説明

ガスサンプル内の水銀を監視する方法および装置

連続排出監視システム(CEMS)の変換器は、プローブから、気化水銀を含むガスサンプルを受け取る。変換器は、熱分解を使用して、ガスサンプル内に存在する酸化水銀を、元素水銀成分と酸化成分に変換する。変換器はまた、ガスサンプルの圧力を減少させて、元素水銀成分と酸化成分との再結合を最小にする。システムの水銀分析器は、圧力が減少したガスサンプルを変換器から受け取り、サンプル内の元素水銀の蛍光を検出する。水銀分析器は、ガスサンプルを減少した圧力に保持して、サンプル内の元素水銀の蛍光に及ぼされる蛍光消失効果を低減し、ガスサンプル内の元素水銀の濃度の実質的に正確な測定を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水銀含有化合物の監視に関し、より詳細には、ガス排出内の水銀の存在を監視するための、水銀含有化合物内の水銀を元素水銀に変換し、かつ、水銀含有化合物内での蛍光消失を低減させる機構と共同して蛍光検出を使用することによる水銀監視に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力施設および都市固形廃棄物焼却炉の煙道ガスなどの、化石燃料燃焼施設からの排出は、水銀を含む。排出は、元素水銀Hgとして、または、水銀含有化合物(たとえば、酸化水銀)の一部として気化水銀を含む。酸化水銀は、通常、塩化水銀または硝酸水銀などの、水銀(Hg+2)の形態として発生する。
【0003】
水銀排出によって環境破壊の可能性が生じるため、多くの国が、排ガス内の水銀の排出を規制しているか、または、排出の規制を考えている。そのため、水銀を含む可能性があるガス排出を生成する施設は、通常、規制に従うために、排出内の総水銀濃度を監視することになる。施設によって生成される排出内に存在する水銀の総量を検出するために、水銀監視システムは、ガスサンプル内の酸化水銀を元素水銀に変換し、ガスサンプル内の元素水銀の総量を測定することができる。
【0004】
変換を実施する1つの技法は、ガスサンプルの酸化水銀を元素水銀に変換するために、SnClを含有するウェットな化学溶液の使用(すなわち、ウェットケミストリ法) を必要とする。技法は、ウェットな化学溶液を通してガス排出サンプルをバブリングさせて、Hg+2をHgに変換する。結果得られる元素濃度は、水銀の酸化形態と元素形態の両方の和である。
【0005】
別の変換技法は、排出サンプルを約750℃まで加熱することを必要とする。サンプル内のHg+2の加熱は、酸化水銀を元素成分Hgと酸化成分へ分離する、または、「分解する」。ある状況では、排出サンプル内のHg+2が、比較的高い温度を使用して、Hgに変換された後、Hが導入されて、排出サンプル内に存在するOと反応させられる。HとOの結合は、水蒸気を形成し、水蒸気は、凝縮ユニットを介した即座の収集によって、元素Hgが再酸化される機会を持つ前に、HClおよび反応副産物などの、分離された酸化成分または化合物を除去する。
【0006】
従来のシステムは、排出サンプル内の酸化水銀を元素水銀に変換すると、原子蛍光分光法などの分析技法を使用して、元素水銀を検出することができる。原子蛍光分光法では、分光計は、種を特徴付ける波長の光を、特定の種の原子が吸着する程度を測定することによって、サンプル内の特定の化学種(たとえば、化学元素または分子)の濃度を検出する。
【0007】
たとえば、ガス排出サンプル内の水銀を検出するために、253.7nmの光を放出する光源を使用して、サンプル内の水銀原子を励起する。ガスサンプル内の元素水銀が、光源からの光を吸収するため、元素水銀は励起状態に入る。励起された元素水銀は、励起状態から元の非励起状態まで減衰するため、元素水銀は、光を蛍光することによってエネルギーを放出する。検出器は、サンプルによって生成される蛍光を測定する。蛍光は、ガスサンプル中の元素水銀の濃度の尺度を表す。
【0008】
いくつかの従来の元素水銀検出器は、検出技法として、冷蒸気原子吸光分析(CVAA
S)または冷蒸気原子蛍光分析(CVAFS)を利用する。しかし、CVAASおよびCVAFS検出技法は、サンプル内に存在する、干渉ガス(たとえば、NO、SO、HCl、およびCl)または消失ガス、たとえば、N、Oによって引き起こされるような、測定干渉を受け易い。CVAASまたはCVAFS検出技法を利用する元素水銀検出器は、これらの干渉ガスの除去によって利益を得る。
【0009】
CVAAS技法では、ガス(たとえば、NO、SO、HCl、およびCl)は、関連する元素水銀検出器によって行われる測定に関して干渉を生じる場合がある。ガスは、CVAAS測定技法の使用中に光を吸収する。そのため、CVAAS測定技法を使用する従来の元素水銀検出器は、誤った読みを提供する可能性がある。CVAAS技法を使用する検出器について、干渉ガスを最小にする、または、干渉ガスを除去するために、たとえば、元素水銀検出器は、金トラップを利用して、ガスサンプル内のS0効果を最小にする、または、S0効果を除去する。ガスサンプルは、金トラップを通して、所定期間にわたって流れ、金材料は、ガスサンプル内に存在する元素水銀をトラップする。金トラップは、所定期間にわたって元素水銀を収集した後加熱され、SO無しのキャリアガスが、金トラップ上を流されて、金トラップ上に収集された元素水銀が検出器に送出される。したがって、金トラップは、元素水銀の吸着に及ぼされるSOの作用を制限し、CVAAS検出器の測定感度を改善する。
【0010】
CVAFS技法を使用する元素水銀検出器の場合、ガス(たとえば、N、O)による蛍光消失は、検出器の性能に影響を及ぼす可能性がある。CVAFS技法では、金トラップなどの凝縮デバイスを使用して、検出器によって行われる測定に及ぼされる蛍光消失の作用を最小にする、または、蛍光消失の作用を除去する。トラップは、所定期間にわたって元素水銀を収集し、関連する検出器の検出感度を最大にする。トラップされた水銀は、その後、窒素か酸素のいずれよりも効率のずっと低い消失器であるアルゴンのガス流内に熱脱着される。そのため、ガスサンプルは、蛍光消失ガス(たとえば、N、O)の存在およびCVAFS技法を使用する検出器によって行われる測定に及ぼされる影響を最小にするように調節されることができる。
【0011】
排出内に存在する水銀の総量を検出する従来のシステムは、種々の欠点を有する。
先に示したように、ウェットな化学溶液は、酸化水銀の元素水銀への変化を可能にする。しかし、ウェットケミストリ法は、熟練オペレータの絶え間のない注意を必要とし、比較的人手がかかり、元素水銀の正確な検出に干渉する可能性がある成分を有する組成物をもたらす場合がある。さらに、ウェットケミストリ法で使用されるウェットな化学溶液または試薬は、通常、腐食性を含み、徐々に枯渇し、ユーザによる監視および補給を必要とする。
【0012】
同様に先に示したように、約750℃以上の温度での熱分解は、Hg+2をHgに変換するのに使用することができる。しかし、ガスサンプルが冷える場合、Hgは、ガスサンプル内に存在する酸化成分か、熱分解反応の副産物(たとえば、酸化成分)のいずれかと再結合する場合がある。そのため、Hgの何分の1かは、分析の前に元のHg+2に変換される場合があり、ガスサンプル内の水銀の濃度の過小評価をもたらす。
【0013】
ガスの添加は、こうした再結合を防止する可能性があるが、高温ゾーンでのHガスの使用は、H源を補給するか、または、交換する必要性と共に、この変換を、全てのHg監視用途について実用的であるようにはさせない。
【0014】
先に示したように、原子蛍光分光法では、(たとえば、分光計の光源が、元素水銀の原子吸着に相当する比較的狭い波長の光を放出する場合)ガスサンプル内の元素水銀が、光源からの光を吸収するにつれて、元素水銀は、励起状態に入る。励起された元素水銀は、
励起状態から元の非励起状態に移動するにつれて、元素水銀は、蛍光の形態でエネルギーを放出する。しかし、「蛍光消失」として知られるプロセスは、元素水銀の検出可能な蛍光を減少させる。
【0015】
蛍光消失を引き起こすメカニズムは、衝突不活性化である。衝突不活性化では、励起された水銀原子は、ガス排出サンプル内の別の原子/分子または分光計の壁に衝突し、衝突オブジェクトにエネルギーを伝達する。そのとき、励起された元素水銀原子は、非蛍光メカニズム(すなわち、光を放出しない状態)を通してそのエネルギーを引き渡す。衝突不活性化は、ガスサンプル内に存在する元素水銀の全体の蛍光強度を減少させる。そのため、蛍光消失は、ガスサンプル内の元素水銀の濃度を正確に測定する原子蛍光分光計の能力を低下させる可能性がある。
【0016】
電子的に励起された水銀の衝突不活性化は、一般的な現象であるが、非蛍光不活性化をもたらすときに、特定の分子は他の分子に比べて効率がよい。酸素は、特に効率がよい消失作用物質である。酸素が枯渇したキャリアガスでサンプル流を希釈すること、または、燃焼または何らかの他の手段によって酸素を除去することによって、酸素消失効果が最小になり、同じ容積のキャリアガス内に酸素が万一存在する場合に観察されることになるものに比べて、信号が増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述したように、検出技法として冷蒸気原子吸光分析(CVAAS)または冷蒸気原子蛍光分析(CVAFS)を利用するシステムなどの、いくつかの元素水銀検出システムは、特定の期間にわたって、金材料上に元素水銀をトラップすることによって、ガス排出サンプル内の元素水銀を収集する。期間の終了時に、元素水銀検出器は、収集され濃縮された水銀をトラップから脱着し、ガス排出サンプル内の水銀の濃度が、分光計を使用して検出される。こうしたシステムは、ガスサンプル内の水銀濃度の検出を可能にするが、検出は、「バッチプロセス」の一部であり、連続的ではない。そのため、述べた元素水銀検出システムは、バッチプロセスのタイミングに依存して、特定の瞬間におけるサンプルガス内の水銀濃度の不規則性または変化(たとえば、特定の時間における、または、特定の期間にわたる、水銀濃度の「スパイク」)を検出する可能性が低い。上記の元素水銀検出システムは、代わりに、ガスサンプルについて時間平均された水銀濃度を検出する。
【0018】
本水銀監視システムは、実質的に連続した方式で、ガスサンプル内の総水銀を監視する連続排出監視システム(CEMS)である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
システム内で使用される変換器は、プローブから気化水銀を含有するガスサンプルを受け取るように構成される。変換器は、熱分解を使用して、ガスサンプル内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に分解する。変換器はまた、元素水銀成分と酸化成分との再結合を最小にするために、ガスサンプルの圧力を減少させるように動作する。システムの元素水銀分析器は、変換器からガスサンプルを受け取り、サンプル内の元素水銀の蛍光を測定することによって元素水銀を検出する。元素水銀分析器は、サンプル内の元素水銀の蛍光に及ぼされる蛍光消失の影響を低減するために、大気圧に対して減少した圧力でガスサンプルを収容する。蛍光消失の影響を低減することによって、分析器は、ガスサンプル内の元素水銀の濃度の実質的に正確な測定を可能にする。
【0020】
本発明の、先の、また、他の目的、特徴、および利点は、添付図面に示すように、本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。図面では、同じ参照文字は、異なる図全体を通して同じ部品を指す。図面は、必ずしも一定比例尺に従わず、代わり
