説明

ガスケット

【課題】外壁パネル組付けと同時にガスケットを組み込んだ目地を施工する際、或いは目地施工後、目地幅が変化するようなことがあっても屋外側の外観面が傾いたり、屈曲することのないガスケットを提供する。
【解決手段】目地組込時に屋外側となる前壁部12と、目地組込時に目地底側となり、前記前壁部12に向かって略く字形に突出する後壁部13と、前記前壁部12と後壁部13の両端を連結する側壁部14及び15よりなって中空断面をなし、側壁部14は外側の一部がスポンジ16で、外側面がほぼフラットに形成され、内側には、後壁部13の中央部の屈折端に向かって突出する突起17が一体形成されており、ガスケットを目地に組込んだ状態において、後壁部13又は側壁部14又は15を支持する。側壁部15は外向きに膨出し、外側の一部がスポンジ18で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外壁の目地に組付けられるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガスケットは、多くの場合、芯部と、芯部の両側より側方に突設される複数のリップよりなっている。図1は、その一つの例を示すもので、このガスケット1は芯材2を埋設した芯部3と、芯部3の両側より側方に突設される複数のリップ4a、4b、4cと、表層側のリップ4aとその下側のリップ4bを連結するブリッジ5よりなり、図2に示すような建物外壁の目地6に充填する際には、屋外側からガスケット1を目地6の端から端まで押し込むことによって装填される。
【0003】
外壁パネルを組付けたのちに外壁パネル間の目地にガスケットを前述するようにして押し込んで装填するほかに外壁パネル組付時に同時にガスケットを組込んだ目地を施工することも知られる。
【0004】
下記特許文献1には、下側の外壁パネルを組付けたのち、該外壁パネルの上側端面或いは小口に沿わせてガスケットを仮止めして取付け、ついで上側の外壁パネルを組み付け、ガスケットを上下の外壁パネルで挟み込むようにして組み付けることが開示されている。
【0005】
外壁パネルを組付けたのちに外壁パネル間の目地にガスケットを装填する前者の方法による場合、目地によってはガスケットを装填する際に足場が必要となることがあるのに対し、外壁パネル組付けと同時にガスケットを組み込んだ目地が施工される後者の方法による場合、ガスケット組付けのための足場がなくてもよい利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−179748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
目地に組込まれるガスケットに関しては、屋外側の外観面(この外観面は多くの場合、意匠性のある意匠面となっている)がデザイン上、壁面と平行なフラットな面となることが求められることがあるが、前記後者の方法において、すなわち、隣接する外壁パネルのうち、一方の外壁パネル側端面に沿わせてガスケットを取付けたのち、他方の外壁パネルを組付けてガスケットを組み込んだ目地を施工する方法において、ガスケットの屋外側の外観面がフラットに形成されていても他方の外壁パネルを組付けて目地を施工する際、ガスケットが他方の外壁パネル組付け時に押し潰されて全体が屋内側に倒れるように変形する、いわゆる「転び」を生じて外観面が屋内側に傾斜したり、屋外側に向かって凸状に湾曲したりするおそれがある。
【0008】
また組付け当初は屋外側の外観面がフラットであっても、その後の気候変化や経時変化により目地幅が変化することによって、上記のような問題を生ずるおそれがある。
【0009】
本発明は、外壁パネル組付けと同時にガスケットを組み込んだ目地を施工する際、或いは目地施工後、目地幅が変化するようなことがあっても屋外側の外観面が傾いたり、屈曲することのないガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係わる発明のガスケットは、目地組込時に屋外側となり、屋外を向く、外観面が平坦な前壁部と、目地組込時に目地底側となり、前記前壁部に向かって略く字形に突出する後壁部と、前記前壁部と後壁部の両端を連結する側壁部よりなって中空断面をなし、また両側壁部のうち、一方の側壁部は外側面(外周面)が平坦ないし、ほぼ平坦で、前記前壁部の外観面となす角が直角ないし略直角をなす一方、他方の側壁部は外向き(外周方向)に膨出しており、しかも両側壁部のうちの少なくとも一方、又は略く字形に屈折する後壁部の屈折部で分けられる2つのサイドのうち、少なくとも一方のサイドに突起が一体形成され、該突起はガスケットを目地に組込んだ状態において、後壁部又は側壁部を支持することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、両側壁部は外側の少なくとも一部が比重0.5以下のスポンジで形成されることを特徴とし、
