ガスセンサ
非分散形赤外線ガスセンサ用の特有な光キャビティと、二酸化炭素濃度が100ppmから2,000ppmでの試験結果を開示している。提案するセンサモジュールは、パルス継続時間が500msのときに最大電圧を示すが、パルス継続時間が200msで最大部分電圧変化量が得られ、18,000倍の増幅率を示す。二酸化炭素濃度が100ppmから2,000ppmの間で、センサモジュールの電圧差(V)は、パルス継続時間が200msでターンオフ時間が3秒のときに200mVとなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的ガスセンサに関し、特に、非分散形赤外線ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学的ガスセンサの主な働きを以下に説明する。
【0003】
一般に、光は光路上での回折、反射、屈折及び吸収により光度が減少あるいは増加する。入射光が光路を通ると、光路上のガスは光を吸収して初期光度は減少する。
【0004】
ガス濃度(J)が等方的で光路上で均一な場合、赤外線の光路(L)を通った後の最終光度 (I)は下記の通りガス吸水係数(K)、光路長(L)と初期光度(Io)の関数であって、Beer-Lambertの法則によって説明できる。
【0005】
式(1):I = Io・e−KJL(x)
Beer-Lambertの法則は上記の式(1)で表される。初期光度(Io)及び測定対象ガスの吸収係数が一定の場合、最終光度(I)は光路上のガス濃度(J)と光路長(L)の関数として表される。
【0006】
式(1)において測定対象ガスが存在しない場合、即ちJ=0のとき、最終光度と初期光度は同じになり、(2)式で表される。
式(2):I = Io
従って、測定対象ガスがない場合とガス濃度がJの場合との光度差は式(3)で得られる。
式(3):ΔI = Io・(1−e−KJL(x))
しかし、従来の赤外線センサは光度に比例した電圧を出力するため、ガスの有無によるセンサの出力は式(4)で表される。
式(4):ΔV=α・ΔI=α・Io・(1−e−KJL(x))
但し、αは比例係数とする。
【0007】
低濃度から高濃度までの広範囲を測定できる光学的ガスセンサを作るためには、まず第1に、長い光路(L)を有する光キャビティ(又はガスチャンバ)を用意し、第2に検出可能な最低光度(Ith)が十分低い赤外線センサを使用し、または、第3に赤外線センサで飽和光度(Isat)が比較的高いが赤外線光源から照射される光の初期光度(Io)より若干低いものを使用することが必要である。
【0008】
しかし、市販の赤外線検出センサ(例えば、熱電対型赤外線センサまたは、受動赤外線センサ)は、上記のすべての条件を満足することができないため、光路長の長い光キャビティを提供する有利な方法が求められる。
【0009】
限られた光キャビティ内で光路を延長するさまざまな方法が提案され、その一つが特許文献1に開示されている。図1に示す通り、この発明は、光導波管を用いて多重反射を起こすことにより光導波管の物理的な長さよりさらに長い平均光路の提供を図っている。またこの発明は、光源から赤外線を任意方向に照射して光路を延長しようとする。しかし、一般的な赤外線ガスセンサでは、入射光線の受光範囲が限られている。このように受光範囲が限られると、実質的に赤外線センサに到達して測定に利用される光は微量となる。したがって、ガスチャンバの効率が悪くなり実用性を欠いていた。
【0010】
別の方法として、White’s Cellの原理を利用した特許文献2が開示されている。図2に示す通り、鏡の反射面に多数の焦点が位置する3つの反射鏡を配置することにより入射光を所定回反射させて、光路上の微量なガスまで分析できるような光路長に延長することができる。
【0011】
しかし、このようなシステムは光源としてレーザーを使用するため、二酸化炭素等ガスの測定には適していない。さらに、反射面間距離が長いため小型ガス測定器への適用は難しい。
【0012】
さらに別の方法として、特許文献3は凸反射鏡と凹反射鏡を組み合わせて構成したガスセンサを開示している。図3に示す通り、本方法は有効な長い光路を確実にするために、ガスセル内に可動凸反射鏡を備えることを特徴とする。本方法によるガス分析器は、ガスセンサ内に一定空間を確保し、かつ、内部の汚れを防ぐための構造物(12)、蓋(13)、円筒型光反射鏡(15)、鏡を回転させるためのステッピングモータ(16)、赤外線センサ(24)、多数のフィルタを備えた回転ディスク(21)およびディスクを回転させるためのステッピングモーター(23)を備える。
【0013】
しかし、このようなシステムの製造は難しいだけでなく、反射鏡を回転させるステッピングモータが必要となるため、携帯型で取り扱いが簡単な小型ガス分析器への適用には不利である。
【0014】
さらなる別の方法が、非特許文献1に開示されている。図4に示す通り、本方法では限られた光キャビティ内に比較的長い光路を提供するために、3つの凹面鏡を配置している。即ち、非特許文献1の開示するガスセンサは3つの楕円形凹面を備え、各凹面から反射される光の焦点位置を互いに対向する反射面上またはその付近に設定する特許文献2に開示されている概念を利用したセル構造の光学的ガスセンサである。
【0015】
しかし、この3つの反射面を有するガスセンサセルの構造は複雑である。さらに、主反射鏡(一体型の反射鏡)の表面上に配置した光源から光キャビティを通って照射される入射光の入射角がわずかに変化することがあるため、光学的センサの適切な位置を決定することが困難であった。
【0016】
本発明は光学的ガスセンサに関し、特に、非分散形赤外線(NDIR)ガスセンサに関する。
【0017】
二酸化炭素の濃度を測定するためには二つの方法がある。一つはNDIR法式であり、もう一つは非特許文献2に開示されている固体電解質方式である。
【0018】
固体電解質センサはNDIRセンサと比べ安価であるが、長期的な安定性、精度の高さ、消費電力の低さなどの面からNDIRセンサの方が好ましい。また、NDIRセンサは、目的ガスが特定波長の赤外線を吸収するという物理的な検出原理を利用するために良好な選択性と感度を示す。
【0019】
NDIRセンサの光学的な特性は次の通りある。
【0020】
一般に、光は光路上での回折、反射、屈折及び吸収により光度が減少あるいは増加する。入射光が光路を通ると、光路上のガスは光を吸収して初期光度は減少する。
【0021】
ガス濃度(J)が等方的で光路上で均一な場合、赤外線の光路(L)を通った後の最終光度) (I)は下記の通りガス吸水係数(K)、光路長(L)と初期光度(Io)の関数であって、Beer-Lambertの法則によって説明できる。
【0022】
式(5):I = Io・e−KJL(x)
Beer-Lambertの法則は上記の式(5)で表される。初期光度(Io)及び測定対象ガスの吸収係数が一定の場合、最終光度(I)は光路上のガス濃度(J)と光路長(L)の関数として表される。
式(5)において測定対象ガスが存在しない場合、即ちJ=0のとき、最終光度と初期光度は同じになり、(6)式で表される。
式(6):I = Io
従って、測定対象ガスがない場合とガス濃度がJの場合との光度差は式(7)で得られる。
式(7):ΔI = Io・(1−e−KJL(x))
しかし、従来の赤外線センサは光度に比例した電圧を出力するため、ガスの有無によるセンサの出力は式(8)で表される。
式(8):ΔV=α・ΔI=α・Io・(1−e−KJL(x))
ただし、αは比例係数とする。
【0023】
低濃度から高濃度までの広範囲を測定できる光学的ガスセンサを作るためには、まず、長い光路(L)を有する光キャビティ(又はガスチャンバ)を用意し、次に検出可能な最低光度(Ith)が十分低い赤外線センサを使用し、あるいは、飽和光度(Isat)が比較的高いが赤外線光源から照射される光の初期光度(Io)より若干低い赤外線センサを使用することが必要である。
【0024】
しかし、市販の赤外線検出センサ(例えば、熱電対型赤外線センサまたは、受動赤外線センサ)は、上記のすべての条件を満足させることができないため、光路長の長い光キャビティを提供する有利な方法が要求されている。
【0025】
実際のNDIRガスセンサシステムには、これまで4種類の光キャビティが適用されている。
【0026】
最初に、特許文献4には一つの赤外線光源と一つの光検出器を備えた角状又は円筒管状のものが開示されている。
2番目に、特許文献5または非特許文献3は、1つの光検出器と熱劣化補償のために2つの赤外線光源を備えたタイプを開示している。
3番目に、非特許文献4は、円筒状光キャビティを用い、対象とするガスの波長を選択するためのFabry-Perotフィルタを利用したものを開示している。
4番目に、非特許文献1は、容量の小さい容器内に3つの楕円鏡を備えて光路を延長させているものを開示している。
【0027】
特に、非特許文献1に開示されている方法は、3つの凹面形反射面を構成して、各凹面から反射された光の焦点位置を互いに対向する反射面上またはその付近に設定する特許文献2に開示されている概念を利用したセル構造の光学的ガスセンサに関する。この方法は、他の方法と比べて比較的長い光路を簡単に提供できるという利点がある。
【0028】
しかし、主反射鏡(一体型の反射鏡)面上に配置した光源から光キャビティを通って照射される入射光の入射角がわずかに変化することがあるため、光学的センサの適切な位置を決定することが困難であった。
【特許文献1】米国特許第5,341,214号明細書
【特許文献2】米国特許第5,009,493号明細書
【特許文献3】米国特許第5,488,227号明細書
【特許文献4】米国特許第5,444,249号明細書
【特許文献5】米国特許第6,067,840号明細書
【非特許文献1】国際公開第98/09152号明細書
【非特許文献2】K.Kaneyasu,“A carbon dioxide gas sensor based on solid electrolyte for air quality control” ,Sensors and Actuators B, 2000, vol.66, pp.56-58
【非特許文献3】I.Y.Park et al, “An implementation of NDIR type CO2 gas sample chamber and measuring hardware for capnograph system in consideration of time response characteristics”, Journal of Korean Sensor Society,2001, vol.5,no.5,pp279-285
【非特許文献4】Makoto Moro et al, “CO2/H2O Gas Sensor Using Tunnable Fabry-Perot Filter with Wide Wavelength Range”,IEEE International Conference on MEMS, 2003, pp.319-322
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は上記の問題を解決するためになされた。本発明の主な目的は光路長をなるべく延長して広い測定範囲を持つだけでなく、設計が容易な光キャビティ(またはガスチャンバ)構造を有する光学的ガスセンサを提供することにある。
【0030】
また、本発明は新型の光学的ガスセンサセルに必要な新しい光キャビティ構造を提供し、このような光キャビティを使用するセンサでの二酸化炭素濃度測定結果に基づいた新しいガスセンサを提示する。
【発明を解決するための手段】
【0031】
前述の目的を達成するための本発明の一態様による光学的ガスセンサは、試料ガスを受容するためのガスチャンバと、ガスチャンバ内に試料ガスを注入またはガスチャンバ内の試料ガスを排出するためのガス開口部と、試料ガスに向けて赤外線を照射するための赤外線光源と、試料ガスを通過した赤外線の光度を検出するための赤外線センサとから構成され、ガスチャンバの壁は、焦点は同じ位置にあるが焦点距離が異なる互いに対向する2つの凹面鏡から成る。
【0032】
