説明

ガスセンサ

【課題】 ガス濃度を感度良く検知できるガスセンサを提供する。
【解決手段】 表裏に主面17を有し厚みすべりの振動モードを励振する水晶振動片10
と、水晶振動片10の主面17に形成された励振電極15および接続電極16と、少なく
とも励振電極15上に形成され水素ガスに反応して発熱する水素反応触媒膜13と、水晶
振動片10を励振させる発振回路とを備え、水素反応触媒膜13の発熱による水晶振動片
10の温度変化を周波数信号として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスと触媒媒質による発熱を温度として検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、用途に応じたガスを検出するガスセンサが実用化されている。特に可燃性ガ
スを検出するガスセンサは、使用上の安全性を確保する上での重要なセンサと位置付けら
れている。
例えば近年、環境負荷を低減するために自動車用、家庭用として燃料電池の開発が進ん
でいる。燃料電池は水素を燃料とするため、水素ガスのガス漏れを検知することが燃料電
池を安全に使用する際の重要な事項である。このガス漏れの検知は水素センサによって行
われ、水素ガスだけに応答し、約0.05%から5%程度の水素濃度を定量的に検知する
水素センサが必要である。
【0003】
現在、水素センサとして金属酸化物焼結体型半導体センサ、接触燃焼式センサなどが知
られている。
金属酸化物焼結体型半導体センサは、半導体表面のガスの吸着現象による電気抵抗の変
化を利用し、固定抵抗と対にしたブリッジ回路を構成して、この変化を電圧として検出す
るものである。
また、接触燃焼式センサは、ガスの検出機能を持つ物質の表面での接触燃焼現象による
発熱を利用し、この温度変化から電気抵抗の変化を固定抵抗と対にしたブリッジ回路から
電圧として検出するものである。
【0004】
例えば、接触燃焼式水素センサの一例として特許文献1に示すように、触媒媒質として
の水素反応用触媒層と該水素反応触媒層の発熱温度を検知する薄膜サーミスタが絶縁層を
介して積層され、この素子を用いてブリッジ回路を構成し、ブリッジ電圧を検出すること
で水素濃度を検知可能としている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−98742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の水素センサなどのガスセンサはブリッジ回路などから検出される
電圧が微小なため、ガス濃度を感度良く検知できないという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ガス濃度を感度
良く検知できるガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、ガスと触媒媒質による発熱を温度として検出する
ガスセンサであって、前記ガスの検出部分が温度により固有振動数が変化する機械振動子
より構成され、前記触媒媒質が前記機械振動子上に備えられ、前記ガスと前記触媒媒質に
よる触媒効果で発熱した熱が前記機械振動子に伝達され温度上昇が生じ、前記機械振動子
の固有振動数を変化させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、機械振動子上に備えられた触媒媒質とガスによって発熱した熱が機
械振動子に伝わり、機械振動子の温度が上昇する。この機械振動子は、温度により固有振
動数が変化する特性を有しているため、機械振動子の温度上昇に伴い固有振動数が変化す
る。この固有振動数の変化を検知することで、ガスの存在またはガスの濃度を検知するこ
とが可能となる。
このように、本発明のガスセンサは機械振動子の温度に起因する周波数信号を検出して
ガスを検知することができることから、従来の電圧を検出してガスを検知する方法に比べ
て、ガスを感度良く検知できるガスセンサを提供することができる。
ここで機械振動子に用いられる材料としては、単結晶圧電材料・多結晶圧電材料・磁歪
材料が採用される。単結晶圧電材料としては、α水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リ
チウムなどがあり、多結晶圧電材料としてはPZT、チタン酸バリウムなどがある。また
