説明

ガスタービンエンジンシステムに適用される接触改質機構の動作システム及び方法

【課題】接触改質機構を提供する。
【解決手段】接触改質機構は、燃焼ガス204の流れを接触改質装置へと導くように燃焼ガス源206と流体連通結合され、触媒層213を含む。また、或る量の酸化剤ガスを接触改質装置内に噴射して酸化剤ガス又は燃焼ガスを含む混合気を生成するようにこの接触改質装置に結合され、混合気が触媒層を通して導かれることで改質流が生成される噴射器214と、触媒層の温度を測定するように接触改質装置に結合されたの温度センサと、改質流中の酸化剤ガスのレベルを測定するように接触改質装置に結合された酸化剤ガスセンサ222と、温度センサと酸化剤ガスセンサとに結合され、触媒層温度又は酸化剤ガスレベルに基づいて触媒層の健全性を判定するように構成された制御装置226と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の主題は、概して水素を生成するための炭化水素の改質に関し、特に接触改質機構内の触媒及び改質物の流れの監視に用いるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン等の炭化水素を水素でドープすることにより、概してガスタービンのターンダウン性が向上し、タービンが全負荷未満でより効率的に動力を供給することができる。しかし、水素の貯蔵及び輸送は困難なことが多いので、水素の現場生成、即ちガスタービンの場所における水素の生成が推奨されている。
【0003】
水素生成に用いる周知の一方法には、接触改質機構を用いたメタン等の炭化水素の改質が含まれる。制御されたモル量のメタン等の炭化水素供給流と、制御されたモル量の酸素(O)等の酸化剤流とを、触媒上に導くことで、水素に富んだ改質ガス流を創出する。しかし、触媒が効率的に機能していない場合、一部の酸素が触媒作用を受けないままシステムを通過することがある。このような状態は酸素スリップ(oxygen slip)とよばれ、改質ガス流の早期着火を誘発することがある。概して、接触改質機構は、触媒に対するメタン及び酸化剤の流量を連続的に測定及び制御するハードウェアを備える。更に、1つ以上の噴射ノズルを設けて触媒の上流でメタンと酸化剤とを混合することにより、触媒に対するメタン及び酸化剤のモル比を適正に制御し、酸素スリップを防ぐようになっている。
【0004】
触媒の反応性は時間が経つと低下することがある。周知の改質システムでは、温度センサを用いて、触媒の温度を触媒の作用の有効性の指標として測定する。こうしたシステムにおいて、触媒の温度が所定の閾値を下回る場合、このことが、改質システムが触媒の再生又は交換等のメンテナンスを必要としていることを示す指標となることが多い。こうしたメンテナンスでは、改質システムの運転停止を必要とすることが多い。その他の周知の改質システムでは、例えば触媒の温度が所定の閾値を下回る場合、或いは接触改質機構の性能低下を示す場合に、プラズマアークを用いて触媒機能を補助することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7591242B2号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、接触改質機構の動作方法を提供する。この方法は、或る量の酸化剤ガスと或る量の燃焼ガスとを改質装置内に噴射して、混合気を生成するステップを含む。この混合気が触媒層を通して導かれることで、改質ガス流が生成される。触媒層の温度は、少なくとも1つの温度センサを用いて測定される。改質流中の酸化剤ガスのレベルは、少なくとも1つの酸化剤ガスセンサを用いて測定される。触媒層の健全性は、触媒層の測定温度及び酸化剤ガスレベルの少なくとも一方に基づいて判定される。
【0007】
別の態様において、ガスタービンエンジンシステムに適用される接触改質機構を提供する。この接触改質機構は、燃焼ガス源と流体連通結合された接触改質装置を含み、燃焼ガス流が接触改質装置に導かれる。接触改質装置は触媒層を含む。或る量の酸化剤ガスを接触改質装置内に噴射して酸化剤ガスと燃焼ガスとの少なくとも一方を含む混合気を生成するように、少なくとも1つの噴射器が接触改質装置に結合される。この混合気が触媒層を通して導かれることで、改質流が生成される。触媒層の温度を測定するように少なくとも1つの温度センサが接触改質装置に結合される。改質流中の酸化剤ガスのレベルを測定するように、少なくとも1つの酸化剤ガスセンサが接触改質装置に結合される。制御装置は、温度センサと酸化剤ガスセンサとに結合される。この制御装置は、触媒層温度及び酸化剤ガスレベルの少なくとも一方に基づいて触媒層の健全性を判定するように構成されている。
