説明

ガスケット

【課題】高水蒸気バリア性と低シロキサン吸着性を両立するガスケットを提供すること。
【解決手段】(A)エネルギー線硬化性官能基を有する水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含有する層、及び(B)前記(A)成分とは異なるエネルギー線硬化性材料を含有する層からなるガスケットであって、前記(B)成分を含有する層が、前記(A)成分を含有する層の全体(被着体との接着面を除く)を覆っている、二層ガスケット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関する。さらに詳しくは、水蒸気バリア性に優れ、且つシロキサン吸着性の低いガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータのハードディスク装置(HDD)においては、高性能化、小型化が進み、現在では2.5インチ(63.5mm)のHDDが主流となりつつあり、さらには1.8インチ(45.7mm)、1インチ(25.4mm)の小型HDDも製品化されてきている。このような小型のHDDでは、複雑な回路構成を有するようになっており、わずかな塵によっても障害が起こるため、ガスケットを使って塵の侵入を防ぐことが一般に行われている。しかし、空気中に存在するシロキサンがガスケットに溶解・拡散し、HDD内部へと透過することにより、電子部品、特にHDDの表面に絶縁性のシリカが析出するなどして、HDD等の電子部品の品質に悪影響を与え、場合によってはHDD等が損傷することもあり、ガスケットのシロキサン吸着性をより一層低減することが求められている。
また、HDDの小型化に伴い、携帯用電子機器に使用するケースが増えてきており、従来のパソコン等の用途と比較して厳しい環境下で使われることが多くなり、高湿熱環境で使用されるケースも想定しなければならない。
これまでに開発されたガスケットとしては、例えば、エネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマーとアクリル系モノマーを含有する材料を用いたガスケット(特許文献1参照)、光硬化性官能基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル共重合体及びアクリル系モノマーを含有する材料を用いたガスケット(特許文献2参照)、変性不飽和ポリエステルを含む光硬化性樹脂組成物を用いたガスケット(特許文献3参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−043296号公報
【特許文献2】特開2003−171651号公報
【特許文献3】特開2000−219794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に開示された従来のガスケットは、水蒸気バリア性が不十分及び/又はシロキサン吸着性が高いものであり、高水蒸気バリア性と低シロキサン吸着性を両立するには、さらなる改善の余地がある。
よって、本発明の課題は、高水蒸気バリア性と低シロキサン吸着性を両立するガスケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、(A)エネルギー線硬化性官能基を有する水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含有する層、及び(B)前記(A)成分とは異なるエネルギー線硬化性材料を含有する層からなるガスケットであって、前記(B)成分を含有する層が、前記(A)成分を含有する層の全体(被着体との接着面を除く)を覆っている二層ガスケットであれば、高水蒸気バリア性と低シロキサン吸着性を両立することを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[8]に関する。
[1](A)エネルギー線硬化性官能基を有する水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含有する層、及び(B)前記(A)成分とは異なるエネルギー線硬化性材料を含有する層からなるガスケットであって、
前記(B)成分を含有する層が、前記(A)成分を含有する層の全体(被着体との接着面を除く)を覆っている、二層ガスケット。
[2]被着体との接着面からのガスケットの高さ(ガスケット全体の高さ)に対する、前記(A)成分を含有する層の前記被着面からの高さ(内層の高さ)の比率(内層の高さ/ガスケット全体の高さ)が、0.5〜0.95である、上記[1]に記載の二層ガスケット。
[3]前記(A)成分における水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が、スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)共重合体及び水添スチレン−(ブタジエン/イソプレン)共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記[1]又は[2]に記載の二層ガスケット。
[4]前記(A)成分における水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が、水添スチレン−ブタジエン共重合体である、上記[1]又は[2]に記載の二層ガスケット。
[5]前記(A)成分が有するエネルギー線硬化性官能基が、(メタ)アクリロイルオキシ基である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の二層ガスケット。
[6]前記(B)成分のエネルギー線硬化性材料が、(b1)重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマーと(b2)(メタ)アクリル系モノマーとを含有する材料である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の二層ガスケット。
[7]前記(b1)成分が有する重合性不飽和基が、(メタ)アクリロイルオキシ基である、上記[6]に記載の二層ガスケット。
[8]電子部品用である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の二層ガスケット。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二層ガスケットは、高水蒸気バリア性と低シロキサン吸着性とを両立する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例及び比較例にて、水蒸気バリア性を調査する際に作成した二層ガスケットの断面図である。
【図2】実施例及び比較例にて、シロキサン吸着性を調査する際に作成した二層ガスケットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[二層ガスケット]
