説明

ガスタービン機関を高い動的プロセス値に対して保護する方法及び前記方法を行うためのガスタービン機関

【課題】高い動的プロセス値に対してガスタービンを保護する方法を提供する。
【解決手段】圧縮機11と、燃焼器13と、タービン12とを有するガスタービン機関10を、特に燃焼器/火炎脈動における高い動的プロセス値に対して保護する方法において、h)適切なセンサ18によって燃焼器13の脈動を測定するステップと、i)測定された脈動信号の周波数スペクトルを所定の帯域区分に分割するステップと、j)それぞれの帯域について信号のRMS(二乗平均平方根)を計算するステップと、k)計算された周波数/周波数帯域のRMSを所定の重み付け係数で重み付けするステップと、l)重み付けされた周波数/周波数帯域のRMS値を累積して脈動限界基準(PLC)値を得るステップと、m)PLC値を少なくとも1つの基準値23と比較するステップと、n)前記比較の結果に従ってガスタービン機関10を運転するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン機関に関する。本発明は、圧縮機と、燃焼器と、タービンとを有するガスタービン機関を高い動的プロセス値に対して保護する方法に関する。本発明はさらに、前記方法を行うためのガスタービン機関に関する。
【背景技術】
【0002】
脈動測定機器は、ガスタービン保護システムの一体的な部分である。この機器の目的は、機関を深刻な損傷から保護するために、突発的な高い脈動又は長期にわたる中程度の脈動レベルの場合に、即時の機関停止を行うか又は機関運転ポイントの変更を開始するために、脈動(スクリーチング、ランブリング、ハミング等)のような燃焼現象を監視することである。
【0003】
燃焼は、エミッションを減じるために希薄消滅限界付近で行われるので、ガスタービンにおける脈動監視が要求される。燃焼火炎の不安定性は、流れと相互作用しており、強力な音響波を発生する。これらの波は、燃焼器の、熱的に極めて負荷された構造体を励起させる。燃焼器の高温ガス部分の機械的な振動が、ある時点で音響脈動負荷と一致すると、寿命短縮又は即時故障にさえつながるような著しい摩耗が生じる。
【0004】
脈動の全周波数スペクトルにわたって正確な測定を行うために、ガスタービン燃焼器における脈動は、通常、燃焼内で直接に測定される。適切な信号処理と組み合わされた、高温ダイナミックセンサ(マイクロフォン、ダイナミック圧力変換器、ダイナミック圧力ピックアップ、圧電コンデンサ、圧電抵抗コンデンサ、ひずみゲージ、光学的又はあらゆるその他の原理)によって、物理的な高温ガス圧力変動が、電気出力信号(高周波、電圧若しくは電流、又はデジタル)に変換される(注意:センサの特定の作動原理は、以下で開示される発明とは関係ない)。
【0005】
しかしながら、1つの構成部分における直接的なひずみ又は加速度測定はここでは考慮されていない。この種のアプローチは、測定される構造体に限定され、信号を、測定されない他の構成部分における応力を推測するために使用することができない。音響信号は、構造体全体への直接励起機能を表す。
【0006】
処理されたセンサ信号はその後処理され、1つ又は2つ以上の監視周波数帯域に分割され、これらの監視周波数帯域は、ガスタービン保護ロジックにおける適切なアルゴリズムによって個別に分析及び評価される。信号のフィルタリングは、通常、アナログフィルタによって行われる。アナログフィルタのフィルタリング特性は、隣接する帯域の間のクロストークを許容する。より優れたフィルタリング手順は、欧州特許出願公開第1688671号明細書若しくは米国特許第7751943号明細書に記載されており、この場合、帯域情報が周波数領域において抽出される。これらのフィルタリングされた帯域の振幅は、次いで、機関運転ポイントを変更する(例えばパワー出力を低下させる)又は機関を即座に停止させるための手段として使用される、又は性能最適化及び不安定性制御のためのアクティブ燃焼器制御(ACC)におけるフィードバック制御パラメータとしてそれを使用する。
【0007】
機関の脈動は、完全に予測可能であるわけではなく、様々なパラメータ、つまり、燃料品質、燃料空気比、燃焼運転モード、燃料システム故障、シール摩耗、圧縮機質量流変化、流体力学的タイムラグ等に依存する。現在使用される機関保護方法の弱点は、ある機関保護動作(アラーム、操作ポイント調節、トリップ等)を開始するための決定しきい値のためのパラメータ(脈動深刻度、時間の遅れ、周波数帯域)が、これまでは、常に、検査されたハードウェアの損傷プロフィルを利用した弱い経験的証拠に基づくということである。これは、より古い機関設計に対する信頼度を制限する。より古い機関設計は、複数の検査サイクルを経験しており、現場経験が利用できない新たなガスタービンシステムのためのあらゆる保護の規定を妨げる。
