説明

ガスタービンの排気部の構造およびガスタービン

【課題】ガスタービンの効率を低下させることなく、ストラットや軸受まわりを冷却すること。
【解決手段】開口部18から流入した空気を、ストラット14とストラットカバー15との間に形成される第1の空間、および前記第1の空間と軸受部12との間に形成される第2の空間を介して、タービン部4における最終段動翼の下流側において、前記タービン部4とガスパス部7との間に形成された開口部に導き、前記開口部18から流入した空気により、前記軸受部12を直接冷却する冷却流路17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの排気部の構造およびガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンにおける排気車室には、タービンから排出される高温ガスを効率よく圧力回復させるディフューザと、ロータを回転可能に支持する軸受と、軸受をケーシング等に対して支持するストラット等が設けられている。
さらに、ガスタービンの運転中における振動状態を計測するため、軸受の周辺には振動計などの計装品が配置されている。
【0003】
近年においては、ガスタービンの高効率化にともなって排気ガス温度が高くなっていることから、ストラットについては、クリープ強度の観点から、適切な温度に冷却する必要が生じている。一方、計装品についても、耐熱温度の観点から、適切な温度に冷却する必要が生じている。
そのため、運転中のガスタービンにおいて、ストラットや計装品を冷却する様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2675361号公報
【特許文献2】特開2003−239705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2に記載された技術では、ガスタービンのコンプレッサ部から抽気した空気をストラットに供給することにより、ストラットを冷却している。
しかしながら、空気をコンプレッサ部から抽気して冷却に用いるため、空気を抽気した分だけガスタービンの効率が低下するという問題があった。
【0006】
さらに、例えばコンプレッサ部から抽気した空気を径方向外側から内側に向かって流すことによりストラットを冷却する場合には、コンプレッサ部により圧縮され昇温された抽気空気は、更に昇温されて軸受まわりに流れ込むことになる。たとえコンプレッサ部の低圧段から抽気する場合であっても、抽気した空気の温度は、例えば約200℃程度の温度になり、ストラットを冷却した後には、例えば約400℃以上に加熱される場合がある。
一般に、軸受まわりに配置された計装品は高熱に対して耐性が低いため、計装品は、上述の様に例えば約400℃以上に加熱された空気によって損傷する危険があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ガスタービンの効率を低下させることなく、ストラットを冷却でき、かつ軸受周りの温度を低下させることができるガスタービンの排気部およびガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスタービンの排気部の構造は、内側にガスパス部が形成されるケーシングと、該ケーシングに形成された開口部と、タービン部の回転軸を回転可能に支持する軸受部と、前記ケーシングから内側に延び、前記軸受部を支持するストラットと、該ストラットに沿って延び、前記ストラットとの間に第1の空間を形成するストラットカバーと、前記回転軸の回転軸線に沿って延び、前記軸受部との間に空間を形成する内側ディフューザと、前記開口部から流入した空気を、前記第1の空間、および前記第1の空間と前記軸受部との間に形成される第2の空間を介して、前記タービン部における最終段動翼の下流側において、前記タービン部と前記ガスパス部との間に形成された開口部に導き、前記開口部から流入した空気により、前記軸受部を直接冷却する冷却流路と、が設けられている。
【0009】
本発明によれば、ケーシング外部とガスパス部内との間の圧力差により、ケーシング外部の空気であって、ガスパス部を流れる排気ガスよりも低温の空気は、開口部から冷却流路に流入してガスパス部に導かれる。冷却流路を流れる空気は、ストラットに沿って流れる際にストラットの熱を奪い、ストラットを冷却する。
【0010】
タービン部における最終段動翼の下流側は、ガスパス部において最も圧力が低い領域の一つであるため、冷却流路における両開口端の間の圧力差が大きくなる。そのため、冷却流路が他の領域に開口している場合と比較して、より多くの低温空気が冷却流路を流れる。
【0011】