に、本発明の原理を示すことに重点が置かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
システムは、実質的に連続した方式で、ガスサンプル内の総水銀を監視する。システム内で使用される変換器は、プローブからの気化水銀を含有するガスサンプルを受け取るように構成される。変換器は、熱分解を使用して、ガスサンプル内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に変換する。変換器はまた、元素水銀成分と酸化成分との再結合を最小にするために、ガスサンプルの圧力を減少させるように動作する。システムの元素水銀分析器は、変換器からガスサンプルを受け取り、サンプル内の元素水銀の蛍光を検出する。元素水銀分析器は、サンプル内の元素水銀の蛍光に及ぼされる蛍光消失の影響を低減するために、減少した圧力でガスサンプルを収容する。蛍光消失の影響を低減することによって、分析器は、ガスサンプル内の元素水銀の濃度の実質的に正確な測定を可能にする。
【0022】
図1は、石炭火力電力プラントからの流出ガスなどの、流体サンプル内の総水銀を、実質的に連続した方式で監視する水銀監視システム20を示す。水銀監視システム20は、連続排出監視システム(CEMS)を定義する。水銀監視システム20は、プローブ22、変換器24、分析器26、および、好ましくは同様に、較正器28およびガス供給部30を含む。
【0023】
プローブ(たとえば、抽出プローブ)22は、サンプル源からガスサンプル32を受け取り、ガスサンプル32を変換器24に送出するように構成される。たとえば、プローブ22は、石炭燃焼施設の煙突または煙道34内に延びるか、または、そこに近接して取り付けられ、煙突34を通って流れる流体またはガス(たとえば、流出)36の一部分をガスサンプル32として収集する。プローブ22は、ガスサンプル32から粒状性物質(たとえば、煙道灰) を分離する慣性フィルタを含むことができる。ガスサンプル32に接触するプローブ22の表面は、通常、プローブとガスサンプル32内に存在する水銀との間の化学反応を最小にする、または、防止する皮膜(たとえば、ガラス)を有する。一配置構成では、プローブ22の慣性フィルタは、ヒータ要素(図示せず)を含む。ヒータ要素は、慣性フィルタ内のガスサンプル32を加熱することができる。
【0024】
プローブ22は、ある温度、たとえば、150℃に維持された加熱された導管38によって変換器24に接続される。加熱された導管38は、ガスサンプル32の凝縮および導管338に対する気化水銀の「付着」を制限し、変換器に対するガスサンプル32の十分な輸送を提供する。プローブ22は、導管47を介して、ガス供給部30に結合する。一配置構成では、ガス供給部30は、空気などの希釈ガスをプローブ22に提供して、ガスサンプル32を変換器24に送出する前に、ガスサンプル内の水銀濃度を希釈する。加熱された導管38は、電気抵抗ヒータなどの熱源から熱を受け取る。
【0025】
変換器24は、プローブ22からガスサンプル32を受け取り、また、分析器26が、ガスサンプル内に存在する水銀の総量を検出するために、ガスサンプル32内に存在する水銀の気相種(たとえば、酸化水銀)を元素水銀に変換し、水銀を元素の形態で維持するように動作する。ガスサンプル32に比較的高い温度を適用し、次に、減少した圧力を利用して、サンプル内の変換された元素水銀が、ガスサンプル32内に存在する酸化化合物または酸化成分と結合することを最小にすることによって、変換器24は、水銀Hg+2の酸化形態(たとえば、HgCl、Hg( NO) )を元素水銀Hgに変換する。変換器24のより詳細な説明が、以下に示される。
【0026】
分析器26は、(たとえば、約100℃〜200℃の温度に)加熱された導管40によって変換器24に接続され、また、ポンプまたはエダクタ( 図示せず) に結合して、加熱
され、かつ、圧力が減少したガスサンプル32を、変換器24内に、そして、変換器24を通して引き入れる。一配置構成では、分析器26は、ガスサンプル32内に存在する元素水銀の量または濃度を測定または検出する原子蛍光分析器である。検出プロセスの終了によって、分析器26は、排気ポート42を介して流体またはガスサンプル32を大気に排出する。分析器26のより詳細な説明が、以下に示される。
【0027】
較正が較正器28によって行われ、較正器28は、一配置構成では、ラインまたは導管45を通して分析器26に流体連通し、ペルチエクーラ/蒸気圧制御および質量流量コントローラなどを使用することによって、特定の濃度で気化元素水銀を分析器26に提供する。分析器26は、較正器28から受け取った元素水銀の量を、導管44を介してガス供給部30から受け取った乾燥した実質的に水銀の無いガス(たとえば、ゼロ空気)の元素水銀の量と比較する。こうした比較の結果は、分析器26の直接の較正を可能にする。較正器28のより詳細な説明は、以下に示される。
【0028】
システム20は、実質的に連続する方式でガスサンプル32内の総水銀を監視する。システム内で使用される変換器24は、プローブから、気化水銀を含有するガスサンプル32などのガスサンプル32を受け取り、ガスサンプル32内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に分離するように構成される。変換器24はまた、元素水銀成分と酸化成分との再結合を最小にするために、ガスサンプル32の圧力を減少させるように動作する。システム20内で使用される元素水銀分析器26は、変換器24からガスサンプル32を受け取り、サンプル内の元素水銀の蛍光を測定するように構成される。元素水銀分析器26はまた、サンプル32内の元素水銀の蛍光に及ぼされる蛍光消失の影響を低減する機構を利用する。蛍光消失の影響を低減することによって、分析器26は、ガスサンプル32内の元素水銀の濃度の実質的に正確な測定を可能にする。
【0029】
図2は、酸化水銀変換器24の配置構成を示す。変換器24は、入口52、出口54を有し、第1チャンバ56と第2チャンバ58を画定するハウジング50を含む。変換器24はまた、圧力減少装置60およびハウジング50に熱的につながるヒータ62を含む。
【0030】
ハウジング50は、一配置構成では、アルミナ、石英、またはガラス材料(たとえば、高温石英)から全体が円筒の形状に形成された熱分解装置である。ハウジング50の入口52は、流体源から変換器24の第1チャンバ56にガスサンプル32を送出するための流体またはガス源に接続される。たとえば、一配置構成では、入口52は、プローブ22に接続され、石炭燃焼施設の煙突または煙道34からガスサンプル32を受け取る。ハウジング50の出口54は、図1に示す分析器26に接続される。
【0031】
図2に示すように、一配置構成では、出口54は、真空ポンプ64につながり、真空ポンプ64は、次に、入口導管40または分析器26の出口42に接続されてもよい(たとえば、ポンプは、分析器ポンプであってよい)。動作中、一配置構成では、ポンプ64は、ガスサンプル32を、プローブ22内に、そして、プローブ22を通して、そして、変換器24および分析器26を通して引き入れる。別の配置構成では、変換器24は、プローブ22に連結したガスエダクタからガスサンプル32を受け取る。ポンプ64は、こうした配置構成では、変換器24および分析器26を通してガスサンプル32を引き入れる。
【0032】
変換器24の第1チャンバ56は、ガスサンプル32を受け取り、実質的に第1圧力でガスサンプル32を収容するように構成される。たとえば、動作中に、ポンプ64は、プローブ22から第1チャンバ56内にガスサンプル32を引き入れ、それにより、第1チャンバ56は、ガスサンプル32を、約1気圧の圧力で保持する。第2チャンバ58は、第1チャンバ56からガスサンプル32を受け取り、ガスサンプル32を、実質的に第2
圧力で収容するように構成され、第2圧力は、第1圧力より低い。以下に述べるように、第2チャンバ58は、第2の減少した圧力でガスサンプル32を収容するために、ポンプ64および圧力減少装置60と共に動作する。
【0033】
圧力減少装置60は、ポンプ64と共に、第2チャンバ58内で、第1チャンバ56の圧力に対してガスサンプル32の減少した圧力を確立し維持する。これを容易にするために、圧力減少装置60は、ハウジング50の第1チャンバ56と第2チャンバ58との間で配置された臨界オリフィスなどの、流路または開口70を画定する流量制限器68であるか、または、それを含む。流量制限器68は、ノズルまたはオリフィスを画定する構造として形成されることができる。一配置構成では、流量制限器68は、第1チャンバ56と第2チャンバ58に共通である、すなわち、互いにチャンバ56、58を分離するハウジング50の壁66内に形成される。ポンプ64が、流量制限器68を通して第1チャンバ56から第2チャンバ58へガスサンプル32を引き入れるときに、流量制限器68は、ガスサンプル32の圧力低下を生じる、たとえば、約0.1気圧〜0.3気圧を生じる。
【0034】
たとえば、動作中、ポンプ64は、入口52から第1チャンバ56内にガスサンプル32を引き入れる。第1チャンバ56は、1気圧の圧力(たとえば、大気圧)などの、第1流体圧でガスサンプル32を保持または収容する。ポンプ64は、さらに、第1チャンバ56から流量制限器68を通して第2チャンバ58へガスサンプル32を引き入れる。流量制限器68は、第1チャンバ56から第2チャンバ58へのガスサンプル32の流れを可能にするが、第1チャンバ56から第2チャンバ58へのガスサンプル32の流量を制限する。流量制限器68の流路70のサイズは、ポンプ64が、第2チャンバ58内で、たとえば、約0.1〜0.3気圧の、低い流体圧を生成し維持することを可能にする。
【0035】
一配置構成では、約0.1〜0.3気圧への、ガスサンプルの圧力減少を達成するために、ユーザは、流量制限器68の流路70の直径72およびポンプ64の流体流量を調整することができる。たとえば、変換器24が、500ミリリットル/分の臨界オリフィス(たとえば、約0.001インチ(0.0254ミリ)の直径)を有する流量制限器68を有し、また、500ミリリットル/分の真空流量を提供するポンプ64に結合する場合を考える。ポンプ64の動作中に、流量制限器68は、ガスサンプルの圧力を約0.1〜0.3気圧まで減少させる。
【0036】
ヒータ62は、ハウジング50内のガスサンプル32を加熱して、ガスサンプル32内に存在する酸化水銀82を元素水銀成分80と酸化成分84に変換または分解する。たとえば、ヒータ62は、第1チャンバ56内でガスサンプル32の温度を約750℃に(たとえば、または、約650℃から800℃の範囲内に)増加させることができる。こうした温度は、ガスサンプル32内に存在する酸化水銀82を元素水銀成分80と酸化成分84に分解する。一配置構成では、ヒータ62は、ハウジング50内のガスサンプル32に放射熱を提供する電気抵抗ヒータである。
【0037】
動作中、変換器24は、酸化水銀を有する流体サンプル32を受け取る。たとえば、動作中、プローブ22は、石炭燃焼施設の煙突または煙道34から煙道ガスサンプル32を受け取る。ガスサンプル32は、元素の形態(Hg)と酸化形態(Hg+2)の両方の形態の気化水銀を含む。変換器24の出口54に結合されたポンプ64(ポンプ64は、好ましくは、分析器26の下流にある)は、ハウジング50内で真空を生成し、ガスサンプル32が、プローブ22から変換器24へ、そして、変換器26を通って流れるようにする。変換器24の第1チャンバ56は、ガスサンプル32を受け取り、ガスサンプル32を、約1気圧などの圧力に保持する。
