説明

ガスケット

【課題】ハウジングまたはカバー側に溝を設ける必要が無い為、溝にはめ込む手間が要らないばかりでなく、ハウジングとカバーとの間で圧接挟持された状態に於けるシール性が良好で、組み付け工数が少なく、信頼性が高いガスケットを安価に提供できることを目的とするものである。
【解決手段】ハウジングと前記ハウジングを覆うカバー部材との間隙をシールするものであって、前記ハウジングの平面と前記カバー部材の平面との間で圧接挟持される断面略矩形のゴム状弾性材製ガスケットにおいて、前記カバー部材の外周縁部に、前記ハウジングの平面に向かって伸びる環状フランジ部を形成し、前記ガスケットの外周側に前記フランジ部を受け入れる環状のフランジ溝部を形成したものであって、前記フランジ溝部の幅は、前記フランジ部の板厚よりも大きく、前記フランジ溝部の深さは、前記フランジ部の長さよりも大きく設定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関するものであり、更に詳しくは、ハウジングとカバー部材との間隙をシールするガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン用カムカバー、燃料電池、電子機器等のハウジングとカバー間の間隙を密封するために、ゴム状弾性材製のガスケットが使用されている。
【0003】
具体的には、図6に示す様に、ハウジング100とこのハウジング100を覆うカバー部材200との間隙をシールするものであって、ハウジング100の平面110とカバー部材200の平面210との間で断面矩形のゴム状弾性材製ガスケット3を、圧接挟持する態様である。
しかし、被密封流体の圧力が高まると、ガスケット3が、ハウジング100の平面110及びカバー部材200の平面210上を滑って移動し、シール面から脱落する問題を惹起した。
【0004】
その一つの方策が、ハウジングまたはカバーに設けた溝に、単体で成形したガスケットを組み込む方法である(特許文献1)。
【0005】
しかし、この方法は、ハウジングまたはカバーの加工に費用が嵩み、ガスケットをハウジング側に設けた溝にはめ込む手間が掛かるばかりでなく、はめ込んだ後に、ガスケットが溝から抜け落ちる問題を惹起した。
【0006】
この為、カバー側の端部と係合する把持部を設けて、ガスケットが溝から抜け落ちる問題を解消する態様が提案されたが(特許文献2)、十分満足出来るものではなかった。
【0007】
そこで、近年は、ガスケットに金属プレートを一体化して、ガスケットがシール面から脱落する問題を解決する方策が提案されたが、費用が嵩む問題を招来した。
【0008】
また、金属表面にゴム状弾性材層を被覆した部材(ソフトメタル)をガスケットとして使用する態様も試みられたが、ガスケットがシール面から脱落する問題は解決することは出来ても、つぶし代(圧縮変形量)の幅が狭い(少ない)為、昨今のハウジングまたはカバーの樹脂化等に伴い、シール面間の間隙に大きなバラつきが発生する低剛性ハウジングまたはカバーには不向きで有った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−243762号公報
【特許文献2】実開平4−64662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ゴム状弾性材のみからなるガスケットであって、ハウジングまたはカバー側に溝を設ける必要が無い為、溝にはめ込む手間が要らないばかりでなく、ハウジングとカバーとの間で圧接挟持された状態に於けるシール性が良好で、組み付け工数が少なく、信頼性が高いガスケットを安価に提供できることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明にあっては、ハウジングと前記ハウジングを覆うカバー部材との間隙をシールするものであって、前記ハウジングの平面と前記カバー部材の平面との間で圧接挟持される断面略矩形のゴム状弾性材製ガスケットにおいて、前記カバー部材の外周縁部に、前記ハウジングの平面に向かって伸びる環状フランジ部を形成し、前記ガスケットの外周側に前記フランジ部を受け入れる環状のフランジ溝部を形成したものであって、前記フランジ溝部の幅は、前記フランジ部の板厚よりも大きく、前記フランジ溝部の深さは、前記フランジ部の長さよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のガスケットによれば、ハウジングまたはカバー側に溝を設ける必要が無い為、溝にはめ込む手間が要らないばかりでなく、ハウジングとカバーとの間で圧接挟持された状態に於けるシール性が良好で、組み付け工数が少なく、信頼性が高いガスケットを安価に提供出来る。
また、請求項2記載の発明のガスケットによれば、ガスケットのシール面(ハウジング及びカバーと接する面)との接触面積を少なくすることで、接触面におけるガスケットのシール面圧を高める事が出来る為、シール性を高めることが出来る。
【0013】
更に、請求項3記載の発明のガスケットによれば、ガスケットのカバー部材側からの脱落を防止し、組み付け性が良好に成る為、組み付け工数が少なくて済む。
更に、請求項4記載の発明のガスケットによれば、フランジ部をシール溝部に挿入するのが容易であるにも拘らず、フランジ部とシール部との間の良好なシール性能が維持出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】組立前の本発明に係るガスケットとカバー部材とハウジングとの関係を示す分解斜視図。
【図2】図1に示した第1の形態のガスケットの組立後の部分拡大断面図。
【図3】本発明に係る第2の形態のガスケットを図2と同様に示した図。
【図4】図3のガスケットがハウジングとカバー部材との間で圧縮された状態を示す想定断面図。
【図5】本発明に係る第3の形態のガスケットの断面図。
【図6】図5の部分平面図。
【図7】従来技術に係るガスケットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係る第1の形態のガスケットは、図1及び図2に示す様に、ハウジング1とこのハウジング1を覆うカバー部材2との間隙をシールするものであって、ハウジング1の平面11とカバー部材2の平面21との間で圧接挟持される断面略矩形のゴム状弾性材製のガスケット3である。
【0016】