前述の目的を達成するための本発明の別の態様による光学的ガスセンサは、試料ガスを受容するためのガスチャンバと、ガスチャンバ内に試料ガスを注入またはガスチャンバ内の試料ガスを排出するためのガス開口部と、試料ガスに向けて赤外線を照射するための赤外線光源と、試料ガスを通過した赤外線の光度を検出するための赤外線センサとから構成される。ガスチャンバの壁は、焦点距離は異なるが焦点が同じ位置にある互いに対向する2つの凹面鏡から成り、これらの凹面鏡は、両凹面鏡の軸に平行な入射光を一方の凹面鏡の面上で反射させてから両凹面鏡の焦点を通過させ、両凹面鏡の焦点を通過した入射光をさらに他方の凹面鏡の面上で反射させて、両凹面鏡の軸に平行に進行させる曲率を有する。
【0033】
ガス開口部は、ガスチャンバの特定の壁面に設けられたガス通気孔とガスチャンバの支持板上に配置されている複数のガス拡散孔を含む。
【0034】
複数のガス拡散孔はガスフィルタで覆われている。
複数のガス拡散孔は、好ましくは赤外線センサから照射される入射光と同軸上に配置されている。
【0035】
ガス通気孔は下向きに曲げられているか、あるいは着脱可能な蓋を備えている。
【0036】
凹面鏡は表面が金メッキ又は金蒸着されて作られている。
【0037】
ガスチャンバは、支持板に形成されている赤外線光源に隣接したガスチャンバの支持板と一体形成されている放物面鏡を含む。
ガスチャンバは、支持板上の赤外線光源から照射される赤外線の少なくとも一部を投射するための光照射口を有する。
赤外線光源を放物面鏡の焦点位置に配置することができる。
【0038】
ガスチャンバの支持板は、赤外線光源との高低差の影響を受けて傾斜するため、高さ調整構造を備えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図5には放物面鏡の光学的特性を示す。
図5に示す通り、放物面鏡の場合、光軸に平行に入射した光の反射光は必ず反射鏡の焦点を通過し、鏡の焦点を通過した反射光は必ず光軸に平行に進む。
本発明はこのような放物面鏡の光学的特性を利用する。
【0041】
図6には焦点が同じ位置にある2つの放物面鏡を備える光キャビティシステムの光学的特性を示す。
図6に示す光空キャビティシステムは、互いに対向する2つの放物面鏡が同じ位置に焦点を持つが焦点距離(OA−F,OB−F)が異なるように配置されている。
光キャビティシステムは光源の位置によって、入射光を光キャビティ内で発散させる発散システム (図6a)と入射光を光キャビティ内で収束させる収束システム(図6b)とに分類される。
図6bに示すように、OA−F<OB−Fの条件を満たす場合、光が凹面(B)から光軸上の焦点Fに向かって進むと、光は焦点を通ってから凹面(A)で反射し、その後光軸に平行に進む。この反射光は、光軸に収束して最終的に凹面(A)または(B)に到達するまで凹面(B)で反射されるプロセスを繰り返す。また、光軸に収束した光は反射して入射してきた方向に再び向かう。
【0042】
図7は、焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離を有する2つの放物面鏡によってできる光路を示す。
図7bに示す通り、OAF−OBF>OA’F−OB’Fであるような光キャビティシステムは、光キャビティ(C’)内での光の反射回数が図7aに示す光キャビティ(C)の反射回数より多いため、光キャビティ(C’)での光路は光キャビティ(C)での光路より長いという特徴がある。
【0043】
上述のように、焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離(OA−F,OB−F)を有する互いに対向する2つの放物面鏡が配置されている光キャビティシステムでは、焦点距離を変えることによって光路長を調整することができ、また光軸の角度と光の入射角を変えることによって光路を調整することができる。
【0044】
さらに、2つの放物面鏡が同じ位置に焦点を有するが互いの焦点距離が異なり、さらに入射光が光軸に収束するため、赤外線センサの位置設定が容易となる。
【0045】
本発明による光学的ガスセンサは、光キャビティシステムの光学的特性を利用し、光に光源と赤外線センサの間の光軸上でできるだけ多く反射させ、これにより一定の大きさの光キャビティ内での光路を延長する。以下に本発明による光学的ガスセンサの実施例を説明する。
【0046】
図8には、本発明の一実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。
本発明の一実施例による光学的ガスセンサは、ガスチャンバ、ガス通気孔(40)、放物面鏡(50)、赤外線センサ(60)、光照射口(80)、赤外線ランプ(90)、高さ調整構造(110)、ガス拡散孔(120)及びガスフィルター(130)を備え、前記ガスチャンバはガスチャンバ下方支持板(10)、第1の鏡(20)、第2の鏡(30)およびガスチャンバ上板(70)を有する。
【0047】
図8の光学的ガスセンサの上面図に示す通り、光学的ガスセンサは、ガスチャンバ下方支持板(10)、ガスチャンバ上板(70)とチャンバ壁とから構成される密閉した光キャビティから成るガスチャンバを備える。
【0048】
ガスチャンバ壁面は第1の鏡(20)と第2の鏡(30)から構成され、第1の鏡(20)および第2の鏡(30)の焦点(F1)は同じ位置にあり、これらの鏡は異なる曲率半径を有する円弧状に形成されている。
【0049】
2つの円弧状の反射鏡を使用する理由は、仮に円形であった場合には焦点は直径の1/2の位置にできてパラボラのように作用するからである。光を光軸に平行に照射すると、反射光の光路は焦点としてあるいは焦点に隣接する位置として判断される。従って円筒状の鏡の特定位置では、放物面鏡と同じあるいは類似した光学的特性を示す。
【0050】
第1の鏡(20)には赤外線ランプ(図示せず)から照射される赤外線のための開口が、ガスチャンバ下方支持板(10)上には放物面鏡(50)が形成されている。放物面鏡(50)は、赤外線ランプから照射される光が直進することを確実にする。
【0051】
さらに、赤外線ランプからの赤外線の一部だけを照射させる光照射口(80)がガスチャンバ下方支持板(10)上に形成されている。
【0052】
赤外線ランプから照射される光を検出するための赤外線センサ(60)が第2の鏡(30)上に配置されている。光学的ガスセンサの特性の確認と初期補正を行うための基準ガス注入用ガス通気孔(40)は、第1の鏡(20)と第2の鏡(30)とが出会う位置に設置される。
【0053】
図8に示す通り、上記の構成を有する光学的ガスセンサからの赤外線光は、放物面鏡(50)を通って光軸に平行に入射してから第2の鏡(30)に向かって進む。その後、第1の鏡(20)と第2の鏡(30)との共通な焦点(F1)位置または共通な焦点(F1)位置近くを通過して、第1の鏡(20)で反射する。最終的に、収束した入射光は第2の鏡(30)に配置されている赤外線センサ(60)に到達する。
【0054】
一方、ガスチャンバの壁で光が反射する際に生じる損失と光の乱反射を最小限にするために、ガスチャンバを金属性にすることができる。この場合、金属の内側面を磨いて鏡面仕上げにすることにより、乱反射を減らすことができる。
【0055】
非金属性ガスチャンバを作る際に、高い反射率を有する金、ニッケル、銀、銅あるいは金/クロムの二重層から成る材層をチャンバ壁に塗布することによって光の損失を最小限に抑えることができる。
【0056】
次の表1は光波長による各種金属の反射率を示す。表から、金と銀は800nm以上の光波長で反射率が少なくとも98%であり、アルミニウムと銅は1μm以上の光波長で反射率が少なくとも94%であることが分かる。しかし、一般に銀、アルミニウム、銅などは常温で湿度が高い場合、すぐに酸化して変色する。反射面の経時変化を防ぎ長期信頼性を確実にするためにはチャンバ内面を金処理することが望ましい。
【0057】
【0058】
従って、赤外線を効率良く反射させるために、好ましくは、第1の鏡(20)と第2の鏡(30)の反射面に金または金/クロムのメッキまたは蒸着を施す。
【0059】
図9には図8に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。図9に示す通り、赤外線ランプ(90)から光キャビティへ照射する赤外線の光照射口(80)がガスチャンバ下方支持板(10)に形成され、赤外線ランプから照射する入射光が直進することを確実するための放物面鏡(50)が第1の鏡(20)とガスチャンバ下方支持板(10)に接続するように形成されている。
赤外線ランプ(90)をガスチャンバの下方支持板(10)の下部に設け、放物面鏡(50)の焦点位置に配置する。
【0060】
図10には図8に示す光学的ガスセンサのB−B’断面図を示す。図10には、例えば、ガスチャンバ内がほこりによって汚されることを防ぐ、ガス通気孔(40)に連結した蓋(100)を示す。この蓋(100)はガス通気孔(40)から分離できる。
【0061】
ガスを迅速に拡散させるための複数の拡散孔(120)がガスチャンバ下方支持板(10)上に形成されている。ガス拡散孔(120)は、ガスのみを選択的に通過させてほこりの拡散と湿気を防止するガスフィルター(130)で覆われている。一方、赤外線ランプ(90)によって生じるガスチャンバの高低差を補うための高さ調整構造物(110)がガスチャンバ下方支持板(10)の下に形成されている。
【0062】
図11には図8に示す光学的ガスセンサのC−C’断面図を示す。図11から、ガスチャンバ下方支持板(10)上に形成されている複数のガス拡散孔(120)が好ましくは赤外線センサ(60)の光軸上に形成されていることが分かる。
【0063】
図12は、図8から図11に示す本発明の一実施例による光学的ガスセンサの斜視図を示す。
【0064】
図13は本発明の別の実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。図14は図13に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。
【0065】
図13に示す光学的ガスセンサは、ガスチャンバ壁を形成する2つの鏡が円弧状では無く放物面状であるという違いだけで、上記図8から図12に示す光学的ガスセンサとほぼ同一の構造を有する。
【0066】
即ち、図13に示す光学的ガスセンサのガスチャンバ壁は、焦点は同じ位置にあるが焦点距離が異なる互いに対向する2つの放物面鏡を利用する。また、ガス通気孔(45)は、ガスチャンバ内の汚れを防ぐために、重力方向に曲げられている。
【0067】
図13および図14に示す光学的ガスセンサの作用原理は、赤外線ランプ(95)から照射する赤外線は光照射口(85)および放物面鏡(55)を介してガスチャンバ内に入る。
【0068】
入射光は、第1の放物面鏡(25)と第2の放物面鏡(35)との同じ焦点位置に向けて照射され、第1および第2放物面鏡(25,35)に反射して収束する。光度は赤外線センサ(65)で測定される。
【0069】
本発明は特定の実施例を参照して詳細に説明されたが、これらの説明は本発明の単なる例示でしかない。開示する実施例のさまざまな改良および特徴の組み合わせは添付の請求の範囲に規定する発明の範囲に含まれる。
【0070】
本発明の主な目的は、非分散形赤外線ガスセンサのための、断面が円弧状で、中心が同軸上にあり、光源を設置するための入口と光検出器を設置するための出口とガス注入/排出口とを除いては光学的に閉鎖されている、互いに対向する2つの凹面鏡を備える、光キャビティを作ることである。
【0071】
本発明の目的は、赤外線を照射するための光源と、光源からの光をついには検出するための光検出器と、光源を設置するための入口と光検出器を設置するための出口とガス注入/排出口とを配置するための口があることを除いては光学的に閉鎖されている断面が円弧状で中心が同軸上にある互いに対向する2つの凹面鏡と、光源から照射される光を制御するためにパルス変調時間が200から600msでターンオフ時間が2、2.5および3秒である光変調部と、光検出器からの電子信号を増幅するための増幅部を備える非分散形赤外線ガスセンサとによって達成される。
【0072】
以下に本発明の実施例の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0073】
