説明

ガストリン化合物を含む組成物および糖尿病におけるそれらの使用

本発明は、一般的にガストリン化合物を含有する新規な組成物および方法に関する。上記組成物および方法は、糖尿病の処置において有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供する。一つの局面では、本発明は、処置後に有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供する1種以上のガストリン化合物を含有する薬学的組成物を提供する。本発明の組成物により提供される有益な効果としては、ガストリン化合物の吸収の増加、分布、代謝および/または排泄が、挙げられ得る。組成物は、バイオアベイラビリティを増加(より速く吸収しかつ高い程度)または治療効果、特に持続性のある有益な効果の亢進をさせ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的にガストリン化合物を含有する組成物および方法、ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ガストリンおよび他の成長因子は、胎児膵臓の発達に関係している(BrandおよびFuller、J.Biol.Chem.263:5341〜5347)。ガストリンは、一過性に胎児のランゲルハンス島に発現され、そしてその発現は、前分化島前駆体が分化島を形成する時期に限られている。島における膵臓ガストリン発現の重要性は、知られていないが、島細胞症で膵臓ガストリンの上昇が観察される。特に、膵臓ガストリンの異常な存続は、乳児島細胞症(Hollandeら、Gastroenterology、71:251〜262、1976)およびガストリン発現島細胞腫瘍に起因する高ガストリン血症の症例で実証されている。萎縮性胃炎はまた、分化している胎児島において見られるものと類似した島細胞症(Sacchiら、Virchows Archiv B、48:261〜276、1985)と関連している。しかしながら、島細胞症とガストリン刺激との間に確立された偶然の関係は、両者とも観察されなかった。
【0003】
本明細書におけるいずれの参考文献の引用も、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として入手できると認めるものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、糖尿病およびその合併症の処置に有益な効果を提供する1種以上のガストリン化合物を含有する組成物、特に薬学的組成物を提供する。
【0005】
一つの局面では、本発明は、処置後に有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供する1種以上のガストリン化合物を含有する薬学的組成物を提供する。本発明の組成物により提供される有益な効果としては、ガストリン化合物の吸収の増加、分布、代謝および/または排泄が、挙げられ得る。組成物は、バイオアベイラビリティを増加(より速く吸収しかつ高い程度)または治療効果、特に持続性のある有益な効果の亢進をさせ得る。
【0006】
本発明はまた、ガストリン化合物を、必要に応じて薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルと共に含有する、有益な効果、特に持続性のある効果を提供する患者への投与が意図された薬学的組成物を提供する。
【0007】
本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルに、持続性のある有益な効果を提供する治療的有効量のガストリン化合物を含有する、疾患または状態の処置のための薬学的組成物を提供する。
【0008】
一つの実施形態では、ガストリン化合物を含有する薬学的組成物は、状態または疾患を処置する持続性のある有益な効果を提供する、被験体への投与に適合するもので提供される。好ましい実施形態では、上記組成物は、被験体への投与が、ほぼ正常な血糖レベルを生じ、処置終了後持続した期間被験体において維持する結果となるような形態である。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、ガストリン化合物または薬学的に受容可能なその塩wp含有する液体薬物処方物および非経口投与に安定で適切な懸濁液を提供するために再構成され得る、凍結乾燥した薬物処方物に関する。
【0010】
特定の実施形態では、本発明は、持続性のある有益な効果を提供するために適合したガストリン化合物を含有する水性組成物に関する。本発明はまた、持続性のある有益な効果を提供するガストリン化合物または薬学的に受容可能な塩を有する、少なくとも1種以上の溶解剤との水性処方物を含有する、薬物組成物に関する。
【0011】
本発明は、状態または疾患、特に糖尿病の処置において有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供するガストリン化合物を含有する組成物に向けられている。
