説明

ガススプリング用検査システム

【課題】 実際の継続的な使用により発生する予期せぬ不具合(不良)に対して確実かつ十分な解析を行い、検査項目の見直しや検査手法の改善等に反映できるようにするとともに、初期段階における不良率の低減や資源節減に寄与する。
【解決手段】 伸縮するシリンダユニット51の内部にガスGを封入したガススプリング50の検査を行うガススプリング用検査システム1を構成する際して、ガススプリング50に対して所定の検査項目に係わる検査を行う検査機能部Feを有するとともに、この検査機能部Feによる検査データの一部又は全部をガススプリング50の識別番号Nに関連させて保存する保存機能部Fmを有する検査手段Aeと、ガススプリング50の外表面50fに対してレーザ光Lにより識別番号Nを所定の深さXdに刻印するレーザ光マーキング手段Arを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮するシリンダユニットの内部にガスを封入したガススプリングの検査を行う際に用いて好適なガススプリング用検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮するシリンダユニットの内部にガスを封入したガススプリング及びこのガススプリングを用いた椅子は、例えば、特許文献1で知られている。
【0003】
同文献1には、内部に加圧ガスが封入されたシリンダと、このシリンダ内に摺動可能に設けられたピストンと、一端がピストンに連結され、他端側がシリンダ外部に延出されたロッドと、このロッドに挿通され、ピストンに画成されたシリンダ内の上室と下室との間を開閉するシリンダ外部から操作可能なバルブ部材と、シリンダの外周に設けられ、シリンダとの間にピストン上室又は下室の何れか一方と連通するリザーバ室を形成する外筒と、この外筒とシリンダとの他端側に嵌合され、ロッドを軸方向に摺動可能にガイドするロッドガイドを備えたガススプリング及びこのガススプリングを用いた椅子が開示されている。この椅子は、脚部と、着座部及び背凭れ部を有する椅子本体部とを備え、脚部から起立したガススプリングにより着座部を支持する。したがって、使用者は、操作部を操作し、ガススプリング内のバルブを開閉することにより着座部の高さを任意に変更することができる。
【特許文献1】特開2001−330068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のガススプリングにおいては、次のような解決すべき問題が存在した。
【0005】
第一に、ガススプリングは、一般の部品と同様に部品段階で良否判別の検査を行っているが、ガススプリングは、内部にガスを封入するという特殊性を有しているため、初期段階では良品であっても実際の継続的な使用により不具合を発生する場合がある。この場合、初期段階では、専用の検査装置により各種検査項目に対する精密な検査を行っているが、ガススプリング固有の特殊事情から初期段階の静的な検査では、継続的な使用により発生する不具合を発見するには限界がある。
【0006】
第二に、継続的に使用した場合、予期せぬ不具合を発生する虞れがあるため、初期段階の検査では、各種検査項目に対する余裕度を高くした判別基準により厳しい判定を行なわざるを得ない。結局、本来良品として使用できるガススプリングであっても不良品として処理される虞れもあり、不良率の無用な悪化を招くのみならず、資源節減などの観点からも好ましくない。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したガススプリング用検査システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、伸縮するシリンダユニット51の内部にガスGを封入したガススプリング50の検査を行うガススプリング用検査システム1を構成するに際して、ガススプリング50に対して所定の検査項目に係わる検査を行う検査機能部Feを有するとともに、この検査機能部Feによる検査データの一部又は全部をガススプリング50の識別番号Nに関連させて保存する保存機能部Fmを有する検査手段Aeと、ガススプリング50の外表面50fに対してレーザ光Lにより識別番号Nを所定の深さXdに刻印するレーザ光マーキング手段Arを備えることを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、ガススプリング50は、外表面50fの少なくとも一部に塗装面52を有し、この塗装面52にレーザ光マーキング手段Arにより刻印することができる。また、レーザ光マーキング手段Arは、識別番号Nを刻印する際における刻印の深さXdを設定する深さ設定機能を有し、塗装面52の厚さXtを考慮して刻印の深さXdを設定することができる。なお、ガススプリング50には、椅子80に用いるガススプリングを適用して最適である。