また、本発明によれば、ストラットの周囲に冷却流路が形成されることになり、ストラットと冷却流路を流れる空気との接触面積が広くなる。そのため、冷却流路を流れる空気によるストラットの冷却効果が高くなる。
一方、ストラットとガスパス部との間に冷却流路が形成されるため、ガスパス部を流れる排気ガスの熱がストラットに伝わりにくくなる。
【0012】
上記発明においては、前記ケーシングから延び、前記内側ディフューザを支持するとともに、前記ケーシングの外部と前記内側ディフューザの内部とを連通させるホローストラットと、該ホローストラットにおける前記ケーシングに対する開口面積を調整する蓋部と、が設けられていることが望ましい。
【0013】
本発明によれば、ホローストラットを介して冷却流路に流入するガスパス部を流れる排気ガスよりも低温の空気により軸受周りを冷却することが出来る。また、開口面積を調節する蓋部により空気の流量を制限することができ、ストラットを冷却する空気の流量低下が防止される。
【0014】
本発明のガスタービンは、空気を圧縮するコンプレッサ部と、該コンプレッサ部によって圧縮された空気と燃料とを混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼ガスから回転駆動力を取り出すタービン部と、該タービン部から排気された排気ガスが流入する請求項1または2に記載の排気部と、が設けられている。
【0015】
本発明によれば、上記本発明の排気部を備えることにより、ストラット、軸受部および軸受部の周辺に配置された計装品等は、冷却流路を流れる空気により冷却される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガスタービンの排気部の構造およびガスタービンによれば、ケーシング外部とガスパス部内との間の圧力差により、ケーシング外部の空気をストラットに沿って流すことにより、ストラットを冷却することができ、ガスタービンの効率を低下させることなく、また負荷変動の影響を受けることなくストラットや軸受まわりを冷却することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンの構成を説明する模式図である。
【図2】図1の排気部の構成を説明する部分拡大図である。
【図3】図2の排気部の構成を説明するA−A断面矢視図である。
【図4】図2のシールリング保持部の構成を説明する斜視図である。
【図5】図2の蓋部の構成を説明するB矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態に係るガスタービンについて、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るガスタービンの構成を説明する模式図である。
本実施形態のガスタービン1には、図1に示すように、空気を圧縮するコンプレッサ部2と、圧縮された空気と燃料とを混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器3と、燃焼ガスから回転駆動力を取り出すタービン部4と、タービン部4から排気された排気ガスが流入する排気部5と、が設けられている。
【0019】
コンプレッサ部2は、吸入した空気を圧縮して燃焼器3に供給するものである。
コンプレッサ部2はタービン部4とともに回転軸6に設けられ、タービン部4により回転駆動されるものである。
【0020】
燃焼器3は、コンプレッサ部2から供給された圧縮空気と燃料とを混合させ、混合気を燃焼させるものである。燃焼により発生した高温の燃焼排ガスは、タービン部4に供給される。
【0021】
タービン部4は、燃焼器3から供給された燃焼ガスから回転駆動力を取り出し、コンプレッサ部2や、その他の機器に回転駆動力を供給するものである。タービン部4から排出された排気ガスは、排気部5に流入する。
【0022】
図2は、図1の排気部の構成を説明する部分拡大図である。図3は、図2の排気部の構成を説明するA−A断面矢視図である。
排気部5は、タービン部4から排出された排気ガスが流入するガスパス部7が内部に形成されたものである。
排気部5には、図2および図3に示すように、排気部5の外形を構成するケーシング11と、回転軸6を回転可能に支持する軸受部12と、軸受部12の周囲を覆う内側ディフューザ13と、軸受部12を支持するストラット14と、ストラット14の周囲を覆うストラットカバー15と、内側ディフューザ13を支持するホローストラット16と、が設けられている。
さらに、排気部5には、ケーシング11の外からストラット14を冷却する空気を導く冷却流路17が設けられている。
【0023】
ケーシング11は、内側ディフューザ13との間にガスパス部7を形成するものであって、下流側(図2の右側)に向かってガスパス部7の横断面積が次第に増大するディフューザを形成する。