【0008】
新たに取り付けられた又は保守された機関の燃焼設定は、通常、ダイナミック脈動信号のスペクトル情報を用いて、パワー、効率及び寿命について最適化される。この手順の間に、燃焼パラメータは通常、支配的な音響モードの最も高いピークを減じるように調整される。これは、以下の理由から誤りを生じることがある:
a)高温ガス構成部分の摩耗痕跡のみを利用して、連続的な機関運転のための、所定のピーク又は周波数帯域の最大許容脈動レベルを規定することは、現在では不可能である。経験的なアプローチは、音響励起のカップリングと構造的故障モードとの間の回答を提供しない;
b)最も高いピークだけが構造的な共振の原因であるわけでなく、幾つかのより低い脈動ピークは、直接に構造を励起する。
【0009】
機関の構成部分が更新される場合にも(例えば圧縮機ブレードの更新)、このような機関調節が必要とされる。したがって、脈動スペクトルは異なり、最適な機関調整及び保護のための経験的基準を再確立する必要があり、これはフィードバックに数年かかる。
【0010】
ヘビーデューティガスタービンの脈動監視における現在の技術は、引用文献"Technical Progress Report; Castaldini, C., CMC-Engineering; Guidelines for Combustor Dynamic Pressure Monitoring, EPRI, Palo Alto, CA, 2004, Product ID: 1005036"によってよく説明されている。脈動モニタリングは今や標準的な手段であり、ヘビーデューティガスタービンを調節し、機関を即座の危険な脈動ピークから保護し(例えば欧州特許出願公開第1688671号明細書又は米国特許第5719791号明細書を参照)、及びエミッション制御及びアクティブダンピングのための自動化されたフィードバックのための使用(英国特許第2042221号明細書参照)、又は単に燃焼器寿命仕様を満たすために傾向を記録することにより燃焼器音響効果を監視する。過去における脈動モニタリングの発展における主要な焦点は、主として、より高い運転温度に到達するためのセンササイド(例えば、製品リーフレット、MEGGITT, 2010の"New dynamic pressure sensors"を参照)、及び信号インターフェース(欧州特許出願公開第1688671号明細書)に向けられていた。
【0011】
フィードバックループによる脈動のアクティブ制御を説明した幾つかの文献(例えば欧州特許出願公開第1327824号明細書)が存在するが、機関の保護動作のための信号の利用を説明しているのは、幾つかの特許(欧州特許出願公開第1688671号明細書)しかない。保護セッティングは、公知の損傷の経験的証拠を利用することによって通常は規定される(Technical Progress Report; Castaldini, C., CMC-Engineering; Guidelines for Combustor Dynamic Pressure Monitoring, EPRI, Palo Alto, CA, 2004, Product ID: 1005036)。
【0012】
しかしながら、音響信号に基づき燃焼器の寿命を評価する方法が記載された1つの文献(欧州特許出願公開第1995519号明細書)がある。この文献による方法は、燃焼器において使用される材料の累積的な損傷(疲労)を評価するために、直接的な周期的負荷入力として、音響振動の周波数及び振幅を使用している。累積的損傷値は計算され、特定値に達すると、検査を開始するためにタービンを停止するための命令を開始するために使用される。この方法は、音響モードがその周波数において直接に燃焼器構造を励起しており、材料応力が直接に音響周波数の振幅の関数であると仮定するが、これは誤解である。
【0013】
この公知の方法の欠点は以下の通りである:
・この方法は、構造的な共振を考慮しない。この方法は、全ての周波数を、その振幅にしたがって、材料の累積的損傷への等しい要因として取り上げる。構造的な共振は、構造体における応力を、通常の振動レベルの数倍にも増幅する恐れがある。幾つかの周波数は全く危険ではない。なぜならば、構造的な共振は励起されないからである。
・この方法は、最適な寿命のための機関パラメータの最良の調節についてのいかなる情報も提供しない。この方法は、受動的であり、累積されたサイクルをチェックするだけである。多くの機関パラメータが燃焼器脈動に効果を有することにより、ガスタービンの運転ポイントは、高温ガス部分の最良の寿命を提供するように設定することができる。