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係るガススプリング用検査システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 検査機能部Feによる検査データをガススプリング50の識別番号Nに関連させて保存する保存機能部Fmを有する検査手段Aeと、ガススプリング50の外表面50fに対してレーザ光Lにより識別番号Nを刻印するレーザ光マーキング手段Arを備えるため、実際の継続的な使用により発生する不具合(不良)に対しても確実かつ十分な解析を行うことができる。したがって、この解析結果をガススプリング50の設計自体に反映できることは勿論のこと、検査機能部Feにおける検査項目の見直しや検査手法の改善等にも反映できるため、より望ましい検査システム1を構築できる。
【0012】
(2) 実際の継続的な使用により発生する不具合(不良)に対する十分な解析を行うことができることから、上述したように、検査機能部Feにおける検査項目や検査手法等に反映させることにより、より的確な良否判別を行うことができる。したがって、初期段階における不良率の低減に寄与できるとともに、資源節減などの観点からも望ましい検査システム1を構築できる。
【0013】
(3) 好適な態様により、ガススプリング50の外表面50fにおける塗装面52に、レーザ光マーキング手段Arにより刻印するようにすれば、小さい数字や文字等であっても明瞭な刻印を行うことができる。例えば、金属色(銀色)の外表面50fに黒色の塗装面52を設けた場合には、コントラストの高い明瞭な識別番号Nを容易かつ確実に表示できる。
【0014】
(4) 好適な態様により、レーザ光マーキング手段Arにおける刻印の深さXdを設定する深さ設定機能を利用し、塗装面52の厚さXtを考慮して刻印の深さXdを設定すれば、塗装面52の厚さ不良を容易に検査(判別)することができ、ガススプリング50の更なる品質向上及び商品性向上に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の理解を容易にするため、本実施形態に係るガススプリング用検査システム1の検査対象となるガススプリングの構成及び機能について、図2及び図3を参照して説明する。
【0017】
図2に示す符号80は、ガススプリング50を用いた椅子であり、脚部81と、着座部82s及び背凭れ部82rを有する椅子本体部82とを備え、脚部81から起立したガススプリング50により椅子本体部82(着座部82s)が支持される。
【0018】
図3に一般的なガススプリング50の模式的な内部構造を示す。なお、本実施形態(本発明)に係る検査システム1の検査対象には、例示のガススプリング50に限らず様々なタイプのガススプリングを適用できる。図3に示すガススプリング50は、大径の固定シリンダ部55と小径の可動シリンダ部56からなるシリンダユニット51を有し、この可動シリンダ部56は固定シリンダ部55に対してガイド部57を介してスライド自在(伸縮自在)となる。この場合、可動シリンダ部56は、インナシリンダ部56iとアウタシリンダ部56oの二重構造を有し、インナシリンダ部56iとアウタシリンダ部56o間は通気可能である。また、固定シリンダ部55の内部には底面中央から軸方向に起立したピストンロッド58rを有し、このピストンロッド58rの上端側は可動シリンダ部56の底部を貫通して可動シリンダ部56の内部に至るとともに、ピストンロッド58rの上端は可動シリンダ部56の内部に配したピストン58に結合する。この場合、ピストンロッド58rは可動シリンダ部56の底部にスライド自在となり、ピストン58は可動シリンダ部56の内部にスライド自在となる。さらに、可動シリンダ部56の上端部には、上方に突出して外部から操作可能な操作ボタン60を有するバルブ59を有するとともに、可動シリンダ部56の内部には圧縮状態のガスGが封入される。これにより、操作ボタン60を押し操作すれば、バルブ59が開となり、ピストン58の上側のガス室は、バルブ59の内部及びインナシリンダ部56iとアウタシリンダ部56o間を介してピストン58の下側のガス室に連通するため、可動シリンダ部56を任意に伸縮することができるとともに、操作ボタン60の押し操作を解除すれば、可動シリンダ部56を任意の位置に停止させることができる。
【0019】
次に、本実施形態に係るガススプリング用検査システム1の構成について、図1を参照して説明する。
【0020】
検査システム1は、大別して、検査手段Aeとレーザ光マーキング手段Arを備えるとともに、検査手段Aeは、さらに、検査機能部Feと保存機能部Fmを備える。また、検査機能部Feは、機械系Femと電気系(制御系)Fecを備えている。
【0021】
