説明

ガスサンプリング方法及び装置

【課題】ガス種によらない定量のガスのサンプリングを行い、精密なガス組成分析及びガス流量測定を可能とする。
【解決手段】導入ガス切換器1に入口ポート2、3、4から各々a、b、cのサンプリングガスを、入口ポート5から標準ガスを切換供給し、出口6からのガスはポンプ13で吸引する音速ノズル11に導入している。音速ノズルの上流に希釈ガスとトレーサーガスを導入し、圧力計G1とG2で圧力差を計測し、サンプリング点の圧力によるサンプリング量の変化を計測圧力により補正する。ポンプ13から排出されるガスは、ニードルバルブ15を介してガスサンプリングユニットとしての恒温槽16の外に設けたQMS、或いはFTIR等の組成分析・計量装置17に導き、組成の分析及び流量の測定を行う。ニードルバルブ15と組成分析・計量装置17との間には校正用の標準ガスを供給可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池のガス等のガス分析を行うための、ガスサンプリング方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば燃料電池システムにおいては、各部の作動状況、全体の作動効率を把握するためそのシステムの内部を流れる各部のガスについて、それらのガス組成や、ガス流量を正確に測定する必要がある。その測定に際してはガスサンプリング法が広く用いられており、バッジ式のサンプリング方法によりガスクロマトグラフを用いて分析を行っている。
【0003】
燃料電池としては例えば図3に示すような固体電解質燃料電池(SOFC)システムが用いられている。即ち、この燃料電池においては、図中のタンク61の天然ガス、メタノール、石炭ガス等の燃料を改質装置62によって水素を主成分とするガスに改質し、これを固体電解質を備えた燃料電池本体63に供給して、水素と酸素の反応により電気を発生させるものであるが、このような燃料電池を高効率にする研究において、実際にどの程度効率が向上したかを知るためには、特に、改質装置62において改質した後に、燃料電池本体63に対してアノードガスとして供給される、水蒸気を含んだガスの成分、及びその供給量を実時間で正確に知る必要がある。
【0004】
即ち、燃料電池の効率を測定するに際して、改質後の燃料によって作動する燃料電池本体の効率については、供給したガスの燃焼熱(Q)に対する発電電力(W)を求めて、効率(η=W/Q)を計算することとなるが、供給したガスの燃焼熱を求めるには供給しているガスの組成及び供給量を実時間で計測して燃焼熱を演算する必要がある。
【0005】
燃料電池においてその作動特性を知る上では、燃料電池本体63に供給するアノードガスを発生する改質反応器の特性を知る必要があるが、その際にはこの改質反応器62に供給されるガスの組成及び供給量も正確に計測する必要がある。更に、この燃料電池全体の効率を知る上で、システム外に排気されるガスの組成及び排気量も正確に計測する必要もあり、このシステムの各部の特性を知るためには更に各部分に供給され、排気されるガスの組成及び流量を知ることが好ましい。
【0006】
しかしながら、上記のような燃料電池システムで測定するガス中には水を多量に含んでいることが多く、水を凝縮させてから分析を行っている。そのため、水に溶け込んだ成分の分析や燃料電池システムの応答性などを観察する場合などの連続的な分析を行うには不適切である。このことは燃料電池システムにおけるガス分析に限らず、各種のガス分析においても同様である。
【0007】
このように水を含んだガスの分析や連続測定を行う分析手法としては、四重極質量分析(QMS)、フーリエ赤外分光法(FTIR)がある。これら分析装置にガスを導入するサンプリング装置には、燃料電池システム等の各点の分析が行える切換器と、定量のガスをサンプリングできるガスサンプリング装置が必要となる。特に燃料電池システムでのガスのサンプリングを行う場合には、発電に大きく影響を及ぼさない少量のガスのサンプリングであること望ましい。更に、分析装置(QMS)との圧力差を利用し、直接、分析箇所からキャピラリーによる吸引によってガスサンプリングも行われている。ところが、アノードガスには多量の水蒸気が含まれ、改質反応は500℃以上の高温であることから、それらのガスの組成・流量測定は容易ではない。
【0008】
なお、高温下での流量測定にはトレーサーガスを用いるトレーサー希釈法があり、燃料電池の流量測定にも用いられた例がある(特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−5748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
燃料電池開発に際し、開発した燃料電池の発電効率を測定し評価を行うことは、自社内及び他社製品との性能比較を行うために重要であるが、燃料電池の発電効率の測定に際しては、その燃料電池に供給する燃料ガス組成の変動、流量測定の誤差などにより、現状では2桁程度までが限界であり、この程度の精度では燃料電池の発電効率の比較検討は必ずしも充分ではない。特に、燃料電池システムの発電効率を評価するためには改質器と燃料電池本体のエネルギー変換効率を分離して正確に測定する必要がある。
