説明

ガスタービンロータブレードを冷却する方法及び装置

【課題】ガスタービンロータブレードを冷却する方法及び装置を提供すること。
【解決手段】前縁(48)及び後縁(50)にて共に結合されて、これらの間にキャビティ(56)が形成されるようになる、第1の側壁(44)及び第2の側壁(46)を含む、ガスタービンエンジン(10)用の翼形部(42)が提供される。中央プレナム(58)及びインピンジメントチャンバ(60)がキャビティ内に形成される。中央プレナムは、冷却流体をインピンジメントチャンバに送り、ここで冷却流体が側壁に衝突する。冷却流体は、フィルム冷却孔(80)を介してインピンジメントチャンバから排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、ガスタービンエンジンに関し、より詳細には、ガスタービンエンジンロータ組立体を冷却するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タービンロータ組立体は通常、円周方向に間隔を置いて配置されたロータブレードの少なくとも1つの列を含む。各ロータブレードは、前縁及び後縁にて共に接続された正圧側面及び負圧側面を有する翼形部を含む。各翼形部は、ロータブレードプラットフォームから半径方向外向きに延びる。各ロータブレードはまた、ダブテールを含み、該ダブテールは、プラットフォームとダブテールとの間に延びるシャンクから半径方向内向きに延びる。ダブテールは、ロータ組立体内のロータブレードをロータディスク又はスプールに取り付けるのに用いられる。公知のブレードは、翼形部、プラットフォーム、シャンク、及びダブテールによって少なくとも部分的に冷却キャビティが形成されるように中空である。
【0003】
高温の燃焼ガスに曝されることによる翼形部への損傷を阻止できるようにするために、公知の翼形部は、翼形部を通る冷却流体を運ぶ内部冷却回路を含む。少なくとも一部の公知の高圧タービンブレードは、冷却ガスの経路がブレード先端まで半径方向外向きに配向され、ここで流れが反転して、ブレード根元に向けて半径方向内向きに戻るように蛇行した内部冷却キャビティを含む。流れは、ロータを通って流出することができ、又は、後縁の孔に配向されて、後縁の表面全体にわたってガスが流れ、後縁を冷却できるようにする。具体的には、少なくとも一部の公知のロータブレードは、圧縮機ブリード空気を側壁間に形成されたキャビティ内に送り、側壁を対流冷却する。インピンジメント冷却を用いて追加冷却を達成することができ、ここではインピンジメントインサートが、インピンジメントジェットアレイにより冷却流体を翼形部の後縁の内側表面に送り、後縁に沿った翼形部の冷却を可能にする。しかしながら、製造上の制約によって制限されるこれらの回路は、翼形部の壁から熱を除去するのには効果的ではないキャビティの中心を通して冷却流体を送るので、効率的ではない。
【発明の概要】
【0004】
1つの実施形態において、ガスタービンエンジン用の翼形部が提供される。翼形部は、前縁及び後縁にて共に結合されてこれらの間にキャビティが形成されるようになる第1の側壁及び第2の側壁を含む。中央プレナムは、キャビティ内に形成され、中央プレナム壁を有する。インピンジメントチャンバは、キャビティ内に形成され、中央プレナムを実質的に囲む。中央プレナムは、インピンジメントチャンバと流体連通している。
【0005】
別の実施形態において、圧縮機、燃焼器、及び圧縮機に結合されたタービンを備えるガスタービンエンジン組立体が提供される。タービンは、前縁及び後縁にて共に結合されて、これらの間にキャビティが形成されるようになる、第1の側壁及び第2の側壁を含む。中央プレナムは、キャビティ内に形成され、中央プレナム壁を有する。インピンジメントチャンバは、キャビティ内に形成され、中央プレナムを実質的に囲む。中央プレナムは、インピンジメントチャンバと流体連通している。
【0006】
