説明

ガスサンプル中の特定の分子量を有する物質の総積算濃度を測定するためのイオンゲージ、モニタシステムおよび方法。

本発明は、ガスサンプル中の特定の分子量を有する物質の総積算濃度を測定するためのイオンゲージ10に関し、イオンゲージ10は、イオン化源1の近傍のイオン化領域と、イオン化された分子の流れIを生成する加速器2,3,4と、流れを中断して前記範囲に入る分子量を有するイオンをイオン化された分子から分離する質量フィルタ8と、ガスサンプル中に存在するそのようなイオンの総積算濃度を表す信号を生成する検出器7とを備える。本発明はさらにリソグラフィ装置とガスサンプル中の所定範囲内に入る分子量を有する物質の総積算濃度を測定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスサンプル中の特定の分子量または分子量範囲を有する物質の総積算濃度を測定するためのイオンゲージに関する。特に、本発明はガスサンプル中の高分子量を有する物質または物質群の総積算濃度を測定するためのイオンゲージに関する。
【0002】
本発明はさらに、ガスサンプル中の特定の分子量を有する物質または物質群の総積算濃度を監視するためのモニタシステムに関する。
【0003】
本発明はさらに、ガスサンプル中の特定の分子量を有する物質または物質群の総積算濃度を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ガス状サンプル中の物質の存在を判定するためのセンサの一例が米国特許第5,281,915号公報明細書から公知である。この公知のセンサは、流入するガス流を分析して高分子量を有する物質の存在、例えば約100以上の分子量を有する物質の存在を判定するように構成されている。このために、この公知のセンサは、イオン化されたガス分子を生成するように構成されたイオン化領域を配設され、このイオン化領域は大気圧になるように調整されたチャンバ内に放射線源を配置し、このチャンバがさらなる領域と協働して、このさらなる領域内でイオン化された酸素分子および窒素分子が二次的イオン化を受けるようにしている。このさらなる領域は、同領域に電位差を誘起するための電極を設けるように適合されており、重イオンがコレクタ電極に向かって浮揚し、コレクタ電極においてこれらのイオンが再結合して流入ガス中の高分子量コンタミネーションのレベルを表す電気信号を生成することが可能である。高分子量コンタミネーションの十分な検出感度を保証するために、この公知のセンサは流入ガスを所定の温度に加熱するためのヒータを備える。
【0005】
上記公知センサの欠点は2段階のガスイオン化が用いられており、それにより放射線源が軽量分子の一次イオン化を引き起こすのに使用されることである。さらに、上記公知センサは、外部電場をかけることにより引き起こされるイオンドリフトに付随するその設計上の特徴により、大気圧下でのみ動作可能である。これらの動作条件ではセンサ内のイオンの再結合速度が許容し得ないものになることがあり、その精度に影響する。次に、感度のよい測定を行なうために、流入ガスを加熱する必要があり、これによりそのようなセンサの応用分野が制限されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ガスサンプル中の特定の分子量を有する物質の総積算濃度を測定するためのセンサであって、堅牢であり、デザインが単純であり、操作性が改善されているものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明によるイオンゲージは、
−ガスサンプルのイオン化された分子を生成するためのイオン化領域と、
−前記イオン化された分子の流れを生成するための加速器と、
−前記流れを中断して、所定の範囲内の特定の分子量を有するイオンを前記イオン化された分子から分離するための質量フィルタと、
−前記ガスサンプル中に存在する前記特定の分子量を有する物質イオンの総積算濃度を表す信号を生成するための検出器と、を備える。
【0008】
