に生じる分解反応と架橋反応の競争反応で、分解反応が多い結果、見かけ上の分子量が減少する反応現象が見られる結晶性オレフィン樹脂を言う。
【0032】
本発明で必要に応じて用いられる有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C)としては、炭素原子数2〜20のα−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。
【0033】
かかる有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(C)の具体的な例としては、以下のような重合体あるいは共重合体が挙げられる。
(i)プロピレン単独重合体
(ii)プロピレンと10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(iii)プロピレンと30モル%以下の他のα−オレフィンとのブロック共重合体
(iv)1−ブテン単独重合体
(v)1−ブテン単独重合体10モル%以下の他のα−オレフィンとのランダム共重合体
(vi)4−メチル−1−ペンテン単独重合体
(vii)4−メチル−1−ペンテンと20モル%以下のαーオレフィンとのランダム共重合体
【0034】
上記α−オレフィンとしては、具体的には、上述したオレフィン共重合体ゴム(A)(B)を構成するα−オレフィンの具体例と同様のα−オレフィンが挙げられる。
【0035】
本発明のガスケット用樹脂組成物に有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含有させる場合の配合量は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混合物100重量部に対して、50重量部以下、好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは20重量部以下である。
この範囲の好ましさは、目的とするガスケットの柔軟性とガスケット成形時の金型内での適度な流動性等のバランスから特定される。
【0036】
上記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と有機過酸化物分解型結晶性オレフィン樹脂(B)との混合物の改質剤として、スチレン・ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、またこれらの各種水添系ゴム、および塩素化ポリエチレン等を用いることができる。前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含まない場合では、(A)+(B)成分の合計量100重量部に対して10重量部以下の量を添加しても良く、(C)成分を含有する場合では、(A)+(B)+(C)成分の合計量100重量部に対して10重量部以下の量で、添加してもよい。
【0037】
また、前記(A)+(B)の混合物の軟化剤として、パラフィン系、ナフテン系、あるいはアロマチック系の軟化剤またはエステル系可塑剤等を用いることができる。前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含まない場合では、(A)+(B)成分の合計量100重量部に対して10重量部以下の量を添加しても良く、(C)成分を含有する場合では、(A)+(B)+(C)成分の合計量100重量部に対して10重量部以下の量で、添加してもよい。
【0038】
上記のような改質材と配合範囲であれば、本発明のガスケット用樹脂組成物から構成されたガスケットの柔軟性、音響・振動特性、耐ガス(湿気、シリコン)透過性、等の諸特性のバランスが維持できる。
【0039】
(有機過酸化物(D))
本発明で用いられる有機過酸化物(D)の好ましく用いられる具体例としては、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,−トリメチルシ5クロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレ−ト、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド、2,4ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエ−ト、tert−ブチルペルベンゾエ−ト、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカ−ボネ−ト、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0040】
これらの内では、臭気性、スコーチ安定性の点で、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブリル−4,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)バレレ−トが 好ましく、なかでも1,3ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンが最も好ましい。
【0041】
有機過酸化物(D)は、本発明の樹脂組成物100重量部に対して、通常1.0〜20.0重量部程度の配合が好ましく、柔軟性、圧縮永久歪特性、成型流動性等を考慮して調整される。
【0042】