【0012】
別の局面では、本発明は、ガストリン化合物を投与した後、特に持続した期間、島前駆体細胞が増加した量の成熟インスリン分泌細胞へ増殖するのを誘導するために有効な用量のガストリン化合物を含有する組成物を特筆する。島前駆体細胞の増殖は、エクスビボまたはインビボで誘導され得る。上記組成物は、島前駆体細胞の成熟インスリン分泌細胞への分化を誘導するために有効な用量であり得る。上記組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルの中であり得る。
【0013】
本発明は、処置後有益な効果、好ましくは、持続性のある有益な効果を提供するために適合した1種以上のガストリン化合物を含有する安定な薬学的組成物を調製する方法をさらに提供する。方法は、1種以上のガストリン化合物と、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクル、特に上記ガストリン化合物を物理的に安定化させるために有効な薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルとを混合する工程を包含し得る。組成物が調製された後、それらは、適切な容器に入れられ、示された状態の処置のために表示され得る。本発明の組成物の投与のために、そのような表示は、投与の量、頻度および方法を含む。
【0014】
本発明はまた、状態および/または疾患の予防および/または処置するための薬剤の調製のために少なくとも1種以上のガストリン化合物を含有する組成物の使用を意図している。本発明は、状態および/または疾患の予防および/または処置のための薬剤の調製における本発明の薬学的組成物の使用を、さらに提供する。上記薬剤は、処置後、有益な効果、好ましくは持続性のある有益な効果を提供する。
【0015】
本発明は、有益な効果を提供するために1種以上の治療的有効量のガストリン化合物を被験体に投与する工程を包含する、被験体における状態および/または疾患の処置および/または予防する方法を提供する。一つの局面では、本発明は、処置後持続性のある有益な効果を生じる処置を提供する。
【0016】
本発明は、糖尿病の予防および/または処置における特定の適用を有する。従って、本発明は、糖尿病の症状を有する被験体に投与するときに有益な効果、好ましくは持続性のある有益な効果を生じる、治療有効量の1種以上のガストリン化合物を投与する工程を包含する処置方法に関する。一つの実施形態では、持続性のある有益な効果が、以下:(a)Cペプチド産生の増加、(b)膵臓インスリン産生の増加、(c)ほぼ正常な血糖レベルの1以上により証拠づけられる。
【0017】
一つの実施形態では、本発明は、本発明の治療有効量の組成物を投与する工程を包含するタイプIまたはタイプII糖尿病を予防および/または処置する方法を提供する。
【0018】
さらなる実施形態では、本発明は、タイプIまたはタイプII糖尿病を患っているヒトにおいて、治療的有効量の本発明の組成物を投与する工程を包含する、状態および/もしくは疾患の進行を改善、または状態および/もしくは疾患のより重篤でない段階を獲得する方法を提供する。
【0019】
本発明は、治療的有効量の本発明の組成物を投与する工程を包含する、傷害されたグルコース耐性の進行もしくは非インスリン依存性タイプII糖尿病のインスリン依存性のタイプ糖尿病への進行を遅延させる方法に関する。
【0020】
本発明はまた、治療的有効量の本発明の組成物を投与することを包含する、被験体のインスリン合成能力を増加させる方法に関する。
【0021】
本発明の方法の実施形態では、上記被験体はインスリンで処置されない。
【0022】
本発明は、本発明の1種以上のガストリン化合物または薬学的組成物を含むキットを提供する。一つの局面では、本発明は、1種以上のガストリン化合物を含有する組成物、容器および使用説明書を包含する、糖尿病の予防および/または処置のためのキットを提供する。上記キットの組成物は、薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルを、さらに包含し得る。
【0023】
本発明のこれらおよび他の局面、特徴および有利点は、図面および詳細な説明から当業者には明らかなはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(用語)
本明細書で両端として引用される数値範囲は、その範囲内(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、および5を含む)に含まれる全ての数および端数を含む。全ての数およびその端数は、用語「約」により修飾されると推定されることも、また理解されるべきである。用語「約」は、参照される数のプラスまたはマイナス0.1〜50%、5〜50%、または10〜40%、好ましくは10〜20%、さらに好ましくは、10または15%を意味する。さらに、「a」、「an」および「the」は、内容が明確に別の指示をしていない限り、複数の対象を含む。従って、例えば「化合物」を含有する組成物をさす場合、2以上の化合物の混合物を含む。