本発明の二層ガスケットは、(A)エネルギー線硬化性官能基を有する水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含有する層、及び(B)前記(A)成分とは異なるエネルギー線硬化性材料を含有し、前記(B)成分を含有する層が、前記(A)成分を含有する層の全体(被着体との接着面を除く)を覆っているものである。
【0010】
((A)成分)
本発明の二層ガスケットが含有する(A)成分は、被着体(ベースプレート又はカバープレート、特に無電解ニッケルめっきアルミニウム)との接着性に優れ、本発明の二層ガスケットの内層となる成分であり、具体的には、エネルギー線硬化性官能基を有する水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含有するものである。該エネルギー線硬化性官能基を有する水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の(A)成分中の含有量は、水蒸気バリア性の観点から、(A)成分中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは実質100質量%である。
上記共重合体が有するエネルギー線硬化性官能基は、少なくとも分子の両末端にあることが好ましい。該エネルギー線硬化性官能基としては、エネルギー線硬化性の不飽和炭化水素基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体(未水添)、水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体としては、公知の芳香族ビニルと共役ジエンの共重合体を使用できる。また、ランダム共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体のいずれでもよい。芳香族ビニルの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられ、これらの中でもスチレンが好ましい。共役ジエンの具体例としては、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、これらの中でも1,3−ブタジエンが好ましい。
【0011】
なお、(A)成分における水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)共重合体及び水添スチレン−(ブタジエン/イソプレン)共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましく、水蒸気バリア性の観点からは、水添スチレン−ブタジエン共重合体がより好ましい。また、(A)成分としては、水蒸気バリア性の観点からは、少なくとも分子の両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する水添スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。
【0012】
(A)成分の製造方法に特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、前記した少なくとも分子の両末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する水添スチレン−ブタジエン共重合体は、未変性のスチレン−ブタジエン共重合体とエチレンオキシド又はプロピレンオキシドとを反応させることにより、分子末端に水酸基を導入し、さらに(メタ)アクリロイル基を有する化合物と反応させることにより製造することができる。
該(メタ)アクリロイル基を有する化合物との反応としては、例えば、分子末端に水酸基が導入された水添スチレン−ブタジエン共重合体と2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等によるウレタン化反応;分子末端に水酸基が導入された水添スチレン−ブタジエン共重合体とメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の低級アルキル(メタ)アクリレートによるエステル交換反応;分子末端に水酸基が導入された水添スチレン−ブタジエン共重合体をイソシアネート化合物と反応させて得られるプレポリマーと2−ヒドロキシエチルアクリレート等との反応等が挙げられる。
【0013】
なお、上記の未変性の水添スチレン−ブタジエン共重合体は、水添スチレン−ブタジエン共重合体又は分子末端に水酸基が導入された水添スチレン−ブタジエン共重合体を水素添加することにより得ることができる。ここで、原料のスチレン−ブタジエン共重合体は、スチレンとブタジエンの共重合により得ることができ、例えば、ナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等の公知のジリチウム化合物及び反応に不活性な溶媒の存在下、10〜80℃にてスチレンと1,3−ブタジエンを共重合させる方法が挙げられる。
スチレン−ブタジエン共重合体又は分子末端に水酸基が導入されたスチレン−ブタジエン共重合体を水素添加する方法に特に制限は無く、公知の方法を利用することができる。例えば、シクロヘキサン等の飽和炭化水素溶液中で、スチレン−ブタジエン共重合体を、ラネーニッケル又はPt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、硅藻土等の担体に担持させた不均一触媒:ニッケル、コバルト等の第8〜10族金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物又は有機リチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系の触媒:チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛又はマグネシウム等の有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒等の公知の水素添加触媒の存在下及び水素加圧下に50〜180℃で反応させることにより、共役ジエン部位の一部又は全部を水素添加することができる。
スチレン−ブタジエン共重合体又は分子末端に水酸基が導入されたスチレン−ブタジエン共重合体の水素添加率に特に制限は無いが、水蒸気バリア性の観点からは、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%である。
【0014】
