説明

ガスケット

【課題】中芯材である断面波形の金属薄板の両面にPTFEシートを積層配備する構造を踏襲しながらも、容易に作ることができるように改善させ、優れたシール性を有して酸化性流体にも使用できる利点を備えながらも量産にも適するガスケットを提供する
【解決手段】金属コルゲート板の両面にPTFEシートを積層配備する構造のガスケットにおいて、軸心X方向視が同心円又はほぼ同心円を呈する状態に断面形状が波形に形成される円環状の金属薄板1と、金属薄板1の両面夫々に積層配備されるPTFEシート2,3とを備えて成るとともに、PTFEシート2,3の厚さdが、金属薄板1の波高さh以上で、かつ、波高さhの2.5倍以下の範囲に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に化学工業の分野で配管用として、酸、アルカリ、溶剤等の通常のシートガスケットの使用が困難な箇所に好適なガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のガスケットとしては、同心円の波形を付けた金属薄板の谷部に粉体のシール材を充填し、その粉体シール材が充填されている金属薄板の両面にシール性を有するPTFEシートを積層接着して成るガスケット(以下、「提案ガスケット」と呼ぶ)が、本出願人によって先に提案されている。これは、それまで主流を占めていた膨張黒鉛シートを用いるガスケット(以下、「従来ガスケット」と呼ぶ)の不利、即ち、「シール材として膨張黒鉛シートを用いるので、400℃以下の温度の非酸化性流体には使用できるが、酸化性流体には使用困難であって用途が制限される不利」を補うものとして創作されたものである。尚、従来ガスケットとしては、例えば特許文献1において開示されるものが知られている。
【0003】
因みに、従来ガスケットは、同心円の波形が付けられた金属薄板と、その両面それぞれにシール材として積層接着される膨張黒鉛シートとで成る構造のものである。この従来ガスケットは、金属平板又は両面を不連続の凹凸やのこ歯形の凹凸に加工した金属板で成る中芯材として、同心円の波形を付けた金属薄板を用いることにより、圧縮率を飛躍的に高め、歪やうねりがあるガラスライニングフランジにでも使用可能な高い変形追随性(フランジ面精度に対する追従性)の確保が可能となる利点は有していた。また、フランジと接触する両面が流動性が高い膨張黒鉛シートで形成されていて、フランジへの優れたなじみ性も確保していた。
【0004】
ここで、参考に、PTFEシートを用いた提案ガスケットの構造(図7参照)と、そのシール作用を発生させる原理を図8(A)〜(C)に示す圧縮変形過程を参照して説明しておく。図7に示すように、提案ガスケット10は、谷部11aに粉体シール材14が充填されている波形の金属薄板11の表裏両面に、シール性を有する円環状のPTFEシート12,13を積層接着して構成されている。まず、図8(A)に示す締付前の自由状態では、断面波形が施された金属薄板11は波ピッチp,厚み高さTを有し、PTFEシート12,13は全体に均一な厚みdを有し、金属薄板11の谷部11aとPTFEシート12,13の間(従来空隙であった部分)には、充填材14が充填されている。
【0005】
図8(B)の低締付荷重を負荷した低締付状態では、相対するフランジ50,60間でガスケット10が厚み方向に圧縮され、金属薄板11は厚み高さTを縮小しながら波ピッチpを拡大し、厚み方向に圧縮変形しながら面方向(内外径方向)に伸び変形する。PTFEシート12,13は、金属薄板11の山部11bで厚み方向に圧縮されるとともに、金属薄板11の谷部11aには充填材14が充填されているので、金属薄板11の谷部11aでも圧縮され、金属薄板11の山部11b及び谷部11aの全面で締付面圧を確保して安定したシール性能を発揮可能である。尚、11c,11dは平坦部である。
【0006】
図8(C)の高締付荷重を負荷した高締付状態では、相対するフランジ50,60間でガスケット10が厚み方向にさらに圧縮され、金属薄板11は厚み高さTをさらに縮小しながら波ピッチpをさらに拡大し、平板に近い状態にまで厚み方向にさらに圧縮変形されながら面方向にもさらに伸び変形される。PTFEシート12,13は、金属薄板11の山部11bで厚み方向にさらに圧縮されるとともに、金属薄板11の谷部11aには充填材14が充填されているので、金属薄板11の谷部11aでもさらに圧縮され、金属薄板11の山部11b及び谷部11aの全面でさらに高い締付面圧を確保して、低締付荷重で得られる安定したシール性能を引き続き保持可能である。
