ガスケット
【課題】高い密封性を保ちつつ、ガスケット自体の形状の安定化を図ったガスケットを提供する。
【解決手段】第1ハウジング20と第2ハウジング30との間に挟み込まれ、本体部分が鋼板により構成されるガスケット10であって、第1ハウジング20の表面上には溝21が形成されており、ガスケット10が溝21を覆うことにより、ガスケット10の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成するガスケット10において、溝21の両縁にそれぞれ沿うように、第1ハウジング20に当接する一対の第1凸部11及び第2凸部12と、溝21の溝底に対向する位置に沿うように、第2ハウジング30に当接する第3凸部13と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】第1ハウジング20と第2ハウジング30との間に挟み込まれ、本体部分が鋼板により構成されるガスケット10であって、第1ハウジング20の表面上には溝21が形成されており、ガスケット10が溝21を覆うことにより、ガスケット10の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成するガスケット10において、溝21の両縁にそれぞれ沿うように、第1ハウジング20に当接する一対の第1凸部11及び第2凸部12と、溝21の溝底に対向する位置に沿うように、第2ハウジング30に当接する第3凸部13と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部分が鋼板により構成されるガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材間にガスケットを挟み込み、一方の部材の表面上に形成された溝をガスケットが覆うようにすることで、ガスケット表面と溝の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成する技術が知られている。かかる技術について、図5を参照して説明する。図5は従来例1に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【0003】
この従来例1に係るガスケット100は、平板形状の鋼板からなる本体部分と、その表面に接着によりコーティングされたゴム材料からなる膜とから構成されている。このように構成されるガスケット100は、2部材(以下、説明の便宜上、第1ハウジング20、及び第2ハウジング30と称する)により挟み込まれた状態で用いられる。そして、第1ハウジング20の表面には溝21が形成されており、2部材によりガスケット100が挟み込まれると、溝21はガスケット100により覆われて、蓋をされた状態となる。これにより、ガスケット100の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって、流体が漏れないように流れることのできる通路Tが形成される。
【0004】
しかしながら、従来例1のように、ガスケット100が平板形状の場合には、ガスケット100が2部材により挟み込まれた状態において、ガスケット100の第1ハウジング20に対する面圧や第2ハウジング30に対する面圧は、その位置に関係なく、ほぼ均一となる。そのため、ガスケット100と第1ハウジング20との間の密着面の密着力が不十分となり、これらの間の隙間から流体が漏れやすいという問題がある。
【0005】
そこで、かかる問題を解消するガスケットとして、図6及び図7に示されたものも知られている。図6は従来例2に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。図7は従来例2に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【0006】
この従来例2に係るガスケット200も、鋼板からなる本体部分と、その表面に接着によりコーティングされたゴム材料からなる膜とから構成されている。ただし、この従来例2に係るガスケット200の場合には、2部材によって挟み込まれた状態で、第1ハウジング20に設けられた溝21に沿うように設けられた凸部201が備えられている。
【0007】
このように構成されるガスケット200によれば、ガスケット200が2部材によって挟み込まれると、凸部201は第2ハウジング30に押し込まれる。そのため、凸部201はその中央付近が第2ハウジング30側に向かって湾曲し、凸部201の外側の部分は第1ハウジング20側に向かって湾曲するように、ガスケット200は弾性的に変形する。
【0008】
これにより、ガスケット200は、第1ハウジング20及び第2ハウジング30に対して、図7中2箇所のA部及び2箇所のB部において、それぞれ局所的に高い圧力で当接する。
【0009】
このように、このガスケット200の場合には、第1ハウジング20に対する面圧が均一とはならずに、溝21の両縁に沿って局所的に高い圧力で当接する。従って、上記従来
例1の場合と比べて、密封性を高めることが可能となる。
【0010】