【0038】
変換器24は、酸化水銀を有する流体サンプル32を加熱して、流体サンプル32内に存在する酸化水銀82を元素水銀成分80と酸化成分84に変換する。たとえば、熱分解として知られるプロセスにおいて、ヒータ62は、ハウジング50の第1チャンバ56に熱エネルギーを加えて、第1チャンバ56内のガスサンプル32の温度を約750℃の温度まで増加させる。ガスサンプル32内の酸化水銀が、約750℃の温度に達するにつれて、酸化水銀82は、元素水銀成分80と酸化成分84(塩素など)に変換される。
【0039】
加熱された流体サンプルが、流量制限器を通過するとき、変換器24は、元素水銀成分と酸化成分の再結合を制限する。たとえば、真空ポンプおよび流量制限器68は、加熱されたガスサンプル32の圧力が、(たとえば、第1チャンバ56内に収容される場合)約1気圧から(たとえば、第2チャンバ58内に収容される場合)約0.1〜0.3気圧まで減少するようにさせることができる。第1チャンバ56内の圧力に対して、加熱されたガスサンプル32の圧力を減少させることによって、変換器24は、第2チャンバ58内において、元素水銀成分80と酸化成分84の数を減少させる。加熱されたガスサンプル32が真空下に保持された(たとえば、第1チャンバ56内のガスサンプル32の圧力に対して低い圧力に保持される)状態で、減少した圧力または真空は、第1チャンバ56内で熱変換された変換済の元素水銀80と酸化成分84との間の再結合反応を制限する。さらに、減少した圧力または真空は、ガスサンプル32内の元素水銀80と、ガスサンプル32内に存在する場合がある塩酸(HCl)などの他の成分との結合を制限する。
【0040】
加熱されたガスサンプル32が、第1チャンバ56から第2チャンバ58に入るため、また、変換器24から分析器26の方へ流れるため、加熱されたガスサンプル32の温度は、減少する可能性があり、それにより、ガスサンプル32内に存在する元素水銀80と酸化成分84が、再結合する確率が減少する。ガスサンプル32の圧力を減少させることは、ガスサンプル32内の元素水銀成分80と酸化成分84の数を減少させる。ガスサンプル32内の元素水銀成分80と酸化成分84の数のこうした減少は、元素水銀成分80と酸化成分84との化学的再結合を減少させる。そのため、変換器24が、ガスサンプル32を第2チャンバ58から分析器26まで送出するときに、分析器26は、比較的正確にガスサンプル32内の元素水銀(たとえば、気化元素水銀)80の総量を検出することができる。
【0041】
先に示したように、一配置構成では、加熱されたガスサンプル32が、第1チャンバ56から第2チャンバ58に入るため、加熱されたガスサンプル32の温度は減少し、それにより、ガスサンプル32内に存在する元素水銀80と酸化成分84が、再結合する確率が減少する。第2チャンバ58内での元素水銀80と酸化成分84の再結合をさらに最小にするために、変換器24は、第2チャンバ58に熱的につながるヒータを含むことができる。図2に戻ると、一配置構成では、ヒータ62は、第1ヒータ部分62−1と第2ヒータ部分62−2を含む。第1ヒータ部分62−1は第1チャンバ56に熱的につながり、第2ヒータ部分62−2は第2チャンバ58に熱的につながる。
【0042】
動作中、第1ヒータ部分62−1は、第1チャンバ56内のガスサンプル32を約750℃の温度まで加熱して、ガスサンプル32内の酸化水銀82を元素水銀成分80と酸化成分84に分解する。ガスサンプルが、第2チャンバ58内に流れるにつれて、圧力減少装置60(たとえば、流量制限器68)は、ポンプ64と共に、ガスサンプル32の圧力を減少させ、それにより、ガスサンプル32は、第2チャンバ58内で減少した圧力で保持される。第2ヒータ部分62−2は、その後、第2チャンバ58に熱を加えて、第2チャンバ58内でガスサンプル32の温度を維持するのに役立つ。たとえば、第2ヒータ部分62−2はまた、第2チャンバ58内のガスサンプル32を約750℃の温度まで加熱する。こうした加熱によって、第2ヒータ部分62−2は、元素水銀成分80の酸化成分84からの分離を維持するのに役立つ。
【0043】
ある場合には、ガスサンプル32は、分析の前に、ガスサンプル32内での元素水銀80の酸化を制限するために、さらなる処理(たとえば、水銀反応性成分の除去)を必要とする可能性がある。一配置構成では、分解した元素水銀成分80と酸化成分84の再結合を最小にするために、変換器24は、図2に示すように、化学スクラバ90を含む。
【0044】
化学スクラバ90は、ガスサンプル32内のいくつかの水銀反応性成分の存在を除去または減少させるように働く。化学スクラバ90は、流量制限器68の下流でかつ変換器24の出口54の上流で、ハウジング50内に取り付けることができる。こうした配置によって、動作中、ガスサンプル32が、ハウジング50の入口52からハウジング50の出口54へ移動するときに、化学スクラバ90を通ってまたは化学スクラバ90に近接して流れ、それにより、化学スクラバ90が、ガスサンプル32内のいくつかの水銀反応性成分の存在を除去または減少させることが可能になることが確保される。一配置構成では、化学スクラバ90は、酸性ガススクラビング材料92、たとえば、水酸化カルシウム(Ca(OH))を含む。化学スクラバ90は、ガスサンプル32のいくつかの成分(たとえば、塩酸(HCl)などの酸性ガスおよび塩素フリーラジカル) をトラップして、ガスサンプル32内での酸性ガス成分と元素水銀80との結合を最小にする。すなわち、化学スクラバ90は、元素水銀(Hg)80が分析器まで通過することを可能にするが、普通なら元素水銀80と再結合する可能性がある酸性ガス成分を除去する。
【0045】
図2に示す配置構成に対する代替構成として、化学スクラバは、ハウジング50の下流の別個のハウジング内に設けることができる(たとえば、図7に関して示し述べられるように)。こうした配置構成は、化学スクラバの酸性スクラビング材料92(たとえば、水酸化カルシウム)の交換を容易にする場合がある。
【0046】
変換器24の第2チャンバ58内において、または、変換器24から分析器26までのガスサンプルの通過中においても同様に、元素水銀の水銀含有化合物内への再結合の可能性をさらに減らし、または、最小にするために、ガス供給部30は、乾燥した水銀の無い非酸化ガス(たとえば、窒素)などの希釈ガスを、導管31を介してサンプル流内に提供することができる。
【0047】
たとえば、図2に示すように、希釈ガス供給部30は、水銀の無い希釈ガスを変換器24に提供する。一配置構成では、導管31は、変換器24の入口52付近の変換器24の上流でシステム20のガスラインに接続する。別の配置構成では、導管31は、ハウジング50の第2入口33に接続する。希釈ガスは、ガスサンプル32と結合して、変換器24によって受け取られる、ガスサンプル32内の酸化水銀82、元素水銀80(たとえば、気化水銀)、および酸化成分84の濃度を希釈する。たとえば、希釈ガス供給部30は、ガスサンプル32内の酸化水銀82、元素水銀80、および酸化成分84の濃度を、約10:1〜250:1の希釈比に希釈する。ガスサンプル32内に存在する酸化水銀82、元素水銀80、および酸化成分84の量を希釈することによって、希釈ガス供給部30は、ガスサンプル32内の、反応性種(たとえば、元素水銀成分80および酸化成分84)の相対的濃度を減少させる。
【0048】
システム20が、ガスサンプル32内に存在する酸化水銀を非酸化水銀(たとえば、元素水銀)に変換することを必要とされることなく、システム20は、ガスサンプル32の元素水銀の濃度を検出するように動作することもできる。これを可能にするために、システム20は、図2に示すように、変換器24の上流の、または、変換器24の入口52に接続された流れバイパス要素94(たとえば、弁)を含む。起動すると、流れバイパス要素94は、入口52によって受け取られたガスサンプル32を、導管95を通してハウジング50の出口54まで送り、それにより、ハウジング50の第1チャンバ56および第
2チャンバ58をバイパスさせる。こうしたバイパスは、ガスサンプル32が、チャンバ56内で提供される比較的高い熱にさらされることを防止し、したがって、ガスサンプル32内に存在する酸化水銀82を分解しない。これは、分析器26が、ガスサンプル32内に元々存在する元素水銀だけを検出することを可能にする。
【0049】
図2に関して先に示したように、圧力減少装置60(たとえば、ポンプ64を組合わせた流量制限器68)は、入口52によって受け取られるガスサンプル32の圧力に対して。ハウジング50内のガスサンプル32の圧力を減少させるのに役立つ。図3および図4は、圧力減少装置60についての代替構成を示す。
【0050】
図3は、変換器24の第1チャンバ56と第2チャンバ58との間のノズル86として構成された流量制限器68を示す。ノズル86は、第1チャンバ56から第2チャンバ58へのガスサンプル32の流量を制限する直径88を有する流路またはオリフィス87を画定する。別々に取り付け可能な流量制限器68(たとえば、ノズル86)の使用は、異なる所望の流量を達成するために種々の直径を有する、異なる流量制限器68の設置を可能にする。
【0051】
図4は、変換器24についての流量制限器68の別の配置構成を示す。図示するように、流量制限器68は、ハウジング50と一体に形成され、かつ、第1チャンバ56を第2チャンバ58に接続するネック部分96である。ネック部分96は、第2チャンバ58から第1チャンバ56を距離99だけ分離する。ネック部分96は、第1チャンバ56から第2チャンバ58へのガスサンプル32の流れを可能にし、かつ、第1チャンバ56から第2チャンバ58へのガスサンプル32の流量を制限する、直径98を有する流路またはオリフィス97を画定する。たとえば、一配置構成では、ネック部分96のオリフィス97は、約500ミリリットル/分の最大流量を可能にする。図4に示す一体配置構成は、第1チャンバ56、第2チャンバ58、およびネック部分96の、単一材料(たとえば、高温石英)からの単一製造プロシジャによる製造を可能にし、ハウジング50内に別個の圧力低減装置を設置するのに必要とされる工程をなくす。
【0052】
図5は、変換器24の代替の配置構成を示し、変換器24は、単一チャンバ120を画定し、変換器24の上流に(たとえば、入口52に)位置する流量制限器122を含む。流量制限器122は、(たとえば、分析器26の出口42(図示せず)に接続された)ポンプ64と共同して、ガスサンプル32がチャンバ120に入るときに、ガスサンプル32の圧力を減少させる。動作中、流量制限器122は、ポンプ64と共同して、ガスサンプル32の圧力を大気圧から約0.1〜0.3気圧へ減少させる。変換器24が、圧力が減少したガスサンプル32を受け取るにつれて、ヒータ62は、ガスサンプル32に熱を加えて、圧力が減少したガスサンプル32内で酸化水銀を熱分解する。単一チャンバ120は、ガスサンプル32を減少した圧力に維持する。流量制限器122が変換器24の上流に位置することによって、変換器24は、ガスサンプル32を減少した圧力に維持して、元素水銀成分80と酸化成分84の再結合を減少させるまたは制限する。
【0053】