【0007】
このように、提案ガスケット10では、従来空隙であった金属薄板11の谷部11aの部分が充填材14の充填によって埋められているので、従来低締付荷重では圧縮できなかった金属薄板11の谷部11aにおけるPTFEシート12,13を圧縮し、低締付荷重において全面で締付面圧を確保することができるため、低締付荷重から安定したシール性能が得られる。従って、低〜高締付荷重において長期的に安定したシール性能を確保することが可能になる、という効果を有していた。
【特許文献1】実開平5−92574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、提案ガスケットでは、金属薄板の谷部の全てにシール用充填材を充填する作業が大変やり難く、かつ、時間も多く要するものであり、生産性の点で問題があった。また、谷部が充填材で充填されている状態を、金属薄板の表面がPTFEシートで覆われるまで維持させることも難しいものであり、性能的には評価されるものであるが、製品として量産するには向かないものであった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中芯材である断面波形の金属薄板の両面にPTFEシートを積層配備する構造を踏襲しながらも、容易に作ることができるように改善させ、優れたシール性を有して酸化性流体にも使用できる利点を備えながらも量産にも適するガスケットを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、ガスケットにおいて、軸心X方向視が同心円又はほぼ同心円を呈する状態に断面形状が波形に形成される円環状の金属薄板1と、前記金属薄板1の両面夫々に積層配備されるPTFEシート2,3とを備えて成るとともに、前記PTFEシート2,3の厚さdが、前記金属薄板1の波高さh以上で、かつ、前記波高さhの2.5倍以下の範囲に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガスケットにおいて、前記PTFEシート2,3の厚さが0.3mm以上で、かつ、0.75mm以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のガスケットにおいて、前記金属薄板1の波ピッチpが、前記波高さhの4〜6倍、好ましくは5倍に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のガスケットにおいて、前記金属薄板1における最径内側の単位波部分1iの波高さhi及び/又は最径外側の単位波部分1uの波高さhuが、それら単位波部分1i,1u以外のその他部分1sの波高さhよりも若干高く設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のガスケットにおいて、前記単位波部分1i,1uの波高さhi、huが、前記その他部分1sの波高さhの1.1〜1.3倍、好ましくは1.2倍に設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のガスケットにおいて、前記金属薄板1がステンレス鋼板によって形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、詳しくは実施形態の項にて述べるが、使用状態においてPTFEシートにおける山部に位置して有効なシール性を得るべく面圧の高い薄い部分が破れることなく残存しながら、谷部を埋めてその部分でもガスケットとしての面圧が立つようになる。故に、従来(提案ガスケット)では必要であった金属薄板の谷部を埋めるための粉体が不要になり、その粉体を予め金属薄板の各谷部に供給して生める作業(工程)、並びにその供給された粉体をPTFEシー地が積層されるまでの間抜け落ちないように維持させる作業(工程)が不要となり、生産性が著しく向上するとともにコストダウンも達成させることが可能になる。
【0017】
その結果、中芯材である断面波形の金属薄板の両面にPTFEシートを積層配備する構造を踏襲しながらも、容易に作ることができるように改善させ、優れたシール性を有して酸化性流体にも使用できる利点を備えながらも量産にも適するガスケットを提供することができる。そのための現実的な値としては、請求項2のように、PTFEシートの厚さを0.3mm以上で、かつ、0.75mm以下に設定するのが望ましく、また、請求項3のように、金属薄板の波ピッチを、波高さの4〜6倍、好ましくは5倍に設定すれば好都合である。尚、強度や耐食性等の点から、金属薄板は請求項6のようにステンレス製とすることが望ましい。
