説明

ガスセンサ

【課題】赤外線光源の光量の損失を抑制しつつも小型化を実現すると共に、ガスを速やかに検出可能にするガスセンサを提供することを課題とする。
【解決手段】縦横に配列された複数のフィラメント11を有する赤外線光源2と、赤外線検出器3と、光学フィルタ4と、内外でガスが流通可能な筐体5と、を備え、各フィラメント11には、赤外線を赤外線検出器3の方向へ案内する案内手段12がそれぞれ設けられており、赤外線検出器3の受光面は、フィラメント11が縦横に配列されることで面発光する前記基材の表面から放射される、案内手段12により指向性を有する赤外線を受光し、筐体5は、赤外線光源と赤外線検出器との間の空間を囲む部材8が通気性の部材で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを検出するガスセンサには、様々な原理のものが存在する。例えば、二酸化炭素のガスを検出するガスセンサには、NDIR(Non Dispersive Infrared Gas Analyzer)方式、固体電解質方式、光音響方式などがある。このうち、NDIR方式は、赤外線を照射された分子が吸収するエネルギースペクトルが、分子の化学構造によって異なることを利用した検出方式であり、他の方式に比べて感度が優れる(例えば、特許文献1〜4を参照)。
【0003】
ガスに照射する赤外線の光源としては、フィラメントによるもの(例えば、特許文献5〜7)やレーザによるもの(例えば、特許文献8を参照)がある。このうち、レーザ光源は、一般的に測定波長域が狭く、製品毎の特性のバラつきが大きい。一方、フィラメント光源は、測定波長域が広く、製品毎の特性のバラつきも小さい。
【特許文献1】特開平7−72078号公報
【特許文献2】特開平10−332585号公報
【特許文献3】特開2006−10423号公報
【特許文献4】特開2006−275641号公報
【特許文献5】特開2001−221737号公報
【特許文献6】特開平10−294092号公報
【特許文献7】特開2005−207891号公報
【特許文献8】特開2007−40995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
赤外線光源としてフィラメントを用いる場合、赤外線が放射状に放出される。このため、赤外線センサの方へ光を集める反射板やレンズ、光の拡散を抑える光導管等が用いられる。しかし、赤外線光源の周囲にこのような部材を設けることは、ガスセンサの大型化に繋がる。特に、光導管を用いる場合は、管内のガスを置換する通気口を十分な大きさにすることができないため、ガスが置換されるのに時間が掛かる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、赤外線光源の光量の損失を抑制しつつも小型化を実現すると共に、ガスを速やかに検出可能にするガスセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、指向性の赤外線を面発光する赤外線光源を筐体に収容し、筐体を構成する部材のうち少なくとも赤外線光源と赤外線検出器との間の空間を囲む部材を通気性の部材で構成する。
【0007】
詳細には、特定のガスの有無を検出するガスセンサであって、基材と、該基材の表面に縦横に配列された複数のフィラメントとを有する赤外線光源と、赤外線を受光する受光面を有し、該受光面が前記基材の表面と対峙する赤外線検出器と、前記赤外線検出器の前記受光面を覆う光学フィルタであって、該光学フィルタが透過可能な赤外線の波長が、検出対象とするガスが吸収する赤外線の波長になるように設定される光学フィルタと、前記赤外線光源と前記赤外線検出器と前記光学フィルタとを収容する筐体であって、該筐体の内
外でガスが流通可能な筐体と、を備え、前記各フィラメントには、赤外線を前記赤外線検出器の方向へ案内する案内手段がそれぞれ設けられており、前記赤外線検出器の受光面は、フィラメントが縦横に配列されることで面発光する前記基材の表面から放射される、前記案内手段により指向性を有する赤外線を受光し、前記筐体は、該筐体を構成する部材のうち少なくとも前記赤外線光源と前記赤外線検出器との間の空間を囲む部材が、該筐体の内外でガスを流通可能な通気性の部材で構成される。
【0008】
上記ガスセンサは、任意に定められた特定のガスの有無を検出するものであり、検出対象とするガスの種類は光学フィルタの種類に応じて決定される。すなわち、検出対象とするガスがエネルギーを吸収する波長の赤外線を透過可能とし、その他の波長の赤外線を透過しない光学フィルタを用いることで、特定のガスの検出を可能とする。
【0009】
