説明

ガスタービン

【課題】車室内壁面が高温の排空気に直接曝されず、かつ、車室内における排空気と圧縮空気との混合を防止しながら、車室内の燃焼器に排空気を供給しうるガスタービンを提供する。
【解決手段】ガスタービン(10,100)は、圧縮機12を通過した圧縮空気が流入する車室内空間20において燃焼器16を収納する車室18を有する。車室内空間20は、燃焼器16を覆う隔壁(30,70)によって、車室18の内壁面19に接し圧縮機12からの圧縮空気が流れる第1空間20Aと燃焼器16に接する第2空間20Bとに隔てられる。隔壁(30,70)と燃焼器16との間には、シール部材40が設けられる。また、第1空間20Aから圧縮空気を抽気して車室18の外部の加熱部に導く抽気管50と、加熱部を通過した排空気を第2空間20Bに導く供給管(60,80)とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに係り、特に、圧縮機を通過した圧縮空気を車室外の加熱部に導き、該加熱部からの排空気を燃焼用空気として利用するガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化や化石燃料の枯渇等の問題に対する解決策として、発電効率が高く二酸化炭素を排出しない燃料電池をガスタービンと組み合わせた複合発電システムが注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ガスタービンと固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)とを組み合わせた複合発電システムが開示されている。この複合発電システムでは、ガスタービンの圧縮機からの圧縮空気を固体酸化物形燃料電池の空気極に供給するとともに、固体酸化物形燃料電池からの排空気および排燃料ガスをガスタービンの燃焼器で燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給して回転動力を得るようになっている。
【0004】
また特許文献2には、燃料電池とともに複合発電システムを構成するガスタービン用の燃焼器が開示されている。この燃焼器は、バーナ及び燃焼ライナがケーシングに収納された構成を有する。燃焼器のケーシングは、仕切壁によってバーナ近傍の空間とバーナ下流の空間とに分割されている。そして、バーナ近傍の空間には、燃焼用空気供給ラインを介して圧縮機から供給される圧縮空気と、排ガスラインを介して燃料電池から供給される排ガスの一部との混合気が供給される。一方、バーナ下流の空間には、燃料電池からの排ガスの残部が供給される。このように、燃料電池の排ガスの一部を圧縮空気と混合してバーナ近傍に供給するとともに、燃料電池の排ガスの残部をバーナより下流側に希釈空気として供給することで、酸素濃度が低い燃料電池の排ガスの燃焼器への供給に起因する燃焼状態の不安定化を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−205932号公報
【特許文献2】特開2002−106844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガスタービンには、燃焼器を車室内に収納して省スペース化を図ったものがある。このタイプのガスタービンを用いて燃料電池との複合発電システムを構築しようとすると、燃料電池の空気極を通過した高温かつ低酸素濃度の排空気を車室内の燃焼器に供給する際、次のような要求に直面する。
【0007】
すなわち、燃料電池からの排空気は非常に高温(例えば、500〜600℃)で、車室の耐熱温度を超えることもあるから、排空気を燃焼器に供給する際に排空気が車室に直接触れないような対策が求められる。
また、燃料電池からの排空気は圧縮機を通過した圧縮空気に比べて酸素濃度が低い一方、圧縮機を通過した圧縮空気は燃料電池からの排空気に比べて低温(例えば400℃前後)である。このため、車室内において、燃料電池からの排空気と圧縮機を通過した圧縮空気とが混合してしまうと、燃料電池の空気極に流入する圧縮空気の酸素濃度が低くなり燃料電池の発電効率が低下するとともに、燃焼器に導かれる燃料電池からの排空気の温度が低くなり複合発電システム全体としての発電効率が低下してしまう。よって、排空気を燃焼器に供給する際、上記の観点から、排空気と圧縮機を通過した圧縮空気とを車室内において混合させないような対策が求められる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の複合発電システムでは、そもそも、燃料電池からの排空気を燃焼器に供給する具体的な装置構成が明らかでない。よって、特許文献1は、燃焼器を車室内に収納したガスタービンにおいて必要となる上記対策を提示したものではない。