、磁歪材料としてはニッケル、アモルファス強磁性体などが挙げられる。
【0010】
また、本発明のガスセンサは、触媒効果を制御するために前記機械振動子と前記触媒媒
質の部分の温度を制御する温度制御手段を備えることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、機械振動子と触媒媒質の部分の温度を制御する温度制御手段を備え
ることで、両者の温度をガス雰囲気温度よりも高い温度で、使用することができる。この
ようにすれば、触媒媒質の触媒効果が向上し、効率よく発熱の温度変化を検出でき、感度
に優れたガスセンサを提供することができる。
【0012】
本発明のガスセンサは、前記温度制御手段として触媒媒質に電流を流し、その発熱効果
により温度制御を行うことが望ましい。
【0013】
このようにすれば、触媒媒質自体に電流を流すことにより、その抵抗作用により発熱し
て機械振動子の温度を上昇させることができ、適宜電流の大きさ、通電時間を制御するこ
とで機械振動子の温度制御をすることができる。このことから、雰囲気温度の変化、また
はガスと反応して触媒媒質が発熱の際に生じる水の影響を排除することができ、感度に優
れたガスセンサを提供することができる。
【0014】
また、本発明のガスセンサは、検出ガスとして水素ガスを主体とするガスセンサであっ
て、表裏に主面を有し厚みすべりの振動モードを励振する圧電振動片と、前記圧電振動片
の主面に形成された励振電極および接続電極と、少なくとも前記励振電極上に形成され水
素ガスに反応して発熱する水素反応触媒膜と、前記圧電振動片を励振させる発振回路と、
を備え、前記水素反応触媒膜の発熱による前記圧電振動片の温度変化を周波数信号として
検出することを特徴とする。
【0015】
厚みすべりの振動モードを励振する圧電振動片は、一般に、周波数温度特性を持ち、温
度に応じた周波数を発振する。また、水素反応触媒膜に水素を含む空気を接触させると触
媒燃焼が生じ発熱する性質があり、この発熱量は水素濃度に比例している。これらの特性
および性質を利用して、本発明のガスセンサが構成されている。
まず、水素反応触媒膜に水素を含む空気が接触して発熱し、その熱が圧電振動片に伝わ
り、圧電振動片の温度が上昇する。圧電振動片はこの温度に対応する周波数を発振する。
そして、この検出された周波数信号またはこの周波数信号から導きだされる温度を基に水
素濃度を検知することが可能となる。
このように、本発明のガスセンサは圧電振動片の温度に起因する周波数信号を検出して
水素ガスの濃度を検知することができることから、従来の電圧を検出して水素ガスの濃度
を検知する方法に比べて、水素濃度を感度良く検知できるガスセンサを提供することがで
きる。
【0016】
本発明のガスセンサにおいて、前記水素反応触媒膜は白金またはパラジウムから選択さ
れる材料で形成されていることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、水素反応触媒膜として白金またはパラジウムを利用することで高い
水素選択性を持ち、他の可燃性ガスにほとんど応答しない水素反応触媒膜を構成すること
ができる。
【0018】
また、本発明のガスセンサにおいて、前記圧電振動片が水晶振動片であることが望まし
い。
【0019】
この構成によれば、水晶は加工性が良く量産に適し、また、水晶の主面のカット角(切
断方位)を適宜選択することで水晶振動片の温度感度係数を調整できる利点がある。つま
り、水晶の主面のカット角を適宜選択することで、温度に対する良好な感度を得ることが
でき、ひいては、水素濃度を感度良く検知でき、かつ量産性に優れたガスセンサを提供す
ることができる。
【0020】
本発明のガスセンサにおいて、水晶の結晶の電気軸をX軸、機械軸をY軸、光学軸をZ
軸として、前記X軸を前記Z軸の周りに時計方向に角度φ°回転させてX´軸とし、かつ
前記Z軸を前記X´軸の周りに時計方向に角度θ°回転させてZ´軸とし、前記X´軸お
よび前記Z´軸を含む平面を前記水晶振動片の主面とする水晶振動片であって、φ=7〜
14 (°)、θ=14±3(°)、であることが望ましい。
【0021】
この構成によれば、温度感度係数が30〜60ppm/℃の水晶振動片を構成すること
ができ、水素濃度に対応する発熱を効率よく検出でき、水素濃度の検知感度に優れた水素
センサを提供することができる。特に、このカット角はθの変動に対して、温度に対する