本発明においては、上記有機過酸化物(D)による分岐および部分架橋処理に際し、その助剤として、硫黄、p−キノンジオキシム、p,p’−ベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、トリメチロールプロパンN,N’−m−フェニレンジマレイミドのようなペルオキシ架橋用助剤、あるいはジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコ−ルジメタクリレート、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
これら助剤の配合量によっても、射出時の基材樹脂の流動性の調整を適宜行うことができる。
【0043】
ただし、部分架橋を電子線、中性子線、α線、β線、γ線、X線、紫外線等の電離性放射線の照射により行う場合は、架橋剤を配合しなくともよいが、電離性放射線の照射による分岐および部分架橋処理に際し、その助剤として、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチプロパントリメタクリレート、アクリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能性ビニルモノマーを配合することができる。
【0044】
(本発明のガスケット用樹脂組成物における、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2時間(スピン−スピン緩和時間)に基づく運動性)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)との混和物(I)が、あるいは有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)の混和物(II)が、有機過酸化物(D)の存在下で加熱混練りされて動的に部分架橋されるか、非架橋状態で混練りされたものを後加熱で静的に部分架橋されることにより本発明のガスケット用樹脂組成物が構成される。そして、本発明のガスケット用樹脂組成物は、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴(NMR)により求められるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性をもつ成分が容積分率で15〜85%であるミクロ分子凝集構造を有する。
【0045】
かかるパラメータ限定は、以下のようにして設定されたものである。
すなわち、シール特性に優れた圧縮復元性の良好なガスケットを形成することのできる樹脂組成物としては、適度な粘度が必要であり、この粘度は樹脂組成物中の分岐の程度に比例することが分かっている。この分岐の先端部分と基端部分とでは、分子力学的に、明らかに「運動性」が異なる。本発明者らの研究によれば、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴下における前記分岐の基端部分と先端部分とでは、T2(スピン−スピン緩和)時間が異なり、分岐基端部分では、運動性が高く、T2時間が400μ秒以上であり、分岐先端部分では、運動性が低く、T2時間が400μ秒未満となることが判明した。このT2時間を用いて本発明の目的である圧縮復元性に富むシール性の良好なガスケットを得るに好適な樹脂組成物の好適な粘度範囲に相当する分岐割合を求めたところ、樹脂組成物中のT2時間が30〜300μ秒の範囲の運動性を持つ成分の容積比率が15〜85%となれば良いことが確認された。
【0046】
このH+パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間の測定方法は、例えば、日本電子(株)製「JNM−MU25A(商品名)」により、パルスモードにソリッドエコー法を用い、室温(20〜25℃)で測定され、T2スピン−スピン緩和時間(それぞれの分子運動状態)毎にサンプル中の体積分率を層別分析される方法である。
【0047】
したがって、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物は、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)の混和物(I)を、あるいは有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)とを混和させてなる混和物(II)を、有機過酸化物(D)の存在下で加熱混練りして動的に部分架橋するか、非架橋状態で混練りしたものを後加熱で静的に部分架橋することにより得られ、その組成分中のH+パルス核磁気共鳴によるT2(スピンースピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性をもつ成分が容積分率が15〜85%であるという特徴を有する。かかる30〜300μ秒のT2(スピンースピン緩和)時間で特定される組成分が15〜85容積%であるミクロ構造を有することにより、音響・制振性に優れたガスケットを形成することのできる組成系が得られる。
【0048】
前記T2(スピンースピン緩和)時間で30〜300μ秒の範囲の運動性を持った成分の容積分率が15から85容積%となる分子運動性を有する樹脂組成物を得る方法としては、過酸化物を用いる方法、電子線照射、硫黄加硫、シラン架橋等の公知の方法を用い、樹脂組成物に適当な分岐を施すことに依る。これらの方法の中でも、過酸化物、および電子線照射が簡易に制御し易いので望ましい方法である。
【0049】
(その他の添加成分)
また、本発明の樹脂組成物中に必要に応じて、その他の成分として、各種耐候安定剤、耐熱安定剤、可塑剤、難燃剤、増粘剤、滑剤、着色剤、湿潤剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、老化防止剤、着色剤などの添加剤および充填剤を、上記混練のいずれかの段階において、本発明の目的を損なわない範囲において、添加することができる。