ケーシング11の内周面におけるタービン部4側には、ストラット14が回転軸6に向かって延びるように配置され、ストラット14の径方向外側の取り付け部には、冷却流路17が円環状に配置されている。ケーシング11には、冷却流路17とケーシング11の外側とを連通させる開口部18が配置されている。
【0024】
本実施形態では、6本のストラット14により軸受部12が支持され、6本のストラット14の間に開口部18が設けられている例に適用して説明するが、ストラット14の本数、および、開口部18が設けられる位置は、特に上述の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
ストラット14の周囲には、ストラット14との間に第1の空間を形成しつつ、ストラット14に沿って径方向に延びるストラットカバー15が配置されている。ストラット14とストラットカバー15との間の第1の空間は冷却流路17の一部を構成し、ケーシング11の内周面に配置された冷却流路17と連通している。
【0026】
軸受部12は、回転軸6を回転可能に支持するものであって、ケーシング11から延びるストラット14により支持されている。軸受部12におけるタービン部4側の端部には、シールリング保持部20が配置されている。
【0027】
図4は、図2のシールリング保持部の構成を説明する斜視図である。
シールリング保持部20は、図2および図4に示すように、リング板状の部材である。
【0028】
シールリング保持部20には、内側ディフューザ13側からタービン部4側に空気が通過する流通孔21が形成されている。流通孔21は、冷却流路17の一部を形成するものである。
なお、本実施形態では、8個の流通孔21がシールリング保持部20に形成されている例に適用して説明するが、流通孔21が形成される個数は、8個に限定されるものではなく、8個よりも多くても少なくてもよく、特に限定するものではない。
【0029】
冷却流路17は、図2および図3に示すように、ケーシング11の開口部18、ケーシング11の内周面、ストラット14とストラットカバー15との間の第1の空間、第1の空間と軸受部12との間の第2の空間、および、流通孔21により構成されている。
さらに、冷却流路17は、タービン部4とガスパス部7との間、言い換えると、タービン部4の最終段動翼の下流側であって、径方向内側の壁面に開口している。
【0030】
ケーシング11の内周面におけるストラット14よりも下流側(図2の右側)には、ホローストラット16が径方向内側に向かって延びるように配置されている。ホローストラット16は筒状に形成された部材であって、径方向外側の端部はケーシング11に接続され、径方向内側の端部は内側ディフューザ13に接続されている。さらに、ホローストラット16の内部の空間は、ケーシング11の外部および内側ディフューザ13の内部空間と連通され冷却流路25を形成している。
【0031】
図5は、図2の蓋部の構成を説明する図である。
ホローストラット16におけるケーシング11側の開口部には、図2および図5に示すように、蓋部22が配置されている。
蓋部22は、ホローストラット16を介して内側ディフューザ13の内部空間に流入する空気の流量を制限するものである。
蓋部22には、ホローストラット16を介して軸受部12と連結された複数の配管23が挿通される貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、配管23よりも大きく形成され、配管23との間に空気が通過する隙間が形成されている。
【0032】
次に、上記の構成からなるガスタービン1における排気部5の冷却について説明する。
ガスタービン1の運転が開始されると、図2に示すように、タービン部4から排気ガスが排気部5のガスパス部7に流入する。タービン部4の最終段動翼の下流側であって、径方向内側の領域では、圧力が大気圧よりも低い圧力となる。
言い換えると、冷却流路17の両端部における圧力に差が生じ、冷却流路17には、ケーシング11の外側からガスパス部7に向かう空気流れが発生する。
【0033】
冷却流路17内を流れる空気流れは、ストラット14とストラットカバー15との間を流れてストラット14から熱を奪い、内側ディフューザ13内に流入する。内側ディフューザ13内に流入した空気は、流通孔21を通過する。流通孔21を通過した空気は、タービン部4とガスパス部7との間に形成された開口部からガスパス部7に流入する。
【0034】
一方、図2および図5に示すように、ホローストラット16の開口部に配置された蓋部22の貫通孔24からも空気がホローストラット16の内部に流入する。当該空気は、ガスパス部7を流れる排気ガスよりも低温の空気である。ホローストラット16に流入した空気は、冷却流路25に流入して軸受周りを冷却した後、上述のストラット14とストラットカバー15との間を通過した空気と合流する。