【0008】
また別の態様において、ガスタービンエンジンシステムを提供する。このガスタービンエンジンシステムは、圧縮機と、この圧縮機と流体連通しており圧縮機が排出する空気の少なくとも一部を受け取る燃焼器と、この燃焼器と流体連通結合された接触改質機構とを含む。接触改質機構は、燃焼ガス源と流体連通結合された接触改質装置を含み、燃焼ガス流がこの接触改質装置に導かれる。接触改質装置は、少なくとも1つの触媒層を含む。或る量の酸化剤ガスを接触改質装置内に噴射して酸化剤ガス及び燃焼ガスの少なくとも一方を含む混合気を生成するように、少なくとも1つの噴射器が接触改質装置に結合される。この混合気が触媒層を通して導かれることで、改質流が生成される。触媒層の温度を測定するように、少なくとも1つの温度センサが接触改質装置に結合される。改質流中の酸化剤ガスのレベルを測定するように、少なくとも1つの酸化剤ガスセンサが接触改質装置に結合される。制御装置が、温度センサと酸化剤ガスセンサに結合される。この制御装置は、触媒層温度と酸化剤ガスレベルとの少なくとも一方に基づいて触媒層の健全性を判定するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例証的なガスタービンエンジンシステムの概略図である。
【図2】図1に示すガスタービンエンジンシステムに適用される例証的な接触改質機構を示すブロック図である。
【図3】図2に示す接触改質機構の例証的な動作方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願は、接触改質機構の故障防止に用いる方法及びシステムを開示する。炭化水素改質機構の触媒層に用いる触媒は、時間の経過に伴って劣化することがある。改質機構が、完全に触媒作用を受けない場合にタービンの性能及び安全動作に悪影響を及ぼし得る酸化剤ガスを使用する場合は、こうした安全ではない悪影響を防ぐ上で、触媒層と改質流とを監視するシステムが有益である。そこで、本出願では、触媒層の温度と、触媒層の下流において改質流中に存在する、触媒作用を受けていない酸化剤ガスのレベルとを監視するシステムを開示する。この温度及び/又は改質流中の酸化剤ガスのレベルに基づいて、安全な是正動作が実施される。
【0011】
図1は、ガスタービンエンジンシステム10の概略図である。この実施例において、ガスタービンエンジンシステム10は、圧縮機12と、燃焼器14と、ロータ軸22により圧縮機12に駆動的に結合されたタービン16と、制御システム又は制御装置18と、接触改質機構28とを含む。燃焼器14は圧縮機12に結合されており、燃焼器14が圧縮機12と流体連通するようになっている。接触改質機構28は、燃焼器14に結合されており、燃料を燃焼器14内に導くように構成される。入口ダクト20は、周囲空気を圧縮機12へと導く。一実施形態において、噴射された水及び/又はその他の加湿剤もまた、入口ダクト20を介して圧縮機12へと導かれる。入口ダクト20は、入口ダクト20を通って圧縮機12の1つ以上の入口ガイドベーン21内へと流れる周囲空気の圧力損失の一因となる複数のダクト、フィルタ、スクリーン及び/又は吸音装置を含むことがある。
【0012】
動作中、入口ダクト20は空気を、吸気を圧縮して圧力と温度を上昇させる圧縮機12へと導く。圧縮機12は、圧縮空気を燃焼器14の方へと排出し、ここで圧縮空気が燃料と混合及び点火され、圧縮機12を駆動させるタービン16へと流れる燃焼ガスが生成される。燃焼器14は、燃焼ガスをタービン16へと導き、そこでガス流の熱エネルギーが機械回転エネルギーに変換される。
【0013】
この実施例においては、ガスタービンエンジンシステム10を用いて、ロータ軸22に結合された発電機等の負荷24を駆動させる。別の実施形態において、発電機24は、ロータ軸22の前方延長部(図示せず)に結合される。
【0014】