検査機能部Feにおける機械系Femの構成は、機台11を備え、この機台11の上面11uには上方に起設した四本の垂直フレーム12v…及びこの垂直フレーム12v…の上端に固定した水平支持盤12hからなる検査シリンダ支持部12を備える。水平支持盤12hの中央には、ロッド13rを下方に向けたエアシリンダ(又は油圧シリンダ)による検査シリンダ13を支持し、このロッド13rの下端には試料操作部14を有する。一方、検査シリンダ13の下方であって、機台11の上面11uには、ガススプリング50(検査試料)をセットする検査試料セット部15を備えるとともに、検査試料セット部15の側方には、垂直フレーム12v…の側部に取付けた検査試料チャック部16を備える。17…はリニアスケール(位置センサ)を含むリニアガイドである。これにより、ガススプリング50を、図1に示すように、検査試料セット部15の上に起立させてセットすれば、ガススプリング50の固定シリンダ部55は検査試料チャック部16により把持される。
【0022】
また、検査機能部Feにおける電気系(制御系)Fecには、コントローラ21を備える。コントローラ21はCPU等を内蔵したコンピューティング機能を有するコントローラ本体22を備え、このコントローラ本体22には、検査処理プログラム(アプリケーションソフトウェア)22p及び各種データを記憶可能な記憶部(内部メモリ)22mが付属する。さらに、コントローラ本体22に接続したディスプレイ23を備えるとともに、必要により、コントローラ本体22にはプリンタや通信部等を接続することができる。なお、ディスプレイ23はタッチパネル式ディスプレイであり、各種入力機能,設定機能及び操作機能を備えている。よって、このような機械系Fem及び電気系(制御系)Fecを備える検査機能部Feにより、ガススプリング50に対する所定の検査項目に係わる検査を行うことができる。
【0023】
一方、保存機能部Fmは、この検査機能部Feにより検査を行った各種検査項目に係わる検査データ(検査結果)をガススプリング50の識別番号Nに関連させて保存する機能を備える。この保存機能部Fmは、上述した記憶部22mの一部を利用することができるとともに、CDやFD等の各種の外部メモリを利用できる。
【0024】
他方、レーザ光マーキング手段Arは、ガススプリング50の外表面50fに対してレーザ光Lにより識別番号Nを刻印する機能を備える。このレーザ光マーキング手段Arには、レーザマーカ31を使用し、機台11の上面11uに設置する。この場合、レーザ光Lの投光部32は、検査試料セット部15の上にセットしたガススプリング50における固定シリンダ部55の上端付近に向けて配する。なお、レーザマーカ31には、例えば、3次元制御レーザマーカ(株式会社キーエンス社製,ML−Z9500シリーズ)などを使用することができる。また、使用するレーザマーカ31は、刻印する際における刻印の深さXdを設定する深さ設定機能を備えている。
【0025】
次に、本実施形態に係るガススプリング用検査システム1の機能(動作)について、図1〜図6を参照して説明する。
【0026】
まず、検査試料には、図2及び図3に示すガススプリング50を適用できる。このガススプリング50は、前述したように、椅子80に用いるものであり、固定シリンダ部55の地肌面には黒色塗装による塗装面52を有する。固定シリンダ部55の地肌面は金属色(銀色)である。なお、可動シリンダ部56は塗装されていてもよいし、未塗装であってもよい。また、レーザマーカ31に対しては、深さ設定機能により刻印する際における刻印の深さXdを設定する。この場合、刻印の深さXdは、図6(a)に示すように、塗装面52の厚さXtを考慮して設定する。例えば、正規(正常)の塗装面52の厚さがXtsの場合、刻印の幅Xwo(図6(b)参照)に対して、固定シリンダ部55の地肌面(金属色)の幅Xwsが半分程度見えるように設定できる。
【0027】
以下、検査システム1を用いたガススプリング50の検査手順について、図4及び図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0028】
まず、ガススプリング50(検査試料)を検査試料セット部15にセットする(ステップS1)。ガススプリング50を検査試料セット部15にセットすれば、検査試料チャック部16がガススプリング50の固定シリンダ部55を把持して固定する。次いで、検査開始キーをオンすることにより、予め設定されたシーケンスプログラム(検査処理プログラム22p)に従って一連の検査処理が実行される(ステップS2)。検査項目としては、「ストローク測定」,「反力測定」,「ロック力測定」,「反力速度測定」等があり、主に、検査シリンダ13による加圧操作(引張操作)や操作ボタン60の押し操作等により行われるとともに、圧力センサやリニアスケール(位置センサ)等により圧力(力),ストローク,位置,速度等の各種物理量の測定が行われる。そして、全検査項目に係わる検査処理が終了したなら良否判定を行う(ステップS3,S4)。良否判定の結果、不良項目がある場合には不良品処理を行う(ステップS5)。一方、全検査項目に不良がない場合には、検査データを識別番号N(データ)と一緒、即ち、検査データと識別番号Nを関連付けて保存する(ステップS6)。識別番号Nは、例えば、日付と連番を組合わせるなどにより作成できるとともに、各ガススプリング50に対しての識別番号Nは検査の終了時点で付与する。