なお、蓋部22の貫通孔24の隙間から流入する空気の量は、開口部18から流入する空気の量よりも少ない。言い換えると、貫通孔24の隙間の面積は、開口部18の面積よりも狭い。
【0035】
上記の構成によれば、ケーシング11の外部とガスパス部7の内部との間の圧力差により、ケーシング11外部の空気は、開口部18から冷却流路17に流入して軸受周りに導かれる。冷却流路17を流れる空気は、ストラット14に沿って流れる際にストラット14を冷却するため、コンプレッサ部2から圧縮空気を抽気する場合のようにガスタービン1の効率を低下させることなく、ストラット14を冷却することができる。
【0036】
冷却流路17及び冷却流路25をタービン部4における最終段動翼の下流側に開口させることにより、冷却流路17及び冷却流路25における両開口端の間の圧力差が大きくなる。そのため、冷却流路17及び冷却流路25が他の領域に開口している場合と比較して、より多くの空気を、冷却流路17を介してストラット14や軸受周りに供給することができ、より効果的に冷却することができる。
【0037】
ストラット14の周囲に冷却流路17を形成することにより、ストラット14と冷却流路17を流れる空気との接触面積が広くなる。そのため、冷却流路17を流れる空気によるストラット14の冷却効果を高くすることができる。
さらに、ストラット14とガスパス部7との間に冷却流路17が形成されるため、ガスパス部7を流れる排気ガスの熱をストラット14に伝わりにくくすることができる。
【0038】
ホローストラット16を介して冷却流路25に、ガスパス部7を流れる排気ガスよりも低温の空気を流入させることにより、軸受周りを冷却することができる。
さらに蓋部22を設けることにより、ホローストラット16を介して冷却流路25に流入する空気の流量を調整することにより、ストラット14を冷却する空気の流量低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 ガスタービン
2 コンプレッサ部
3 燃焼部
4 タービン部
5 排気部
7 ガスパス部
11 ケーシング
12 軸受部
13 内側ディフューザ
14 ストラット
15 ストラットカバー
16 ホローストラット
17 冷却流路
18 開口部
20 シールリング保持部
21 流通孔
22 蓋部
23 配管
24 貫通孔
25 冷却流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側にガスパス部が形成されるケーシングと、
該ケーシングに形成された開口部と、
タービン部の回転軸を回転可能に支持する軸受部と、
前記ケーシングから内側に延び、前記軸受部を支持するストラットと、
該ストラットに沿って延び、前記ストラットとの間に第1の空間を形成するストラットカバーと、
前記回転軸の回転軸線に沿って延び、前記軸受部との間に空間を形成する内側ディフューザと、
前記開口部から流入した空気を、前記第1の空間、および前記第1の空間と前記軸受部との間に形成される第2の空間を介して、前記タービン部における最終段動翼の下流側において、前記タービン部と前記ガスパス部との間に形成された開口部に導き、前記開口部から流入した空気により、前記軸受部を直接冷却する冷却流路と、が設けられているガスタービンの排気部の構造。
【請求項2】
前記ケーシングから延び、前記内側ディフューザを支持するとともに、前記ケーシングの外部と前記内側ディフューザの内部とを連通させるホローストラットと、
該ホローストラットにおける前記ケーシングに対する開口面積を調整する蓋部と、が設けられている請求項1に記載のガスタービンの排気部の構造。
【請求項3】
空気を圧縮するコンプレッサ部と、
該コンプレッサ部によって圧縮された空気と燃料とを混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼ガスから回転駆動力を取り出すタービン部と、
該タービン部から排気された排気ガスが流入する請求項1または2に記載の排気部と、が設けられているガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233485(P2012−233485A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193102(P2012−193102)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【分割の表示】特願2008−3368(P2008−3368)の分割
【原出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)