本発明は、質量フィルタを用いてガスサンプル中に存在する分子種(species)の分子質量の範囲同士を識別することにより、特定の所定の分子量を有する分子種の総量を直ちに測定することができるという識見に基づいている。質量フィルタは不所望の分子量を有する、例えば所定の閾値より低い分子量を有する分子種のフィルタリングのために使用されていることが了解されるであろう。そうすることにより、イオンゲージの感度を実質的に向上することができる。そのような感度の向上は特異性の喪失を代償としている。特定の分子量の基準を満たす異なる分子種は区別できないからである。しかしながら、目的がガスサンプル中の高分子量の単なる存在または単なる濃度を検知することである場合には、そのような区別は不必要である。
【0009】
そのような目的は環境、医療または産業面の応用にその起源を見出すことができる。とくに、非常に短波長で動作するリソグラフィ装置または半導体製造設備用には、装置の雰囲気が実質的に重い炭化水素化合物または重いフッ化物化合物を実質的に含まないことが要請される。検討を続けた結果、リソグラフィ装置内のこれらの分子種の望ましい分圧は従来の測定手段では測定できないほど低いことが分かった。注意すべきことに、技術水準のリソグラフィ装置の動作圧力は数Pa程度であり、この圧力は高分子量の分子種の分圧を測定するためのもっとも一般的な手段にとって高過ぎる。
【0010】
本発明によるイオンゲージはリソグラフィ機械の動作条件に適合しているが、これは本発明によるイオンゲージが数Paの圧力で動作することが可能であり、かつ込み入った制御を必要としないからである。もっとも簡単な実施の形態では、本発明によるイオンゲージは質量フィルタ後に測定されたイオン電流が許容値を超えるとトリガ信号を発する。あるいはまた、本発明によるイオンゲージはモニタシステム内に配置してコンタミネーションのレベルの測定結果を記録するようにし、かつコンタミネーションのレベルが許容し得るものであるときは許可信号を発するように構成されていてもよい。
【0011】
本発明によるイオンゲージの一実施の形態では、イオン化領域は、電子発生器、光子発生器、またはガスサンプルの分子をイオン化するためのプラズマ源のうちのいずれかを備える。
【0012】
例えば、それ自体公知の開放または密閉イオン源が電子衝突電離により実現可能である。そのようなイオン源を真空チャンバ内に配置してイオン源のフィラメントの耐用年限を伸ばすようにするのが好ましい。単一ステージイオン化スキームを用いてガス分子をイオン化するのが有利であることが分かったが、これはガスサンプルの重い分子のイオン化率を制御することができるからである。あるいはまた、多光子イオン化を用いることができるが、この場合は電子衝突源に関する熱発生が少ないという利点がある。最後に、それ自体公知のプラズマ源を用いてガス分子をイオン化することもできる。この場合の利点は、そのようなイオン源はイオン化度が高く、かつ比較的に堅牢であることである。
【0013】
好ましくは、質量フィルタは磁場発生器を備え、この磁場発生器はイオン化された分子の流動方向を横断する方向に磁場を発生して特定の分子量を有するイオンを抽出するように構成されている。
【0014】
磁場発生器の実施の形態がいくつか検討されている。第一に、四重極質量分析機(QMS)を用いることが可能である。四重極質量分析機の利点は、増加した質量を有する分子種に対する検出限界が1E−12mbar程度の分圧であることである。このQMSは、加速後のイオンの流動方向に実質的に垂直な方向に静電場を発生するように構成されていてもよい。このQMSでは、静電場の作用により、イオンが振動する結果、特定の分子量と電荷を有するイオンだけが適切なフィルタ設定を通過することができる。フィルタを通過したイオンは例えばファラデーカップにより捕捉され、得られた電流はガスサンプルの高分子量分子種によるコンタミネーションのレベルを表す。ガスサンプル中の分子種の質量スペクトルを得るために、フィルタのパラメータを変更して異なる質量を有するイオンをサンプリングすることができる。
【0015】
第二に、扇形磁場型質量分析機(magnetic sector analyzer)を用いることができる。扇形磁場型質量分析機は、イオンの質量が異なると外部磁場の影響下では異なって偏向されるという原理を利用している。偏向軌跡の半径は外部磁場強度、質量およびイオンの電荷により決まる。この原理に従うと、本発明のイオンゲージでは、軽いイオンは検出器から離れて偏向させることができ、重いイオンは検出器内に導かれる。換言すると、この方法で、低質量カットオフフィルタを実現することができる。本発明によるイオンゲージは微量元素の存在を検知することができると考えられるので、上述のカットオフレベルを超える分子量を有するイオンの実質的にすべてがそれぞれ検出されることが有利である。この特徴はQMS様センサに関するそのようなイオンゲージの感度を改善する。あるいはまた、所定の範囲の質量を有するイオンが検出器に到達するように外部磁場を設定することが可能である。