ガスタービンエンジンシステム10の動作は、タービン16、発電機24、接触改質機構28及び/又は周囲環境の様々な条件を検出する幾つかのセンサ26により監視される。センサ26として、ガスセンサ、温度センサ、流量センサ、速度センサ、火炎検出センサ、弁位置センサ、ガイドベーン角センサ、及び/又はガスタービンエンジンシステム10の動作に関する様々なパラメータを検出するその他のセンサも含む。本明細書で使用する場合、「パラメータ」という用語は、その値によって所定の位置における温度、圧力、及びガス流量等のガスタービンエンジンシステム10の動作条件が定まり得る物理特性を指す。
【0015】
この実施例において、制御システム18は、ハードウェア及び/又はソフトウェアに実装可能な通信リンク29を介してセンサ26と通信する。一実施形態において、通信リンク29は、本明細書の内容から想到可能な当業者に周知の任意の有線又は無線通信プロトコルに従って、制御システム18との間でデータ信号の遠隔通信を行う。このようなデータ信号には、制御システム18に送信されるセンサ26の動作条件を示す信号と制御システム18からセンサ26に伝達される様々なコマンド信号とが含まれる。
【0016】
制御システム18は、ディスプレイ19と少なくとも1つの処理装置23とを含むコンピュータシステムである。制御システム18は、センサ入力と人間のオペレータからの命令とによって、プログラムを実行してガスタービンエンジンシステム10の動作を制御する。ディスプレイ19には、ユーザ入力選択装置として機能するユーザ入力機能が設けられる。この実施例において、ディスプレイ19は、ディスプレイ19上でのユーザの加圧接触に応答して選択的に機能を実行する。ディスプレイ19として、従来の周知の態様で動作するキーパッドも含まれる。これにより、ユーザは、ディスプレイ19の表面に触れることによって、制御システム18で利用可能な所望の機能を操作できる。
【0017】
本明細書に説明する実施形態において、メモリには、ランダムアクセスメモリ(RAM)等のコンピュータ読取可能媒体と、フラッシュメモリ等のコンピュータ読取可能不揮発性メモリとが含まれるが、これらに限定されるわけではない。代替的に、フレキシブルディスク、コンパクトディスク読取り専用メモリ(CD−ROM)、光磁気ディスク(MOD)、及び/又はディジタル多用途ディスク(DVD)も使用可能である。また、本明細書に記載の実施形態において、入力チャネルには、センサ及び/又はオペレータインターフェースに関連付けられたコンピュータ周辺機器が含まれるが、これらに限定されるわけではない。更に、この実施例において、出力チャネルには、制御装置、オペレータインターフェースモニタ、及び/又はディスプレイが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0018】
本明細書に記載の処理装置は、センサ、アクチュエータ、圧縮機、制御システム、及び/又は監視装置を含むがこれらに限定されない複数の電気装置及び電子装置から送信される情報を処理する。このような処理装置は、例えば制御システム、センサ、監視装置、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)キャビネット、及び/又は分散制御システム(DCS)キャビネット内に物理的に設置される。RAM及び記憶装置は、情報と処理装置により実行される命令とを格納及び伝達する。また、RAM及び記憶装置を用いて、一時変数、静的な(即ち不変の)情報及び命令、又はその他の中間情報を格納すると共に、処理装置による命令実行時にこれを処理装置に供給する。命令シーケンスの実行は、ハードウェア回路とソフトウェア命令との任意の特定の組合せに限定されるわけではない。
【0019】
図2は、ガスタービンエンジンシステム10に用いられる例証的な接触改質機構200を示すブロック図である。この実施例において、接触改質機構200は、燃焼源206からの燃焼ガス204の改質に用いる接触改質装置202の故障の防止が容易になるように構成される。接触改質機構200は、燃焼ガス204を接触改質装置202に導くように燃焼ガス源206と流体連通結合された少なくとも1つの接触改質装置202を含む。燃焼ガス源弁210は、接触改質装置202と燃焼ガス源206との間に配置されており、燃焼ガス204の流れを制御する。改質システムバイパス管路211は、燃焼ガス源206とまた別の改質システム236とに流体連通結合される。バイパス弁212は、また別の改質システム236への燃焼ガス源206の流れを制御するように、改質システムバイパス管路211に結合されると共に、燃焼ガス源206とまた別の改質システム236との間に配置される。