基本的に本発明の光キャビティは複数の円弧で形成される。2つの円弧の中心は同軸上にある。
【0074】
また、本発明の実施例では、各円弧の中心が一方の円弧と他方の円弧とを結ぶ直線の中点と重なる(2つの円弧の中心が同一直線上にある)ように設計されている。この理由は、特定の条件において照射される光が同じ直線上(円弧の特性が放物面と同じように適用できるなら、円弧は同一焦点位置を通過するように設計されている)の特定の点を通るようにするためである。この条件を課す理由は、例えば、軸に平行に鏡へ入射した光が焦点に収束するよう、放物面および円弧の特性を確実にするためである。つまり、本発明が上記にて提案するような構造として設計された場合、軸に水平に照射された光は各鏡で反射され、対向する面および特定の点に向かって進む。これは以下の試験結果から分かるように、平行に進む光は光軸上で焦点が合うからである。
【0075】
一方、本発明の上述の実施例では二つの円弧が異なる半径を有するように設計されており、半径がより大なる円弧の中心は半径がより小なる円弧の外側にあり、半径がより小なる円弧の中心は半径がより大なる円弧の内側にある。この場合、光は光源から光検出器までの光路を適切な回数だけ循環することが実験で確認された。
【0076】
上記のすべての条件を満たす状況で、光の収束効果が得られる、かつ、光路を効果的に延長できる光キャビティを設計するために、以下の光学的シミュレーションが行われた。
【0077】
シミュレーションでは、波長が4.2μmで入力電力が定常状態での消費電力である0.66ワットの赤外線光源を用意した。また、約97%の反射率を有する反射鏡を模擬するために、光キャビティの内面を金(Au)で被覆した。これは、特定の厚さを有する金薄膜は赤外線領域で、特に波長が1μm以上のとき、反射率が少なくとも97%となるからである。また、入射光は入射口に垂直に入射する平行光を用いた。一方、光検出器の作用面の形状、大きさおよび配置等は、市販の赤外線センサに適用できるように設定した。また、シミュレーションの解析ツールにはLambda Research Corporation社のプログラム、TracePro(商標登録)を利用した。
【0078】
第1のシミュレーションでは、図15a、15bおよび15cに示す光学構造を適用した。図15cに示す光キャビティは、図15aに示すその左半分と図15bに示すその右半分を組み立てたものである。これは、初期検査にかかる制作コストを抑えまた、鏡の金薄膜の蒸着を容易にするための一例である。このような組み合わせは、ほんの一例でしかなく、他の組み合わせでできる別の光キャビティも適用できる。つまり、金型を用いて一体化した光キャビティを作り、表面に金蒸着または金メッキを施すこともできる。
【0079】
第1のシミュレーションにおいて、光路をチェックできるよう、また、光キャビティの大きさが小さいままで光検出器の光検出量が増えるよう光の収束効果が得られる設計とした。つまり、式(8)に示すように、微量ガスを測定するためには、第1に、光キャビティ内での光路を延ばす必要があり、第2に赤外線を検出できる最低光度(Ith)を有する赤外線センサを用い、第3に、光源から照射される初期光度(Io)よりわずかに小さいが比較的大きい彩度(Isat)を有する赤外線センサを用いることができる。これらの方法に加え、光の収束によって赤外線センサに到達する光の光度を増やす方法がある。以下に、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0080】
図16は、図15cに示す光キャビティ体から発する光の光路を示す。
図16は、光キャビティ内での光路長を計算するための有用な情報を提供する、入射光の光路を示す。
【0081】
図17は、図15cに示す光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
図17は、光源から照射される平行光が特定の点に集光される特性を示す。即ち、所定の位置にある光源から、複数の円弧の中心がある光軸に平行な光が照射されてから、2度反射させると、光源と対向する鏡面上に位置する赤外線センサに隣接した位置に焦点ができ、これにより、赤外線センサの出力電圧を増大させる。
【0082】
図18は、図15cに示す光キャビティ体内の光検出器での受光結果を示す。
図18において、受光点の位置および各位置での受光結果が着色されている。
【0083】
微量ガスを検出するために必要となる、光路を延長した第2のシミュレーションを設計した。図19a、19bおよび19cに示す光キャビティを適用した。図19cに示す光キャビティは、図19aに示すその左半分と図19bに示すその右半分を組み立てたものである。このような組み合わせは、ほんの一例でしかなく、他の組み合わせでできる別の光キャビティをも適用できる。一体化した光キャビティを適用することも可能である。
【0084】
第2のシミュレーションでは、本発明の光キャビティの条件を満たす円弧を用いて光キャビティを形成した。一方、この構造体の2つの円弧の中心に隣接する位置(あるいは中心)に平行光を照射すると、2つの円弧は反射光を2つの円弧の中心軸近くにある特定の点に到達させる。しかし、反射の回数が増えると、実際には光度が低下し、シミュレーションと現実とでの受光光度が大きく異なる場合がある。よって、シミュレーションの趣旨に基づき、受光光度の低減を防ぐために、赤外線センサに到達するまでの反射回数を5回までに制限した。また、上記の構造において、円弧の中心近くに光を到達させるために、照射器(赤外線)および受光器(赤外線)が同じ円弧上に配置されている。しかし、上記の特徴は本発明を制約するものではない。
【0085】
図20は、図19cに示す光キャビティ体から発する光の光路を示す。
図20は、照射器から照射される光を示し、特に、照射器の中心から照射されて受光器、即ち赤外線センサ、の中心に到達する光を示す。
【0086】
図21は、図19cに示す光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
図21は、光源の照射部(例えば、半径2mm)より大きい光束が受光器に到達する様子を示す。このような構造の光キャビティ体は、例えば、光源より大きい半径を有する受光器である複数ガスセンサ(例えば、センサ半径が5mmのもの)に適用した場合に有用な場合がある。
【0087】
図22は、図19cに示す光キャビティ体の光検出器での受光結果を示す。
図22は、赤外線センサの受光部(円形)に到達する時間当たりの光エネルギーが約時間当たり0.523ワットであることを示す。これは5回の反射を経て赤外線センサに到達する理想のエネルギーである時間当たり0.567ワットと比べると0.44ワットだけ少ない。この理由は、投光器から照射される光の一部が発散して、赤外線センサの受光部の外側に到達するためである。
【0088】
光路を確認する際、上記TracePro(商標登録)を利用した光の収束効果および各光キャビティの受光結果について以下のことが分かった。
投光器の中心軸から照射される光の全光路長を確認できた。本発明による光キャビティは、従来の光キャビティより長い光路を得られ、加えて、光の収束効果も得られた。さらに、光源(出力電圧:0.66ワット)が定常状態で作用する場合、鏡面での反射により光度が低減して光検出器に到達することが確認された。光検出器での受光結果が理論上の計算値よりわずかに小さい値を示すが、光は完全には光検出器に収束しないことを考慮すると、得られた結果は妥当であると考えられる。
【0089】
上記のシミュレーション結果、特に、第1のシミュレーションの光キャビティにより、以下の実施例が得られた。
【0090】
本発明の実施例では2つの公知部品、つまり、赤外線光源と光検出器を利用している。赤外線光源として、例えば、平行光を収束するための放物面反射器を有し、波長が1から5μmまでの赤外線を照射する、Gilway technical lamp社の赤外線光源を利用した。また、通常車両の暖房、換気および空気調和機(HVAC)に使用されるGE Thermometrics Technologies社のZTP-315熱電対赤外線検出器を利用したが、その際本研究の目的であるガス検出のために長波周波数帯域フィルタに代えて、中心波長が4.26μmで半値全幅(FWHM)が20nmの二酸化炭素フィルタを使用した。
【0091】
図23は本発明の上記実施例による、3つの主要部から構成される、NDIRガスセンサモジュールを示す。第1主要部は、パルス継続時間が200から600msでターンオフ時間が0.5秒の間隔をおいて2から3秒の間で変えられる赤外線変調部である。第2主要部は、本発明によって提案されている新光キャビティ構造であり、第3主要部は増幅回路である。本実施例では、基準電圧駆動体(LM385)を備える二次増幅回路を使用した。
【0092】
図24は、本発明の上記実施例によるNDIRガスセンサモジュールおよび基準二酸化炭素送出器の、室温での二酸化炭素濃度に対する出力電圧を示す。図24に示す通り、二酸化炭素濃度が100ppmでの新センサモジュールによる最大出力電圧は約4.75Vである。二酸化炭素濃度が100から2,000ppmの間で増加すると共に、センサモジュールの最大出力電圧は4.45Vに低下する。二酸化炭素濃度が100から2,000ppmの間で変化する際、最高電圧の差は最大で300mVである。
【0093】
図25は、本発明の上記実施例において、二酸化炭素濃度が一定のときのパルス変調時間に対する出力電圧差を示す。出力電圧差とは、光源のターンオン状態のときとターンオフ状態のときの出力電圧差を意味する。パルス変調時間が長くなると共に出力電圧差が増大する。ただし、パルス変調時間が500msを超えると出力電圧差は飽和し始める。これに応じて、出力電圧差も小さくなる。また、吸収された赤外線光度が高いため、吸収された熱の放出は完全に行われず、光源の寿命が短くなる。
【0094】
図26は、本発明の上記実施例による、二酸化炭素濃度の変化に対する出力電圧の変化を示す。この図は、二酸化炭素濃度が100から2,000ppmの間で増加するときのNDIRガスセンサモジュールの標準化出力信号を示す。赤外線のパルス変調時間が200msのときに、標準化出力信号は最大の変化を示す。変調時間が300から500msの間で増加すると、標準化出力信号は大幅に減少する。
【0095】
一方、パルス持続時間が500msのときに最大電圧差を示すが、このとき基準電圧はわずかに増大する。出力電圧の変化はパルス変調時間が200msの場合に最大となり、18,000倍の増幅率を示す。このときの赤外線光源のターンオフ時間は3秒である。
【0096】
本発明を特定のNDIRガスセンサおよび光キャビティの実施例を参照して詳細に説明したが、これらの説明は本発明の一適用例でしかなく、これらは本発明の範囲を制限するものではない。本明細書内に開示するシミュレーションおよび実施例のさまざまな変更および組み合わせは、添付の請求項に規定する通り本発明の範囲に含まれる。
【0097】
例えば、費用対効果の高い光キャビティで本発明の平行光を達成するためには、Gilway technical lamp社の製品を使用しないで別の方法で光キャビティ内の放物面型の鏡を作ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
前述の通り、本発明の光学的ガスセンサによれば、赤外線光源から照射される光の光路長をかなり延長でき、低濃度から高濃度までのガスが測定可能である。また、さまざまなガスを測定できる。
【0099】
さらに、ガスチャンバ壁として2つの凹面鏡を利用することにより、ガスセンサの設計を容易にし、製造コストを抑える効果をもたらす。
【0100】
本発明は、従来のNDIRガスセンサの光キャビティの設計を改良した新しいガスセンサ構造を提案している。本発明の光キャビティは、2つの凹面鏡から形成された非常に簡単な構造であり、これによって光束を光検出器に収束させる。
【0101】