・この方法は、累積損傷係数が脈動の全ての周波数に基づくので、早期で不要の機関停止につながる恐れがある。したがって、機関利用可能性に影響する恐れがある。
【0014】
理由及び目的
本発明は、燃焼器部分の最適な寿命に関して燃焼器運転ポイントの調整を可能にしかつ、安全限界内でガスタービンを永久に運転させることができる実用的な方法を説明する。最適な場合、方法は、構成部分の完全な寿命を保証しながらより高いパワー及び効率のために機関を調節するための付加的な余地を提供する。方法は、連続燃焼プロセスを行う全てのタイプの機関、主に定置及び可動のガスタービンに適用可能であるが、構造体を励起させる音響モードを有するボイラー炉にも適用可能である。方法は、対応して短縮されたメンテナンスサイクルとともにパワー出力を最大化するような、革新的な機関運転モードをも許容する。方法は、燃焼音響モードに関連した、エミッションのようなその他の機関パラメータの最適化にまで拡張されることができる。
【0015】
従来技術
燃焼器脈動をモニタリング及び制御することにおける従来技術は以下のとおりである:
・脈動信号は、燃焼器において適切な高温センサによって記録され、アナログ又はデジタル(FFT)帯域フィルタリングによって分析される(米国特許第7751943号明細書)。
・代表的な周波数帯域が抽出されるか、又は特定の周波数ピークが追跡される。帯域のRMS値(米国特許第7751943号明細書)又は主ピークの振幅が、脈動の過酷性のための尺度として用いられる。
・RMS値又はピーク振幅は、しきい値と比較され、超えている場合は、特定の遅れの後にガスタービンにおいて保護手段を開始するか(米国特許第7751943号明細書)又は機関の運転ポイントを移動させるために(例えば負荷変更)制御信号を提供する。より単純な概念は単に、支配的なピークのシフトのための周波数スペクトルの規則的なチェックを考える。
・しきい値は通常、機関故障診断フィードバックに基づき規定される(摩耗分析、損傷パターン分析、Technical Progress Report; Castaldini, C., CMC-Engineering; Guidelines for Combustor Dynamic Pressure Monitoring, EPRI, Palo Alto, CA, 2004, Product ID: 1005036を参照)。文献又は特許文献には、高温ガス部分故障に関する音響振幅と周波数との相互関係を規定する直接の方法の特定の説明はない。欧州特許出願公開第1995519号明細書に記載された、発見された唯一の参照文献は、単純化された形式で燃焼器材料の寿命を予測しようとする。駆動音響モードと、結果的なハードウェア振動モード及び材料応力とのリンクを提供していない。
・機関調節は、脈動周波数スペクトルに基づいて行われ、最大のピークは、通常、主燃焼パラメータを調節することによって減じられる。利用可能な知識を利用して、脈動ピークが構成部分の寿命に最も影響する絶対的なルールを有する可能性はない。
・構造体又は完全なガスタービンの機械的な一体性及び寿命評価のための構造的モデルは、従来技術であり、機関開発及び設計プロセスの一部である。
【0016】
問題の説明
測定された音響脈動データを燃焼器構造の達成可能な寿命と関連させる方法は、現在得られていない。機関調節は、主脈動ピークを減じるために目標とともに行われ、これは最適な方法ではない。保守的なセッティングは、完全な機関ポテンシャル(パワー、効率)を利用することを許容せず、かつ寿命予測における誤解を生じさえする。なぜならば、ほとんどの損傷周波数は減じられないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1688671号明細書
【特許文献2】米国特許第7751943号明細書
【特許文献3】米国特許第5719791号明細書
【特許文献4】英国特許出願公開第2042221号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1327824号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1995519号明細書
【特許文献7】米国特許第7751493号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、特に燃焼器/火炎脈動における、高い動的プロセス値に対してガスタービンを保護する方法を提供することであり、この方法は、公知の方法の欠点を排除し、機関脈動と構造的寿命との関連を提供し、この方法は、簡単に現場において使用され、機関のオペレータに情報を与える。