(A)成分として使用するエネルギー線硬化性官能基を有する芳香族ビニル−共役ジエン共重合体及びその水添体の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜40,000、より好ましくは10,000〜30,000、さらに好ましくは15,000〜20,000である。重量平均分子量がこの範囲内であると、エネルギー線硬化性官能基を有する芳香族ビニル−共役ジエン共重合体やその水添体の粘度が高くなり過ぎず、取り扱い性が良く、また、水蒸気バリア性も十分である。また、(A)成分として使用するエネルギー線硬化性官能基を有する芳香族ビニル−共役ジエン共重合体及びその水添体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.2以下である。分子量分布が3以下であれば、量産する場合に再現性を得やすく、同程度の分子量の共重合体を得ることが容易になる。
なお、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、単分散ポリスチレンを基準としてポリスチレン換算で求めた値である。
エネルギー線硬化性官能基を有する芳香族ビニル−共役ジエン共重合体及びその水添体のスチレン由来の構成単位の含有量(以下、スチレン含有量と称する。)に特に制限はないが、水蒸気バリア性の観点からは、全構成単位に対して、好ましくは10〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
【0015】
((B)エネルギー線硬化性材料)
本発明の二層ガスケットは、(B)成分として、(A)成分とは異なるエネルギー線硬化性材料を含有する。該(B)成分は、カバープレート又はベースプレート(特にニッケルめっきアルミニウム)のリワーク性に優れるものであり、本発明の二層ガスケットの外層となる成分である。
該エネルギー線硬化性材料としては、低シロキサン吸着性を得る観点から、(b1)重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマーと(b2)(メタ)アクリル系モノマーとを含有する材料が好ましい。(B)成分中の(b1)成分及び(b2)成分の合計含有量としては、低シロキサン吸着性を得る観点から、(B)成分中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%〜97質量%である。
なお、(b1)成分中の重合性不飽和基としては、不飽和炭化水素基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
以下、(b1)成分と(b2)成分について順に説明する。
【0016】
−(b1)成分−
(b1)成分としての重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマーの数平均分子量は、通常、成形性の観点及び低シロキサン吸着性を得る観点から、5,000〜50,000であることが好ましく、10,000〜23,000であることがより好ましい。(b1)成分中の重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基やビニル基等が挙げられる。(b1)成分としては、常温で液状の硬化性ウレタンオリゴマーであれば特に制限は無いが、(メタ)アクリロイル基を有するウレタン液状オリゴマーが好ましく、少なくとも分子両末端に(メタ)アクリロイル基を有するウレタン液状オリゴマーがより好ましい。
(b1)成分としては、単一構造のものを単独で使用してもよいし、構造の異なる硬化性ウレタン液状オリゴマーを2種以上併用してもよい。該硬化性ウレタン液状オリゴマーの製造方法としては、例えば数平均分子量1,000〜10,000((A)成分を(B)成分で覆った二層ガスケットを形成し易くする観点からは、好ましくは1,000〜5,000)のポリエステルジオールと有機ジイソシアナートとを、ジアミン化合物又はジオール化合物の存在下もしくは不存在下に反応させてイソシアナート基を分子両末端に有するポリウレタンジイソシアナートを形成した後、該両末端のイソシアナート基にモノオール化合物を付加させる方法等が挙げられ、また、こうして得られる硬化性ウレタン液状オリゴマーが、成形性、柔軟性及び接着性のバランスの点で好ましい。
ここで、イソシアナート基を分子両末端に有するポリウレタンジイソシアナートを形成する際、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤の存在下に行なうことができ、また、反応温度や反応時間に特に制限は無いが、通常60〜120℃で0.5〜15時間反応させればよい。そして、該分子両末端のイソシアナート基にモノオール化合物を付加させる際、適宜、チタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノエート)等の触媒の存在下に行なうことができ、また、反応温度や反応時間に特に制限は無いが、通常、60〜120℃で0.5〜30時間反応させればよい。
【0017】
前記した数平均分子量1,000〜10,000のポリエステルジオールとしては、環状基含有ジカルボン酸又はその酸無水物と有機ジオールとが縮重合したポリエステルジオールが好ましい。環状基含有ジカルボン酸又はその酸無水物と有機ジオールとを縮重合させる方法に特に制限は無く、公知の方法を用いることができる。
環状基含有ジカルボン酸又はその酸無水物としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機ジオールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−2−エチレンヘキサン−1,3−ジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ビスフェノールA、2,2−チオジエタノール、ポリブタジエンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ノルボルニレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジエタノール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
有機ジイソシアナートとしては、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等のアルキレン基;シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、ノルボルニレン基等の環状アルキレン基;フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基;キシリレン基、該キシリレン基が水素添加された基;下記式
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、波線は結合部位を示す。)で表される基を有するジイソシアナートが好ましい。また、これらの基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。
