説明

ガスケット

【課題】吸気音を効果的に低減させる機能を兼ね備えたガスケットを提供する。
【解決手段】吸気管を構成する2つの管同士の結合部分に備えられると共に、ゴム状弾性体によって構成されるガスケット10において、2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面に挟み込まれることによって、管同士の隙間を封止する封止部11と、吸気通路を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部12と、を備え、吸気音低減部12は気体の流れに応じて弾性的に撓み変形自在に構成されており、かつ、吸気音低減部12は上流側から流れてくる気体の流れを下流側に向けて分散させる複数の貫通孔13を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気管に備えられるガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、吸気マニホルドなどに設けられている吸気管には、エンジンに吸気を行う際に多量の空気が流れ込む。また、吸気通路内においては、気体の圧力と流量が周期的になる脈動が発生し易い。そのため、吸気通路内において共鳴等が生じ、異音が発生してしまうという問題がある。このような問題を解消するために、従来、例えば吸気マニホルドのスロットルガスケット部に吸気音低減板を設けることによって、異音を低減させる技術が知られている。
【0003】
図8及び図9を参照して、従来例に係る吸気音低減板について説明する。図8は従来例に係る吸気音低減板が吸気管内に取り付けられている様子を示す模式的断面図である。図9は図8における一部拡大図である。
【0004】
これらの図に示す従来例に係る吸気音低減板100は、吸気マニホルドのスロットルガスケット部に備えられている。吸気管は2つの管(以下、説明の便宜上、これら2つの管をそれぞれ第1管120,第2管130と称する)を備え、これら第1管120と第2管130との結合部分に吸気音低減板100が挟み込まれるように備えられている。そして、図9に示すように、第1管120と第2管130によって吸気音低減板100を挟み込んだ部分から気体が漏れてしまわないように、ガスケット110が設けられている。なお、第1管120内には、スロットルバルブ150が設けられている。
【0005】
このような構成により、第1管120と第2管130との間の隙間をガスケット110によって封止しつつ、吸気音低減板100によって吸気音を低減させることができる。
【0006】
しかしながら、従来知られている吸気音低減板は、アルミニウムや合成樹脂等の剛体により構成されている。そのため、吸気音低減板自体は変形しないため、脈動の発生を十分抑制することができず、吸気音の低減効果が不十分である。
【0007】
また、吸気音低減板を専用部品として設けているために、部品点数が増加してしまい、コストアップの原因にもなっている。
【0008】
なお、関連する技術としては、特許文献1,2に開示されたものがある。
【特許文献1】特開平11−132331号公報
【特許文献2】特開2002−295322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、吸気音を効果的に低減させる機能を兼ね備えたガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0011】
すなわち、本発明のガスケットは、
吸気管を構成する2つの管同士の結合部分に備えられると共に、ゴム状弾性体によって
構成されるガスケットにおいて、
2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面に挟み込まれることによって、管同士の隙間を封止する封止部と、
吸気通路を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部と、を備え、
前記吸気音低減部は気体の流れに応じて弾性的に撓み変形自在に構成されており、かつ、該吸気音低減部は上流側から流れてくる気体の流れを下流側に向けて分散させる複数の貫通孔を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、2つの管同士の隙間を封止するガスケットが、吸気音を低減する機能を兼ね備えている。また、吸気通路を流れる気体の流れに応じて吸気音低減部が弾性的に撓み変形することと、吸気音低減部に備えられた複数の貫通孔によって気体の流れが分散することが相俟って、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量が周期的になってしまうことを効果的に抑制できる。これにより、共鳴の発生を抑制できる。また、吸気音低減部が弾性的に撓むように変形することにより、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量の変化自体を抑制できる。
【0013】
前記吸気音低減部の内部には基布が埋め込まれているとよい。
【0014】
これにより、吸気音低減部の強度が増すため、吸気音低減部が繰り返し撓み変形を起こすことに伴う経時劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、吸気管を構成する2つの管同士の隙間を封止するガスケットに対して、吸気音を効果的に低減させる機能を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
(実施例1)
図1〜図5を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットについて説明する。図1は本発明の実施例1に係るガスケットが吸気管内に取り付けられている様子を示す模式的断面図である。図2は本発明の実施例1に係るガスケットの平面図である。図3及び図4は本発明の実施例1に係るガスケットの動作及び機能を説明する模式的断面図である。図5は吸気音の低減効果について、本実施例と従来例とを比較したグラフである。
【0018】
<ガスケットの構成>