【0010】
燃料電池の各部におけるガス組成、流量測定の精度向上には適切なガスサンプリングを行うことが重要であるが、特に燃料電池システムの各点での分析を行う場合には、分析箇所を切り替え、一定量のガスをサンプリングする必要がある。このような一定量のガスのサンプリング方法としては音速ノズルを用いる方法が、煙道ガスなどの廃ガス組成の分析(JISK0095)排ガス試料採取方法)に広く用いられている。
【0011】
この方法は煙道ガスなどの主成分(N)の組成が大きく変わらないサンプリングガスには適用できるが、自動車排ガスや燃料電池システムの改質後ガスのように高温且つ多量の水分を含み主成分ガス組成が大きく変化する条件の分析は、サンプリングによる測定誤差が大きい難点がある。特に、ガス種の相違により音速が相違し、また、分析箇所の圧力により、ガスサンプリング量が変化してしまう問題もある。また、ガスサンプリングを行うときのその時のサンプル流量を正確に計測できていないという問題もあった。
【0012】
更に、サンプルガスの吸引のために窒素ガスをエジェクション用ガスとして用いることが多いが、その際にはこの窒素ガスでサンプルガスを希釈してしまい、分析装置の感度との関係で誤差が大きくなる等の問題があった。また、キャピラリーによる吸引についても、吸引圧や分析箇所の圧力変動によりサンプリング量が変化し誤差を与える要因となっている。そのため、燃料ガス組成を精密に測定する等によって、燃料電池についての精密な効率測定が求められている。
【0013】
上記のような問題は、前記のような燃料電池システムにおけるガス組成分析やガス流量測定に限らず、各種の分野で行われるガス組成分析やガス流量測定においても同様に生じる。
【0014】
したがって本発明では、精密なガスの組成分析やガス流量測定に際して、ガスサンプリングのために測定系システムに与える影響を少ない状態でガス分析の連続測定ができ、ガス種の相違に影響されない、定量のガスのサンプリングおよびサンプリング流量の測定ができるガスサンプリング装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、音速ノズルでサンプリングするに当たって、主成分ガスの濃度変動による測定誤差を低減するために、別のガスを音速ノズルの前に注入してサンプリングガスを予備希釈してサンプリング誤差を低減すると同時に、トレーサーガスを用いて被測定ガス流量の測定が可能なガスサンプリング方法及び装置としたものである。なお、トレーサーガスを用いる流量測定法は従来の物理的ガス流量測定法では測定困難な条件で使用できる流量測定法として公知であるが、サンプリングガスのサンプリング装置において、サンプリング流量の測定と同時にサンプリングの誤差を低減する方法はこれまで用いられていない。
【0016】
本発明による、より具体的なガスサンプリング方法は、音速ノズルにより調量したサンプリングガスの組成及び流量を測定するガスサンプリング方法において、前記音速ノズルの上流に、サンプリングガスの主成分とは異なる成分からなる希釈ガスとサンプリングガス流量測定用のトレーサーガスを導入し、サンプリングガスの主成分ガス組成が変化してもサンプリング誤差の増加を防止することを特徴とする。
【0017】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、前記希釈ガスと前記トレーサーガスを同一ガスで兼用することを特徴とする。
【0018】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、前記希釈ガス或いはトレーサーガスに窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、6フッ化硫黄(SF6)のガスのいずれかを使用することを特徴とする。
【0019】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、サンプリング装置及び該サンプリング装置へのサンプリングガス供給管路を、水の露点より充分高温に維持する恒温手段内に設置することを特徴とする。
【0020】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、前記音速ノズルにおけるサンプリング点の圧力によるサンプリング量の変化を、前記音速ノズル前後に設けた圧力センサーによる計測圧力により補正することを特徴とする。
【0021】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、前記圧力センサーを前記恒温槽の外部に配置したことを特徴とする。
【0022】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、前記圧力センサーを接続する圧力測定用導管に、圧力測定誤差が生じない程度の定流量の乾燥ガスを流すことを特徴とする。
【0023】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、前記乾燥ガスは、前記トレーサーガスを兼ねることを特徴とする。