【0018】
請求項4の発明によれば、金属薄板における最径内側や最径外側の単位波部分の波高さがそれら以外の部分の波高さよりも若干高くされているので、ガスケットの径内側端部や径外側端部での面圧を高めることができ、径方向端部におけるシール性がより向上するガスケットを提供することができる。この場合、請求項5のように、径方向端部の単位波部分の波高さをその他の部分の波高さの1.1〜1.3倍、好ましくは1.2倍に設定するのがシール性向上の点から好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明によるガスケットの実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1はガスケットの平面図、図2は自由状態におけるガスケットの半断面図、図3は使用状態におけるガスケットの半断面図、図4は金属薄板の各種緒元を定義するための説明図、図5,6は実施例と比較例の特性データや判断基準を示す表である。
【0020】
本発明によるガスケットGは、図1,図2に示すように、軸心X方向視が同心円(又はほぼ同心円)を呈する状態に断面形状が連続の波形に形成される円環状の金属薄板1と、金属薄板1の両面夫々に積層配備されるPTFEシート2,3とを備えて構成されている。波形断面の金属薄板1は「コルゲート板」とも呼ばれ、ステンレス鋼板等によって形成されている。各PTFEシート2,3の厚さdが、金属薄板1の波高さh以上で、かつ、波高さhの2.5倍以下の範囲に設定されている。
【0021】
金属薄板1は、平板円環状の基板を金型によるプレス成形により、径方向の断面形状が連続した同心円の波形を呈するものに形成される「波形金属薄板」である。この金属薄板1の形状は、図1〜図3に示すように、板厚t、波高さh、波ピッチpの各寸法が所定の範囲に定められており、一例として、t=0.5mm、h=0.3mm、p=1.5mmに設定されるものが挙げられる。
【0022】
図4に示すように、金属薄板1の波高さhとは、自由状態における金属薄板1全体の厚み、即ち厚み高さTから板厚tを減じた値(h=T−t)である。そして、ピッチpは、表裏いずれかの面における径方向で隣合う谷部1aどうし、又は山部1bどうしの距離のことである。金属薄板1の波ピッチpは波高さhの4〜6倍(4h≦p≦6h)に設定されており、好ましくはp=5h設定される。
【0023】
また、金属薄板1における最径内側の単位波部分、即ち最内波部分1iの波高さhi及び最径外側の単位波部分、即ち最外波部分1uの波高さhuが、それら単位波部分1i,1u以外のその他部分、即ち主波部分1sの波高さhsよりも若干高く設定されている。具体的には、1.1×1s≦1i≦1.3×1s、1.1×1s≦1u≦1.3×1sであり、好ましくは、1i=1u=1.2×1sに設定される。詳しくは後述するが、これら最内波部分1iや最外波部分1uの波高さをその他の部分より若干高くしてあることにより、ガスケットGとしてのシール性をより向上させることに寄与できている。尚、図4の仮想線は、単位波部分(1i,1u)が主波部分1sと同じ波高さ(h)の場合を示している。
【0024】
PTFEシート2,3は、その径内端部で重なって一体化されており、その一体化される部分である連設部4と、一対のPTFEシート2,3とで成る袋カバー体5の一部である。この袋カバー体5は、図示は省略するが、連設部4の厚みを有する円環状のPTFE板を回転させながら外周端からカッターで厚み中央に切り込んで行き、径内側端部分のみ残すことによって得られる。従って、PTFEシート2,3は径内側端で繋がる一体品であるが、例えば、元々2枚のPTFEシート2,3の径内側端部どうしを接着によって一体化する構造も可である。
【0025】
各PTFEシート2,3は同じ厚みであってその厚みdは、金属薄板1の波高さh以上で、かつ、波高さhの2.5倍以下の範囲(h≦d≦2.5×h)に設定されている。つまり、波高さhが0.3mmのときには、0.3mm≦d≦0.75mmとなる。これは、後述するが、ガスケットGが圧縮されるに従って波高さhが低くなる金属薄板1の谷部1aに、流動性の良いPTFEシート2,3が流れ込んで埋める作用を用いることから、最低でも自由状態における波高さhと同等の厚みdが必要になっている。