かかる有機ジイソシアナートの具体例としては、例えばイソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、トリメチルへキサメチレンジソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートの水素添加物、ジフェニルメタンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナートの水素添加物等が好ましく挙げられ、ノルボルナンジイソシアナートがより好ましい。
【0021】
ポリエステルジオールと有機ジイソシアナートとを反応させる際に存在させてもよいジアミン化合物としては、特に制限は無いが、例えばジアミノプロパン、ジアミノブタン、ノナンジアミン、イソホロンジアミン、へキサメチレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、ジフェニルメタンジアミン水素添加物、ビスアミノプロピルエーテル、ビスアミノプロピルエタン、ビスアミノプロピルジエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロピルポリエチレングリコールエーテル、ビスアミノプロポキシネオペンチルグリコール、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、トリレンジアミン、両末端アミノ基変性シリコーン等が好ましく挙げられる。また、上記ジオール化合物としては特に制限は無いが、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、両末端水酸基変性シリコーン等が好ましく挙げられる。
【0022】
ポリエステルジオールと有機ジイソシアナートとを反応させる際に存在させてもよいモノオール化合物としては、特に制限は無いが、例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートやヒドロキシアルキルビニルが好ましく挙げられる。かかるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ヒドロキシアルキルビニルとしては、例えばヒドロキシメチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
該(b1)成分の重合性不飽和基を有する硬化性ウレタン液状オリゴマーとしては、低シロキサン吸着性を得る観点から、下記一般式(I)
【0024】
【化2】

【0025】
(式中、R1は(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基を含有するモノオール化合物の脱水酸基残基であり、Xは有機ジイソシアナートの脱イソシアナート残基であり、Yは数平均分子量1000〜10000のポリエステルジオールの脱水酸基残基であり、pは1〜10である。)で表される化合物であることが好ましい。
式中の(メタ)アクリロイル基及び/又はビニル基を含有するモノオール化合物、有機ジイソシアナート、ポリエステルジオールは、それぞれ、前述したモノオール化合物、有機ジイソシアナート、ポリエステルジオールと同じものを表している。
また、該(b1)成分の重合性不飽和基を有する硬化性ウレタン液状オリゴマーとしては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば「ライトタックPUA−KH32M」(商品名、共栄社化学株式会社製)、「ライトタックPUA−H20MU」(商品名、共栄社化学株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
−(b2)成分−
(b2)成分としての(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、ガスケットとしての性能が向上する。該(メタ)アクリル系モノマーは、下記一般式(II)又は(III)で表されるものが好ましい。
【0027】
【化3】

【0028】
(式中、R2は水素原子又はメチル基、R3は複素環基である。また、R4は脂環式炭化水素基であるか、又は、複素環基、カルボキシル基、水酸基、カルボン酸エステル構造、リン酸エステル構造、アミド基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する炭化水素基である。)
【0029】
3が表す複素環基及びR4の定義に含まれる複素環基としては、それぞれ独立して、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、チオモルホニル基等が挙げられる。これらは炭素数1〜5のアルキル基で置換されていてもよい。R4の定義中の脂環式炭化水素基としては、例えばジシクロペンタニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。また、R4が表す炭化水素基としては、炭素原子の一部が酸素原子で置換されていてもよいアルキレン基等が挙げられ、該アルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよい。かかるアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基や、ポリエチレングリコール単位である−(CH2CH2−O)n−で表される基、ポリプロピレングリコール単位である−(CH2CH(CH3)−O)n−、−((CH3)CHCH2−O)n−で表される基(nは繰り返し単位数を表す。)等が挙げられる。
【0030】
(b2)成分の具体例としては、例えばN−(メタ)アクリロイルモルフォリン、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、エポキシ変性リン酸(メタ)アクリレート等が好ましく挙げられる。これらは、市販されているものを使用することができる。また、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらに、これらの中でも、例えばハードディスク装置におけるカバープレート及びベースプレートのリワーク性を良好なものとする観点並びにガスケットとしての性能及び成形性の観点から、単独重合体のガラス転移温度(Tg)が30〜160℃であるN−アクリロイルモルフォリン(145℃)、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド(56℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(120℃)、イソボルニルアクリレート(94℃)、2−アクリロイルオキシエチルフタレート(130℃)、2−アクリロイルオキシプロピルフタレート(158℃)、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレートがより好ましい。なお、かかるガラス転移温度は、通常のラジカル重合法により重合させて得られたポリマーを、示差走査熱量計(DSC)で通常の条件で測定した値である。
【0031】