ここで、ガスケット表面と溝21の内壁面との間で形成される通路Tを流れる流体の流量は、通路Tの断面積に影響される。そのため、流量を所望の量で安定化させるためには、この通路Tの断面積の精度を高めなければならない。
【0011】
上記従来例1に係るガスケット100の場合には、第1ハウジング20に対して平面的に当接するため、通路Tの断面積は溝21の断面積とほぼ一致させることができ、通路Tの断面積の精度を高めるのは容易である。
【0012】
一方、上記従来例2に係るガスケット200の場合には、上記の通り、ガスケット200が、溝21の付近で湾曲するように弾性的に変形する。そのため、通路Tを流れる流体は、凸部201の両縁付近(図7中2箇所のA部付近)まで入り込むことになる。従って、通路の断面積は、溝の断面積に、ガスケット200と第1ハウジング20との間に生じる隙間Sの断面積を加えたものとなる。そして、この隙間Sの断面積は、ガスケット200の変形量に依存することになる。しかし、弾性的に変形する変形量を安定化させるのは一般的に難しい。特に、密封性を高めるためには弾性反発力を高める必要があり、弾性反発力を高めると、より一層変形量を安定化させるのが難しくなる。
【0013】
このように、密封性を高めつつ、通路Tを流れる流体の流量の安定化のために、ガスケット自体の弾性変形による変形量を抑制するのは、技術的に困難性を伴うものである。
【0014】
なお、関連する技術としては、特許文献1及び2に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2002−250277号公報
【特許文献2】特開平5−52108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い密封性を保ちつつ、ガスケット自体の形状の安定化を図ったガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0017】
すなわち、本発明は、
2部材間に挟み込まれ、本体部分(ガスケットの全体部分、あるいは、主要部分(例えば、表面のみゴム材料等の膜により構成されるような場合))が鋼板により構成されるガスケットであって、
2部材のうちの一方の部材の表面上には溝が形成されており、ガスケットが該溝を覆うことにより、ガスケット表面と前記溝の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成するガスケットにおいて、
前記溝の両縁にそれぞれ沿うように、前記一方の部材に当接する一対の第1凸部及び第2凸部と、
前記溝の溝底に対向する位置に沿うように、前記2部材のうちの他方の部材に当接する第3凸部と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ガスケットが2部材間に挟み込まれると、ガスケットに備えられた第1凸部と第2凸部が、2部材のうちの一方の部材に形成された溝の両縁にそれぞれ沿うように当接する。従って、ガスケットは、この一方の部材に対して、溝の両縁に沿った位置
で局所的に高い圧力で当接するため、密封性を高めることができる。そして、2部材のうちの他方の部材に対しては、溝の溝底に対向する位置に沿うように第3凸部が当接するので、溝の付近において、ガスケットの弾性変形による変形量を安定化させることができる。これにより、ガスケット表面と溝の内壁面との間に形成される領域によって形成される、流体が流れる通路の断面積を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、高い密封性を保ちつつ、ガスケット自体の形状の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
(実施例)
図1〜図3を参照して、本発明の実施例に係るガスケットについて説明する。図1は本発明の実施例に係るガスケットの適用例を示す説明図である。なお、図1(A)は2部材のうちの一方の部材である第1ハウジングの平面図である。図1(B)は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。図2は本発明の実施例に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。図3は本発明の実施例に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【0022】
<ガスケットの構成>
本発明の実施例に係るガスケット10は、鋼板(例えば、SUS301)からなる本体部分と、その表面(両面)に接着によりコーティングされたゴム材料(例えば、NBR)からなる膜とから構成されている。
【0023】
そして、このガスケット10は、全体的な形状は略平板形状であるが、一方の面側に突出した一対の第1凸部11及び第2凸部12と、これら第1凸部11及び第2凸部12の間に備えられ、他方の面側に突出した第3凸部13とを備えている。第1凸部11及び第2凸部12よりも外側の部分は平板形状であり、以下、説明の便宜上、この平板形状の部分を平板部14と称する。
【0024】