本発明によれば、延長された光路および光の収束特性を有するNDIRガスセンサのための新しい光キャビティ構造が得られる。この新しい光キャビティ構造を利用して、空気の品質測定システム、車両用空気調和機(HVAC)システム等のための新しいセンサモジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図2】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図3】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図4】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図5】放物面鏡の光学的特性を示す。
【図6a】焦点は同じ位置にある2つの放物面鏡を備える光キャビティシステムの光学的特性を示す。
【図6b】焦点は同じ位置にある2つの放物面鏡を備える光キャビティシステムの光学的特性を示す。
【図7a】焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離を有する2つの放物面鏡によってできる光路を示す。
【図7b】焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離を有する2つの放物面鏡によってできる光路を示す。
【図8】本発明の一実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。
【図9】図8に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。
【図10】図8に示す光学的ガスセンサのB−B’断面図を示す。
【図11】図8に示す光学的ガスセンサのC−C’断面図を示す。
【図12】本発明の一実施例による光学的ガスセンサの斜視図を示す。
【図13】本発明の別の実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。
【図14】図13に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。
【図15a】本発明の一実施例による光キャビティの左半分を示す。
【図15b】本発明の一実施例による光キャビティの右半分を示す。
【図15c】本発明の一実施例による組み立てられた光キャビティを示す。
【図16】本発明の一実施例による光キャビティ体から発する光の光路を示す。
【図17】本発明の一実施例による光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
【図18】本発明の一実施例による光キャビティ体内の光検出器での受光結果を示す。
【図19a】本発明の別の実施例による光キャビティの左半分を示す。
【図19b】本発明の別の実施例による光キャビティの右半分を示す。
【図19c】本発明の別の実施例による組み立てられた光キャビティを示す。
【図20】本発明の別の実施例による光キャビティ体から発する光の光路を示す。
【図21】本発明の別の実施例による光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
【図22】本発明の別の実施例による光キャビティ内の光検出器での受光結果を示す。
【図23】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールを示す。
【図24】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールの、室温での二酸化炭素濃度に対する出力電圧特性を示す。
【図25】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールの、パルス変調時間に対する出力電圧の変化を示す。
【図26】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールの、二酸化炭素濃度に対する出力電圧の変化を示す。
【符号の説明】
【0103】
10,15 ガスチャンバ下方支持板
20 第1の鏡
25 第1の放物面鏡
30 第2の鏡
35 第2の放物面鏡
40,45 ガス通気孔
50,55 放物面鏡
60,65 赤外線センサ
70,75 ガスチャンバ上板
80,85 光照射口
90,95 赤外線ランプ
100 蓋
110,115 高さ調整構造
120,125 ガス拡散孔
130,135 ガスフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は光学的ガスセンサに関し、特に、非分散形赤外線ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学的ガスセンサの主な働きを以下に説明する。
【0003】
一般に、光は光路上での回折、反射、屈折及び吸収により光度が減少あるいは増加する。入射光が光路を通ると、光路上のガスは光を吸収して初期光度は減少する。
【0004】
ガス濃度(J)が等方的で光路上で均一な場合、赤外線の光路(L)を通った後の最終光度 (I)は下記の通りガス吸水係数(K)、光路長(L)と初期光度(Io)の関数であって、Beer-Lambertの法則によって説明できる。
【0005】
式(1):I = Io・e−KJL(x)
Beer-Lambertの法則は上記の式(1)で表される。初期光度(Io)及び測定対象ガスの吸収係数が一定の場合、最終光度(I)は光路上のガス濃度(J)と光路長(L)の関数として表される。
【0006】
式(1)において測定対象ガスが存在しない場合、即ちJ=0のとき、最終光度と初期光度は同じになり、(2)式で表される。
式(2):I = Io
従って、測定対象ガスがない場合とガス濃度がJの場合との光度差は式(3)で得られる。
式(3):ΔI = Io・(1−e−KJL(x))
しかし、従来の赤外線センサは光度に比例した電圧を出力するため、ガスの有無によるセンサの出力は式(4)で表される。
式(4):ΔV=α・ΔI=α・Io・(1−e−KJL(x))
但し、αは比例係数とする。
【0007】
低濃度から高濃度までの広範囲を測定できる光学的ガスセンサを作るためには、まず第1に、長い光路(L)を有する光キャビティ(又はガスチャンバ)を用意し、第2に検出可能な最低光度(Ith)が十分低い赤外線センサを使用し、または、第3に赤外線センサで飽和光度(Isat)が比較的高いが赤外線光源から照射される光の初期光度(Io)より若干低いものを使用することが必要である。
【0008】
しかし、市販の赤外線検出センサ(例えば、熱電対型赤外線センサまたは、受動赤外線センサ)は、上記のすべての条件を満足することができないため、光路長の長い光キャビティを提供する有利な方法が求められる。
【0009】
限られた光キャビティ内で光路を延長するさまざまな方法が提案され、その一つが特許文献1に開示されている。図1に示す通り、この発明は、光導波管を用いて多重反射を起こすことにより光導波管の物理的な長さよりさらに長い平均光路の提供を図っている。またこの発明は、光源から赤外線を任意方向に照射して光路を延長しようとする。しかし、一般的な赤外線ガスセンサでは、入射光線の受光範囲が限られている。このように受光範囲が限られると、実質的に赤外線センサに到達して測定に利用される光は微量となる。したがって、ガスチャンバの効率が悪くなり実用性を欠いていた。
【0010】
別の方法として、White’s Cellの原理を利用した特許文献2が開示されている。図2に示す通り、鏡の反射面に多数の焦点が位置する3つの反射鏡を配置することにより入射光を所定回反射させて、光路上の微量なガスまで分析できるような光路長に延長することができる。
【0011】
しかし、このようなシステムは光源としてレーザーを使用するため、二酸化炭素等ガスの測定には適していない。さらに、反射面間距離が長いため小型ガス測定器への適用は難しい。
【0012】
さらに別の方法として、特許文献3は凸反射鏡と凹反射鏡を組み合わせて構成したガスセンサを開示している。図3に示す通り、本方法は有効な長い光路を確実にするために、ガスセル内に可動凸反射鏡を備えることを特徴とする。本方法によるガス分析器は、ガスセンサ内に一定空間を確保し、かつ、内部の汚れを防ぐための構造物(12)、蓋(13)、円筒型光反射鏡(15)、鏡を回転させるためのステッピングモータ(16)、赤外線センサ(24)、多数のフィルタを備えた回転ディスク(21)およびディスクを回転させるためのステッピングモーター(23)を備える。
【0013】
しかし、このようなシステムの製造は難しいだけでなく、反射鏡を回転させるステッピングモータが必要となるため、携帯型で取り扱いが簡単な小型ガス分析器への適用には不利である。
【0014】
さらなる別の方法が、非特許文献1に開示されている。図4に示す通り、本方法では限られた光キャビティ内に比較的長い光路を提供するために、3つの凹面鏡を配置している。即ち、非特許文献1の開示するガスセンサは3つの楕円形凹面を備え、各凹面から反射される光の焦点位置を互いに対向する反射面上またはその付近に設定する特許文献2に開示されている概念を利用したセル構造の光学的ガスセンサである。
【0015】
しかし、この3つの反射面を有するガスセンサセルの構造は複雑である。さらに、主反射鏡(一体型の反射鏡)の表面上に配置した光源から光キャビティを通って照射される入射光の入射角がわずかに変化することがあるため、光学的センサの適切な位置を決定することが困難であった。
【0016】
本発明は光学的ガスセンサに関し、特に、非分散形赤外線(NDIR)ガスセンサに関する。
【0017】
二酸化炭素の濃度を測定するためには二つの方法がある。一つはNDIR法式であり、もう一つは非特許文献2に開示されている固体電解質方式である。
【0018】
固体電解質センサはNDIRセンサと比べ安価であるが、長期的な安定性、精度の高さ、消費電力の低さなどの面からNDIRセンサの方が好ましい。また、NDIRセンサは、目的ガスが特定波長の赤外線を吸収するという物理的な検出原理を利用するために良好な選択性と感度を示す。
【0019】
NDIRセンサの光学的な特性は次の通りある。
【0020】
一般に、光は光路上での回折、反射、屈折及び吸収により光度が減少あるいは増加する。入射光が光路を通ると、光路上のガスは光を吸収して初期光度は減少する。
【0021】
ガス濃度(J)が等方的で光路上で均一な場合、赤外線の光路(L)を通った後の最終光度) (I)は下記の通りガス吸水係数(K)、光路長(L)と初期光度(Io)の関数であって、Beer-Lambertの法則によって説明できる。
【0022】
式(5):I = Io・e−KJL(x)
Beer-Lambertの法則は上記の式(5)で表される。初期光度(Io)及び測定対象ガスの吸収係数が一定の場合、最終光度(I)は光路上のガス濃度(J)と光路長(L)の関数として表される。
式(5)において測定対象ガスが存在しない場合、即ちJ=0のとき、最終光度と初期光度は同じになり、(6)式で表される。
式(6):I = Io
従って、測定対象ガスがない場合とガス濃度がJの場合との光度差は式(7)で得られる。
式(7):ΔI = Io・(1−e−KJL(x))
しかし、従来の赤外線センサは光度に比例した電圧を出力するため、ガスの有無によるセンサの出力は式(8)で表される。
式(8):ΔV=α・ΔI=α・Io・(1−e−KJL(x))
ただし、αは比例係数とする。
【0023】
低濃度から高濃度までの広範囲を測定できる光学的ガスセンサを作るためには、まず、長い光路(L)を有する光キャビティ(又はガスチャンバ)を用意し、次に検出可能な最低光度(Ith)が十分低い赤外線センサを使用し、あるいは、飽和光度(Isat)が比較的高いが赤外線光源から照射される光の初期光度(Io)より若干低い赤外線センサを使用することが必要である。
【0024】
しかし、市販の赤外線検出センサ(例えば、熱電対型赤外線センサまたは、受動赤外線センサ)は、上記のすべての条件を満足させることができないため、光路長の長い光キャビティを提供する有利な方法が要求されている。
【0025】
実際のNDIRガスセンサシステムには、これまで4種類の光キャビティが適用されている。
【0026】
最初に、特許文献4には一つの赤外線光源と一つの光検出器を備えた角状又は円筒管状のものが開示されている。
2番目に、特許文献5または非特許文献3は、1つの光検出器と熱劣化補償のために2つの赤外線光源を備えたタイプを開示している。