感度の変動が少なく、量産性に優れたガスセンサを提供することができる。
【0022】
また、本発明のガスセンサにおいて、水晶の結晶の電気軸をX軸、機械軸をY軸、光学
軸をZ軸として、前記X軸を前記Z軸の周りに時計方向に角度φ°回転させてX´軸とし
、かつ前記Z軸を前記X´軸の周りに時計方向に角度θ°回転させてZ´軸とし、前記X
´軸および前記Z´軸を含む平面を前記水晶振動片の主面とする水晶振動片であって、φ
=0(°)、θ=28±2(°)、であることが望ましい。
【0023】
この構成によれば、温度感度係数が30〜60ppm/℃の水晶振動片を構成すること
ができ、水素濃度に対応する発熱を効率よく検出でき、水素濃度の検知感度に優れた水素
センサを提供することができる。特にこのカット角は、水晶のエッチング加工性が良く、
量産性に優れたガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化したガスセンサの実施形態について水素センサを例にとり、図面
に従って説明する。
(第1の実施形態)
【0025】
図1は、本実施形態の水素センサに係る水素反応検出素子の構成を示す模式平面図であ
る。図2は、図1におけるA−A断線に沿う模式断面図である。
水素反応検出素子5には、水晶を材料とする圧電振動片としての水晶振動片10を備え
、水晶振動片10は厚みすべりの振動モードを励振する。この水晶振動片10の表裏の主
面17にそれぞれ励振電極15および接続電極16が形成されている。励振電極15は水
晶振動片10の中央付近に設けられ、水晶振動片10の表裏で対向する位置に形成されて
いる。励振電極15には接続電極16が接続され、水晶振動片10の外周部に電極が引き
出されるように形成されている。
【0026】
励振電極15および接続電極16は、Crなどの下地膜11とAuなどの電極膜12か
ら構成され、真空蒸着あるいはスパッタなどの手法により形成されている。
さらに、水晶振動片10表裏の励振電極15上には白金(Pt)からなる水素反応触媒
膜13が300nm〜600nmの厚さで、真空蒸着あるいはスパッタなどの手法により
形成されている。
【0027】
そして、支持体20にはリードが貫通し、支持体20の一方から伸びるインナーリード
21と水晶振動片10の接続電極16とが、導電性接着剤23を介して接着固定されてい
る。また、支持体20の他方から伸びるアウターリード22は、水晶振動片10を励振さ
せる発振回路(図示せず)に接続されている。
【0028】
ここで、水晶振動片10のカット角(切断方位)について詳細に説明する。水晶にはカ
ット角に依存する周波数温度特性があり、このカット角を適宜選択することで所望の温度
感度係数が得られる。本実施形態では厚みすべりの振動モードを励振する水晶振動片を用
いる。この理由は、水素反応検出素子5が常圧中に配置されるため、屈曲振動を励振する
水晶振動片では空気抵抗が振動に影響を及ぼし、抵抗値が高くなり良好な振動を保てない
ためである。
【0029】
図3は、本実施形態に用いる水晶振動片10のカット角を説明する説明図である。
α水晶である水晶原石1のそれぞれ直交する3つの結晶軸において、電気軸をX軸、機
械軸をY軸、光学軸をZ軸とする。
まず、X軸をZ軸の周りに時計方向に所定の角度φ°回転させてX´軸とする。さらに
、Z軸をX´軸の周りに時計方向に角度θ°回転させてZ´軸とする。また、同時にY軸
も2回回転しており、図中、角度φ°回転でできる軸をY´軸、その後の角度θ°回転で
できる軸をY´´軸としている。この新たに回転してできたX´軸およびZ´軸を含む平
面を主面として水晶原石1から切り出すことで水晶板2が得られる。そして、この水晶板
2を用いて水晶振動片が形成される。
なお、本実施形態において結晶軸を中心とする時計回りとは、その結晶軸の正方向(+
側)から見た場合を基準とする。
【0030】
本実施形態では、この回転した角度(回転角度)φ,θを、下記式(1)(2)を満足
するように設定した。
φ=7〜14 (°) ・・・(1)
θ=14±3 (°) ・・・(2)
【0031】
また、下記式(3)(4)を満足するカット角であっても良い。このカット角はATカ
ットに属するカット角である。
φ=0(°) ・・・(3)
θ=28±2(°) ・・・(4)
【0032】
つぎに、上記式(1)、(2)を満足するように角度φ,θを設定した経緯について説
明する。