【0029】
さらに、識別番号N(データ)は、レーザマーカ31に送信される。レーザマーカ31では受信した識別番号Nをレーザ光Lによりガススプリング50の外表面50fに刻印する(ステップS7)。この場合、識別番号Nは、固定シリンダ部55における塗装面52を含む固定シリンダ部55の地肌面に刻印されるとともに、図2に示すように、固定シリンダ部55の上部(上端付近)に刻印される。このように、ガススプリング50の外表面50fである固定シリンダ部55における塗装面52を含む固定シリンダ部55の地肌面に刻印するようにすれば、小さい数字や文字等であっても明瞭な刻印を行うことができる。特に、例示のように、金属色(銀色)の地肌面に黒色の塗装面52を設けた場合には、コントラストの高い明瞭な識別番号Nを容易かつ確実に表示できる。
【0030】
刻印が終了したなら、検査試料セット部15からガススプリング50を離脱し、塗装面52の厚さ不良に係わる検査を行う(ステップS8)。この検査は、図6(a)〜(c)に示すように、識別番号Nの刻印を目視により行うことができる。即ち、レーザマーカ31では、刻印する際における刻印の深さXd(同図(a)参照)を設定するとともに、この深さXdは塗装面52の厚さXtを考慮して設定するため、同図(a)に示すように、厚さXtsが正規の厚さであれば、刻印された黒色の塗装面52の凹部の中に適度の銀色(地肌面)が現れた状態で識別番号Nが表示される。これに対し、同図(b)に示すように、塗装面52の厚さXtmが薄い場合には、刻印された黒色の塗装面52の凹部の中は黒色よりも銀色(地肌面)の面積が大きくなるとともに、同図(c)に示すように、塗装面52の厚さXtnが厚い場合には、刻印された黒色の塗装面52の凹部の中に銀色(地肌面)は現れずに黒色のみとなる。
【0031】
このような塗装面52の厚さに応じた識別番号Nにおける表示態様の変化により、所定の判定基準を設ければ、塗装不良(厚さ不良)を目視により判別することができる。したがって、不良品を判別した場合には不良品処理を行う(ステップS9,S4)。なお、この検査は、例示のような目視による検査であってもよいし、画像処理を利用した検査であってもよい。このように、レーザマーカ31における刻印の深さXdを設定する深さ設定機能を利用し、塗装面52の厚さXtを考慮して刻印の深さXdを設定するようにすれば、塗装面52の厚さ不良を容易に検査(判別)することができ、ガススプリング50の更なる品質向上及び商品性向上に寄与できる。
【0032】
以上、一本のガススプリング50(検査試料)の検査処理について説明したが、検査を行う他のガススプリング50…に対しても同様に行うことができる(ステップS10,S1…)。一方、検査処理の終了したガススプリング50は椅子80の組立工程に送られ、椅子80に対する組付けが行われるとともに、工場出荷が行われる。
【0033】
ところで、椅子80(製品)が出荷され、ユーザにより実際に使用された場合、継続的な使用により予期せぬ故障が発生する場合がある。即ち、前述したように、ガススプリング50は、内部に圧縮状態のガスGを封入するという特殊性を有しているため、工場出荷時(初期段階)には良品であっても実際の継続的な使用により予期せぬ不具合を発生する場合がある。この場合、返品或いは修理依頼によりメーカサイドに戻されることも多いため、メーカサイドでは、故障(不具合)の解析を行うことができる。
【0034】
即ち、検査データは保存機能部Fmに保存されているため(ステップS21)、返品或いは修理依頼により故障した椅子80がメーカサイドに戻された場合、当該椅子80に用いられているガススプリング50に刻印されている識別番号Nと保存機能部Fmに保存されている識別番号N(データ)を照合し、対応する検査データを読み出す(ステップS22,S23)。そして、故障の状態と初期段階での検査データを比較するなどにより故障に対する解析を行うことができる(ステップS24)。なお、識別番号Nは、刻印により表示するため、例えば、シール等を貼付けて表示する場合と異なり、長期使用においても劣化や消えることがない。
【0035】