【0025】
本明細書で記載する化合物は、1以上の不斉中心を含み得るし、エナンチオマー、ジアステレオマー、および(R)−または(S)−としての絶対立体化学により定義され得る他の立体異性体型になり得る。従って、本発明は、全てのそのような可能性のあるジアステレオマーおよびエナンチオマーならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態も含む。光学的に活性な(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンもしくはキラル試薬を使用して調製され得、または従来技術を使用して分離され得る。本明細書で記載される化合物が、幾何的非対称中心を含む場合、そして別に特定しない限り、その化合物は、EおよびA幾何異性体を含むものと意図されている。全ての互変異性体は、本発明の範囲内に含まれるように意図されている。
【0026】
用語「被験体」、「個体」、「受容者」または「患者」は、本明細書で記載する疾患または状態に苦しめられ、もしくは有すると推測される、もしくはかかりやすい哺乳動物のような温血動物を含む、動物をいう。哺乳動物は、限定なく哺乳動物のいかなるメンバーも含む。一般に、この用語はヒトをいう。この用語はまた、ウマ、蓄牛、ヒツジ、家禽、魚、ブタ、ネコ、イヌおよび動物園の動物、ヤギ、サル(例えば、ゴリラ、もしくはチンパンジー)、ならびにラットおよびマウス等の齧歯類を含む、食糧のために、またはペットとして飼育される家畜を含む。被験体/個体/患者への使用のための方法は、予防および治療的用途を企図している。処置のための代表的な被験体は、本明細書で記載されている状態または疾患に感受性がある、患っているまたは患ったことがあるヒトを含む。本発明の実施形態では、被験体は糖尿病患者である。
【0027】
用語「薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクル」は、活性成分の有効性もしくは活性に干渉せず、かつそれが投与される宿主に対して毒性でない媒体をいう。キャリア、賦形剤、またはビヒクルとしては、希釈剤、結合剤、接着剤、滑沢剤、崩壊剤、バルキング剤、湿剤または乳化剤、pH緩衝剤ならびに特定の組成物を調製するために必用とされ得る吸収剤のようないろいろな物質が挙げられる。キャリアなどの例としては、限定されないが、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセリン、エタノールおよびそれらの組合せが挙げられる。活性物質のためのそのような媒体および試薬の使用は当該分野で周知である。
【0028】
「薬学的に受容可能な塩」とは、本発明の使用に適切な化合物に存在し得る酸基または塩基基の塩が含まれる。薬学的に受容可能な塩の例としては、カルボン酸基のナトリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、水酸化第二鉄塩、イソプロピルアミン塩、トリエチルアミン塩、2−エチルアミン塩、2−エチルアミノ塩、エタノール塩、ヒスチジン塩、プロカリン(procarine)塩およびカリウム塩ならびにアミノ基の塩酸塩が挙げられる。他の薬学的に受容可能なアミノ基の塩としては、臭化水素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酢酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、亜リン酸(hydrogen phosphate)塩、次亜リン酸(dihydorogen phosphate)塩、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート)、およびp−トルエンスルホン酸塩(トシレート)が挙げられる。
【0029】
用語「予防するおよび/または処置する」は、状態または疾患の発症の前もしくは後のいずれかに、本発明の組成物を被験体に投与することをいう。処置は急性にでも慢性的のいずれでも実施され得る。
【0030】
「有益な効果」とは、有利な薬学的効果および/または有利な治療的効果ならびに改善された薬物動態の性質および改善された生物学的活性を含む、ガストリン化合物またはその組成物の効果をいう。本発明の実施形態では、有益な効果とは、限定されないが、以下:島炎症の減少または非存在、疾患進行の減少または予防、生存率の増加、疾患または状態の処置もしくは逆転が挙げられる。
【0031】
一つの実施形態では、上記有利な効果は、糖尿病において以下:(a)特に血糖レベルが7〜10mMより多い場合の空腹時血糖レベルの減少;(b)グリコシル化ヘモグロビンの減少;(c)血清インスリン濃度の増加:(d)膵臓インスリン産生または含量の増加;および/または(e)疾患進行の予防、の1以上により証拠づけられ得る。特定の実施形態では、上記有益な効果は、(a)、(b)および(c)または(a)、(b)および(d)を含む。
【0032】