【0016】
イオンが加速後質量フィルタ(mass filter post acceleration)に到達すると、イオンは質量分離を受ける。例えば、サンプルが空気のときは、水素、酸素および窒素の軽いイオンは磁場内でもっとも強く曲げられ、そして導管に導かれ、この導管を通ってイオンゲージから除去することができるので有利である。特に、リソグラフィ装置のガス組成は水素、ヘリウム、窒素およびアルゴンのような軽い元素からなるので、導管は水素などの軽いイオンを受領しこれらのイオンを排出し、それによりイオンゲージ内の圧力を低下させるように構成されている。これにより、質量フィルタ内に残余イオンの、実質的に分子状態の流が生じる。この分子流の利点は、イオン同士の衝突が実質的に無く、適切な電荷捕捉器を終点とする、実質的に妨げられることのないイオン軌跡となることである。
【0017】
最大偏向角180°が水素分子について到達可能である。4と13の間の原子質量単位の質量を持つイオンを受けるためのさらなる導管を設けることが可能であり、このさらなる導管は、好ましくは分子とイオンをこの導管から抽出し、イオンゲージの雰囲気をさらに軽減するポンプを設けられていてもよい。最後に、電荷捕捉装置内を終点とする重い分子のためのセクタを設けてもよい。イオンの偏向半径は次式により与えられる。
【0018】
【数1】

【0019】
上式中、Rは偏向半径(m)であり、
Bは磁場の強さ(T)であり、
mはイオン質量(amu)であり、
Vは加速の加速電圧であり、
qはイオン電荷である。
【0020】
好ましくは、本発明によるイオンゲージでは、ファラデーカップまたは二次電子増倍管を検出器として使用してもよい。ファラデーカップはもっとも単純な構成のイオン検出器であり、ファラデーカップではイオンは標的板上で電流として捕捉される。このような検出器の感度は約1E−13mbarであり、この感度は適切な増幅装置が利用できるか否かによって制限されることがある。二次電子増倍管では、あらゆるイオンはファラデーカップの標的板上で終わる電子雪崩に変換される。二次電子装置の増幅定数は約1000であり、低圧については、増幅定数は約10,000である。例えば、リソグラフィ装置における高分子量の痕跡元素を検出するためには、二次電子増倍管を用いることが有利であるが、これは実質的にすべてのイオンが個々の電気パルスに変換されるからである。好ましくは、二次電子増倍管は追加の増幅装置を設けられ、それによりイオンゲージのダイナミックレンジが向上し、かつ実質的にイオンゲージの感度が改善される。
【0021】
本発明によるモニタシステムは上述の実施の形態のいずれか一つによるイオンゲージを備える。
【0022】
ガスサンプル中の、所定の分子量範囲内に入る分子量を有する物質の総積算濃度を測定する方法は、
−ガスサンプル中のガス分子をイオン化する工程と、
−前記ガスサンプルのイオン化された分子を加速してイオン化された分子の流れを生成する工程と、
−前記所定の範囲内に入る分子量を有するイオンを前記流れから抽出(filter)する工程と、
−前記ガスサンプル中に存在する前記特定分子量を有する物質イオンの総積算濃度を表す信号を生成する工程と、を備える。
【0023】
本発明による方法は、好ましくは、さらに、
−前記ガスサンプル中の前記特定の分子量を有するイオンの前記総積算濃度を監視する工程と、
−前記レベルが許容レベルを超えるとトリガ信号を生成する工程と、を備える。
【0024】
本発明の上記および他の態様が図面を参照してさらに説明される。図面は説明のためにだけ示されるものであり添付の特許請求の範囲によって制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によるイオンゲージの一実施の形態の概略図である。
【図2】本発明によるモニタシステムの一実施の形態の概略図である。