図6は、変換器24の代替の配置構成を示し、変換器24は、単一チャンバ120を画定し、変換器24の下流端に(たとえば、出口54に、または、出口54の一部として)位置する流量制限器124を含む。流量制限器124は、ポンプ64と共同して、ガスサンプル32がチャンバ120を出るときに、ガスサンプル32の圧力を減少させる。動作中、変換器24は、単一チャンバ120内にガスサンプル32を受け取り、ヒータ62は、熱を加えて、ガスサンプル32内で酸化水銀を熱分解する。ガスサンプル32が単一チャンバ120を出るときに、流量制限器124は、ポンプ64と共同して、ガスサンプル32の圧力を大気圧から約0.1〜0.3気圧へ減少させる。流量制限器124が変換器24の下流端に位置することによって(流量制限器124は、あるいは、変換器24から
分離した構造であり、変換器24と分析器26との間に位置決めされることができる)、変換器24は、圧力が減少したガスサンプル32をシステム20内の分析器26に送出する。熱分解されたガスサンプル32の圧力を減少させることによって、ガスサンプル32が分析器26に移動するときに、変換器24は、ガスサンプル内での元素水銀成分80と酸化成分84の再結合を減少させる、または、制限する。
【0054】
同様に、先に示し、また、図2に示すように、希釈ガス供給部30は、変換器24の上流の流れラインに希釈ガスを提供する。図7に示す代替の配置構成では、希釈ガス供給部30は、ハウジング50に連結する第2入口95によって、変換器24のハウジング50の第2チャンバ58内に希釈ガスを導入してもよい。第2チャンバ58内のガスサンプル32内に存在する、酸化水銀82、元素水銀80、および酸化成分84を希釈することによって、希釈ガス供給部30は、ガスサンプル32内(すなわち、第2チャンバ58内)の反応性種(たとえば、元素水銀成分80および酸化成分84)の相対濃度を減少させる。
【0055】
図2に示すように、化学スクラバ90は、変換器24のハウジング50内に位置する。図7に示す別の配置構成では、化学スクラバ90は、変換器24のハウジング50の外部に位置する。こうした配置構成は、ユーザが、スクラバ90の粒子収集部分92(たとえば、水酸化カルシウム)を容易に変更または置換することを可能にする。外部スクラバ90は、出口54から下流に位置しているものとして示されるが、外部スクラバ90は、入口52に近接した、上流ロケーションに位置することもできる。
【0056】
先に示したように、システム20は、実質的に連続した方式で、ガスサンプル32内の総水銀を監視する。変換器24が、ガスサンプル32内に存在する酸化水銀を、元素水銀に変換し、ガスサンプルの圧力を減少させて、元素水銀とガスサンプル32内に存在する酸化成分との再結合を最小にした後、ガスサンプル32は、分析器26に流れる。分析器26は、その後、ガスサンプル32内に存在する水銀の総量を検出する。
【0057】
図8は、元素水銀分析器26の配置構成を示す。分析器26は、ハウジング250および蛍光アセンブリ252を含む。
ハウジング250は、入口256、出口258を有し、チャンバ260を画定する。入口256は、導管40を介して変換器24から圧力が減少したガスサンプル32(たとえば、ガスサンプル32は、0.1〜0.3気圧の圧力を有する)を受け取るように構成される。出口258は、排気ポート242を介して流体またはガスサンプル32を大気に放出または排出するように構成される。チャンバ260は、サンプルの分析中に、ガス排出サンプルなどのガスサンプル32を収容するように構成される。一配置構成では、光バッフリング材料251が、チャンバ260内での光の散乱を最小にするためにチャンバ260内に含まれる。
【0058】
蛍光アセンブリ252は、チャンバ260と、したがって、ハウジング250によって収容されるガスサンプル32に光学的につながる、光源アセンブリ261および検出器アセンブリ262を含む。蛍光アセンブリ252は、ガスサンプル32内に存在する元素水銀255の蛍光を誘発させ、元素水銀の蛍光に基づいてガスサンプル32の蛍光信号を検出する。
【0059】
光源アセンブリ261は、一配置構成では、光源264およびレンズ266を含む。光源264は、一配置構成では、約253.7nmの波長の光を生成し、かつ、その光をレンズ266に送出する高強度水銀ランプである。レンズ266は、次に、光源264からチャンバ260へ光を誘導する。レンズ266が、光源264からチャンバ260へ光を誘導するため、(たとえば、約253.7nmの波長を有する)光は、チャンバ260内
に位置する元素水銀255を励起する。励起の結果として、元素水銀255は、蛍光などによってエネルギーを放出する。
【0060】
検出器アセンブリ262は、一配置構成では、コントローラ268に電気結合する光電子増倍管274を含む。光電子増倍管274は、ハウジング250のチャンバ260に光学的につながり、チャンバ260内の元素水銀255による蛍光された光を検出するように動作する。光電子増倍管274は、流体サンプルからの蛍光(たとえば、元素水銀255からの蛍光による光)を受け取るときに、蛍光信号に比例する(たとえば、ガスサンプル32内での元素水銀255の蛍光の強度に比例する)信号を生成し、その信号をコントローラ268に送信する。コントローラ268(たとえば、そのメモリおよびプロセッサ)は、光電子増倍管274から受け取った信号に基づいて、ガスサンプル32内での元素水銀255の濃度を計算または検出する。
【0061】
一配置構成では、分析器26は、光源アセンブリ261および検出器アセンブリ262と共に偏光要素を利用して、元素水銀255からの蛍光による光の信号の検出、最終的に、検出器アセンブリ262の信号対雑音比を改善する。
【0062】
たとえば、光源アセンブリ261は、レンズ266とハウジング250のチャンバ260との間に位置決めされる偏光要素またはフィルタ282を含む。偏光フィルタ282は、レンズ266からの入射光を偏光して、検出器によって観察される散乱光の量を減少させる。偏光フィルタ282は、光散乱によって伝達される光平面に直交する光平面だけを通過させるように配置され、それにより、チャンバ260内での散乱光の量を減少させる。
【0063】
動作中、偏光フィルタ282は、チャンバ260に入る入射光を偏光して、光散乱によって伝達される光平面を除去する。偏光された入射光は、チャンバ260を通って進むにつれて、散乱する可能性がある(たとえば、偏光された光と、ハウジング250の壁またはハウジング250によって収容されるガスサンプル32内の粒子状物質との間の相互作用によって生じる) 。粒子相互作用によって生じる光散乱は、偏光要素282と検出器262の配置に依存して、2つの直交平面の一方に有利になる。蛍光チャンバ260内で、好ましくない光平面(たとえば、光散乱によって伝達される光平面に直交する光平面)だけを伝達することによって、散乱光の量が、チャンバ260内で減少する。散乱光の減少は、水銀を監視する検出器262の能力を向上させる。元素水銀255は、偏光されない光として光を蛍光させる。したがって、偏光された光の使用は、元素水銀255のからの蛍光による光の信号の検出を改善し、検出器アセンブリ262に蛍光検出限界の向上または改善を提供する。
【0064】
先に示したように、偏光された入射光が、チャンバ260を通って進むとき、偏光された光が、散乱する可能性がある。通常、偏光された入射光の伝播方向に対して直角に観察される散乱光は、平面偏光される。
【0065】
一配置構成では、光源アセンブリ261の偏光フィルタ282は、チャンバ260内の第1の軸または光学方向272に沿って偏光された入射光を誘導する。たとえば、第1光学方向272は、偏光フィルタ282の面に実質的に垂直(たとえば、実質的に90°の角度)であり、一方、散乱光は、偏光フィルタ282の面に実質的に平行である。
【0066】
動作中、第1光学方向272に沿って進む偏光された入射光は、第1光学ゾーン270内に存在する元素水銀255が蛍光を発するようにさせる。偏光された光は、第1光学方向272に沿ってチャンバ260内を進むまたは伝播するときに、チャンバ260内で散乱する可能性がある。先に述べたように、偏光された入射光の伝播方向に対して直角に検
出される散乱光は、直線偏光を有する。したがって、検出器262は、チャンバ260の第2光学ゾーン278内で蛍光による光を検出し、第2光学ゾーン278は、第1光学ゾーン270に対して実質的に90°の角度で配置される。散乱光の平面に対する検出器262の方向は、ガスサンプルからの蛍光信号の検出を最適にする。さらに、普通なら、光源からの光の好ましい散乱平面になるものを除去することは、粒子相互作用によって生じる散乱光を減少させる。
【0067】
衝突不活性化は、流体またはガスサンプル内での元素水銀の蛍光消失を引き起こす可能性がある。衝突不活性化のプロセスにおいて、励起された水銀原子は、ガスサンプル内の別の原子/分子と、または、分析器26の壁と衝突し、光を放出することなく、衝突オブジェクトにエネルギーを伝達する。すなわち、励起された元素水銀原子は、非蛍光メカニズムを通してそのエネルギーを引き渡す。しかし、本水銀監視システムの分析器26は、比較的低い圧力、たとえば、約0.1気圧〜0.3気圧を有するガスサンプル32を、変換器24から受け取り、ガスサンプル32を比較的低い圧力に維持する。ガスサンプル32を受け取り、ガスサンプル32を比較的低い圧力に維持することによって(たとえば、チャンバ60内で原子(水銀原子)の数が減少することによって)、分析器26は、チャンバ260内で励起された水銀原子の原子/分子の相互作用の回数を減少させる。したがって、分析器26は、衝突不活性化、したがって、元素水銀255の蛍光に関する蛍光消失の効果を減少させる。
【0068】
水銀蛍光の消失は、水銀濃度が十分に低いとき、スターン−ボルマーの式(Stern-Volmer equation) に従う。この条件は、水銀のトレースレベルを検出する本分析器26において満たされる。別のガス内で希釈された一定の分率または混合比の水銀を含有するガスサンプル32の場合、蛍光強度は、以下の式、すなわち、
F(M,p)=C*(p/(1+Φ*p))
に従って圧力に伴って変化する。ここで、
F(M,p)=圧力pの混合ガスMにおける水銀の蛍光強度
C=混合比に応じる定数
p=サンプル圧
Φ=混合ガスMについての消失係数
である。
【0069】
1気圧の絶対圧におけるガスサンプルと比較した、ガスサンプル内の水銀の相対蛍光強度は、
F(M,p)/F(MRef,1気圧)=(p*(1+ΦMRef))/(1+Φ*p)
から計算される。ここで、
Ref=基準混合ガス
である。
【0070】
基準混合ガスが空気である場合、空気についての消失係数は、ΦAir=140/気圧である。基準混合ガスが窒素である場合、窒素についての消失係数は、ΦNitrogen=18/気圧である。
【0071】
図9は、空気中水銀の混合物と窒素中水銀の混合物についての、相対蛍光強度とサンプルチャンバ圧(たとえば、1 気圧の空気の基準に対するサンプルチャンバ圧)との関係(たとえば、スターン−ボルマーの関係)を示すグラフ300である。第1曲線302は、空気中水銀の混合物を有するガスサンプル32について、相対蛍光強度とサンプルチャンバ圧との関係を示す。第2曲線304は、窒素中水銀の混合物を有するガスサンプル32について、相対蛍光強度とサンプルチャンバ圧との関係を示す。
【0072】
図9は、(第1曲線302で示される)空気中水銀の場合、約0.1気圧で、最高または上方圧力限界値に達することを示す。この圧力を超えると、圧力増加に伴う吸収性の水銀原子数の増加の効果は、生成される増加した数の励起状態の水銀原子についての消失レートの匹敵する増加によって相殺される。結果として、0.1気圧を超えて空気サンプル圧を増加させることによって、蛍光信号の増大はほとんど得られない。逆に、分析器サンプルチャンバ260を不完全真空下で動作させ、サンプル圧を大気圧から0.1気圧の絶対圧に減少させることによって、蛍光信号はほとんど失われない。
