説明

ガスデポジション用ナノ粒子生成装置、及びガスデポジション装置

【課題】ナノ粒子の搬送に寄与するキャリアガスの流れを高めることのできるガスデポジション用ナノ粒子生成装置、及びガスデポジション装置を提供する。
【解決手段】ナノ粒子が生成される坩堝5の上方に位置するナノ粒子搬送管2へのナノ粒子キャリアガスの流れを作る整流手段12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスデポジション成膜に用いられる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスデポジション法による成膜のためのナノ粒子は例えば、図1に例示したようにナノ粒子生成室1にて生成され、粒子搬送管2を通して成膜室3に供給される。ナノ粒子生成室1では、高周波誘導加熱コイル4が外周に設けられた坩堝5内の成膜材料6からナノ粒子が作られる。成膜室3では、ナノ粒子生成室1からのナノ粒子が粒子搬送管2の先端ノズル21から噴出し、ステージ7上の基板等のサンプル8に堆積する。ステージ7はXY駆動手段9等を用いて適宜スキャン動作される。このナノ粒子の搬送には、キャリアガスとしてHeガスをナノ粒子生成室1内に流入させることがしばしば行われる。
【0003】
キャリアガスの流れとしては、例えば図2にて矢印で示すように、
(1)坩堝5の下方空間から上方空間への流れ
(2)粒子搬送管2に吸い込まれる流れ
(3)余分粒子排出管10に吸い込まれる流れ
(4)ナノ粒子生成室1内で対流する流れ
がある。
【0004】
(1)ではキャリアガスが高周波誘導加熱コイル4の回りや高周波誘導加熱コイル4と坩堝5との間の空間を通って坩堝5の上方へ流れ、(2)ではこの上方へ流れるキャリアガスの一部が搬送管2に流れ込み、(3)では搬送管2の周りに位置した余分粒子排出管10にキャリアガスの一部が流れ込み、(4)ではキャリアガス供給口11から流入したキャリアガスがナノ粒子生成室1内を下方から上方へそして下方へと対流する。
【0005】
しかしながら、この流れにおいて、キャリアガス供給口11からナノ粒子生成室1内に供給されたキャリアガスは、供給口11から流出するとすぐに生成室1内に拡散してしまう。また、余分粒子排出管10及び粒子搬送管2に、生成室1に供給されたキャリアガスの一部と生成室1内に対流していたキャリアガスとが混ざり合った状態で入り込むことで、坩堝5と粒子搬送管2との間のガスの流れに乱れが生じ、生成されたナノ粒子が拡散してしまう。したがって、ナノ粒子の搬送に寄与する搬送管2へ流れ込むキャリアガス量は全体の供給量のごく一部であり、搬送管2入口付近のキャリアガス密度が小さく、効率的であるとは言えなかった。また、キャリアガスの流れを整えるためには、キャリアガス供給口11から供給するガス流量を多く、かつ、余分粒子排出管10から排出するガス量を多くする必要があり、大量のガスを消費する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07-166332
【非特許文献1】渕田英嗣, “ナノ粒子を使用したガスデポジション成膜装置とその応用,” エアロゾル研究, Vol. 22, No. 1, pp. 26-33, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ナノ粒子の搬送に寄与するキャリアガスの流れを高めることのできるガスデポジション用ナノ粒子生成装置、及びガスデポジション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガスデポジション成膜用のナノ粒子を生成する装置であって、坩堝の上方に位置するナノ粒子搬送管へのナノ粒子キャリアガスの流れを作る整流手段を備える、ナノ粒子生成装置を提供する。
【0009】
また、ガスデポジション成膜用のナノ粒子を生成するチャンバ内に、ナノ粒子のキャリアガスを坩堝の上方に位置するナノ粒子搬送管に導く整流手段を備える、ガスデポジション装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来例を示す図である。