更に別の実施形態において、ガスタービンエンジン用のロータブレードを製造する方法が提供され、ここでロータブレードは、前縁及び後縁にて共に結合されて、これらの間にキャビティが形成されるようになる、第1の側壁及び第2の側壁を有する翼形部を含む。本方法は、中央プレナム壁を有する中央プレナムをキャビティ内に形成する段階と、中央プレナムを実質的に囲み且つ中央プレナムと流体連通したインピンジメントチャンバを形成する段階と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】例示的なガスタービンエンジンの概略図。
【図2】図1に示すガスタービンエンジンと共に用いることができる例示的なロータブレードの斜視図。
【図3】線1に沿って切り取られたロータブレードの一部の斜視図。
【図4】線1に沿って切り取られたロータブレードの一部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、ファン組立体12、高圧圧縮機14、及び燃焼器16を含むガスタービンエンジン10の概略図である。エンジン10はまた、高圧タービン18、低圧タービン20、及びブースター22を含む。ファン組立体12は、ロータディスク26から半径方向外向きに延びるファンブレード24のアレイを含む。エンジン10は、吸気側28と排気側30とを有する。1つの実施形態において、エンジン10は、オハイオ州シンシナティ所在のGeneral Electric Aircraft Enginesから商業的に入手可能なCT7エンジンである。
【0009】
作動時には、ファン組立体12を通って空気が流れ、加圧された空気が高圧圧縮機14に供給される。高圧空気は燃焼器16に送給される。燃焼器16からの空気流(図1には図示せず)は、タービン18及び20を駆動し、該タービン20はファン組立体12を駆動する。
【0010】
図2は、ガスタービンエンジン10と共に使用できるロータブレード40の斜視図である。図3は、線1に沿って切り取られたロータブレード40の一部の斜視図である。図4は、線1から見たロータブレード40の断面図である。1つの実施形態において、複数のロータブレード40がガスタービンエンジン10の高圧タービンロータブレード段(図示せず)を形成する。各ロータブレード40は、中空翼形部42と、翼形部42を公知の方法でロータディスク(図示せず)に取り付けるのに使用される一体形ダブテール43とを含む。
【0011】
翼形部42は、第1の側壁44及び第2の側壁46を含む。第1の側壁44は、凸面状であり、翼形部42の負圧側面を定め、第2の側壁46は、凹面状であり、翼形部42の正圧側面を定める。側壁44及び46は、前縁48において、及び前縁48から下流側にある翼形部42の軸方向に離間した後縁50において共に接続される。翼形部42は、翼形部先端54とブレード根元52との間で側壁44及び46に沿って半径方向に間隔を置いて配置された複数のフィルム孔51を含み、冷却流体を翼形部42から排出し、翼形部42の外側表面53の冷却を促進するようにする。フィルム孔51は、第1の側壁44又は第2の側壁46の何れかの上にあり、本明細書で記載されるように翼形部42が機能することができるあらゆる数又は位置のものとすることができる。翼形部42はまた、後縁50に沿って翼形部先端54とブレード根元52との間に半径方向に間隔を置いて配置される複数の後縁スロット55を含み、冷却流体を翼形部42から排出し、翼形部後縁50の冷却を促進するようにする。フィルム冷却51及び後縁スロット55により強化される熱伝達により、翼形部外側表面53に沿った冷却が促進される。
【0012】
第1の側壁44及び第2の側壁46はそれぞれ、ダブテール43に隣接して位置付けられるブレード根元52から、内部キャビティ56の半径方向外側境界を定める翼形部先端54に半径方向に延びる。キャビティ56は、翼形部42内の側壁44及び46間に定められる。例示的な実施形態において、キャビティ56は、中央プレナム58と、インピンジメントチャンバ60とに分割される。
【0013】
中央プレナム58は、内側表面62及び外側表面64を有し、中央プレナム壁66を共に定める。中央プレナム58は、ブレード根元52から翼形部先端54まで半径方向に延びて、エンジン10内に位置する冷却流体源(図示せず)と流れ連通する。或いは、中央プレナムは、翼形部42の一部に沿ってブレード根元52から翼形部先端54まで半径方向に延びることができる。