【0073】
グラフ300は、蛍光強度の大幅な減少なしで、空気中の混合物についてのサンプル圧を0.1気圧に減少することができることを示す。グラフ300はまた、空気/窒素分子による光の散乱によって生じる相対背景信号とサンプルチャンバ圧との関係を示す第3曲線306を含む。図示するように、空気/窒素分子による励起エネルギーの散乱(たとえば、レイリー散乱)は、圧力の減少に関して比例して減少する。たとえば、0.1気圧の圧力において、相対背景信号は、1気圧の圧力の値の約1/10に減少する。すなわち、チャンバ260内の圧力の減少は、サンプルガス内に水銀がたとえ存在しないときでも存在する背景信号を、大幅に減少させる効果がある。背景信号または背景光の強度の減少は、比較的低いレベルの水銀蒸気の検出を可能にし、それにより、水銀監視システム20の下方検出可能限界値(LDL)を向上させる。
【0074】
図9はまた、第2曲線304によって示すように、空気ではなく窒素によってサンプルを希釈する効果を示す。たとえば、0.1気圧の作動圧で、蛍光強度は約5倍増加する。この増加は、散乱光強度の変化がほとんど無い状態で起こる。そのため、背景強度は、蛍光信号と比較して5分の1に減少し、水銀についてのLDLのさらなる改善をもたらす。
【0075】
動作中、分析器26は、圧力が減少したガスサンプル32を変換器24から受け取る。たとえば、一配置構成では、変換器24は、石炭燃焼施設の煙突または煙道34から受け取るような、ガスサンプル32の圧力を減少させる。分析器26は、その後、圧力が減少したガスサンプル32内に存在する元素水銀の蛍光を誘発させる。たとえば、分析器26の光源アセンブリ61は、約253.7nmの波長の光を生成して、ガスサンプル32内で元素水銀の蛍光を誘発させる。
【0076】
分析器26は、ガスサンプル32内の元素水銀255の蛍光に基づくガスサンプル32の蛍光信号を検出し、蛍光信号は、ガスサンプル32内の元素水銀255の濃度に比例する。たとえば、分析器26の検出器アセンブリ262は、ガスサンプル内の元素水銀255の蛍光によって生成された蛍光信号を、ガスサンプル32から受け取る。蛍光信号に基づいて、検出器アセンブリ262は、流体サンプルについて濃度レベルを計算し、ユーザまたはオペレータなどへ出力を提供する。
【0077】
分析器26は、実質的に連続する方式でリアルタイムに方法を実施する。たとえば、分析器は、特定のレートで(たとえば、1秒ごとに1回)ガスサンプルの元素水銀濃度を検出し、特定のレートで、分析器からの出力として濃度結果を提供する。ガスサンプル32が、実質的に連続したレートで分析器26内に流れるため、分析器26は、ガスサンプル32の水銀濃度のリアルタイム分析を実施する。そのため、分析器26は、流体サンプル内に存在する元素水銀255の濃度の「スパイク」または所定期間にわたるサンプル内の水銀濃度に関連する傾向(たとえば、増加または減少)を検出することができる。
【0078】
先に示したように、分析器26が、(たとえば、圧力減少装置を介して)変換器24からのガスサンプル32を、比較的低い圧力(たとえば、0.1〜0.3気圧)で受け取り、収容することによって、分析器26は、元素水銀255の分子衝突の回数を減少させる
。しかし、蛍光を発するのに利用可能な、励起された元素水銀原子の数は、圧力に比例する。したがって、ガスサンプル32の圧力減少は、蛍光を発するのに利用可能な、励起された元素水銀原子の数も減少させる。ガスサンプル32を、真空または負ゲージ圧下で収容することによって、分析器26は、励起された元素水銀255の蛍光中に、流体サンプル32内での励起された元素水銀255によって生成される蛍光強度または蛍光信号を減少させる。しかし、ガスサンプル32に及ぼされる減少した圧力の影響は、検出感度に対してより大きな要求をもたらすが、本発明による蛍光検出は、流体サンプル内の元素水銀の濃度を検出するための、実質的に感度が高くかつ正確な方法を提供する。
【0079】
先に示したように、分析器26は、比較的低い圧力、約0.1気圧〜0.3気圧を有するガスサンプル32を、変換器24から受け取り、ガスサンプル32を比較的低い圧力に維持する。分析器26は、衝突不活性化、したがって、元素水銀255の蛍光に関する蛍光消失の効果を減少させる。しかし、場合によっては、分析器26は、約0.3気圧より大きい圧力で変換器24からガスサンプル32を受け取る。チャンバ260内の励起された水銀原子の原子/分子相互作用の回数を減らして、元素水銀255の蛍光に関する衝突不活性化蛍光消失の効果を減少させるために、分析器26は、蛍光消失低減機構を含む。蛍光消失低減機構は、サンプル32内で、元素水銀255の蛍光に関する蛍光消失の効果を低減するように構成される。
【0080】
図8に戻ると、一配置構成では、(たとえば、分析器26が、約0.3気圧より大きい圧力で変換器24からガスサンプル32を受け取る場合)蛍光消失低減機構は、ハウジング250に結合される圧力減少装置254を含む。圧力減少装置254は、石炭燃焼施設の煙突または煙道34などの流体源または図1に示す変換器24の圧力に対してガスサンプル32の圧力を減少させて、ガスサンプル32内の元素水銀255の蛍光消失を最小にする、または、減少させる。
【0081】
図8に関して、一配置構成では、圧力減少装置254は、ハウジング250の流量制限器239と共に動作する真空ポンプ64を含む。示すように、ハウジング250の出口258は、真空ポンプ64に流体連通する。ハウジングの入口256は、加熱された導管40の幅または直径に対して、比較的狭い幅または直径294を画定する流量制限器239(たとえば、ノズル)として構成される、または、流量制限器239を含む。動作中、たとえば、真空ポンプ64は、変換器24から、ハウジング250の流量制限器239を通して分析器26のハウジング250内に流体サンプル32を引き入れる。ガスサンプル32が、流量制限器239(たとえば、入口256の流量制限器)を通って流れるにつれて、ガスサンプル32の圧力は、変換器24内に収容された約1気圧の圧力などの第1圧力から、(たとえば、分析器26内に収容された)約0.1〜0.3気圧の第2圧力に減少する。
【0082】
図10は、分析器26の別の配置構成を示す。示すように、分析器26の蛍光消失低減機構254は、純粋な窒素ガスなどの、酸素が枯渇したガスを含有するガス供給部30(たとえば、酸素が枯渇したガス源)として構成される。一配置構成では、酸素が枯渇したガス源30は、導管44を介して分析器26のチャンバ260に酸素が枯渇したガスを送出する。別の配置構成では、酸素が枯渇したガス源30は、(たとえば、図1に示す)導管47を介してプローブに酸素が枯渇したガスを送出する。純粋な窒素ガスなどの、酸素が枯渇したガスは、酸素に比べて元素水銀の蛍光を消失させる程度が実質的に低い。チャンバ260内への酸素が枯渇したガスの導入は、流体サンプル32を希釈し、ガスサンプル32内での元素水銀の蛍光消失を低減する。同様に、プローブ22内への酸素が枯渇したガスの導入は、流体サンプル32を希釈し、ガスサンプル32内での元素水銀の蛍光消失を低減する。
【0083】
一配置構成では、弁アセンブリ332は、酸素が枯渇したガス源30とハウジング250との間に位置決めされて、供給源から送出される、酸素が枯渇したガスの量が調節され、また、弁アセンブリ332は、コントローラ268に電気結合される。コントローラ268は、弁アセンブリ332の開閉を調節して、チャンバ260またはプローブ22へ送出される酸素が枯渇したガスの量を制御する。
【0084】
図11に示す一配置構成では、分析器26は、第1偏光フィルタ282および第2偏光フィルタ284を含み、偏光フィルタ282および284は、互いに対して、また、好ましい散乱平面に対して交差する。先に示したように、単一偏光フィルタ282の使用は、チャンバ260内での光とガスの相互作用によって生じるチャンバ260内での光散乱の効果を減少させる。交差した偏光フィルタ282、284の使用は、分析器26内で形成される他のタイプの光学干渉の効果を最小にする。たとえば、交差した偏光フィルタ282、284は、検出器アセンブリ262によって検出される出力信号(たとえば、蛍光)に及ぼされる、チャンバの壁から反射された光の効果を最小にする。
【0085】
先に示したように、分析器26は、ガスサンプル32内の元素水銀の存在を正確に検出または測定するために、定期的な較正を必要とする。図1で示すように、較正は、較正器28によって行われ、較正器28は、一配置構成では、ラインまたは導管45を通して分析器26に流体連通し、ペルチエクーラ/蒸気圧制御および質量流量コントローラなどを使用することによって、特定の濃度で気化元素水銀を分析器26に提供する。分析器26は、較正器28から受け取った元素水銀の量を、導管44を介してガス供給部30から受け取った乾燥した実質的に水銀の無いガスの元素水銀の量と比較する。こうした比較の結果は、分析器26の直接の較正を可能にする。
【0086】
場合によっては、分析器26は、ガスサンプル32内の元素水銀と酸化水銀の両方の存在を正確に検出または測定するために、定期的な較正を必要とする。較正器28は、変換器24に接続され、水銀含有蒸気の形態などの既知の濃度の酸化水銀を変換器24に提供する。既知の濃度を有する酸化水銀を提供することによって、較正器28は、水銀監視システム20内での分析器26の較正を可能にする。
【0087】
図12は、較正器28の配置構成を示す。較正器28は、元素水銀源550、酸化成分源552、および元素水銀源550と酸化成分源552に結合する反応器554を含む。
元素水銀源550は、導管558によって反応器に接続され、既知の濃度を有する酸化水銀ストリーム556を反応器554に提供する。たとえば、一配置構成では、元素水銀源550は、液体元素水銀を有する蒸気発生器を含む。液体元素水銀は、特定の圧力と温度を加えることによって気化する。蒸気発生器は、さらに、気化元素水銀を通してガス流または空気流(たとえば、実質的に水銀の無いガス)を流し、蒸気ストリーム内で既知の(たとえば、オペレータが決定した)濃度の気化水銀を有する蒸気ストリーム566として、気化水銀を反応器554に送出する。別の配置構成では、元素水銀源550は、浸透デバイスを含む。浸透デバイスは、2相状態(液体とガス)で元素水銀を含有する。実質的に一定の温度で、浸透デバイスは、浸透性要素(たとえば、テフロン(登録商標)ハウジング)を通して実質的に一定のレートでガス状元素水銀を放出し、元素水銀ガス566は、導管558を介して反応器554に送出される。
【0088】
酸化成分源552は、導管559によって反応器554に接続され、水銀酸化成分568を反応器554に提供する。たとえば、酸化成分源552は、塩素(たとえば、Cl)を反応器554に提供して、反応器554によって受け取られる元素水銀を酸化させる。一配置構成では、酸化成分源552は、加熱によってガス相の塩素を発生する塩素発生化学物質を保持する容器として構成される。
【0089】
一配置構成では、酸化成分源552は、ヒータ562、および、固体形態の、塩化パラジウム(たとえば、PdCl)または塩化タングステンなどの水銀酸化成分568を含む。こうした場合、ヒータ562は、酸化成分源552内で塩化パラジウムの温度を上昇させて、塩素成分からのパラジウム成分の熱分離を引き起こす。分離された塩素は、その後、酸化成分源552から反応器554へ塩素ガス568として誘導される。
【0090】