(B)成分中の(b2)成分の含有量は、例えばハードディスク装置におけるカバープレート及びベースプレートのリワーク性を良好なものとする観点並びにガスケットとしての性能及び成形性の観点から、(b1)成分100質量部に対して5〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。
【0032】
((A)成分及び(B)成分に含有されていてもよいその他の成分)
前記(A)成分や(B)成分には、さらにチクソ性付与剤を含有させることもできる。
ハードディスク装置用ガスケットの製造法としては、ディスペンサーを用いて溶融樹脂又は溶液状樹脂を、カバープレート又はベースプレートにガスケット形状に押出し、一体化するディスペンシング法が、貼り付け工程等の工程が不要等のメリットがあることから、工業的に広く使用されている。そして、押出しによるガスケット形状を正確にするために、粘度の剪断速度依存性を大きく制御して、低剪断速度では粘度が高く、高剪断速度では粘度の低い材料を用いる方法が採用されている。このような粘度の剪断速度依存性を制御するために、チクソ性付与剤が用いられることがある。
【0033】
該チクソ性付与剤としては、無機充填剤および有機増粘剤のいずれも用いることができる。
無機充填剤としては、湿式シリカや乾式シリカの表面処理微粉シリカや、有機化ベントナイト等の天然鉱物系のものが挙げられる。具体的には、乾式法により微粉化したシリカ微粉末[例えば、日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジル300等]、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジルRX300等]及び上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジルRY300等]等が挙げられる。無機充填剤の平均粒径に特に制限は無いが、増粘性の観点からは、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。
また、有機増粘剤としては、アマイドワックス、水添ひまし油系又はこれらの混合物等が挙げられる。具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、ズードケミー触媒株式会社製、商品名:ADVITROL 100、楠本化成株式会社製、商品名:ディスパロン305等]及びアンモニアの水素をアシル基で置換した化合物である高級アマイドワックス[例えば、楠本化成株式会社製、商品名:ディスパロン6500等]等が挙げられる。
これらチクソ性付与剤の中でも、有機増粘剤が好ましい。天然鉱物系の無機充填剤は重金属等の不純物が避けられず、また、表面処理微粉シリカは、表面の濡れ性が変わり組成物の粘度が変化することがあり、また表面処理剤の種類によっては、使用中に器具に有害なガスを発生することがある。さらに、有機増粘剤の中でも、アマイドワックスは、原料に由来するアミンの存在により架橋密度を高めて硬度が大きくなることがあるので、水添ひまし油が好ましい。
(A)成分にチクソ性付与剤を含有させる場合、その含有量に特に制限はないが、(A)成分全体に対して1〜15質量%が好ましい。また、(B)成分にチクソ性付与剤を含有させる場合、その含有量は、(B)成分が(A)成分を覆った二層ガスケットを得易くする観点から、(B)成分全体に対して1〜10質量%が好ましく、特に、(B)成分として前記(b1)成分と(b2)成分を含有する場合には、(b1)成分100質量部に対して1〜7質量部が好ましく、2〜5質量部がより好ましい。
【0034】
本発明の(A)成分及び(B)成分には、さらに光重合開始剤及び架橋剤のうちの少なくとも一種が含有されていてもよい。
光重合開始剤としては、分子内開裂型でもよいし、水素引き抜き型でもよい。
分子内開裂型としては、べンゾイン誘導体類、べンジルケタール類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:イルガキュア651]、α−ヒドロキシアセトフェノン類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:ダロキュア1173、イルガキュア184]、α−アミノアセトフェノン類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:イルガキュア907、イルガキュア369]、α−アミノアセトフェノン類とチオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)との併用、アシルホスフィンオキサイド類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:イルガキュア819]等が挙げられる。水素引き抜き型としては、ベンゾフェノン類とアミンの併用、チオキサントンとアミンの併用等が挙げられる。
また、分子内開裂型と水素引き抜き型を併用してもよい。中でもオリゴマー化したα−ヒドロキシアセトフェノン及びアクリレート化したベンゾフェノン類が好ましい。より具体的には、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン][例えば、Lamberiti S・P・A製、商品名:ESACURE KIP150等]、アクリル化べンゾフェノン[例えは、ダイセル・ユー・シー・ビー株式会社製、商品名:Ebecryl P136等]、イミドアクリレート等が挙げられる。
【0035】
架橋剤としては、有機パーオキサイドが好適に挙げられ、具体的には、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−へキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)−へキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ジクミルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;ジイソプロピルベンゾハイドロパーオキサイド;1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)−ベンゼン;ベンゾイルパーオキサイド;1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0036】
(A)成分及び(B)成分としては、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含有させてもよい。かかる添加剤としては、例えばセラミック、カーボンブラック、アンバー、シェンナ、カオリン、ニッケルチタンイエロー、コバルトブルー、プラマスターグレー、キノフタロン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ジオキサジン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の顔料:トナー:難燃剤:老化防止剤:帯電防止剤:光増感剤:硬化促進剤:抗菌剤:酸化防止剤:タルク、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、ガラス粉、ガラスバルーン等の無機中空フィラー、セラミックス粉、マイカ等の無機充填剤:コルク粉末、木粉、グラファイト等の有機充填剤:ステアリン酸等の離型剤:光安定剤:ロジン誘導体等の粘着付与剤(タッキファイヤー):カルボジイミド類:「レオストマー(登録商標)B」(商品名、理研テクノス株式会社製)等の接着性エラストマー等が挙げられる。
