説明

ガスタービンエンジンから電力を抽出するための方法および器具

【課題】ガスタービンエンジンの高圧スプールおよび低圧スプールの両方から動力を抽出することにより航空機に動力を供給するための方法および器具を提供する。
【解決手段】ガスタービンが、高圧スプール26と、低圧スプール28と、AC発電機と、低圧スプール28に機械的に結合される入力およびAC発電機に機械的に結合される出力を有するLP駆動アセンブリと、DC発電機と、高圧スプール26に機械的に結合される入力およびDC発電機に機械的に結合される出力を有するHP駆動アセンブリと、を含む。DC電力が高圧スプール26を使用して発生され得、AC電力が低圧スプール28を使用して発生され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼タービンエンジンとしても知られるガスタービンエンジンは、エンジンを通過して多数のタービンブレード上に到達する燃焼ガスの流れからエネルギーを抽出するロータリエンジンである。ガスタービンエンジンは陸上用および航海用の移動手段および発電に使用されてきたが、最も一般的には、飛行機またはヘリコプタなどの航空用途に使用される。飛行機では、ガスタービンエンジンが航空機を推進させるのに使用される。
【0003】
ガスタービンエンジンはまた、通常、例えば推進させること以外の航空機上で必要とされる機能のための装置である、発電機、スタータ/発電機、永久磁石交流発電機(permanent magnet alternator(PMA))、燃料ポンプおよび油圧ポンプなどの、多数の異なる補機に動力を供給する。例えば、現代の航空機は航空電子工学機器およびモータのための電力を必要とする。ガスタービンエンジンに結合される発電機は、エンジンの機械動力を、補機に動力を供給するのに必要となる電気エネルギーに変換する。
【0004】
ガスタービンエンジンは2つ以上のスプールを有することができ、これには、推進系統全体の推力の大部分を提供する低圧(low pressure)スプールと、1つまたは複数の圧縮機を駆動させて後部方向の排気生成物を誘導することにより追加の推力を生成する高圧(high pressure)スプールとが含まれる。トリプルスプールガスタービンエンジン(triple spool gas turbine engine)は、第3の中間圧力(intermediate pressure(IP))スプールを含む。
【0005】
交流の形態の電力(AC電力)を生成するためにAC発電機をガスタービンエンジンのHPスプールに結合することが知られている。HPスプールに加えてLPスプールからもAC電力を抽出する試みも行われている。2010年12月29日に出願された米国特許出願第12/981,044号が、HPスプールから可変周波数AC電力を引き出しさらにLPスプールから一定周波数AC電力を引き出すシステムを開示している。航空機内の補機によって使用されるDC電力を生成するために、ガスタービンエンジンから発生されるAC電力を整流することも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0251726号明細書
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、ガスタービンが、高圧(HP)スプールと、低圧(LP)スプールと、AC発電機と、LPスプールに機械的に結合される入力およびAC発電機に機械的に結合される出力を有するLP駆動アセンブリと、DC発電機と、HPスプールに機械的に結合される入力およびDC発電機に機械的に結合される出力を有するHP駆動アセンブリと、を含む。
【0008】
別の実施形態では、航空機システムに動力を供給するための方法が、ガスタービンエンジンの低圧(LP)スプールからAC電力を抽出することと、ガスタービンエンジンの高圧(HP)スプールからDC電力を抽出することと、AC発電機によって抽出されたAC電力を負荷に供給することと、DC発電機によって抽出されたDC電力を負荷に供給することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による、航空機のためのガスタービンエンジンを示す概略的な断面図である。
【図2】図1のガスタービンエンジンのための電力システムアーキテクチャを示す概略的なブロック図である。
【図3】図2に示される電力システムアーキテクチャのデュアル巻線発電機(dual windings generator)の第1の巻線を示す概略図である。