反応器554は、元素水銀源550から元素水銀566を、酸化成分源552から水銀酸化成分(たとえば、塩素)568を受け取り、元素水銀ガス(元素水銀源550からの水銀が全て酸化されるわけでないと考える)と塩化水銀(HgCl)ガスを含む出力または出力ストリームを形成するために、酸化成分568を元素水銀566に結合させるように構成される。反応器554は、一配置構成では、元素水銀ガス566と塩素ガス568の混合のためのチャンバを画定し、チャンバに熱的につながる加熱コイルなどのヒータ560を含む。ヒータ560は、熱エネルギー(たとえば、熱)をチャンバに送出して、塩化水銀(HgCl)を形成するように、元素水銀ガス566と塩素ガス568の結合を促進する。
【0091】
先に示したように、較正器28は、元素水銀と酸化水銀の両方に対する正確な応答を必要とする連続排出監視システムを較正するために、測定可能な濃度の酸化水源を発生する。以下は、較正器28の動作の例を述べる。
【0092】
図12に関連して得られる図13は、(たとえば、反応器554によって保持された元素水銀ガス566に対する水銀酸化成分568の添加の前と後における)較正器28の動作中の出力46内の元素水銀の濃度を示す。
【0093】
較正器28では、元素水銀源550は、第1濃度の元素水銀566を反応器554に送出する。たとえば、較正器28の元素水銀源550は、既知のまたは第1の元素水銀濃度値[Hgを有する元素水銀ストリーム566を発生する。図13に示すように、第1時間T1にて、(導管558を介して元素水銀源550から反応器554へ流れる)元素水銀ストリーム566は、10マイクログラム/単位容積の第1の既知の濃度値582を有する場合がある。
【0094】
較正器28の酸化成分源552は、ほぼ室温(たとえば、22℃)で動作することができる反応器554に酸化成分568を送出する。反応器554は、酸化成分568を元素水銀566に結合させる。たとえば、図13に示すように、第2時間T2にて、酸化成分源552は、塩素ガス(たとえば、Cl)を、導管559によって搬送される流体流として反応器554に提供して、反応器554によって受け取られる元素水銀566を酸化させる。先に示したように、反応器554は、塩化水銀(HgCl)ガスを形成するように元素水銀(たとえば、ガス)566と塩素ガス568の混合を可能にするチャンバを画定する。一配置構成では、反応器は、ヒータ560から熱入力(たとえば、熱)を受け取って、塩化水銀(HgCl)ガスを形成するように塩素ガス568と元素水銀566との迅速な結合を促進させる。
【0095】
図13に示すように、第2時間T2と第3時間T3との間の間隔で、塩素ガス568が、反応器内に存在する元素水銀566の一部分(たとえば、あるパーセンテージ)と結合して、酸化水銀を形成するため、反応器554内の元素水銀の濃度は、元素水銀源550から反応器554へ送出された濃度から減少する。たとえば、元素水銀の濃度は、10マイクログラム/単位容積の第1濃度582から7マイクログラム/単位容積の第2濃度590へ減少する。
【0096】
較正器28は、酸化成分568と元素水銀566の結合に基づく第2濃度の元素水銀を
有する出力46、および、第1濃度の元素水銀と第2濃度の元素水銀との差に基づく既知の濃度の元素水銀を有する出力を発生する。図13に示すように、第2時間T2と第3時間T3との間の間隔で、塩素ガス568が、反応器内に存在する元素水銀566の一部分(たとえば、あるパーセンテージ)と結合して、酸化水銀を形成するため、反応器554内の元素水銀の濃度は、元素水銀源550から反応器554へ送出された濃度から減少する。たとえば、元素水銀の濃度は、10マイクログラム/単位容積の第1濃度582から7マイクログラム/単位容積の第2濃度590へ減少する。第1濃度の元素水銀と第2濃度の元素水銀との差によって、ユーザは、出力46内の酸化水銀の濃度を求めることが可能になる。較正器28は、第2の濃度を有する出力46(たとえば、出力ストリーム)を変換器24へ放出する。
【0097】
図12に戻ると。一配置構成では、較正器28は検出器556を含む。検出器556は、導管572を介して反応器554に接続され、反応器554から出力ストリーム46を受け取るように構成される。検出器556は、プロセッサ614およびメモリ616などのコントローラ564を含む。原子蛍光分光計などの検出器556は、コントローラ564と共に、出力46内の元素水銀の濃度を検出するように構成される。たとえば、検出器556は、原子蛍光分光法を利用して、反応器出力46内に存在する元素水銀の濃度を測定する。検出器556(たとえば、検出器556のコントローラ564)はまた、反応器出力46内に存在する元素水銀の第2濃度590(再び図13を参照されたい)を、元素水銀源550によって生成される元素水銀566の既知の濃度と比較する。検出された元素濃度の差は、以下に述べるように、出力46内の酸化水銀の濃度の計算を可能にする。
【0098】
たとえば、検出器556は、元素水銀の第1濃度582と、出力46内の元素水銀の第2濃度590との差を計算して、出力46内の酸化水銀の濃度を検出する。すなわち、コントローラ564は、検出器556から出力46内の元素水銀の第2濃度値を受け取り、その第2の減少した元素水銀濃度[Hgを第1の既知の元素水銀濃度[Hgから減算する。元素水銀濃度の変化592として図13に示す[Hgと[Hgとの差は、較正器28によって生成される酸化水銀(たとえば、HgCl)の濃度に実質的に等しい。測定可能な濃度の酸化水銀を提供することによって、較正器28は、元素水銀と酸化水銀の両方に対して正確に応答するように連続排出監視システム20をユーザが較正することを可能にする。
【0099】
図12に戻ると、一配置構成では、コントローラ564は、電気ライン574を通して反応器554のヒータ560の熱出力を制御する。コントローラ564は、反応器554に連結するヒータ560を起動して、反応器554内の元素水銀566と酸化成分568に熱を提供し、酸化水銀の形成を促進させる。コントローラ564はまた、ヒータ560の熱出力(たとえば、ヒータ560によって提供される熱レベル)を調整して、元素水銀566と酸化成分568の結合の程度、したがって、出力46内に存在する酸化水銀の濃度を調整する。
【0100】
動作中、コントローラ564は、(検出器556の出力46でもある)反応器554の出力46内の酸化水銀の濃度を計算する。たとえば、特定の適用形態によって、較正器28が、特定のプリセットされた濃度の酸化水銀を提供することを要求される場合、コントローラ564は、プリセットされた酸化水銀濃度値(たとえば、閾値)を計算された酸化水銀値と比較する。プリセットされた酸化水銀濃度値が、計算された酸化水銀値に等しくない場合、コントローラ564は、ヒータ560の熱出力を調整して、反応器554の温度を上昇させるか、または、下降させ(たとえば、反応器554内の元素水銀566と酸化成分568の温度を上昇させるか、または、下降させ)、元素水銀566と酸化成分568との反応の程度を変化させ、それにより、出力46内に存在する酸化水銀の濃度を調整する。
【0101】
一配置構成では、コントローラ564は、電気ライン576を通して、酸化成分源552に連結するヒータ562に電気接続され、ヒータ562を制御する。先に示したように、一配置構成では、酸化成分源552によって収容される酸化成分568は、塩化パラジウム(たとえば、PdCl)または塩化タングステンなどの酸化金属である。動作中、コントローラ564は、ヒータ562を起動して(たとえば、ヒータは、約300℃の温度で動作する)、酸化金属に熱を提供し、酸化成分源552から反応器554へ流れる塩素ガスを放出させる。
【0102】
コントローラ564は、一配置構成では、ヒータ562の熱出力(ヒータ562によって提供される熱レベル)を調整して、金属成分および酸化成分568への酸化金属の分解の程度を調整するようにも構成される。分解の程度を調整することによって、コントローラ564は、反応器554に対して酸化成分源552によって送出される酸化成分568の量を調整する、したがって、出力46内に存在する酸化水銀の濃度を調整することができる。
【0103】
動作中、コントローラ564は、出力46内の酸化水銀の濃度を計算する。たとえば、特定の適用形態によって、較正器28が、特定のプリセットされた濃度の酸化水銀を提供することを要求される場合、コントローラ564は、プリセットされた酸化水銀濃度値(たとえば、閾値)を計算された酸化水銀値と比較する。プリセットされた酸化水銀濃度値が、計算された酸化水銀値に等しくない場合、コントローラ564は、ヒータ562の熱出力を調整して、金属成分および酸化成分568への酸化金属の分離レートを上げるか、または、下げる。酸化金属の分解の程度を変えることによって、コントローラ564は、反応器554内で元素水銀566と化学的に結合するための、反応器554内で利用可能な酸化成分568(たとえば、塩素ガス)の量を増加させるか、または、減少させる。結果として、コントローラ564は、反応器554内で生成され、反応器554からの出力46内に提供される酸化水銀の濃度を調整する。
【0104】
一配置構成では、コントローラ564は、動作中に、元素水銀源550によって反応器554に提供される元素水銀566の量を調整する。たとえば、一配置構成では、コントローラ564は、元素水銀源550に連結し、かつ、導管558に流体連通する弁578に電気ライン578を通して電気接続される。反応器554への元素水銀566の流量を増加させる、または、減少させることによって、コントローラ564は、存在する酸化成分と化学的に結合するために利用可能な反応器554内の元素水銀566の量を調整する。結果として、コントローラ564は、反応器554内で生成され、反応器554からの出力46内に提供される酸化水銀の濃度を調整する。
【0105】
たとえば、動作中、コントローラ564は、出力46内の酸化水銀の濃度を計算する。コントローラ564は、プリセットされた酸化水銀濃度値(たとえば、閾値)を、計算された酸化水銀値と比較する。プリセットされた酸化水銀濃度値が、計算された酸化水銀値に等しくない場合、コントローラ564は、元素水銀源550の弁579などを調整することによって、反応器554に送出される元素水銀566の量を調整する(増加させるか、または、減少させる)。反応器554に提供される元素水銀566の量を調整することによって、コントローラ564は、反応器554内で生成され、かつ、反応器554からの出力46内に提供される酸化水銀の濃度を調整する。
【0106】
一配置構成では、コントローラ564は、動作中に、酸化成分源552によって反応器554に提供される酸化成分568の量を調整する。たとえば、一配置構成では、コントローラ564は、酸化成分源552に連結し、かつ、導管559に流体連通する弁580に電気ライン580を通して電気接続される。反応器554への酸化成分568の流量を
増加させる、または、減少させることによって、コントローラ564は、存在する元素水銀566と化学的に結合するために利用可能な反応器554内の酸化成分568の量を調整する。結果として、反応器554に提供される酸化成分568の量を調整することによって、コントローラ564は、反応器554内で生成され、かつ、反応器554からの出力46内に提供される酸化水銀の濃度を調整する。
【0107】