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、前記突起は両側壁部のうちの一方の側壁部にのみ、又は後壁部の両サイドのうちの一方のサイドのみ形成され、ガスケットを目地に組込んだ状態で互いに密着する側壁部の接触面と後璧部の接触面のうち、少なくとも一方の面の接触面には凹凸が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係わる発明において、目地の施工は隣接して組付けられる外壁パネルのうち、一方の外壁パネルを組付けたのち、該外壁パネルの小口又は側端面にガスケットの外側面が平坦な一方の側壁部を当てて沿わせ、ガスケットを添設する。該添設状態で屋外を向く前壁部の外観面は、前記一方の側壁部の外側面と直角ないし略直角をなすため、外壁パネル外面と平行ないし略平行をなす。この状態で他方の外壁パネルを組付けるとき、該他方の外壁パネルの小口又は側端面で、ガスケットの外向きに膨出する他方の側壁部が押し込まれる。この押し込みにより両サイドが略く字形に開く後壁部が前記一方の側壁部側に倒れ込みながら閉じる方向に屈折し、各側壁部と略く字形の後壁部とが接近する。そして突起が後壁部又は側壁部に当たって後壁部を支持するか、又は側壁部を支持する。突起で支持された後壁部は、前記一方の側壁部と固定状態となり、他方の側壁部が突起で支持される場合は、該他方の側壁部と後壁部が固定状態となる。
【0013】
その結果、ガスケットはその構造の一部が固定状態となり、変形が阻止されることで、全体が非固定状態のガスケットに比べ、前壁部の変形や倒れ込みが抑制される。したがって前壁部の外観面を平坦で、かつ外壁パネル外面と平行ないし略平行に維持し易くなる。本発明においてはまた施工後、気候が変化したり、経時変化により目地幅が狭くなるようなことがあっても、突起が後壁部又は側壁部に当たって支持されている限り、前壁部の変形が抑制され、該前壁部を外観面が平坦で、かつ外壁パネル外面と平行ないし略平行に維持され易くなること、外壁パネル組付けと同時にガスケットを組込んだ目地を施工することができ、ガスケット取付のための足場を不要にできること、後壁部は前壁部に向かって突出するような略く字形をなしているため、目地底に下地材を止着するビス等があってもビス等に干渉することなくガスケットを支障なく装着できること、等の効果を有する。
【0014】
請求項2に係わる発明によると、目地施工後、側壁部のスポンジが外壁パネルの小口又は側端面に密着するためシール性が向上し、防水効果を上げることができる。
【0015】
目地施工後に経時によって突起のない側壁部と後壁部とが接触して密着すると、両者がくっ付いて固着され、また同じく経時変化により目地幅が拡がったときに他方の側壁部が目地幅の拡大に追従しないで外壁パネルの小口又は側端面より離れて隙間ができ、防水性が損なわれるおそれがあるが、請求項3に係わる発明のように、互いに密着する側壁部の接触面と後壁部の接触面のうち、少なくとも一方の接触面に凹凸が形成されていると、前述するような両者のくっ付きが生じにくくなり、防水性が損なわれる、といった問題が生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のガスケットの断面図。
【図2】図1に示すガスケットを目地に装着した状態を示す断面図。
【図3】本発明に係わるガスケットの断面図。
【図4】図3に示すガスケットを1階の外壁パネルの小口に仮止めして装着した断面図。
【図5】施工後の断面図。
【図6】本発明に係わるガスケットの別の例の断面図。
【図7】図6に示すガスケットの施工後の断面図。
【図8】本発明に係わるガスケットの更に別の例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態のガスケットについて図面により説明する。