好ましい実施形態では、上記有益な効果は、処置終了後、長期間にわたる有益な効果が持続する「持続性のある有益な効果」である。有益な効果は、処置後、有益な効果が、少なくとも約2〜4週間、2〜5週間、3〜5週間、2〜6週間、2〜8週間、2〜10週間、2〜12週間、2〜14週間、2〜16週間、2〜20週間、2〜24週間、2週間〜12ヶ月、2週間〜18ヶ月の期間、持続し得る。有益な効果が持続する上記期間は、上記処置の期間およびタイミングと関連し得る。被験体は、連続的に、およそまたは少なくとも約2〜4週間、2〜6週間、2〜8週間、2〜10週間、2〜12週間、2〜14週間、2〜16週間、2週間〜6ヶ月、2週間〜12ヶ月、2週間〜18ヶ月の期間、定期的にまたは連続的に処置され得る。持続性のある有益な効果は、処置後、長期間にわたるCペプチド産生の増加、膵臓インスリン産生または濃度の増加、およびほぼ正常もしくは低い血糖レベルのうちの1以上として明らかになり得る。
【0033】
上記有益な効果は、化合物が無いときの効果に対して、ガストリン化合物の効果が統計解析の観点から、統計的に有意な効果であり得る。「統計的に有意」または「有意に異なる」効果またはレベルは、標準より高いか、またはより低いレベルかを表し得る。本発明の実施形態では、上記の差は、ガストリン化合物なしで得られた効果と比較して、差が1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、または6倍高い、または低くあり得る。
【0034】
「治療的有効量」は、1以上の望ましい有益な効果、特に1以上の持続性のある有益な効果を生じる、本発明の活性化合物(例えばガストリン化合物)または、組成物の量または薬物量に関連する。物質の治療的有効量は、病気の状態、個体の年齢、性別および体重ならびに個体における物質の望ましい応答を誘導する能力のような要因に従って変化し得る。用量レジメンは、最適の治療応答(例えば持続性のある有益な効果)を提供するように調節され得る。例えば、いくつかに分けられた用量は、毎日投与され得るか、または治療状況の緊急性により指示されるように比例的に減少させ得る。
【0035】
「天然の配列のポリペプチド」または「天然のポリペプチド」は、天然由来のポリペプチドと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。そのような天然の配列のポリペプチドは、自然から単離され得、組換えもしくは合成手段により産生され得る。上記用語は、天然に存在するポリペプチドの短くなった形態もしくは分泌形態、天然に存在する改変体形態(例えば、代替的にスプライスされた形態またはスプライス改変体)を含むポリペプチド改変体および天然に存在する対立遺伝子改変体を包含する。
【0036】
用語「ポリペプチド改変体」は、天然配列ポリペプチドと、少なくとも約70〜80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド、特に配列番号1〜5のいずれかにおいて同定された配列と、少なくとも70〜80%、85%、90%、95%、98%または99%のアミノ酸配列の同一性を有するポリペプチドを意味する。そのような改変体は、例えば他の種からの改変体を含むが、天然配列のポリペプチドを除く、1以上のアミノ酸残基が、配列番号1〜5の完全長配列または成熟配列のN末端もしくはC末端へ付加されるか、またはN末端もしくはC末端からの欠失するポリペプチドを含む。
【0037】
2種のアミノ酸配列または2種の核酸配列の同一性%は、必要な場合、最大の配列同一性を達成するために配列を整列化し、ギャップを導入した後、ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基またはヌクレオチドの%として、定義されるが、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮しない。アミノ酸配列同一性%または核酸配列同一性%を測定する目的のための整列化は、種々の従来の方法(例えば、GCGプログラムパッケージを含む市販されているコンピュータソフトウェア(Devereux J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387、1984);BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Atschul、S.F.ら、J.Molec.Biol.215:403〜410、1990))を使用して達成され得る。上記BLASTプログラムは、NCBIおよび他の業者(BLAST Manual、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、Md.20894;Atschul、S.ら、J.Mol.Biol.215:403〜410、1990)から市販されている。当業者は、比較される完全長の配列に対して最大の整列化を達成するのに必要な、いかなるアルゴリズムも含め、整列化を測定するために適切なパラメータを決定し得る。同一性および類似性を決定する方法は、市販のコンピュータープログラムに体系化されている。