酸化剤ガス源218は、酸化剤ガス216を接触改質装置202へと導くように接触改質装置202と流体連通結合される。燃焼ガス流208へと導かれる燃焼ガス204の量は燃焼ガス源弁210により制御され、改質システムバイパス管路211内の燃焼ガス204の量はバイパス弁212により制御される。この実施例において、燃焼ガス204はメタンを含む。別の実施形態において、燃焼ガス204は、接触改質装置202を本明細書に記載のように機能させ得るいかなる適切なガスを含んでもよい。更に、この実施例において、燃焼ガス流208は、弁210を通って接触改質装置202内に流入する。接触改質装置202は、触媒層213と、この触媒層213に配置された触媒物質238とを含む。酸化剤ガス源218からの酸化剤ガス216を接触改質装置202内に噴射するように、少なくとも1つの酸化剤ガス噴射器214が接触改質装置202及び酸化剤ガス源218と流体連通結合されており、これによって、酸化剤ガス216が燃焼ガス流208と混合され、酸化剤ガス216の一部分及び燃焼ガス流208の少なくとも一方を含む混合気215が生成される。接触改質装置202は、混合気215を触媒層213上に導いて、触媒作用により改質ガス217を生成する。この実施例において、酸化剤ガス216の量は、酸化剤ガス源弁219により制御される。このような実施例において、酸化剤ガス216は、実質的に純酸素を含む。別の実施形態において、酸化剤ガス216は、燃焼ガス204と一緒に用いて接触改質装置202内で本明細書に記載のように触媒作用を生じさせ得る、いずれの適切なガスを含んでもよい。更に、この実施例において、酸化剤ガス噴射器214には、触媒層213全体に酸化剤ガス216が実質的に均一に噴射されるように触媒層213全体に実質的に等間隔で配置された、触媒効率を向上させる格子状の噴射器が含まれる。
【0020】
接触改質機構200は更に、触媒層213に配置された、触媒層213の温度を測定する少なくとも1つの温度センサ220を含む。この実施例において、温度センサ220は熱電対である。別の実施形態においては、温度センサ220は、接触改質機構200を本明細書に記載のように機能させ得る任意の適切なセンサであってよい。一実施形態において、接触改質機構200は、触媒層213に配置された単一の温度センサ220のみを含む。この実施例において、接触改質機構200は、触媒層213全体に及ぶ複数の点で温度を測定するように触媒層213にマトリックス状に配置された、複数の温度センサ220を含む。接触改質機構200は更に、触媒層213の下流において改質ガス217中の酸化剤ガス216のレベルを測定する、少なくとも1つの酸化剤ガスセンサ222を含む。一実施形態において、単一の酸化剤ガスセンサ222が改質ガス弁224の上流に配置される。この実施例において、接触改質機構200は、複数の異なる位置で改質ガス217中の酸化剤ガス216のレベルを測定するように触媒層213の出口平面225全体にわたる複数の異なる位置に配置された、複数の酸化剤ガスセンサ222を含む。
【0021】
更に、この実施例において、接触改質機構200は制御装置226を含み、この制御装置は、処理装置228と、メモリ領域230と、温度センサ220及び酸化剤ガスセンサ222に結合されたセンサ通信インターフェース232と、弁制御装置234を含む。この弁制御装置は、弁210を介した燃焼ガス204の流れと、弁212を介して改質システムバイパス管路211へと至る燃焼ガス204の流れと、弁219を介した酸化剤ガス216の流れと、弁224を介した改質ガス217の流れとを制御するように、弁210、212、219及び224に通信可能に結合されている。この実施例において、制御装置226は、触媒層213内の温度センサ220により測定された温度を示す温度センサ220からの信号を受け取ると共に、触媒作用後の触媒層213の下流における改質ガス217の流れの酸化剤ガス216のレベルを示す酸化剤ガスセンサ222からの信号を受け取る。更に、この実施例において、制御装置226は、温度センサ220から得られる測定温度及び/又は酸化剤ガスセンサ222から得られる酸化剤ガス216の測定レベルに基づいて、触媒層213の健全性を判定する。この実施例において、温度センサ220による測定温度が所定の安全閾値を下回る場合及び/又は酸化剤ガスセンサ222による酸化剤ガス216の測定レベルが所定の安全閾値を上回る場合、触媒層213の健全性が悪影響を受けると判定される。この実施例において、触媒層213の健全性判定と同時に、制御装置226は、この健全性判定に基づいて接触改質機構200の安全対策オプションを決定する。