【0050】
前記充填剤としては、具体的には、カーボンブラック、ニトロソ顔料、ベンガラ、フタロシアニン顔料、パルプ、繊維状チップ、カンテン等の有機充填材料、クレー、カオリン、シリカ、ケイソウ土、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ヴェントナイト、シラスバル−ン、ゼオライト、珪酸白土、セメント、シリカフュ−ム等の無機充填剤を挙げることができる。
【0051】
(混和物(I)あるいは混和物(II)の混練り方法)
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合ゴム(A)と有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)との混和物(I)は、あるいはこの混和物(I)にさらに有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を混和させてなる混和物(II)は、有機過酸化物(D)の存在下で加熱混練りにより動的に部分架橋されるか、非架橋状態で混練りされ、その後加熱で静的に部分架橋されるが、その場合、何回かの分割混練りか、または段階混練りを踏んで、最終的に部分架橋された樹脂組成物とされる。その混練手段としては、V型ブラベンダー、タンブルブラベンダー、リボンブラベンダー、ヘンシェルブラベンダー、バンバリーミキサー、ミクシングロール、ニーダーなどや、押出し機、などの公知の混練機を用いることができる。
【0052】
得られる樹脂組成物には、選択された混練り条件により、動的混練時に有機過酸化物(D)で架橋反応と分解反応を誘発されて部分架橋されたもの、また有機過酸化物(D)の分解温度以下で混練りされた未部分架橋状態のものがある。
【0053】
前記未部分架橋状態のものは、最終的に有機過酸化物(D)の分解ピーク温度以上で反応(架橋と分解)されて部分架橋される。
【発明の効果】
【0054】
本発明のガスケット用樹脂組成物(オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物)を用いることにより、ハードディスク装置用のガスケット材は、音響や振動特性、また種々のガス耐透過性(耐透湿性、耐シリコンガス透過性)等の用途上の要求仕様を全て満足し得る適当なシール部材となり、また型内成形性にすぐれたリサイクル性のある成形品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物およびその製造方法の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
後述する各実施例および各比較例にて得られたガスケットサンプルに対して、以下に示す実験方法により、ガスケット特性の評価を行った。
【0057】
(評価実験1:NMRによるT2(スピン−スピン緩和)時間)
室温(20〜30℃)でのH+(プロトン)パルス核磁気共鳴によるT2(スピンースピン緩和)時間で30〜300μ秒の運動性を持った成分の容積分率により評価した。ここで、H+パルス核磁気共鳴によるT2(スピンースピン緩和)時間は、日本電子(株)製「JNM−MU25A(商品名)」により、パルスモードにソリッドエコー法を用いて求めた。
【0058】
(評価実験2:柔軟性(A硬度))
7mm(厚み)×70mm(縦)×45mm(横)サイズのモールド金型で射出成形を行うことで、板状のガスケットサンプルを作成し、JIS K7312規格に準拠した方法で、20秒後の値を測定した。硬度値が40未満を○、40以上を×とした。
【0059】
(評価実験3:圧縮永久歪(Cs)[%])
前記(評価実験2)と同様にして得られたガスケットサンプルを用いて、JIS K7312規格に準拠した方法で、70℃、25%圧縮で、22時間経た後に圧縮開放し、30分後の値を測定した。Csが50%未満を○、50%以上を×とした。
【0060】
(評価実験4:成形状態)
2点ホットランナーゲートによる2.5インチ矩形モールド金型(1mm巾×1mm高)で、フルパック、バリ無し、表面平滑の成形状態を総合的に○、×で評価した。
【0061】
(評価実験5:振動伝達率(3層サンドイッチ型))
ガスケットサンプルに25kg/cm2の荷重がかかるように32mm(厚み)×200mm角の鋼板(錘)の4隅に、射出成形による2mm(厚み)×10mm角のガスケットサンプルを設置し、中央加振法により、20Hz〜1100Hzの振動伝達率を測定した。振動伝達率が、0.1以上を×、0.1未満を○とした。
【0062】
(評価実験6:音響A特性)
A特性値(Over ALL値)[dB]:市販ハードディスク装置(3.5インチ、HGST製)を用い、ケーシングの蓋材の形状に合わせて射出成形により形成したガスケット(幅1mm)およびダンパ(VCMヨーク形状(カバーに平行面)大サイズ以内)が、圧縮率30〜35%になるように厚み調整され成形試作されたものを、所定の位置に組み込み、騒音計(小野測器社製「LA5570(商品名)」)にて暗騒音15dBの半無響室内で、ハードディスク装置のスピンドル直上から10cmの距離にマイクホンを設定し、20℃におけるランダムシーク発生音につき、騒音レベル(LA:A-Weighted Sound Pressure Level)のOver All値(dB)を測定した。40dB未満を○、40dB以上を×とした。
【0063】
(評価実験7:耐透湿性)