【0038】
「アナログ」は、親ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基が、他のアミノ酸残基で置換されており、親ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基が逆位になり、親ペプチドの1以上のアミノ酸残基が欠失されており、そして/または1以上のアミノ酸残基が親ペプチドに付加されたポリペプチドをいう。そのような付加、置換、欠失および/または逆位は、N末端もしくはC末端のいずれか、または親ペプチドの中で、あるいはそれらの組合せであり得る。
【0039】
変異は、部位特異的変異およびPCR媒介変異のような標準的な方法により、ポリペプチドに導入され得る。保存的な置換は、1以上の予測される非必須アミノ酸残基でなされ得る。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基により置換されるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸としては、当該分野で公知であり、塩基性側鎖(例えば、Lys、Arg、His)、酸性側鎖(例えば、Asp,Glu)、非電荷極性側鎖(例えば、Gly、Asp、Glu、Ser、Thr、TyrおよびCys)、非極性側鎖(例えば、Ala、Val、Leu、Iso、Pro、Trp)、β分岐側鎖(例えば、Thr、Val、Iso)、ならびに芳香族側鎖(例えば、Tyr、Phe、Trp、His)が挙げられる。変異はまた、天然配列の一部または全部にそって、ランダムに、例えば、飽和変異誘発により導入され得る。変異後、改変体ポリペプチドは、組換えにより発現され得る。
【0040】
「誘導体」は、親ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基が化学的に修飾されているポリペプチドをいう。化学修飾としては、化学部分を付加すること、新しい結合を造ることおよび化学部分を除去することが挙げられる。ポリペプチドは、例えばアルキル化、アシル化、グリコシル化、PEG化(pegylation)、エステル形成、脱アミド化、またはアミド形成により、化学的に修飾され得る。
【0041】
「キメラポリペプチド」は、異種のペプチド(即ち、選択されたポリペプチド以外の他のポリペプチド)に作動可能なように連結された選択されたポリペプチドの全てまたは一部(好ましくは、生物学的に活性である)を包含する。上記融合タンパク質の中には、用語「作動可能に連結されている」は、選択されたポリペプチドおよび異種のポリペプチドが相互にフレーム内で融合することを示すよう意図されたものである。上記異種ペプチドは、選択されたポリペプチドのN末端またはC末端へ融合され得る。キメラタンパク質および融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術で、産生され得る。
【0042】
「ガストリン化合物」は、完全にもしくは、部分的に、直接的にもしくは間接的に、ガストリンの活性もしくはガストリン/CCKレセプターの活性を、増強する、誘導する、擬似する、そうでなければ昂進するペプチド、および非ペプチド化合物を含む任意の化合物を指すと理解される。特に、ガストリン化合物は、完全にもしくは部分的にガストリン/CCKレセプターと関連および/または活性化する。ガストリン/CCKレセプターは、ガストリンと関連するレセプターを含む。
【0043】
本発明のいくつかの適用には、ガストリン化合物は、ガストリン/CCKレセプターと関連する、結合する、相互作用するまたは刺激するリガンドであり得る。ガストリン化合物は、適切なIC50を有し、例えば当該分野で公知の方法により、測定してIC50が、約0.7nMのペプチド低分子または非ペプチド低分子(Singhら、(1995)J.Biol.Chem.270:8429〜8438、およびKopinら(1995)J.Biol.Chem.270:5019〜5023を参照のこと。インビトロ細胞増殖アッセイおよびレセプター結合アッセイが、Singhら、(1995)J.Biol.Chem.270:8429〜8438、およびKopinら(1995)J.Biol.Chem.270:5019〜5023に記載されている)が選択され得る。
【0044】
「ガストリン化合物」としては、天然配列、または合成ガストリンポリペプチド、フラグメント、アナログ(例えば、ムテイン)、誘導体、アイソフォーム、改変体、キメラペプチド、同一配列のポリペプチド、擬似ペプチドおよび薬学的に受容可能なそれらの塩ならびに活性代謝物ならびにプロドラッグが挙げられ得る。特に上記用語は、ガストリン34(ビッグガストリン)、ガストリン17(リトルガストリン)、ガストリン8(ミニガストリン)ペンタガストリン、テトラガストリンおよびそれらのフラグメント、アナログ、および誘導体などの、種々の形態のガストリン、プレプロガストリン、プロガストリンが含まれる。