3番目に、非特許文献4は、円筒状光キャビティを用い、対象とするガスの波長を選択するためのFabry-Perotフィルタを利用したものを開示している。
4番目に、非特許文献1は、容量の小さい容器内に3つの楕円鏡を備えて光路を延長させているものを開示している。
【0027】
特に、非特許文献1に開示されている方法は、3つの凹面形反射面を構成して、各凹面から反射された光の焦点位置を互いに対向する反射面上またはその付近に設定する特許文献2に開示されている概念を利用したセル構造の光学的ガスセンサに関する。この方法は、他の方法と比べて比較的長い光路を簡単に提供できるという利点がある。
【0028】
しかし、主反射鏡(一体型の反射鏡)面上に配置した光源から光キャビティを通って照射される入射光の入射角がわずかに変化することがあるため、光学的センサの適切な位置を決定することが困難であった。
【特許文献1】米国特許第5,341,214号明細書
【特許文献2】米国特許第5,009,493号明細書
【特許文献3】米国特許第5,488,227号明細書
【特許文献4】米国特許第5,444,249号明細書
【特許文献5】米国特許第6,067,840号明細書
【非特許文献1】国際公開第98/09152号明細書
【非特許文献2】K.Kaneyasu,“A carbon dioxide gas sensor based on solid electrolyte for air quality control” ,Sensors and Actuators B, 2000, vol.66, pp.56-58
【非特許文献3】I.Y.Park et al, “An implementation of NDIR type CO2 gas sample chamber and measuring hardware for capnograph system in consideration of time response characteristics”, Journal of Korean Sensor Society,2001, vol.5,no.5,pp279-285
【非特許文献4】Makoto Moro et al, “CO2/H2O Gas Sensor Using Tunnable Fabry-Perot Filter with Wide Wavelength Range”,IEEE International Conference on MEMS, 2003, pp.319-322
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は上記の問題を解決するためになされた。本発明の主な目的は光路長をなるべく延長して広い測定範囲を持つだけでなく、設計が容易な光キャビティ(またはガスチャンバ)構造を有する光学的ガスセンサを提供することにある。
【0030】
また、本発明は新型の光学的ガスセンサセルに必要な新しい光キャビティ構造を提供し、このような光キャビティを使用するセンサでの二酸化炭素濃度測定結果に基づいた新しいガスセンサを提示する。
【発明を解決するための手段】
【0031】
前述の目的を達成するための本発明の一態様による光学的ガスセンサは、試料ガスを受容するためのガスチャンバと、ガスチャンバ内に試料ガスを注入またはガスチャンバ内の試料ガスを排出するためのガス開口部と、試料ガスに向けて赤外線を照射するための赤外線光源と、試料ガスを通過した赤外線の光度を検出するための赤外線センサとから構成され、ガスチャンバの壁は、焦点は同じ位置にあるが焦点距離が異なる互いに対向する2つの凹面鏡から成る。
【0032】
前述の目的を達成するための本発明の別の態様による光学的ガスセンサは、試料ガスを受容するためのガスチャンバと、ガスチャンバ内に試料ガスを注入またはガスチャンバ内の試料ガスを排出するためのガス開口部と、試料ガスに向けて赤外線を照射するための赤外線光源と、試料ガスを通過した赤外線の光度を検出するための赤外線センサとから構成される。ガスチャンバの壁は、焦点距離は異なるが焦点が同じ位置にある互いに対向する2つの凹面鏡から成り、これらの凹面鏡は、両凹面鏡の軸に平行な入射光を一方の凹面鏡の面上で反射させてから両凹面鏡の焦点を通過させ、両凹面鏡の焦点を通過した入射光をさらに他方の凹面鏡の面上で反射させて、両凹面鏡の軸に平行に進行させる曲率を有する。
【0033】
ガス開口部は、ガスチャンバの特定の壁面に設けられたガス通気孔とガスチャンバの支持板上に配置されている複数のガス拡散孔を含む。
【0034】
複数のガス拡散孔はガスフィルタで覆われている。
複数のガス拡散孔は、好ましくは赤外線センサから照射される入射光と同軸上に配置されている。
【0035】
ガス通気孔は下向きに曲げられているか、あるいは着脱可能な蓋を備えている。
【0036】
凹面鏡は表面が金メッキ又は金蒸着されて作られている。
【0037】
ガスチャンバは、支持板に形成されている赤外線光源に隣接したガスチャンバの支持板と一体形成されている放物面鏡を含む。
ガスチャンバは、支持板上の赤外線光源から照射される赤外線の少なくとも一部を投射するための光照射口を有する。
赤外線光源を放物面鏡の焦点位置に配置することができる。
【0038】
ガスチャンバの支持板は、赤外線光源との高低差の影響を受けて傾斜するため、高さ調整構造を備えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明の実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図5には放物面鏡の光学的特性を示す。
図5に示す通り、放物面鏡の場合、光軸に平行に入射した光の反射光は必ず反射鏡の焦点を通過し、鏡の焦点を通過した反射光は必ず光軸に平行に進む。
本発明はこのような放物面鏡の光学的特性を利用する。
【0041】
図6には焦点が同じ位置にある2つの放物面鏡を備える光キャビティシステムの光学的特性を示す。
図6に示す光空キャビティシステムは、互いに対向する2つの放物面鏡が同じ位置に焦点を持つが焦点距離(OA−F,OB−F)が異なるように配置されている。
光キャビティシステムは光源の位置によって、入射光を光キャビティ内で発散させる発散システム (図6a)と入射光を光キャビティ内で収束させる収束システム(図6b)とに分類される。
図6bに示すように、OA−F<OB−Fの条件を満たす場合、光が凹面(B)から光軸上の焦点Fに向かって進むと、光は焦点を通ってから凹面(A)で反射し、その後光軸に平行に進む。この反射光は、光軸に収束して最終的に凹面(A)または(B)に到達するまで凹面(B)で反射されるプロセスを繰り返す。また、光軸に収束した光は反射して入射してきた方向に再び向かう。
【0042】
図7は、焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離を有する2つの放物面鏡によってできる光路を示す。
図7bに示す通り、OAF−OBF>OA’F−OB’Fであるような光キャビティシステムは、光キャビティ(C’)内での光の反射回数が図7aに示す光キャビティ(C)の反射回数より多いため、光キャビティ(C’)での光路は光キャビティ(C)での光路より長いという特徴がある。
【0043】
上述のように、焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離(OA−F,OB−F)を有する互いに対向する2つの放物面鏡が配置されている光キャビティシステムでは、焦点距離を変えることによって光路長を調整することができ、また光軸の角度と光の入射角を変えることによって光路を調整することができる。
【0044】
さらに、2つの放物面鏡が同じ位置に焦点を有するが互いの焦点距離が異なり、さらに入射光が光軸に収束するため、赤外線センサの位置設定が容易となる。
【0045】
本発明による光学的ガスセンサは、光キャビティシステムの光学的特性を利用し、光に光源と赤外線センサの間の光軸上でできるだけ多く反射させ、これにより一定の大きさの光キャビティ内での光路を延長する。以下に本発明による光学的ガスセンサの実施例を説明する。
【0046】
図8には、本発明の一実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。
本発明の一実施例による光学的ガスセンサは、ガスチャンバ、ガス通気孔(40)、放物面鏡(50)、赤外線センサ(60)、光照射口(80)、赤外線ランプ(90)、高さ調整構造(110)、ガス拡散孔(120)及びガスフィルター(130)を備え、前記ガスチャンバはガスチャンバ下方支持板(10)、第1の鏡(20)、第2の鏡(30)およびガスチャンバ上板(70)を有する。
【0047】
図8の光学的ガスセンサの上面図に示す通り、光学的ガスセンサは、ガスチャンバ下方支持板(10)、ガスチャンバ上板(70)とチャンバ壁とから構成される密閉した光キャビティから成るガスチャンバを備える。
【0048】
ガスチャンバ壁面は第1の鏡(20)と第2の鏡(30)から構成され、第1の鏡(20)および第2の鏡(30)の焦点(F1)は同じ位置にあり、これらの鏡は異なる曲率半径を有する円弧状に形成されている。
【0049】
2つの円弧状の反射鏡を使用する理由は、仮に円形であった場合には焦点は直径の1/2の位置にできてパラボラのように作用するからである。光を光軸に平行に照射すると、反射光の光路は焦点としてあるいは焦点に隣接する位置として判断される。従って円筒状の鏡の特定位置では、放物面鏡と同じあるいは類似した光学的特性を示す。
【0050】
第1の鏡(20)には赤外線ランプ(図示せず)から照射される赤外線のための開口が、ガスチャンバ下方支持板(10)上には放物面鏡(50)が形成されている。放物面鏡(50)は、赤外線ランプから照射される光が直進することを確実にする。
【0051】
さらに、赤外線ランプからの赤外線の一部だけを照射させる光照射口(80)がガスチャンバ下方支持板(10)上に形成されている。
【0052】
赤外線ランプから照射される光を検出するための赤外線センサ(60)が第2の鏡(30)上に配置されている。光学的ガスセンサの特性の確認と初期補正を行うための基準ガス注入用ガス通気孔(40)は、第1の鏡(20)と第2の鏡(30)とが出会う位置に設置される。
【0053】
図8に示す通り、上記の構成を有する光学的ガスセンサからの赤外線光は、放物面鏡(50)を通って光軸に平行に入射してから第2の鏡(30)に向かって進む。その後、第1の鏡(20)と第2の鏡(30)との共通な焦点(F1)位置または共通な焦点(F1)位置近くを通過して、第1の鏡(20)で反射する。最終的に、収束した入射光は第2の鏡(30)に配置されている赤外線センサ(60)に到達する。
【0054】
一方、ガスチャンバの壁で光が反射する際に生じる損失と光の乱反射を最小限にするために、ガスチャンバを金属性にすることができる。この場合、金属の内側面を磨いて鏡面仕上げにすることにより、乱反射を減らすことができる。
【0055】
非金属性ガスチャンバを作る際に、高い反射率を有する金、ニッケル、銀、銅あるいは金/クロムの二重層から成る材層をチャンバ壁に塗布することによって光の損失を最小限に抑えることができる。
【0056】
次の表1は光波長による各種金属の反射率を示す。表から、金と銀は800nm以上の光波長で反射率が少なくとも98%であり、アルミニウムと銅は1μm以上の光波長で反射率が少なくとも94%であることが分かる。しかし、一般に銀、アルミニウム、銅などは常温で湿度が高い場合、すぐに酸化して変色する。反射面の経時変化を防ぎ長期信頼性を確実にするためにはチャンバ内面を金処理することが望ましい。
【0057】
【0058】
従って、赤外線を効率良く反射させるために、好ましくは、第1の鏡(20)と第2の鏡(30)の反射面に金または金/クロムのメッキまたは蒸着を施す。
【0059】
図9には図8に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。図9に示す通り、赤外線ランプ(90)から光キャビティへ照射する赤外線の光照射口(80)がガスチャンバ下方支持板(10)に形成され、赤外線ランプから照射する入射光が直進することを確実するための放物面鏡(50)が第1の鏡(20)とガスチャンバ下方支持板(10)に接続するように形成されている。