本発明の水素センサは接触燃焼式であることから、水素反応触媒膜に空気を含む水素ガ
スが接触した際に生ずる発熱を利用している。この発熱により発生する熱量は微量である
ため、温度変化を効率よく検出する必要があり、周波数における温度依存性の高い水晶振
動片が望まれる。
水晶振動片における固有周波数の温度依存性は、水晶振動片の形状の熱膨張による変化
、弾性定数の温度依存性、熱膨張による密度変化に関係し、これらを考慮して水晶のカッ
ト角を選択することにより決定した。
【0033】
さらに、水晶のカット角を選定するにあたり以下の点について考慮した。まず、水素濃
度の検出感度を0.1%以下とした場合、水素濃度5%を検出する際の温度変化は2〜3
℃であり、水素濃度0.1%あたり0.04〜0.06℃の温度変化となる。ここで、周
波数の検出限界は1ppm程度であり、水晶振動片の温度感度(温度感度係数)が30p
pm/℃以上あれば、水素濃度0.1%あたり1.2ppm以上の周波数変化を得ること
ができる。ここで、1℃の温度変化における周波数変化を周波数偏差で表した値を温度感
度係数(ppm/℃)と呼ぶ。
また一方、この温度感度係数を大きくすることは、水素濃度の検出感度を向上させるが
、温度感度係数が大きいと周波数の変動も大きくなり、スプリアスとの結合が心配される
。一般に、主振動に対して±5000ppm程度の変動であればスプリアスを回避できる
設計が可能であり、水素センサの使用温度範囲を50〜220℃とすると、170℃の温
度変化で約10000ppmの周波数変動の得られる温度感度係数60ppm/℃が上限
であると考えられる。
このことから、温度感度係数が30〜60ppm/℃となる水晶のカット角を選ぶこと
が、水素センサに用いる水晶振動片に適しているといえる。
【0034】
図4は水晶振動片のカット角においてφ=9°とし、θを7〜18°まで変化させたと
きの温度特性を示すグラフである。
このグラフより、それぞれのカット角において温度特性は一次関数に近似され、θの値
が大きくなるに従って傾きが大きくなっているのがわかる。この傾きは前述の温度感度係
数に相当する。
【0035】
また、水素センサの用途において、この温度特性が広い範囲で直線性に優れていること
が望ましい。図5は、水晶のカット角における温度特性の近似直線が標準偏差からどのく
らい乖離しているかを示すグラフである。
ここで、標準偏差が1に近いほど直線性に優れており、図5からθ=14°付近が最も
直線性が良いことがわかる。また、標準偏差0.9995以上を得ようとすれば、θ=1
4±3°の範囲で適用が可能である。
【0036】
同様にして、水晶のカット角においてφ=0〜16°の範囲で、温度特性の直線性の良
いカット角を調査したところ、θ=14°付近が直線性に最も優れることが確認でき、θ
=14±3°の範囲で標準偏差0.9995以上を得ることができる。
下記、表1に選択した回転角度φ,θと温度感度係数を示す。ここでは、便宜上それぞ
れのカット角をCA−1〜CA−5と呼ぶ。
【0037】
【表1】

【0038】
この表1のカット角(CA−1〜CA−5)における、θと温度感度係数の関係を図6
に示す。
カット角(CA−1〜CA−4)は、φ=7〜14°、θ=14±3°において30〜
60ppm/℃の温度感度係数を持ち、水素反応触媒膜の発熱した熱による温度変化を検
出するのに適している。また、このカット角(CA−1〜CA−4)は、θのばらつきに
対して、温度感度係数の変化が少ないことから水晶原石からの水晶板の切り出しが容易で
、量産性に優れていると言える。
【0039】
また、カット角(CA−5)のような切断方位をもつ水晶振動片であっても良い。この
カット角(CA−5)はATカットに属するカット角であり、温度感度係数が30〜60
ppm/℃の範囲内に入るようにθの値を設定した。
そして、カット角(CA−5)はθのばらつきに対して温度感度係数が大きく変動する
が、水晶のエッチング加工性が良く、エッチングを用いた水晶振動片の外形加工、周波数
調整などにおいて、有効なカット角である。
【0040】
図1にもどり、以上のような構成の水素センサにおいて、水素反応触媒膜13に水素を
含む空気が接触して発熱し、その熱が水晶振動片10に伝わり、水晶振動片10の温度が
上昇する。発振回路により励振された水晶振動片10はこの温度に対応する周波数を発振
する。そして、例えば、この検出された周波数と水素が存在しない状態で励振された周波