【0045】
ビッグガストリン−34(Bonatoら、1986、Life Science 39:959)、およびリトルガストリン−17(small gastrin)(Bentleyら、(1966)Nature 209:583)を含むガストリンの配列が、配列番号1〜5に示されている。ビッグガストリン−34は、本質的にリトルガストリン−17のN末端におけるアミノ酸配列の延長である。ビッグガストリンは、インビボで分解されてガストリン−17を放出する。N末端のGlpは、ピログルタミン酸であり、グルタミン酸が天然で環化したものである。種々の実施形態では、システインまたはリジンが、ピログルタミン酸を有するガストリンの端末に付加したり、ピログルタミン酸がグルタミン酸で置換されたり、またはピログルタミン酸が欠失したりする。さらに、ガストリン−34およびガストリン−17の各々は、本明細書の配列番号1〜4に示されるように、15の位置においてメチオニンまたはロイシンを有するものが、使用され得る。ガストリン化合物は、硫酸化または非硫酸化され得る[J.H.Walsh、「Gastrin」in Gut Peptides:Biochemistry and Physiology、J.H.WalshおよびG.J.Dockray編、Raven Press Ltd.、New York、1994 ガストリンレビューを参照のこと]。
【0046】
ガストリン化合物はまた、活性アナログ、フラグメントそして他の改変も含み得、例えば内因性哺乳動物ガストリンまたは天然配列のガストリン(例えば60%、70%、80%、90%、95%、98%、もしくは99%配列同一性を共有する)とアミノ酸配列同一性を共有する。
【0047】
本発明で使用され得るガストリン化合物の例としては、米国特許第6,288,301号に記載されている化合物を含む。本発明のいくつかの適用において、ガストリン化合物は、ペプチドもしくは非ペプチドアゴニストまたはA71378のようなガストリンレセプターの部分的アゴニスト(Linら、Am.J.Physiol.258(4 Pt1):G648,1990)から選択され得る。本発明の他の適用において、ガストリン化合物は、限定されないが本明細書で記載されているガストリン化合物またはCCK58,CCK33,CCK22,CCK12およびCCK8などのようなコレシストキニン(CCK)を含むガストリンCCKレセプターリガンドであり得る。
【0048】
ガストリン化合物はまた、組織貯蔵部位からの内因性のガストリン、コレシストキニンまたは同様な活性のペプチドの分泌を増加する物質を含む。これらの例としては、ガストリン放出ペプチド、胃酸分泌を阻害し血漿中のガストリンレベルを増加させるオメプラゾール、CCK刺激を増加するダイズトリプシンインヒビターおよびガストリンレセプターに結合しないでガストリン分泌を刺激するガストリン放出ペプチドがある。
【0049】
ガストリン化合物は、従来のプロセスを使用して調製され得る。例えば、ガストリン−17のような小さな形態のガストリンは、ペプチド合成により経済的に調製され、この合成ペプチドは市販されている。特に、ガストリン化合物は、固相合成(Merrifield,1964,J.Am.Chem.Assoc.85:2149〜2154)または均一溶液における合成(Houbenweyl、1987、Methods of Organic Chemistry、E.Wansch 編、Vol.15IおよびII、Thieme、Stuttgart)のようなタンパク質化学において周知の技術を使用して化学合成により合成され得る。上記合成は、説明書の手順を使用するかまたは自動化により達成され得る。自動合成は、例えば、Applied Biosystems 431A peptide synthesizer(Perkin Elmer)を使用して達成され得る。
【0050】
ガストリン化合物は、当業者に周知の組換え法により調製され得る。従って、本発明は、ガストリン化合物、必要に応じて調節要素をコードするヌクレオチド配列およびガストリン化合物の調製のためのヌクレオチド配列を含む宿主細胞の使用を企図している。
【0051】
ガストリン化合物はまた、市販業者からも得られ得る。例えば、15位にメチオニンまたはロイシンを有する合成ヒトガストリン17は、Bachem AG、Bubendorf(Switzerland)およびResearch Plus Inc(New Jersey、USA)から入手できる。
【0052】