たとえば、動作中、コントローラ564は、出力46内の酸化水銀の濃度を計算する。コントローラ564は、プリセットされた酸化水銀濃度値(たとえば、閾値)を計算された酸化水銀値と比較する。プリセットされた酸化水銀濃度値が、計算された酸化水銀値に等しくない場合、コントローラ564は、元素水銀源550の弁584などを調整することによって、反応器554に送出される酸化成分568の量を調整する(増加させるか、または、減少させる)。反応器554に提供される酸化成分568の量を調整することによって、コントローラ564は、反応器554内で生成され、かつ、反応器554からの出力46内に提供される酸化水銀の濃度を調整する。
【0108】
図14は、反応器および酸化成分源(図12の要素554および552)が、単一の一体化変換ユニット596を形成する較正器28の配置構成を示す。こうした配置構成は、既知の濃度の酸化水銀を発生するために、較正器28によって要求されるコンポーネントの数を最小にする。
【0109】
変換ユニット596は、第1端594と第2端595を有する。第1端594は、元素水銀源550に接続され、変換ユニット596を通して第2端595の方へ元素水銀566を誘導するように動作する。第2端595は、検出器556に接続され、検出器556の方へ出力46(たとえば、ガス相における元素水銀と酸化水銀の結合物)を誘導するように動作する。変換ユニット596は、フィルタ597およびヒータ598を含み(すなわち、変換ユニット596の第2端595がフィルタ597に接続され)、塩化パラジウム(たとえば、PdCl)などの酸化金属599を収容する。
【0110】
ヒータ598は、変換ユニット596内の材料を加熱するように動作し、また、2重の目的を果たす。第1に、ヒータ598は、変換ユニット596内で酸化金属599の温度を増加させて、酸化成分からの金属成分の分離を引き起こすように構成される。第2に、ヒータ598は、熱エネルギーまたは熱を変換ユニット596へ送出して、変換ユニット596内に存在する元素水銀ガス566および酸化成分(たとえば、塩素ガス)568の温度を増加させるように構成される。こうした温度の増加は、塩化水銀(HgCl)を形成するための元素水銀ガス566と塩素ガス568の結合を促進する。
【0111】
図12に戻ると、較正器28は、一配置構成では、コンピュータ化デバイス610として構成される。コンピュータプログラム製品612は、較正器28として働くようにデバイス610を構成するための、コンピュータ化デバイス610にロードされるアプリケーションまたは論理命令を含む。
【0112】
コンピュータ化デバイス610はコントローラ564を含み、コントローラ564は、一配置構成では、メモリ614およびプロセッサ616を含む。メモリ614は、たとえば、コンピュータメモリ(たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、または別のタイプのメモリ)、ディスクメモリ(ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスクなど)などの任意のタイプの揮発性または不揮発性メモリまたは記憶システムであることができる。メモリ614は、コンピュータ化デバイス610の一実施形態において、較正器28の実施形態に従って構成された較正アプリケーションを形成する論理命令および/またはデータをエンコードされる。換言すれば、較正アプリケーションは、メモリまたは記憶部614内、または、コンピュータデバ
イス610にアクセス可能な任意のコンピュータ読み取り可能媒体内に存在するソフトウェアコーディング命令および/またはデータを表す。
【0113】
プロセッサ616は、中央処理ユニット、コントローラ、特定用途向け集積回路、プログラム可能なゲートアレイ、または、較正アプリケーション論理命令を、ランさせる、実行する、解釈する、動作させる、またはその他の方法で実施するために、メモリ614内にエンコードされた較正アプリケーションにアクセスすることができる他の回路などの、任意のタイプの回路または処理デバイスであってよい。換言すれば、コンピュータデバイス610の別の実施形態では、較正器プロセスは、較正器アプリケーションの論理命令の1つまたは複数の部分を表し、そして一方、コンピュータ化デバイス610内で、プロセッサ616に関して、プロセッサ616によって、または、プロセッサ616内で実行される、または、その他の方法で実施される。
【0114】
本発明は、本発明の好ましい実施形態を参照して、特に示し述べられたが、添付特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更を行ってもよいことが当業者によって理解されるであろう。
【0115】
たとえば、図1に示すように、プローブ22は、煙突34からガスサンプル32を取り出し、加熱された導管38によって、ガスサンプル32を変換器24に送出する。加熱された導管38は、ガスサンプル32の凝縮および導管38に対する気化水銀(たとえば、Hg+2種)の「付着」を制限する。こうした図示は例に過ぎない。一配置構成では、変換器24は、ガスサンプル源(たとえば、煙突)に密に近接して配置される。たとえば、変換器24は、ユーティリティ煙突34からのサンプル32の抽出点の近くに(たとえば、プローブ22に比較的密に近接して)位置するか、または、抽出プローブ22に内臓される(プローブ22の一部として一体に形成される)ことができる。こうした構成は、プローブ22と変換器24との間の加熱された導管38についての必要性を最小にする、または、なくす。
【0116】
同様に、図2に関して述べた一配置構成では、ヒータ62は、変換器24の第1チャンバ56に熱的につながるように配置された第1ヒータ部分62−1と、変換器24の第2チャンバ58に熱的につながるように配置された第2ヒータ部分62−2を有するものとして構成される。述べたように、第1ヒータ部分62−1は、ガスサンプル32を約750℃の温度まで加熱して、酸化成分84から元素水銀成分80を熱分解してもよい。同様に、述べたように、第2ヒータ部分62−2はまた、第2チャンバ58内のガスサンプル32を加熱して、酸化成分84から元素水銀成分80の分離を維持する。こうした説明は例に過ぎない。一配置構成では、第2ヒータ62−2は、第1ヒータ62−1と独立に動作し、第1チャンバ56の温度と異なる、たとえば、第1チャンバ56内のガスサンプルの温度より高いか、低いか、または、等しい温度に第2チャンバ58を維持する。
【0117】
先に示したように、図8および図11に関して、分析器26は、圧力減少装置および/または酸素が枯渇したガス源328として構成された蛍光消失低減機構254を含む。一配置構成では、蛍光消失低減機構254は、圧力減少装置(たとえば、流量制限器またはノズル239と共同して動作するポンプ64)と酸素が枯渇したガス源328(図10を参照されたい)の組合せとして形成されて、ガスサンプル32内での元素水銀255の蛍光に及ぼされる消失の効果をさらに低減する。
【0118】
同様に、先に示したように、図8を参照すると、圧力減少装置254は、流量制限器239(たとえば、ノズル)と共同して動作する真空ポンプ64を含み、ハウジング250の入口256が流量制限器239を含む。一配置構成では、流量制限器239は、分析器26の入口256の上流に位置する。
【0119】
図12に関して、一例では、検出器556は、較正器28の一部を形成する。こうした図示および説明は例に過ぎない。代替の配置構成では、較正器28は、外部検出器(たとえば、較正器の外部の検出器)を利用する。たとえば、較正器28は、システム20の分析器26を利用して、上述した検出器556の機能を実施する。
【0120】
図12は、較正器28の複数のコンポーネント(たとえば、元素水銀源550、反応器560、酸化成分源552、および酸化成分源ヒータ562)を動作させるように構成された単一コントローラ564を有するものとして検出器556を示す。こうした図示は、例に過ぎずない。別の配置構成では、較正器28は、それぞれが上述した単一コントローラ564の1つまたは複数の機能を実施する別個のコントローラを含む。
【0121】
先に示したように、同様に図12に関して、動作中、元素水銀566は、導管558を介して元素水銀源550から反応器554へ流れる。同様に動作中、塩素ガスなどの酸化成分568は、導管559を介して酸化成分源552から反応器554へ流れる。別の配置構成では、導管558は、酸化成分源552を通過して反応器554へ元素水銀566を流す。酸化成分源552は、受動的拡散によって酸化成分568を反応器554へ送出する。酸化成分568の受動的拡散は、酸化成分568を、酸化成分源552から反応器554内に強制的に入れる、または、引き入れるポンプについての必要性を制限する、または、なくす。
【0122】
図12は、元素水銀源550、酸化成分源552、および反応器を、単一「ユニット」として含むものとして較正器28の配置構成を示す。一配置構成では、元素水銀源550および酸化成分源552は、2つの別個のロケーションに位置する。たとえば、元素水銀源550は、機器ラック内に位置し、一方、酸化成分源552は、プローブ22内に、または、プローブ22の近傍内に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】水銀監視システムを示すブロック図。
【図2】本発明の一実施形態による、また、図1の水銀監視システムと共に使用することができる、酸化水銀変換器の配置構成を示すブロック図。
【図3】図2の酸化水銀変換器の配置構成を示すブロック図。
【図4】図2の酸化水銀変換器の別の配置構成を示すブロック図。
【図5】本発明の一実施形態による、また、図1の水銀監視システムと共に使用することができる、酸化水銀変換器の別の配置構成を示すブロック図。
【図6】図5の酸化水銀変換器の配置構成を示すブロック図。
【図7】図2の酸化水銀変換器の配置構成を示すブロック図。
【図8】図1の水銀監視システム内で使用される、水銀分析器の配置構成を示すブロック図。
【図9】相対的蛍光強度とサンプルチャンバ圧との関係を示すグラフ。
【図10】図1の水銀監視システム内で使用される、水銀分析器の配置構成を示すブロック図。
【図11】図1の水銀監視システム内で使用される、水銀分析器の別の配置構成を示すブロック図。
【図12】図1の水銀監視システム内で使用される、水銀システム較正器の配置構成を示すブロック図。
【図13】水銀システム較正器によって発生する酸化水銀の検出を示すグラフ。
【図14】図1の水銀監視システム内で使用される、水銀システム較正器の配置構成を示すブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水銀監視システムであって、
流体源から流体サンプルを取り出すように構成されたプローブと、
前記プローブに流体連通する酸化水銀変換器であって、
ハウジングであって、ハウジングによって画定されるチャンバ内に流体サンプルを導入する入口および出口を有する、ハウジングと、
前記ハウジングによって画定される前記チャンバ内に導入される前記流体サンプルを加熱して、前記流体サンプル内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に変換するように動作するヒータと、
前記流体サンプルの圧力を減少させるように動作する圧力減少装置とを備える、酸化水銀変換器と、
前記酸化水銀変換器の前記出口に流体連通する水銀分析器であって、前記酸化水銀変換器から前記流体サンプルを受け取るように構成され、かつ、前記流体サンプル内の元素水銀の濃度を検出するように動作する、水銀分析器とを備える水銀監視システム。
【請求項2】