【0024】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、 前記サンプリングガスをポンプにより吸引することを特徴とする。
【0025】
また本発明による他のガスサンプリング方法は、前記ガスサンプリング方法において、前記トレーサーガス、希釈ガス、ガス成分分析装置用の校正ガスの少なくともいずれか一つは、供給される気体の質量流量を質量流量計によって計測し、前記質量流量計のデータにより前記気体の流量を測定する他の流量計を実時間校正して精密流量計とし、前記両流量計の流量計測データにより流量供給管のバルブを制御することにより作製、調整されたガスを使用することを特徴とする。
【0026】
また本発明によるガスサンプリング装置は、音速ノズルにより調量されたサンプリングガスの組成及び流量を測定するガスサンプリング装置において、前記音速ノズルの上流に、サンプリングガスの主成分とは異なる成分からなる希釈ガスとサンプリングガス流量測定用のトレーサーガスを導入することを特徴とする。
【0027】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記希釈ガスと前記トレーサーガスが同一ガスであることを特徴とする。
【0028】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記希釈ガス或いはトレーサーガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、6フッ化硫黄(SF6)のガスのいずれかを使用することを特徴とする。
【0029】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、サンプリング装置及び該サンプリング装置へのサンプリングガス供給管路を、水の露点より充分高温に維持する恒温手段内に設置することを特徴とする。
【0030】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記音速ノズルの前後に圧力センサーを設け、前記音速ノズルのサンプリング点の圧力によるサンプリング量の変化を、前記圧力センサーによる計測圧力により補正することを特徴とする。
【0031】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記圧力センサーを前記恒温槽の外部に配置したことを特徴とする。
【0032】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記圧力センサーを接続する圧力測定用導管に、圧力測定誤差が生じない程度の定流量の乾燥ガスを流すことを特徴とする。
【0033】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記乾燥ガスは、前記トレーサーガスを兼ねることを特徴とする。
【0034】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記サンプルガスを吸引するポンプを設けたことを特徴とする。
【0035】
また本発明による他のガスサンプリング装置は、前記ガスサンプリング装置において、前記トレーサーガス、希釈ガス、ガス成分分析装置用の校正ガスの少なくともいずれか一つは、供給される気体の質量流量を計測する質量流量計と、前記気体の流量を計測する他の流量計と、前記質量流量計のデータにより前記他の流量計を実時間校正して精密流量計とする手段と、前記両流量計の流量計測データにより流量供給管のバルブを制御する制御手段とを備えた精密流量測定装置により作製、調整されたガスを使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
ガスサンプリングのために測定系システムに与える影響が少なく分析の連続測定ができ、ガス種によらない定量のガスのサンプリングおよびサンプリング流量の測定ができるため、燃料ガス組成の変動、流量測定の誤差を少なくすることができ、特に燃料電池の精密な発電効率を求めることができる。
【0037】
また、本発明によるガスサンプリング装置により、燃料電池の効率測定だけではなく、1.改質条件の検討、2.ガスリーク、クロスオーバーの測定、3.効率測定とも関連するガス利用率の測定、4.出力、温度変動条件でのダイナミック測定、試験装置の動特性解析等にも応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
ガスサンプリングのために測定系システムに与える影響が少なく分析の連続測定ができ、ガス種によらない定量のガスのサンプリングおよびサンプリング流量の測定をおこなうため、本発明によるガスサンプリング方法は、音速ノズルにより調量したサンプリングガスの組成及び流量を測定するガスサンプリング方法において、前記音速ノズルの上流に、サンプリングガスの主成分とは異なる成分からなる希釈ガスとサンプリングガス流量測定用のトレーサーガスを導入し、サンプリングガスの主成分ガス組成が変化してもサンプリング誤差の増加を防止する。また本発明によるガスサンプリング装置は、音速ノズルにより調量されたサンプリングガスの組成及び流量を測定するガスサンプリング装置において、前記音速ノズルの上流に、サンプリングガスの主成分とは異なる成分からなる希釈ガスとサンプリングガス流量測定用のトレーサーガスを導入する。