また特許文献2の燃焼器は、圧縮機からの圧縮空気を燃焼用空気供給ラインを介して燃焼器側に導いていることから、車室内に収納されておらず、車室外部に設けられていることが明らかである。そして、燃焼器を車室外部に設ける場合には、単に圧縮機、燃料電池、燃焼器をこの順で直列に接続するだけで、燃焼器からの高温の排空気に車室が曝されることはないし、圧縮機からの圧縮空気と燃焼器からの排空気とが混合することもあり得ない。よって、特許文献2は、燃焼器を車室内に収納したガスタービンにおいて必要となる上記対策を提示したものではない。
【0009】
また、圧縮機を通過した圧縮空気をガスタービンの排気ガスにより再熱して、これを燃焼用空気として車室内の燃焼器に戻す場合にも、燃料電池とガスタービンとの複合発電システムと同様に、上記対策が必要となる。すなわち、車室の耐熱性の考慮すれば再熱後の燃焼用空気に車室が曝されないようにする必要があることに加えて、発電効率の向上の観点から燃焼用空気と圧縮空気とが車室内で混合しないような工夫が必要となる。
【0010】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、車室内壁面が高温の排空気に直接曝されず、かつ、車室内における排空気と圧縮空気との混合を防止しながら、車室内の燃焼器に排空気を供給しうるガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るガスタービンは、圧縮機を通過した圧縮空気を車室外の加熱部により加熱し、該加熱部からの排空気と燃料とを燃焼器に供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給することで回転動力を得るガスタービンであって、前記圧縮機を通過した圧縮空気が流入する車室内空間において前記燃焼器を収納する車室と、前記燃焼器を覆うように前記車室内空間に設けられ、前記車室内空間を、前記車室の内壁面に接し前記圧縮機からの圧縮空気が流れる第1空間と前記燃焼器に接する第2空間とに隔てる隔壁と、前記隔壁と前記燃焼器との間に設けられたシール部材と、前記第1空間に連通し、該第1空間から圧縮空気を抽気して前記加熱部に導く圧縮空気抽気管と、前記第2空間に連通し、前記加熱部を通過した排空気を前記第2空間に導く排空気供給管とを備え、前記第2空間に導かれた前記排空気が、前記燃焼器に取り込まれて燃料の燃焼に用いられることを特徴とする。
【0012】
このガスタービンでは、燃焼器を覆う隔壁によって車室内空間が車室内壁面に接する第1空間と燃焼器に接する第2空間とに隔てられ(言い換えると、車室内壁面に接する第1空間が隔壁を挟んで燃焼器周囲の第2空間を包んでいる)、燃焼器と隔壁との間にシール部材が設けられている。したがって、第2空間内の排空気の車室内壁面に接する第1空間への移動を隔壁およびシール部材によって阻んで、車室内壁面が高温の排空気に直接曝されることを防止できる。また、第1空間と第2空間との間の流体の行き来は、隔壁およびシール部材によって阻害されるので、車室内における排空気と圧縮空気との混合を防止できる。
【0013】
ここで、前記加熱器は、前記ガスタービンとともに複合発電システムを構成する燃料電池の空気極であってもよい。上述のように、前記ガスタービンでは、車室内壁面が高温の排空気に直接曝されず、かつ、車室内における排空気と圧縮空気との混合が防止されるので、燃料電池との複合発電システムを適切に実現することができる。
【0014】
上記ガスタービンにおいて、前記シール部材は、前記燃焼器と前記隔壁との伸び差を吸収するようになっていてもよい。
【0015】
これにより、燃焼器と隔壁との間の伸び差を吸収して、各部材の変形や破壊等を防止できる。例えば、燃焼による発熱で燃焼器が隔壁に比べて高温になって、両者の間に熱伸び差が発生しても、熱応力による各部材の変形や破壊等を防止できる。
【0016】