60℃×80%RH雰囲気下、射出成形により得た1mm(厚み)、2mm(幅)の35mm角の打ち抜きガスケットサンプルを、50mm角のアルミ板の4隅で、0.3mm厚スペーサーで間隙を調整し、ネジ締めして30%に圧縮されたガスケットの内側の雰囲気が300時間で、80%RHに到達するか否かで、到達:×、到達しない:○とした。
【0064】
(評価実験8:耐シリコン透過性)
KF96による70℃密封雰囲気下84時間で、射出成形により得た1mm(厚み)2mm(幅)の35mm角の打ち抜きガスケットサンプルを、50mm角のアルミ板の4隅で0.3mm厚スペーサーで間隙を調整し、ネジ締めして30%に圧縮し、ガスケットの内側の吸着媒体へのシリコンガス(D4、D5、D6)の透過吸着量(GCMS分析)が在るか否かで、在る:×、無い:○とした。
【0065】
また、成形に用いた射出成形機は、型締め力55トン、可塑化能力78kg/h、スクリュー径23mm、最大射出圧246MPa、射出78cm3/sのタイプの装置で行った。
【0066】
(実施例1)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]25重量部と、ブチルゴム[ML1.4(100℃)20]75重量部と、ポリプロピレン[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0/10分]]17重量部とを、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[過酸化物架橋剤]0.95重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]4.0重量部の存在下で、前記過酸化物架橋剤の分解温度以上で混練りして動的に部分架橋し、本発明のガスケット用樹脂組成物(オレフィン系熱可塑性エラストマー)を得た。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーにつき、前記評価実験(1〜7)のそれぞれのガスケットサンプルを得るために必要な金型を準備し、200〜230℃の設定温度で、射出成形し、各々のサンプルを準備した。射出条件は、射出スピード:200mm/s、金型温度:30℃であった。
【0067】
次に、前記評価実験1〜8の実験要領で、成形サンプルにつき評価実験を行い、以下の(表1)に示したそれぞれの結果が得られた。
【0068】
(実施例2)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]50重量部と、ブチルゴム[ML1.4(100℃)20]50重量部と、ポリプロピレン[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0/10分]]25重量部とを、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[過酸化物架橋剤]0.95重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]4.0重量部の存在下、前記過酸化物架橋剤の分解温度以上で混練りして動的に部分架橋して、本発明のガスケット用樹脂組成物(オレフィン系熱可塑性エラストマー)を得た。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーにつき、前記評価実験(1〜7)のそれぞれのガスケットサンプルを得るために必要な金型を準備し、200〜230℃の設定温度で、射出成形し各々のサンプルを準備した。射出条件は、射出スピード:200mm/s、金型温度:30℃であった。
次に、評価実験1〜8の実験要領で、成形サンプルにつき評価実験を行い、以下の(表1)に示したそれぞれの結果が得られた。
【0069】
(実施例3)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]50重量部と、ブチルゴム[ML1・4(100℃)20]50重量部とを、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[過酸化物架橋剤]0.95重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]4.0重量部の存在下で、前記過酸化物架橋剤の分解温度以上で混練りして動的に部分架橋し、し、本発明のガスケット用樹脂組成物(オレフィン系熱可塑性エラストマー)を得た。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーにつき、前記評価実験(1〜7)のそれぞれのガスケットサンプルを得るために必要な金型を準備し、200〜230℃の設定温度で、射出成形し各々のサンプルを準備した。射出条件は、射出スピード:200mm/s、金型温度:30℃であった。
次に、評価実験1〜8の実験要領で、成形サンプルにつき評価実験を行い、以下の(表1)に示したそれぞれの結果が得られた。
【0070】
(実施例4)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]75重量部と、ブチルゴム[ML1.4(100℃)20]25重量部とを、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[過酸化物]0.95重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]4.0重量部の存在下で、前記過酸化物架橋剤の分解温度以下で混練りし、得られた混練り物を一旦シート状にした。得られたシートに前記過酸化物架橋剤の分解温度以上の熱プレスを押し当てて静的に部分架橋し、ガスケット用樹脂組成物(オレフィン系熱可塑性エラストマー)を得た。このオレフィン系熱可塑性エラストマーにつき、前記評価実験(1〜7)のそれぞれのガスケットサンプルを得るために必要な金型を準備し、200〜230℃の設定温度で、射出成形し各々のサンプルを準備した。射出条件は、射出スピード:200mm/s、金型温度:30℃であった。