【実施例1】
【0039】
本発明の基本的な実施例を図1に基づいて説明する。図1(a)に示すサンプリング装置においては、導入ガス切換器1に入口ポート2、3、4から各々(a)、(b)、(c)のサンプルガスを導入できるようにしており、また図示実施例においては入口ポート5から標準ガス供給装置10からの特定の成分からなる標準ガスを供給するようにし、これらの入口ポートの内、任意のポートと出口ポート6とを接続することにより、任意のガスを出口6から選択して供給できるようにしている。
【0040】
出口6からのガスは管路7からフィルタ8を通り、管路9から音速ノズル11に導入している。音速ノズル11の下流には管路12によりポンプ13を接続し、ポンプ13の吸引力によって音速ノズル11で音速流を発生させ、一定流量を維持している。図1(a)に示す実施例においては、フィルタ8の上流に標準ガス供給装置10から希釈ガスを導入し、比較的空間の大きなフィルタで充分拡散することができるようにしている。また、フィルタ8の下流には標準ガス供給装置10からトレーサーガスを導入し、このトレーサーガスの供給圧力を圧力計G1により計測し、音速ノズル11の下流部分の圧力を圧力計G2で計測することにより音速ノズル11の出入り口部分の圧力差を測定している。更に図示の例においては、ポンプの吐出圧を圧力計G3で測定し、装置の動作状態を確認している。
【0041】
ポンプ13から排出されるガスは、管路14に設けた流量を調節し且つ管路14を閉鎖可能なニードルバルブ15を介して恒温槽16の外に設けたQMS(Quadrupole Mass Spectrometer:4重極形質量分析計)、或いはFTIR(Fourier Transform Infra-Red Spectrometer:フーリエ変換赤外分光計)の組成分析・計量装置17に導き、組成の分析及び流量の測定を行う。ニードルバルブ15と組成分析・計量装置17との間には標準ガス供給装置10から標準ガスを供給可能とし、ニードルバルブ15の閉鎖状態でここに標準ガスを供給し、QMS或いはFTIR等の組成分析・計量装置17の校正を行うことができるようにしている。
【0042】
上記のように音速ノズル11を用いてサンプリングを行うに際して、音速ノズル11の手前に標準ガス供給装置10から一定量のトレーサーガスを供給することができるようにしており、それによりこのトレーサーガスの濃度を分析することによってサンプルガス量を測定することができる。
【0043】
このようにサンプリングガス量を測定できることによってガス組成流量を測定することができるが、ガス種によって音速ノズル11を通過するガス量が変化する。ここでは一定量のガスをサンプリングしたほうが、精度の向上と測定系に影響を与えないですむため、音速ノズル11の手前で希釈窒素を導入する。希釈されたサンプルガスの音速は窒素に近づき、ノズルを通過するガス量は安定した量となる。希釈ガス量は測定ガスにもよるが、サンプルガスの10倍以上導入することが好ましい。
【0044】
このようなサンプリング装置に導入されるトレーサーガス、希釈ガス、校正ガス等のガスは、高精度で調整された流量調節器で調整されたガスを使用することが好ましく、例えば図2に示すような本発明者等が提案している(特願2003−367189号)精密流量測定手法を用いることにより、より高精度のガス分析、及び流量測定、更には校正を行うことができる。
【0045】
即ち、図2に示す精密流量測定手法においては、ガスボンベ42の全重量を計測する秤46を備えており、その重量を演算装置45に入力し、所定時間間隔で重量変化を求め、ガスボンベ42からガスが消費された量としてのガス質量流量を求めて比較器47に入力している。秤46によってガスボンベ全体の重量を測定することは、近年の電子天秤等の技術進歩により極めて高精度で測定することが可能となっており、ボンベ内のガスの消費による重量変化は精度0.1%程度で精密に測定することが可能であり、更に気圧変化による浮力補正を行うことで0.01%オーダーも可能となる。したがって所定時間間隔で重量変化を求めて統計処理を行うと、正確なガス流量を求めることができ、二次標準の流量計として用いることが可能である。
【0046】
流量計44はその周囲が正確に温度コントロールされており、ある程度正確な流量を検出することができるが、この流量計4は市販の一般的な流量計であるため、このシステムで作動させる前においては通常の誤差を含んでいる。したがってこの流量計44からの流量計測データは演算装置45内の比較器47で比較を行うことにより、前記二次標準としての秤46からの流量計測データと統計処理を行うことによって校正することができる。図2においてはこれを演算装置45内の流量計校正データ50として示している。
【0047】