数との差(周波数シフト)より水素濃度を検知することが可能となる。
図7は水晶振動片10の周波数シフトと水素濃度の相関を説明する説明図であり、図7
(a)は動作温度29℃の場合であり、図7(b)は動作温度100℃の場合である。こ
の図7では水晶振動片10の温度感度係数が40ppm/℃のときの一例を示す。
【0041】
このように、周波数シフトは水素濃度にほぼ比例し、周波数シフトから水素濃度を検知
することができる。
また、他の方法として、この検出された周波数から導きだされる温度を基に水素濃度を
検知することも可能である。
【0042】
このように、本発明の水素センサは水晶振動片10の温度に起因する周波数を検出して
水素ガスの濃度を検知することができることから、従来の電圧を検出して水素ガスの濃度
を検知する方法に比べて、水素濃度を感度良く検知できる水素センサを得ることができる

特に、本実施形態の水素センサは水晶振動片10のカット角を選択して、水晶振動片1
0の温度感度を30〜60ppm/℃の範囲に設定すれば、水晶振動片10のスプリアス
を回避でき、水素反応触媒膜13の発熱を感度よく検出できる。
【0043】
また、水素反応触媒膜として白金(Pt)の他に、パラジウム(Pd)を用いることが
できる。パラジウムも白金と同様に高い水素選択性を持ち、他の可燃性ガスにほとんど応
答しないため、良好な水素反応触媒膜として構成でき、白金と同様な効果を得ることがで
きる。
【0044】
つぎに、本実施形態の水素センサを用いた水素濃度検出システムの一例を説明する。
図8は水素センサを用いた水素濃度検出システムの構成を示す概略構成図である。
水素センサ31は水素反応検出素子5と発振回路30を備えている。水素反応検出素子
5には帰還抵抗6、インバータ7が並列に接続され、ゲート側にはゲート容量8、ドレイ
ン側にはドレイン容量9が接続され、水素反応検出素子5の水晶振動片を励振させる発振
回路30を構成している。
水素センサ31の発振回路30は整流器32に接続され、整流器32は周波数カウンタ
33に接続されている。さらに、周波数カウンタ33は演算器34に接続され、演算器3
4から所望の信号を出力する。
【0045】
このような構成の水素濃度検出システムにおいて、発振回路30により水素反応検出素
子5の周波数信号が整流器32に出力される。整流器32において周波数信号が整流され
、周波数カウンタ33に出力される。周波数カウンタ33にて周波数が計測され演算器3
4に出力される。演算器34では、例えば、計測された周波数と基準となる周波数とから
水素濃度を演算し、水素濃度の値、規格値を超えた場合のアラーム信号、電磁弁制御の信
号などを生成して出力する。
このように、水素濃度検出システムでは、水素センサ31から出力される周波数信号を
用いて水素濃度を検知することができ、この得られた水素濃度を基に様々な機器へ制御信
号などを出力することができる。
【0046】
なお、上記の回路のうち一部をIC化することも可能であり、周波数カウンタ33、演
算器34を1チップマイコンとして構成することもできる。また、信号処理をアナログ処
理、ディジタル処理のどちらを用いても実施は可能である。
【0047】
なお、本実施形態の水素センサにおいて、水晶振動片と水素反応触媒膜の温度を制御す
る温度制御手段を備えていても良い。例えば、水素反応触媒膜を水晶振動片の励振電極以
外の部分に設け、この水素反応触媒膜に通電することにより発熱が生じ水晶振動片の温度
が上昇する。このことから、適宜電流の大きさ、通電時間を制御することで水晶振動片の
温度をガス雰囲気温度よりも高い温度で制御することができる。
このようにすれば、ガス雰囲気温度の変化、またはガスと反応して触媒媒質が発熱の際
に生じる水の影響を排除することができ、感度に優れたガスセンサを提供することができ
る。
【0048】
また、本実施形態の水素センサでは圧電振動片として水晶を用いたが、他にタンタル酸
リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料を用いて圧電振動片を構成しても実施が可能
である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態の水素反応検出素子の構成を示す模式平面図。
【図2】圧電振動片としての水晶振動片の電極構造を示す模式断面図。
【図3】水晶振動片のカット角を示す説明図。
【図4】水晶振動片の温度特性を示すグラフ。