次に、評価実験1〜8の実験要領で、成形サンプルにつき評価実験を行い、以下の(表1)に示したそれぞれの結果が得られた。
【0071】
【表1】

【0072】
(比較例1)
ウレタンアクリレート系原料をディスペンサーによってハードディスク装置のケーシングの蓋材の周縁部に沿って丸紐状に塗布し、直にUV架橋してから200℃6時間キュアーした。この蓋材上に得られたガスケットに対して、前記評価実験1〜8を実施した。その結果を下記(表2)に示した。
【0073】
(比較例2)
スチレン・イソブチレン共重合体100重量部を成形用材料として、前記評価実験(1〜7)のそれぞれのガスケットサンプルを得るために必要な金型を準備し、200〜230℃の設定温度で、射出成形し、各々のサンプルを準備した。射出条件は、射出スピード:200mm/s、金型温度:30℃であった。
次に、前記評価実験1〜8の実験要領で、成形サンプルにつき評価実験を行い、以下の(表2)に示したそれぞれの結果が得られた。
【0074】
(比較例3)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]3重量部と、ブチルゴム[ML1.4(100℃)20]97重量部と、ポリプロピレン[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)5.0/10分]]25重量部とを、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[過酸化物架橋剤]8.0重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]4.0重量部の存在下で、前記過酸化物架橋剤の分解温度以上で混練りして動的に部分架橋し、ガスケット成形用の樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物につき、前記評価実験(1〜7)のそれぞれのガスケットサンプルを得るために必要な金型を準備し、200〜230℃の設定温度で、射出成形し各々のサンプルを準備した。射出条件は、射出スピード:200mm/s、金型温度:30℃であった。
次に、前記評価実験1〜8の実験要領で、成形サンプルにつき評価実験を行い、以下の(表2)に示したそれぞれの結果が得られた。
【0075】
(比較例4)
エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム[MFR(ASTM 1238、190℃、2.16kg荷重)1.1g/10分]97重量部と、ブチルゴム[ML1.4(100℃)20]3重量部とを、1,3−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン[過酸化物]8.0重量部およびトリメチロールプロパントリメタクリレート[助剤]4.0重量部の存在下で、前記過酸化物架橋剤の分解温度以下で混練りした。得られた混練り物を一旦シート状にした。得られたシートに前記過酸化物架橋剤の分解温度以上の熱プレスを押し当てて静的に部分架橋し、ガスケット用樹脂組成物を得た。この樹脂組成物につき、前記評価実験(1〜7)のそれぞれのガスケットサンプルを得るために必要な金型を準備し、200〜230℃の設定温度で、射出成形し各々のサンプルを準備した。射出条件は、射出スピード:200mm/s、金型温度:30℃であった。
次に、前記評価実験1〜8の実験要領で、成形サンプルにつき評価実験を行い、以下の(表2)に示したそれぞれの結果が得られた。
【0076】
【表2】

【0077】
比較例1,2では、T2時間で示される分岐成分比率は、好ましい範囲にあるが、比較例1は本発明の必須成分である(A)(B)(D)のいずれの成分も含有していない。また、比較例2は(D)成分を含むだけである。また、比較例3は、本発明の必須成分である(A)(B)(D)の各成分と、任意成分である(C)成分の全てを含有しているが、それらの成分比率により好適なT2時間で示される分岐成分比率を実現できていない。また、比較例4は本発明の必須成分である(A)(B)(D)成分を有しているが、成分比率において本発明とは異なり、好適なT2時間で示される分岐成分比率を実現できていない。
【0078】
このように、前記実施例および比較例から明らかなように、有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物(D)とを必須構成要素成分として含有し、必要に応じて有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を含有する組成を有し、かつ架橋後のプロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す組成分の容積比率が15〜85%である樹脂組成物から得られたガスケットサンプルは、評価実験1〜8の全てにおいて良好な特性を得ていることが、分かる。これによって、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物の優れた特徴が確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上のように、本発明にかかるガスケット用樹脂組成物は、ハードディスク装置用のガスケット材の成形用材料として用いることにより、音響や振動特性、また種々のガス耐透過性(耐透湿性、耐シリコンガス透過性)等の用途上の要求仕様を全て満足し得る優れた特性のガスケットを製造することができ、また型内成形性にすぐれたリサイクル性のある成形品として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とするガスケット用樹脂組成物。