ガスケット10に対して外力が作用していない状態においては、第1凸部11及び第2凸部12は、平板部14よりも一方の面側に突出するように構成されている。そして、ガスケット10に対して外力が作用していない状態においては、第3凸部13における他方の面は、平板部14における他方の面よりも、一方の面側にずれた位置となるように構成されている。
【0025】
<ガスケットの機能>
上記のように構成されるガスケット10が、2部材である第1ハウジング20及び第2ハウジング30により挟み込まれると、第1ハウジング20の表面に形成された溝21は、ガスケット10により覆われて、蓋をされた状態となる。これにより、ガスケット10の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって、流体が漏れないように流れることのできる通路Tが形成される。
【0026】
図1は第1ハウジング20の一例を示したものである。第1ハウジング20には、ハウジング内部から表面に至る2つの流路穴が設けられており、一方の流路穴の開口部分が流
入口22となり、他方の流路穴の開口部分が流出口23となっている。そして、これらの流入口22と流出口23を繋ぐように、上記の溝21が形成されている。
【0027】
そして、ガスケット10が第1ハウジング20及び第2ハウジング30により挟み込まれると、ガスケット10に備えられた第1凸部11及び第2凸部12は、溝21の両縁にそれぞれ沿うように、第1ハウジング20に当接する。また、ガスケット10に備えられた第3凸部13は、溝21の溝底に対向する位置に沿うように、第2ハウジング30に当接する。
【0028】
ここで、ガスケット10を第1ハウジング20と第2ハウジング30によって挟み込む過程においては、まず、第1凸部11及び第2凸部12の各先端部分と平板部14の他方の面が、第1ハウジング20と第2ハウジング30のそれぞれに対して当接する。そして、第1凸部11及び第2凸部12が第1ハウジング20により押し込まれることにより、第1凸部11と第2凸部12との間の部分が、その中心部分が第2ハウジング30に向かうように湾曲するように弾性的に変形していく。このとき、第1凸部11及び第2凸部12よりも外側にある平板部14は、逆に、外側の部分が第1ハウジング20に向かって撓むように弾性的に変形していく。そして、ある程度変形が進行すると、第3凸部13が第2ハウジング30に当接する。
【0029】
<本実施例の優れた点>
本実施例に係るガスケット10によれば、ガスケット10が第1ハウジング20と第2ハウジング30との間に挟み込まれると、ガスケット10に備えられた第1凸部11と第2凸部12が、第1ハウジング20に形成された溝21の両縁にそれぞれ沿うように当接する。従って、ガスケット10は、この第1ハウジング20に対して、溝21の両縁に沿った位置で局所的に高い圧力で当接するため、密封性を高めることができる。
【0030】
なお、本実施例においては、流入口22と流出口23の部分において、それぞれこれらを取り囲むように、かつ第1凸部11と第2凸部12を繋ぐように第4凸部15が設けられている。従って、流入口22と流出口23の部分においても、密封性を高めることができる。
【0031】
そして、ガスケット10は、第2ハウジング30に対しては、溝21の溝底に対向する位置に沿うように第3凸部13が当接するので、溝21の付近において、ガスケット10の弾性変形による変形量を安定化させることができる。これにより、ガスケット10の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって形成される通路Tの断面積を安定化させることができる。従って、通路Tを流れる流体の流量を所望の量で安定化させることが可能となる。
【0032】
ここで、本実施例に係るガスケット10と、従来例1に係るガスケット100と、従来例2に係るガスケット200とを比較する評価試験を行った結果を示す。図4は評価試験に用いた装置の概略構成図である。
【0033】
評価試験に用いた装置500は、ボルト53によって、互いに締め付けることができるように構成された下治具20aと上治具30aとを備えている。下治具20aは、上述した第1ハウジング20に相当するもので、上治具30aとの対向面側に溝21aが形成されている。また、上治具30aは上述した第2ハウジング30に相当するものである。
【0034】
そして、これら下治具20aと上治具30aとの間に試験対象であるガスケットXを挟み込むことができるように構成されている。また、ポンプ51によって、ガスケットXの表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって形成される通路に、所定圧の流体
を流し込むことができるように構成されている。なお、図中、52はポンプ51により圧送される流体の圧力を測定する圧力計である。
【0035】