ガストリン化合物のヌクレオチド配列を含む「宿主細胞」は、広く種々の原核宿主細胞および真核宿主細胞を含む。例えば、上記ポリペプチドは、E.coli、BacillusもしくはStreptmycesのような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルスを使用して)、酵母細胞、または哺乳動物細胞において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、Goeddel、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1991)に、見出され得る。宿主細胞はまた、挿入ヌクレオチド配列の発現を調節し、または改変し(例えば、グリコシル化もしくはリン酸化)および所望の様式でポリペプチドを処理(例えば、分解)することから選択され得る。宿主系または、細胞株は、タンパク質の翻訳後のプロセッシングおよび修飾のための特異的および特徴的なメカニズムを有する系または細胞株より選択され得る。上記タンパク質の長期間の高収率の安定な発現のために、安定に遺伝子産物を発現している細胞株および宿主システムは、操作され得る。
【0053】
「調節要素」は、遺伝子要素または遺伝子発現において、例えばプロモーターまたはエンハンサーのような調節の役割を有する要素を指す。多くの適切なベクターおよびプロモーターが当業者には公知であり、ガストリン化合物をコードする組換え構築物は、市販で入手可能である。以下のベクターは、例として提供される。細菌:pBs、ファージスクリプト、PsiX174、pBluescript SK、pBs Ks、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene);pTrc99A、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia)、真核:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXTL pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。本明細書で定義される「作動可能に連結される」は、単離されたポリヌクレオチドおよび調節要素が、上記ポリペプチドが、結合されたポリヌクレオチド/調節要素配列で形質転換された(トランスフェクトされた)宿主細胞により発現されるように、ベクターあるいは細胞内におかれることを意味している。調節要素は、構成要素であり得るか、または誘導された転写調節領域、例えば細胞内グルコース濃度を増加させることにより誘導される、インスリン遺伝子からの転写調節領域であり得る。
【0054】
「状態および/または疾患」「状態」および「疾患」は、糖尿病およびその合併症を含む。本明細書で使用される用語「糖尿病」は、実験動物モデルならびにI型糖尿病およびII型糖尿病、早期糖尿病ならびに緩やかに減少するインスリンもしくは緩やかに上昇する血糖レベルにより特徴づけられる前糖尿病状態のようなヒトの形態を含む、哺乳動物における糖尿病のいずれの明白な症状をも意味する。「前糖尿病状態」は、インスリンまたはグルコースレベルの観点から症状を示す、および/または家族履歴、遺伝的素因、II型糖尿病の症例における肥満に起因する糖尿病または関連する状態に対する感受性を示す被験体、ならびに以前に糖尿病もしくは関連する状態を有し、再発の危険のある被験体を含む。
【0055】
「インスリノトロピック活性」とは、グルコースレベルの上昇に応答するインスリン分泌を促進し、細胞によるグルコース取込みを産生または増加し、血清グルコースレベルまたは血糖レベルを低下させる物質の能力をいう。当該分野で公知の方法が、インスリノトロピック活性のアッセイに用いられ得る。例えば、インビトロおよびインビボの方法が、ガストリンレセプター結合活性、レセプター活性化(GelfandらのEP619,322および米国特許第5,120,712号に記載の方法を参照のこと)およびインスリンまたはCペプチドレベルを測定するために使用され得る。本明細書で記載されている化合物または組成物は、島細胞が上記のバックグランドレベルまたはガストリン化合物もしくは組成物が存在しない場合のレベル以上の化合物または組成物の存在下で、インスリンを分泌する場合には、インスリノトロフィック活性を有する。
【0056】
「島新生」とは、増殖または分化により、新しい多能性の膵臓前駆体細胞、膵臓島前駆体細胞またはβ細胞の形成を意味し、それらの細胞は無制限な様式で再生する能力を有する幹細胞の特性を有し得るか、または有し得ない。
【0057】
(組成物および方法)
本発明は、有益な効果(特に、増強された有益な効果、より詳細には、持続性の有益な効果)を提供するために1種以上のガストリン化合物を利用する組成物および方法に関する。
【0058】
一実施形態において、疾患または状態が糖尿病である場合、本発明の組成物または処置の持続性の有益な効果は、以下の効果:
a)糖尿病の症状を有する被験体に投与した後にガストリン化合物の非存在下で測定されるレベルと比較した膵臓のインスリンレベルの上昇。好ましくは、上記化合物は、被験体において膵臓のインスリンレベルの少なくとも、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約33%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%の上昇を誘導する。
【0059】
b)糖尿病の症状を有する被験体に投与した後の島炎症の症状の軽減または欠如。
【0060】