赤外線ランプ(90)をガスチャンバの下方支持板(10)の下部に設け、放物面鏡(50)の焦点位置に配置する。
【0060】
図10には図8に示す光学的ガスセンサのB−B’断面図を示す。図10には、例えば、ガスチャンバ内がほこりによって汚されることを防ぐ、ガス通気孔(40)に連結した蓋(100)を示す。この蓋(100)はガス通気孔(40)から分離できる。
【0061】
ガスを迅速に拡散させるための複数の拡散孔(120)がガスチャンバ下方支持板(10)上に形成されている。ガス拡散孔(120)は、ガスのみを選択的に通過させてほこりの拡散と湿気を防止するガスフィルター(130)で覆われている。一方、赤外線ランプ(90)によって生じるガスチャンバの高低差を補うための高さ調整構造物(110)がガスチャンバ下方支持板(10)の下に形成されている。
【0062】
図11には図8に示す光学的ガスセンサのC−C’断面図を示す。図11から、ガスチャンバ下方支持板(10)上に形成されている複数のガス拡散孔(120)が好ましくは赤外線センサ(60)の光軸上に形成されていることが分かる。
【0063】
図12は、図8から図11に示す本発明の一実施例による光学的ガスセンサの斜視図を示す。
【0064】
図13は本発明の別の実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。図14は図13に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。
【0065】
図13に示す光学的ガスセンサは、ガスチャンバ壁を形成する2つの鏡が円弧状では無く放物面状であるという違いだけで、上記図8から図12に示す光学的ガスセンサとほぼ同一の構造を有する。
【0066】
即ち、図13に示す光学的ガスセンサのガスチャンバ壁は、焦点は同じ位置にあるが焦点距離が異なる互いに対向する2つの放物面鏡を利用する。また、ガス通気孔(45)は、ガスチャンバ内の汚れを防ぐために、重力方向に曲げられている。
【0067】
図13および図14に示す光学的ガスセンサの作用原理は、赤外線ランプ(95)から照射する赤外線は光照射口(85)および放物面鏡(55)を介してガスチャンバ内に入る。
【0068】
入射光は、第1の放物面鏡(25)と第2の放物面鏡(35)との同じ焦点位置に向けて照射され、第1および第2放物面鏡(25,35)に反射して収束する。光度は赤外線センサ(65)で測定される。
【0069】
本発明は特定の実施例を参照して詳細に説明されたが、これらの説明は本発明の単なる例示でしかない。開示する実施例のさまざまな改良および特徴の組み合わせは添付の請求の範囲に規定する発明の範囲に含まれる。
【0070】
本発明の主な目的は、非分散形赤外線ガスセンサのための、断面が円弧状で、中心が同軸上にあり、光源を設置するための入口と光検出器を設置するための出口とガス注入/排出口とを除いては光学的に閉鎖されている、互いに対向する2つの凹面鏡を備える、光キャビティを作ることである。
【0071】
本発明の目的は、赤外線を照射するための光源と、光源からの光をついには検出するための光検出器と、光源を設置するための入口と光検出器を設置するための出口とガス注入/排出口とを配置するための口があることを除いては光学的に閉鎖されている断面が円弧状で中心が同軸上にある互いに対向する2つの凹面鏡と、光源から照射される光を制御するためにパルス変調時間が200から600msでターンオフ時間が2、2.5および3秒である光変調部と、光検出器からの電子信号を増幅するための増幅部を備える非分散形赤外線ガスセンサとによって達成される。
【0072】
以下に本発明の実施例の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0073】
基本的に本発明の光キャビティは複数の円弧で形成される。2つの円弧の中心は同軸上にある。
【0074】
また、本発明の実施例では、各円弧の中心が一方の円弧と他方の円弧とを結ぶ直線の中点と重なる(2つの円弧の中心が同一直線上にある)ように設計されている。この理由は、特定の条件において照射される光が同じ直線上(円弧の特性が放物面と同じように適用できるなら、円弧は同一焦点位置を通過するように設計されている)の特定の点を通るようにするためである。この条件を課す理由は、例えば、軸に平行に鏡へ入射した光が焦点に収束するよう、放物面および円弧の特性を確実にするためである。つまり、本発明が上記にて提案するような構造として設計された場合、軸に水平に照射された光は各鏡で反射され、対向する面および特定の点に向かって進む。これは以下の試験結果から分かるように、平行に進む光は光軸上で焦点が合うからである。
【0075】
一方、本発明の上述の実施例では二つの円弧が異なる半径を有するように設計されており、半径がより大なる円弧の中心は半径がより小なる円弧の外側にあり、半径がより小なる円弧の中心は半径がより大なる円弧の内側にある。この場合、光は光源から光検出器までの光路を適切な回数だけ循環することが実験で確認された。
【0076】
上記のすべての条件を満たす状況で、光の収束効果が得られる、かつ、光路を効果的に延長できる光キャビティを設計するために、以下の光学的シミュレーションが行われた。
【0077】
シミュレーションでは、波長が4.2μmで入力電力が定常状態での消費電力である0.66ワットの赤外線光源を用意した。また、約97%の反射率を有する反射鏡を模擬するために、光キャビティの内面を金(Au)で被覆した。これは、特定の厚さを有する金薄膜は赤外線領域で、特に波長が1μm以上のとき、反射率が少なくとも97%となるからである。また、入射光は入射口に垂直に入射する平行光を用いた。一方、光検出器の作用面の形状、大きさおよび配置等は、市販の赤外線センサに適用できるように設定した。また、シミュレーションの解析ツールにはLambda Research Corporation社のプログラム、TracePro(商標登録)を利用した。
【0078】
第1のシミュレーションでは、図15a、15bおよび15cに示す光学構造を適用した。図15cに示す光キャビティは、図15aに示すその左半分と図15bに示すその右半分を組み立てたものである。これは、初期検査にかかる制作コストを抑えまた、鏡の金薄膜の蒸着を容易にするための一例である。このような組み合わせは、ほんの一例でしかなく、他の組み合わせでできる別の光キャビティも適用できる。つまり、金型を用いて一体化した光キャビティを作り、表面に金蒸着または金メッキを施すこともできる。
【0079】
第1のシミュレーションにおいて、光路をチェックできるよう、また、光キャビティの大きさが小さいままで光検出器の光検出量が増えるよう光の収束効果が得られる設計とした。つまり、式(8)に示すように、微量ガスを測定するためには、第1に、光キャビティ内での光路を延ばす必要があり、第2に赤外線を検出できる最低光度(Ith)を有する赤外線センサを用い、第3に、光源から照射される初期光度(Io)よりわずかに小さいが比較的大きい彩度(Isat)を有する赤外線センサを用いることができる。これらの方法に加え、光の収束によって赤外線センサに到達する光の光度を増やす方法がある。以下に、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0080】
図16は、図15cに示す光キャビティ体から発する光の光路を示す。
図16は、光キャビティ内での光路長を計算するための有用な情報を提供する、入射光の光路を示す。
【0081】
図17は、図15cに示す光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
図17は、光源から照射される平行光が特定の点に集光される特性を示す。即ち、所定の位置にある光源から、複数の円弧の中心がある光軸に平行な光が照射されてから、2度反射させると、光源と対向する鏡面上に位置する赤外線センサに隣接した位置に焦点ができ、これにより、赤外線センサの出力電圧を増大させる。
【0082】
図18は、図15cに示す光キャビティ体内の光検出器での受光結果を示す。
図18において、受光点の位置および各位置での受光結果が着色されている。
【0083】
微量ガスを検出するために必要となる、光路を延長した第2のシミュレーションを設計した。図19a、19bおよび19cに示す光キャビティを適用した。図19cに示す光キャビティは、図19aに示すその左半分と図19bに示すその右半分を組み立てたものである。このような組み合わせは、ほんの一例でしかなく、他の組み合わせでできる別の光キャビティをも適用できる。一体化した光キャビティを適用することも可能である。
【0084】
第2のシミュレーションでは、本発明の光キャビティの条件を満たす円弧を用いて光キャビティを形成した。一方、この構造体の2つの円弧の中心に隣接する位置(あるいは中心)に平行光を照射すると、2つの円弧は反射光を2つの円弧の中心軸近くにある特定の点に到達させる。しかし、反射の回数が増えると、実際には光度が低下し、シミュレーションと現実とでの受光光度が大きく異なる場合がある。よって、シミュレーションの趣旨に基づき、受光光度の低減を防ぐために、赤外線センサに到達するまでの反射回数を5回までに制限した。また、上記の構造において、円弧の中心近くに光を到達させるために、照射器(赤外線)および受光器(赤外線)が同じ円弧上に配置されている。しかし、上記の特徴は本発明を制約するものではない。
【0085】
図20は、図19cに示す光キャビティ体から発する光の光路を示す。
図20は、照射器から照射される光を示し、特に、照射器の中心から照射されて受光器、即ち赤外線センサ、の中心に到達する光を示す。
【0086】
図21は、図19cに示す光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
図21は、光源の照射部(例えば、半径2mm)より大きい光束が受光器に到達する様子を示す。このような構造の光キャビティ体は、例えば、光源より大きい半径を有する受光器である複数ガスセンサ(例えば、センサ半径が5mmのもの)に適用した場合に有用な場合がある。
【0087】
図22は、図19cに示す光キャビティ体の光検出器での受光結果を示す。
図22は、赤外線センサの受光部(円形)に到達する時間当たりの光エネルギーが約時間当たり0.523ワットであることを示す。これは5回の反射を経て赤外線センサに到達する理想のエネルギーである時間当たり0.567ワットと比べると0.44ワットだけ少ない。この理由は、投光器から照射される光の一部が発散して、赤外線センサの受光部の外側に到達するためである。
【0088】
光路を確認する際、上記TracePro(商標登録)を利用した光の収束効果および各光キャビティの受光結果について以下のことが分かった。
投光器の中心軸から照射される光の全光路長を確認できた。本発明による光キャビティは、従来の光キャビティより長い光路を得られ、加えて、光の収束効果も得られた。さらに、光源(出力電圧:0.66ワット)が定常状態で作用する場合、鏡面での反射により光度が低減して光検出器に到達することが確認された。光検出器での受光結果が理論上の計算値よりわずかに小さい値を示すが、光は完全には光検出器に収束しないことを考慮すると、得られた結果は妥当であると考えられる。
【0089】
上記のシミュレーション結果、特に、第1のシミュレーションの光キャビティにより、以下の実施例が得られた。
【0090】
本発明の実施例では2つの公知部品、つまり、赤外線光源と光検出器を利用している。赤外線光源として、例えば、平行光を収束するための放物面反射器を有し、波長が1から5μmまでの赤外線を照射する、Gilway technical lamp社の赤外線光源を利用した。また、通常車両の暖房、換気および空気調和機(HVAC)に使用されるGE Thermometrics Technologies社のZTP-315熱電対赤外線検出器を利用したが、その際本研究の目的であるガス検出のために長波周波数帯域フィルタに代えて、中心波長が4.26μmで半値全幅(FWHM)が20nmの二酸化炭素フィルタを使用した。
【0091】