【図3】本発明によるリソグラフィ装置の一実施の形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明によるイオンゲージの一実施の形態の概略図である。本発明によるイオンゲージ10は、例えばセクタ質量分析器として実装された磁気質量フィルタMを備えていてもよい。磁気質量分析器はガスサンプル中のガス分子のイオン化を引き起こすように構成されたイオン源1と協働するように構成されていてもよい。このために、ガスサンプルはイオン源1が適合されている領域内の流れとして提供されてもよい。あるいはまた、イオン源は周囲ガスをイオン化するように構成されてもよく、このようにすると本発明によるイオンゲージ10がリソグラフィ装置の雰囲気内に設けられる。
【0027】
イオン源1は一段階イオン化工程、例えば本発明による電子衝突イオン化を用いガス分子をイオン化するように考えられた、開いたまたは閉じた電子源として実装することができる。あるいはまた、イオン化源1は光子吸収によるガスイオン化を引き起こす光子源を備えていてもよい。さらにまた、イオン化源1は二次的工程によりガス分子をイオン化するプラズマ源を備えていてもよい。
【0028】
ガス分子がイオン化された後、イオン化されたガス分子は適切な加速器を用いて加速される。加速器は、抽出レンズ2、合焦レンズ3および加速レンズ4のような、適切なシーケンスの電子光学装置として実装することができる。得られた加速されたイオンのビームIは、次いで横断磁場Bにかけられ、磁場B内の異なる重量のイオンが辿る異なる偏向軌跡t1,t2、...、tnにより軽いイオン、中位のイオン、重いイオンへと質量分化が起きる。軽量のイオンは最も強く偏向され適切な出口ポンプ9により捕捉することができる。イオンゲージ10がリソグラフィ装置の軽いガスが優勢な雰囲気中に配置されている場合は、ポンプ9は主として軽い原子を排出し、それによりイオンゲージ内の真空度を改善することとなり、有利である。
【0029】
重いイオンは磁場B中でそれほど偏向せず、質量カットオフフィルタ8の専用セクタ6において捕捉することができる。質量カットオフフィルタ8は所定の質量範囲内のイオンを捕捉するように構成されている。この場合、セクタ6は所定の特定分子量の範囲に対応するさまざまな検出チャンネルを設けられていてもよい。セクタ6内のチャンネルは予め分子量について較正されている。この場合、検出チャンネルの個々のカウントはガスサンプル中の分子コンタミネーションのそれぞれの積算濃度に容易に転換することが可能である。イオンゲージ10は多チャンネル電子増倍管5を備えていてもよく、多チャンネル電子増倍管5は適切なプレートとして実現されていてもよい。検出器、例えばファラデーカップ7が多チャンネル電子増倍管5を越えて配置され、重いイオンを捕捉し、サンプリングされたガス中に存在する重いイオンの量を表す、対応する電気信号を提供するようにしてもよい。イオンゲージ10の電気回路は、信号対ノイズ比を改善する適切な増幅器11を備えているのが有利であろう。
【0030】
本発明によるイオンゲージ10の感度はガス分子のイオン化速度、フィルタ8の透過率、検出器7の感度によって決定することができる。説明のために、本発明によるイオンゲージと同じ感度を持つQMSを採ると、本発明によるイオンゲージの透過率は、すべての関連するイオン化された分子がフィルタを同時に通過することにより、約100倍高い。最終的には、検出器7は電流モードではなくイオンカウントモードで操作されることが可能である。本発明によるイオンゲージの暗電流を低減するために、以下の対策、すなわちイオンゲージ内部の圧力の低下、電子機器の冷却、多段ポンピングおよび質量分離を採用することができる。その結果、約1E−17mbarの暗電流を達成することができる。
【0031】
図2は本発明によるモニタシステムの一実施の形態の概略図である。本発明によるモニタシステム20は図1を参照して説明された原理に従って構成することができるイオンゲージ21を備える。イオンゲージ21は、好ましくは電気信号Sを提供するように構成され、この電気信号Sは、イオンゲージ21により分析されたガスサンプル中の重量の重い分子種の量を表す。ガスサンプルという用語は調査している雰囲気から抽出されたサンプルをいうか、または、その代わりにイオンゲージの周囲をいうことがある。後者は、特に、イオンゲージ21が環境研究用に構成されている場合、または閉じた雰囲気内部、例えばリソグラフィ装置内部に配置されている場合に該当する。