【0037】
[二層ガスケットの製造方法及びその構造]
前述の通り、本発明の二層ガスケットは、前記(B)成分を含有する層が、前記(A)成分を含有する層の全体(被着体との接着面を除く)を覆っているものである。その製造方法に特に制限はないが、例えば、下記方法(1)や方法(2)により製造することができる。
(1)被着体(例えばベースプレートとする。)との接着性に優れる前記(A)成分を塗布装置から押し出し、前記ベースプレートに未硬化ガスケットを形成した後、該未硬化ガスケットの上に、さらにカバープレートのリワーク性に優れる前記(B)成分を塗布装置から押し出し、前記(A)成分からなる未硬化ガスケットを覆うようにして、外層となる(B)成分からなる未硬化ガスケットを形成し、その後にエネルギー線を照射して全体を硬化させることにより二層ガスケットを製造する方法。
(2)被着体(例えばベースプレートとする。)との接着性に優れる前記(A)成分を塗布装置から押し出し、前記ベースプレートに未硬化ガスケットを形成した後、エネルギー線を照射して硬化させた後、さらにカバープレートのリワーク性に優れる前記(B)成分を塗布装置から押し出し、(A)成分からなる硬化ガスケットを覆うようにして、外層となる(B)成分からなる未硬化ガスケットを形成し、次いでエネルギー線を照射して外層を硬化させることにより二層ガスケットを製造する方法。
なお、上記方法(1)及び(2)において、ベースプレートとカバープレートが逆であってもよい。その場合、(A)成分がカバープレートとの接着性に優れ、(B)成分が、ベースプレートのリワーク性に優れることとなる。
また、(A)成分が内層になり、(B)成分が外層になる限りは、ノズルを2つ有する塗布装置を用いて、ほぼ同時に押し出しながら未硬化二層ガスケットを形成し、次いで前記同様にして硬化させて二層ガスケットを製造する方法をとってもよい。
【0038】
本発明の二層ガスケットは、被着体(ベースプレート)との接着面からのガスケットの高さ(ガスケット全体の高さ)に対する、前記(A)成分を含有する層の前記被着面からの高さ(内層の高さ)の比率(内層の高さ/ガスケット全体の高さ)が、0.5〜0.95であることが好ましく、0.65〜0.95であることがより好ましく、0.8〜0.95であることがさらに好ましい。該比率が0.5以上であれば、水蒸気バリア性が十分であり、0.95以下であれば、シロキサン吸着性が十分に低くなる。かかる比率は、好ましくは、形成した二層ガスケット全体の80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは実質100%の部位において前記範囲内であることにより、本発明の二層ガスケットの効果を十分に発揮できる。
【0039】
(A)成分及び(B)成分の押し出しに用いる塗布装置としては、カバープレート又はベースプレートに所望の形状のガスケットを形成することができる装置であれば特に制限はなく、空圧式押し出し装置、機械的なラムプレス押し出し装置、プランジャー式押し出し装置などが挙げられる。なお、ノズル形状については、円形状、楕円形状等が好ましい。また、ノズルの内径については、ガスケットの幅に応じて適宜選定することができるが、通常、0.1〜1.2mmの範囲である。
ガスケット形成材料の押し出し圧は、ガスケット形成材料の種類及び粘度等によって適宜選択されるが、50kPa〜1MPaとすることが好ましい。この範囲内であると、ガスケット形成材料の押し出しが効率良く行えるとともに、未硬化ガスケットが押しつぶされることがなく、十分に線幅が狭く、かつ高さが高いガスケットが得られる。この観点から、ガスケットの押し出し圧としては、より好ましくは80kPa〜800kPa、さらに好ましくは100kPa〜800kPa、特に好ましくは200kPa〜800kPaである。
なお、ガスケットの成形温度は、(A)成分及び(B)成分の材料によって適宜選定されるが、通常、0〜100℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。
【0040】
ガスケット形成材料の粘度については、ガスケット形成材料を塗布することができる範囲で特に限定されないが、通常、50℃での粘度が50〜1000Pa・sの範囲であることが好ましい。50℃での粘度がこの範囲内であると、流動性が適度であるため、ガスケット形状の賦形が行いやすい。
未硬化ガスケットを硬化させるために用いられるエネルギー線とは、紫外線及び電子線、α線、β線、γ線等をいい、本発明ではこれらのうち、特に紫外線が好ましい。紫外線は、装置が簡便で使い易く良好に未硬化ガスケットを硬化させることができる。
なお、紫外線を用いる場合にはガスケット形成材料に前記光重合開始剤を含有させることが好ましく、さらに光増感剤を含有させるとより良い。一方、電子線やγ線等を用いる場合には、光重合開始剤や光増感剤を含有させることなく、速やかに硬化を進めることができる。
紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯等を挙げることができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、二酸化炭素ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも紫外線により硬化させることができる。照射温度は、通常、好ましくは10〜200℃であり、照射時間は、通常、好ましくは10秒〜60分である。積算光量は、通常、好ましくは1,000〜20,000mJ/cm2である。
また、硬化後にベーキングを行うことにより、揮発成分を除去することができる。その時のベーキング温度は、100〜160℃が好ましい。
【0041】
(カバープレート、ベースプレート)
(A)成分や(B)成分を押し出し、エネルギー線照射によって硬化させてなる本発明の二層ガスケットと一体化されるカバープレート又はベースプレートは、金属や熱可塑性樹脂等の合成樹脂で形成することができる。カバープレート及びベースプレートを形成する金属としては、例えばニッケルめっきアルミニウム、ニッケルめっき鋼、冷延鋼、亜鉛めっき鋼、アルミニウム/亜鉛合金めっき鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金などの中から、適宜選択して用いることができる。また、マグネシウムを射出成形したものも用いることができる。
耐食性の観点から、無電解ニッケルめっき処理を施した金属が好適であり、ニッケルめっきアルミニウム、ニッケルめっき鋼が好ましい。