ここで、評価試験の試験対象であるガスケットの素材は、いずれも、本体部分を構成する鋼板はSUS301を用い、その両面にコーティングされたゴム材料はNBRを用いた。また、ガスケットの板厚はいずれも4mm(公差0.04mm)に設定し、溝21aは断面が長方形で、その横幅を0.9mmに設定した。また、本実施例に係るガスケット10については、第1凸部11及び第2凸部12の突出量を0.2mm,第3凸部13の突出量を0.15〜0.2mmに設定した。また、通路に流し込む流体として市販の冷凍機油を用い、0.5MPaの油圧にて、当該油をポンプ51により圧送するようにした。
【0036】
その結果、本実施例に係るガスケット10の場合には、安定した密封性が得られることを確認できた。また、ガスケットに付着した油の範囲は、溝21aの溝幅である0.9mmであり、油が第1凸部11と下治具20aとの間の隙間や第2凸部12と下治具20aとの間の隙間ににじんでしまうことがなく、通路の断面積が安定していることを確認できた。
【0037】
これに対して、従来例1に係るガスケット100の場合には、本実施例に係るガスケット10の場合には、シール限界圧が本実施例に係るガスケット10よりも劣ることを確認できた。
【0038】
また、従来例2に係るガスケット200の場合には、ガスケットに付着した油の範囲が溝幅である0.9mmよりも広く、凸部201の幅方向の両端付近まで油がにじんでいることが確認できた。これにより、通路の断面積が安定せず、油の流量を安定化させるのが難しいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の実施例に係るガスケットの適用例を示す説明図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【図4】図4は評価試験に用いた装置の概略構成図である。
【図5】図5は従来例1に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【図6】図6は従来例2に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。
【図7】図7は従来例2に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ガスケット
11 第1凸部
12 第2凸部
13 第3凸部
14 平板部
15 第4凸部
20 第1ハウジング
20a 下治具
21 溝
21a 溝
30 第2ハウジング
30a 上治具
51 ポンプ
52 圧力計
53 ボルト
500 評価試験に用いた装置
T 通路
X ガスケット
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体部分が鋼板により構成されるガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2部材間にガスケットを挟み込み、一方の部材の表面上に形成された溝をガスケットが覆うようにすることで、ガスケット表面と溝の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成する技術が知られている。かかる技術について、図5を参照して説明する。図5は従来例1に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【0003】
この従来例1に係るガスケット100は、平板形状の鋼板からなる本体部分と、その表面に接着によりコーティングされたゴム材料からなる膜とから構成されている。このように構成されるガスケット100は、2部材(以下、説明の便宜上、第1ハウジング20、及び第2ハウジング30と称する)により挟み込まれた状態で用いられる。そして、第1ハウジング20の表面には溝21が形成されており、2部材によりガスケット100が挟み込まれると、溝21はガスケット100により覆われて、蓋をされた状態となる。これにより、ガスケット100の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって、流体が漏れないように流れることのできる通路Tが形成される。
【0004】
しかしながら、従来例1のように、ガスケット100が平板形状の場合には、ガスケット100が2部材により挟み込まれた状態において、ガスケット100の第1ハウジング20に対する面圧や第2ハウジング30に対する面圧は、その位置に関係なく、ほぼ均一となる。そのため、ガスケット100と第1ハウジング20との間の密着面の密着力が不十分となり、これらの間の隙間から流体が漏れやすいという問題がある。
【0005】
そこで、かかる問題を解消するガスケットとして、図6及び図7に示されたものも知られている。図6は従来例2に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。図7は従来例2に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【0006】
この従来例2に係るガスケット200も、鋼板からなる本体部分と、その表面に接着によりコーティングされたゴム材料からなる膜とから構成されている。ただし、この従来例2に係るガスケット200の場合には、2部材によって挟み込まれた状態で、第1ハウジング20に設けられた溝21に沿うように設けられた凸部201が備えられている。