【0026】
但し、PTFEシート2,3が厚くなって行くと、圧縮されての使用状態において流動性の良さによってPTFEシート2,3が径方向に動き過ぎて食み出しのおそれが生じるとともにクリープ現象も顕著になってしまう。また、コストもどんどんアップするので、これらのことから、現実的には波高さの2.5倍以下に抑えるのが望ましい。これが前述の(h≦d≦2.5×h)の根拠である。
【0027】
使用状態でのガスケットGは、図3に示すように、相対する一対のフランジ6,7間で厚み方向に圧縮された状態であり、金属薄板21の波高さhが減じられながら波ピッチpを増して厚み高さTが自由状態より明確に薄くなっている。そして、各PTFEシート2,3は、金属薄板1の山部1bに接している箇所は圧縮されて径方向に流動しながら厚みが薄くなるとともに、谷部1aに位置している箇所は、山部1bに接している箇所から流動してくる材料によって厚みを増して行くことにより、自由状態よりも高さが低くなった谷部1aを埋め尽くして厚み方向で隙間のない状態が得られる。
【0028】
尚、図2に示す自由状態のガスケットGから図3に示す使用状態のガスケットGに移行するまでの変化状況(途中状態)は割愛するが、金属薄板1とPTFEシート2,3については、前述した提案ガスケット(図7参照)の低締付荷重を負荷した締付状態〔図8(B)参照〕と同様に変化して行くと考えられる。また、図3に示す金属薄板1の断面形状は、便宜上図2に示す自由状態の場合と同等に描かれているが、実際では前述したように、波高さhが減少し、かつ、波ピッチpは増加する。
【0029】
図3に示す使用状態では、ガスケットGの厚み内には空隙が存在していないので、断面波形を呈する金属薄板1による面圧に寄与するバネ効果が有効に活きるとともに、金属薄板1の両面を覆うPTFEシート2,3の持つ良好な流動性、即ち、山部1bでは厚みを減じ、谷部1aでは厚みを増す性質により、ガスケットGとしての両面2a,3aが共に平坦化され、各フランジ6,7の表面8,9との良好な密着性を得ている。
【0030】
つまり、PTFEシート2,3の厚みdとの比が適切な範囲(h≦d≦2.5×h)に設定されており、金属薄板1の波ピッチpお波高さhの4〜6倍(4h≦p≦6h)に設定されてるので、使用状態においてPTFEシート2,3における山部1bに位置して有効なシール性を得るべく面圧の高い薄い部分が破れることなく残存しながら、谷部1aを埋めてその部分でもガスケットGとしての各面2a,3aと各フランジ6,7の表面8,9とに面圧が立つようになっている。
【0031】
従って、従来のように、金属薄板1の谷部1aを埋めるための粉体が不要になるから、その粉体を予め金属薄板1の各谷部1aに供給して生める作業(工程)、並びにその供給された粉体をPTFEシー地2,3が積層されるまでの間抜け落ちないように維持させる作業(工程)が不要となり、生産性が著しく向上するとともにコストダウンも達成させることが可能になる。
【0032】
また、金属薄板1の径方向の端部、即ち、最内波部分1iの波高さhiや最外波部分1uの波高さhuがその他の波部分1sの高さhよりも若干高く形成されているから、ガスケットGと各フランジ6,7との接触圧をその径方向の端部でより高めることができ、より効果的に漏れ出しおそれを回避できてシール性をより高めることが可能となる利点がある。端部の波高さを高める手段を採る構造としては、径方向の内端部(最内波部分1i)のみでも良いし、外端部(最外波部分1u)のみでも良い。
【0033】
尚、金属薄板1の波高さは全てhに揃えられたものでも良く、径方向の端部1i,1uの波高さ如何に拘らず、金属薄板1の波高さはhであると定義する。次に、ガスケットGの各種実施例、並びに各種比較例についての測定データや特性データ等の緒元について、図5,図6を参照して説明する。
【0034】
〔実施例1〕
実施例1のガスケットGにおける金属薄板1は、ステンレス鋼板製であって厚みt=0.5mm、波高さh=0.3mm(厚み高さT=0.8mm)、ピッチp=1.5mm、内外の単位波部分1i,1uの波高さhi,hu=0.36mmである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.3mmである。
【0035】
〔実施例2〕