【図4】図2に示される電力システムアーキテクチャのデュアル巻線発電機の第2の巻線を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で開示される主題は航空機エンジンからの動力抽出に関し、より詳細には、マルチスプールタービンエンジン(multiple spool turbine engine)から電力を生成するのを可能にする電力システムアーキテクチャに関する。しかし、本明細書に開示される主題が、産業用途、商業用途および家庭用途などの、航空機ではない用途の電力システムアーキテクチャに対する一般性を有することも企図される。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による、航空機のためのガスタービンエンジン10の概略的な断面図である。エンジン10は、下流方向のシリアルフローの関係において、ファン14を含むファン区間12と、ブースタまたは低圧(LP)圧縮機16と、高圧(HP)圧縮機18と、燃焼区間20と、HPタービン22と、LPタービン24とを含む。HPシャフトまたはスプール26がHPタービン22をHP圧縮機18に駆動可能に接続し、LPシャフトまたはスプール28がLPタービン24をLP圧縮機16およびファン14に駆動可能に接続する。HPタービン22はタービンブレード32を有するHPタービンロータ30を含み、タービンブレード32はタービンロータ30の周囲部のところに装着される。タービンブレード32はブレードプラットフォーム34から、径方向外側のブレード先端部36まで、径方向外向きに延在する。
【0012】
図2は、図1のガスタービンエンジン10ための電力システムアーキテクチャ40の概略的なブロック図である。システムアーキテクチャ40は本明細書では図1に示されるガスタービンエンジン10によって利用されるものとして説明されるが、システムアーキテクチャ40は別のエンジンにも使用される。本明細書で示されるシステムアーキテクチャ40は、HPスプール26およびLPスプール28の2つのスプールによって提供される機械動力を使用する。しかし、システムアーキテクチャ40は、HPスプールおよびLPスプールに加えて中間圧力(IP)スプールを有する3スプールエンジン(3−spool engine)などの、2つ以上のスプールを有するエンジンにも実装され得る。複数のエンジンを有する航空機の場合、図1に示されるシステムアーキテクチャ40は各エンジンに適用され得る。
【0013】
示される実施形態では、システムアーキテクチャ40は、HPスプール26によって供給される機械動力から直流(DC)電力を生成するように構成される、本明細書ではスタータ−発電機42として示される、DC発電機42、LPスプール28によって供給される機械動力から交流(AC)電力を生成するように構成されるAC発電機(または、交流発電機)44を含む。
【0014】
HPスプール26は、HPスプール26に機械的に結合される入力およびDCスタータ−発電機42に機械的に結合される出力を有するHP駆動アセンブリによりDCスタータ−発電機42に動作可能に結合され得る。HP駆動アセンブリの一実施形態は補機歯車装置46であり、この場合、DCスタータ−発電機42が補機歯車装置46に装着および結合され得る。補機歯車装置46内では、さらに、動力が別のエンジン補機に伝達され得る。DCスタータ−発電機42が、HPスプール26によって供給される機械動力を電力に変換してDC電力出力48を生成する。DCスタータ−発電機42はまた、航空機のエンジンに対して始動機能を提供する。別法として、システムアーキテクチャ40のHP側のDC発電機42は、航空機のエンジンに対して始動機能を提供しない発電機を有することもできる。この場合、航空機のための始動機能を実行するために、補機歯車装置46に接続される別個のスタータモータが設けられてよい。さらに、システムアーキテクチャ40は、適度の冗長性を与えることを目的としてDC電力を生成するためにHPスプール26から機械動力を引き出す複数の発電機を含むことができる。
【0015】
LPスプール28は、LPスプール28に機械的に結合される入力およびAC発電機44に機械的に結合される出力を有するLP駆動アセンブリによりAC発電機44に動作可能に結合され得る。LP駆動アセンブリの一実施形態は定速駆動装置(constant speed drive(CSD))50であり、これは、LPスプール28からの可変速度入力を一定速度に変換する。CSD50はAC発電機44に機械的に結合され得、一定速度でAC発電機44を駆動させる。AC発電機44は、LPスプール28によって供給される機械動力から交流(AC)電力を生成するように構成されてよく、ブラシレスAC発電機であってよい。本明細書に示される実施形態はシステムアーキテクチャ40のLP側の1つのAC発電機44を使用するものとして説明されるが、本発明の別の実施形態は、適度の冗長性を与えることを目的としてAC電力を生成するためにLPスプール28から機械動力を引き出す複数のAC発電機44を使用することができる。さらに、分離したAC発電機44およびCSD50が本明細書で考察されるが、CSD50と発電機44とを共通のユニットとして組み合わせた一体型の駆動用発電機(drive generator)が代わりに使用されてもよい。