【0019】
発明の別の課題は、本発明の方法を行うためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
これらの課題及びその他の課題は、請求項1に係る方法及び請求項6に係るシステムによって達成される。
【0021】
本発明は、特に燃焼器/火炎脈動において、圧縮機と、燃焼器と、タービンとを有するガスタービン機関を高い動的プロセス値に対して保護する方法に関する。この方法は、
a)適切なセンサによって燃焼器の脈動を測定するステップと、
b)測定された脈動信号の周波数スペクトルを、所定の帯域区分に分割するステップと、
c)それぞれの帯域のための信号のRMS(二乗平均平方根)を計算するステップと、
d)計算された周波数/周波数帯域RMSを所定の重み付け係数で重み付けするステップと、
e)脈動限界基準(PLC)値を得るために、重み付けされた周波数/周波数帯域RMS値を累積するステップと、
f)PLC値を少なくとも1つの基準値と比較するステップと、
g)前記比較の結果に従ってガスタービン機関を運転するステップとを有する。
【0022】
本発明の方法の一つの実施形態によれば、前記重み付け係数は、燃焼器の構造全体及びその他の影響される構成部分のための構造モデルを使用することによって、及び燃焼器における脈動から生じる音響負荷への応答としての応力を計算することによって予め決定される。
【0023】
本発明の別の実施形態は、燃焼器構造の高温ガス部分が、広帯域周波数信号と協働させられ、これにより、複数の構造的な固有モードを同時に励起させ、高温ガス部分固有モード、脈動負荷振幅、及び周波数帯域幅のための脈動負荷周波数/周波数帯域に関する結果的な構造適応力が、寿命モデルに入力され、コンポーネントの達成可能な寿命が、関連のある周波数帯域幅にわたって予測され、周波数/周波数帯域に対する高温ガス部分の感度が、周波数/周波数帯域強制計算の結果としての周波数/周波数帯域を、前記重み付け係数で重み付けすることにより捕捉されることを特徴とする。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、運転のための推奨される最大PLC値、PLCoperationが規定され、ガスタービン機関は、PLC≦PLCoperationであるように運転される。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、PLCoperation値は、0.6〜0.9の範囲にある。
【0026】
本発明による方法を行うための本発明によるガスタービンは、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、ガスタービン制御装置とを有する。ガスタービン機関は、燃焼器内の脈動を検出するために少なくとも1つのセンサが設けられており、前記少なくとも1つのセンサが信号処理ユニットに接続されており、信号処理ユニットは、少なくとも1つのセンサの脈動信号から、燃焼器の寿命モデルによって、脈動限界基準(PLC)値を導き出し、比較手段が設けられており、この比較手段は、前記信号処理ユニットから、前記導き出された脈動限界基準(PLC)値を受取り、この脈動限界基準(PLC)値を基準値と比較し、前記比較手段の出力部が、前記ガスタービン制御装置の出力部に接続されている。
【0027】
ここで添付の図面を参照して複数の異なる実施形態によって本発明をより厳密に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態によるガスタービン機関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による方法は、脈動の監視、制御及び機関の調節への、グローバルな、構成部分の寿命に焦点を当てたアプローチに基づく。
【0030】
本発明の方法の主な要素のうちの1つは、音響励振(acoustic forcing)に関する寿命モデルである:
a)燃焼器構造全体及びその他の影響される構成部分のための構造モデルが、脈動によって生じる音響負荷に対する応答としての応力を計算するために使用される。特定の方法又はモデル、又は三次元有限要素モデリングは関係ないが、実際の脈動信号にできるだけ近い音響負荷を利用するために、注意が払われなければならない。実際の脈動信号は、複数の構造的な固有モードを同時に励起する複数の音響周波数から成る。したがって、高温ガス部分は、広帯域周波数信号で励振されなければならない。結果的な出力は、高温ガス部分固有モード、脈動負荷振幅、考慮される周波数帯域幅のための脈動負荷振幅及び脈動負荷周波数/周波数帯域、及び特定の寿命に関する、構造的な応力である。