【図5】水晶のカット角における温度特性が直線近似直線から標準偏差からどのくらい乖離しているかを示すグラフ。
【図6】カット角CA−1〜CA−5における回転角θと温度感度係数の関係を示すグラフ。
【図7】水素濃度と周波数シフトの関係の一例を示す説明図であり、(a)は動作温度29℃におけるグラフ、(b)は動作温度100℃におけるグラフ。
【図8】水素センサを用いた水素濃度検出システムの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0050】
1…水晶原石、2…水晶板、5…水素反応検出素子、10…圧電振動片としての水晶振
動片、13…水素反応触媒膜、15…励振電極、16…接続電極、30…発振回路、31
…ガスセンサとしての水素センサ、32…整流器、33…周波数カウンタ、34…演算器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスと触媒媒質による発熱を温度として検出するガスセンサであって、
前記ガスの検出部分が温度により固有振動数が変化する機械振動子より構成され、前記
触媒媒質が前記機械振動子上に備えられ、前記ガスと前記触媒媒質による触媒効果で発熱
した熱が前記機械振動子に伝達され温度上昇が生じ、前記機械振動子の固有振動数を変化
させることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセンサにおいて、触媒効果を制御するために前記機械振動子と前
記触媒媒質の部分の温度を制御する温度制御手段を備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項2に記載のガスセンサにおいて、前記温度制御手段として触媒媒質に電流を流し
、その発熱効果により温度制御を行うことを特徴とするガスセンサ。
【請求項4】
検出ガスとして水素ガスを主体とするガスセンサであって、
表裏に主面を有し厚みすべりの振動モードを励振する圧電振動片と、
前記圧電振動片の主面に形成された励振電極および接続電極と、
少なくとも前記励振電極上に形成され水素ガスに反応して発熱する水素反応触媒膜と、
前記圧電振動片を励振させる発振回路と、を備え、
前記水素反応触媒膜の発熱による前記圧電振動片の温度変化を周波数信号として検出す
ることを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のガスセンサにおいて、
前記水素反応触媒膜は白金またはパラジウムから選択される材料で形成されていること
を特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項4または5に記載のガスセンサにおいて、
前記圧電振動片が水晶振動片であることを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
請求項6に記載のガスセンサにおいて、
水晶の結晶の電気軸をX軸、機械軸をY軸、光学軸をZ軸として、
前記X軸を前記Z軸の周りに時計方向に角度φ°回転させてX´軸とし、
かつ前記Z軸を前記X´軸の周りに時計方向に角度θ°回転させてZ´軸とし、
前記X´軸および前記Z´軸を含む平面を前記水晶振動片の主面とする水晶振動片であ
って、
φ=7〜14 (°)、
θ=14±3(°)、
であることを特徴とするガスセンサ。
【請求項8】
請求項6に記載のガスセンサにおいて、
水晶の結晶の電気軸をX軸、機械軸をY軸、光学軸をZ軸として、
前記X軸を前記Z軸の周りに時計方向に角度φ°回転させてX´軸とし、
かつ前記Z軸を前記X´軸の周りに時計方向に角度θ°回転させてZ´軸とし、
前記X´軸および前記Z´軸を含む平面を前記水晶振動片の主面とする水晶振動片であ
って、
φ=0(°)、
θ=28±2(°)、
であることを特徴とするガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−64866(P2007−64866A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253126(P2005−253126)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(505330457)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】