実施例2のガスケットGにおける金属薄板1は実施例1の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.4mmである。
【0036】
〔実施例2〕
実施例2のガスケットGにおける金属薄板1は実施例1の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.5mmである。
【0037】
〔比較例1〕
比較例1のガスケットGにおける金属薄板1は、ステンレス鋼板製であって厚みt=0.8mm、波高さh=1.0mm(厚み高さT=1.8mm)、ピッチp=3.2mmである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.3mmである。
【0038】
〔比較例2〕
比較例2のガスケットGにおける金属薄板1は比較例1の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.4mmである。
【0039】
〔比較例3〕
比較例3のガスケットGにおける金属薄板1は比較例1の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.5mmである。
【0040】
〔比較例4〕
比較例1のガスケットGにおける金属薄板1は、ステンレス鋼板製であって厚みt=0.5mm、波高さh=0.6mm(厚み高さT=1.1mm)、ピッチp=3.2mmである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.3mmである。
【0041】
〔比較例5〕
比較例5のガスケットGにおける金属薄板1は比較例4の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.4mmである。
【0042】
〔比較例6〕
比較例6のガスケットGにおける金属薄板1は比較例1の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.5mmである。
【0043】
〔比較例7〕
比較例7のガスケットGにおける金属薄板1は、ステンレス鋼板製であって厚みt=0.5mmで波加工がされない平坦な平板である。PTFEシート2,3は、厚さd=0.3mmである。
【0044】
〔比較例8〕
比較例8のガスケットGにおける金属薄板1は比較例7の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.4mmである。
【0045】
〔比較例9〕
比較例9のガスケットGにおける金属薄板1は比較例7の金属薄板1と同じである。PTFEシート2,3は、厚さd=0.5mmである。
【0046】
図5の諸元データ、及び図6の判断基準から、実施例1〜3のものでは、いずれもシール特性(漏れの少なさの特性)が良好であり、圧縮復元特性も良好であるとともに、応力緩和特性(クリープを含む)も良好であることが理解できる。つまり、圧縮されての使用に際してPTFEシート(被覆材)2,3の破れがなく、安定したシール特性、丁度良い(適当な)圧縮復元量、並びに小さな応力緩和率を有するガスケットGが構築される。尚、図6の判断基準表においては、○で表される「良好」のみがOKであり、△で表される「不安」並びに×で表される「不可」は、共に製品としてはNGである。また、図5,6に言う「被覆材」とは、OTFEシート2,3のことである。
【0047】
これに対して、金属薄板1の厚み、波高さ、及びピッチの全てが実施例1〜3のものを上回る比較例1〜3のガスケットでは、使用すべく圧縮されるに伴ってPTFEシート2,3が破れる等、シール特性と応力緩和特性が全て不可(×)である。圧縮復元特性については、PTFEシート2,3の厚みが最も薄い(d=0.3mm)の比較例1のみ良好(○)であるが、厚みが0.4mmや0.5mmの比較例2,3のものでは不安(△)である。従って、比較例1〜3のガスケットは製品としては不採用である。
【0048】
次に、金属薄板1の波高さとピッチとが実施例1〜3のものを上回る(厚みは同じ)比較例4〜6のガスケットでは、比較例4のシール特性が不可(×)である以外は、全て不安(△)である。即ち、強く締付ると被覆材(PTFEシート)が破れたり、応力緩和が大きくなって長期使用時の安定性に欠けるきらいがあり、やはり比較例1〜3のものと同様に実用には向かないものであると判断できる。
【0049】