よって、このような本実施形態に係る検査システム1によれば、検査機能部Feによる検査データをガススプリング50の識別番号Nに関連させて保存する保存機能部Fmを有する検査手段Aeと、ガススプリング50の外表面50fに対してレーザ光Lにより識別番号Nを刻印するレーザ光マーキング手段Arを備えるため、実際の継続的な使用により発生する不具合(不良)に対しても確実かつ十分な解析を行うことができる。したがって、この解析結果をガススプリング50の設計自体に反映できることは勿論のこと、検査機能部Feにおける検査項目の見直しや検査手法の改善等にも反映できるため、より望ましい検査システム1を構築できる。また、実際の継続的な使用により発生する不具合(不良)に対する十分な解析を行うことができることから、上述したように、検査機能部Feにおける検査項目や検査手法等に反映させることにより、より的確な良否判別を行うことができる。したがって、初期段階における不良率の低減に寄与できるとともに、資源節減などの観点からも望ましい検査システム1を構築できる。
【0036】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0037】
例えば、保存機能部Fmに保存する検査データは、検査機能部Feにより得られる検査データの全部であってもよいし、必要となる一部の検査データであってもよい。また、ガススプリング50は、外表面50fの少なくとも一部に塗装面52を有するものが望ましいが、塗装面52以外の状態を排除するものではない。さらに、識別番号Nは、固定シリンダ部55の上部(上端付近)に刻印する場合が望ましいが、刻印する位置(場所)として固定シリンダ部55の上部(上端付近)以外の位置(場所)を排除するものではない。一方、例示したガススプリング50は、椅子80の脚部81から起立して着座部82sを支持するガススプリングであるが、背凭れ部82rに付設するリクライニング用のガススプリングであってもよいし、他の部位に付設するガススプリングであってもよい。なお、ガススプリング50には、椅子80に用いるガススプリングを適用して最適であるであるが、他の用途におけるガススプリング50を排除するものではない。さらに、請求項2及び3に係る発明は、ガススプリング50のみならず、他の塗装製品にも同様に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る検査システムの正面構成図、
【図2】同検査システムの検査対象となるガススプリングの側面図及びこのガススプリングを用いた椅子の側面図、
【図3】同ガススプリングの内部構造を説明するための模式的断面図、
【図4】同検査システムにより検査処理を行う際の手順を説明するためのフローチャート、
【図5】同検査システムにより検査処理を行ったガススプリングが返品された際の処理手順を説明するためのフローチャート、
【図6】同検査システムにおける塗装不良に対する検査原理の説明図、
【符号の説明】
【0039】
1:ガススプリング用検査システム,50:ガススプリング,50f:ガススプリングの外表面,51:シリンダユニット,52:塗装面,80:椅子,G:ガス,Fe:検査機能部,Fm:保存機能部,Ae:検査手段,Ar:レーザ光マーキング手段,N:識別番号,L:レーザ光,Xd:所定の深さ,Xt:塗装面の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮するシリンダユニットの内部にガスを封入したガススプリングの検査を行うためのガススプリング用検査システムであって、前記ガススプリングに対して所定の検査項目に係わる検査を行う検査機能部を有するとともに、この検査機能部による検査データの一部又は全部を前記ガススプリングの識別番号に関連させて保存する保存機能部を有する検査手段と、前記ガススプリングの外表面に対してレーザ光により前記識別番号を所定の深さに刻印するレーザ光マーキング手段を備えることを特徴とするガススプリング用検査システム。
【請求項2】
前記ガススプリングは、前記外表面の少なくとも一部に塗装面を有し、この塗装面に前記レーザ光マーキング手段により刻印することを特徴とする請求項1記載のガススプリング用検査システム。
【請求項3】
前記レーザ光マーキング手段は、前記識別番号を刻印する際における刻印の深さを設定する深さ設定機能を有し、前記塗装面の厚さを考慮して前記刻印の深さを設定することを特徴とする請求項2記載のガススプリング用検査システム。
【請求項4】
前記ガススプリングは、椅子に用いるガススプリングであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガススプリング用検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−54202(P2010−54202A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216187(P2008−216187)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】