図3に示すガスケット11は、ゴム又は熱可塑性エラストマーよりなる押出し成形品で、目地組込時に屋外側となる前壁部12と、目地組込時に目地底側となり、前記前壁部12に向かって略く字形に突出する後壁部13と、前記前壁部12と後壁部13の両端を連結する側壁部14及び15よりなって中空断面をなしている。
【0018】
前記側壁部14は屋内側外側が好ましくは比重が0.5以下のスポンジ16で形成され、外側面は後述する外壁パネルの小口又は側端面に設置し易くなるように、全面が平坦ないし、ほぼ平坦に形成されている。そして内側には、略く字形に屈折する前記後壁部13の中央部の屈折部13aに向かって突出する突起17が一体形成されている。
【0019】
側壁部15は外向き(図3においては上向き)に膨出し、その膨出量は屋内に向かう程大きくなっており、前記側壁部14と同様、屋内側外側が好ましくは比重0.5以下のスポンジ18で形成されている。
【0020】
前壁部12は、ガスケット11を目地に組込んだときの屋外側に外観面、すなわち屋外を向く、外側面の表面を意匠面とするための層19が例えば耐候性のあるゴム又は熱可塑性エラストマー等の樹脂で形成され、前記層19は前記側壁部14及び15まで延びて形成されている。意匠面となる前記外側面は、側壁部14の平坦な外側面と直角に近い鋭角で、表面は平坦となっている。前壁部12はまた、内側面が後壁部13に向かって膨らみ、前壁部12の断面が太鼓腹状となっており、各側壁部14、15との接続部分は薄肉となっている。
【0021】
後壁部13は、中央の屈折部13aに芯材21がインサートされ、またく字系を形成する両サイドのうち、側壁部15と対向するサイドの表面には凹凸22が形成され、後述する外壁パネルで側壁部15が押し込まれ、該側壁部15と接触したとき、くっ付いて固着されることがないようにしている。前記凹凸22は後壁部13に形成する代わりに後壁部13と対向する側壁部15の内側面に形成してもよいし、後壁部13と側壁部15の両者に形成して後壁部13を両側より支持するようにしてもよい。
【0022】
本実施形態のガスケット11は以上のように構成され、目地の施工は、次のようにして行われる。
図4及び図5は、1階の外壁パネル25と2階の外壁パネル26間に前記ガスケット11を組込んだ横目地を施工する例を示すもので、下地材27の屋外側に1階の外側パネル25を組付けたのち(外壁パネル25は工場内で下地材27に組付けられてもよいし、建築現場で下地材27に組付けられてもよい)、該外壁パネル25上端の木口にガスケット11の側壁部14を当てて沿わせ、図示しない両面粘着テープ又は接着剤を用いて仮止めする(図4)。
【0023】
次に2階の外壁パネル26を組付ける、組付時には外壁パネル26下端の小口で側壁部15が押し込まれ、この押し込みに伴いく字形の後壁部13も両サイドが閉じる方向に屈折しながら押下げられる。そして突起17に当たり支持される(図5参照)。これにより後壁部13の下側部と側壁部14が一体の固定状態となり、この状態で外壁パネル26により側壁部15が更に押下げられ、後壁部13が更に閉じても、ガスケット11はその構造の一部が固定状態となって、その動きが拘束されるため、前壁部12は後壁部13が突起17で支持されない場合に比べ、側壁部15の押し込みによる撓みによる影響を受けることが少なく、変形したり傾くことが少なくなる。そのため屋外を向く外観面の意匠面を平坦で、かつ外壁パネル25、26の外面と平行に維持し易くなる。経時変化により目地幅が狭まるようなことがあっても、前記外観面を同様に維持することができる。
【0024】
本実施形態のガスケット11は、前述するように目地施工と同時に組込まれ、ガスケット11組付けのための足場を必要としない。またガスケット11は両側壁部14、15にスポンジ16、18が設けられているため、外壁パネル25、26の小口と密着し易くなり、防水性を向上させることができ、また目地組込状態で側壁部15が後壁部13と密着してもくっ付いて固着されにくくなり、経時変化により目地が拡がるようなことがあっても、側壁部15と後壁部13が容易に離脱し、外壁パネル25、26とガスケット11との間の防水性を維持することができる。
【0025】
前記実施形態のガスケット11は、1階と2階の間の横目地を施工する際に組み込まれるが、他の横目地或いは縦目地を施工する際にも同様にして組込むことができ、これにより前述したものと同様の効果を挙げることができる。
【0026】