【0007】
このように構成されるガスケット200によれば、ガスケット200が2部材によって挟み込まれると、凸部201は第2ハウジング30に押し込まれる。そのため、凸部201はその中央付近が第2ハウジング30側に向かって湾曲し、凸部201の外側の部分は第1ハウジング20側に向かって湾曲するように、ガスケット200は弾性的に変形する。
【0008】
これにより、ガスケット200は、第1ハウジング20及び第2ハウジング30に対して、図7中2箇所のA部及び2箇所のB部において、それぞれ局所的に高い圧力で当接する。
【0009】
このように、このガスケット200の場合には、第1ハウジング20に対する面圧が均一とはならずに、溝21の両縁に沿って局所的に高い圧力で当接する。従って、上記従来
例1の場合と比べて、密封性を高めることが可能となる。
【0010】
ここで、ガスケット表面と溝21の内壁面との間で形成される通路Tを流れる流体の流量は、通路Tの断面積に影響される。そのため、流量を所望の量で安定化させるためには、この通路Tの断面積の精度を高めなければならない。
【0011】
上記従来例1に係るガスケット100の場合には、第1ハウジング20に対して平面的に当接するため、通路Tの断面積は溝21の断面積とほぼ一致させることができ、通路Tの断面積の精度を高めるのは容易である。
【0012】
一方、上記従来例2に係るガスケット200の場合には、上記の通り、ガスケット200が、溝21の付近で湾曲するように弾性的に変形する。そのため、通路Tを流れる流体は、凸部201の両縁付近(図7中2箇所のA部付近)まで入り込むことになる。従って、通路の断面積は、溝の断面積に、ガスケット200と第1ハウジング20との間に生じる隙間Sの断面積を加えたものとなる。そして、この隙間Sの断面積は、ガスケット200の変形量に依存することになる。しかし、弾性的に変形する変形量を安定化させるのは一般的に難しい。特に、密封性を高めるためには弾性反発力を高める必要があり、弾性反発力を高めると、より一層変形量を安定化させるのが難しくなる。
【0013】
このように、密封性を高めつつ、通路Tを流れる流体の流量の安定化のために、ガスケット自体の弾性変形による変形量を抑制するのは、技術的に困難性を伴うものである。
【0014】
なお、関連する技術としては、特許文献1及び2に開示されたものがある。
【特許文献1】特開2002−250277号公報
【特許文献2】特開平5−52108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い密封性を保ちつつ、ガスケット自体の形状の安定化を図ったガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0017】
すなわち、本発明は、
2部材間に挟み込まれ、本体部分(ガスケットの全体部分、あるいは、主要部分(例えば、表面のみゴム材料等の膜により構成されるような場合))が鋼板により構成されるガスケットであって、
2部材のうちの一方の部材の表面上には溝が形成されており、ガスケットが該溝を覆うことにより、ガスケット表面と前記溝の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成するガスケットにおいて、
前記溝の両縁にそれぞれ沿うように、前記一方の部材に当接する一対の第1凸部及び第2凸部と、
前記溝の溝底に対向する位置に沿うように、前記2部材のうちの他方の部材に当接する第3凸部と、
を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、ガスケットが2部材間に挟み込まれると、ガスケットに備えられた第1凸部と第2凸部が、2部材のうちの一方の部材に形成された溝の両縁にそれぞれ沿うように当接する。従って、ガスケットは、この一方の部材に対して、溝の両縁に沿った位置
で局所的に高い圧力で当接するため、密封性を高めることができる。そして、2部材のうちの他方の部材に対しては、溝の溝底に対向する位置に沿うように第3凸部が当接するので、溝の付近において、ガスケットの弾性変形による変形量を安定化させることができる。これにより、ガスケット表面と溝の内壁面との間に形成される領域によって形成される、流体が流れる通路の断面積を安定化させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、高い密封性を保ちつつ、ガスケット自体の形状の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0021】
(実施例)
図1〜図3を参照して、本発明の実施例に係るガスケットについて説明する。図1は本発明の実施例に係るガスケットの適用例を示す説明図である。なお、図1(A)は2部材のうちの一方の部材である第1ハウジングの平面図である。図1(B)は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。図2は本発明の実施例に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。図3は本発明の実施例に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【0022】