このように伸び差を吸収可能なシール部材は、弾性力によって前記隔壁と前記燃焼器との間の隙間をシールするスプリングクリップであってもよい。あるいは、熱伸び差を吸収可能なシール部材として、カーボンナノチューブを主成分とする粘弾性材料からなり、前記燃焼器および前記隔壁のいずれか一方に固定され、他方に対して押し付けられているようなシール部材を用いてもよい。カーボンナノチューブを主成分とする粘弾性材料は、耐熱性に優れ、1000℃程度まで粘弾性を維持できるので、燃焼による発熱で高温になる燃焼器近傍の過酷な環境下でも十分に用いることができる。
なお、スプリングクリップ等のシール部材は、隔壁によって隔てられた第1空間と第2空間との間における流体の行き来を阻害可能であればよく、必ずしも隔壁と燃焼器との間の隙間を完全に密封する必要はない。
【0017】
なお、カーボンナノチューブ(CNT)を主成分とする粘弾性材料は、例えば、スパッタリングによりシリコン基板上に鉄触媒を付着させ、アルゴンイオンによる反応性イオンエッチングにより触媒を調製した後、この基板上にスーパーグロース法によってCNTを合成して得たCNT構造体を圧縮することで作製できる。なお、CNTを主成分とする粘弾性材料は、参考文献「Ming Xu, Don N. Futaba, Takao Yamada, Motoo Yumura and Kenji Hata, "Carbon Nanotubes with Temperature-Invariant Viscoelasticity from -196℃ to 1000℃,"Science, Vol. 330, No. 6009, pp.1364-1368 (2010), Published online 3 December 2010. DOI:10.1126/science.1194865」に記載された手法により作製してもよい。
【0018】
また、上記ガスタービンにおいて、前記燃焼器は前記車室内空間に複数設けられており、前記隔壁は各燃焼器を個別に覆い、該隔壁によって囲まれる前記第2空間は各燃焼器を収納する略円筒状の空間であってもよい。
これにより、複数の燃焼器が車室内に収納されるガスタービンであっても、車室内壁面が高温の排空気に直接曝されず、かつ、車室内における排空気と圧縮空気との混合を防止できる。
【0019】
この場合、前記排空気供給管は、各燃焼器の周囲の前記第2空間にそれぞれ連通する複数の枝管と、該枝管と前記加熱部との間に介在して前記加熱部を通過した前記排空気を前記枝管に供給するマニホールドとを備え、前記マニホールドは、前記車室の周りに設けられていてもよい。
これにより、マニホールド及び枝管によって加熱部からの排空気を各燃焼器に確実に分配することができる。
【0020】
あるいは、上記ガスタービンにおいて、前記燃焼器は前記車室内空間に複数設けられており、前記隔壁は複数の前記燃焼器を一括して覆い、該隔壁によって囲まれる前記第2空間は複数の前記燃焼器を収納する略環状の空間であってもよい。
これにより、複数の燃焼器が車室内に収納されるガスタービンであっても、車室内壁面が高温の排空気に直接曝されず、かつ、車室内における排空気と圧縮空気との混合を防止できる。
【0021】
また、上記ガスタービンにおいて、前記隔壁を補強するリブを設けてもよい。
圧縮空気が第1空間から圧縮空気抽気管を介して加熱部に流入し、該加熱部からの排空気が排空気供給管を介して第2空間に流入するのであるから、上流側に位置する第1空間内の圧縮空気は下流側に位置する第2空間内の排空気に比べて少し圧力が高い。このため、隔壁は第1空間側から第2空間側に押圧される。そこで、上述のように、リブを設けて隔壁を補強することで、隔壁の変形を防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃焼器を覆う隔壁によって車室内空間を車室内壁面に接する第1空間と燃焼器に接する第2空間とに隔てて、燃焼器と隔壁との間にシール部材を設けたので、第2空間内の排空気の車室内壁面に接する第1空間への移動を隔壁およびシール部材によって阻んで、車室内壁面が高温の排空気に直接曝されることを防止できる。また、第1空間と第2空間との間の流体の行き来は、隔壁およびシール部材によって阻害されるので、車室内における排空気と圧縮空気との混合を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】燃料電池とガスタービンとを組み合わせた複合発電システムの一例を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係るガスタービンの燃焼器周辺の車室内部構造を示す断面図である。