【0016】
AC発電機44は、各巻線が異なる出力を形成するように構成されるデュアル巻線52、54を備えるメインスタータを有することができる。第1の巻線52は、モータ制御装置を必要とすることなくモータ負荷を駆動させるための一定周波数AC電力出力56を提供するように構成される。AC発電機44は、一定周波数AC電力出力56の電圧を調節するように構成される発電機制御ユニット58を有する。例えば、一部の一般的な航空電子工学機器は26V、28Vまたは115VのACを使用する。図3は、図2に示されるAC発電機44の第1の巻線52の概略図である。
【0017】
第2の巻線54は、AC発電機44によって生成されるAC電力の一部をDC電力出力60に変換するように構成され得る。図4は、図2に示されるAC発電機44の第2の巻線54の概略図である。第2の巻線54は、所望の電圧でDC電力出力60を生成するために、位相角制御整流器ブリッジ(phase angle controlled rectifier bridge)62に結合され得る。例えば、整流器ブリッジ62は、可能な出力のなかでもとりわけ270VDCを生成するように構成され得る。システムアーキテクチャ40内では種々の別のAC−to−DC電力変換スキームが採用され得る。
【0018】
動作中、ガスタービンエンジン10が始動された状態で、HPT22がHPスプール26を回転させ、LPT24がLPスプールを回転させる。HPスプール26を回転させることにより補機歯車装置46が駆動されてHPスプール26からの機械動力をDCスタータ−発電機42に伝送する。DCスタータ−発電機42が、HPスプール26によって供給される機械動力を電力に変換してDC電力出力48を生成する。LPスプール28を回転させることによりCSD50が駆動されてLPスプール28からの機械動力をAC発電機44に伝送する。AC発電機44がLPスプール28によって供給される機械動力を電力に変換するが、その電力の一部は、第1の巻線52によりAC電力出力56として生成され得、一部は第2の巻線54によりDC電力出力60として生成され得る。AC電力出力56は、AC電力の供給を必要とする1つまたは複数の負荷66にAC電力を供給するように構成される電気バス64に提供され得る。LPスプール28によって駆動されるAC発電機44のDC電力出力60は、組み合わされるDC電力出力68を形成するために、HPスプール26によって駆動されるDCスタータ−発電機42のDC出力48と並列である。次いで、組み合わされたDC電力出力68は、DC電力の供給を必要とする1つまたは複数の負荷72にDC電力を供給するように構成される電気バス70に提供され得る。動力を引き出す負荷のタイプによっては、システムアーキテクチャ40によって抽出されるDC電力および/またはAC電力は、負荷66、72によって使用される前にさらなる処理を受けてもよい。
【0019】
LPスプール28によって生成されるDC電力出力60を、HPスプール26よって生成されるDC電力出力48と並列することにより、HPスプール26およびLPスプール28が航空機のDC負荷72を共有することが可能となる。HPスプール26とLPスプール28との間でDC負荷を共有することは、DCスタータ−発電機42の励起を調節することによりシームレスに達成され得る。例えば、航空機降下モードでは、HPスプール26によって駆動されるDCスタータ−発電機42上の負荷が、LPスプール28によって駆動されるAC発電機44からのDC電力出力60と引き換えに、最小化され得る。このような負荷共有スキームにより、図1のガスタービンエンジン10内での潜在的なストールの問題を回避することができるという効果を得ることができる。さらに、この負荷共有スキームにより、ガスタービンエンジン10の動作効率が向上する。HPスプール26とLPスプール28との間での負荷供給の割合は、発電機42、44の励起を制御することによって決定され得る。
【0020】
本明細書で開示されるシステムアーキテクチャは、航空機にハイブリッド電力システムを提供する。説明されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実施することにより得られる1つの利点は、AC電力およびDC電力の両方がガスタービンエンジン10から抽出され得ることである。また、HPスプール26およびLPスプール28から引き出される動力をシームレスに制御することにより、ガスタービンエンジン10の動作効率が向上する。さらに、負荷に誘導モータが含まれるような事例では、第1の巻線52により一定周波数AC電力出力56が生成されることから、モータ制御装置またはモータ制御電子機器の必要性が排除され得る。
【0021】
説明されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実施することにより得られる別の利点は、ガスタービンエンジン10のLPスプール28さらにはHPスプール26からDC電力を抽出することができることから、システムアーキテクチャ40が、DC電力を発生させることに一定レベルの冗長性を与えることができることである。両方のスプール26、28から動力を引き出すことにより、DC電力の冗長度が向上し、その結果、スプール26、28のうちの一方または発電機42、44のうちの一方が故障した場合でも残りの動作可能なスプール26、28および発電機42、44から依然としてDC電力を抽出することができる。
【0022】
説明されるシステムおよび方法の一部の実施形態を実施することにより得られる別の利点は、HPスプール26とLPスプール28との間でDC負荷を共有することにより、航空機の降下モード中に通常起こるようなエンジンストールの問題を回避することができることである。LPスプールさらにはHPスプールから動力を抽出することが可能であることにより、降下中にストールのリスクなく航空機が低いrpmで進行することが可能となり、それにより航空機の燃料効率が維持される。
【0023】
ここに記載される説明は、最良の形態を含めた本発明を開示するために、さらには、任意のデバイスまたはシステムを製造および使用することならびに採用される任意の方法を実施することを含めて、当業者が本発明を実施するのを可能にするために、複数の例を使用する。特許を受けることができる本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者には思い付く別の例を含むことができる。このような別の例は、特許請求の範囲の文字通りの意味と違わない構造的要素を有する場合には、または、特許請求の範囲の文字通りの意味とほぼ違わない等価の構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあることが意図される。
【符号の説明】
【0024】
10 ガスタービンエンジン
12 ファン区間
14 ファン
16 LPC
18 HPC
20 燃焼区間
22 HPT
24 LPT
26 HPスプール
28 LPスプール
30 HPTロータ
32 ブレード
34 ブレードプラットフォーム
36 ブレード先端部
40 電力システムアーキテクチャ
42 DCスタータ−発電機(または、DC発電機)
44 AC発電機
46 補機歯車装置
48 DC電力出力(HP)
50 定速駆動装置
52 第1の巻線(AC)
54 第2の巻線(DC)
56 AC電力出力(LP)
58 発電機制御ユニット
60 DC電力出力(LP)
62 整流器ブリッジ
64 ACバス
66 AC負荷
70 DCバス
72 DC負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(10)であって、
高圧(HP)スプール(26)と、
低圧(LP)スプール(28)と、
AC発電機(44)と、
前記LPスプール(28)に機械的に結合される入力および前記AC発電機(44)に機械的に結合される出力を有するLP駆動アセンブリ(50)と、
DC発電機(42)と、
前記HPスプール(26)に機械的に結合される入力および前記DC発電機(42)に機械的に結合される出力を有するHP駆動アセンブリ(46)と
を有するガスタービンエンジン(10)。
【請求項2】
前記AC発電機(44)がAC出力(56)のための第1の巻線(52)およびDC出力(60)のための第2の巻線(54)を含む、請求項1記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項3】
前記AC発電機(44)の前記DC出力(60)が前記DC発電機(42)の出力(48)と並列である、請求項2記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項4】
前記第2の巻線(54)が位相制御整流器ブリッジ(62)を有する、請求項2乃至3記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項5】
前記LP駆動アセンブリが一定速度機械駆動装置(50)を有する、請求項1乃至4記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項6】
前記HP駆動アセンブリが補機歯車装置(46)を有する、請求項1乃至5記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項7】
前記DC発電機(42)が、エンジン始動プロセス中に前記HPスプール(26)を回転させるように構成されるスタータ−発電機を有する、請求項1乃至6記載のガスタービンエンジン(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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