【0014】
1つ又はそれ以上のストラット68が、中央プレナム壁66からインピンジメントチャンバ60を通って第1及び第2の側壁44及び46に延びる。ストラット68は、中央プレナム壁66を支持し、インピンジメントチャンバ60が中央プレナム58を実質的に囲むことができるようにする。例示的な実施形態において、ストラットの1つの列70は、中央プレナム壁66を第1の側壁44に結合し、ストラットの第2の列72は、中央プレナム壁66を第2の側壁46に結合する。或いは、列状に配列されるかどうかに関係なく、あらゆる数のストラット68が中央プレナム壁66を第1及び第2の側壁44及び46に結合することができる。
【0015】
例示的な実施形態において、ストラットの第1及び第2の列70及び72は各々、少なくとも1つのストラット68を含む。列70及び72の各ストラット68は、隣接するストラット68と実質的に整列され、列70及び72各々がブレード根元52から翼形部先端54まで直線又は実質的に直線状に延びるようになる。或いは、各ストラット68は、翼形部42が本明細書で記載される機能を果たすことを可能にするあらゆる向き、配列、間隔、サイズ、長さ、及び/又は幾何形状を有することができる。
【0016】
少なくとも1つの孔80、又はインピンジメントジェットが内側表面62から外側表面64に延びる。孔80は、中央プレナム58をインピンジメントチャンバ60に流体結合し、第1の側壁44及び第2の側壁46の冷却を促進する。例示的な実施形態において、図3及び4に示すように、中央プレナム壁66内に孔80の6つの列が形成される。孔80の各列は、ブレード根元52から翼形部先端54まで直線又は実質的に直線状に延びる。各列は、少なくとも1つの孔80を有する。或いは、中央プレナム壁66は、あらゆる数の孔80又は孔80の列を有することができ、各孔80又は孔80の列は、翼形部42が本明細書で記載される機能を果たすことを可能にするあらゆる向き、配列、間隔、サイズ、長さ、及び/又は幾何形状を有することができる。
【0017】
フィルム冷却孔51が側壁44及び46内に形成され、これらはインピンジメントチャンバ60に結合されて、インピンジメントチャンバ60内の冷却流体を翼形部42から排出できるようにする。インピンジメントチャンバ60はまた、インピンジメントチャンバ60及び翼形部42からの冷却流体の排出を促進する1つ又はそれ以上のチャネル(図示せず)を介して後縁スロット55に結合することができる。
【0018】
作動中、冷却流体源からの冷却流体(通常は空気)は、中央プレナム58に送られる。冷却流体は、ブレード根元52から中央プレナム58を通って翼形部先端54まで流れ、孔80を介してインピンジメントチャンバ60に直接衝突する。より具体的には、冷却流体は、第1の側壁44及び第2の側壁46に衝突され、これにより第1の側壁44及び第2の側壁46を冷却する。冷却流体は、フィルム冷却孔51及び後縁スロット55を介してインピンジメントチャンバ60及び翼形部42から排出される。
【0019】
上述のロータブレードは、コスト効果があり、高い信頼性がある。ロータブレードは、中央プレナム及びインピンジメントチャンバを有する翼形部を含む。インピンジメント冷却及び壁近傍冷却など、翼形部の外部側壁を冷却するための幾つかの冷却技術が利用される。中央プレナム及びインピンジメントチャンバの構成により、公知の翼形部よりもより均一な翼形部の外部側壁の冷却を可能にする冷却流体の流れが改善される。このような構成は、製造技術の進歩により可能となる。例えば、本明細書で記載されるロータブレードは、インベストメント鋳造により製造され、単結晶の一方向に凝固した又は等軸のブレードをもたらすことができる。本明細書で記載される実施形態は、冷却効率及びスチフネス並びに重量特性の改善をもたらす。結果として、ロータブレード内の動作温度がより低温になり、コスト効果があり且つ信頼性のある方法でロータブレードの有効寿命を延ばすことが可能となる。
【0020】