【図3】図2におけるA−A線に沿った断面図である。
【図4】燃焼器を覆う隔壁の構成例を示す図であり、(a)は燃焼器の長手方向に沿った断面図、(b)は図4(a)のB方向から視た平面図である。
【図5】図2におけるCで示した領域の拡大図である。
【図6】図5に示すシール部材の平面図である。
【図7】第2実施形態に係るガスタービンの燃焼器周辺の車室内部構造を示す断面図である。
【図8】図7に示すガスタービンの隔壁周辺を示す図であり、燃焼器長手方向に直交する方向に沿った断面図である。
【図9】補強用リブが立設された隔壁の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、燃料電池とガスタービンとを組み合わせた複合発電システムの一例を示す概略構成図である。
なお、ここでは、ガスタービンの圧縮機で生成された圧縮空気が燃料電池の空気極によって加熱してガスタービン燃焼器に戻す例(すなわち、「加熱部」が燃料電池の空気極である場合)について説明するが、圧縮空気をガスタービン車室の外部で加熱する「加熱部」は燃料電池の空気極に限られない。例えば、圧縮機を通過した圧縮空気を「加熱部」としての再熱器でガスタービン排気との熱交換により再熱し、これを燃焼用空気として燃焼器に戻すようにしてもよい。
【0026】
複合発電システム1は、燃料電池2とガスタービン10とで構成される。
燃料電池2は、反応温度が比較的高い燃料電池(いわゆる高温型燃料電池)であり、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)や溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell:MCFC)を用いることができる。燃料電池2は、燃料極4と空気極6との間に電解質8が設けられている。一方、ガスタービン10は、同軸に連結された圧縮機12及びタービン14と燃焼器16とが車室18内に設けられている。
【0027】
燃料電池2では、燃料極4に燃料ガスが供給され、空気極6にガスタービン10の圧縮機12からの圧縮空気が供給される。これにより、空気極6で生成されたイオン(SOFCの場合はO2−、MCFCの場合はCO2−)が電解質8を介して燃料極4に移動し、このイオンが燃料極4において燃料ガス中の水素と反応し、起電力が発生する。燃料極4を通過した排燃料ガスは、ガスタービン10の燃焼器16に導かれ、別途供給される燃料と混合されて、燃焼器16における燃焼用の燃料として用いられる。また、圧縮空気は、空気極6を通過する際に昇温され、燃焼用空気として車室18内の燃焼器16に供給される。
【0028】
なお、圧縮機12を通過した圧縮空気は、必要に応じて予め加熱してから燃料電池2の空気極6に導くようにしてもよい。例えば、圧縮機12を通過した圧縮空気を、ガスタービン排気との熱交換によって温めた後、燃料電池2の空気極6に供給してもよい。
【0029】
図2は、図1の複合発電システム1におけるガスタービン10の燃焼器16周辺の車室内部構造を示す図である。図3は、図2におけるA−A線に沿った断面図である。図4は、燃焼器16を覆う隔壁の構成例を示す図であり、図4(a)は燃焼器16の長手方向に沿った断面図、図4(b)は図4(a)のB方向から視た平面図である。図5は、図2におけるCで示した領域の拡大図である。図6は、図5のシール部材の一部を示す平面図である。
【0030】
図2に示すように、車室18は、圧縮機12側の第1ケーシング18Aとタービン14側の第2ケーシング18Bとで構成され、ロータ11周囲の略環状の車室内空間20を囲んでいる。この車室内空間20には燃焼器16が収納されている。
【0031】
燃焼器16は、圧縮機12とタービン14との間において、ロータ11の周囲に複数設けられ、隣接する燃焼器16同士が連結管17によって連結されている。各燃焼器16は、燃料供給管22から燃料供給室23を介して導入された燃料を噴射する燃料ノズル24と、燃焼ノズル24から供給された燃料が燃焼される内筒(燃焼器ライナ)26と、内筒26で生成した燃焼ガスをタービン14側に導く尾筒(トランジションピース)28とを有する。なお、燃料供給室23を形成する管状壁25は、そのフランジ部において、燃料供給管22及び後述する枝管66と連結されている。