【図2】従来例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態を示す図である。
【図10】図2及び図3の比較実験の条件を示す図である。
【図11】比較実験において形成する膜の模式図である。
【図12】比較実験の結果を示す図である。
【図13】本発明の別の一実施形態を示す図である。
【図14】本発明の別の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態では、図3に例示したように、坩堝5の上方に位置する粒子搬送管2へのナノ粒子のキャリアガスの流れを作る整流手段12が、ナノ粒子生成室(以下チャンバと呼ぶ)1内に設けられている。矢印で示すように、整流手段12によって、チャンバ1内に供給されたキャリアガスが、坩堝5の上方に位置する粒子搬送管2に導かれる。
【0012】
本実施形態における整流手段12は、キャリアガス供給口11から坩堝5を取り囲み、坩堝5上方へ延びる整流管12となっている。この整流管12は、チャンバ1の底部から複数のキャリアガス供給口11を囲んで上方に真っ直ぐ伸びる立ち上がり部121と、立ち上がり部から坩堝5の方向へ傾斜して伸びる傾斜部122と、傾斜部122から坩堝5と高周波加熱コイル4との間を通って坩堝5を囲み、坩堝5上方へ延びる筒状の垂直部123とを有している。
【0013】
立ち上がり部121及び傾斜部122は、チャンバ1内におけるキャリアガス供給口11からのキャリアガス流入空間を坩堝5下方の空間に制限し、この空間内に流入したHeガス等のキャリアガスを坩堝5方向へ導く。垂直部123は、傾斜部122により坩堝5下方に導かれたキャリアガスを、垂直部123と坩堝5との間に形成された空隙を通して坩堝5上方へ通す。これにより、キャリアガス供給口11から粒子生成チャンバ1内に供給されて、整流管12の上部開口から流れ出るキャリアガスは、坩堝5の上空に局所的に流れるように拘束されることによって、拡散が抑えられ、粒子搬送管2の入口付近のキャリアガス密度が増大する。
【0014】
また、供給されるガス流量と粒子搬送管2及び余分粒子排出管10により排出されるガス流量がほぼ同じとすることができ、坩堝5と粒子搬送管2との間のキャリアガスの流れが整流されて、ナノ粒子の拡散をさらに防ぐことで成膜速度を上げることができる。また、前述した図2の状態と比較してキャリアガスの供給流量を少なくしても整流効果が出ることから、ガスの消費量を低減できる。
【0015】
図4〜図11はそれぞれ整流手段12の別の実施形態を示す。図4の整流手段12は、図3の整流管12の立ち上がり部121が無い形態であり、チャンバ1の底部から直接傾斜部122が坩堝5方向に伸びた、傾斜部122と垂直部123との2段構成となっている整流管である。図5の整流手段12では、図4の整流管12の傾斜部122が、立ち上がり部121と筒状部123を繋ぐ水平部124になっている。図6の整流手段12では、図4における整流管12の傾斜部122が、垂直部123に向かって湾曲した曲面部125になっている。図7の整流手段12では、曲面部125と垂直部123との接合部が滑らかな曲面で形成されている。図8及び図9の整流手段12は簡素な形状を持ち、図8では底面部から上面の開口部までが一定の傾斜を持つ傾斜部125、図9では底面部から上面の開口部までが垂直に伸びた垂直部126で構成された整流管12となっている。
【0016】
ここで、前述した図2及び図3に示した整流管12が無い場合と有る場合におけるキャリアガス導入流量に対する成膜膜厚の変化を、図10の実験条件で比較した。キャリアガスとしてはHeガスを用いた。搬送管2は図1に示したような成膜室3に接続されている。図11はこの比較実験において形成する膜の模式図であり、山脈形状に成膜したAu薄膜の頂上と、Si基板表面との高度差をレーザ顕微鏡を用いて計測して膜厚とする。図12に示すように、整流管12を設けた場合では、整流管12が無い場合と比較して同じHeガス導入流量でより厚い膜が成膜されていることがわかる。これは、整流管12によってキャリアガスが粒子搬送管2に集まり、このキャリアガスの流れに乗ったAuナノ粒子が粒子搬送管2内により多く流れ込み、成膜室内にてステージ上の基板に効率良く堆積したことによる。