<ガスケットの構成>
本発明の実施例に係るガスケット10は、鋼板(例えば、SUS301)からなる本体部分と、その表面(両面)に接着によりコーティングされたゴム材料(例えば、NBR)からなる膜とから構成されている。
【0023】
そして、このガスケット10は、全体的な形状は略平板形状であるが、一方の面側に突出した一対の第1凸部11及び第2凸部12と、これら第1凸部11及び第2凸部12の間に備えられ、他方の面側に突出した第3凸部13とを備えている。第1凸部11及び第2凸部12よりも外側の部分は平板形状であり、以下、説明の便宜上、この平板形状の部分を平板部14と称する。
【0024】
ガスケット10に対して外力が作用していない状態においては、第1凸部11及び第2凸部12は、平板部14よりも一方の面側に突出するように構成されている。そして、ガスケット10に対して外力が作用していない状態においては、第3凸部13における他方の面は、平板部14における他方の面よりも、一方の面側にずれた位置となるように構成されている。
【0025】
<ガスケットの機能>
上記のように構成されるガスケット10が、2部材である第1ハウジング20及び第2ハウジング30により挟み込まれると、第1ハウジング20の表面に形成された溝21は、ガスケット10により覆われて、蓋をされた状態となる。これにより、ガスケット10の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって、流体が漏れないように流れることのできる通路Tが形成される。
【0026】
図1は第1ハウジング20の一例を示したものである。第1ハウジング20には、ハウジング内部から表面に至る2つの流路穴が設けられており、一方の流路穴の開口部分が流
入口22となり、他方の流路穴の開口部分が流出口23となっている。そして、これらの流入口22と流出口23を繋ぐように、上記の溝21が形成されている。
【0027】
そして、ガスケット10が第1ハウジング20及び第2ハウジング30により挟み込まれると、ガスケット10に備えられた第1凸部11及び第2凸部12は、溝21の両縁にそれぞれ沿うように、第1ハウジング20に当接する。また、ガスケット10に備えられた第3凸部13は、溝21の溝底に対向する位置に沿うように、第2ハウジング30に当接する。
【0028】
ここで、ガスケット10を第1ハウジング20と第2ハウジング30によって挟み込む過程においては、まず、第1凸部11及び第2凸部12の各先端部分と平板部14の他方の面が、第1ハウジング20と第2ハウジング30のそれぞれに対して当接する。そして、第1凸部11及び第2凸部12が第1ハウジング20により押し込まれることにより、第1凸部11と第2凸部12との間の部分が、その中心部分が第2ハウジング30に向かうように湾曲するように弾性的に変形していく。このとき、第1凸部11及び第2凸部12よりも外側にある平板部14は、逆に、外側の部分が第1ハウジング20に向かって撓むように弾性的に変形していく。そして、ある程度変形が進行すると、第3凸部13が第2ハウジング30に当接する。
【0029】
<本実施例の優れた点>
本実施例に係るガスケット10によれば、ガスケット10が第1ハウジング20と第2ハウジング30との間に挟み込まれると、ガスケット10に備えられた第1凸部11と第2凸部12が、第1ハウジング20に形成された溝21の両縁にそれぞれ沿うように当接する。従って、ガスケット10は、この第1ハウジング20に対して、溝21の両縁に沿った位置で局所的に高い圧力で当接するため、密封性を高めることができる。
【0030】
なお、本実施例においては、流入口22と流出口23の部分において、それぞれこれらを取り囲むように、かつ第1凸部11と第2凸部12を繋ぐように第4凸部15が設けられている。従って、流入口22と流出口23の部分においても、密封性を高めることができる。
【0031】
そして、ガスケット10は、第2ハウジング30に対しては、溝21の溝底に対向する位置に沿うように第3凸部13が当接するので、溝21の付近において、ガスケット10の弾性変形による変形量を安定化させることができる。これにより、ガスケット10の表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって形成される通路Tの断面積を安定化させることができる。従って、通路Tを流れる流体の流量を所望の量で安定化させることが可能となる。
【0032】
ここで、本実施例に係るガスケット10と、従来例1に係るガスケット100と、従来例2に係るガスケット200とを比較する評価試験を行った結果を示す。図4は評価試験に用いた装置の概略構成図である。
【0033】
評価試験に用いた装置500は、ボルト53によって、互いに締め付けることができるように構成された下治具20aと上治具30aとを備えている。下治具20aは、上述した第1ハウジング20に相当するもので、上治具30aとの対向面側に溝21aが形成されている。また、上治具30aは上述した第2ハウジング30に相当するものである。