種々の特定の実施形態について本発明を説明してきたが、請求項の技術的思想及び範囲内にある修正により本発明を実施することができる点は、当業者であれば理解されるであろう。
【符号の説明】
【0021】
10 ガスタービンエンジン
12 ファン組立体
14 高圧圧縮機
16 燃焼器
18 高圧タービン
20 低圧タービン
22 ブースター
24 ファンブレード
26 ロータディスク
28 吸気側
30 排気側
40 ロータブレード
42 翼形部
43 ダブテール
44 第1の側壁
46 第2の側壁
48 前縁
50 後縁
51 フィルム孔
52 ブレード根元
53 外側表面
54 翼形部先端
55 後縁スロット
56 キャビティ
58 中央プレナム
60 インピンジメントチャンバ
62 内側表面
64 外側表面
66 中央プレナム壁
68 ストラット
70 ストラットの第1の列
72 ストラットの第2の列
80 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(10)用の翼形部(42)であって、
前縁(48)及び後縁(50)にて共に結合されて、これらの間にキャビティ(56)が形成されるようになる、第1の側壁(44)及び第2の側壁(46)と、
前記キャビティ内に形成され、中央プレナム壁(66)を有する中央プレナム(58)と、
前記キャビティ内に形成され、前記中央プレナムを実質的に囲み且つ該中央プレナムが流体連通したインピンジメントチャンバ(60)と、
を備える翼形部(42)。
【請求項2】
前記中央プレナム壁(66)と前記第1の側壁(44)及び前記第2の側壁(46)の一方とに結合された少なくとも1つのストラット(68)を更に備える、請求項1に記載の翼形部(42)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのストラット(68)が、ストラットの少なくとも1つの列(70)に配列される、請求項2に記載の翼形部(42)。
【請求項4】
前記中央プレナム壁(66)が、半径方向に延びるインピンジメントジェット(80)の少なくとも1つの列を含む、請求項1に記載の翼形部(42)。
【請求項5】
前記インピンジメントジェット(80)の少なくとも1つの列が、前記中央プレナム壁(66)の内側表面(62)から前記中央プレナム壁の外側表面(64)まで延びる少なくとも1つの孔を含む、請求項4に記載の翼形部(42)。
【請求項6】
前記インピンジメントチャンバ(60)が、半径方向に延びるフィルム冷却孔(51)の少なくとも1つの列に結合される、請求項1に記載の翼形部(42)。
【請求項7】
前記中央プレナム(58)に結合された冷却流体源を更に備える、請求項1に記載の翼形部(42)。
【請求項8】
ガスタービンエンジン(10)組立体であって、
圧縮機(14)と、
燃焼器(16)と、
前記圧縮機に結合され且つ翼形部(42)を含むタービン(18)と、
を備え、
前記翼形部が、
前縁(48)及び後縁(50)にて共に結合されて、これらの間にキャビティ(56)が形成されるようになる、第1の側壁(44)及び第2の側壁(46)と、
前記キャビティ内に形成され、中央プレナム壁(66)を有する中央プレナム(58)と、
前記キャビティ内に形成され、前記中央プレナムを実質的に囲み且つ該中央プレナムが流体連通したインピンジメントチャンバ(60)と、
を含む、ガスタービンエンジン(10)。
【請求項9】
前記中央プレナム壁(66)と前記第1の側壁(44)及び前記第2の側壁(46)の一方とに結合された少なくとも1つのストラット(68)を更に備える、請求項8に記載のガスタービンエンジン(10)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのストラット(68)が、ストラットの少なくとも1つの列(70)に配列される、請求項9に記載のガスタービンエンジン(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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