b)構成部分の応力が寿命モデルに入力される。周波数/周波数帯域のために、構成部分の達成可能な寿命は、対象となる周波数帯域幅にわたって予測される。
c)周波数/周波数帯域に対する高温ガス部分の感度は、周波数/周波数帯域励振計算の結果として周波数/周波数帯域を重み付けすることによって捕捉される(a)参照)。
【0031】
注意:方法を効率化するために、音響励振の表示として、制限された数の帯域範囲(RMS)を使用することが最良である。帯域範囲の数は、重み付け係数の数も規定する。原理的に、この方法は、スペクトルに分解された信号の個々の領域(bin)に適用することもできる。
【0032】
本発明の方法の別の主な要素は、信号処理である:
d)燃焼器の脈動は適切なセンサによって測定される。センサの信号は、以下のように時間ステップごとに処理される(フィルタリングは欧州特許出願公開第1688671号明細書による):
(1)時間依存信号が、周波数領域(FFT又は同様のもの)に変換される。
(2)スペクトルが、所定の帯域区分に分割され、その帯域について信号のRMS(二乗平均平方根)が計算される。帯域区分は、重なってはならないか又はギャップを有さねばならない。(注意:この方法は、時間領域において行われるフィルタリングによって行うこともできる。これは、極めて厳密なフィルタと、不可避なギャップとを必要とし、帯域の間のクロストークはエラーを引き起こす。迅速な実時間処理システムは、従来技術であり、信号フィルタリングは、欧州特許出願公開第1688671号明細書に示された方法に従って最もよく行われる)。
(3)それぞれの周波数/周波数帯域に対する高温ガス部分の感度は、周波数/周波数帯域RMS値を重み付けすることによって捕捉される。区分c)において上述したように、一組の周波数/周波数帯域のために計算された重みは、区分a)から生じる。
(4)PLCと呼ばれる、計算されかつ重み付けされた周波数/周波数帯域RMS値が、1を超えると、所要の寿命にわたって燃焼器の機械的一体性は達成されない。
(5)以下のPLC値が生じる可能性がある:
・PLC=1:機関は(理論的に)計画された寿命にちょうど達する(検査インターバル)
・PLC≦PLCoperation(PLCoperationは、運転のための推奨される最大値である):これは、実際の機関における不確実性と、モデルにおける不確実性を変換するための安全係数を含む(典型的な値は、0.6〜0.9の範囲であると予測される)。機関は、安全運転ポイントで運転しており、予測された寿命に確実に達する。
・PLC≧1:機関は、許容される運転ポイントの外で運転される。このレベルで連続的に運転されると、機関は、計画された寿命に達しない。
【0033】
本発明によるガスタービン機関の実施形態が図1に示されている。図1のガスタービン機関10は、圧縮機11と、タービン12と、可変入口ベーン24を通る空気入口14とを有する。圧縮空気は燃焼器13において燃料を燃焼させるために使用される。燃料は、弁17を通じて燃料供給部15によって供給される。高温ガスは燃焼器13から出て、タービン12に入る。排気ガスは排気ガス出口16においてタービン12から出る。燃焼器13内の脈動を検出するために少なくとも1つのセンサ18が燃焼器13に配置されている。センサ18は信号処理ユニット19に接続されており、この信号処理ユニット19は、燃焼器構造のための寿命モデル20の結果に従って脈動信号を処理する。信号処理ユニット19は脈動限界基準(PLC)値を比較手段21へ送り、この比較手段21において、脈動限界基準(PLC)値は、基準値23と比較される。比較の結果は、ガスタービン制御22における制御パラメータとして使用される。
【0034】
機関調節及び制御は、以下のように行われる:
e)(新規に設置された期間又はメンテナンス検査が行われた機関のための)コミッショニングの間、燃焼パラメータ(例えば、可変インプットベーン24の位置、又は弁17を介した燃料供給)は、PLC値を考慮しながら、所望の機関パワー及び効率目標を達成するように調節される。PLC値は、≦PLCoperationであるべきである。
f)運転中、機関は、≦PLCoperationの値で運転される。これは、(例えば、欧州特許出願第1688671号明細書に記載されたPPSViewによって)傾向分析によってチェックすることができるか、又はPLC値は制御アルゴリズムにおいて考慮される。
