説明

ガスケット

【課題】ガスケットに係り、車両冷却系等、内部圧力や温度が低い流体に使用されるガスケットに改良を加え、O−リングと同等のシール性を確保しつつ、相手部品にリング溝加工が必要なく再使用が可能なガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケット11は、流体通路孔17が形成された1枚の薄肉なゴム製プレート部材13と、ゴム製プレート部材13を挟持し、流体通路孔17に対応して流体通路孔17より大径な流体通路孔19が形成された2枚の薄肉な金属製プレート部材15とからなり、ゴム製プレート部材13は、その両面に、流体通路孔17,19に沿って金属製プレート部材15より厚肉なリング状の突条21が一体形成され、金属製プレート部材15の流体通路孔17,19は、突条21の外周縁との間に、突条21の潰し代たる溝部25を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスケットに係り、詳しくは車両の冷却系や潤滑系等の流体回路に使用されるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来周知のようにガスケットやO−リングは、配管の継ぎ手等に挟み込んで圧縮することでその隙間を塞ぐと同時に、流体の漏れまたは外部からの異物の進入を防止するもので、トラック等の車両に於ても、冷却系や潤滑系等、内部圧力や温度が低い流体にはガスケット(紙ガスケット等の軟質ガスケット)やO−リングが広く使用されている。
【0003】
シール性を考慮した場合、O−リングを用いることが最もよい方法であるが、相手部品の継手面にO−リングに合わせたリング溝を加工しなければならず、而も、リング溝の加工に当たって加工部の面精度やエッジ等に注意する必要があり、コストの高いものとなっているのが実情であった。
【0004】
一方、ガスケットは、メンテナンス等で継ぎ手部分を分解した際に破けてしまい、分解の都度、新たなガスケットに交換しなければならず再利用性の低いものである。
【0005】
また、金属製ガスケットに係る発明であるが、特許文献1には、図6及び図7に示すように、シリンダブロックのシリンダボアに対応して形成されたボア孔1の周囲部分に、塑性変形性を有する粘着剤を塗布して粘着部3を設けた金属薄板5からなるガスケット7が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4404393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記ガスケット7は、一度の使用で粘着部3が完全に潰れてしまい、再使用ができない欠点があり、斯かる技術を紙ガスケット等に適用しても、同様の不具合がある。
【0008】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、車両冷却系等、内部圧力や温度が低い流体に使用されるガスケットに改良を加え、O−リングと同等のシール性を確保しつつ、相手部品にリング溝加工が必要なく再使用が可能なガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係るガスケットは、流体通路孔が形成された1枚の薄肉なゴム製プレート部材と、前記ゴム製プレート部材を挟持し、前記流体通路孔に対応して当該流体通路孔より大径な流体通路孔が形成された2枚の薄肉な金属製プレート部材とからなり、前記ゴム製プレート部材は、その両面に、流体通路孔に沿って前記金属製プレート部材より厚肉なリング状の突条が一体形成され、前記金属製プレート部材の流体通路孔は、前記突条の外周縁との間に、当該突条の潰し代たる溝部を形成していることを特徴とする。
【0010】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガスケットに於て、前記ゴム製プレート部材は、前記金属製プレート部材と同一の外形寸法とされていることを特徴とする。
【0011】
一方、請求項3に係る発明は、薄肉な1枚のゴム製プレート部材に、流体通路孔と、当該流体通路孔から所定の距離を置いて両面に厚肉なリング状の突条を流体通路孔に沿って形成すると共に、突条の潰し代たる溝部を、当該突条の内外周縁に沿って設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
各請求項に係る発明によれば、継手面にリング溝を加工することなく、突条によってO−リングを用いた場合と同様の確実なシール性を期待できると共に、圧縮された突条が必要以上に潰れることがないため、ガスケットの再使用が可能となり、この結果、リング溝の加工が不要となることと相俟って、従来に比しコストの低減を図ることが可能となる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、ゴム製プレート部材が金属製プレート部材と同一の外形寸法とされているため、使用に当たりゴム製プレート部材がずれることがなく、金属製プレート部材との正確な位置決めができる利点を有する。
【0014】
更に、請求項3に係る発明は、1枚のゴム製プレート部材でガスケットを形成しため、ゴム製プレート部材と金属製プレート部材の三層構造からなる請求項1のガスケットに比し、取り扱いが容易で作業性に優れた利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】請求項1及び請求項2の一実施形態に係るガスケットの正面図である。
【図2】図1に示すガスケットの側面図である。
【図3】図1に示すガスケットの分解斜視図である。
【図4】請求項3の一実施形態に係るガスケットの斜視図である。
【図5】図4に示すガスケットの部分断面図である。
【図6】従来のガスケットの部分平面図である。
【図7】図6に示すガスケットの要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1乃至図3は請求項1及び請求項2に係る発明の一実施形態を示し、図中、11は車両の冷却系や潤滑系等、内部圧力や温度が低い流体に使用されるガスケットで、ガスケット11は、図示しない配管の継ぎ手部分のフランジ形状に合わせて四隅がアール状に形成された正面視正方形状とされている。
【0018】
図3に示すようにガスケット11は、シリコンゴムやフッ素ゴム等からなる正面視正方形状の薄肉な1枚のゴム製プレート部材13と、当該ゴム製プレート部材13を挟持する2枚の薄肉な金属製プレート部材15とで構成され、ゴム製プレート部材13と金属製プレート部材15は同一の外形寸法とされている。尚、ゴム製プレート部材13の材質は使用する環境条件に応じて適宜選択される。
【0019】