図1及び図2を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットの構成を説明する。本実施例に係るガスケット10は、吸気マニホルドなどに設けられている吸気管に備えられるものである。
【0019】
本実施例に係るガスケット10は、吸気管を構成する2つの管(以下、説明の便宜上、これら2つの管をそれぞれ第1管20,第2管30と称する)同士の結合部分に備えられる。第1管20の端部と第2管30の端部には、それぞれフランジ部21,31が設けられている。そして、これらのフランジ部同士が重ね合わせるようにされた状態で、ボルト40によってフランジ部21とフランジ部31が固定されることで、第1管20と第2管30は結合される。ガスケット10は、このように結合される第1管20の端面と第2管30の端面に挟み込まれることによって、これら第1管20と第2管30の隙間を封止す
る。
【0020】
ガスケット10は、上記のように第1管20の端面と第2管30の端面に挟み込まれることによって、これら第1管20と第2管30の隙間を封止する封止部11と、吸気通路を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部12とを備えている。
【0021】
また、ガスケット10はゴム状弾性体で構成されている。そして、このガスケット10の全体形状は円板形状であり、周縁には周縁に沿った円形の突出部11aが設けられている。この突出部11aを含む外周部分が上記の封止部11に相当し、円板形状部の中央の大部分が上記の吸気音低減部12に相当する。
【0022】
第1管20のフランジ部21の端面には、平面形状が円形の溝22が設けられている。この溝22に、ガスケット10の突出部11aが嵌まり込むことによって、ガスケット10は確実に位置決めされる。
【0023】
上記の通り、ガスケット10はゴム状弾性体により構成されており、ガスケット10が吸気管内に備えられた状態において、吸気音低減部12は気体の流れに応じて弾性的に撓み変形自在に構成される。また、この吸気音低減部12には、吸気が適正に行われるように気体の流量を適正に保ちつつ、上流側から流れてくる気体の流れを下流側に向けて分散させる複数の貫通孔13を備えている。なお、本実施例においては、図2に示すように、貫通孔13の形状を円形とし、5箇所に十字形状となるように配置する例を示したが、貫通孔13の形状,配置,個数は特に限定されるものではない。貫通孔13の形状,配置,個数については、吸気音低減部12及び貫通孔13による機能が発揮されるものであれば、種々の態様を採用できる。例えば、貫通孔13の形状としては、円以外にも楕円,多角形のものなどを採用し得る。また、貫通孔13の配列としては、蜂の巣状,網状,櫛歯状のものなどを採用し得る。
【0024】
<ガスケットの動作及び機能>
特に、図3及び図4を参照して、本発明の実施例1に係るガスケット10の動作及び機能を説明する。
【0025】
図3は貫通孔13を設けたことによる動作及び機能を示したものである。本実施例に係るガスケット10の吸気音低減部12には、上記の通り複数の貫通孔13が設けられている。そのため、図3に示すように、ガスケット10よりも上流側の吸気通路R1から流れてきた気体は、複数の貫通孔13によって、下流側の吸気通路R2に向かって分散される。
【0026】
一般的に、吸気マニホルドに設けられる吸気管内においては、流れる気体の圧力と流量が周期的に変化する脈動が発生しやすい。このような脈動が発生すると、吸気通路内において共鳴が生じてしまいやすい。これに対して、本実施例によれば、上記の通り、ガスケット10の吸気音低減部12に設けられた複数の貫通孔13を気体が流れることで、気体の流れが分散され、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量が周期的に変化することが抑制される。
【0027】
図4は吸気音低減部12のメカニズムを示したものである。上述のように、吸気音低減部12は、弾性的に撓み変形自在に構成されており、流れる気体の圧力及び流量に応じて変形する。そのため、吸気通路内において、流れる気体の圧力及び流量が変化すると、図4中の矢印に示すように、吸気音低減部12は前後方向に撓むように変形する。つまり、上流側の気体の圧力と流量が増加するように変化すると、吸気音低減部12は下流側に向かって撓むように変形し、上流側の気体の圧力が減少するように変化すると、吸気音低減
部12は上流側に向かって撓むように変形する。そのため、気体の圧力と流量の変化を妨げるような作用が働く。これにより、気体の圧力と流量の変化自体を抑制できる。また、これに伴って、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量が周期的に変化することも抑制される。
【0028】
<本実施例の優れている点>
上述のように、本実施例に係るガスケット10によれば、2つの管同士の隙間を封止するというガスケット本来の機能に加えて、吸気音を低減する機能も発揮する。従って、少ない部品点数で、密封機能と吸気音低減機能を発揮させることができる。これに伴って、コストダウンを図ることもできる。
【0029】
また、本実施例に係るガスケット10によれば、吸気通路を流れる気体の流れに応じて吸気音低減部12が弾性的に撓み変形することと、吸気音低減部12に備えられた複数の貫通孔13によって気体の流れが分散することが相俟って、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量が周期的になってしまうことを効果的に抑制できる。これにより、共鳴の発生を抑制できる。また、吸気音低減部12が弾性的に撓むように変形することにより、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量の変化自体を抑制できる。
【0030】
更に、本実施例に係るガスケット10は、ゴム状弾性体であることから、吸気音低減部12に備えられる複数の貫通孔13の加工が容易であり、その形状,配置,個数などを簡単に変えることができる。従って、汎用性に優れ、かつ、経時変化などによって吸気音低減効果が不十分になっても、貫通孔13の形状,大きさ,個数等の調整によって、吸気音低減効果を調整することもできる。