なお、無電解ニッケルめっき処理方法としては、従来金属素材に適用されている公知の方法、例えば硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、乳酸、プロピオン酸などを適当な割合で含有するpH4〜5程度で、かつ温度85〜95℃程度の水溶液からなる無電解ニッケルめっき浴中に、金属板を浸漬する方法などを用いることができる。
【0042】
カバープレート及びベースプレートを形成する熱可塑性樹脂としては、例えばアクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン複合体などのオレフィン系樹脂、ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、アクリル系樹脂、ポリアセタール、ポリカーボネート、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
なお、液晶ポリマーとしては、サーモトロピック液晶ポリマーが好ましく、具体的にはポリカーボネート系液晶ポリマー、ポリウレタン系液晶ポリマー、ポリアミド系液晶ポリマー、ポリエステル系液晶ポリマーなどが挙げられる。
これらの樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、カバープレート又はベースプレートが合成樹脂製の場合は、カバープレート又はベースプレートと本発明の二層ガスケットとの接着性を向上させるために、予めその表面を処理することが好ましい。表面処理の方法としては、プラズマ処理、コロナ放電処理などが挙げられる。プラズマ処理には、キーエンス社製のプラズマ照射器などの装置を用いることができる。
また、カバープレート又はベースプレートに、ガスケットの形状に合わせて接着性向上剤を塗布するなどしてプライマー処理を施してから、(A)成分及び(B)成分を塗布することにより、カバープレート又はベースプレートと二層ガスケットとの接着性をより向上させることができる。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0044】
<製造例1>末端変性水添スチレン−ブタジエン共重合体((A)成分)の製造
アルゴン置換した内容積7Lの反応器に、脱水精製したシクロヘキサン1.90kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンのヘキサン溶液2kg、及び20.0質量%のスチレンのシクロヘキサン溶液0.573kg、1.6mol/Lの2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンのヘキサン溶液130.4mlを添加した後、0.5mol/Lのジリチウム重合開始剤108.0mlを添加して重合を開始させた。混合液を50℃に昇温し、1.5時間重合を行なった後、1mol/Lのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液108.0mlを添加し、さらに2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。
得られた共重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させて、分子末端に水酸基を有するスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含有量:20質量%、重量平均分子量18,000、分子量分布1.15)を得た。
【0045】
(水素添加処理)
上記で得られた分子末端に水酸基を有するスチレン−ブタジエン共重合体120gを、十分に脱水精製したヘキサン1Lに溶解した後、予め別の容器で調整したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム及びブタジエン[それぞれ1:3:3(モル比)]の触媒液を、前記スチレン−ブタジエン共重合体のブタジエン由来の構成単位1000molに対してニッケル1molになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を2.758MPa(400psi)で加圧添加し、110℃にて4時間、水素添加反応を行なった。
その後、3mol/m3の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、さらに遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。そして、分子末端に水酸基を有する水添スチレン−ブタジエン共重合体をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、さらに十分に乾燥させて、分子末端に水酸基を有する水添スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン含有量20質量%、重量平均分子量16,500、水素添加率:98%、分子量分布1.1)を得た。
(分子末端の変性処理)
こうして得られた分子末端に水酸基を有する水添スチレン−ブタジエン共重合体をシクロヘキサンに溶解し、40℃にて攪拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(「カレンズ(登録商標)AOI」、昭和電工株式会社製)をゆっくり滴下し、さらに4時間攪拌を行なった後、イソプロピルアルコール中に結晶を沈殿させ、末端変性水添スチレン−ブタジエン共重合体を得た。
【0046】
<製造例2>エネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマー((b1)成分)の製造
2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと無水フタル酸とから得られるポリエステルジオール化合物(数平均分子量2,000)400gとノルボルナンジイソシアナート82.4gと、酸化防止剤の2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.10gとを、攪拌機、冷却管及び温度計を備えた内容積1Lの四口フラスコに加え、80℃で2時間反応させた。次いで2−ヒドロキシエチルアクリレート46.2g、重合禁止剤のp−メトキシフェノール0.10g及び付加反応触媒としてチタンテトラ(2−エチル−1−ヘキサノエート)0.06gとを加え、85℃で6時間反応させた。反応液の一部を取り出し赤外線吸収スペクトルで2280cm-1のイソシアナート基の吸収ピークが消失したことにより、反応の終点を確認し、硬化性ウレタン液状オリゴマーを得た。得られた硬化性ウレタン液状オリゴマーについて数平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いてポリスチレン換算値で求めたところ、18,000であった。
【0047】
<製造例3>(B)成分の調製