図23は本発明の上記実施例による、3つの主要部から構成される、NDIRガスセンサモジュールを示す。第1主要部は、パルス継続時間が200から600msでターンオフ時間が0.5秒の間隔をおいて2から3秒の間で変えられる赤外線変調部である。第2主要部は、本発明によって提案されている新光キャビティ構造であり、第3主要部は増幅回路である。本実施例では、基準電圧駆動体(LM385)を備える二次増幅回路を使用した。
【0092】
図24は、本発明の上記実施例によるNDIRガスセンサモジュールおよび基準二酸化炭素送出器の、室温での二酸化炭素濃度に対する出力電圧を示す。図24に示す通り、二酸化炭素濃度が100ppmでの新センサモジュールによる最大出力電圧は約4.75Vである。二酸化炭素濃度が100から2,000ppmの間で増加すると共に、センサモジュールの最大出力電圧は4.45Vに低下する。二酸化炭素濃度が100から2,000ppmの間で変化する際、最高電圧の差は最大で300mVである。
【0093】
図25は、本発明の上記実施例において、二酸化炭素濃度が一定のときのパルス変調時間に対する出力電圧差を示す。出力電圧差とは、光源のターンオン状態のときとターンオフ状態のときの出力電圧差を意味する。パルス変調時間が長くなると共に出力電圧差が増大する。ただし、パルス変調時間が500msを超えると出力電圧差は飽和し始める。これに応じて、出力電圧差も小さくなる。また、吸収された赤外線光度が高いため、吸収された熱の放出は完全に行われず、光源の寿命が短くなる。
【0094】
図26は、本発明の上記実施例による、二酸化炭素濃度の変化に対する出力電圧の変化を示す。この図は、二酸化炭素濃度が100から2,000ppmの間で増加するときのNDIRガスセンサモジュールの標準化出力信号を示す。赤外線のパルス変調時間が200msのときに、標準化出力信号は最大の変化を示す。変調時間が300から500msの間で増加すると、標準化出力信号は大幅に減少する。
【0095】
一方、パルス持続時間が500msのときに最大電圧差を示すが、このとき基準電圧はわずかに増大する。出力電圧の変化はパルス変調時間が200msの場合に最大となり、18,000倍の増幅率を示す。このときの赤外線光源のターンオフ時間は3秒である。
【0096】
本発明を特定のNDIRガスセンサおよび光キャビティの実施例を参照して詳細に説明したが、これらの説明は本発明の一適用例でしかなく、これらは本発明の範囲を制限するものではない。本明細書内に開示するシミュレーションおよび実施例のさまざまな変更および組み合わせは、添付の請求項に規定する通り本発明の範囲に含まれる。
【0097】
例えば、費用対効果の高い光キャビティで本発明の平行光を達成するためには、Gilway technical lamp社の製品を使用しないで別の方法で光キャビティ内の放物面型の鏡を作ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
前述の通り、本発明の光学的ガスセンサによれば、赤外線光源から照射される光の光路長をかなり延長でき、低濃度から高濃度までのガスが測定可能である。また、さまざまなガスを測定できる。
【0099】
さらに、ガスチャンバ壁として2つの凹面鏡を利用することにより、ガスセンサの設計を容易にし、製造コストを抑える効果をもたらす。
【0100】
本発明は、従来のNDIRガスセンサの光キャビティの設計を改良した新しいガスセンサ構造を提案している。本発明の光キャビティは、2つの凹面鏡から形成された非常に簡単な構造であり、これによって光束を光検出器に収束させる。
【0101】
本発明によれば、延長された光路および光の収束特性を有するNDIRガスセンサのための新しい光キャビティ構造が得られる。この新しい光キャビティ構造を利用して、空気の品質測定システム、車両用空気調和機(HVAC)システム等のための新しいセンサモジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図2】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図3】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図4】従来技術による光学的ガスセンサを示す。
【図5】放物面鏡の光学的特性を示す。
【図6a】焦点は同じ位置にある2つの放物面鏡を備える光キャビティシステムの光学的特性を示す。
【図6b】焦点は同じ位置にある2つの放物面鏡を備える光キャビティシステムの光学的特性を示す。
【図7a】焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離を有する2つの放物面鏡によってできる光路を示す。
【図7b】焦点は同じ位置にあるが異なる焦点距離を有する2つの放物面鏡によってできる光路を示す。
【図8】本発明の一実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。
【図9】図8に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。
【図10】図8に示す光学的ガスセンサのB−B’断面図を示す。
【図11】図8に示す光学的ガスセンサのC−C’断面図を示す。
【図12】本発明の一実施例による光学的ガスセンサの斜視図を示す。
【図13】本発明の別の実施例による光学的ガスセンサの上面図を示す。
【図14】図13に示す光学的ガスセンサのA−A’断面図を示す。
【図15a】本発明の一実施例による光キャビティの左半分を示す。
【図15b】本発明の一実施例による光キャビティの右半分を示す。
【図15c】本発明の一実施例による組み立てられた光キャビティを示す。
【図16】本発明の一実施例による光キャビティ体から発する光の光路を示す。
【図17】本発明の一実施例による光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
【図18】本発明の一実施例による光キャビティ体内の光検出器での受光結果を示す。
【図19a】本発明の別の実施例による光キャビティの左半分を示す。
【図19b】本発明の別の実施例による光キャビティの右半分を示す。
【図19c】本発明の別の実施例による組み立てられた光キャビティを示す。
【図20】本発明の別の実施例による光キャビティ体から発する光の光路を示す。
【図21】本発明の別の実施例による光キャビティ体から発する光の収束効果を示す。
【図22】本発明の別の実施例による光キャビティ内の光検出器での受光結果を示す。
【図23】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールを示す。
【図24】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールの、室温での二酸化炭素濃度に対する出力電圧特性を示す。
【図25】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールの、パルス変調時間に対する出力電圧の変化を示す。
【図26】本発明の一実施例によるNDIRガスセンサモジュールの、二酸化炭素濃度に対する出力電圧の変化を示す。
【符号の説明】
【0103】
10,15 ガスチャンバ下方支持板
20 第1の鏡
25 第1の放物面鏡
30 第2の鏡
35 第2の放物面鏡
40,45 ガス通気孔
50,55 放物面鏡
60,65 赤外線センサ
70,75 ガスチャンバ上板
80,85 光照射口
90,95 赤外線ランプ
100 蓋
110,115 高さ調整構造
120,125 ガス拡散孔
130,135 ガスフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスを受容するためのガスチャンバと、
前記試料ガスを前記ガスチャンバ内へ注入または、前記試料ガスを前記ガスチャンバから排出するためのガス開口部と、
前記試料ガスに向けて赤外線を照射するための光源と、
前記試料ガスを通過した前記赤外線の光度を検出するための赤外線センサと
を備えた光学的ガスセンサであって、
前記ガスチャンバの壁は、焦点位置が同じであるが異なる焦点距離を有する互いに対向する2つの凹面鏡から成り、前記2つの凹面鏡は、前記2つの凹面鏡の軸に平行な入射光を一方の前記凹面鏡の表面で反射させてから前記2つの凹面鏡の前記焦点位置を通過させ、前記2つの凹面鏡の前記焦点位置を通過した前記入射光を他方の前記凹面鏡の表面で反射させて前記2つの凹面鏡の軸に平行に進ませる曲率を有する
ことを特徴とする光学的ガスセンサ。
【請求項2】
前記ガス開口部が、前記ガスチャンバの特定の壁に配置されたガス通気孔および前記ガスチャンバの下方あるいは上方支持板に配置された複数のガス拡散孔を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項3】
前記複数のガス拡散孔が、ガスフィルタで覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項4】
前記複数のガス拡散孔が、好ましくは前記赤外線センサからの入射光軸上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項5】
前記ガス通気孔が、有利に下向きに曲げられているか、着脱可能な蓋を備えていることを特徴とする請求項2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項6】
前記凹面鏡の表面が、金メッキまたは金蒸着されていることを特徴とする請求項1に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項7】
前記ガスチャンバが、前記支持板に形成されている前記赤外線光源に隣接する位置で、前記ガスチャンバの前記支持板と一体形成されている放物面鏡を収容することを特徴とする請求項2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項8】
前記赤外線光源からの前記赤外線の少なくとも一部を照射するための光照射口が、前記ガスチャンバの前記支持板に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項9】
前記赤外線が、前記放物面鏡の前記焦点位置に配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項10】
前記ガスチャンバの前記支持板には、前記赤外線光源の高さによって生じる前記支持板の傾きを調整するための高さ調整構造が取付けられていることを特徴とする請求項2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項11】
試料ガスを受容するためのガスチャンバと、
前記試料ガスを前記ガスチャンバ内へ注入または、前記試料ガスを前記ガスチャンバから排出するためのガス開口部と、
前記試料ガスに向けて赤外線を照射するための光源と、
前記試料ガスを通過した前記赤外線の光度を検出するための赤外線センサと
を備えた光学的ガスセンサであって、
前記ガスチャンバの壁は、焦点位置が同じであるが異なる焦点距離を有する互いに対向する2つの凹面鏡から成る
ことを特徴とする光学的ガスセンサ。
【請求項12】
前記ガス開口部が、前記ガスチャンバの特定の壁に配置されたガス通気孔および前記ガスチャンバの下方あるいは上方支持板に配置された複数のガス拡散孔を含むことを特徴とする請求項11に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項13】
前記複数のガス拡散孔が、ガスフィルタで覆われていることを特徴とする請求項11または12に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項14】
前記凹面鏡の表面が、金メッキまたは金蒸着されていることを特徴とする請求項11に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項15】
前記ガスチャンバが、前記赤外線光源からの入射光を前記ガスチャンバの水平支持板に平行に進ませるように形成した放物面鏡を収容することを特徴とする請求項12に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項16】