前記圧力減少装置が、前記流体サンプルの圧力を、約0.1〜0.3気圧まで減少させるように動作する請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項3】
化学スクラバを備え、前記化学スクラバは、前記変換器を通過する前記流体サンプルが、前記化学スクラバを通って、または、前記化学スクラバに近接して流れるように、前記酸化水銀変換器に流体連通するように配置される請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項4】
前記ハウジングが、実質的に水銀の無い希釈流体を受け取る第2入口を有する請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項5】
前記ヒータが、流体サンプルを、約650℃〜800℃の温度に加熱するように構成される請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項6】
前記圧力減少装置が、前記ハウジングによって画定される前記チャンバに流体連通するように配置された流量制限器を備える請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項7】
前記プローブに流体連通する流れバイパス要素を備え、前記流れバイパス要素が、前記酸化水銀変換器をバイパスする前記流体サンプルを前記水銀分析器に誘導するように構成される請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項8】
前記酸化水銀変換器に流体連通する較正器を備え、前記較正器は、
反応器と、
前記反応器に流体連通する元素水銀源であって、第1の濃度の元素水銀を前記反応器に送出するように構成される、元素水銀源と、
前記反応器に流体連通する酸化成分源であって、酸化成分を前記反応器に送出するように構成される、酸化成分源とを有し、前記反応器が、前記酸化成分を前記元素水銀の少なくとも一部分と結合させて、(i)第2の濃度の元素水銀と、(ii)前記第1の濃度の元素水銀と前記第2の濃度の元素水銀との差として決まる濃度の酸化水銀を有する出力を形成するように動作する請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項9】
水銀監視システムであって、
流体源から流体サンプルを取り出すように構成されたプローブと、
前記プローブに流体連通する酸化水銀変換器であって、前記流体サンプル内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に変換するように動作する、酸化水銀変換器と、
前記酸化水銀変換器に流体連通する水銀分析器であって、
前記変換器から流体サンプルを受け取る入口および前記流体サンプルを放出する出口を有し、前記流体サンプルを収容するチャンバを画定するハウジングと、
前記チャンバに光学的につながる蛍光アセンブリであって、前記流体サンプル内に存在する元素水銀の蛍光を誘発させ、前記元素水銀の少なくとも一部分の蛍光に基づく前記流体サンプルの蛍光信号を検出するように構成される、蛍光アセンブリと、
前記チャンバに流体連通する蛍光消失低減機構であって、前記流体サンプルの蛍光消失を制限するように構成される、蛍光消失低減機構とを有する水銀監視システム。
【請求項10】
前記蛍光消失低減機構が、前記流体源の圧力に対して、前記チャンバ内で流体サンプルの減少した圧力を提供する圧力減少装置を備える請求項9に記載の水銀監視システム。
【請求項11】
前記圧力減少装置が、前記入口を介して流体サンプルを前記チャンバ内に引き入れるように動作するポンプと、前記流体サンプルが前記チャンバ内に入る前に、前記流体サンプルの流量を制限する流量制限器とを備える請求項10に記載の水銀監視システム。
【請求項12】
前記蛍光消失低減機構が、前記チャンバに流体連通する、酸素が枯渇したガス源を備える請求項9に記載の水銀監視システム。
【請求項13】
前記蛍光アセンブリが、前記流体サンプル内に存在する元素水銀の蛍光を誘発させるように構成された光源アセンブリと、前記元素水銀の少なくとも一部分の蛍光に基づく前記流体サンプルの蛍光信号を検出するように構成された検出器アセンブリとを備える請求項9に記載の水銀監視システム。
【請求項14】
前記光源アセンブリが、前記光源アセンブリに光学的につながるように配置される入力偏光要素を備える請求項13に記載の水銀監視システム。
【請求項15】
前記検出器アセンブリが、前記検出器アセンブリに光学的につながるように配置される検出器偏光要素を備える請求項14に記載の水銀監視システム。
【請求項16】
前記プローブに流体連通する流れバイパス要素であって、前記酸化水銀変換器をバイパスする前記流体サンプルを前記水銀分析器に誘導するように構成される、バイパス要素を備える請求項9に記載の水銀監視システム。
【請求項17】
水銀監視システムであって、
流体源から流体サンプルを取り出すように構成されたプローブと、
前記プローブに流体連通する酸化水銀変換器であって、
変換器ハウジングであって、変換器ハウジングによって画定される変換器チャンバ内に流体サンプルを導入する入口および出口を有する、変換器ハウジングと、
前記変換器ハウジングによって画定される前記変換器チャンバ内に導入される前記流体サンプルを加熱して、前記流体サンプル内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に変換するように動作するヒータと、
前記流体サンプルの圧力を減少させるように動作する圧力減少装置とを備える、酸化水銀変換器と、
前記酸化水銀変換器の前記出口に流体連通する水銀分析器であって、
前記酸化水銀変換器から圧力が減少した流体サンプルを受け取る入口および前記圧力が減少した流体サンプルを放出する出口を有し、前記流体サンプルを収容する分析器チャンバを画定する分析器ハウジングと、
前記分析器チャンバに光学的につながる蛍光アセンブリであって、前記流体サンプル内に存在する元素水銀の蛍光を誘発させ、前記元素水銀の少なくとも一部分の蛍光に基づく前
記流体サンプルの蛍光信号を検出するように構成される、蛍光アセンブリとを有する、水銀分析器とを備える水銀監視システム。
【請求項18】
前記圧力減少装置が、前記流体サンプルの圧力を、約0.1〜0.3気圧まで減少させるように動作する請求項17に記載の水銀監視システム。
【請求項19】
化学スクラバを備え、前記化学スクラバは、前記変換器を通過する前記流体サンプルが、前記化学スクラバを通って、または、前記化学スクラバに近接して流れるように、前記酸化水銀変換器に流体連通するように配置される請求項17に記載の水銀監視システム。
【請求項20】
前記分析器ハウジングが、実質的に水銀の無い希釈流体を受け取る第2入口を有する請求項17に記載の水銀監視システム。
【請求項21】
前記酸化水銀変換器に流体連通する較正器を備え、前記較正器は、
反応器と、
前記反応器に流体連通する元素水銀源であって、第1の濃度の元素水銀を前記反応器に送出するように構成される、元素水銀源と、
前記反応器に流体連通する酸化成分源であって、酸化成分を前記反応器に送出するように構成される、酸化成分源とを有し、前記反応器が、前記酸化成分を前記元素水銀の少なくとも一部分と結合させて、(i)第2の濃度の元素水銀と、(ii)前記第1の濃度の元素水銀と前記第2の濃度の元素水銀との差として決まる濃度の酸化水銀を有する出力を形成するように動作する請求項17に記載の水銀監視システム。
【請求項22】
前記水銀分析器が、前記分析器チャンバに流体連通する蛍光消失低減機構を備え、前記蛍光消失低減機構が、前記流体サンプルの蛍光消失を制限するように構成される請求項17に記載の水銀監視システム。
【請求項23】
前記蛍光消失低減機構が、前記分析器チャンバに流体連通する、酸素が枯渇したガス源を備える請求項22に記載の水銀監視システム。
【請求項24】
前記蛍光アセンブリが、前記流体サンプル内に存在する元素水銀の蛍光を誘発させるように構成された光源アセンブリと、前記元素水銀の少なくとも一部分の蛍光に基づく前記流体サンプルの蛍光信号を検出するように構成された検出器アセンブリとを備える請求項17に記載の水銀監視システム。
【請求項25】
較正器を備え、前記較正器が、
酸化成分源を収容し、入口および出口を有する反応器であって、前記出口が、前記酸化水銀変換器に流体連通して、出力を前記酸化水銀変換器に誘導する、反応器と、
第1の濃度の元素水銀を前記反応器の入口に送出するように動作する元素水銀源とを含み、
前記反応器が、酸化成分を生成し、また、前記酸化成分を前記元素水銀の少なくとも一部分と結合させて、(i)第2の濃度の元素水銀と、(ii)前記第1の濃度の元素水銀と前記第2の濃度の元素水銀との差として決まる濃度の酸化水銀を有する出力を形成するように動作する請求項1に記載の水銀監視システム。
【請求項26】
ガスサンプル内の水銀の存在を監視する方法であって、
酸化水銀を有する流体サンプルを加熱することであって、それにより、前記流体サンプル内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に変換する、加熱すること、
前記加熱されたガスサンプルの圧力を減少させることであって、それにより、前記元素水銀成分と前記酸化成分の再結合を制限する、減少させること、
前記圧力が減少した流体サンプル内に存在する元素水銀の蛍光を誘発させること、および、
前記流体サンプル内の前記元素水銀の蛍光に基づく前記流体サンプルの蛍光信号を検出することであって、前記蛍光信号が、前記流体サンプル内の元素水銀の濃度に比例する、検出することを含む方法。
【請求項27】
水銀監視システムであって、
流体源から流体サンプルを取り出すように構成されたプローブと、
前記プローブに流体連通する酸化水銀変換器であって、
ハウジングであって、ハウジングによって画定されるチャンバ内に流体サンプルを導入する入口および出口を有する、ハウジングと、
前記ハウジングによって画定される前記チャンバ内に導入される前記流体サンプルを加熱して、前記流体サンプル内に存在する酸化水銀を元素水銀成分と酸化成分に変換するように動作するヒータとを備える、酸化水銀変換器と、
前記酸化水銀変換器の前記出口に流体連通する水銀分析器であって、前記酸化水銀変換器から前記流体サンプルを受け取るように構成され、かつ、前記流体サンプル内の元素水銀の濃度を検出するように動作する、水銀分析器と、
前記酸化水銀変換器と前記水銀分析器の少なくとも一方に対して、前記流体サンプルの圧力を減少させるように動作する圧力減少装置とを備える水銀監視システム。
を備える
【請求項28】
前記圧力減少装置は、前記流体源の圧力に対して、流体サンプルの圧力を減少させて、前記流体サンプル内でのレーリ散乱の影響を減らすように動作する請求項10に記載の水銀監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−503437(P2009−503437A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510098(P2008−510098)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/016635
【国際公開番号】WO2006/119192
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(507361952)サーモ エレクトロン コーポレーション (2)
【氏名又は名称原語表記】THERMO ELECTRON CORPORATION
【Fターム(参考)】