【0022】
この実施例において、安全対策オプションは、燃焼ガス204及び/又は酸化剤ガス216の方向を、また別の接触改質機構及び/又はまた別の触媒層へと変えることを含むが、これを含むことのみに限定されるわけではない。別の実施形態において、安全対策オプションは、更に、バイパス管路211を用いて接触改質機構200の接触改質装置202をバイパスさせることにより、ガスタービンエンジンシステム10を、改質ガス217を用いることなく、なお且つ、ガスタービンエンジンシステム10にとって不安全な可能性がある酸化剤ガス216のレベルにおいて改質ガス217に起因する悪影響の可能性を全く伴うことなく、燃焼ガス204を用いて動作させることも含む。その他の実施形態において、安全対策オプションは、触媒層213の温度と改質ガス217中の酸化剤ガス216のレベルとを改善できるように、触媒層213の触媒物質238を交換、調節及び/又は更新することも含む。更にまた別の実施形態において、安全対策オプションは、量の増減によって酸化剤ガス216の噴射量を調節すること及び/又は燃焼ガス204の量を調節することにより、触媒層213の温度と改質ガス217中の酸化剤ガス216のレベルとを改善させることを含む。更に、また別の実施形態において、安全対策オプションは、触媒層213の測定温度、触媒層213の下流における酸化剤ガス216の測定されたレベル、及び/又は触媒層213の健全性判定に基づいて、触媒層213の様々な位置における酸化剤ガス216の噴射量及び/又は燃焼ガス204の量を調節することを含む。様々な位置における酸化剤ガス216の噴射量を、こうした様々な位置における酸化剤ガス216の温度とレベルとに基づいて調節することにより、接触改質機構200では、こうした様々な位置における健全性に基づいてその位置での触媒プロセス出力を増減させることができるようになり、触媒層213の耐用寿命と、安全対策オプション判定をトリガすることなく触媒層213が作用し得る期間を延長できる。
【0023】
図3は、接触改質装置202の故障を防ぐ上で用いられる、接触改質機構200の例証的な動作方法300の流れ図である。この実施例において、方法300は、或る量の酸化剤ガス216を燃焼ガス流208中に噴射して混合気215を生成するステップ302と、この混合気215を触媒層213に通して行き渡らせ、燃焼ガス流208と酸化剤ガス216との間の反応を促進することにより改質ガス217を生成するステップ304とを含む。また、この実施例において、方法300は、触媒層213内に配置される少なくとも1つの温度センサ220を用いて触媒層213の温度を測定するステップ306と、触媒層213の下流において改質ガス217中の酸化剤ガス216のレベルを測定するステップ308とを含む。更に、この実施例において、方法300は、触媒層213の測定温度及び/又は触媒層213の下流における改質ガス217中の酸化剤ガス216の測定されたレベルに基づいて、触媒層213の健全性を判定するステップ310を含む。加えて、ステップ312において、接触改質装置202の安全対策オプションを、触媒層213の健全性判定に基づいて決定する。
【0024】
この実施例において、方法300は更に、触媒層213に配置された複数の温度センサ220を用いて触媒層213の温度を測定するステップ306と、触媒層213の下流において触媒層213に対して複数の異なる位置で改質ガス217中の酸化剤ガス216のレベルを測定するステップ308とを含む。代替実施形態では、ステップ308において、触媒層213の温度と酸化剤ガス216のレベルをそれぞれ、単一のセンサを用いて測定する。更に、この実施例では、接触改質機構200が触媒層213の測定温度は所定の安全閾値を下回ると判定した場合及び/又は測定された酸化剤ガス216のレベルは所定の安全閾値を上回ると判定した場合、ステップ310において、触媒層213の健全性が悪影響を受けると判定する。代替実施形態においては、酸化剤ガス216の噴射量及び燃焼ガス204の量の少なくとも一方を、ステップ306において測定された酸化剤ガス216の温度及び/又はステップ308において測定された酸化剤ガス216のレベル、及び/又は健全性判定310に従って、触媒層213の様々な位置で調節する。
【0025】