ゴム製プレート部材13の中央には正面視円形形状の流体通路孔17が形成され、これに対応して2枚の金属製プレート部材15の中央に、当該流体通路孔17より大径な正面視円形形状の流体通路孔19が形成されている。そして、図1乃至図3に示すようにゴム製プレート部材13の両面に、流体通路孔17から所定の距離Lを置いて、金属製プレート部材15より厚肉な断面半円形状のリング状の突条21が流体通路孔17に沿って一体形成されている。
【0020】
そして、図1に示すようにゴム製プレート部材13の表裏からこれを金属製プレート部材15で挟持すると、金属製プレート部材15の流体通路孔19と突条21の外周縁23との間に、突条21の潰し代たる溝部25が形成されると共に、図2に示すように金属製プレート部材15より厚肉に形成されたリング状の突条21が、ガスケット11の表裏に突出(金属製プレート部材15の外方へ突出)するようになっている。その他、図中、27、29は、夫々、ゴム製プレート部材13と金属製プレート部材15に形成されたボルト挿通孔である。
【0021】
本実施形態に係るガスケット11はこのように構成されており、図1及び図2に示すようにガスケット11は、ゴム製プレート部材13を2枚の金属製プレート部材15で挟持した状態で使用される。
【0022】
而して、前記ガスケット11を配管の継ぎ手部分に挟み込んで圧縮すると、ガスケット11の表裏に突出した突条21が継手面に圧接して、O−リングと同様のシール性を発揮する。そして、突条21は取付フランジのボルト締めに伴い圧縮されて潰れるが、突条21の潰れは潰し代たる溝部25の範囲に止まり、流体通路孔19の内周、即ち、金属製プレート部材15自体が、突条21の必要以上の潰れを防止するスペーサとして機能する。
【0023】
従って、本実施形態に係るガスケット11を使用すれば、継手面にリング溝を加工することなく、突条21によってO−リングを用いた場合と同様の確実なシール性を期待できると共に、圧縮された突条21が必要以上に潰れることがないため、ガスケット11の再使用が可能となり、この結果、リング溝の加工が不要となることと相俟って、従来に比しコストの低減を図ることが可能となった。
【0024】
而も、ゴム製プレート部材13が金属製プレート部材15と同一の外形寸法とされているため、使用に当たりゴム製プレート部材13がずれることがなく、金属製プレート部材15との正確な位置決めができる利点を有する。
【0025】
図4及び図5は請求項3に係る発明の一実施形態を示し、本実施形態は、1枚のゴム製プレート部材13と2枚の金属製プレート部材15からなる三層構造の前記ガスケット11に代え、前記ゴム製プレート部材13と同一材料からなる1枚のゴム製プレート部材31でガスケット33を形成したものである。
【0026】
図示するようにゴム製プレート部材31は正面視正方形状に形成され、その中央に正面視円形形状の流体通路孔35が形成されている。また、流体通路孔35から所定の距離を置いてゴム製プレート部材31の両面に、断面半円形状の厚肉なリング状の突条37が流体通路孔35に沿って形成されている。
【0027】
そして、突条37の潰し代たる溝部39、41が、夫々、突条37の内周縁43と外周縁45に沿って形成されており、図5に示すように突条37の内側の溝部39と流体通路孔35との間には、ゴム製プレート部材31自体の肉厚からなる平坦部47がリング状に形成されている。その他、図中、49はボルト挿通孔である。
【0028】
このように本実施形態に係るガスケット33は、ガスケットとO−リングのリング溝加工が一体となった構成からなり、ガスケット33を配管の継ぎ手部分に挟み込んで圧縮すると、ガスケット33の表裏に突出した突条37が継手面に圧接してO−リングと同様のシール性を発揮する。そして、突条37は取付フランジのボルト締めに伴い圧縮されて潰れるが、突条37の潰れは潰し代たる溝部39、41の範囲に止まり、突条37(溝部39)の内側に形成された平坦部47と、突条37(溝部41)の外側のゴム製プレート部材31自体が、突条37の必要以上の潰れを防止するスペーサとして機能することとなる。
【0029】
従って、本実施形態に係るガスケット33によっても、前記ガスケット11と同様、継手面にリング溝を加工することなく、突条37によってO−リングを用いた場合と同様の確実なシール性を期待できると共に、圧縮された突条37が必要以上に潰れることがないため、ガスケット33の再使用が可能となり、この結果、リング溝の加工が不要となることと相俟って、従来に比しコストの低減を図ることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態は、1枚のゴム製プレート部材31でガスケット33を形成しため、ゴム製プレート部材13と金属製プレート部材15の三層構造からなる前記ガスケット11に比し、取り扱いが容易で作業性に優れた利点を有する。
【符号の説明】
【0031】
11、33 ガスケット
13、31 ゴム製プレート部材
15 金属製プレート部材
17、19、35 流体通路孔
21、37 突条
25、39、41 溝部
47 平坦部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路孔が形成された1枚の薄肉なゴム製プレート部材と、
前記ゴム製プレート部材を挟持し、前記流体通路孔に対応して当該流体通路孔より大径な流体通路孔が形成された2枚の薄肉な金属製プレート部材とからなり、
前記ゴム製プレート部材は、その両面に、流体通路孔に沿って前記金属製プレート部材より厚肉なリング状の突条が一体形成され、
前記金属製プレート部材の流体通路孔は、前記突条の外周縁との間に、当該突条の潰し代たる溝部を形成していることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記ゴム製プレート部材は、前記金属製プレート部材と同一の外形寸法とされていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
薄肉な1枚のゴム製プレート部材に、流体通路孔と、当該流体通路孔から所定の距離を置いて両面に厚肉なリング状の突条を流体通路孔に沿って形成すると共に、突条の潰し代たる溝部を、当該突条の内外周縁に沿って設けたことを特徴とするガスケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−112511(P2012−112511A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264613(P2010−264613)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】