【0034】
そして、これら下治具20aと上治具30aとの間に試験対象であるガスケットXを挟み込むことができるように構成されている。また、ポンプ51によって、ガスケットXの表面と溝21の内壁面との間に形成される領域によって形成される通路に、所定圧の流体
を流し込むことができるように構成されている。なお、図中、52はポンプ51により圧送される流体の圧力を測定する圧力計である。
【0035】
ここで、評価試験の試験対象であるガスケットの素材は、いずれも、本体部分を構成する鋼板はSUS301を用い、その両面にコーティングされたゴム材料はNBRを用いた。また、ガスケットの板厚はいずれも4mm(公差0.04mm)に設定し、溝21aは断面が長方形で、その横幅を0.9mmに設定した。また、本実施例に係るガスケット10については、第1凸部11及び第2凸部12の突出量を0.2mm,第3凸部13の突出量を0.15〜0.2mmに設定した。また、通路に流し込む流体として市販の冷凍機油を用い、0.5MPaの油圧にて、当該油をポンプ51により圧送するようにした。
【0036】
その結果、本実施例に係るガスケット10の場合には、安定した密封性が得られることを確認できた。また、ガスケットに付着した油の範囲は、溝21aの溝幅である0.9mmであり、油が第1凸部11と下治具20aとの間の隙間や第2凸部12と下治具20aとの間の隙間ににじんでしまうことがなく、通路の断面積が安定していることを確認できた。
【0037】
これに対して、従来例1に係るガスケット100の場合には、本実施例に係るガスケット10の場合には、シール限界圧が本実施例に係るガスケット10よりも劣ることを確認できた。
【0038】
また、従来例2に係るガスケット200の場合には、ガスケットに付着した油の範囲が溝幅である0.9mmよりも広く、凸部201の幅方向の両端付近まで油がにじんでいることが確認できた。これにより、通路の断面積が安定せず、油の流量を安定化させるのが難しいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は本発明の実施例に係るガスケットの適用例を示す説明図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【図4】図4は評価試験に用いた装置の概略構成図である。
【図5】図5は従来例1に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【図6】図6は従来例2に係るガスケットが2部材によって挟み込まれる前の状態を示す模式的断面図である。
【図7】図7は従来例2に係るガスケットの使用状態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ガスケット
11 第1凸部
12 第2凸部
13 第3凸部
14 平板部
15 第4凸部
20 第1ハウジング
20a 下治具
21 溝
21a 溝
30 第2ハウジング
30a 上治具
51 ポンプ
52 圧力計
53 ボルト
500 評価試験に用いた装置
T 通路
X ガスケット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材間に挟み込まれ、本体部分が鋼板により構成されるガスケットであって、
2部材のうちの一方の部材の表面上には溝が形成されており、ガスケットが該溝を覆うことにより、ガスケット表面と前記溝の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成するガスケットにおいて、
前記溝の両縁にそれぞれ沿うように、前記一方の部材に当接する一対の第1凸部及び第2凸部と、
前記溝の溝底に対向する位置に沿うように、前記2部材のうちの他方の部材に当接する第3凸部と、
を備えることを特徴とするガスケット。
【請求項1】
2部材間に挟み込まれ、本体部分が鋼板により構成されるガスケットであって、
2部材のうちの一方の部材の表面上には溝が形成されており、ガスケットが該溝を覆うことにより、ガスケット表面と前記溝の内壁面との間に形成される領域によって、流体が流れる通路を形成するガスケットにおいて、
前記溝の両縁にそれぞれ沿うように、前記一方の部材に当接する一対の第1凸部及び第2凸部と、
前記溝の溝底に対向する位置に沿うように、前記2部材のうちの他方の部材に当接する第3凸部と、
を備えることを特徴とするガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−97611(P2009−97611A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269078(P2007−269078)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】
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