【0032】
各燃焼器16の周囲には、図2及び3に示すように、燃焼ノズル24及び内筒26を覆うように隔壁30が設けられている。すなわち、隔壁30は、各燃焼器16(具体的には各燃焼器16の燃焼ノズル24及び内筒26)を個別に覆っている。
この隔壁30によって、燃焼器16が収納された車室内空間20は、車室内壁面19に接する第1空間20Aと各燃焼器16に接する第2空間20Bとに隔てられている。言い換えると、車室18の内壁面19に接する第1空間20Aが隔壁30を挟んで燃焼器16の周囲の第2空間20Bを包んでいる。なお、隔壁30によって囲まれた第2空間20Bは、図3に示すように、略円筒状の空間である。
【0033】
隔壁30には、図3及び4に示すように、連結管17が貫通する長孔32が形成されている。長孔32は、燃焼器16の長手方向(燃焼器長手方向)に沿って延在している。
このように連結管17が隔壁30を貫通する部分に長孔32を設けることで、燃焼器16の熱伸びによって、内筒26に取り付けられた連結管17が隔壁30に対して相対的に燃焼器長手方向に動いても、連結管17と隔壁30とが干渉することはない。
【0034】
この場合、図3及び4に示すように、隔壁30に当接して長孔32を覆うカバープレート34を連結管17に取り付けてもよい。カバープレート34は、連結管17から燃焼器長手方向の両側にL2だけ延びている。カバープレート34の連結管17からの延在量L2は、L2≧L1−Dの関係を満たすように決定されている。ここで、L1は燃焼器長手方向における長孔32の長さであり、Dは連結管17の外径である。
このように、L2≧L1−Dの関係を満たすカバープレート34を連結管17に取り付けることで、長孔32によって規制された燃焼管17の可動範囲のいずれの位置においても、長孔32をカバープレート34で覆うことができる。よって、長孔32を介した第1空間20Aと第2空間20Bとの間の流体の行き来をカバープレート34によって確実に防止できる。
【0035】
また、カバープレート34によるシール部材性を向上させる観点から、カバープレート34の表面と長孔32の周囲の隔壁30の外周面との間に、スプリングクリップやカーボンナノチューブを主成分とする粘弾性材料からなるシール部材を設けてもよい。これにより、カバープレート34の表面と隔壁30の外周面との間の隙間を介した流体の行き来を確実に防止できる。
なお、図4(a)及び(b)にはカバープレート34を隔壁30の外周面側に配置した例を示したが、カバープレート34は隔壁30の内周面側に設けてもよい。
【0036】
図2及び5に示すように、隔壁30と燃焼器16の内筒26との間には、シール部材40が設けられている。シール部材40は、弾性力によって隔壁30と内筒26とを結合し、両者間の隙間をシールするいわゆるスプリングクリップである。シール部材40の各部の詳細は、次のとおりである。
【0037】
シール部材40は、内筒26の外周面に固定される固定部42と、この固定部42から内筒26の径方向外方に屈曲した付勢部44と、隔壁30の内周面に当接する当接部46とを有する。
シール部材40の固定部42は、溶接位置41において内筒26の外周面にスポット溶接され、内筒26に固定されている。シール部材40の付勢部44は、固定部42と当接部46との間に設けられ、固定部42から離れるにつれて内筒26の径方向外方に向かうように屈曲した形状を有する。シール部材40の取付状態において、付勢部44は、内筒26の径方向内方に向かって縮径するように弾性変形している。このため、付勢部44の弾性力によって、当接部46は内筒26の径方向外方に付勢され、当接部46が隔壁30の内周面に密着する。
【0038】
このように、当接部46は、隔壁30の内周面に当接しているものの固定されておらず、隔壁30の内周面上を摺動しうるから、燃焼器16と隔壁30との熱伸び差を吸収できる。よって、燃焼による発熱で燃焼器16が隔壁30に比べて高温になって、両者の間に熱伸び差が発生しても、熱応力による各部材の変形や破壊等を防止できる
【0039】
なお、図5には、シール部材40の固定部42を内筒26の外周面に固定する例を示したが、固定部42は隔壁30の内周面に固定してもよい。この場合、付勢部44の弾性力によって当接部46を内筒26の径方向内方に付勢し、当接部46を内筒26の外周面に密着させることで、隔壁30と内筒26との間の隙間をシールしながら両者を結合できる。
【0040】
また、付勢部44及び当接部46には、図6に示すように、シール部材40の全周に亘って複数のスリット48を形成してもよい。スリット48は、当接部46から付勢部44にかけて燃焼器長手方向に沿って延在している。このようにスリット48を設けることで、付勢部44及び当接部46の径方向の変形量(縮径量)を大きくとることができ、付勢部44の弾性力を増大させて、当接部46と隔壁30の内周面との密着状態をより一層確実に維持できる。
なお、固定部42と付勢部44との間には複数の穴49が設けられており、それぞれの穴49は対応するスリット48に連通している。スリット48の固定部42側の端部周辺は、シール部材40のうち応力が集中しやすい箇所である。そこで、この箇所に集中する応力を穴49によって分散させることで、シール部材40のクラックを防止できる。
【0041】
上記構成の隔壁30の外周側に位置する第1空間20Aには、図2に示すように、抽気管(「圧縮空気抽気管」に相当)50が連通している。抽気管50は、一端が車室18内部の第1空間20Aに接続されており、他端が燃料電池2の空気極6(図1参照)に接続されている。これにより、圧縮機12を通過した圧縮空気は、抽気管50を介して燃料電池2の空気極6に導かれる。
【0042】
また、隔壁30の内周側に位置する第2空間20Bには、図2に示すように、供給管(「排空気供給管」に相当)60が連通している。燃料電池2の空気極6から排出された高温・高圧の排空気は、供給管60を介して、各燃焼器16の周囲の第2空間20Bに供給される。
【0043】
供給管60は、燃料電池2の空気極6に接続された上流側管路62と、上流側管路62に連通するマニホールド64と、マニホールド64から分岐した複数の枝管66とで構成される。マニホールド64は、車室18の周囲に設けられている環状の管路であり、マニホールド64の上部には上流側管路62が接続されている。マニホールド64を形成する環状管路の中心は、ロータ11の回転中心とほぼ一致している。また、枝管66は、マニホールド64から分岐して、ロータ11の径方向内方に向かって延びた後、途中で屈曲し、燃焼器16に向かって燃焼器長手方向に延びている。そして、枝管66の燃焼器16側のフランジ部は、ボルト61によって圧縮機12側の第1ケーシング18Aと連結されるとともに、ボルト63によって隔壁30と連結されている。マニホールド64から分岐した複数の枝管66は、それぞれ、各燃焼器16周囲の第2空間20Bに連通している。
供給管60では、マニホールド64及び枝管66によって、上流側管路62を流れる排空気が各燃焼器16に確実に分配されるようになっている。
【0044】
本実施形態のガスタービン10では、燃焼器16を覆う隔壁30によって車室内空間20を車室18の内壁面19に接する第1空間20Aと燃焼器16に接する第2空間20Bとに隔てるとともに、燃焼器16と隔壁30との間にシール部材40を設けている。このため、第2空間20B内の排空気の第1空間20Aへの移動を隔壁30およびシール部材40によって阻んで、車室18の内壁面19が高温の排空気に直接曝されることを防止できる。また、第1空間20Aと第2空間20Bとの間の流体の行き来は、隔壁30およびシール部材40によって阻害されるので、車室18内における排空気と圧縮空気との混合を防止できる。
【0045】
なお、上述の実施形態では、シール部材40の具体例としてスプリングクリップを示したが、シール部材40は、第1空間20Aと第2空間20Bとの間の流体の行き来を隔壁30とともに阻害しうる構成であれば特に限定されない。例えば、カーボンナノチューブを主成分とする粘弾性材料からなり、燃焼器16および隔壁30のいずれか一方に固定され、他方(「他方部材」という。)に対して押し付けられているようなシール部材40を用いてもよい。このとき、シール部材40が他方部材(シール部材40が固定されていない部材)に対して燃焼器長手方向に摺動しうる程度に、シール部材40を他方部材に押し付けることで、燃焼器16と隔壁30との熱伸び差を吸収することも可能である。また、この場合のシール部材40として、カーボンナノチューブを主成分とする粘弾性材料を好適に用いることができる。この粘弾性材料は、耐熱性に優れ、1000℃程度まで粘弾性を維持できるので、燃焼による発熱で高温になる燃焼器近傍の過酷な環境下でも十分に用いることができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るガスタービンについて説明する。本実施形態のガスタービンは、第1空間20Aと第2空間20Bとを隔てる隔壁とその周辺の構造を除けば第1実施形態に係るガスタービン10と同様である。よって、以下では、ガスタービン10と共通の箇所には同一の符号を用い、ガスタービン10と異なる点を中心に説明する。
【0047】
図7は、本実施形態に係るガスタービンの燃焼器周辺の車室内部構造を示す断面図である。図8は、図7に示すガスタービンの隔壁周辺を示す図であり、燃焼器長手方向に直交する方向に沿った断面図である。
【0048】
図7及び8に示すように、ガスタービン100では、隔壁70は、複数の燃焼器16の内周側に配置される内周側壁72と、複数の燃焼器16の外周側に配置される外周側壁74とで構成される。これら内周側壁72及び外周側壁74によって、車室内空間20は、車室18の内壁面19に接する第1空間20Aと、燃焼器16に接する第2空間20Bとに仕切られている。すなわち、本実施形態では、隔壁70は複数の燃焼器16を一括して覆っており、隔壁70によって囲まれる第2空間20Bは複数の燃焼器16を収納する略環状の空間である。
このように、複数の燃焼器16を一括して隔壁70で覆う場合、第1実施形態のように各燃焼器16を隔壁30で個別に覆う場合とは異なり、隣接する燃焼器16同士を連結する連結管17の隔壁貫通部が存在しない。よって、燃焼器16に取り付けられた連結管17と隔壁70との熱伸びを吸収するための複雑な構造(図3及び4に示す長孔32及びカバープレート34)が不要になり、装置構成を簡素化できる。
【0049】
略環状の第2空間20Bには供給管(「排空気供給管」に相当)80が連通している。供給管80は、燃料電池2の空気極6に接続された上流側管路82と、上流側管路82に連通する環状管84とで構成される。環状管84は、車室18の周囲に設けられており、その中心はロータ11の回転中心とほぼ一致している。
これにより、燃料電池2の空気極6から排出された高温・高圧の排空気は、上流側管路82と環状管84とをこの順で通過して、略環状の第2空間20Bに排空気が導かれるようになっている。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0051】
例えば、上述の実施形態では、隔壁30と隔壁70(具体的には隔壁70を構成する各壁72及び74)が燃焼器長手方向に延びる円筒状である例について説明したが、隔壁30又は内周側壁72及び外周側壁74の表面に補強用リブを立設してもよい。
図9は、補強用リブが立設された隔壁30の構成例を示す斜視図である。同図に示すように、燃焼器長手方向に沿った複数本の補強用リブ31を隔壁30の外表面(内表面でもよい)に立設してもよい。
圧縮空気が第1空間20Aから抽気管50を介して燃料電池2の空気極6に流入し、空気曲6からの排空気が供給管(60,80)を介して第2空間20Bに流入するのであるから、上流側に位置する第1空間20A内の圧縮空気は下流側に位置する第2空間20B内の排空気に比べて少し圧力が高い。このため、隔壁(30,70)は第1空間20A側から第2空間20B側に押圧される。そこで、上述のように、補強用リブ31を設けて隔壁(30,70)を補強することで、隔壁(30,70)の変形を防止できる。
【0052】
また、上述の実施形態では、シール部材40を隔壁(30,70)と内筒26との間に設けた例について説明したが、シール部材40は隔壁(30,70)と尾筒28との間に設けてもよい。
【0053】
さらに、上述の実施形態では、複数の燃焼器16が車室18内に収納された多缶型のガスタービン(10,100)を例に挙げたが、燃焼器16は車室18内に収納されている限りその個数は限定されず、単缶であってもよい。例えば、ロータ11の全周に亘って環状に設けられた単缶の燃焼器16を用いてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 複合発電システム
2 燃料電池
4 燃料極
6 空気極
8 電解質
10 ガスタービン
11 ロータ
12 圧縮機
14 タービン
16 燃焼器
17 連結管
18 車室
18A 第1ケーシング
18B 第2ケーシング
19 内壁面
20 車室内空間
20A 第1空間
20B 第2空間
22 燃料供給管
23 燃料供給室
24 燃料ノズル
25 管状壁
26 内筒
28 尾筒
30 隔壁
31 補強用リブ
32 長孔
34 カバープレート
40 シール部材
41 溶接位置
42 固定部
44 付勢部
46 当接部
48 スリット
49 穴
50 抽気管(圧縮空気抽気管)
60 供給管(排空気供給管)
61 ボルト
62 上流側管路
63 ボルト
64 マニホールド
66 枝管
70 隔壁
72 内周側壁
74 外周側壁
80 供給管(排空気供給管)
82 上流側管路
84 環状管
100 ガスタービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機を通過した圧縮空気を車室外の加熱部により加熱し、該加熱部からの排空気と燃料とを燃焼器に供給して燃焼し、発生した燃焼ガスをタービンに供給することで回転動力を得るガスタービンであって、
前記圧縮機を通過した圧縮空気が流入する車室内空間において前記燃焼器を収納する車室と、
前記燃焼器を覆うように前記車室内空間に設けられ、前記車室内空間を、前記車室の内壁面に接し前記圧縮機からの圧縮空気が流れる第1空間と前記燃焼器に接する第2空間とに隔てる隔壁と、
前記隔壁と前記燃焼器との間に設けられたシール部材と、
前記第1空間に連通し、該第1空間から圧縮空気を抽気して前記加熱部に導く圧縮空気抽気管と、
前記第2空間に連通し、前記加熱部を通過した排空気を前記第2空間に導く排空気供給管とを備え、
前記第2空間に導かれた前記排空気が、前記燃焼器に取り込まれて燃料の燃焼に用いられることを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記加熱器は、前記ガスタービンとともに複合発電システムを構成する燃料電池の空気極であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記シール部材が、前記燃焼器と前記隔壁との伸び差を吸収することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記シール部材は、弾性力によって前記隔壁と前記燃焼器との間の隙間をシールするスプリングクリップであることを特徴とする請求項3に記載のガスタービン。
【請求項5】
前記シール部材は、カーボンナノチューブを主成分とする粘弾性材料からなり、前記燃焼器および前記隔壁のいずれか一方に固定され、他方に対して押し付けられていることを特徴とする請求項3に記載のガスタービン。
【請求項6】
前記燃焼器は前記車室内空間に複数設けられており、
前記隔壁は各燃焼器を個別に覆い、該隔壁によって囲まれる前記第2空間は各燃焼器を収納する略円筒状の空間であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガスタービン。
【請求項7】
前記排空気供給管は、各燃焼器の周囲の前記第2空間にそれぞれ連通する複数の枝管と、該枝管と前記加熱部との間に介在して前記加熱部を通過した前記排空気を前記枝管に供給するマニホールドとを備え、
前記マニホールドは、前記車室の周りに設けられることを特徴とする請求項6に記載のガスタービン。
【請求項8】
前記燃焼器は前記車室内空間に複数設けられており、
前記隔壁は複数の前記燃焼器を一括して覆い、該隔壁によって囲まれる前記第2空間は複数の前記燃焼器を収納する略環状の空間であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガスタービン。
【請求項9】
前記隔壁を補強するリブを設けたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−207588(P2012−207588A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73895(P2011−73895)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】