また、参考として金属薄板1が単なる平板である比較例7〜9のガスケットでは、当然のことながら圧縮復元性に乏しく不可(×)であり、この時点で使用に耐えるものではない。因みに、シール特性は不安(△)であり、応力緩和特性は良好(○)である。つまり、圧縮量が小さ過ぎ、高温での使用時には顕著なクリープが起ると予測される。
【0050】
以上のように、実施例1〜3によるガスケットGにおいては、金属薄板1の波高さhと、PTFEシート2,3の厚みdとの比が適切な範囲(h≦d≦2.5×h)に設定されているので、シール特性、圧縮応力特性、応力緩和特性の全てが満足できるものになっている。こにれ対して、金属薄板の波高さhと、PTFEシートの厚みdとの比が適切な範囲(h≦d≦2.5×h)に設定されていないとか、金属薄板1の波ピッチpが、波高さhの4〜6倍に設定されていないといった具合に本発明による規定外のガスケットである比較例1〜9のものでは、シール特性、圧縮応力特性、応力緩和特性のうちの何れか一つ以上に不安(△)又はNG(×)があり、実用に適さないものとなっている。
【0051】
〔別実施例〕
PTFEシート2,3は、それぞれが互いに独立したシートであっても良く、また、型成形によってに示す連設部4(図1,2参照)を有する構造のPTFE製の袋カバー体5を形成するようにしても良い。また、金属薄板1の材料は、ステンレスの他、圧延鋼板や高張力鋼板、アルミ合金等の種々のものが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1によるガスケットの平面図
【図2】ガスケットの構造を示す図1のa−a線断面図
【図3】図1のガスケットが圧縮された使用状態での状況を示す断面図
【図4】金属薄板の波高さとピッチ等の緒元を示す径方向端部の断面図
【図5】各種実施例と各種比較例のデータを示す緒元表
【図6】図5のデータに関する判断基準表
【図7】従来ガスケットの構造を示す半断面図
【図8】従来ガスケットの圧縮変形過程を示し、(A)は自由状態、(B)は低締付状態、(C)は高締付状態
【符号の説明】
【0053】
1 金属薄板
1i 最径内側の単位波部分(最内波部分)
1u 最径外側の単位波部分(最外波部分)
1s 単位波部分以外のその他部分
2 PTFEシート
3 PTFEシート
G ガスケット
X 軸心
d PTFEシートの厚さ
h 金属薄板の波高さ(その他部分の波高さ)
hi 最径内側の単位波部分の波高さ
hu 最径外側の単位波部分の波高さ
p 金属薄板の波ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心方向視が同心円又はほぼ同心円を呈する状態に断面形状が波形に形成される円環状の金属薄板と、前記金属薄板の両面夫々に積層配備されるPTFEシートとを備えて成るとともに、前記PTFEシートの厚さが、前記金属薄板の波高さ以上で、かつ、前記波高さの2.5倍以下の範囲に設定されているガスケット。
【請求項2】
前記PTFEシートの厚さが0.3mm以上で、かつ、0.75mm以下に設定されている請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記金属薄板の波ピッチが、前記波高さの4〜6倍、好ましくは5倍に設定されている請求項1又は2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記金属薄板における最径内側の単位波部分の波高さ及び/又は最径外側の単位波部分の波高さが、それら単位波部分以外のその他部分の波高さよりも若干高く設定されている請求項1〜3の何れか一項に記載のガスケット。
【請求項5】
前記単位波部分の波高さが、前記その他部分の波高さの1.1〜1.3倍、好ましくは1.2倍に設定されている請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記金属薄板がステンレス鋼板によって形成されている請求項1〜5の何れか一項に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−106958(P2010−106958A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279540(P2008−279540)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000229737)日本ピラー工業株式会社 (337)
【Fターム(参考)】