ここで、上記赤外線光源は、基材の表面に縦横に配列された複数のフィラメントを有し、各フィラメントへの通電による発熱で赤外線を放射する。赤外線光源は、フィラメントがこのように配列されることで面状に発光する。赤外線検出器は、この赤外線光源の発光面と対峙することにより、各フィラメントから放射される赤外線を受光する。各フィラメントには、フィラメントから放射状に放たれる赤外線を赤外線検出器の方向へ案内する案内手段が設けられている。これにより、面発光する赤外線光源から放射された赤外線は赤外線検出器へ向けられることになる。従って、赤外線光源から赤外線検出器まで赤外線を案内する反射板等が不要であるためにセンサ全体が小型化可能であり、赤外線光源と赤外線検出器との間の空間を囲む部材を、ガスを流通可能な通気性の部材で構成することが可能となる。通気性の部材を用いているためにガスが筐体の内外で流通しやすく、センサ周辺のガスを速やかに検出できる。なお、ガスを流通可能な通気性の部材としては、例えば、網目状の部材を挙げることができる。
【0010】
なお、上記ガスセンサは、前記赤外線検出器と前記光学フィルタとを組み合わせた赤外線受光部を複数備えるものであってもよい。赤外線光源が面発光するため、赤外線検出器と光学フィルタを組み合わせた赤外線受光部をこの発光面と平行するように複数設けてもセンサ全体を小型化できる。特に、一点から放射状に放たれる赤外線を使う場合に比べて大幅な小型化が可能である。なお、このように面発光する赤外線光源からの赤外線を複数の赤外線受光部で受光する構成を採用する場合、前記各赤外線受光部は、互いに異なるガスを検出対象とするものであってもよい。これによれば、複数の種類のガスを検出することが可能である。
【0011】
また、前記案内手段は、フィラメントを囲んで該フィラメントからの赤外線を前記赤外線検出器の方向へ案内するリフレクタであってもよい。このように構成される赤外線光源であれば、各フィラメントから放射状に放たれた赤外線が赤外線検出器の方へ反射されるため、赤外線光源から放射される赤外線をガスの検出に有効に使うことができる。
【発明の効果】
【0012】
赤外線光源の光量の損失を抑制しつつも小型化を実現すると共に、ガスを速やかに検出可能にするガスセンサを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の構成図である。ガスセンサ1は、図1に示すように、赤外線光源2、赤外線検出器3、光学フィルタ4、及びこれらを収容する筐体5を備えている。
【0014】
赤外線検出器3は、赤外線光源2から放射される赤外線を検出して電気出力する検出器である。赤外線検出器3は、ケーブル6を介して図示しない電気回路と繋がれており、赤
外線検出器3からの出力に増幅処理等が施される。検出器としては、赤外線を受光した際の素子の温度上昇によって赤外線を検出する熱型のものや、赤外線の光子が入射した際に励起される電子に基づいて赤外線を検出する量子型のものを適用できる。
【0015】
光学フィルタ4は、赤外線光源2から放射される赤外線のうち、検出対象とするガスが吸収する特定の波長の赤外線を選択的に透過可能にする光学フィルタである。従って、光学フィルタ4が透過可能な赤外線の波長は、検出対象とするガスの成分に応じて適宜選定される。例えば、二酸化炭素のガスを検出対象とする場合、二酸化炭素のガスは約4.3μmの波長の赤外線を吸収する性質を有するため、この波長の赤外線を選択的に透過する光学フィルタを選定する。
【0016】
筐体5は、赤外線光源2や赤外線検出器3、光学フィルタ4を収容する。筐体5は、赤外線光源2の表面(後述するフィラメントが縦横に配列されていることにより発光する面)と赤外線検出器の受光面とが対峙するように、これらを筐体5内の内壁に固定している。従って、筐体5内の空間は、赤外線光源2と赤外線検出器3とによって挟まれていることになる。筐体5は、赤外線光源2と赤外線検出器3を固定している部材7が赤外線を遮る部材で構成されており、赤外線光源2と赤外線検出器3との間の空間を囲む部材8が網目状の部材で構成されている。従って、筐体5の周囲に存在するガスは、筐体5の内外を自由に流通する。なお、赤外線光源2と赤外線検出器3との間は、約10mm程度の距離がある。
【0017】
赤外線光源2は、放射する赤外線の波長域が広いフィラメント式の光源である。図2は、赤外線光源2が放射する赤外線の方向を示した図である。赤外線光源2は、指向性の光源であり、図2に示すように赤外線検出器3の方向に赤外線を放射する。図3は、赤外線検出器3の要部を拡大した断面図であり、詳細には図2の符号Aで示す部分を拡大した図である。赤外線光源2は、図3に示すように、シリコン基板9に設けられた堀10の上を跨ぐマイクロブリッジ状のフィラメント11が縦横に多数配列された光源であり、フィラメント11がこのように配列されることで面発光する。各フィラメント11には、赤外線光源2から放射される赤外線を赤外線検出器3の方向へ案内する微小なリフレクタ12がそれぞれ取り付けられている。なお、各フィラメント11は、シリコン基板9をフィラメント11だけ残して堀10が形成されるように異方性エッチング処理することにより形成される。ガスの検出を行う際は、ケーブル6を介して各フィラメント11を通電する。これにより、各フィラメント11が発熱し、赤外線を放つ。各フィラメント11から放射された赤外線は、光学フィルタ4を介して赤外線検出器3に入力される。検出対象のガスが筐体5の中に存在する場合は赤外線検出器3で検出される赤外線のエネルギーが弱くなり、存在しない場合は赤外線検出器3で検出される赤外線のエネルギーが強くなる。