そして、カバー部材2の外周縁部22には、ハウジング1の平面11に向かって伸びる環状フランジ部23が形成され、ガスケット3の外周側には、このフランジ部23を受け入れる環状のフランジ溝部31が形成され、このフランジ溝部31の幅Wは、フランジ部23の板厚Tよりも大きく、フランジ溝部31の深さHは、フランジ部23の長さLよりも大きく設定されている。
【0017】
ついで、本発明に係る第2の形態のガスケットを、図3に基づき説明する。
第1の形態のガスケットと相違する点は、ハウジング1の平面11及びカバー部材2の平面21と接するガスケット3の平面に、逃げ溝32を設けていることである。
この逃げ溝32は、ガスケット3と同心状に2条、ガスケット3の上下両面に形成されており、途中に逃げ溝32を遮るリブが等間隔で複数本設けられている。
【0018】
この逃げ溝32を設ける事により、ハウジング1とカバー2との間におけるガスケット3の変形量を大きく取れるので、シール部35がより大きく内周側(図上左側)に傾けられ、フランジ部23に対する圧接力を高める事が出来る為、ガスケット3のシール性能をより良好に維持出来る。
【0019】
ついで、図3及び図4に基づき、本発明に係る第2の形態のガスケット3が、ハウジング1とカバー部材2との間で圧縮された状態を想定した、本発明に係るガスケット3の挙動につき説明する。
すなわち、ガスケット3のフランジ溝部31により、ガスケット3の本体部34側と分離されている環状のシール部35は、本体部34がハウジング1とカバー部材2との間で圧縮されるのに対し、シール部35の付け根部側端部351がハウジング1の平面11には接しているが、付け根部側端部351と反対側のシール部35の先端部352は、カバー部材2の平面21と接していない事により、ハウジング1とカバー部材2との間で圧縮されるのではなく、フランジ部23の外周面に圧接する様に変形する。
【0020】
具体的には、図4に示す様に、本体部34がハウジング1とカバー部材2との間で圧縮される前の状態に比べ、本体部34がハウジング1とカバー部材2との間で圧縮された後では、シール部35は角度αだけ内周側(シール溝部31側)に傾くように変形する。
この事により、フランジ部23をフランジ溝部31に挿入するのが容易であるにも拘らず、フランジ部23とシール部35との間の良好なシール効果が達成出来る。
【0021】
ついで、本発明に係る第3の形態のガスケットを、図5及び図6に基づき説明する。
第2の形態のガスケットと相違する点は、フランジ溝部31の内周側に複数個の脱落防止用突起33を設けたことである。
この事により、ガスケット3のカバー部材2側からの脱落を防止し、組み付け性が良好に成る為、組み付け工数が少なくて済む。
【0022】
ガスケット3に使用される材料は、ゴム状弾性を備えたゴム材である。
ゴム材としては、ニトリルゴム、アクリルゴム、EPDM、CR、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム等が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられる。
【0023】
カバー部材2に使用される材料としては、金属材、樹脂材等が挙げられ、各種用途に応じて適宜選択して用いられる。
【0024】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係るガスケットは、電子機器の防水、エンジン用カムカバーの防水等に使用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 ハウジング
2 カバー部材
3 ガスケット
11 平面
21 平面
22 外周縁部
23 フランジ部
31 フランジ溝部
32 逃げ溝
33 脱落防止用突起
34 本体部
35 シール部
351付け根部側端部
352先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と前記ハウジング(1)を覆うカバー部材(2)との間隙をシールするものであって、前記ハウジング(1)の平面(11)と前記カバー部材(2)の平面(21)との間で圧接挟持される断面略矩形のゴム状弾性材製ガスケット(3)において、前記カバー部材(2)の外周縁部(22)に、前記ハウジング(1)の平面(11)に向かって伸びる環状フランジ部(23)を形成し、前記ガスケット(3)の外周側に前記フランジ部(23)を受け入れる環状のフランジ溝部(31)を形成したものであって、前記フランジ溝部(31)の幅(W)は、前記フランジ部(23)の板厚(T)よりも大きく、前記フランジ溝部(31)の深さ(H)は、前記フランジ部(23)の長さ(L)よりも大きく設定されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記ハウジング(1)の平面(11)及び前記カバー部材(2)の平面(21)と接する前記ガスケット(3)の平面に逃げ溝(32)を設けたことを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記フランジ溝部(31)の内周側に複数個の脱落防止用突起(33)を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のガスケット。
【請求項4】
前記ガスケット(3)の前記フランジ溝部(31)により、前記ガスケット(3)の本体部(34)側と分離されている環状のシール部(35)は、前記本体部(34)が前記ハウジング(1)と前記カバー部材(2)との間で圧縮されることにより主たるシール性能を発揮すると共に、前記シール部(35)の付け根部側端部(351)が前記ハウジング(1)の平面(11)には接しているが、前記付け根部側端部(351)と反対側の前記シール部(35)の先端部(352)は前記カバー部材(2)の平面(21)と接していない事により、前記ハウジング(1)と前記カバー部材(2)との間で圧縮されるのではなく、前記フランジ部(23)の外周面に圧接する様に変形して、外部からのダストの浸入を効果的に阻止することを特徴とする請求項1〜3いずれか一項に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2547(P2013−2547A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134108(P2011−134108)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】