上述のシステム及び方法により、接触改質装置の故障を防止するように接触改質機構を動作させることができる。このように、本明細書に記載の実施形態により、接触改質装置の監視が容易になると共に、安全な是正動作を実行して酸化剤ガススリップ(oxidizer gas slip)と改質ガス流の早期着火を防ぐことができる。具体的には、接触改質機構により、触媒層の温度と、改質流中に存在する、触媒作用を受けない酸化剤ガスのレベルとの監視が容易になると共に、様々な測定に基づいて安全な是正動作を実施することによって、触媒作用を完全には受けていない酸化剤ガスに起因する問題を減少させること及び/又は防止することができる。このように、ガスタービンエンジンシステムのメンテナンスコストの削減が促進される。
【0026】
ガスタービンエンジンシステムに適用される接触改質機構の動作システム及び方法の実施例を上記に詳細に説明した。これらのシステム及び方法は、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されるわけではなく、むしろ、システムの構成要素及び/又は方法のステップを本明細書に記載のその他の構成要素及び/又はステップとは別個独立に用いることができる。例えば、これらのシステム及び方法を、その他の燃焼システム及び方法と組み合わせて用いてもよく、本明細書に記載のガスタービンエンジンシステムに関連した実施のみに限定されるわけではない。むしろ、これらの実施例をその他多くの燃焼システム用途に関連させて実施及び使用することができる。
【0027】
本発明の様々な実施形態の特定の特徴が、図面によっては記載されていることも記載されていないこともあるが、これはあくまでも便宜上の理由による。本発明の原理に従って、或る図面上の任意の特徴を、その他の図面のいずれの特徴と組み合わせて参照すること及び/又はクレームすることもできる。
【0028】
本明細書では、最適な態様を含めた例を用いて本発明を開示しているが、これによって、当業者は、あらゆる装置又はシステムの作製及び付随の方法の実施も含め、本発明を実施することができる。本発明の特許請求の範囲は、請求項に記載されており、当業者に想到可能なその他の例も包含する。こうしたその他の例も、請求項の文言と相違ない構成要素を含む場合、又は請求項の文言と殆ど変わらない等価の構成要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0029】
10 ガスタービンエンジンシステム
12 圧縮機
14 燃焼器
16 タービン
18 制御システム
19 ディスプレイ
20 入口ダクト
21 入口ガイドベーン
22 ロータ軸
23 処理装置
24 発電機
26 センサ
28 接触改質機構
29 通信リンク
200 接触改質機構
202 接触改質装置
204 燃焼ガス
206 燃焼ガス源
208 燃焼ガス流
210 燃焼ガス源弁
211 改質システムバイパス管路
212 バイパス弁
213 触媒層
214 酸化剤ガス噴射器
215 混合気
216 酸化剤ガス
217 改質ガス
218 酸化剤ガス源
219 酸化剤ガス源弁
220 センサ
222 酸化剤ガスセンサ
224 改質ガス弁
225 出口平面
226 制御装置
228 処理装置
230 メモリ領域
232 センサ通信インターフェース
234 弁制御装置
236 別の改質システム
238 触媒物質
300 方法
302 酸化剤ガスを燃焼ガス流中に噴射する
304 ガス流を触媒層全体に導く
306 触媒層の温度を測定する
308 改質流中の酸化剤ガスのレベルを測定する
310 触媒層の健全性を判定する
312 安全対策オプションを決定する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジンシステム(10)に適用される接触改質機構(28、200)であって、
燃焼ガス(204)の流れを自身へと導くように燃焼ガス源(206)と流体連通結合された接触改質装置(202)であって、触媒層(213)を含む接触改質装置(202)と、
或る量の酸化剤ガスを前記接触改質装置内に噴射して前記酸化剤ガス及び前記燃焼ガスの少なくとも一方を含む混合気を生成するように前記接触改質装置に結合された少なくとも1つの噴射器(214)であって、前記混合気が前記触媒層を通して導かれることで改質流が生成される、少なくとも1つの噴射器(214)と、
前記触媒層の温度を測定するように前記接触改質装置に結合された少なくとも1つの温度センサ(26)と、