g)特別の運転状況:機関オペレータは、サービスインターバルを延長するか又はより多くのパワーを発生することを望む場合がある。両方の場合に、PLC値は、新たなメンテナンスサイクルに基づく新たな重み付け係数をロードすることによってアップデートすることができる。
【符号の説明】
【0035】
10 ガスタービン機関
11 圧縮機
12 タービン
13 燃焼器
14 空気入口
15 燃料供給部
16 排気ガス出口
17 弁
18 センサ
19 信号処理ユニット
20 寿命モデル
21 比較手段
22 ガスタービン制御装置
23 基準値(PLCoperation
24 可変入口ベーン(VIV)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)と、燃焼器(13)と、タービン(12)とを有するガスタービン機関(10)を、特に燃焼器/火炎脈動における高い動的プロセス値に対して保護する方法において、
h)適切なセンサ(18)によって燃焼器(13)の脈動を測定するステップと、
i)測定された脈動信号の周波数スペクトルを所定の帯域区分に分割するステップと、
j)それぞれの帯域について信号のRMS(二乗平均平方根)を計算するステップと、
k)計算された周波数/周波数帯域のRMSを所定の重み付け係数で重み付けするステップと、
l)重み付けされた周波数/周波数帯域のRMS値を累積して脈動限界基準(PLC)値を得るステップと、
m)PLC値を少なくとも1つの基準値(23)と比較するステップと、
n)前記比較の結果に従ってガスタービン機関(10)を運転するステップとを有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記重み付け係数を、燃焼器(13)の全体構造とその他の影響される構成部分とのための構造モデルを使用することによって、及び燃焼器(13)における脈動から生じる音響負荷に対する応答としての応力を計算することによって、予め決定する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
燃焼器構造の高温ガス部分を、広帯域周波数信号で励振し、これにより、複数の構造的固有モードを同時に励起し、高温ガス部分固有モードに関する結果的な構造的応力と、周波数帯域幅のための、脈動負荷振幅及び脈動負荷周波数/周波数帯域とが、寿命モデルに入力され、構成部分の達成可能な寿命が、対象となる周波数帯域にわたって予測され、周波数/周波数帯域に対する高温ガス部分の感度が、前記重み付け係数によって、周波数/周波数帯域励振計算の結果として、周波数/周波数帯域を重み付けすることにより捕捉される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
運転のための推奨される最大PLC値、PLCoperation、が規定され、ガスタービン機関(10)がPLC≦PLCoperationであるように運転される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
PLCoperation値が0.6〜0.9の範囲にある、請求項4記載の方法。
【請求項6】
圧縮機(11)と、燃焼器(13)と、タービン(12)と、ガスタービン制御装置(22)とを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法を行うためのガスタービン機関(10)において、燃焼器(13)内の脈動を検出するために少なくとも1つのセンサ(18)が設けられており、該少なくとも1つのセンサ(18)が信号処理ユニット(19)に接続されており、該信号処理ユニットが、少なくとも1つのセンサ(18)の脈動信号から、燃焼器(13)の寿命モデルによって脈動限界基準(PLC)値を導き出し、比較手段(21)が設けられており、該比較手段(21)が、前記信号処理ユニット(19)から、前記導き出された脈動限界基準(PLC)値を受け取り、該脈動限界基準(PLC)値を基準値(23)と比較し、前記比較手段(21)の出力部が、前記ガスタービン制御装置(22)の入力部に接続されていることを特徴とする、ガスタービン機関。

【図1】
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【公開番号】特開2012−233480(P2012−233480A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−105501(P2012−105501)
【出願日】平成24年5月2日(2012.5.2)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland