説明

ガスツーリキッド水素異性化基材のヘーズ軽減およびろ過性向上のための方法

重質ガスツーリキッド(GTL)基材におけるヘーズの形成は、GTL基材へ、一種以上の特定の添加剤を添加することによって軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスツーリキッド(GTL)基材、およびヘーズ形成が低減/軽減されたGTL基材に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油基材の原料材は、一般に、種々の炭素数の炭化水素の混合物である。これには、例としておよび限定なしに、種々の炭素鎖長のパラフィン、イソパラフィン、ナフテン、芳香族等が含まれる。炭化水素基材における長い炭素鎖長のパラフィンの存在は、流動点およびくもり点を、比較的高くさせる。即ち、油中における固形のワックス形成の開始が、比較的高い温度で生じる。
【0003】
潤滑油が、それらの意図された環境(内燃エンジン、タービン、液圧作動ライン等)で効果的に機能するためには、それらは、低温で液体のままでなければならない。
【0004】
このためには、潤滑油基材の製造に用いられる炭化水素原料材は、ワックス除去プロセスに付される。これには、溶剤脱ロウ(ワックスが、油から、溶剤を用いて、低温で固体として物理的に除去される)、または接触脱ロウ(触媒の使用により、長鎖のノルマルまたは僅かに分枝された長鎖炭化水素(ワックス)が、分解/破砕によってより短鎖の炭化水素に転化される)が含まれ、それによって流動点およびくもり点(何れも、低温で測定される)が低下される。
【0005】
ワックス質炭化水素原料は、ガス状成分(COおよびHなど)から合成されるもの、特にフィッシャー−トロプシュワックスを含むが、これはまた、これらのワックス質原料を水素化脱ロウまたは水素異性化(hydroisomerization)/接触(および/または溶剤)脱ロウに付すことによって、潤滑油に転化/処理するのに適切である。それにより、長鎖ノルマル−パラフィンおよび僅かに分枝されたパラフィンは、向上された粘度指数および低減された流動およびくもり点を有する、より高度に分枝されたイソパラフィンに再配置/異性化される。ガス状成分から製造されるワックスまたはワックス材の転化/処理によって製造される潤滑油は、ガスツーリキッド(GTL)基油/基材として知られる。
【0006】
低減された低い温度の流動点およびくもり点であるにも係わらず、しかし、重質GTL基材は、低レベルのヘーズの形成を示す。これは、流動点またはくもり点を測定するのに伝統的に用いられるものより、通常高い温度で生じる。へーズの発現は、雰囲気温度で静置された際に見られる。例えば、室温(約15〜30℃、より通常には20〜25℃)である。
【0007】
ヘーズ前駆体は、流動点およびくもり点に典型的に付随するワックスより、除去することが困難なワックスのタイプであり、溶剤または接触脱ロウなどの従来のワックス除去技術には、必ずしも応答しない。前に示されるように、ヘーズは、油が低い流動点(−5℃、または更に低温など)に脱ロウされた後でさえ、室温で単に静置された際に、油中に生じることができる。ヘーズは、加熱された際に消滅するが、静置された際に、室温においてさえ、再度現れることができる。ヘーズに付随するワックスは、本質的には、主にパラフィン系ワックスであり、これには、イソ−パラフィンおよびn−パラフィンが含まれる。これは、グループIおよびグループII基材に通常付随するワックスより高分子量を有するものである。
【0008】
ヘーズの形成は、潤滑油処方に対する油の望ましさを、品質の視覚的な観点から低減する。
【0009】
顧客の観点からは、ヘーズの外観は、品質に関して否定的な意味を有し、顧客は、通常、高品質といえば、視覚的に清澄な外観を示す油を連想する。清澄の標準は、ASTM D−4176−93(1997年改訂)による。ヘーズはまた、濁度試験基準のもとで定量化されることができる。これは、最大値24を有するスケールで、比濁度単位(NTU)として表される。NTUは、濁度計によって測定される。Hach 18900型比濁度計、Hach 2100P型濁度計等である。
【0010】
ヘーズはまた、ヘーズに付随するワックスが、細かなフィルター(例えば工業的な循環油に必要とされる)の細孔を閉塞することができる限りでは、使用中に、潜在的な問題を引起すものとして考えられる。
【0011】
動粘度(100℃)約10mm/秒以上を有する水素異性化合成ワックス重質潤滑油におけるヘーズ形成に対処するために、より多くの異性化生成物をもたらすためのより高い反応器過酷度などの軽減工程は、ヘーズの程度または強度を低減するのに資するが、一般には、それ自体によっては不十分である。これはまた、所望の生成物の収率の低減をもたらす。蒸留範囲を、より低沸点の分子量に限定することは、十分であるが、1000゜F範囲の潤滑油基油の多くが、この場合には犠牲にされるであろう。
【0012】
ヘーズは、最近の技術で対処されている。
【0013】
特許文献1は、潤滑油基油原料中のヘーズを低減する。これは、油を固体吸着剤と接触させて、ヘーズ前駆体の少なくとも一部を除去することによる。固体吸着剤は、油のくもり点およびヘーズを、収率への影響を最小にして低減する。プロセスで用いられる収着剤は、一般に、高い吸着容量を有し、かついくらかの酸特性を有する表面を有する固体微粒子物質である。酸特性は、酸点密度を測定することによって決定される。例えば、吸着された塩基分子(アンモニア、n−ブチルアミン、またはピリジンなど)の赤外分光分析測定を、用いて測定される。収着剤物質には、結晶モレキュラーシーブ、アルミノ−シリケートゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカ−アルミナ、およびクレー(例えば、ボーキサイト、酸性白土、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ハロイサイト、セピオライト)が、種々の形態(例えば、粉末、微粒子、押出し成形物等)で含まれる。
【0014】
処理される油は、吸着剤と、バッチ方式または連続条件下で、固定床、移動床、スラリー床、模擬移動床、磁気安定化流動床を用いて、通常温度66℃未満、より好ましくは約10℃〜50℃で接触される。床は、上昇流、下降流、またはラジカルフローの油循環を用いる。
【0015】
特許文献2および特許文献3をまた、参照されたい。
【0016】
特許文献4には、重質潤滑油基材として有用な重質炭化水素組成物が教示される。重質炭化水素組成物は、少なくとも95wt%のパラフィン分子(少なくとも90wt%がイソ−パラフィンである)を含む。これは、KV(100℃)8mm/秒超(ASTM D−445による)、初留点少なくとも454℃および終点少なくとも538℃を有する。この出願のこの重質炭化水素組成物は、水素異性化に付されたフィッシャー−トロプシュワックスから作製される特定のGTL重質油である。この重質材は、典型的には、緩やかに水素仕上げされるか、および/または水素化脱ロウ後に脱ヘーズされて、色相、外観、および安定性が向上される。脱ヘーズは、典型的には、ヘーズをもたらすそれらの構成成分を除去する接触または吸着法のいずれかによって達成されることが述べられる。
【0017】
特許文献5には、低ヘーズ重質基油の製造プロセスが教示される。このプロセスには、初留点900゜F超、およびパラフィン含有量少なくとも80%を有する重質ワックス質原料ストリームを提供する工程、重質原料ストリームを、深カット蒸留によって重質留分および軽質留分に分離する工程、および軽質留分を水素異性化して、低ヘーズ重質基油を製造する工程が含まれる。本特許においては、「低ヘーズ」とは、くもり点10℃以下、好ましくは5℃以下、より好ましくは0℃以下を意味する。
【0018】
特許文献6には、くもり点0℃未満および動粘度(100℃)10mm/秒超を有する無ヘーズ基油の調製プロセスが教示される。これは、フィッシャー−トロプシュ合成生成物を水素異性化し、一種以上の燃料生成物および蒸留残渣を分離し、残渣を水素異性化条件下に水素異性化触媒と接触させること、および水素異性化残渣のワックスを溶剤抽出することによって残渣のワックス含有量を低減して、無ヘーズ基油を得ることによる。特許文献7をまた、参照されたい。
【0019】
特許文献8には、潤滑油基油の製造方法が教示される。この方法には、原料材を、中間細孔サイズのモレキュラーシーブ触媒により水素異性化条件下に水素異性化して、潤滑油基油の目標流動点より大きな流動点を有する異性化生成物を製造する工程、異性化生成物を、潤滑油基油の目標流動点以下の流動点を有する少なくとも軽質潤滑油基油と、潤滑油基油の目標流動点以上の流動点、および潤滑油基油の目標くもり点より大きなくもり点を有する重質留分とに分離する工程、重質留分を脱ヘーズして、潤滑油基油の目標流動点以下の流動点、および潤滑油基油の目標くもり点以下のくもり点を提供する工程が含まれる。原料材は、フィッシャー−トロプシュワックスであることができる。脱ヘーズは、比較的緩やかなプロセスとして記載され、これには、溶剤脱ロウ、収着処理(クレー処理など)、抽出、接触脱ヘーズなどが含まれる。
【0020】
特許文献9には、高VIおよび低流動点を有する高級合成潤滑油基油が教示される。これは、フィッシャー−トロプシュ合成ワックス質パラフィン原料ワックスを水素異性化し、次いで水素異性化油を脱ロウして、650〜750゜F脱ロウ油を形成することによって作製される。完全処方潤滑油は、これらの基油の適切な粘度留分から、適切な添加剤を添加することによって作製されることができる。これには、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、耐磨耗剤、流動点降下剤、VI向上剤、摩擦調整剤、解乳化剤、消泡剤、腐食防止剤、およびシール膨潤制御剤の一種以上が含まれる。
【0021】
特許文献10には、低ブルックフィールド粘度を有する潤滑油ブレンドが教示される。基油は、高度パラフィン質ワックスから誘導された基油、および石油誘導基油の混合物であり、流動点降下剤を含有する。高度パラフィン質ワックスから誘導された基油の典型は、フィッシャー−トロプシュワックスから、水素異性化を経て誘導された基油である。流動点降下剤は、技術的に知られる物質として記載され、これには、限定されることなく、無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスおよび芳香族化合物の縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、ジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、アルキルフェノールホルムアルデヒドの縮合レジン、アルキルビニルエーテル、オレフィンコポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。好ましい流動点降下剤は、ポリメタクリレートとして識別される。
【0022】
特許文献11には、アルキルエステルコポリマー(好ましくはエチレン−酢酸ビニルコポリマー)およびナフテン油のブレンドを含む添加剤が教示されて、鉱油の流動特性が向上され、ワックス形成によるフィルターのフィルター閉塞が防止される。
【0023】
特許文献12には、C12〜C20ポリアルキルメタクリレートポリマーの、鉱油のための潤滑油添加剤としての使用が教示され、潤滑油のろ過性が、鉱油基油に比較して向上される。
【0024】
特許文献13には、エネルギー効率および耐久性が向上された潤滑流体が教示される。これは、より低粘度の流体とブレンドされた高粘度流体を含み、その際最終ブレンドは、粘度指数175以上を有する。好ましくは、高粘度流体は、ポリアルファオレフィンを含み、より低粘度の流体は、合成炭化水素またはPAOを含み、更にエステル、鉱油、および/または水素処理鉱油のうち一種以上の添加を含む。添加剤はまた、存在することができ、これには、分散剤、清浄剤、摩擦調整剤、トラクション向上剤、解乳化剤、消泡剤、発色団(染料)、および/またはヘーズ防止剤のうち一種以上が含まれる。
【0025】
高粘度流体は、動粘度(100℃)40mm/秒以上3,000mm/秒以下を有し、一方、より低粘度の流体は、動粘度(100℃)40mm/秒以下1.5mm/秒以上を有する。ヘーズ防止剤は、いかようにも、識別または記載されない。
【0026】
重質GTL潤滑油基材に伴うヘーズ問題が、基材を、更なるまたはより過酷な最終処理工程に付す以外の技術によって解決されることができるならば、それは、重要な技術的進歩であろう。より過酷な溶剤または接触脱ロウまたは吸着、若しくはより過酷な水素異性化などである。そのすべては、収率の低下によって特徴付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許第6,579,441号明細書
【特許文献2】米国特許第6,468,417号明細書
【特許文献3】米国特許第6,468,418号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/033607号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6,699,385号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/063940号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2005/063941号パンフレット
【特許文献8】米国特許第6,962,651号明細書
【特許文献9】米国特許第6,080,301号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2005/0261147号明細書
【特許文献11】米国特許第6,495,495号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2006/0019841号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2003/0207775号明細書
【特許文献14】米国特許第4,211,534号明細書
【特許文献15】米国特許第5,578,019号明細書
【特許文献16】米国特許第6,270,538号明細書
【特許文献17】米国特許第5,578,091号明細書
【特許文献18】米国特許4,713,088第号明細書
【特許文献19】米国特許第5,011,505号明細書
【特許文献20】米国特許第5,716,915号明細書
【特許文献21】米国特許第5,939,365号明細書
【特許文献22】米国特許第6,090,989号明細書
【特許文献23】米国特許第6,165,949号明細書
【特許文献24】米国特許第4,568,663号明細書
【特許文献25】米国特許第4,663,305号明細書
【特許文献26】米国特許第4,542,122号明細書
【特許文献27】米国特許第4,621,072号明細書
【特許文献28】米国特許第5,545,674号明細書
【特許文献29】米国特許第2,817,693号明細書
【特許文献30】米国特許第4,900,407号明細書
【特許文献31】米国特許第4,937,399号明細書
【特許文献32】米国特許第4,975,177号明細書
【特許文献33】米国特許第4,921,594号明細書
【特許文献34】米国特許第5,200,382号明細書
【特許文献35】米国特許第5,516,740号明細書
【特許文献36】米国特許第5,182,248号明細書
【特許文献37】米国特許第5,290,426号明細書
【特許文献38】米国特許第5,580,442号明細書
【特許文献39】米国特許第5,976,351号明細書
【特許文献40】米国特許第5,935,417号明細書
【特許文献41】米国特許第5,885,438号明細書
【特許文献42】米国特許第5,965,475号明細書
【特許文献43】米国特許第6,190,532号明細書
【特許文献44】米国特許第6,375,830号明細書
【特許文献45】米国特許第6,332,974号明細書
【特許文献46】米国特許第6,103,099号明細書
【特許文献47】米国特許第6,025,305号明細書
【特許文献48】米国特許第6,096,940号明細書
【特許文献49】米国特許第6,620,312号明細書
【特許文献50】米国特許第6,676,827号明細書
【特許文献51】米国特許第6,383,366号明細書
【特許文献52】米国特許第6,475,960号明細書
【特許文献53】米国特許第5,059,299号明細書
【特許文献54】米国特許第5,977,425号明細書
【特許文献55】米国特許第5,935,416号明細書
【特許文献56】米国特許第4,923,588号明細書
【特許文献57】米国特許第5,158,671号明細書
【特許文献58】米国特許第4,897,178号明細書
【特許文献59】欧州特許第0324528(B1)号明細書
【特許文献60】欧州特許第0532116(B1)号明細書
【特許文献61】欧州特許第0532118(B1)号明細書
【特許文献62】欧州特許第0537815(B1)号明細書
【特許文献63】欧州特許第0583836(B2)号明細書
【特許文献64】欧州特許第0666894(B2)号明細書
【特許文献65】欧州特許第0668342(B1)号明細書
【特許文献66】欧州特許出願公開第0776959(A3)号明細書
【特許文献67】国際公開第97/031693(A1)号パンフレット
【特許文献69】国際公開第02/064710(A2)号パンフレット
【特許文献69】国際公開第02/064711(A1)号パンフレット
【特許文献70】国際公開第02/070627(A2)号パンフレット
【特許文献71】国際公開第02/070629(A1)号パンフレット
【特許文献72】国際公開第03/033320(A1)号パンフレット
【特許文献73】英国特許第1,429,494号明細書
【特許文献74】英国特許第1,350,257号明細書
【特許文献75】英国特許第1,440,230号明細書
【特許文献76】英国特許第1,390,359号明細書
【特許文献77】国際公開第99/45085号パンフレット
【特許文献78】国際公開第99/20720号パンフレット
【特許文献79】欧州特許第464546号明細書
【特許文献80】欧州特許第464547号明細書
【特許文献81】米国特許第4,594,172号明細書
【特許文献82】米国特許第4,943,672号明細書
【特許文献83】米国特許第6,046,940号明細書
【特許文献84】米国特許第4,906,350号明細書
【特許文献85】米国特許第5,075,269号明細書
【特許文献86】米国特許第4,941,984号明細書
【特許文献87】米国特許第2,443,264号明細書
【特許文献88】米国特許第2,471,115号明細書
【特許文献89】米国特許第2,526,497号明細書
【特許文献90】米国特許第2,591,577号明細書
【特許文献91】米国特許第3,770,854号明細書
【特許文献92】米国特許第4,501,678号明細書
【特許文献93】米国特許第4,758,362号明細書
【特許文献94】米国特許第5,693,598号明細書
【特許文献95】米国特許第5,034,141号明細書
【特許文献96】米国特許第5,034,142号明細書
【特許文献97】米国特許第4,798,684号明細書
【特許文献98】米国特許第5,084,197号明細書
【特許文献99】米国特許第3,595,791号明細書
【特許文献100】米国特許第6,034,039号明細書
【特許文献101】米国特許第3,172,892号明細書
【特許文献102】米国特許第3,2145,707号明細書
【特許文献103】米国特許第3,219,666号明細書
【特許文献104】米国特許第3,316,177号明細書
【特許文献105】米国特許第3,341,542号明細書
【特許文献106】米国特許第3,444,170号明細書
【特許文献107】米国特許第3,454,607号明細書
【特許文献108】米国特許第3,541,012号明細書
【特許文献109】米国特許第3,630,904号明細書
【特許文献110】米国特許第3,632,511号明細書
【特許文献111】米国特許第3,787,374号明細書
【特許文献112】米国特許第4,234,435号明細書
【特許文献113】米国特許第3,036,003号明細書
【特許文献114】米国特許第3,200,107号明細書
【特許文献115】米国特許第3,254,025号明細書
【特許文献116】米国特許第3,275,554号明細書
【特許文献117】米国特許第3,438,757号明細書
【特許文献118】米国特許第3,454,555号明細書
【特許文献119】米国特許第3,565,804号明細書
【特許文献120】米国特許第3,413,347号明細書
【特許文献121】米国特許第3,697,574号明細書
【特許文献122】米国特許第3,725,277号明細書
【特許文献123】米国特許第3,725,480号明細書
【特許文献124】米国特許第3,726,882号明細書
【特許文献125】米国特許第4,454,059号明細書
【特許文献126】米国特許第3,329,658号明細書
【特許文献127】米国特許第3,449,250号明細書
【特許文献128】米国特許第3,519,565号明細書
【特許文献129】米国特許第3,666,730号明細書
【特許文献130】米国特許第3,687,849号明細書
【特許文献131】米国特許第3,702,300号明細書
【特許文献132】米国特許第4,100,082号明細書
【特許文献133】米国特許第5,705,458号明細書
【特許文献134】欧州特許出願第471071号明細書
【特許文献135】米国特許第3,087,936号明細書
【特許文献136】米国特許第3,272,746号明細書
【特許文献137】米国特許第3,322,670号明細書
【特許文献138】米国特許第3,652,616号明細書
【特許文献139】米国特許第3,948,800号明細書
【特許文献140】カナダ国特許第1,094,044号明細書
【特許文献141】米国特許第4,426,305号明細書
【特許文献142】米国特許第4,767,551号明細書
【特許文献143】米国特許第3,703,536号明細書
【特許文献144】米国特許第3,704,308号明細書
【特許文献145】米国特許第3,751,365号明細書
【特許文献146】米国特許第3,756,953号明細書
【特許文献147】米国特許第3,798,165号明細書
【特許文献148】米国特許第3,803,039号明細書
【特許文献149】米国特許第3,755,433号明細書
【特許文献150】米国特許第3,822,209号明細書
【特許文献151】米国特許第1,815,022号明細書
【特許文献152】米国特許第2,015,748号明細書
【特許文献153】米国特許第2,191,498号明細書
【特許文献154】米国特許第2,387,501号明細書
【特許文献155】米国特許第2,655,479号明細書
【特許文献156】米国特許第2,666,746号明細書
【特許文献157】米国特許第2,721,877号明細書
【特許文献158】米国特許第2,721,878号明細書
【特許文献159】米国特許第3,250,715号明細書
【特許文献160】米国特許第2,719,125号明細書
【特許文献161】米国特許第2,719,126号明細書
【特許文献162】米国特許第3,087,932号明細書
【特許文献163】米国特許第5,824,627号明細書
【特許文献164】米国特許第6,232,276号明細書
【特許文献165】米国特許第6,153,564号明細書
【特許文献166】米国特許第6,143,701号明細書
【特許文献167】米国特許第6,110,878号明細書
【特許文献168】米国特許第5,837,657号明細書
【特許文献169】米国特許第6,010,987号明細書
【特許文献170】米国特許第5,906,968号明細書
【特許文献171】米国特許第6,734,150号明細書
【特許文献172】米国特許第6,730,638号明細書
【特許文献173】米国特許第6,689,725号明細書
【特許文献174】米国特許第6,569,820号明細書
【特許文献175】国際公開第99/66013号パンフレット
【特許文献176】国際公開第99/47629号パンフレット
【特許文献177】国際公開第98/26030号パンフレット
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】Klamann、「潤滑油および関連生成物(Lubricants and Related Products)」(Verlag Chemie、Deerfield Beach、FL;ISBN0−89573−177−0)
【非特許文献2】M.W.Ranney、「潤滑油添加剤(Lubricant Additives)」(Noyes Data Corporation、Parkridge、NJ、1973年)
【非特許文献3】C.V.SmallheerおよびR.K.Smith、「潤滑油添加剤(Lubricant Additives)」(Lezius−Hiles Co.、Cleveland、Ohio、1967年)
【発明を実施するための形態】
【0029】
KV(100℃)約8mm/秒以上、好ましくは約10mm/秒以上、より好ましくは約12mm/秒以上を有するガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油中のヘーズは、雰囲気温度で静置された際に油中に観察され、ヘーズは、NTU2.0超(20℃±1℃)によって約13日後に明示されるが、これは、GTL基材および/または基油に、次の(I)〜(VI)からなる群から選択される特定の添加剤を添加することによって、NTU値約2.0NTU以下(20℃±1℃)、好ましくは約1.5NTU以下(20℃±1℃)、より好ましくは約1.3NTU以下(20℃±1℃)、更により好ましくは約1NTU以下(20℃±1℃)を、少なくとも13日間、好ましくは少なくとも30日間、より好ましくは少なくとも60日間、最も好ましくは少なくとも90日間明示するレベルに低減されることができることが発見されている。
(I)ポリマーI;最も好ましくは、ポリマーIは、Infineum Corporationから入手可能なR511(登録商標)である。
【化1】

[式中、Rは、同一かまたは異なり、かつ独立して水素およびメチルから選択され、好ましくは水素であり、Rは、同一かまたは異なり、かつ独立してC〜C24アルキルおよびそれらの混合物、好ましくはC〜C18アルキルおよびそれらの混合物から選択され、但しR基の平均は、C10〜C16、好ましくはC10〜C14の範囲、最も好ましくはC12であり、Rは、C〜C18アルキルおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはCアルキルであり、nおよびmは、重量平均Mw約40,000〜約80,000、好ましくは約60,000を有するポリマーIを提供するのに十分な数である]、
または
(II)ポリマーII;次の(a)および(b)の混合物であり、(a)および(b)は、比率約60:40、好ましくは約55:45にある。好ましくは、ポリマーIIは、Laroute SAから、重質ナフサ中ポリマー約40〜60%の溶液として入手可能なCP8317(登録商標)である。
(a)
【化2】

[式中、Rは、C10〜C12アルキルおよびそれらの混合物であり、Xは、酸素または窒素であり、s+tは、合せて、重量平均分子量約800〜約1000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である]
(b)
【化3】

[式中、Rは、C12〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、Xは、酸素または窒素であり、その際Xの少なくともいくらかの%は、ニートポリマーの約0.01〜約2wt%の範囲の窒素であり、uおよびvは、合せて、重量平均分子量約7000〜約8,000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である]、
または
(III)ポリマーIと、次のA)〜F)、H)、およびJ)からなる群から選択される第二のポリマーとの4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、更により好ましくは1:1の混合物;
A)C〜C12アルファオレフィンフマレートエステルコポリマー(重量平均分子量約500〜約20,000);好ましくは、AKZO NOBEL Corporationから入手可能なケッチェンルーブ19(登録商標)である。
B)ポリ(エチルビニルエーテル)[重量平均分子量約3,000〜約5,000];
C)15−クラウン−5または(1,4,7,10,13−ペンタオキサシクロペンタデカン98%);
D)特許文献14、特許文献15および特許文献16に記載される
【化4】

[式中、Rは、HまたはCHから選択され、Rは、−OOCRまたは−COORのいずれかまたは両方であり、Rは、HまたはCOORであり、Rは、−CONHR、または一種以上のC〜Cアルキル基を含むことができる5または6員へテロ環窒素を含有する環であり、好ましくはピリジン、ピロリドン、−CONHRであり、より好ましくはCONHRであり、Rは、H、D(a)についてはC〜C18アルキル基またはD(b)についてはC〜C18アルキルフェノールであり、Oは、ゼロ〜100、好ましくは10〜100であり、PおよびQは、10〜100の範囲の整数であり、その際全窒素含有量は、D(a)については約0.3〜0.7wt%の範囲、好ましくは約0.57wt%であり、好ましくは、Infineum Corporationから入手可能なR446(登録商標)であり、およびD(b)については約1.2〜2.0wt%の範囲、好ましくは約1.75wt%であり、好ましくは、Infineum Corporationから入手可能なR434(登録商標)である。これらの物質は、特許文献17および特許文献16に記載されると考えられる]
E)ポリマーEは、好ましくは、Infineum Corporationから入手可能なV387(登録商標)である
【化5】

[式中、R12は、同一かまたは異なり、かつ独立してH、C〜Cアルキルおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはHであり、R13は、同一かまたは異なり、かつ独立してC〜C24アルキルおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはC〜C10アルキルおよびそれらの混合物であり、但しR13基の平均は、C〜Cの範囲にあり、好ましくはCであり、R14は、C〜C12アルキルおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはメチルであり、n’+m’は、重量平均分子量約15,000〜約80,000を有するポリマーを提供するのに十分な数である]
F)好ましくは、Lubrizol Corporationから入手可能な流動点降下剤であるLz7716(登録商標)、Lz7719(登録商標)、およびLz7949B(登録商標)である
【化6】

[式中、n”は、重量平均分子量約20,000〜約75,000を有するポリマーを提供するのに十分な数であり、R15は、C〜C30である]
H)
a)ビスコプレックス1−330/333(登録商標)
b)ビスコプレックス1−154(登録商標)
c)ビスコプレックス0−220(登録商標)
d)重量平均分子量約40,000〜約80,000のドデシルメタクリレート、好ましくはビスコプレックス6−054(登録商標)
としてRohmax Corporationから入手可能な特定のポリ(メタクリレート)エステルである
J)好ましくは、Uniqema CorporationからPerfad FM3336(登録商標)として入手可能である
【化7】

[式中、R16は、C10〜C20線状アルキル基、好ましくはC17線状アルキル基である]、または
(IV)ポリマーIIと、A)〜F)、およびH)からなる群から選択される第二のポリマーとの4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、更により好ましくは1:1の混合物;
A)C〜C12アルファオレフィンフマレートエステルコポリマー(重量平均分子量約500〜約20,000);好ましくは、Akzo Nobel Corporationから入手可能なケッチェンルーブ19(登録商標)である。
B)重量AMW約3,000〜約5,000のポリ(エチルビニルエーテル);
C)15−クラウン−5またはペンタオキサシクロペンタデカン;
D(b)好ましくはInfineum Corporationから入手可能なR434(登録商標)である。
【化8】

[式中、R、R、R、R、O、P、およびQは、先に定義された通りであるが、RはC〜C18アルキルフェノールであり、その際全窒素含有量は、約1.2〜2.0wt%の範囲、好ましくは約1.75wt%である]
E)ポリマーEは、好ましくは、Infineum Corporationから入手可能なV387である。
【化9】

[式中、R12は、同一かまたは異なり、かつ独立してH、C〜Cアルキルおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはHであり、R13は、同一かまたは異なり、かつ独立してC〜C24アルキルおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはC〜C10アルキルおよびそれらの混合物であり、但しR13基の平均は、C〜Cの範囲にあり、好ましくはCであり、R14は、C〜C12アルキルおよびそれらの混合物から選択され、好ましくはメチルであり、n’+m’は、重量平均分子量約15,000〜約80,000を有するポリマーを提供するのに十分な数である]
F)好ましくはLubrizol Corporationから入手可能なLz7716(登録商標)、Lz7719(登録商標)、およびLz7949B(登録商標)である。
【化10】

[式中、n”は、重量平均分子量約20,000〜約75,000を有するポリマーを提供するのに十分な数であり、R15は、C〜C30である]
H)
(a)ビスコプレックス1−330/333(登録商標)
(b)ビスコプレックス1−154(登録商標)
(c)ビスコプレックス0−220(登録商標)
(d)重量平均分子量約40,000〜約80,000のドデシルメタクリレート、好ましくはビスコプレックス6−054(登録商標)
としてRohmax Corporationから、次の(a)〜(d)として入手可能な特定のポリ[メタクリレート]エステルである。
または
(V)次の(a)および(b)の混合物であるポリマーIIIと、次のH)からなる群から選択される第二ポリマーとの4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、更により好ましくは1:1の混合物であり、(a)および(b)は、比率約60:40、好ましくは約58:42にあり、ポリマーIIIは、Clearwater Engineered Chemistryから、キシレン中ポリマー約75%の溶液として入手可能であるAlpha 5482(登録商標)である。
(a)
【化11】

[式中、R10は、C12〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、w+xは、合せて、分子量約800〜1000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である]
(b)
【化12】

[式中、R11は、C12〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、y+zは、合せて、分子量約7,000〜8,000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である]
H)Rohmax Corporationから、次のd)として入手可能な特定のポリ[メタクリレート]エステル;
d)重量平均分子量約40,000〜80,000のドデシルメタクリレート(好ましくはビスコプレックス6−054(登録商標)である)、
または
(VI)中間留出油燃料のくもり点降下剤であり、次式によって表されるポリマーK(DODIFLOW 4313A)と、次のD(b))およびH)からなる群から選択される第二のポリマーとの4:1〜1:4、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、更により好ましくは1:1の混合物;
【化13】

[式中、R17は、C10〜C16アルキルおよびそれらの混合物であり、R18は、C10〜C14線状アルキル基およびそれらの混合物であり、n”’+m”’は、20〜60の範囲である]
D(b)好ましくは、Infineum Corporationから入手可能なR434(登録商標)である。
【化14】

[式中、R、R、R、R、O、P、およびQは、先に定義された通りであるが、Rは、C〜C18アルキルフェノールであり、その際全窒素含有量は、約1.2〜2.0wt%の範囲であり、好ましくは約1.75wt%である]
H)Rohmax Corporationによる特定のメタクリレートエステル;
d)重量平均分子量約40,000〜80,000のドデシルメタクリレート(ビスコプレックス6−054(登録商標)である)
【0030】
ポリマーIおよびポリマーEとして上記に識別される添加剤は、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21に記載されると考えられる。
【0031】
GTL基材および/または基油に添加される添加剤の量は、典型的には、活性成分を基準として、約50〜5000ppm、好ましくは50〜2,500ppm、より好ましくは100〜2000ppm、更により好ましくは200〜1000ppm、最も好ましくは約250〜1000ppmの範囲にある。独立して用いられる場合は、ポリマーIまたはIIは、約250〜1000ppmの範囲の量で用いられ、ポリマーIIIの好ましい量は、活性成分約250ppmである。GTL基材および/または基油は、それ自体、列記された添加剤を用いて処理されることができるか、または一種以上の共基材(鉱油および/または天然油および/または合成油など)との混合後に、処理されることができる。添加される添加剤の量(vppm)は、しかし、これらの任意の油の混合物中に存在するGTL基材および/または基油の量に基づく。共基材には、天然ワックスまたはワックス質材の水素化脱ロウまたは水素異性化/接触(および/または溶剤)脱ロウから誘導される油が含まれるであろう。スラックワックス、天然ワックス、ワックス質ガス油、ワックス質燃料水素化分解装置ボトム、ワックス質ラフィネート、ワックス質水素化分解油、熱分解油、若しくは他の鉱物、鉱油、または非石油誘導のワックス質物質(石炭液化またはシェール油から誘導されるワックス質物質など)などである。
【0032】
本発明はまた、雰囲気温度で静置された後にヘーズを形成する傾向が低減された潤滑油基材に関する。これは、動粘度(100℃)約8mm/秒以上、好ましくは約10mm/秒以上、より好ましくは約12mm/秒以上、流動点−15℃以下、くもり点+5℃以下、好ましくは0℃以下、NTU値(20℃±1℃)2以下、好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.3以下、更により好ましくは約1.0以下(雰囲気温度で、少なくとも13日間、好ましくは少なくとも30日間、より好ましくは少なくとも60日間、更により好ましくは少なくとも90日間静置した後)を有する。基材は、前述される動粘度(100℃)、および活性成分を基準として、上述される添加剤または添加剤混合物50〜5000ppm、より好ましくは列記される添加剤または混合物50〜2500ppm、より好ましくは列記される添加剤300〜2000ppm、更により好ましくは200〜1000ppm、最も好ましくは250〜1000ppmを有するGTL重質基材を含む。処方IまたはIIまたはIIIの添加剤が独立して用いられる場合には、それは、理想的には、約250ppmの量で存在する。
【0033】
本発明において対処されるヘーズ形成ワックス質分子は、重質GTL基材および/または基油中に観察されるものであり、ヘーズは、油の伝統的に測定されるくもり点超の温度で目視される。典型的なくもり点は、ゼロ〜−5℃である。
【0034】
本発明において対処されるヘーズは、室温または室温近くで現れるものである。ヘーズは、油中のワックス質分子の凝集を示し、これはまた、小さな開口(作動流体を用いる装置で用いられるフィルターなど)を通って迅速にろ過されるべき基材または基油の能力を阻害し得る。
【0035】
このヘーズは、通常、直ちには明らかでないが、油が雰囲気温度で静置されている間、時間の経過と共に現れる。このヘーズに付随するワックス質分子は、非常に低濃度(およそ25〜200ppm)で存在すると推測される。これは、伝統的に測定されるくもり点に付随するワックス質分子の濃度が、約1000ppm以上であり、一方油の流動点に付随するワックス質物質の量が、約1wt%(約10,000ppm)であるのに対する。
【0036】
更に、ヘーズに付随するワックス質物質の量が、実質的に、くもり点および流動点に付随する量より低いだけでなく、このワックス質物質自体の性質が異なる。
【0037】
流動点およびくもり点は、伝統的には、主にn−パラフィンまたは僅かに分枝されたイソ−パラフィンからなるワックス質物質に付随する。本発明で対処されるヘーズは、しかし、実質的に、分枝したイソ−パラフィンであると考えられ、n−パラフィンと構造的に異なるだけでなく、n−パラフィンより実質的に重質である。ヘーズに付随するイソ−パラフィンは、流動点およびくもり点に付随するn−パラフィン/イソ−パラフィンが、炭素20〜40個を有するのに対し、炭素60〜80個を有すると考えられる。
【0038】
ワックスのタイプおよびワックスの炭素数が異なることから、当業者は、伝統的な流動点降下剤および/またはくもり点降下剤が、雰囲気温度のヘーズを低減するのに効果的でないと予想しているであろうと考えられる。本発明で最も有用なくもり点降下剤は、Infineum CorporationによるR511、およびLaroute S.A.によるCP 8327である。これは、約320°F〜約680°Fの範囲の沸点を有するディーゼル燃料において有効に作用すると知られる。当業者は、ディーゼル燃料のくもり点降下剤が、KV(100℃)少なくとも約8mm/秒以上を有する重質GTL基油(即ち、約950°F〜約1400°Fの沸点範囲を有する油)において有効に作用しないと予想しているであろう。
【0039】
従って、ある種の高分子物質および高分子物質の混合物のみが、重質GTL基油における雰囲気温度のヘーズを効果的に軽減するのに用いられることができることが発見されている。
【0040】
本発明においては、雰囲気温度のヘーズの効果的な軽減は、清澄な外観を少なくとも13日間、好ましくは30日間以上、より好ましくは60日間以上、更により好ましくは90日間以上、およびNTU値(20℃±1℃)約2以下、好ましくは約1.0以下を示す処理油によって明示される。
【0041】
GTL基材および/または基油における雰囲気温度のヘーズの測定は、工業的に既知のいかなる典型的な濁度計(Hach Co.の2100P型濁度計、またはHach 18900型比濁度計など)をも用いる濁度試験を用いることによって、確認されることができる。濁度計は、油試料を照射する光源、および試料中の粒子による光散乱(角度90°)の強度を測定する光電管からなる比濁計である。透過光検出器はまた、試料を通過する光を感受する。濁度計の信号出力(比濁分析の濁度装置の単位、またはNTU)は、二つの検出器の比率である。計器は、0〜10,000NTUの幅広い範囲に亘って濁度を測定することができる。測定器は、US−EPA法180.1に規定されるUS−EPA設計規準を満たさなければならない。この明細書および請求項の目的に対しては、次の相関関係が用いられる。即ち、以下の通りである。
【0042】
【表1】

【0043】
雰囲気温度のヘーズが、本方法によって軽減される基材および/または基油は、ガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油である。これは、くもり点(ASTM D−5773による)約+5℃以下、好ましくは約0℃以下、より好ましくは約−5℃以下、動粘度(ASTM D−445による)(100℃)約8mm/秒以上、好ましくは約10mm/秒以上、より好ましくは約12mm/秒以上、および典型的な沸点範囲(5%留出点(T)900°F超、およびT99留出点少なくとも1150°F、好ましくは>1250°Fを有する)を有する。
【0044】
上述したように、本発明は、ガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油の雰囲気温度のヘーズを軽減するための方法に関する。
【0045】
本明細書で用いられるように、次の用語は、表示の意味を有する。即ち、
a)「ワックス」−高流動点を有し、典型的には室温(即ち、温度約15℃〜25℃)で固体として存在し、および主にパラフィン質物質からなる炭化水素質物質である。
b)「パラフィン質」物質:アルカンなどのいかなる飽和炭化水素でもある。パラフィン質物質には、線状アルカン、分枝アルカン(イソパラフィン)、シクロアルカン(シクロパラフィン;単環および/または多環)、および分枝シクロアルカンが含まれてもよい。
c)「水素処理」:原料材が、高温で圧力下に、通例は触媒の存在下に水素と加熱されて、あまり望ましくない成分が、除去および/または転化され、品質向上された生成物が製造される精製プロセスである。
d)「水素化」:硫黄および/または窒素含有炭化水素を、低減された硫黄および/または窒素含有量を有する炭化水素生成物に転化する接触水素添加プロセスである。これは、(それぞれ)、硫化水素および/またはアンモニアを副生物として生成する。同様に、酸素含有炭化水素はまた、炭化水素および水へ還元されることができる。
e)「接触脱ロウ」:ノルマルパラフィン(ワックス)および/またはワックス質炭化水素(例えば、若干分枝されたイソパラフィン)が、分解/破断によってより低分子量の種に転化されて、最終油生成物(基材または基油)が、所望の生成物流動点を有することが確実にされる従来の接触プロセスである。
f)「溶剤脱ロウ」:ワックスが油から物理的に除去されるプロセスである。これは、冷却溶媒または自己冷却溶媒を用いて、ワックスが凝固され、これが、次いで油から除去されることができることによる。
g)「水素異性化」(または異性化):ノルマルパラフィン(ワックス)および/または若干分枝されたイソパラフィンが、再配列/異性化によって、分枝またはより分枝されたイソパラフィンに転化される接触プロセスである(これらのプロセスからの異性化油は、恐らくは、引続くワックス除去工程を必要として、最終の油生成物(基材または基油)が所望の生成物流動点を有することが確実にされる)。
h)「水素化分解」:水素添加が、炭化水素の分解/破断を伴う接触プロセスである。例えば、より重質の炭化水素が、より軽質の炭化水素に転化されるか、または芳香族および/またはシクロパラフィン(ナフテン)が、非環式分枝パラフィンに転化される。
i)「水素化脱ロウ」:(例えば、ChevronのISODEWAXING(登録商標)、またはExxon Mobil corporationのMSDW(商標)である)。単一工程で、または単一の触媒または触媒混合物を用いることによって、n−パラフィンおよび若干分枝されたイソパラフィンをより高度に分枝されたイソパラフィンに異性化/再配列することによって、ワックスの転化を行う非常に選択的なプロセスである。得られる生成物は、所望の生成物流動点を満足するのに、別個の従来の接触または溶剤脱ロウ工程を必要としない。
j)用語「水素異性化油」、「異性化油」、「接触脱ロウ油」、および「水素化脱ロウ油」は、特段の指示がない限り、それぞれのプロセスによって製造された生成物をいう。
k)「基材」は、単一の原料材源から確保され、単一の処理方式に付された単一の油であり、特定の規格が満足される。
l)「基油」は、一種以上の基材を含む。
【0046】
従って、用語「水素異性化/キャット脱ロウ」は、ノルマルパラフィンおよび/またはワックス質炭化水素を、再配列/異性化によって、より分枝されたイソパラフィンに転化し、引続いて(1)接触脱ロウして、異性化油中に存在するいかなる残留n−パラフィンまたは若干分枝されたイソパラフィンの量が低減されるか、または(2)水素化脱ロウされて、異性化油の更なる異性化および非常に選択的な接触脱ロウが行われ、生成物の流動点が低減される相乗効果を有する接触プロセスをいうのに用いられる。用語「(および/または溶剤)」が詳説に含まれる場合には、記載されるプロセスは、水素異性化、引続く溶剤脱ロウ(または溶剤脱ロウおよび接触脱ロウの組合せ)を含む。これは、ワックスを、水素異性化油から物理的に分離し、そのために生成物の流動点が低減される。
【0047】
GTL物質は、一種以上の合成、結合、変換、再配列、および/または劣化/分解プロセスを経て、ガス状炭素含有化合物、水素含有化合物、および/または原料材としての成分から誘導される物質である。水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレン、およびブチンなどである。GTL基材および/または基油は、それ自体がより単純なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物、および/または原料材としての成分から誘導される炭化水素(例えばワックス質合成炭化水素)から一般に誘導される潤滑粘度のGTL物質である。GTL基材および/または基油には、合成GTL物質から、例えば蒸留などによって分離/分留され、引続いて低減された/低流動点潤滑油を製造するのに、最終ワックス処理工程(周知の接触脱ロウプロセス、または溶剤脱ロウプロセスのいずれかまたは両方である)に付された、潤滑油沸点範囲で沸騰する油;合成ワックス異性化油(例えば、水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされた合成ワックス質炭化水素を含む);水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたフィッシャー−トロプシュ(F−T)物質(即ち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス、および可能な類似の含酸素化合物)が含まれる。好ましくは、水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−T炭化水素、または水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−Tワックス、水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされた合成ワックス、またはそれらの混合物である。
【0048】
GTL物質から誘導されるGTL基材および/または基油、特に水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−T物質誘導基材および/または基油、好ましくは水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−Tワックス誘導基材および/または基油は、動粘度(100℃)約2mm/秒〜約50mm/秒、好ましくは約3mm/秒〜約50mm/秒、より好ましくは約3.5mm/秒〜約30mm/秒を有するものとして典型的に特徴付けられる。これは、F−Tワックスの水素化脱ロウ、または水素異性化/接触(または溶剤)脱ロウによって誘導されるGTL基材(動粘度(100℃)約4mm/秒および粘度指数約130以上を有する)により例示される。好ましくは、ワックス処理プロセスは、単一の水素化脱ロウ触媒を用いるプロセスにおいて行われる水素化脱ロウである。本明細書における動粘度の引用は、ASTM法D445によってなされる測定値をいう。本発明においては、特定の高分子添加剤を用いることによって軽減される雰囲気温度のヘーズを有する素材であるGTL基材および/または基油は、KV(100℃)約8mm/秒以上、好ましくは約10mm/秒以上、より好ましくは約12mm/秒以上を有するGTL基材および/または基油である。
【0049】
GTL物質から誘導されるGTL基材および/または基油、特に水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−T物質誘導基材および/または基油、好ましくは水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−Tワックス誘導基材および/または基油は、本発明の基材および/または基油の成分として用いられることができるが、これは、更に、流動点約−5℃以下、好ましくは約−10℃以下、より好ましくは約−15℃以下、更により好ましくは約−20℃以下を有するものとして典型的に特徴付けられる。いくつかの条件下では、好都合な流動点約−25℃以下を有してもよく、有用な流動点は、約−30℃〜約−40℃以下である。必要に応じて、異なる脱ロウ工程が、所望の流動点を達成するのに行われてもよい。本明細書における流動点の引用は、ASTM D97、および類似の自動型によってなされる測定値をいう。
【0050】
GTL物質から誘導されるGTL基材および/または基油、特に水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−T物質誘導基材および/または基油、好ましくは水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−Tワックス誘導基材および/または基油は、本発明で用いられることができるが、これはまた、粘度指数80以上、好ましくは100以上、より好ましくは120以上を有するものとして典型的に特徴付けられる。加えて、ある特定の場合においては、これらの基材および/または基油の粘度指数は、好ましくは130以上、より好ましくは135以上、更により好ましくは140以上であってもよい。例えば、GTL物質、好ましくはF−T物質、特にはF−Tワックスから誘導されるGTL基材および/または基油は、一般に、粘度指数130以上を有する。本明細書における粘度指数の引用は、ASTM法D2270をいう。
【0051】
加えて、GTL基材および/または基油は、典型的には、高度にパラフィン質(飽和分>90%)であり、モノシクロパラフィンおよびマルチシクロパラフィンの混合物を、非環式イソパラフィンとの組合せで含んでもよい。これらの組合せにおけるナフテン質(即ち、シクロパラフィン)含有量の比率は、用いられる触媒および温度で異なる。更に、GTL基材および/または基油は、典型的には、非常に低い硫黄および窒素含有量を有し、一般に、これらの元素のそれぞれについて、約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満を含む。F−T物質、特にF−Tワックスの水素異性化/異性化脱ロウによって得られるGTL基材および/または基油の硫黄および窒素含有量は、実質的にはゼロである。
【0052】
好ましい実施形態においては、GTL基材および/または基油は、主に非環式イソパラフィン、およびほんの少量のシクロパラフィンからなるパラフィン質物質を含む。これらのGTL基材および/または基油は、典型的には、非環式イソパラフィン60wt%超、好ましくは非環式イソパラフィン80wt%超、より好ましくは非環式イソパラフィン85wt%超、最も好ましくは非環式イソパラフィン90wt%超からなるパラフィン質物質を含む。
【0053】
GTL基材および/または基油、水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(および/または溶剤)脱ロウされたF−T物質誘導基材(ワックス異性化油または水素化脱ロウ油など)の有用な組成物は、例えば、特許文献9、特許文献22および特許文献23に列挙される。
【0054】
本発明書および請求項で用いられる用語「GTL基材および/または基油」は、製造プロセスにおいて回収されるGTL基材および/または基油の個々の留分、二種以上のGTL基材および/または基油留分の混合物、並びに一種、二種、またはそれ以上の低粘度GTL基材および/または基油留分と、一種、二種、またはそれ以上のより高粘度GTL基材および/または基油留分との混合物(ダンベルブレンドをもたらす)を包含するものとして理解されるものである。その際、ブレンドは、前記される範囲(少なくとも約8mm/秒以上)内の動粘度を示す。
【0055】
好ましい実施形態においては、GTL物質は、これからGTL基材および/または基油が誘導されるが、これは、F−T物質(即ち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス)である。スラリーF−T合成プロセスは、有利には、原料を、COおよび水素から合成するのに用いられてもよい。特に、触媒コバルト成分を含むF−T触媒を用いて、より望ましいより高分子量のパラフィンを製造するための高いシュルツ−フローリー動力学アルファ値がもたらされるものである。このプロセスはまた、当業者に周知である。
【0056】
F−T合成プロセスにおいては、HおよびCOの混合物を含む合成ガスが、炭化水素、好ましくは液体炭化水素に接触転化される。水素/一酸化炭素のモル比は、広く、約0.5〜4の範囲であってもよい。しかし、これは、より典型的には、約0.7〜2.75、好ましくは約0.7〜2.5の範囲内にある。周知のように、F−T合成プロセスには、触媒が、固定床、流動床の形態にあるか、または触媒粒子のスラリーとして炭化水素スラリー液体中にあるプロセスが含まれる。F−T合成反応の化学量論モル比は、2.0である。しかし、化学量論比以外を用いることについては、当業者が知るように、多くの理由がある。コバルトスラリー炭化水素合成プロセスにおいては、H/COの原料モル比は、典型的には、約2.1/1である。HおよびCOの混合物を含む合成ガスは、スラリーの底部に上方へバブリングされて、微粒子F−T合成触媒の存在下にスラリー液体中で、炭化水素を形成するのに効果的な条件で反応する。その一部は、反応条件で液体であり、かつそれは、炭化水素スラリー液体を含む。合成された炭化水素液体は、触媒粒子から、遠心分離などの他の分離手段が用いられることができるものの、ろ過などの手段によってろ過液として分離される。合成された炭化水素のいくらかは、炭化水素合成反応器の頂部を、蒸気として、未反応合成ガスおよび他のガス状反応生成物と共に出る。これらのオーバーヘッドの炭化水素蒸気のいくらかは、典型的には、液体へ凝縮され、炭化水素液体のろ過液と組み合わされる。従って、ろ過液の初留点は、凝縮された炭化水素蒸気のいくらかが、ろ過液と組み合わされているかどうかによって異なってもよい。スラリー炭化水素合成プロセスの条件は、ある程度、触媒および所望の生成物によって異なる。主にC5+パラフィン(例えば、C5+〜C200)、好ましくはC10+パラフィンを含む炭化水素を、担持コバルト成分を含む触媒を用いるスラリー炭化水素合成プロセスで形成するのに効果的な典型的な条件には、例えば、温度約320〜850°F、圧力80〜600psi、およびガス空間速度100〜40,000V/時/V((ガス状COおよびH混合物の標準体積(0℃、1気圧)/時間/触媒の体積)として表わされる)が含まれる。用語「C5+」は、本明細書では、炭素数4個超を有する炭化水素をいうのに用いられるが、炭素数5個を有する物質が存在しなければならないというわけではない。同様に、炭素数に関して示される他の範囲は、炭素数範囲の限界値を有する炭化水素が存在しなければならないこと、または示される範囲の全ての炭素数が存在することをいうわけではない。炭化水素合成反応は、限定された水性ガスシフト反応が生じるか、またはそれが全く生じない条件下で行われることが好ましい。より好ましくは、水性ガスシフト反応は、炭化水素合成中に全く生じない。また、アルファ値少なくとも0.85、好ましくは少なくとも0.9以上、より好ましくは少なくとも0.92を達成する条件下で反応を行い、そのためにより望ましいより高分子量の炭化水素がより多く合成されることが好ましい。これは、触媒コバルト成分を含む触媒を用いるスラリープロセスにおいて達成されている。当業者には、アルファ値が、シュルツ−フローリー動力学アルファ値を意味することが知られる。適切なF−T反応タイプの触媒は、例えば、一種以上の第VIII族触媒金属(Fe、Ni、Co、Ru、およびReなど)を含むものの、触媒が、コバルト触媒成分を含むことが好ましい。一実施形態においては、触媒は、触媒有効量のCo、並びにRe、Ru、Fe、Ni、Th、Zr、Hf、U、Mg、およびLaの一種以上を、適切な無機担体物質、好ましくは一種以上の耐火性金属酸化物を含むものの上に担持して含む。Co含有触媒の好ましい担体は、特には、チタニアを含む。有用な触媒およびその調製は、知られており、例示であるが、限定しない例は、例えば、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27および特許文献28に見出されてもよい。
【0057】
上記に示されるように、基材および/または基油が誘導されるワックス質原料は、ワックスまたはワックス質GTL物質、好ましくはF−T物質(F−Tワックスと呼ばれる)である。F−Tワックスは、好ましくは、初留点650〜750°Fを有し、好ましくは、終点少なくとも1050°Fまで連続的に沸騰する。よりナローカットのワックス質原料はまた、水素異性化において用いられてもよい。n−パラフィンワックス質原料の一部は、より低沸点のイソパラフィン質物質へ転化される。従って、潤滑油範囲で沸騰するイソパラフィン含有異性化油を得るためには、十分な重質n−パラフィン物質が存在しなければならない。接触脱ロウがまた、異性化/異性化脱ロウ後に行われる場合には、異性化油/異性化脱ロウ油のいくらかはまた、従来の接触脱ロウ中に、より低沸点の物質へ水素化分解されるであろう。従って、ワックス質原料の終点は、1050°F超(1050°F+)であることが好ましい。
【0058】
沸点範囲が、本明細書で引用される場合には、それは、留分を分離するのに用いられるより低いおよび/またはより高い蒸留温度を定義する。特段に述べられない場合には(例えば、留分が、連続的に沸騰するか、または全範囲を構成することを明記することによる)、沸点範囲の指定は、特定限界のいかなる物質も存在しなければならないことを必要とせず、むしろそれは、その範囲外で沸騰する物質を排除する。
【0059】
ワックス質原料は、好ましくは、炭化水素合成プロセスによって形成される全650〜750°F+留分を含む。これは、初期カットポイント650°F〜750°F(従業者によって決定される)、および終点好ましくは1050°F超を有する。これは、合成の従業者によって用いられる触媒およびプロセス変数によって決定される。これらの留分は、本明細書においては、「650〜750°F+留分」として引用される。対照的に、「650〜750°F留分」は、不特定の初期カットポイント、および650°F〜750°Fのどこかの終点を有する留分をいう。ワックス質原料は、全留分として、または蒸留または他の分離技術によって調製される全留分の部分集合として処理されてもよい。ワックス質原料はまた、典型的には、パラフィン質炭化水素90wt%超、一般には95wt%超、好ましくは98wt%超を含み、その殆どはノルマルパラフィンである。それは、極く僅かな量の硫黄および窒素化合物(例えば、それぞれ1wppm未満)を有し、酸素2,000wppm未満、好ましくは1,000wppm未満、より好ましくは500wppm未満を、含酸素化合物の形態で有する。これらの特性を有し、本発明のプロセスで有用なワックス質原料は、先に示されるように、触媒コバルト成分を有する触媒を用いるスラリーF−Tプロセスを用いて作製されている。
【0060】
潤滑油基材を、ワックス質基材から作製するプロセスは、異性化プロセスとして特徴付けられてもよい。F−Tワックスが用いられる場合には、予備的な水素化脱窒素および水素化脱硫処理は、不要である。何故なら、上記に示されるように、これらのワックスは、ほんの痕跡量(約10ppm未満、またはより典型的には約5ppm未満〜ゼロ)の硫黄または窒素化合物の含有量を有するからである。しかし、F−Tワックスを供されるいくつかの水素化脱ロウ触媒は、含酸素化合物の除去のための予備水素化に利してもよく、一方他は、含酸素化合物処理に利してもよい。水素異性化または水素化脱ロウプロセスは、触媒の組合せ、または単一の触媒により行われてもよい。転化温度は、圧力約500〜20,000kPaで、約150℃〜約500℃の範囲である。このプロセスは、水素の存在下に運転されてもよく、水素分圧は約600〜6000kPaの範囲である。水素/炭化水素原料材の比(水素循環速度)は、典型的には、約10〜3500n.l.l−1(56〜19,660SCF/bbl)の範囲であり、原料材の空間速度は、典型的には、約0.1〜20LHSV、好ましくは0.1〜10LHSVの範囲である。
【0061】
いかなる必要なまたは所望の水素処理工程にも続いて、基材をこれらのワックス質原料から製造するのに用いられる水素処理は、非晶質水素化分解/水素異性化触媒(潤滑油水素化分解(LHDC)触媒など、例えばCo、Mo、Ni、W、Mo等を酸化物担体(例えば、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ)上に含む触媒)、または結晶質水素化分解/水素異性化触媒(好ましくはゼオライト質触媒)を用いてもよい。
【0062】
GTL物質および/またはワックス質物質を、基材または基油へ、水素化分解、水素化脱ロウ、または水素異性化するための他の異性化触媒およびプロセスは、例えば、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、特許文献33、特許文献34、特許文献35、特許文献36、特許文献37、特許文献38、特許文献39、特許文献40、特許文献41、特許文献42、特許文献43、特許文献44、特許文献45、特許文献46、特許文献47、特許文献9、特許文献48、特許文献49、特許文献50、特許文献51、特許文献52、特許文献53、特許文献54、特許文献55、特許文献56、特許文献57および特許文献58、特許文献59、特許文献60、特許文献61、特許文献62、特許文献63、特許文献64、特許文献65、特許文献66、特許文献67、特許文献68、特許文献69、特許文献70、特許文献71、特許文献72、同様に特許文献73、特許文献74、特許文献75、特許文献76、特許文献77および特許文献78に記載される。特に好ましいプロセスは、特許文献79および特許文献80に記載される。F−Tワックス原料を用いるプロセスは、特許文献81、特許文献82、特許文献83、特許文献53、特許文献46、特許文献45および特許文献44に記載される。
【0063】
本明細書に開示されるn−パラフィンワックス質原料材を転化して、イソパラフィン質炭化水素基油を形成するのに有用な炭化水素転化触媒は、ゼオライト触媒である。ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−12、ZSM−38、ZSM−48、オフレタイト、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトシータ、およびゼオライトアルファなどである。これは、特許文献84に開示される。これらの触媒は、第VIII族金属、特にパラジウムまたは白金と組み合わせて用いられる。第VIII族金属は、従来の技術(イオン交換など)によってゼオライト触媒に組込まれてもよい。
【0064】
一実施形態においては、ワックス質原料材の転化は、Pt/ゼオライトベータおよびPt/ZSM−23触媒の組合せにより、水素の存在下に行われてもよい。他の実施形態においては、潤滑油基材を製造するプロセスは、単一の触媒(Pt/ZSM−35など)による水素異性化および脱ロウを含む。更に他の実施形態においては、ワックス質原料は、第VIII族金属充填ZSM−48、好ましくは第VIII族貴金属充填ZSM−48、より好ましくはPt/ZSM−48を含む触媒に、一段または二段のいずれかで供給されることができる。いかなる場合においても、有用な炭化水素基油生成物が得られてもよい。触媒ZSM−48は、特許文献85に記載される。ワックス質原料材の水素異性化において、第VIII族金属充填ZSM−48系の触媒(例えば、白金/ZSM−48)を用いることにより、いかなる引続く、異なる脱ロウ工程の必要性もなくされる。
【0065】
脱ロウ工程は、必要な場合には、溶剤脱ロウ、接触脱ロウ、または水素化脱ロウプロセスの一種以上を用いて達成されてもよい。全水素異性化油、または650〜750°F+留分のいずれかは、それが、脱ロウ前に、より高沸点の物質から分離されていない場合には、存在する650〜750°F−物質を意図的に用いることによって、脱ロウされてもよい。溶剤脱ロウにおいては、水素異性化油は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、MEK/MIBKの混合物、またはMEK/トルエンの混合物等などの冷却溶剤と接触され、更に冷却されて、より高流動点の物質が、ワックス質固体として析出されてもよい。これは、次いで、ラフィネートである溶剤含有潤滑油留分から分離される。ラフィネートは、典型的には、スクレープドサーフェイスチラーで更に冷却されて、より多くのワックス固体が除去される。プロパンなどの低分子量炭化水素を用いる自己冷却脱ロウもまた用いられることができる。その際、水素異性化油は、例えば液体プロパンと混合され、その少なくとも一部が、フラッシングされて除かれて、水素異性化油が冷却され、ワックスが析出される。ワックスは、ろ過、膜分離、または遠心分離によって、ラフィネートから分離される。溶剤は、次いで、ラフィネートからストリッピングされて除かれる。これは、次いで分留されて、本発明で有用な好ましい基材が製造される。接触脱ロウもまた周知であり、その際、水素異性化油は、適切な脱ロウ触媒の存在下に、水素異性化油の流動点を低下するのに効果的な条件で、水素と反応される。接触脱ロウはまた、水素異性化油の一部を、沸点範囲(例えば650〜750°F−)のより低沸点の物質へ転化する。これは、より重質の650〜750°F+基材留分から分離され、基材留分は、二種以上の基材に分留される。より低沸点の物質の分離は、650〜750°F+物質を、所望の基材に分留する前か、またはその際のいずれかで達成されてもよい。
【0066】
水素異性化油の流動点を低減するであろういかなる脱ロウ触媒も、好ましくは潤滑油基材を水素異性化油から大きな収率でもたらすものが、用いられてもよい。これらには、形状選択性モレキュラーシーブが含まれる。これは、少なくとも一種の触媒金属成分と組み合わされる場合には、石油留分を脱ロウするのに有用なものとして示されている。これには、例えば、フェリエライト、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−22(これはまた、シータワンまたはTONとしても知られる)、およびシリコアルミノホスフェート(SAPOとして知られる)が含まれる。脱ロウは、固定、流動、またはスラリー床の触媒で達成されてもよい。典型的な脱ロウ条件には、温度約400〜600°F、圧力500〜900psig、H処理速度1500〜3500SCF/B(流通反応器の場合)、およびLHSV0.1〜10、好ましくは0.2〜2.0が含まれる。脱ロウは、典型的には、初留点範囲650〜750°Fを有する水素異性化油の40wt%以下、好ましくは30wt%以下を、その初留点未満で沸騰する物質へ転化するように行われる。
【0067】
GTL基材および/または基油、好ましくは水素化脱ロウされるか、または水素異性化/キャット(または溶剤)脱ロウされたF−Tワックス誘導基材および/または基油は、従来のAPIグループIIおよびグループIII基材および/または基油に勝る有利な動粘度の利点を有する。これは、そのために、本発明により、非常に好都合に用いられてもよい。これらのGTL基材および/または基油は、実質的により高い動粘度(100℃)約20〜50mm/秒未満を有することができ、一方比較すると、市販グループII基油は、動粘度(100℃)約15mm/秒未満を有することができ、市販グループIII基油は、動粘度(100℃)約10mm/秒未満を有することができる。より高い動粘度範囲のGTL基材および/または基油は、より限定された動粘度範囲のグループIIおよびグループIII基材および/または基油と比べて、本発明との組合せで、潤滑油組成物を処方する際に更なる有利な利点を提供することができる。
【0068】
本発明においては、一種以上の水素化脱ロウされるか、または水素異性化/接触(または溶剤)脱ロウされた合成ワックス基材および/または基油、好ましくはGTL基材および/または基油は、本発明のプロセスによって脱ヘーズされているが、これは、いかなる処方油組成物ものための基油を形成する基油の全て、またはその一部を構成することができる。GTL物質から誘導されるこれらの基材および/または基油の一種以上は、本発明に従って、または更に、鉱油起源、天然油の他の基材および/または基油との、および/または合成基油との組合せで、同様に脱ヘーズに用いられることができる。
【0069】
GTL物質および/またはワックス質原料から誘導される好ましい基材および/または基油は、主にパラフィン質組成物を有するものとして特徴付けられ、更に、高い飽和分レベル、低〜皆無の硫黄、低〜皆無の窒素、低〜皆無の芳香族を有するものとして特徴付けられる。これは、本質的に色相が無色透明である。
【0070】
好ましいGTL液体炭化水素組成物は、パラフィン質炭化水素成分を含むものである。その際、メチル水素の%によって測定される分枝の程度(BI)、および末端基または分枝から炭素4個以上離れた反復メチレン炭素の%によって測定される分枝近接(CH≧4)は、(a)BI−0.5(CH≧4)>15、および(b)BI+0.85(CH≧4)<45である(前記液体炭化水素組成物について、全体として測定される)。
【0071】
好ましいGTL基材および/または基油は、更に、必要に応じて、芳香族炭化水素0.1wt%未満、窒素含有化合物20wppm未満、硫黄含有化合物20wppm未満、流動点−18℃未満、好ましくは−30℃未満、好ましいBI≧25.4および(CH≧4)≦22.5を有するものとして特徴付けられることができる。それらは、名目沸点370℃を有し、平均してそれらは、(ヘキシルまたはそれより長い分枝10個未満/炭素原子100個)を有し、平均して(メチル分枝16個超/炭素原子100個)を有する。それらはまた、絶対粘度(CCS(−40℃)によって測定される)、および動粘度(100℃で測定される)の組合せによって特徴付けられることができる。これは、式:DV(−40℃)<2900(KV100℃)−7000によって表される。
【0072】
好ましいGTL基材および/または基油はまた、潤滑油基油が、分枝パラフィンの混合物少なくとも90%を含むという点で特徴付けられる分枝パラフィンの混合物を含むものとして特徴付けられる。その際、前記分枝パラフィンは、炭素鎖長約C20〜約C40、分子量約280〜約562、沸点範囲約650°F〜約1050°Fを有するパラフィンであり、しかも前記分枝パラフィンは、アルキル分枝4個未満を含み、前記分枝パラフィンの自由炭素指数は、少なくとも約3である。
【0073】
上記においては、分枝指数(BI)、分枝近接(CH≧4)、および自由炭素指数(FCI)は、次のように決定される。
【0074】
分枝指数
359.88MHz 1H溶液のNMRスペクトルは、CDCl中10%溶液を用いて、Bruker360MHz AMX分光計で得られる。TMSは、内部化学シフト基準である。CDCl溶剤は、7.28に位置するピークを示す。全スペクトルは、90゜パルス(10.9μ秒)、パルス遅延時間30秒(最長の水素スピン格子緩和時間(T)の少なくとも5倍である)、および良好なS/N比を確保するための120スキャンを用いる定量条件下で得られる。
【0075】
H原子タイプは、次の領域に従って定義される。即ち、
9.2〜6.2ppm(芳香族環の水素)
6.2〜4.0ppm(オレフィン質炭素原子の水素)
4.0〜2.1ppm(芳香族環のα位におけるベンジル水素)
2.1〜1.4ppm(パラフィン質CHのメチン水素)
1.4〜1.05ppm(パラフィン質CHのメチレン水素)
1.05〜0.5ppm(パラフィン質CHのメチル水素)
である。
【0076】
分枝指数(BI)は、0.5〜1.05ppmの非ベンジルメチル水素/0.5〜2.1ppmの全非ベンジル脂肪族水素比(%)として計算される。
【0077】
分枝近似(CH≧4)
90.5MHz CMRの単一パルス、および135個の分極移動による無歪み増強(Distortionless Enhancement by Polarization Transfer)(DEPT)のNMRスペクトルは、CDCL中10%溶液を用いるBrucker360MHz AMX分光計で得られる。TMSは、内部化学シフト基準である。CDCL溶剤は、13Cスペクトルの77.23ppmに位置する三重線を示す。全ての単一パルススペクトルは、45゜パルス(6.3μ秒)、試料の完全な緩和を確保するためのパルス遅延時間60秒(最長の炭素スピン格子緩和時間(T)の少なくとも5倍である)、良好なS/N比を確保するための200スキャン、およびWALTZ−16プロトンデカップリングを用いる定量条件下で得られる。
【0078】
C原子タイプのCH、CH、およびCHは、135DEPT13CNMR実験から同定される。全13CNMRスペクトルにおける主なCH共鳴(≒29.8ppm)は、末端基または分枝から4個以上離れた等価反復メチレン炭素(CH>4)による。分枝のタイプは、分枝の端部におけるメチル炭素か、または分枝のメチルから一個離れたメチレン炭素に対する13C化学シフトに主に基づいて決定される。
【0079】
自由炭素指数(FCI)。FCIは、炭素の単位で表され、イソパラフィン中の炭素数の尺度である。これは、末端炭素から炭素少なくとも5個、および側鎖から炭素4個離れて位置する。末端メチルまたは分枝炭素を「1」として数えると、FCIの炭素は、直鎖末端メチルまたは分枝メタン炭素のいずれかから、5番目以上の炭素である。これらの炭素は、13Cスペクトルの29.9ppm〜29.6ppmに現れる。それらは、次のように測定される。
a)試料中の分子の平均炭素数を計算する。これは、潤滑油物質について、試料油の分子量を14(CHの式量)で単に除することによって十分な精度で達成される。
b)全13C積分面積(チャート区分または面積計数)を、操作a)からの平均炭素数で除して、試料における(積分面積/炭素)を得る。
c)試料における29.9ppm〜29.6ppmの面積を測定する。
d)操作b)からの(積分面積/炭素)で除して、FCIを得る。
【0080】
分枝の測定は、いかなるフーリエ変換NMR分光計をも用いて行われることができる。好ましくは、測定は、7.0T以上の磁石を有する分光計を用いて行われる。全ての場合に、質量分光計、UV、またはNMRの測定によって、芳香族炭素が含まれないことを検証した後、スペクトル幅は、飽和炭素領域(TMS(テトラメチルシラン)に対して、約0〜80ppm)に限定された。クロロホルム−dl中15〜25wt%の溶液は、45゜パルス、続いて0.8秒の捕捉時間によって励起された。非均一な強度データを最小にするために、プロトンデカップラーが、励起パルスの前の10秒遅れの間、および捕捉中にゲートオフされた。全実験時間は、11〜80分の範囲であった。DEPTおよびAPTシーケンスは、若干の変更を伴って、文献記載に従って行われた。これは、VarianまたはBrukerの操作マニュアルに記載される。
【0081】
DEPTは、分極移動による無歪み増強(Distortionless Enhancement by Polarization Transfer)である。DEPTは、第四級を示さない。DEPT45シーケンスは、プロトンに結合された全ての炭素に対する信号を示す。DEPT90は、CH炭素のみを示す。DEPT135は、CHおよびCHアップを示し、CHは、相から180゜(ダウン)である。APTは、付属プロトン試験(Attached Proton Test)である。全ての炭素がわかることが可能であるが、CHおよびCHがアップの場合には、第四級およびCHはダウンである。シーケンスは、全ての分枝メチルが対応するCHを有するべきであり、メチルは化学シフトおよび相によって明らかに同定されるという点で有用である。各試料の分枝特性は、全試料がイソパラフィン質であるという計算の仮定を用いて、13CNMRによって決定される。補正は、n−パラフィンまたはシクロパラフィンに対しては為されない。これは、油試料中に種々の量で存在してもよい。シクロパラフィンの含有量は、電界イオン化質量分光計(FIMS)を用いて測定される。
【0082】
GTL基材および/または基油、例えば水素化脱ロウされるか、または水素異性化/接触(および/または溶剤)脱ロウされたワックス質合成炭化水素(例えば、フィッシャー−トロプシュワックス質炭化水素基材および/または基油)は、低またはゼロの硫黄およびリン含有量のものである。本来の装置製造業者および油処方業者の間には、常に次第に制限される環境規制を満足するために、常に次第に低減された硫酸灰、リン、および硫黄含有量を有する処方油を製造する動きがある。低SAPS油として知られるこれらの油は、それ自体が、本来、低またはゼロの初期硫黄およびリン含有量のものである基油を使用することに依存するであろう。これらの油は、基油として用いられる場合には、添加剤を用いて処方されることができる。処方中に含まれる添加剤が、硫黄および/またはリンを含んでいるとしても、得られる処方潤滑油は、従来の鉱油基材および/または基油を用いて処方される潤滑油に比較して、より低いか、または低いSAPS油であろう。
【0083】
例えば、車両エンジン(火花点火および圧縮点火の両方)のための低SAPS処方油は、硫黄含有量0.7wt%以下、好ましくは0.6wt%以下、より好ましくは0.5wt%以下、最も好ましくは0.4wt%以下、灰分含有量1.2wt%以下、好ましくは0.8wt%以下、より好ましくは0.4wt%以下、およびリン含有量0.18%以下、好ましくは0.1wt%以下、より好ましくは0.09wt%以下、最も好ましくは0.08wt%以下、ある場合には更に好ましくは0.05wt%以下をさえ有するであろう。
【0084】
脱ヘーズされたGTL基材および/または基油を含む潤滑油は、そのまま、またはより典型的には、一種以上の第二の基油および/または一種以上の性能添加剤との組合せで用いられることができる。
【0085】
典型的な性能添加剤の例には、限定されることなく、酸化防止剤、抗酸化剤、分散剤、清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、耐摩耗剤、極圧剤、耐焼付き剤、流動点降下剤、ワックス改質剤、他の粘度指数向上剤、他の粘度調整剤、流体逸散防止剤、シール親和剤、摩擦調整剤、潤滑剤、抗ステイン剤、発色剤、消泡剤、抗乳化剤、乳化剤、デンシファイヤ、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤、他が含まれる。多くの通常用いられる添加剤の概要については、非特許文献1を参照されたい。非特許文献2もまた、参照される。
【0086】
仕上げ潤滑油は、通常、潤滑油基材または基油+少なくとも一種の性能添加剤を含む。
【0087】
潤滑油組成物において、本発明と組み合わせて用いられる性能添加剤のタイプおよび量は、本明細書に例示として示される例によって限定されない。
【0088】
耐磨耗およびEP剤
多くの潤滑油には、適切な耐摩耗特性を示すのに、耐摩耗および/または極圧(EP)剤の存在が求められる。益々、例えばエンジン油性能といった潤滑油性能に対する規格は、油の耐摩耗特性が改良される傾向を示している。耐摩耗および極圧EP剤は、金属部品の摩擦および摩耗を低減することによって、この役割を果たす。
【0089】
多くの異なるタイプの耐摩耗剤があるものの、数十年の間、内燃機関のクランクケース油に対する基本的な耐摩耗剤は、金属アルキルチオホスフェート、より詳しくは金属ジアルキルジチオホスフェート(主要金属成分は亜鉛)、または亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)である。ZDDP化合物は、一般に、式Zn[SP(S)(OR)(OR)]のものである。式中、RおよびRは、C〜C18アルキル基、好ましくはC〜C12アルキル基である。これらのアルキル基は、直鎖または分枝であってもよい。ZDDPは、多かれ少なかれ、しばしば好都合に用いられることができるものの、典型的には、全潤滑油組成物の約0.4〜1.4wt%の量で用いられる。
【0090】
しかし、これらの添加剤からのリンは、自動車の触媒コンバーターの触媒に対して、およびまた、その酸素センサーに対しても有害な影響を有することが見出される。この影響を最小にする一つの方法は、ZDDPのいくらか、またはその全てを、無リン耐摩耗剤で置き換えることである。
【0091】
種々の非リン添加剤がまた、耐摩耗剤として用いられる。硫化オレフィンは、耐摩耗およびEP剤として有用である。硫黄含有オレフィンは、種々の有機物質を硫化することによって調製されることができる。これには、炭素原子約3〜30個、好ましくは炭素原子3〜20個を含む脂肪族、アリール脂肪族、または脂環式オレフィン質炭化水素が含まれる。オレフィン質化合物は、少なくとも一つの非芳香族二重結合を含む。これらの化合物は、次式によって定義される。
C=CR
(式中、R〜Rのそれぞれは、独立に、水素、または炭化水素基である)
好ましい炭化水素基は、アルキルまたはアルケニル基である。R〜Rのいかなる二つも、繰返し環を形成するように結合されてもよい。硫化オレフィンおよびそれらの調製に関する更なる情報は、特許文献86に見出されることができる。これは、その全体が本明細書に援用される。
【0092】
チオリン酸の多硫化物およびチオリン酸エステルを潤滑油添加剤として用いることは、特許文献87、特許文献88、特許文献89および特許文献90に開示される。ホスホロチオニル二硫化物を、耐摩耗剤、抗酸化剤、およびEP剤として添加することは、特許文献91に開示される。アルキルチオカルバモイル化合物を、モリブデン化合物(例えば、オキシモリブデンジイソプロピルホスホロジチオエート硫化物)およびリン酸エステル(例えば、ジブチル水素ホスファイト)と組み合わせて、潤滑油の耐摩耗剤として用いることは、特許文献92に開示される。特許文献93には、改良された耐摩耗および極圧特性を提供するのに、カルバメート添加剤を用いることが開示される。チオカルバメートを耐摩耗剤として用いることは、特許文献94に開示される。モリ−硫黄アルキルジチオカルバメート三量体錯体(R=C〜C18アルキル)などのチオカルバメート/モリブデン錯体はまた、有用な耐摩耗剤である。これらの物質を用いるか、またはこれらを添加することは、目標が低SAP処方を製造することである場合には、最小に維持されるべきである。
【0093】
グリセロールのエステルは、耐摩耗剤として用いられてもよい。例えば、モノ−、ジ−、およびトリ−オレエート、モノ−ステアレート、モノ−パルミテート、並びにモノ−ミリステートが用いられてもよい。
【0094】
ZDDPは、耐摩耗特性を示す他の組成物と組み合わされる。特許文献95には、チオジキサントゲン化合物(例えば、オクチルチオジキサントゲン)および金属チオホスフェート(例えば、ZDDP)の組合せは、耐摩耗特性を向上することができることが開示される。特許文献96には、金属アルキオキシアルキルキサンテート(例えば、ニッケルエトキシエチルキサンテート)およびジキサントゲン(例えば、ジエトキシエチルジキサントゲン)を、ZDDPと組み合わせて用いることにより、耐摩耗特性が向上されることが開示される。
【0095】
好ましい耐摩耗剤には、リンおよび硫黄化合物が含まれる。亜鉛ジチオホスフェート、および/または硫黄、窒素、ホウ素、モリブデンホスホロジチオエート、モリブデンジチオカルバメート、および種々の有機モリブデン誘導体などである。種々の有機モリブデン誘導体には、複素環式化合物が含まれる。例えば、ジメルカプトチアジアゾール、メルカプトベンゾチアジアゾール、トリアジンなどである。脂環式化合物、アミン、アルコール、エステル、ジオール、トリオール、脂肪アミドなどもまた、用いられることができる。これらの添加剤は、約0.01〜6wt%、好ましくは約0.01〜4wt%の量で用いられてもよい。ZDDP様化合物は、限定的なヒドロ過酸化物分解能力(この特許に開示され、かつ請求される化合物によって示されるものより実質的に低い)を示し、従って処方から排除されるか、または保持される場合には、最小の濃度で保持されて、低SAP処方の製造が促進されることができる。
【0096】
粘度指数向上剤
粘度指数向上剤(これはまた、VI向上剤、粘度調整剤、および粘度向上剤として知られる)は、高温および低温での運転性を有する潤滑剤を提供する。これらの添加剤は、高温でのせん断安定性、および低温での許容可能な粘度を付与する。
【0097】
適切な粘度指数向上剤には、高分子量の炭化水素、ポリエステル、および粘度指数向上剤分散剤(粘度指数向上剤および分散剤の両方として機能する)が含まれる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000〜1,000,000、より典型的には約20,000〜500,000、更により典型的には約50,000〜200,000である。
【0098】
適切な粘度指数向上剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、またはアルキル化スチレンのポリマーおよびコポリマーである。ポリイソブチレンは、普通に用いられる粘度指数向上剤である。他の適切な粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(例えば、種々の鎖長のアルキルメタクリレートのコポリマー)であり、これはまた、いくつかの処方における流動点降下剤として資する。他の適切な粘度指数向上剤には、エチレンおよびプロピレンのコポリマー、スチレンおよびイソプレンの水素添加ブロックコポリマー、およびポリアクリレート(例えば、種々の鎖長のアクリレートのコポリマー)が含まれる。特定の例には、分子量50,000〜200,000のスチレン−イソプレンまたはスチレン−ブタジエンベースのポリマーが含まれる。
【0099】
粘度指数向上剤は、約0.01〜8wt%、好ましくは約0.01〜4wt%の量で用いられてもよい。
【0100】
抗酸化剤
抗酸化剤は、使用中の基油の酸化劣化を遅らせる。これらの劣化は、金属表面のデポジット、スラッジの存在、または潤滑油の粘度増加をもたらしてもよい。一当業者には、潤滑油組成物で有用な幅広い種類の酸化防止剤が知られる。例えば、非特許文献1、特許文献97、および特許文献98を参照されたい。
【0101】
有用な抗酸化剤には、ヒンダードフェノールが含まれる。これらのフェノール酸化防止剤は、無灰(金属を含まない)フェノール化合物、若しくはあるフェノール化合物の中性または塩基性金属塩であってもよい。典型的なフェノール酸化防止剤化合物は、立体障害ヒドロキシ基を含むフェノールであるヒンダードフェノールであり、これらには、ヒドロキシ基が、互いに対してオルト−またはパラ−位にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が含まれる。典型的なフェノール酸化防止剤には、Cアルキル基で置換されたヒンダードフェノール、およびこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が含まれる。このタイプのフェノール物質の例は、2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;および2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノールである。他の有用なヒンダードモノ−フェノール酸化防止剤には、例えば、ヒンダード2,6−ジ−アルキルフェノールプロプリオニン酸エステル誘導体が含まれてもよい。ビス−フェノール酸化防止剤はまた、本発明と組み合わせて好都合に用いられてもよい。オルト−結合ビスフェノールの例には、2,2’−ビス(4−ヘプチル−6−t−ブチルフェノール);2,2’−ビス(4−オクチル−6−t−ブチルフェノール);および2,2’−ビス(4−ドデシル−6−t−ブチルフェノール)が含まれる。パラ−結合ビスフェノールには、例えば、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)および4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)が含まれる。
【0102】
用いられてもよい非フェノール酸化防止剤には、芳香族アミン抗酸化剤が含まる。これらは、それ自体、またはフェノール酸化防止剤との組合せのいずれかで用いられてもよい。非フェノール抗酸化剤の典型的な例には、式R10NまたはR11S(O)12の芳香族モノアミンなどのアルキル化および非アルキル化芳香族アミンが含まれる。式中、Rは、脂肪族、芳香族、または置換芳香族基であり、Rは、芳香族または置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリールであり、R11は、アルキレン、アルケニレン、またはアラルキレン基であり、R12は、より高級なアルキル基、若しくはアルケニル、アリール、またはアルカリール基であり、xは、0、1、または2である。脂肪族基Rは、炭素原子1〜約20個を含んでもよく、好ましくは炭素原子約6〜12個を含む。脂肪族基は、飽和脂肪族基である。好ましくは、RおよびRはいずれも、芳香族または置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基RおよびRは、Sなどの他の基と、一緒に結合されてもよい。
【0103】
典型的な芳香族アミン抗酸化剤は、炭素原子少なくとも約6個のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例には、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが含まれる。一般に、脂肪族は、炭素原子約14個超を含まないであろう。本組成物で有用なアミン抗酸化剤の一般的なタイプには、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミノジベンジル、およびジフェニルフェニレンジアミンが含まれる。二種以上の芳香族アミンの混合物もまた、有用である。高分子アミン抗酸化剤もまた、用いられることができる。本発明で有用な芳香族アミン抗酸化剤の特定の例には、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン、t−オクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン、フェニル−アルファナフチルアミン、およびp−オクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミンが含まれる。
【0104】
硫化アルキルフェノール、およびそれらのアルカリまたはアルカリ土類金属塩もまた、有用な抗酸化剤である。
【0105】
潤滑油組成物で用いられる他の種類の抗酸化剤は、油溶性銅化合物である。いかなる油溶性の適切な銅化合物も、潤滑油にブレンドされてもよい。適切な銅抗酸化剤の例には、銅ジヒドロカルビルチオ−またはジチオ−ホスフェート、および天然または合成のカルボン酸の銅塩が含まれる。他の適切な銅塩には、銅ジチアカルバメート、スルホネート、フェネート、およびアセチルアセトネートが含まれる。アルケニルコハク酸または無水物から誘導される塩基性、中性、または酸性の銅Cu(I)およびまたはCu(II)塩は、特に有用であると知られる。
【0106】
好ましい抗酸化剤には、ヒンダードフェノールまたはアリールアミンが含まれる。これらの抗酸化剤は、タイプによって個々に、または他のものとの組合せで用いられてもよい。これらの添加剤は、約0.01〜5wt%、好ましくは約0.01〜1.5wt%の量で用いられてもよい。
【0107】
清浄剤
清浄剤は、通例、潤滑組成物で用いられる。典型的な清浄剤は、分子の長鎖疎水性部分、および分子のより小さな疎油性アニオン性または親水性部分を含むアニオン物質である。清浄剤のアニオン部分は、典型的には、硫酸、カルボン酸、亜リン酸、フェノール、またはそれらの混合物などの有機酸から誘導される。対イオンは、典型的には、アルカリ土類またはアルカリ金属である。
【0108】
実質的化学量論量の金属を含む塩は、中性塩として記載され、全塩基価(TBN、ASTM D2896によって測定される)0〜約80を有する。多くの組成物は、過塩基化され、多量の金属塩基を含む。これは、過剰の金属化合物(例えば、金属水酸化物または酸化物)を、酸性ガス(二酸化炭素など)と反応させることによって達成される。有用な清浄剤は、中性であるか、緩やかに過塩基化されるか、または高度に過塩基化されることができる。
【0109】
少なくともいくつかの清浄剤については、過塩基化されることが望ましい。過塩基清浄剤は、燃焼過程によって製造され、油中に取込まれた酸性不純物を中和することを促進する。典型的には、過塩基性物質は、当量ベースで、(金属イオン/清浄剤のアニオン部分)比約1.05:1〜50:1を有する。より好ましくは、比率は、約4:1〜約25:1である。得られる清浄剤は、過塩基性清浄剤であり、典型的には、TBN約150以上、しばしば約250〜450以上を有するであろう。好ましくは、過塩基化するカチオンは、ナトリウム、カルシウム、またはマグネシウムである。異なるTBNの清浄剤の混合物は、本発明で用いられることができる。
【0110】
好ましい清浄剤には、スルホネート、フェネート、カルボキシレート、ホスフェート、およびサリチレートのアルカリまたはアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0111】
スルホネートは、アルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化によって典型的に得られるスルホン酸から調製されてもよい。炭化水素の例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ビフェニル、およびそれらのハロゲン化誘導体(例えば、クロロベンゼン、クロロトルエン、およびクロロナフタレン)をアルキル化することによって得られるものが含まれる。アルキル化剤は、典型的には、炭素原子約3〜70個を有する。アルカリールスルホネートは、典型的には、炭素原子約9〜約80個か、またはそれ以上、より典型的には炭素原子約16〜60個を含む。
【0112】
非特許文献1には、種々のスルホン酸の多数の過塩基金属塩が開示される。これは、潤滑油の清浄剤および分散剤として有用である。非特許文献3には、同様に、分散剤および/または清浄剤として有用な多数の過塩基性スルホネートが開示される。
【0113】
アルカリ土類フェネートは、他の有用な種類の潤滑油用清浄剤である。これらの清浄剤は、アルカリ土類金属水酸化物または酸化物(例えば、CaO、Ca(OH)、BaO、Ba(OH)、MgO、Mg(OH))をアルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールと反応させることによって作製されることができる。有用なアルキル基には、直鎖または分枝C〜C30アルキル基、好ましくはC〜C20が含まれる。適切なフェノールの例には、イソブチルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールなどが含まれる。出発アルキルフェノールは、二種以上のアルキル置換基(それぞれ独立に、直鎖または分枝である)を含んでもよいことが、特記されるべきである。非硫化アルキルフェノールが用いられる場合には、硫化生成物は、周知の方法によって得られてもよい。これらの方法には、アルキルフェノールおよび硫化剤(元素硫黄または二塩化硫黄などの硫黄ハロゲン化物などを含む)の混合物を加熱し、次いで硫化フェノールをアルカリ土類金属水酸化物または酸化物と反応させる工程が含まれる。
【0114】
カルボン酸の金属塩はまた、清浄剤として有用である。これらのカルボン酸清浄剤は、塩基性金属化合物を少なくとも一種のカルボン酸と反応させ、遊離水を反応生成物から除去することによって調製されてもよい。これらの化合物は、過塩基化されて、所望のTBNレベルがもたらされてもよい。サリチル酸から作製される清浄剤は、カルボン酸から誘導される清浄剤の一つの好ましい種類である。有用なサリチレートには、長鎖アルキルサリチレートが含まれる。一つの有用な種類の組成物は、次式のものである。
【化15】

(式中、Rは、水素原子、または炭素原子1〜約30個を有するアルキル基であり、nは、1〜4の整数であり、Mは、アルカリ土類金属である)好ましいR基は、少なくともC11、好ましくはC13以上のアルキル鎖である。Rは、任意に、清浄剤の機能を妨げない置換基で置換されてもよい。Mは、好ましくはカルシウム、マグネシウム、またはバリウムである。より好ましくは、Mはカルシウムである。
【0115】
ヒドロカルビル置換サリチル酸は、フェノールから、コルベ[Kolbe]反応によって調製されてもよい。これらの化合物の合成に関する更なる情報については、特許文献99を参照されたい。ヒドロカルビル置換サリチル酸の金属塩は、極性溶剤(水またはアルコールなど)中での金属塩の複分解によって調製されてもよい。
【0116】
アルカリ土類金属ホスフェートはまた、清浄剤として用いられる。
【0117】
清浄剤は、簡単な清浄剤であるか、若しくは混成または複合清浄剤として知られるものであってもよい。後者の清浄剤は、異なる物質をブレンドする必要性なしに、二種の清浄剤の特性を提供することができる。例えば、特許文献100を参照されたい。
【0118】
好ましい清浄剤には、カルシウムフェネート、カルシウムスルホネート、カルシウムサリチレート、マグネシウムフェネート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムサリチレート、および他の関連成分(ホウ酸化清浄剤を含む)が含まれる。典型的には、全清浄剤の濃度は、約0.01〜約6.0wt%、好ましくは約0.1〜0.4wt%である。
【0119】
分散剤
エンジン運転中には、油不溶性酸化副生物が製造される。分散剤は、これらの副生物を溶液で保持することを促進し、従って金属表面上へのそれらの沈積が減少される。分散剤は、本質的に、無灰であるか、または灰形成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰を実質的に全く形成しない有機物質である。例えば、金属非含有またはホウ酸化無金属分散剤は、無灰であるとみなされる。対照的に、上記に議論される金属含有清浄剤は、燃焼時に灰を形成する。
【0120】
適切な分散剤は、典型的には、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合された極性基を含む。極性基は、典型的には、窒素、酸素、またはリンの少なくとも一種の元素を含む。典型的な炭化水素鎖は、炭素原子50〜400個を含む。
【0121】
化学的に、多くの分散剤は、フェネート、スルホネート、硫化フェネート、サリチレート、ナフテネート、ステアレート、カルバメート、チオカルバメート、リン誘導体として特徴付けられてもよい。分散剤の特に有用な種類は、アルケニルコハク酸誘導体である。これは、典型的には、長鎖置換アルケニルコハク酸化合物(通常、置換コハク酸無水物)を、ポリヒドロキシまたはポリアミノ化合物と反応させることによって製造される。油中の溶解性を付与する分子の親油性部分を構成する長鎖基は、標準的には、ポリイソブチレン基である。このタイプの分散剤の多くの例は、商業的に、および文献で周知である。これらの分散剤を記載する例示の特許は、特許文献101、特許文献102、特許文献103、特許文献104、特許文献105、特許文献106、特許文献107、特許文献108、特許文献109、特許文献110、特許文献111および特許文献112である。他のタイプの分散剤は、特許文献113、特許文献114、特許文献115、特許文献116、許文献117、特許文献118、特許文献119、特許文献120、特許文献121、特許文献122、特許文献123、特許文献124、特許文献125、特許文献126、特許文献127、特許文献128、特許文献129、特許文献130、特許文献131、特許文献132、特許文献133に記載される。分散剤の更なる説明は、例えば、特許文献134に見出されてもよい。これは、この目的のために引用される。
【0122】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物は、一般的な分散剤である。特に、炭化水素置換コハク酸化合物(好ましくは、炭素原子少なくとも50個を炭化水素置換基に有する)を、アルキレンアミン少なくとも一当量と反応させることによって調製された、スクシンイミド、コハク酸エステル、またはコハク酸エステルアミドは、特に有用である。
【0123】
スクシンイミドは、アルケニルコハク酸無水物およびアミンの縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミンによって異なることができる。例えば、(アルケニルコハク酸無水物/TEPA)のモル比は、約1:1〜約5:1で異なることができる。代表的な例は、特許文献135、特許文献101、特許文献103、特許文献136、特許文献137、特許文献138、特許文献139および特許文献140に示される。
【0124】
コハク酸エステルは、アルケニルコハク酸無水物、およびアルコールまたは多価アルコールの縮合反応によって形成される。モル比は、用いられるアルコールまたは多価アルコールによって異なることができる。例えば、アルケニルコハク酸無水物およびペンタエリトリトールの縮合生成物は、有用な分散剤である。
【0125】
コハク酸エステルアミドは、アルケニルコハク酸無水物およびアルカノールアミンの縮合反応によって形成される。例えば、適切なアルカノールアミンには、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミン、およびポリアルケニルポリアミン(ポリエチレンポリアミンなど)が含まれる。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。代表的な例は、特許文献141に示される。
【0126】
前段落で用いられたアルケニルコハク酸無水物の分子量は、典型的には、800〜2,500の範囲であろう。上記生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、カルボン酸(オレイン酸など)、およびホウ素化合物(ホウ酸エステルまたは高度ホウ酸化分散剤など)などの種々の試薬と、後反応されることができる。分散剤は、(ホウ素約0.1〜約5モル/分散剤反応生成物モル)でホウ酸化されることができる。
【0127】
マンニッヒ塩基性分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、およびアミンの反応から作製される。特許文献142を参照されたい。これは、参照により本明細書に援用される。プロセス助剤および触媒(オレイン酸およびスルホン酸など)はまた、反応混合物の一部であることができる。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。代表的な例は、特許文献121、特許文献143、特許文献144、特許文献145、特許文献146、特許文献147および特許文献148に示される。
【0128】
本発明で有用な典型的な高分子量脂肪族酸修飾マンニッヒ縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族またはHN(R)基含有反応体から調製されることができる。
【0129】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の例は、ポリプロピルフェノール、ポリブチルフェノール、および他のポリアルキルフェノールである。これらのポリアルキルフェノールは、アルキル化触媒(BFなど)の存在下に、フェノールを高分子量のポリプロピレン、ポリブチレン、および他のポリアルキレン化合物でアルキル化して、アルキル置換基がフェノールのベンゼン環上に与えられることによって得られることができる(平均分子量600〜100,000を有する)。
【0130】
HN(R)基含有反応体の例は、アルキレンポリアミン、主にポリエチレンポリアミンである。マンニッヒ縮合生成物を調製する際に用いるのに適切な、少なくとも一種のHN(R)基を含む他の代表的な有機化合物は、周知であり、これには、モノ−およびジ−アミノアルカン、およびそれらの置換類似体が含まれる。例えば、エチルアミンおよびジエタノールアミン、芳香族ジアミン(例えば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン)、複素環式アミン(例えば、モルホリン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、およびピペリジン)、メラミン、およびそれらの置換類似体である。
【0131】
アルキレンポリアミド反応体の例には、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン、およびデカエチレンウンデカミン、並びにこれらのアミンの混合物が含まれる。これは、前記される式HN−(Z−NH−)Hのアルキレンポリアミンに相当する窒素含有量を有する。前述の式について、Zは、二価エチレンであり、nは、1〜10である。対応するプロピレンポリアミン(プロピレンジアミン、およびジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−プロピレントリ−、テトラ−、ペンタ−、およびヘキサアミンなど)はまた、適切な反応体である。アルキレンポリアミンは、通常、アンモニアおよびジハロアルカン(ジクロロアルカンなど)の反応によって得られる。従って、アンモニア2〜11モルと、炭素原子2〜6個を有し、かつ異なる炭素上に塩素を有するジクロロアルカン1〜10モルとの反応から得られるアルキレンポリアミンは、適切なアルキレンポリアミン反応体である。
【0132】
本発明で有用な高分子生成物を調製する際に有用なアルデヒド反応体には、ホルムアルデヒド(これはまた、当業者にパラホルムアルデヒドおよびホルマリンとして知られる)などの脂肪族アルデヒド、アセトアルデヒド、およびアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)が含まれる。ホルムアルデヒド、またはホルムアルデヒド生成反応体が好ましい。
【0133】
ヒドロカルビル置換アミン無灰分散剤は、当業者に周知であり、例えば、特許文献116、特許文献117、特許文献119、特許文献149、特許文献150および特許文献98を参照されたい。
【0134】
好ましい分散剤には、ホウ酸化および非ホウ酸化スクシンイミドが含まれる。これには、モノ−スクシンイミド、ビス−スクシンイミド、および/またはモノ−およびビス−スクシンイミドの混合物からの誘導体が含まれる。その際、ヒドロカルビルスクシンイミドは、Mn約500〜約5000を有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基、またはこれらのヒドロカルビレン基の混合物から誘導される。他の好ましい分散剤には、コハク酸−エステルおよびアミド、アルキルフェノール−ポリアミン−結合マンニッヒ付加物、それらのキャップド誘導体、および他の関連成分が含まれる。これらの添加剤は、約0.1〜20wt%、好ましくは約0.1〜8wt%の量で用いられてもよい。
【0135】
流動点降下剤
従来の流動点降下剤(これはまた、潤滑油流動性向上剤として知られる)は、所望により、本発明の組成物へ添加されてもよい。これらの流動点降下剤は、本発明の潤滑組成物へ添加されて、流体が流動するであろうか、または注がれることができる最低温度が低下されてもよい。適切な流動点降下剤の例には、アルキル化ナフタレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィンワックスおよび芳香族化合物の縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、およびジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステル、およびアリルビニルエーテルが含まれる。特許文献151、特許文献152、特許文献153、特許文献154、特許文献155、特許文献156、特許文献157、特許文献158、および特許文献159には、有用な流動点降下剤および/またはそれらの調製が記載される。これらの添加剤は、約0.01〜5wt%、好ましくは約0.01〜1.5wt%の量で用いられてもよい。
【0136】
腐食防止剤
腐食防止剤は、潤滑油組成物と接触している金属部分の劣化を低減するのに用いられる。適切な腐食防止剤には、チアジアゾールが含まれる。例えば、特許文献160、特許文献161および特許文献162を参照されたい。これは、その全体が本明細書に援用される。これらの添加剤は、約0.01〜5wt%、好ましくは約0.01〜1.5wt%の量で用いられてもよい。
【0137】
シール親和性剤
シール親和性剤は、流体中で化学反応、またはエラストマー中で物理変化を引起すことによって、エラストマーシールの膨張を促進する。潤滑油の適切なシール親和性剤には、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(例えば、ブチルベンジルフタレート)、およびポリブテニルコハク酸無水物が含まれる。これらの添加剤は、約0.01〜3wt%、好ましくは約0.01〜2wt%の量で用いられてもよい。
【0138】
消泡剤
消泡剤は、好都合に、潤滑油組成物に添加されてもよい。これらの試剤は、安定な泡の形成を妨げる。シリコーンおよび有機ポリマーは、典型的な消泡剤である。例えば、ポリシロキサン(ケイ素油またはポリジメチルシロキサンなど)は、消泡特性を示す。消泡剤は、商業的に入手可能であり、解乳化剤などの他の添加剤と共に、従来的な少量で用いられてもよい。通常、組み合わされたこれらの添加剤の量は、1パーセント未満であり、しばしば0.1パーセント未満である。
【0139】
防止剤および防錆剤
防錆剤(または腐食防止剤)は、潤滑される金属表面を、水または他の汚染物による化学的な攻撃に対して保護する添加剤である。これらの広範な種類は、商業的に入手可能である。それらは、非特許文献1に引用される。
【0140】
防錆剤の一タイプは、金属表面を優先的に湿潤し、それを油膜で保護する極性化合物である。防錆剤の他のタイプは、水を油中水エマルジョン中に組込むことによって、水を吸収し、そのために油のみが、金属表面に接触する。防錆剤の更に他のタイプは、金属に化学的に付着して、非反応性の表面がもたらされる。適切な添加剤の例には、亜鉛ジチオホスフェート、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸、およびアミンが含まれる。これらの添加剤は、約0.01〜5wt%、好ましくは約0.01〜1.5wt%の量で用いられてもよい。
【0141】
摩擦調整剤
摩擦調整剤は、これらの物質を含むいかなる潤滑油または流体にもよって潤滑される表面の摩擦係数を変えることができるいかなる物質でもある。摩擦調整剤はまた、摩擦低減剤、潤滑剤または油性剤として知られる。基油、処方潤滑油組成物、または機能性流体の能力を変化させて、潤滑される表面の摩擦係数が改良される、他のこれらの試剤は、所望により、本発明の基油または潤滑油組成物との組合せで、効果的に用いられてもよい。摩擦係数を低下させる摩擦調整剤は、特に、本発明の基油および潤滑油組成物との組合せで好都合である。摩擦調整剤には、金属含有化合物または物質、同様に無灰化合物または物質、若しくはそれらの混合物が含まれてもよい。金属含有摩擦調整剤には、金属塩または金属配位子錯体が含まれてもよい。その際、金属には、アルカリ、アルカリ土類、または遷移族金属が含まれてもよい。これらの金属含有摩擦調整剤はまた、低灰分特性を有してもよい。遷移金属には、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Zn、および他のものが含まれてもよい。配位子には、アルコール、多価アルコール、グリセロール、部分的にエステル化されたグリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカルバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、チアジアゾール、ジチアゾール、ジアゾール、トリアゾール、および他の極性分子官能基(有効量のO、N、S、またはPを、個々に、または組合せで含む)のヒドロカルビル誘導体が含まれてもよい。特に、Mo含有化合物は、特に効果的であることができる。例えば、Mo−ジチオカルバメート(Mo(DTC))、Mo−ジチオホスフェート(Mo(DTP))、Mo−アミン(Mo(Am))、Mo−アルコレート、Mo−アルコール−アミド等などである。特許文献163)、特許文献164、特許文献165、特許文献166、特許文献167、特許文献168、特許文献169、特許文献170、特許文献171、特許文献172、特許文献173、特許文献174、特許文献175、特許文献176、特許文献177を参照されたい。
【0142】
無灰摩擦調整剤にはまた、有効量の極性基を含む潤滑油物質が含まれる。例えば、ヒドロキシル含有ヒドロカルビル基油、グリセリド、部分グリセリド、グリセリド誘導体などである。摩擦調整剤中の極性基には、有効量のO、N、S、またはPを、個々に、または組み合わせて含むヒドロカルビル基が含まれてもよい。特に効果的であってもよい他の摩擦調整剤には、例えば、脂肪酸の塩(灰分含有および無灰の両誘導体)、脂肪アルコール、脂肪アミド、脂肪エステル、ヒドロキシル含有脂肪酸カルボキシレート、並びに類似の合成長鎖ヒドロカルビル酸、アルコール、アミド、エステル、ヒドロキシカルボキシレートなどが含まれる。場合によっては、脂肪有機酸、脂肪アミン、および硫化脂肪酸は、適切な摩擦調整剤として用いられてもよい。
【0143】
摩擦調整剤の有用な濃度は、約0.01〜(10〜15)wt%か、またはそれ以上の範囲であってもよく、しばしば好ましい範囲は、約0.1〜5wt%である。モリブデン含有摩擦調整剤の濃度は、しばしば、Mo金属濃度として記載される。Moの好都合な濃度は、約10〜3000ppmか、またはそれ以上の範囲であってもよく、しばしば好ましい範囲は約20〜2000ppmであり、場合によっては、より好ましい範囲は、約30〜1000ppmである。全てのタイプの摩擦調整剤は、単独で、または本発明の物質との混合物で用いられてもよい。しばしば、二種以上の摩擦調整剤の混合物、または摩擦調整剤と別の表面活性物質との混合物もまた、望ましい。
【0144】
典型的な添加剤の量
潤滑油組成物が、上記に議論される一種以上の添加剤を含む場合には、添加剤は、その意図される機能が行われるのに十分な量で、組成物にブレンドされる。本発明で有用なこれらの添加剤の典型的な量は、以下の表1に示される。
【0145】
多くの添加剤が、製造業者から出荷され、処方の際には一定量の基油希釈剤と共に用いられることに注目されたい。従って、次の表の重量、並びにこの本文に記述される他の量は、特段に指示されない限り、活性成分の量に関する(即ち、成分の非希釈/希釈剤部分である)。次に示されるwt%は、潤滑油組成物の全重量を基準とする。
【0146】
【表2】

【実施例】
【0147】
実施例1
GTL重質基材の基準試料(KV(100℃)=13cSt、VI=約150、くもり点=+7℃、流動点=−25℃、T10=965゜F、T50=1065゜F、およびT99=1272゜F)を、比較の目的で評価し、種々の添加剤および添加剤混合物を、雰囲気温度のヘーズ軽減添加剤としてのそれらの有用性について評価するための基油として用いた。
【0148】
GTL HBSを、80℃に加熱し、+20℃に冷却し、その温度で保持し、濁度を、ヘーズの指標として分析した。試料を、室温で測定し、次いで20℃の恒温器に入れた。NTUを、HACH 2100型(登録商標)を用いて、製造業者の推奨試験手順に従って測定した。加熱および20℃への冷却の一日以内には、NTU値は、1.48であった。20℃での二週間後には、NTUは、2.10であり、一方20℃での約25日後には、NTUは、凝集が生じる前に、2.5であった。
【0149】
このGTL HBS基材の新規の個々の試料に対して、種々の知られた従来の流動点降下剤、ワックス沈降防止剤、くもり点降下剤、並びに高分子粘度指数向上剤、および高分子消泡剤を添加した。
【0150】
種々の添加剤を、次に記載する。
【0151】
添加剤ポリマーI(ディーゼル燃料のくもり点降下剤)R511(登録商標);
次式のアルキル化フマレート/酢酸ビニルコポリマー(AMW=約60,000、アルキル鎖の平均=C12、窒素=なし)であると考えられる。受け取り活性成分は、49%である。
【化16】

[式中、R=H、R=C〜C18(平均C12)、n+m=重量AMW〜60,000を有するコポリマーをもたらすのに十分な数]
【0152】
添加剤ポリマーD(a)(ワックス沈降防止剤)R446(登録商標);
アルキル化フマレート/酢酸ビニルであり、エステル基はアミンと反応されて、アミドが形成されていると考えられる(アミド約10〜20%)。平均分子量は、約60,000であり、次式を有する。窒素含有量は、0.57wt%であり、受取り活性成分は、37%である。
【化17】

[式中、R=H、CH、R=−OOCRおよび−COORのいずれかまたは両方、R=−H、またはCOOR、R=CONHRのいかなるもの、若しくはピリジンまたはピロリジン、R=H、C〜C18アルキルのいかなるもの、O=0〜100、PおよびQは、独立して10〜100の範囲の整数]
【0153】
添加剤J(摩擦調整剤);
次式のグリセロールモノステアレート(活性成分100%)である。
【化18】

【0154】
添加剤D(b)(ディーゼル燃料のくもり点降下剤)R434(登録商標);
次式のアルキル化フマレート/酢酸ビニルコポリマーであり、エステルは芳香族アミンと反応されて、アミドを与えると考えられる。窒素1.75wt%を含む。重量平均分子量は約40,000〜60,000であり、受取り活性成分は45〜50%である。
【化19】

[式中、R=−H、−CH、R=−OOCRおよび−COORのいずれかまたは両方、R=−H、またはCOOR、R=CONHRのいかなるもの、若しくはピリジンまたはピロリジン、R=ドデシルフェノール、O=0、または10〜100の範囲、PおよびQは、独立して10〜100の範囲の整数]
【0155】
トリプロピレングリコールメチルエステル(添加剤「a」);
化学構造を次に示す。
CHO(CO)
【0156】
添加剤F(流動点降下剤)Lz7716(登録商標)(F(a))、またはLz7719(登録商標)(F(b));
次式のポリメタクリレートエステルである。受取り活性成分は50〜60%である。
【化20】

[式中、R15=C〜C30、但し、nは、重量平均分子量約20,000〜約75,000を有するポリマーを与えるのに十分な数である]
【0157】
粘度指数向上剤「b」;
次式のポリアクリレートエステルである。重量平均分子量は50,000〜75,000である。
【化21】

[式中、R10=n−CおよびC12アルキル基の混合物]
【0158】
添加剤E(流動点降下剤)V−387(登録商標);
次式のアルキル化フマレート/酢酸ビニルコポリマー(重量AMW=65,000、窒素=なし)であると考えられる。受取り活性成分は45〜50%である。
【化22】

[式中、R12=H、R13=C〜C10(平均C)、R14=C〜C12アルキルおよびそれらの混合物、好ましくはメチル、n’+m’=重量平均分子量約65,000を与えるのに十分な数]
【0159】
添加剤「c」(くもり点降下剤);
次式の高分子アルキルフマレートエステルである。
【化23】

[式中、R=H、R=C〜C30
【0160】
添加剤「d」(くもり点降下剤);
次式の高分子アルキルフマレートエステルである。
【化24】

[式中、Ra1=−H、−C〜―C10、Rb1=−C〜−C30
【0161】
添加剤「e」(ポリジメチルシロキサン)
【0162】
添加剤「f」(添加剤Iおよび添加剤D(a)の50/50の混合物)
【0163】
添加剤「g」(添加剤Iおよび添加剤Jの50/50の混合物)
【0164】
結果を、次の表1に示す。
【0165】
【表3】

【0166】
表2においては、同じGTL HBS材の異なる部分は、指示された処理レベルで指示された添加剤を用いて添加剤処理された(添加剤は受取られたまま用いた)。ヘーズは、室温で静置された試料を、指示された時間目視検査することによって決定された。NTUは、HACH 2100型(登録商標)を用いて、製造業者の推奨手順に従って決定された。合格は、試料が清澄を保持し、NTU約2.0以下を、少なくとも13〜14日間(好ましくは約1以下を、少なくとも21日間)示す場合に示される。で示される試料は、本発明の範囲内にある。
【0167】
実施例2
小規模のろ過性試験を、多数の上記に列挙された試料について、上述の試料について行なった。ろ過実験は、最初に、所定量の材を、ナフサで希釈した後に、0.8ミクロンのフィルターを通してろ過するのに必要な時間を測定する。
【0168】
【表4】

【0169】
ろ過性について、それらの効果が評価された全ての添加剤からわかるように、唯一、添加剤Iが、GTL HBS自体に比較したろ過性の向上を達成し、NTU<1(21日後)の清澄の結果をもたらした。
【0170】
液中に分散されたヘーズは、あるレベルの固有の不均質性にあたる。ヘーズ留分は、液体より僅かに高い密度を有し、それ自体時間と共に沈降しやすい。代表的な試料を取る努力(再加熱および撹拌など)がなされるものの、同じバッチの小口試料が、しばしば、異なるレベルの濁度を示すであろう。これは、ヘーズが異なることも、添加剤との相互作用に対して多かれ少なかれしたがうことも、意味しない。添加剤が、ヘーズが実際により低い他のバッチで、実際に試験されたケースでは、ヘーズを軽減するという添加剤の効果の点で、より低いヘーズに対する利点は、全く見られなかった。
【0171】
次の実施例は全て、次に記載される光散乱測定法の手順を用いて行なわれた。
【0172】
ブレンドの調製および貯蔵
GTL基材を、加熱し(80℃)、窒素下に2時間撹拌して、いかなるワックス結晶も溶融し、基材の均一性を確実にした。概算量の添加剤を、加熱された基材へ添加した後、溶液を、加熱し(80℃)、更なる20分間撹拌した。添加剤処理されたGTL基材ブレンドを、光透過性の使い捨てポリスチレンマイクロウェルプレートに分取した(ブレンド毎に4複製)。これは、96(12×8)試料ウェルのx−y配列を有する(250μL/ウェル)。マイクロウェルプレートを、温度制御熱ブロックに移し、20℃±1℃で、検討期間中貯蔵した。
【0173】
光散乱測定
マイクロウェルプレートを用い、連続的に、ステッピング方式を用いることによって測定した。Nepheloskan Ascent(Thermo Electron)を用いた。それは、溶液中の粒子を、粒子によって散乱された光を測定することによって測定するマイクロプレート比濁計である。この機器においては、光学系は、マイクロプレートの下の光源(石英−ハロゲンランプ)および光学フィルター(580〜630nm)からなる。これは、試料中において光ビームを直径2mmに集光させる。試料の上の第二のフィルターは、角度30゜の散乱光だけを、マイクロプレートの上の検出器、光電子倍増管(PMT)の方向へ進ませる。
【0174】
Nepheloskan Ascentマイクロウェルプレート読取装置で測定された散乱光の強度を、相対比濁分析単位(RNU)として表す。Nepheloskan Ascent散乱光の強度を、NIST濁度標準(Amco Clear GFS Chemicals,Inc)を用いて、比濁分析濁度単位(NTU)に相関付けた(表4)。3人の専門評点者が、次のように、これらの濁度標準の外観を評価した。即ち、10NTU標準=僅かな痕跡ヘーズ、20NTU標準=痕跡ヘーズである。この検討における試料を全て、20℃±1℃で、ランプ出力12ボルト、およびPMT300ボルトを用いて測定した。強度値は、8複製の平均である。
【0175】
【表5】

【0176】
次の実施例の全ては、同じバッチの物質から確保されたGTL HBS(KV(100℃)14mm/秒)の試料を用いた。添加剤処理をされないGTL HBSは、約8〜約15強度(RNU)(20℃±1℃、13日後)の範囲のベースラインヘーズの読みを示した。
【0177】
実施例3
多数の伝統的なワックス結晶調整剤、流動点降下剤、くもり点降下剤、ワックス沈降防止剤を検討した。GTL HBS中のヘーズが、油中のワックスの存在に起因するという事実にも係わらず、GTL中のヘーズの形成原因となるワックスは、潤滑油中のワックスの存在に付随する問題に対処するのに用いられてきた伝統的なワックス調整剤に反応しなかった。伝統的なワックス調整剤添加剤を、GTL HBS中で、500ppmおよび1000ppm(受取ったまま)の適用量レベルで評価した。13日後の8複製(2実験、4複製/実験)について、平均の結果を次に示す。
【0178】
【表6】

【0179】
NTU値2以下を13日後に有する試料については、試料は、表3に確立される基準にしたがえば、強度(RNU)約0.69±0.04(13日後)を、13日後に示す必要があろう。表4から判るように、試験された伝統的なワックス調整剤はいずれも、強度(RNU)を、約0.69±0.04へ低減するのに効果的でなかった。従って、いずれも、ヘーズを、13日後のNTU値2以下へ低減しなかった。
【0180】
実施例4
受取ったまま用いられたポリマーI(ディーゼル燃料くもり点降下剤、活性成分49%)500wppmを、GTL重質基材(KV(100℃)=14mm/秒)の試料へ添加した。これは、添加剤処理されずに分析された場合に、ベースライン強度(RNU)(20℃±1℃)約14.0±2.35を示した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度0.58、90日後には強度1.80、174日後には強度2.00を示した(4複製の平均値である)。
【0181】
実施例5
ポリマーI(受取ったまま)1000wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度0.56を示し、一方90日後には、同じものは、強度1.41を示し、174日後には強度1.70を示した(4複製の平均値である)。
【0182】
実施例6
受取ったまま用いられたポリマーII(ディーゼル燃料くもり点降下剤、ナフサ中活性成分40〜60%)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度0.48、82日後には強度0.66、90日後には強度0.69、174日後には強度1.57を示した(4複製の平均値である)。
【0183】
実施例7
ポリマーII(受取ったまま)1000wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度0.52を示したが、82日後には、強度は、1.75へ上昇した。90日目には、それは、1.85であり、174日後には強度6.32であった(4複製の平均値である)。
【0184】
実施例8
ポリマーIII(受取ったまま、キシレン中活性成分75%)1000wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度2.52、82日後には強度2.32、90日後には強度2.37、174日後には強度2.36を示した(4複製の平均値である)。
【0185】
実施例9
ポリマーIII(受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度1.13を示した。これは、68日後には1.62へ、82日後には149へ、90日後には139へ、174日後には141へ上昇した(4複製の平均値である)。
【0186】
実施例10
ポリマーK(Dodiflow)(ディーゼル燃料くもり点降下剤、ナフサ中活性成分50%、受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度1.24、68日後には強度1.68、82日後には強度1.63、90日後には強度1.52、174日後には強度1.71を示した(4複製の平均値である)。
【0187】
実施例11
ポリマーK(Dodiflow)(受取ったまま用いられたディーゼル燃料くもり点降下剤、ナフサ中活性成分50%)1000wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度2.56、68日後には強度3.22、82日後には強度3.07、90日後には強度2.92、174日後には強度1.13(凝集)を示した(4複製の平均値である)。
【0188】
実施例12
ポリマーI(受取ったまま)500vppm、および異なる第二の添加剤(受取ったまま)500vppm(個別に)を、全処理レベル1000vppmを与えるように、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、次の表6に報告される強度値(4複製の平均値である)を示した。
【0189】
【表7】

【0190】
実施例13
ポリマーII(受取ったまま)500vppm、および異なる第二の添加剤(受取ったまま)500vppm(個別に)を、全処理レベル1000vppmを与えるように、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、次の表7に報告される強度値(4複製の平均値である)を示した。
【0191】
【表8】

【0192】
実施例14
ポリマーIII(受取ったまま)500vppm、および異なる第二の添加剤(受取ったまま)500vppm(個別に)を、全処理レベル1000vppmを与えるように、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、次の表7に報告される強度(4複製の平均値である)を示した。
【0193】
【表9】

【0194】
実施例15
ポリマーK(受取ったまま)500vppm、および異なる第二の添加剤(受取ったまま)500vppm(個別に)を、全処理レベル1000vppmを与えるように、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、次の表8に報告される強度(4複製の平均値である)を示した。
【0195】
【表10】