前記改質流中の前記酸化剤ガスのレベルを測定するように前記接触改質装置に結合された少なくとも1つの酸化剤ガスセンサ(222)と、
前記温度センサと前記酸化剤ガスセンサとに結合された制御装置(226)であって、触媒層温度及び酸化剤ガスレベルの少なくとも一方に基づいて前記触媒層の健全性を判定するように構成された制御装置(226)と、を含む接触改質機構(28、200)。
【請求項2】
前記制御装置(226)は、更に、前記触媒層(213)の前記健全性判定に基づいて前記接触改質機構の安全対策オプションを決定するように構成される、請求項1に記載の接触改質機構(28、200)。
【請求項3】
前記触媒層(213)に配置された複数の温度センサ(26)を更に含む、請求項1に記載の接触改質機構(28、200)。
【請求項4】
前記制御装置(226)は、更に、前記触媒層の温度が所定の安全閾値を下回るという判定及び前記酸化剤ガス(216)の測定された前記レベルが所定の安全閾値を上回るという判定の少なくとも一方に基づいて、前記触媒層(213)の前記健全性を判定するように構成される、請求項1に記載の接触改質機構(28、300)。
【請求項5】
前記制御装置(226)は、更に、前記健全性判定に基づいて、前記燃焼ガス(204)及び前記酸化剤ガス(216)の少なくとも一方の向きを、別の接触改質機構及び別の触媒層(213)の少なくとも一方へと変えるように構成される、請求項4に記載の接触改質機構(28、200)。
【請求項6】
前記制御装置(226)は、更に、前記健全性判定に基づいて、前記接触改質機構がバイパスされるように構成される、請求項4に記載の接触改質機構(28、200)。
【請求項7】
前記制御装置(226)は、更に、前記健全性判定に基づいて、前記酸化剤ガスの噴射量の調節及び前記燃焼ガスの量の調節の少なくとも一方が実行されるように構成される、請求項4に記載の接触改質機構(28、200)。
【請求項8】
前記制御装置(226)は、更に、前記触媒層温度、前記酸化剤ガスレベル、及び前記健全性判定の少なくとも1つに基づいて、噴射される前記酸化剤ガス(216)及び前記燃焼ガス(204)の少なくとも一方の量を、前記触媒層(213)に対して異なる位置において調節するように構成される、請求項7に記載の接触改質機構(28、200)。
【請求項9】
圧縮機(12)と、
前記圧縮機から排出される空気の少なくとも一部を受け取るように前記圧縮機と流体連通している燃焼器(14)と、
前記燃焼器と流体連通結合された接触改質機構(28、200)であって、
燃焼ガスの流れを自身へと導くように燃焼ガス源(206)に流体連通結合された接触改質装置(202)であって、少なくとも1つの触媒層(213)を含む接触改質装置(202)と、
或る量の酸化剤ガス(216)を前記接触改質装置内に噴射して前記酸化剤ガス及び前記燃焼ガス(204)の少なくとも一方を含む混合気を生成するように、前記接触改質装置に結合された少なくとも1つの噴射器(214)であって、前記混合気が前記触媒層を通して導かれることで改質流が生成される、少なくとも1つの噴射器(214)と、
前記触媒層の温度を測定するように前記接触改質装置に結合された少なくとも1つの温度センサ(26)と、
前記改質流中の前記酸化剤ガスのレベルを測定するように前記接触改質装置に結合された少なくとも1つの酸化剤ガスセンサ(222)と、
前記温度センサと前記酸化剤ガスセンサとに結合された制御装置(226)であって、触媒層温度及び酸化剤ガスレベルの少なくとも一方に基づいて前記触媒層の健全性を判定するように構成された制御装置(226)とを含む、接触改質機構(28、200)と、
を含むガスタービンエンジンシステム(10)。
【請求項10】
前記制御装置(226)は、更に、前記触媒層(213)の前記健全性判定に基づいて前記接触改質機構(28、200)の安全対策オプションを決定するように構成される、請求項9に記載のガスタービンエンジンシステム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−168479(P2011−168479A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26621(P2011−26621)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】