【0032】
本発明によるモニタシステムは、さらに、信号Sを分析するように構成された制御部23を備える。制御部23は適切な方法で信号値Vの読み取り値を記録する、例えばコンピュータのメモリ27にファイルを作成するように構成されていてもよい。その代わりに、またはそれに加えて、制御部23は信号Sの電流値を所定の閾値と比較して、警告のためにアラーム手段25へのトリガ信号Tを生成するように構成されていてもよい。特に、このモニタシステムがリソグラフィ装置に配置されている場合は、トリガ信号は、適宜にポンプ手段を制御するように、または放射線源を制御するように、リソグラフィ装置の操作条件を制御するのにも使用することができる。
【0033】
図3は本発明によるリソグラフィ装置の一実施の形態の概略図である。リソグラフィ装置30は、当技術において公知のように、基体上に、通常基体の標的部分上に、所望のパターンを適用するのに使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(ICs)の整合に使用することができる。その場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれる、パターニング装置を用いてICの個々の層上に形成される回路パターンを生成することができる。このパターンは基体(例えば、シリコンウエハ)上の標的部分(例えば、1つまたは複数のダイスからなる)に転写することができる。このパターンの転写は一般的には、基体上に設けられた放射線感受性材料(レジスト)の層上にイメージングすることにより行なわれる。
【0034】
リソグラフィ装置30は、基体36を後にパターニングするのに用いられる適切な放射線のビームを生成するように構成されたソース32を備えていてもよい。好ましくは、ソース32は波長が5nmと20nmの間の極紫外光を発生するように構成されている。発生された放射線ビームは次いで照明システム33で状態調節される。照明システム33は適切な複数個の光学要素33aを備える。放射線ビームが状態調節された後、放射線ビームはマスク34を用いてパターニングされる。マスク34は反射性または透過性のいずれのものでもよい。パターン化された放射線ビームは投影システム35に入射する。投影システム35はさらなる複数個の光学要素35aを備え、状態調節された放射線ビームの焦点をウエハ36上に合わせる。ウエハはモータを用いてまたは無接触で変位可能に配置することができる。
【0035】
リソグラフィ装置の雰囲気は水素、ヘリウム、窒素およびアルゴンを含んでいてもよい。当技術において認識されているように、重い炭化水素化合物または重いフッ化物化合物のような重い分子は、軽い分子種を含む雰囲気中の不純物(contaminant)であるが、リソグラフィ装置の操作特性を実質的に悪化させる。本発明によるリソグラフィ装置では、イオンゲージ37または38を雰囲気の純度の特異的制御を可能にすべき領域に配置することができる。第1に、そのような領域は放射線源32の近傍の領域に対応していてもよい。その代わりに、またはそれに加えて、そのような領域は投影システムの近傍の領域に関連していてもよい。これは投影システム35の光学要素35aのレンズ上に沈殿する不純物組成物がウエハ36のパターニング品質を実質的に劣化させることがあるからである。理解されるように、適切な複数個のイオンゲージをリソグラフィ装置内の複数の所望の制御領域に配置することができる。あるいはまた、重い分子種を検出するためのイオンゲージがリソグラフィ装置のケーシング31の外部に配置され、サンプルガスが適切なガス導管(図示しない)を用いてイオンゲージに導かれるようにすることが可能である。
【0036】
リソグラフィ装置31はさらに図2を参照して説明したモニタシステムを備えていてもよい。このように、イオンゲージ37、38は制御部39に接続することができる。この制御部39は、リソグラフィ装置の雰囲気中の適宜の種、例えば重い分子量を有する種の総積算濃度が許容限界を超えた場合にトリガ信号(図示しない)を発するように適合されているか、および/またはリソグラフィ装置の特定の領域における雰囲気を制御するように構成された適切な機能部37a、38aに制御信号S1、S2を発するように適合されていてもよい。そのような機能部の実施の形態はポンプ、電気制御器または同様のものである。