【0018】
上記のように構成されるガスセンサ1は、平面に縦横に配列された多数のフィラメント11が赤外線を放射することにより赤外線光源2が平面的に発光する。このため、赤外線が一点で発光する場合に必要となるレンズや導光管、上記リフレクタ12よりも遥かに大きいリフレクタ等(例えば、図4を参照)が不要である。よって、ガスセンサの小型化することができる。また、赤外線光源2から放射される赤外線が指向性を有し、赤外線検出器3に向けて照射されるため、導光管が不要である。よって、筐体5を網目状の部材等、通気性の部材で構成することが可能である。筐体5を通気性の部材で構成すれば、筐体の一部に通気口を設けた部材で構成する場合に比べて、筐体内のガスを迅速に置換することができるため、ガスを速やかに検出することができる。
【0019】
また、上記実施形態は、次のように変形してもよい。図5は、本変形例に係るガスセンサ21の構成図である。本変形例に係るガスセンサ21は、図4に示すように、筐体5の内部に光学フィルタ4と赤外線検出器3とをそれぞれ二つずつ備えている。光学フィルタ
4と赤外線検出器3とを組み合わせた赤外線受光部22は、他の赤外線受光部22と異なるガスを検出するように構成される。具体的には、各光学フィルタ4が、互いに異なる波長の赤外線を選択的に透過可能となっている。例えば、2つある赤外線受光部22のうち、何れか一方の赤外線受光部22の光学フィルタ4を、二酸化炭素に最も吸収される4.3μmの波長の赤外線を選択的に透過するフィルタとする。また、何れか他方の赤外線受光部22の光学フィルタ4を、一酸化炭素に最も吸収される4.7μmの波長の赤外線を選択的に透過するフィルタとする。2つの赤外線受光部22をそれぞれこのように構成することで、一つの赤外線光源2で2種類のガスを検出可能なガスセンサとすることができる。なお、本変形例に係るガスセンサ1は、2つの赤外線受光部22で構成されるもののみならず、3つ以上の赤外線受光部22で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係るガスセンサの構成図。
【図2】赤外線光源が放射する赤外線の方向を示した図。
【図3】赤外線検出器の要部を拡大した断面図。
【図4】従来例に係るガスセンサの構成図。
【図5】変形例に係るガスセンサの構成図。
【符号の説明】
【0021】
1 21 ガスセンサ
2 赤外線光源
3 赤外線検出器
4 光学フィルタ
5 筐体
6 ケーブル
7 部材
8 部材
9 シリコン基板
10 堀
11 フィラメント
12 リフレクタ
22 赤外線受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定のガスの有無を検出するガスセンサであって、
基材と、該基材の表面に縦横に配列された複数のフィラメントとを有する赤外線光源と、
赤外線を受光する受光面を有し、該受光面が前記基材の表面と対峙する赤外線検出器と、
前記赤外線検出器の前記受光面を覆う光学フィルタであって、該光学フィルタが透過可能な赤外線の波長が、検出対象とするガスが吸収する赤外線の波長になるように設定される光学フィルタと、
前記赤外線光源と前記赤外線検出器と前記光学フィルタとを収容する筐体であって、該筐体の内外でガスが流通可能な筐体と、を備え、
前記各フィラメントには、赤外線を前記赤外線検出器の方向へ案内する案内手段がそれぞれ設けられており、
前記赤外線検出器の受光面は、フィラメントが縦横に配列されることで面発光する前記基材の表面から放射される、前記案内手段により指向性を有する赤外線を受光し、
前記筐体は、該筐体を構成する部材のうち少なくとも前記赤外線光源と前記赤外線検出器との間の空間を囲む部材が、該筐体の内外でガスを流通可能な通気性の部材で構成される、
ガスセンサ。
【請求項2】
前記赤外線検出器と前記光学フィルタとを組み合わせた赤外線受光部を複数備える、
請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記各赤外線受光部は、互いに異なるガスを検出対象とする、
請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記筐体は、前記通気性の部材が網目状の部材で構成されている、
請求項1から3の何れか一項に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記案内手段は、フィラメントを囲んで該フィラメントからの赤外線を前記赤外線検出器の方向へ案内するリフレクタである、
請求項1から4の何れか一項に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−139298(P2010−139298A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314096(P2008−314096)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】