【0196】
次の実施例17〜20においては、83日目に、装置の不具合があって、温度が27℃に1.5時間上昇した。
【0197】
実施例16
ポリマーI(受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。試料を、174日間エージングし、強度を、その期間中、定期的に評価した。強度値は、26日間0.66未満で留まり、次いで徐々に、試験期間の終わりには4.22にまで上昇した(26日目までは4複製の平均であり、27日目〜試験の終わりは3複製の平均である)を示した。
【0198】
実施例17
ポリマーI(受取ったまま)1000wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。試料を、174日間エージングし、強度を、その期間中、定期的に評価した。強度値は、33日間0.73未満で留まり、次いで徐々に、試験期間の終わりには2.29にまで上昇した(26日目までは4複製の平均であり、27日目〜試験の終わりは3複製の平均である)を示した。
【0199】
実施例18
ポリマーD(a)(受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。試料を、174日間エージングし、強度を、その期間中、定期的に評価した。強度は、添加直後には1.28であり、2日目には33.11に上昇した。強度は、時間と共に(凝集により)減少し、89日目には2.10に達し、174日目に1.76で終了した。ポリマーD(a)の処理レベルを1000wppmに増大することは、向上された結果をもたらさなかった。強度は、添加直後には0.70であったが、2日目には33.11に増大した。強度は、時間と共に減少し、89日目には4.69の低さに達し、次いで試験の終了まで、4.69〜6.63で変動し、174日目に5.05で終了した。89日目の低い強度値は、83日目に生じた機器の不具合に起因されるとすることができる。その際、温度は、(試験温度20℃±1℃から)27℃に1.5時間上昇した。いずれにしても、ポリマーD(a)自体は、GTLのヘーズを、許容可能なレベルにまで低減できなかった。
【0200】
実施例19
ポリマーI(受取ったまま)500vppmを、ポリマーD(a)(受取ったまま)500vppmと組み合わせて、全処理レベル1000vppmを与えるように、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。試料を、174日間エージングし、強度を、その期間中、定期的に評価した。強度値は、期間中、0.56〜0.97で変動した。これは、経時による漸増を示したが、約90日間の期間中、約0.7で留まった(28日目に新規プレートに移行した後、30日目に一度、0.83に侵入した)。これを表10に示す。
【0201】
【表11】

【0202】
実施例20
ポリマーII(受取ったまま)1000wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度0.52を示し、26日後には強度は、0.68に、34日目には0.80に、90日目には1.85に、146日目には4.16に、174日目には6.32に上昇した。
【0203】
実施例21
ポリマーII(受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。13日後に、添加剤処理された試料は、強度0.48を示し、90日後にはそれは、わずかに0.69に、146日目には0.86に、174日目には1.57に、上昇した。
【0204】
実施例22
ポリマーII(受取ったまま)500vppm、および異なる第二の添加剤(受取ったまま)500vppm(個別に)を、全処理レベル1000vppmを与えるように、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。試料を、90日間エージングし、定期的に、強度を評価した。結果を、表11に示す。
【0205】
【表12】

【0206】
実施例23
ポリマーIII(受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。添加直後に、強度は、0.65であり、2日目には0.73に、5日目には0.90に上昇した。13日後には、強度は、1.13であった。それは、40〜76日の間1.51〜1.62で変動し、次いで82日目には1.49であり、90日目には1.39であり、118日目には1.31であり、146日目には1.28であり、174日目には1.41であった。処理レベルを、ポリマーIII(受取ったまま)1000wppmに上昇することにより、向上はもたらされなかった。強度は、2日目に1.32であり、次いで5〜90日の間1.94〜3.13で変動し、29日目には3.13の高さに達した。次いで、90日目には2.37に、118日目には2.16に、146日目には2.27に、174日目には2.36に減少した。
【0207】
実施例24
ポリマーIII(受取ったまま)500vppm、およびビスコプレックス6−054(受取ったまま)500vppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。試料を、定期的に、強度について174日間評価した。強度は、90日の試験期間中、0.57〜0.73の範囲であった。これを、表12に示す。
【0208】
【表13】

【0209】
実施例25
ポリマーK(受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。添加された際には、試料は、強度0.68を示し、2日目には0.98へ、5日目には1.08へ上昇した。
【0210】
実施例26
ポリマーD(b)(受取ったまま)500wppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。添加された際には、試料は、強度4.60を示し、2日目には19.91に上昇した。13日目には強度は、18.88と測定され、21日目には19.39に上昇した。評価が26日目で終了された際、強度は、18.49であった。
【0211】
ポリマーK(受取ったまま)500vppm、およびポリマーD(b)(受取ったまま)500vppmを、実施例3と同じGTL HBSの新規試料へ添加した。試料を、定期的に、強度について174日間評価した。強度は、174日の試験期間中、0.67〜1.66の範囲であった。これを、表13に示す。26日までは満足な結果(強度0.69±0.04以下)を示した。
【0212】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気温度で静置した際の、動粘度(100℃)8mm/秒以上を有するガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油中に観察されるヘーズを、NTU値(20℃±1℃)2.0NTU以下が少なくとも13日間明示されるレベルへ低減する方法であって、前記GTL基材および/または基油へ添加剤を添加する工程を含み、
前記添加剤は、
(I)ポリマーI;
【化1】

(式中、
Rは、同一かまたは異なり、かつ独立して水素およびメチルから選択され、
は、同一かまたは異なり、かつ独立してC〜C24アルキルおよびそれらの混合物から選択され、但しR基の平均はC10〜C16の範囲にあり、
は、C〜C18アルキルおよびそれらの混合物から選択され、
nおよびmは、重量平均Mw40,000〜80,000を有する式Iのポリマーを提供するのに十分な数である);
(II)下記(a)と(b):
(a)
【化2】

(式中、
は、C10〜C12アルキルおよびそれらの混合物であり、
Xは、酸素または窒素であり、
s+tは、合わせて、重量平均分子量800〜1000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である)
(b)
【化3】

(式中、
は、C12〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、
Xは、酸素または窒素であって、その少なくとも一部は窒素であり、
uおよびvは、合わせて、重量平均分子量7000〜8,000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である)
の混合物であり、前記(a)と(b)の比率が60:40にあるポリマーII;および
前記(I)と(II)の4:1〜1:4の混合物
からなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記添加剤は、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜5000ppmの範囲の量で添加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記添加剤は、前記ポリマーIであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記添加剤は、前記ポリマーIIであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記添加剤が前記ポリマーIである場合には、Rは、水素であり、Rは、C〜C18アルキルおよびそれらの混合物であり、但し、R基の平均はC10〜C14の範囲にあり、Rは、メチルであり、該ポリマーは、重量平均分子量60,000を有し、
前記添加剤がポリマーIIである場合には、(a)および(b)は、比率55:45にある
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記GTL基材および/または基油は、KV(100℃)10mm/秒以上を有し、雰囲気温度で静置した際に観察される前記ヘーズは、NTU値(20℃±1℃)1.5NTU以下を、少なくとも30日間明示するレベルへ低減されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
雰囲気温度で静置した際に、動粘度(100℃)8mm/秒以上を有するガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油中に観察されるヘーズを、NTU値(20℃±1℃)2.0NTU以下が少なくとも13日間明示されるレベルへ低減する方法であって、前記GTL基材および/または基油へ添加剤を添加する工程を含み、
前記添加剤は、
(I)ポリマーI;
【化4】

(式中、
Rは、同一かまたは異なり、かつ独立して水素およびメチルから選択され、
は、同一かまたは異なり、かつ独立してC〜C24アルキルおよびそれらの混合物から選択され、但しR基の平均はC10〜C16の範囲にあり、
は、C〜C18アルキルおよびそれらの混合物から選択され、
nおよびmは、重量平均Mw40,000〜80,000を有する式Iのポリマーを提供するのに十分な数である);および
下記A)〜H)およびJ):
A)重量平均分子量500〜20,000を有するC〜C12アルファオレフィンフマレートエステルコポリマー;
B)AMW3,000〜5,000のポリ(エチルビニルエーテル);
C)15−クラウン−5または(1,4,7,10,13−ペンタオキサシクロペンタデカン98%);
D)
【化5】

(式中、
は、HまたはCHから選択され、
は、−OOCRまたは−COORのいずれかまたは両方であり、
は、HまたはCOORであり、
は、−CONHR、または一種以上のC〜Cアルキル基を含むことができる5または6員へテロ環窒素を含有する環であり、
は、H、C〜C18アルキル基またはC〜C18アルキルフェノールであり、
Oは、0〜100であり、
PおよびQは、10〜100の範囲の整数であり、
全窒素含有量は、0.3〜2.0wt%の範囲である)
E)
【化6】

(式中、
12は、同一かまたは異なり、かつ独立してH、C〜Cアルキルおよびそれらの混合物から選択され、
13は、同一かまたは異なり、かつ独立してC〜C24アルキルおよびそれらの混合物から選択され、但しR13基の平均はC〜Cの範囲にあり、
14は、C〜C12アルキルおよびそれらの混合物から選択され、
n’+m’は、重量平均分子量15,000〜80,000を有するポリマーを提供するのに十分な数である)
F)
【化7】

(式中、
n”は、重量平均分子量20,000〜75,000を有するポリマーを提供するのに十分な数であり、
15は、C〜C30である)
G)ポリ[メタ]アクリレートエステルであるLZ7949B(登録商標);
H)a)ビスコプレックス1−330/333(登録商標)
b)ビスコプレックス1−154(登録商標)
c)ビスコプレックス0−220(登録商標)
d)平均分子量40,000〜60,000のドデシルメタクリレート
J)
【化8】

(式中、R16は、C10〜C20線状アルキル基である)
からなる群から選択される第二のポリマー
の4:1〜1:4の混合物からなる群から選択されることを特徴とするヘーズの低減方法。
【請求項8】
前記ポリマーIにおいて、Rは、水素であり、Rは、C〜C18アルキルおよびそれらの混合物であり、但しR基の平均はC10〜C14の範囲にあり、Rは、メチルであり、
前記ポリマーは、平均分子量60,000を有し、
前記ポリマーIは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加され、
前記第二のポリマーは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加される
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーIは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として200〜1000ppmの範囲の量で添加され、
前記第二のポリマーは、前記ポリマーDからなる群から選択され、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として200〜1000ppmの範囲の量で添加される
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第二のポリマーは、前記ポリマーDからなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第二のポリマーは、前記ポリマーA、ポリマーBおよびビスコプレックス1−154からなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記GTL基材および/または基油は、KV(100℃)10mm/秒以上を有し、雰囲気温度で静置した際に観察される前記ヘーズは、NTU値(20℃±1℃)1.5NTU以下によって少なくとも30日間明示されるレベルへ低減されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項13】
雰囲気温度で静置した際に、動粘度(100℃)8mm/秒以上を有するガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油中に観察されるヘーズを、NTU値(20℃±1℃)2.0NTU以下によって少なくとも13日間明示されるレベルへ低減する方法であって、前記GTL基材および/または基油へ添加剤を添加する工程を含み、
前記添加剤は、
(II)下記(a)と(b):
(a)
【化9】

(式中、
は、C10〜C12アルキルおよびそれらの混合物であり、
Xは、酸素または窒素であり、
sおよびtは、合わせて、重量平均分子量800〜1000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である)
(b)
【化10】

(式中、
は、C12〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、
Xは、酸素または窒素であり、Xの少なくとも一部は窒素であり、
uおよびvは、合わせて、重量平均分子量7,000〜8,000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である)
の混合物であり、(a)と(b)の比率が60:40にあるポリマーII;および
次のA)〜H):
A)重量平均分子量500〜20,000を有するC〜C12アルファオレフィンフマレートエステルコポリマー;
B)重量AMW3,000〜5,000のポリ(エチルビニルエーテル);
C)15−クラウン−5または(1,4,7,10,13−ペンタオキサシクロペンタデカン98%);
D)
【化11】

(式中、
は、HまたはCHから選択され、
は、−OOCRまたは−COORのいずれかまたは両方であり、
は、HまたはCOORであり、
は、−CONHR、または一種以上のC〜Cアルキル基を含むことができる5または6員へテロ環窒素を含有する環であり、
は、C〜C18アルキルフェノールであり、
全窒素含有量は、1.2〜2.0wt%の範囲である)
E)
【化12】

(式中、
12は、同一かまたは異なり、かつ独立してH、C〜Cアルキルおよびそれらの混合物から選択され、
13は、同一かまたは異なり、かつ独立してC〜C24アルキルおよびそれらの混合物から選択され、但しR13基の平均はC〜Cの範囲にあり、
14は、C〜C12アルキルおよびそれらの混合物から選択され、
n’+m’は、重量平均分子量15,000〜80,000を有するポリマーを提供するのに十分な数である)
F)
【化13】

(式中、
n”は、重量平均分子量20,000〜75,000を有するポリマーを提供するのに十分な数であり、
15は、C〜C30である)
G)ポリ[メタクリレート]エステルであるLZ7949B(登録商標);
H)a)ビスコプレックス1−330/333(登録商標)
b)ビスコプレックス1−154(登録商標)
c)ビスコプレックス0−220(登録商標)
d)重量平均分子量40,000〜60,000のドデシルメタクリレート
からなる群から選択される第二のポリマー
の4:1〜1:4の混合物からなる群から選択されることを特徴とするヘーズの低減方法。
【請求項14】
前記ポリマーIIは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加され、
前記第二のポリマーは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加される
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーIIは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として200〜1000ppmの範囲の量で添加され、
前記第二のポリマーは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として200〜1000ppmの範囲の量で添加される
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第二のポリマーは、前記ポリマー(A)、(B)、(E)、(F)および(H)からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記第二のポリマーは、前記ポリマー(A)、(B)、(F)および(H)からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記GTL基材および/または基油は、KV(100℃)10mm/秒以上を有し、雰囲気温度で静置した際に観察される前記ヘーズは、NTU値(20℃±1℃)1.5NTU以下によって少なくとも30日間明示されるレベルへ低減されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
雰囲気温度で静置した際に、動粘度(100℃)8mm/秒以上を有するガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油中に観察されるヘーズを、NTU値(20℃±1℃)2.0NTU以下によって少なくとも13日間明示されるレベルへ低減する方法であって、前記GTL基材および/または基油へ添加剤を添加する工程を含み、
前記添加剤は、
(III)下記(a)と(b):
(a)
【化14】

(式中、
10は、C12〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、
w+xは、合わせて、重量平均分子量800〜1000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である)
(b)
【化15】

(式中、
11は、C12〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、
y+zは、合わせて、重量平均分子量7,000〜8,000を有するコポリマーを製造するのに十分な数である)
の混合物であり、(a)と(b)の比率が60:40にあるポリマーIII;および
下記H):
H)d)重量平均分子量40,000〜60,000のドデシルメタクリレート
からなる群から選択される第二のポリマー
の4:1〜1:4の混合物からなる群から選択されることを特徴とするヘーズの低減方法。
【請求項20】
前記ポリマーIIIは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加され、
前記第二のポリマーは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加される
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマーIIIは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として200〜1000ppmの範囲の量で添加され、
前記第二のポリマーは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として200〜1000ppmの範囲の量で添加される
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記GTL基材および/または基油は、KV(100℃)10mm/秒以上を有し、雰囲気温度で静置した際に観察される前記ヘーズは、NTU値(20℃±1℃)1.5NTU以下を少なくとも30日間明示するレベルへ低減されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
雰囲気温度で静置した際に、動粘度(100℃)8mm/秒以上を有するガスツーリキッド(GTL)基材および/または基油中に観察されるヘーズを、2.0NTU以下(20℃±1℃)のレベルへ少なくとも13日間にわたって低減する方法であって、前記GTL基材および/または基油へ添加剤を添加する工程を含み、
前記添加剤は、
下記式K:
【化16】

(式中、
17は、C10〜C16アルキルおよびそれらの混合物であり、
18は、C10〜C14アルキルおよびそれらの混合物であり、
n’’’+m’’’は、20〜60の範囲である)
のポリマー;および
(VII)下記式:
【化17】

(式中、
は、HまたはCHから選択され、
は、−OOCRまたは−COORのいずれかまたは両方であり、
は、HまたはCOORであり、
は、−CONHR、または一種以上のC〜Cアルキル基を含むことができる5または6員へテロ環窒素を含有する環であり、
は、C〜C18アルキルフェノールであり、
全窒素含有量は、1.2〜2.0wt%の範囲である);および
H)重量平均分子量40,000〜60,000のドデシルメタクリレート
からなる群から選択される第二のポリマー
の4:1〜1:4の混合物からなる群から選択される添加剤を添加することによることを特徴とするヘーズの低減方法。
【請求項24】
前記ポリマーKは、前記GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加され、
前記第二のポリマーは、GTL基材および/または基油へ、活性成分を基準として50〜2500ppmの範囲の量で添加される
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第二のポリマーは、重量平均分子量40,000〜60,000のドデシルメタクリレートからなる群から選択されることを特徴とする請求項23に記載の方法。


【公表番号】特表2011−503324(P2011−503324A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534049(P2010−534049)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/012839
【国際公開番号】WO2009/064494
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】