図6に示すガスケット31は、突起32を外向き(図の上向き)に膨出する側壁部15の内側に一体形成し、凹凸34を後壁部13の両サイドのうち、外側面が平坦ないしほぼ平坦に形成される側壁部14に面するサイドの表面に形成したもので、この凹凸34は側壁部14側に形成してもよいし、後壁部13と側壁部14の両側に形成してもよい。
【0027】
本実施形態のガスケット31も前記実施形態のガスケット11と同様、目地施工時に同時に組込まれ、外壁パネル26を組付けて、該外壁パネル26で側壁部15が押し込まれたときには図7に示すように突起32が後壁部13に当たり、これにより後壁部13の上側のサイドと側壁部15が一体の固定状態となり、ガスケット31は、その構造の一部の動きが拘束されるため、前記実施形態のガスケット11と同様、屋外側意匠面の平坦を維持し傾きを生じにくくする。
【0028】
更に別の実施形態のガスケットでは、突起が図3に示す実施形態の突起17と同様に側壁部14に形成され、かつ前記突起32が側壁部15に図6に示す実施形態と同様に形成される。この実施形態のガスケットでは、目地施工時、両側から後壁部を突起で支持することにより、ガスケット全体の変形がより一層生じにくくなり、外観面の平坦さと傾きをより一層生じにくくすることができる。
【0029】
図8に示すガスケット41は、突起42を側壁部14に形成される代わりにく字形に屈折する後壁部13の両サイドのうち、側壁部14を向く側の一方のサイドに形成したもので(他の構造は図3に示すガスケット11と同一である)、本実施形態のガスケット41においても、図3に示すガスケット11と同様の効果を生ずる。
【0030】
更に別の実施形態では、同様にして図6に示す前記突起32が側壁部15に形成される代わりに後壁部13に形成される。これにより図6に示すガスケットと同様の効果を挙げることができ、更に別の実施形態では、後壁部13の両サイド側に前記と同様にして突起32、42が形成され、後壁部13を支持する。
【符号の説明】
【0031】
11、31、41・・ガスケット
12・・前壁部
13・・後壁部
14、15・・側壁部
16、18・・スポンジ
17、32、42・・突起
19・・表面を意匠面とした層
21・・芯材
22、34・・凹凸
25、26・・外壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地組込時に屋外側となり、屋外を向く、外観面が平坦な前壁部12と、目地組込時に目地底側となり、前記前壁部12に向かって略く字形に突出する後壁部13と、前記前壁部12と後壁部13の両端を連結する側壁部14、15よりなって中空断面をなし、また両側壁部14、15のうち、一方の側壁部14は外側面が平坦ないし、ほぼ平坦で、前記前壁部12の外観面となす角が直角ないし略直角をなす一方、他方の側壁部15は外向きに膨出しており、しかも両側壁部14及び15のうちの少なくとも一方、又は略く字形に屈折する後壁部13の屈折部13aで分けられる2つの両サイドのうち、少なくとも一方のサイドに突起17、32、42が一体形成され、該突起17、32、42はガスケット11、31を目地に組込んだ状態において、後壁部13又は前記両側壁部14、15のうちの一方を支持することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
両側壁部14及び15は外側の少なくとも一部が比重0.5以下のスポンジ16、18で形成されることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記突起17、32、42は両側壁部14、15のうちの一方の側壁部にのみ、又は後壁部13の両サイドのうちの一方のサイドのみ形成され、ガスケット11、31を目地に組込んだ状態で互いに密着する側壁部の接触面と後璧部13の接触面のうち、少なくとも一方の面の接触面には凹凸22、34が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のガスケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−144849(P2012−144849A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1444(P2011−1444)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】