【請求項2】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)の100重量部に、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合して得られた混和物(II)100重量部に対し、さらに有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とするガスケット用樹脂組成物。
【請求項3】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練し、この混練物を後加熱で静的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とするガスケット用樹脂組成物。
【請求項4】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)が5〜95重量部、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)が95〜5重量部からなる混和物(I)の100重量部に、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合して得られた混和物(II)の100重量部に対し、さらに有機過酸化物(D)を添加、混練し、この混練物を後加熱で静的に部分架橋させて得られたガスケット用樹脂組成物であって、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であることを特徴とするガスケット用樹脂組成物。
【請求項5】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分の中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、
前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る混和工程と、
前記混和物(I)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させる動的架橋工程と、
を経て得ることを特徴とするガスケット用樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、
前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る第1の混和工程と、
前記混和物(I)100重量部に、前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合し、これを混和して混和物(II)を得る第2の混和工程と、
前記混和物(II)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して動的に部分架橋させる動的架橋工程と、
を経て得ることを特徴とするガスケット用樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、
前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る混和工程と、
前記混和物(I)に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物を加熱により部分架橋させる静的架橋工程と、
を経て得ることを特徴とするガスケット用樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)と、有機過酸化物分解型オレフィン系共重合ゴム(B)と、有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)と、有機過酸化物(D)とを構成要素成分として含有し、その組成分中の、プロトン(H+)パルス核磁気共鳴によるT2(スピン−スピン緩和)時間が30〜300μ秒の分子運動性を示す成分の容積比率が、15〜85%であるガスケット用樹脂組成物の製造方法であって、
前記有機過酸化物架橋型オレフィン系共重合体ゴム(A)を5〜95重量部、前記有機過酸化物分解型オレフィン系共重合体ゴム(B)を95〜5重量部混和して混和物(I)を得る第1の混和工程と、
前記混和物(I)100重量部に、前記有機過酸化物分解型オレフィン系結晶性樹脂(C)を50重量部以下配合し、これを混和して混和物(II)を得る第2の混和工程と、
前記混和物(II)の100重量部に対し、有機過酸化物(D)を添加、混練して混練物を得る混練工程と、
前記混練物を加熱により部分架橋させる静的架橋工程と、
を経て得ることを特徴とするガスケット用樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−248191(P2008−248191A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93972(P2007−93972)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】