また、このような流量計校正データ50はそれ以降に流量計44から入力されるデータに対する校正データとして利用することができるので、流量計44のデータを正確なデータの一つとして利用することができ、秤46からの質量流量の計測データと共に統計処理を行うことにより極めて正確な流量データを得ることができる。また、その流量データに基づいてバルブ48を操作することにより、正確な流量のガスを供給することができる。したがって、前記流量計44と、秤46と、それらの計測データによって操作されるバルブ48及びこれらのデータを処理しバルブを制御する演算装置45は、全体として極めて精密な流量制御を行う精密流量制御装置51となる。
【0048】
上記のような装置は、単なる質量法方式から精密流量制御装置51に置き換えることによって、流量の測定のみならず実時間における質量流量制御ができるため、流量測定と流量制御の両方が可能になるばかりでなく、質量法からの値による流量計の実時間校正を行うこともできるようになる。本発明においてはこのような精密流量制御装置51を標準ガス供給装置10として用いることにより、高精度のガス分析や流量測定等が可能となる。
【0049】
一方、図1(a)に示す実施例においては、測定系の分析箇所により圧力が異なり、このためにサンプリングガス量に影響を与えることになる。たとえば、燃料電池の場合、燃料供給口や、改質器出口では圧力が高いが、反応後の排気口はほぼ大気圧である。このため、サンプリング装置内に第1圧力計G1と第2圧力計G2を取り付け、圧力による補正が行えるようにしている。
【0050】
図1(a)に示す実施例においては、高温での使用に耐えうる精密圧力計が得にくいことを考慮し、第1圧力計G1は恒温槽16外に配置している。それに対して図1(b)に示した実施例においては、第2圧力計G2も恒温槽16外に配置した例を示しており、この例においては同図に示すように第2圧力計に対して、圧力測定用導管に圧力測定誤差が生じない、且つポンプの吸引圧力に影響のない程度の定流量の乾燥ガスを標準ガス供給装置10から流して、水の凝縮を防止して圧力を測定することができるようにしている。この点については第1圧力計G1についても同様に作用させることができる。この乾燥ガスは吸入ガス量を求めるための二次トレーサーガスを兼ねることができる。
【0051】
ガスの吸引は窒素ガスによるエジェクションによって行われることが多いが、サンプリングガスがこの窒素により希釈され、分析装置の感度にもよるが検出限界に近づき誤差を多く含むようになる。このため、サンプリングガスの吸引にはサンプリングガス濃度を薄めないポンプ13を使用する。このポンプ13は水を凝縮させないため、200℃で使用可能な耐熱ポンプを使用することが好ましい。
【0052】
トレーサーガスはサンプルガスと異なるもので、分析に影響を与えないガスを用いる必要があり、主に希ガスを用いる。サンプリング装置内に導入するトレーサーガスは測定系の流量測定に使用するトレーサーガスと異なるものを使用する。また、水を含む系の測定であるため、サンプリング装置は水を凝縮させない一定温度に調整された恒温槽16内に設置されている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は前記実施例に示したような燃料電池システムに適用する以外に、更に、改質条件の検討、ガスリーク、クロスオーバーの測定、ガス利用率の測定、出力、温度変動条件でのダイナミック測定、試験装置の動特性解析等の、広範囲の分野において精密なガス組成分析及びガス流量の測定を行うガスサンプリング手法として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のガスサンプリング装置の概要図であり、(a)はその全体概要を示し、(b)は他の実施例の一部を示す概要図である。
【図2】先に提案している精密ガス流量測定装置の概要図である。
【図3】固体電解質燃料電池システムの基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 導入ガス切換器
2、3、4、5 入口ポート
6 出口ポート
7 管路
8 フィルタ
10 標準ガス供給装置
11 音速ノズル
12 管路
13 ポンプ
14 管路
15 ニードルバルブ
16 恒温槽
17 組成分析・計量装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音速ノズルにより調量したサンプリングガスの組成及び流量を測定するガスサンプリング方法において、
前記音速ノズルの上流に、サンプリングガスの主成分とは異なる成分からなる希釈ガスとサンプリングガス流量測定用のトレーサーガスを導入し、サンプリングガスの主成分ガス組成が変化してもサンプリング誤差の増加を防止することを特徴とするガスサンプリング方法。
【請求項2】
前記希釈ガスと前記トレーサーガスを同一ガスで兼用することを特徴とする請求項1記載のガスサンプリング方法。
【請求項3】