【0037】
上述のように特定の実施の形態が説明されたが、本発明は上述とは異なるように実施することもできる。上述の説明は説明のためのものであり、本発明を制限するものではない。さらに、了解されるように、「所定の範囲」という用語は単に閾値が設定されている状況にも関連していてもよい。従って、当業者には明らかなように、上述した発明に特許請求の範囲を逸脱することなく種々の変更を加えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスサンプル中の特定の分子量を有する物質の総積算濃度を測定するためのイオンゲージであって、
−前記ガスサンプルのイオン化された分子を生成するためのイオン化領域と、
−前記イオン化された分子の流れを生成するための加速器と、
−前記流れを中断して、所定の範囲内の前記特定の分子量を有するイオンを前記イオン化された分子から分離するための質量フィルタと、
−前記ガスサンプル中に存在する前記特定の分子量を有する物質イオンの総積算濃度を表す信号を生成するための検出器と、を備えることを特徴とするイオンゲージ。
【請求項2】
前記イオン化領域は、電子発生器、光子発生器、またはガスサンプルの分子をイオン化するためのプラズマ源のうちのいずれかを備えることを特徴とする請求項1記載のイオンゲージ。
【請求項3】
前記質量フィルタは、前記イオン化された分子の流動方向を横断する方向に磁場を発生するように構成された磁場発生器を備えることを特徴とする請求項1または2記載のイオンゲージ。
【請求項4】
前記磁場発生器は、扇形磁場型質量分析器を備えることを特徴とする請求項3記載のイオンゲージ。
【請求項5】
前記検出器は少なくとも1つの二次電子増倍管を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項記載のイオンゲージ。
【請求項6】
減圧条件下で動作可能である請求項1ないし5のいずれか一項記載のイオンゲージ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項記載のイオンゲージを備えることを特徴とする、ガスサンプル中の所定の範囲内に入る分子量を有する物質の総積算濃度を監視するモニタシステム。
【請求項8】
前記濃度が許容値を超える場合にトリガ信号を生成する、前記イオンゲージと協働する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載のモニタシステム。
【請求項9】
請求項7または8記載のモニタシステムを備えることを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項10】
ガスサンプル中の、所定の分子量範囲内に入る分子量を有する物質の総積算濃度を測定する方法であって、
−前記ガスサンプル中のガス分子をイオン化する工程と、
−前記ガスサンプルの前記イオン化された分子を加速してイオン化された分子の流れを生成する工程と、
−前記所定の範囲内に入る前記分子量を有するイオンを前記流れから抽出する工程と、
−前記ガスサンプル中に存在する前記特定分子量を有する物質イオンの前記総積算濃度を表す信号を生成する工程と、を備えることを特徴とする方法。
【請求項11】
−前記ガスサンプル中の前記特定の分子量を有するイオンの前記総積算濃度を監視する工程と、
−前記レベルが許容レベルを超えるとトリガ信号を生成する工程と、をさらに備えることを特徴とする請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−518243(P2012−518243A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546718(P2010−546718)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050064
【国際公開番号】WO2009/102204
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】