【0017】
本発明では、以上説明した整流手段12に加えて、図13に例示したように、余分粒子排出管10の外周に、キャリアガスが対流する坩堝5の上方空間を含む余分粒子排出管10の下方周囲空間を少なくとも覆うように余分粒子捕集手段13を設けてもよい。図13における余分粒子捕集手段13は、お椀型に湾曲している板状の水冷ジャケット131であり、お椀型湾曲板の外側に巻きつけるように配置された水冷管132に冷却水を流し、お椀型湾曲板を冷却する。冷却されたお椀の内側面に、チャンバ1内を対流するナノ粒子14が接触し、吸着されることで、対流ガス中の余分なナノ粒子14を粒子搬送管2及び余分粒子排出管10内に流入させないよう積極的に捕集する、これにより対流によって凝集したナノ粒子14の成膜室3(図1参照)への誤搬送を防ぐことができる。
【0018】
また、余分粒子捕集手段13は、整流管12によって坩堝5上方に流れるキャリアガスのうち、粒子搬送管2及び余分粒子排出管10から排出されなかったガスについて、余分粒子捕集手段13の内面に沿ってゆるやかにチャンバ1の下方へと流れの向きを変えることで気流を整え、坩堝5周りの乱流の発生を抑えて、整流管12の効果を高めることができる。
【0019】
図14は、余分粒子捕集手段13の異なる形状を示す。図13の余分粒子捕集手段13は、その壁面の図13の視点から見た断面形状が円弧状になっているが、図14のように多角形形状でも良く、この場合でも図13の形態と同様に対流ナノ粒子の吸着及びキャリアガスの整流を効果的に実現することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ナノ粒子生成室
2 粒子搬送管
21 ノズル
3 成膜室
4 高周波誘導加熱コイル
5 坩堝
6 成膜材料
7 ステージ
8 サンプル
9 XYステージ駆動手段
10 余分粒子排出管
11 キャリアガス供給口
12 整流手段/整流管
121 立ち上がり部
122 傾斜部
123 垂直部
124 水平部
125 曲面部
126 傾斜部
127 垂直部
13 余分粒子捕集手段
131 水冷ジャケット
132 水冷管
14 ナノ粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスデポジション成膜用のナノ粒子を生成する装置であって、坩堝の上方に位置するナノ粒子搬送管へのナノ粒子キャリアガスの流れを作る整流手段を備える、ナノ粒子生成装置。
【請求項2】
整流手段は、キャリアガス供給口から坩堝を取り囲み、坩堝上方へ延びる整流管である、請求項1に記載のナノ粒子生成装置。
【請求項3】
ナノ粒子生成室内に対流するナノ粒子を吸着して捕集する余分粒子捕集手段をさらに備える、請求項1又は2に記載のナノ粒子生成装置。
【請求項4】
余分粒子捕集手段が水冷ジャケットである、請求項3に記載のナノ粒子生成装置。
【請求項5】
ガスデポジション成膜用のナノ粒子を生成するチャンバ内に、ナノ粒子のキャリアガスを坩堝の上方に位置するナノ粒子搬送管に導く整流手段を備える、ガスデポジション装置。
【請求項6】
整流手段は、キャリアガス供給口から坩堝を取り囲み、坩堝上方へ延びる整流管である、請求項5に記載のガスデポジション装置。
【請求項7】
チャンバ内に対流するナノ粒子を吸着して捕集する余分粒子捕集手段をさらに備える、請求項5又は6に記載のガスデポジション装置。
【請求項8】
余分粒子捕集手段が水冷ジャケットである、請求項7に記載のガスデポジション装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−214090(P2011−214090A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84152(P2010−84152)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(392036108)株式会社みくに工業 (17)
【Fターム(参考)】