非分散形赤外線ガスセンサ用の光キャビティであって、
前記光キャビティが互いに対向する2つの凹面鏡から形成され、
前記凹面鏡の断面が円弧状で、
前記2つの円弧の中心は同軸上にあり、
前記光キャビティは、光源、光検出器、ガス通気およびガス拡散用の孔を除いて光学的に閉鎖されていることを特徴とする光キャビティ。
【請求項17】
前記2つの円弧の中心が、一方の円弧と他方の円弧とをつなぐ直線の中点と重なることを特徴とする請求項16に記載の光キャビティ。
【請求項18】
前記2つの円弧が、異なる半径を有することを特徴とする請求項16または17に記載の光キャビティ。
【請求項19】
より大なる半径を有する円弧の中心がより小なる半径を有する円弧の外側にあり、前記より小なる半径を有する円弧の中心が前記より大なる半径を有する円弧の内側にあることを特徴とする請求項18に記載の光キャビティ。
【請求項20】
前記光源および前記光検出器が異なる円弧上に設置されており、前記光源からの入射光は前記2つの円弧の中心が置かれている軸に平行に照射されて、各円弧で1回ずつ反射してから前記光検出器で検出されることを特徴とする請求項19に記載の光キャビティ。
【請求項21】
前記光源からの前記入射光が、前記光検出器の配置されている前記円弧上で焦点を合わせることを特徴とする請求項20に記載の光キャビティ。
【請求項22】
前記光源および前記光検出器を同じ前記円弧上に配置し、前記光源からの入射光を前記各円弧に奇数回反射させてから前記光検出器で検出することを特徴とする請求項17に記載の光キャビティ。
【請求項23】
前記光源からの前記入射光が前記光キャビティの中心または中心に隣接する位置に入射し、複数回の反射の際に収束と発散を繰り返して前記光検出器に到達し、
前記光検出器が配置されている前記円弧に到達する光の断面積が前記光源から照射される光のそれより大であることを特徴とする請求項22に記載の光キャビティ。
【請求項24】
非分散形赤外線ガスセンサ用の光キャビティであって、
赤外線を照射するための光源と、
前記光源からの入射光をついには検出する光検出器と、
断面が円弧状で、双方の中心が同軸上にある、互いに対向する2つの凹面鏡によって形成され、前記光源、前記光検出器、ガス通気およびガス拡散用の孔を除いては光学的に閉鎖している光キャビティと、
前記光源から照射される前記赤外線を制御するための、パルス変調時間が200乃至600msであり、ターンオフ時間が2、2.5または3秒である光変調手段と、
前記光検出器からの電子信号を増幅するための増幅手段と
を備える非分散形赤外線ガスセンサ用の光キャビティ。
【請求項25】
前記光変調手段が、前記光源のパルス変調時間を200msに、ターンオフ時間を3秒に設定することを特徴とする請求項24に記載の光キャビティ。
【請求項1】
試料ガスを受容するためのガスチャンバと、
前記試料ガスを前記ガスチャンバ内へ注入または、前記試料ガスを前記ガスチャンバから排出するためのガス開口部と、
前記試料ガスに向けて赤外線を照射するための光源と、
前記試料ガスを通過した前記赤外線の光度を検出するための赤外線センサと
を備えた光学的ガスセンサであって、
前記ガスチャンバの壁は、焦点位置が同じであるが異なる焦点距離を有する互いに対向する2つの凹面鏡から成り、前記2つの凹面鏡は、前記2つの凹面鏡の軸に平行な入射光を一方の前記凹面鏡の表面で反射させてから前記2つの凹面鏡の前記焦点位置を通過させ、前記2つの凹面鏡の前記焦点位置を通過した前記入射光を他方の前記凹面鏡の表面で反射させて前記2つの凹面鏡の軸に平行に進ませる曲率を有する
ことを特徴とする光学的ガスセンサ。
【請求項2】
前記ガス開口部が、前記ガスチャンバの特定の壁に配置されたガス通気孔および前記ガスチャンバの下方あるいは上方支持板に配置された複数のガス拡散孔を含むことを特徴とする請求項1に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項3】
前記複数のガス拡散孔が、ガスフィルタで覆われていることを特徴とする請求項1または2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項4】
前記複数のガス拡散孔が、好ましくは前記赤外線センサからの入射光軸上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項5】
前記ガス通気孔が、有利に下向きに曲げられているか、着脱可能な蓋を備えていることを特徴とする請求項2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項6】
前記凹面鏡の表面が、金メッキまたは金蒸着されていることを特徴とする請求項1に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項7】
前記ガスチャンバが、前記支持板に形成されている前記赤外線光源に隣接する位置で、前記ガスチャンバの前記支持板と一体形成されている放物面鏡を収容することを特徴とする請求項2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項8】
前記赤外線光源からの前記赤外線の少なくとも一部を照射するための光照射口が、前記ガスチャンバの前記支持板に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項9】
前記赤外線が、前記放物面鏡の前記焦点位置に配置されていることを特徴とする請求項7または8に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項10】
前記ガスチャンバの前記支持板には、前記赤外線光源の高さによって生じる前記支持板の傾きを調整するための高さ調整構造が取付けられていることを特徴とする請求項2に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項11】
試料ガスを受容するためのガスチャンバと、
前記試料ガスを前記ガスチャンバ内へ注入または、前記試料ガスを前記ガスチャンバから排出するためのガス開口部と、
前記試料ガスに向けて赤外線を照射するための光源と、
前記試料ガスを通過した前記赤外線の光度を検出するための赤外線センサと
を備えた光学的ガスセンサであって、
前記ガスチャンバの壁は、焦点位置が同じであるが異なる焦点距離を有する互いに対向する2つの凹面鏡から成る
ことを特徴とする光学的ガスセンサ。
【請求項12】
前記ガス開口部が、前記ガスチャンバの特定の壁に配置されたガス通気孔および前記ガスチャンバの下方あるいは上方支持板に配置された複数のガス拡散孔を含むことを特徴とする請求項11に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項13】
前記複数のガス拡散孔が、ガスフィルタで覆われていることを特徴とする請求項11または12に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項14】
前記凹面鏡の表面が、金メッキまたは金蒸着されていることを特徴とする請求項11に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項15】
前記ガスチャンバが、前記赤外線光源からの入射光を前記ガスチャンバの水平支持板に平行に進ませるように形成した放物面鏡を収容することを特徴とする請求項12に記載の光学的ガスセンサ。
【請求項16】
非分散形赤外線ガスセンサ用の光キャビティであって、
前記光キャビティが互いに対向する2つの凹面鏡から形成され、
前記凹面鏡の断面が円弧状で、
前記2つの円弧の中心は同軸上にあり、
前記光キャビティは、光源、光検出器、ガス通気およびガス拡散用の孔を除いて光学的に閉鎖されていることを特徴とする光キャビティ。
【請求項17】
前記2つの円弧の中心が、一方の円弧と他方の円弧とをつなぐ直線の中点と重なることを特徴とする請求項16に記載の光キャビティ。
【請求項18】
前記2つの円弧が、異なる半径を有することを特徴とする請求項16または17に記載の光キャビティ。
【請求項19】
より大なる半径を有する円弧の中心がより小なる半径を有する円弧の外側にあり、前記より小なる半径を有する円弧の中心が前記より大なる半径を有する円弧の内側にあることを特徴とする請求項18に記載の光キャビティ。
【請求項20】
前記光源および前記光検出器が異なる円弧上に設置されており、前記光源からの入射光は前記2つの円弧の中心が置かれている軸に平行に照射されて、各円弧で1回ずつ反射してから前記光検出器で検出されることを特徴とする請求項19に記載の光キャビティ。
【請求項21】
前記光源からの前記入射光が、前記光検出器の配置されている前記円弧上で焦点を合わせることを特徴とする請求項20に記載の光キャビティ。
【請求項22】
前記光源および前記光検出器を同じ前記円弧上に配置し、前記光源からの入射光を前記各円弧に奇数回反射させてから前記光検出器で検出することを特徴とする請求項17に記載の光キャビティ。
【請求項23】
前記光源からの前記入射光が前記光キャビティの中心または中心に隣接する位置に入射し、複数回の反射の際に収束と発散を繰り返して前記光検出器に到達し、
前記光検出器が配置されている前記円弧に到達する光の断面積が前記光源から照射される光のそれより大であることを特徴とする請求項22に記載の光キャビティ。
【請求項24】
非分散形赤外線ガスセンサ用の光キャビティであって、
赤外線を照射するための光源と、
前記光源からの入射光をついには検出する光検出器と、
断面が円弧状で、双方の中心が同軸上にある、互いに対向する2つの凹面鏡によって形成され、前記光源、前記光検出器、ガス通気およびガス拡散用の孔を除いては光学的に閉鎖している光キャビティと、
前記光源から照射される前記赤外線を制御するための、パルス変調時間が200乃至600msであり、ターンオフ時間が2、2.5または3秒である光変調手段と、
前記光検出器からの電子信号を増幅するための増幅手段と
を備える非分散形赤外線ガスセンサ用の光キャビティ。
【請求項25】
前記光変調手段が、前記光源のパルス変調時間を200msに、ターンオフ時間を3秒に設定することを特徴とする請求項24に記載の光キャビティ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図16】
【図17】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図20】
【図21】
【図24】
【図25】
【図26】
【図18】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15a】
【図15b】
【図15c】
【図16】
【図17】
【図19a】
【図19b】
【図19c】
【図20】
【図21】
【図24】
【図25】
【図26】
【図18】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2007−514160(P2007−514160A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543744(P2006−543744)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003243
【国際公開番号】WO2005/057188
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506198849)イーエルティー インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003243
【国際公開番号】WO2005/057188
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506198849)イーエルティー インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】
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