【0031】
図5は、本実施例に係るガスケットを用いた場合と、従来例に係る吸気音低減部材を用いた場合とで、周波数に対する音圧レベルを比較したグラフである。なお、従来例に係る吸気音低減部材としては、特許文献2に示されたような金属メッシュを用いた。
【0032】
なお、音圧レベルは、吸気マニホルドに設けられる吸気管に本実施例に係るガスケット又は従来例に係る金属メッシュを配置させた状態で、吸気マニホルドのポート部から吸引機で吸気を行いながら、吸気マニホルドの音圧をマイクロフォンによって測定した。
【0033】
図から、従来例に係る金属メッシュの場合に比べて、本実施例に係るガスケットの場合の方が、音圧レベルを(周波数に拘わらず)全体的に低下させることができ、かつ、特定の音圧ピークを減衰させることができることが分かる。なお、本実施例において、音圧レベルを全体的に低下させることができる理由は、主として、上記の通り、吸気音低減部12が弾性的に撓むように変形することにより、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量の変化自体を抑制できることにある。また、本実施例において、特定の音圧ピークを減衰させることができる理由は、主として、上記の通り、吸気通路内を流れる気体の圧力と流量が周期的になってしまうことを効果的に抑制し、共鳴等の発生を抑制できることにある。
【0034】
(実施例2)
図6及び図7には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、上記実施例1に係るガスケットの構成に加えて、吸気音低減部の内部に基布を埋め込んだ構成を説明する。その他の基本的な構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については、適宜その説明を省略する。
【0035】
図6は本発明の実施例2に係るガスケットが吸気管内に取り付けられている様子を示す模式的断面図である。図7は本発明の実施例2に係るガスケットの模式的断面図である。なお、図7においてはガスケットを平面方向に切断した断面を示しており、図6における
AA断面に相当する断面である。
【0036】
本実施例に係るガスケット60においても、上記実施例1の場合と同様に、封止部61と、複数の貫通孔63が備えられた吸気音低減部62が設けられている。そして、ガスケット60の全体形状についても、実施例1の場合と同様に円板形状であり、周縁には突出部61aが設けられている。これらの機能に関しては、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明は省略する。
【0037】
そして、本実施例に係るガスケット60においては、吸気音低減部62の内部に、基布64が埋め込まれている。この基布64は、吸気音低減部62の撓み変形を妨げることのないように柔軟性が高いものにより構成されている。
【0038】
以上のように、本実施例に係るガスケット60によれば、上記実施例1の場合と同様の効果が得られることに加え、吸気音低減部62の内部に基布64が埋め込まれていることにより、吸気音低減部62の強度が増す。従って、吸気音低減部62が繰り返し撓み変形を起こすことに伴う経時劣化を抑制でき、耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の実施例1に係るガスケットが吸気管内に取り付けられている様子を示す模式的断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係るガスケットの平面図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係るガスケットの動作及び機能を説明する模式的断面図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係るガスケットの動作及び機能を説明する模式的断面図である。
【図5】図5は吸気音の低減効果について、本実施例と従来例とを比較したグラフである。
【図6】図6は本発明の実施例2に係るガスケットが吸気管内に取り付けられている様子を示す模式的断面図である。
【図7】図7は本発明の実施例2に係るガスケットの模式的断面図である。
【図8】図8は従来例に係る吸気音低減板が吸気管内に取り付けられている様子を示す模式的断面図である。
【図9】図9は図8における一部拡大図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ガスケット
11 封止部
11a 突出部
12 吸気音低減部
13 貫通孔
20 第1管
21 フランジ部
22 溝
30 第2管
31 フランジ部
40 ボルト
60 ガスケット
61 封止部
61a 突出部
62 吸気音低減部
63 貫通孔
64 基布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管を構成する2つの管同士の結合部分に備えられると共に、ゴム状弾性体によって構成されるガスケットにおいて、
2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面に挟み込まれることによって、管同士の隙間を封止する封止部と、
吸気通路を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部と、を備え、
前記吸気音低減部は気体の流れに応じて弾性的に撓み変形自在に構成されており、かつ、該吸気音低減部は上流側から流れてくる気体の流れを下流側に向けて分散させる複数の貫通孔を備えていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記吸気音低減部の内部には基布が埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−14279(P2008−14279A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188582(P2006−188582)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】