製造例2で得たエネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマー((b1)成分)100質量部に、N−(アクリロイル)モルホリン(株式会社興人製、(b2)成分、商品名「ACMO」、Tg:145℃)5質量部を加え、さらに、チクソ性付与剤としての水添ひまし油(ズードケミー触媒株式会社製、商品名「ADVITROL 100」)3.2質量部、トナー(日本ピグメント株式会社製、商品名「CMB−B1」)0.75質量部、カルボジイミド(液状カルボジイミド化合物、日清紡績株式会社製、商品名「Elastostab H01」)1質量部及び光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア2959」)2質量部を添加し、(B)成分を調製した。
【0048】
<実施例1〜4、比較例1及び2>二層ガスケットの製造及び特性の調査
(水蒸気バリア性の調査)
JIS l1099に記載のA法で用いられる透湿カップ中に、製造例1で得た内層用の(A)成分である末端変性水添スチレン−ブタジエン共重合体と、製造例3で得た外層用の(B)成分を、断面図が図1に示す通りになるようにディスペンサーにより塗布し、エネルギー線を照射することにより硬化し、二層ガスケットを形成した。この際、図1に示す各成分由来の層の寸法(高さ方向の層厚)が表1に示す通りになるように調整した。次いで、JIS Z0208に準拠して、40℃及び相対湿度90%の条件にて透湿度を測定し、水蒸気バリア性の指標とした。透湿度が小さいほど、水蒸気バリア性に優れる。結果を表1に示す。
(シロキサン吸着性の調査)
ニッケルめっきした厚さ0.4mmのアルミニウムプレート上に、製造例1で得た内層用の(A)成分である末端変性水添スチレン−ブタジエン共重合体と、製造例3で得た外層用の(B)成分を、順次、断面図が図2に示す通りになるようにディスペンサーにより塗布し、エネルギー線を照射することにより硬化し、二層ガスケットを形成した。この際、図2に示す各成分由来の層の寸法(高さ方向の層厚)が表1に示す通りになるように調整した。次いで、120℃で4時間ベーキング処理を行ない、1週間、空気暴露させた後、150℃・20分の条件にて、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC−MS)により、二層ガスケット0.25g当たりのシロキサン吸着量を調査した。シロキサン吸着量が少ないほうが好ましい。結果を表1に示す。
【0049】
(エネルギー線照射条件)
なお、上記各例における各成分の硬化は、いずれも、光源としてメタルハライドランプ(装置名「SE−1500M」、センエンジニアリング株式会社製)を使用し、紫外線照射機(装置名「UV1501BA−LT」、センエンジニアリング株式会社製)により、空気雰囲気下で放射照度150mW/cm2(波長:320〜390nm)にて30秒間照射を行うことにより実施した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より、本発明の二層ガスケットでは、高水蒸気バリア性と低シロキサン吸着性を両立することができている。特に、シロキサン吸着性については、従来品よりも大幅に低減できたことがわかる。なお、実施例1〜4の結果からわかるように、内層の高さ/ガスケット全体の高さ)が0.5〜0.95であると、低シロキサン吸着性を保持しながら一層水蒸気バリア性に優れており、0.65〜0.95、さらには0.8〜0.95であると、より一層その効果に優れている。
一方、比較例1のように、本発明で使用する(B)成分を用いていないガスケットでは、水蒸気バリア性が大幅に低下した。また、比較例2のように、本発明で使用する(A)成分を用いていないガスケットでは、シロキサン吸着性が大幅に増加した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の二層ガスケットは、高水蒸気バリア性と低シロキサン吸着性とを両立するため、電子部品用のガスケット、具体的には、例えばハードディスク装置用のガスケットとして有効に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エネルギー線硬化性官能基を有する水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含有する層、及び(B)前記(A)成分とは異なるエネルギー線硬化性材料を含有する層からなるガスケットであって、
前記(B)成分を含有する層が、前記(A)成分を含有する層の全体(被着体との接着面を除く)を覆っている、二層ガスケット。
【請求項2】
被着体との接着面からのガスケットの高さ(ガスケット全体の高さ)に対する、前記(A)成分を含有する層の前記被着面からの高さ(内層の高さ)の比率(内層の高さ/ガスケット全体の高さ)が、0.5〜0.95である、請求項1に記載の二層ガスケット。
【請求項3】
前記(A)成分における水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が、スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水添スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−(ブタジエン/イソプレン)共重合体及び水添スチレン−(ブタジエン/イソプレン)共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の二層ガスケット。
【請求項4】
前記(A)成分における水添又は未水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が、水添スチレン−ブタジエン共重合体である、請求項1又は2に記載の二層ガスケット。
【請求項5】
前記(A)成分が有するエネルギー線硬化性官能基が、(メタ)アクリロイルオキシ基である、請求項1〜4のいずれかに記載の二層ガスケット。
【請求項6】
前記(B)成分のエネルギー線硬化性材料が、(b1)重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化性ウレタン液状オリゴマーと(b2)(メタ)アクリル系モノマーとを含有する材料である、請求項1〜5のいずれかに記載の二層ガスケット。
【請求項7】
前記(b1)成分が有する重合性不飽和基が、(メタ)アクリロイルオキシ基である、請求項6に記載の二層ガスケット。
【請求項8】
電子部品用である、請求項1〜7のいずれかに記載の二層ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−185375(P2011−185375A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52238(P2010−52238)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】