前記希釈ガス或いはトレーサーガスに窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、6フッ化硫黄(SF6)のガスのいずれかを使用することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のガスサンプリング方法。
【請求項4】
サンプリング装置及び該サンプリング装置へのサンプリングガス供給管路を、水の露点より充分高温に維持する恒温手段内に設置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のサンプリング方法。
【請求項5】
前記音速ノズルにおけるサンプリング点の圧力によるサンプリング量の変化を、前記音速ノズル前後に設けた圧力センサーによる計測圧力により補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のガスサンプリング方法。
【請求項6】
前記圧力センサーを前記恒温手段の外部に配置したことを特徴とする請求項4及び5に記載のガスサンプリング方法。
【請求項7】
前記圧力センサーを接続する圧力測定用導管に、圧力測定誤差が生じない程度の定流量の乾燥ガスを流すことを特徴とする請求項6記載のガスサンプリング方法。
【請求項8】
前記乾燥ガスは、前記トレーサーガスを兼ねることを特徴とする請求項7記載のガスサンプリング方法。
【請求項9】
前記サンプリングガスをポンプにより吸引することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載のサンプリング方法。
【請求項10】
前記トレーサーガス、希釈ガス、ガス成分分析装置用の校正ガスの少なくともいずれか一つは、供給される気体の質量流量を質量流量計によって計測し、前記質量流量計のデータにより前記気体の流量を測定する他の流量計を実時間校正して精密流量計とし、前記両流量計の流量計測データにより流量供給管のバルブを制御することにより作製、調整されたガスを使用することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載のガスサンプリング方法。
【請求項11】
音速ノズルにより調量されたサンプリングガスの組成及び流量を測定するガスサンプリング装置において、
前記音速ノズルの上流に、サンプリングガスの主成分とは異なる成分からなる希釈ガスとサンプリングガス流量測定用のトレーサーガスを導入することを特徴とするガスサンプリング装置。
【請求項12】
前記希釈ガスと前記トレーサーガスが同一ガスであることを特徴とする請求項11記載のガスサンプリング装置。
【請求項13】
前記希釈ガス或いはトレーサーガスとして窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、6フッ化硫黄(SF6)のガスのいずれかを使用することを特徴とする請求項11又は請求項12記載のガスサンプリング装置。
【請求項14】
サンプリング装置及び該サンプリング装置へのサンプリングガス供給管路を、水の露点より充分高温に維持する恒温手段内に設置することを特徴とする請求項11〜13のいずれか一つに記載のサンプリング装置。
【請求項15】
前記音速ノズルの前後に圧力センサーを設け、前記音速ノズルのサンプリング点の圧力によるサンプリング量の変化を、前記圧力センサーによる計測圧力により補正することを特徴とする請求項11〜14のいずれか一つに記載のガスサンプリング装置。
【請求項16】
前記圧力センサーを前記恒温手段の外部に配置したことを特徴とする請求項14及び15に記載のガスサンプリング装置。
【請求項17】
前記圧力センサーを接続する圧力測定用導管に、圧力測定誤差が生じない程度の定流量の乾燥ガスを流すことを特徴とする請求項16記載のガスサンプリング装置。
【請求項18】
前記乾燥ガスは、前記トレーサーガスを兼ねることを特徴とする請求項17記載のガスサンプリング装置。
【請求項19】
前記サンプルガスを吸引するポンプを設けたことを特徴とする請求項11〜18のいずれか一つに記載のサンプリング装置。
【請求項20】
前記トレーサーガス、希釈ガス、ガス成分分析装置用の校正ガスの少なくともいずれか一つは、供給される気体の質量流量を計測する質量流量計と、前記気体の流量を計測する他の流量計と、前記質量流量計のデータにより前記他の流量計を実時間校正して精密流量計とする手段と、前記両流量計の流量計測データにより流量供給管のバルブを制御する制御手段とを備えた精密流量測定装置により作製、調整されたガスを使用することを特徴とする請求項11〜19のいずれか一つに記載のガスサンプリング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−145341(P2006−145341A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334647(P2004−334647)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、経済産業省、次世代型分散エネルギーシステム基盤技術研究開発、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】