c)糖尿病の症状を有する被験体においてガストリン化合物の非存在下で測定されるレベルと比較した血中グルコースレベルの減少。好ましくは、上記化合物は、血中グルコースレベルの少なくとも、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%の減少を誘導する。より好ましくは、上記化合物は、正常な被験体において一般的なレベルぐらいかまたはそのレベル付近の血中グルコースレベルを生じる。
【0061】
(d)グルコース耐性の改善。特に、グルコース耐性の少なくとも約5〜95%、約10〜90%、約10〜80%、約10〜70%、約10〜60%の改善。
【0062】
e)糖尿病の症状を有する被験体においてガストリン化合物の非存在下で測定されるレベルと比較したC−ペプチドレベルの上昇。好ましくは、上記化合物は、C−ペプチドレベルの少なくとも、約0.05%、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約33%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、または約99%の上昇を誘導する。
【0063】
f)長期間(特に、少なくとも、1週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、10週間、12週間、14週間、16週間、20週間、24週間、30週間、40週間、52週間、または78週間、より詳細には、2〜4週間、2〜5週間、3〜5週間、2〜6週間、2〜8週間、2〜10週間、2〜12週間、2〜16週間、2〜20週間、2〜24週間、2週〜12ヶ月間、または2週間〜18ヶ月間)、ほぼ正常な血中グルコースレベルの維持。
【0064】
g)糖尿病に罹患している被験体における疾患の進行の低下、予防、または疾患の進行速度の緩徐化。
【0065】
h)糖尿病の症状を有する重篤な高血糖およびケトアシドーシスの発症の低下または予防。
【0066】
i)糖尿病の症状を有する被験体における生存の上昇。
【0067】
j)インスリン注射/摂取についての必要条件の、少なくとも10〜90%、10〜80%、10〜70%、10〜60%、10〜50%,10〜40%、10〜30%、または10〜20%の減少。
のうちの1つ以上のとして表れ得る。
【0068】
1つ以上のこれらの有益な効果は、糖尿病の被験体または糖尿病疾患モデル(例えば、糖尿病の症状を有する非肥満(NOD)マウス)で実証され得る。
【0069】
ガストリン化合物は、以下の特徴のうちの1つ以上に基づく本発明における特定の適用のために選択され得る:ガストリンレセプターに結合する能力、β細胞の増殖および/もしくは分化またはインスリン分泌(insulinotropic)活性を生じる、シグナル伝達経路を惹起する能力;グルコースレベル、インスリン分泌活性を低下させる能力;β細胞の増殖/分化の刺激;および/または、慣用的な方法を使用して、ヒトにおいて少なくとも約5分間〜24時間、好ましくは2〜10時間もしくは2〜8時間のインビボでの半減期。
【0070】
持続性の有益な効果(好ましくは、統計学的に有意な持続性の有益な効果)を有する本発明の薬学的組成物および方法が、選択される。一実施形態において、持続性の有益な効果を有する薬学的組成物が、提供され、この薬学的組成物は、ガストリン17ならびにそのアナログおよび誘導体(好ましくは、アミノ酸15位にLeu残基を有する17アミノ酸残基を有する合成ヒトガストリンI)からなる群より選択されるガストリン化合物を含有する。特定の実施形態において、統計学的に有意な持続性効果を有する薬学的組成物が提供され、この薬学的組成物は、ガストリン−17(leu)を含有する。
【0071】
本発明は、疾患の重篤度、疾患症状、ならびに/または状態および/もしくは疾患の再発周期性を予防し、そして/または寛解させるための本発明の組成物の使用を企図する。本発明はまた、本発明の組成物または処置を使用して、哺乳動物において、状態および/もしくは疾患を予防することならびに/または処置することを企図する。特に、本発明は、糖尿病の持続性処置のためにガストリン化合物を使用するための改善された方法および組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、より高い、効能(efficacy)、効力(potency)、および有効性を達成するガストリン化合物を含有する組成物を提供する。より大きい効能(efficacy)は、処置を中断した後に血中グルコースの持続性の改善をもたらす処置で、重篤な糖尿病、および、また新しく発症した糖尿病においてグルコース耐性を改善することによって示され得る。また、低用量(すなわち、1〜50μg/体重kg未満、特に、1〜30μg/体重kg未満の用量)のガストリンを使用した本明細書中に記載される組成物を用いて、グルコース耐性における改善が、観察され得る。
【0072】
本発明のガストリン処置のより大きな効能(efficacy)および効力(potency)は、処置の治癒比を改善させ、不都合な副作用および毒性を軽減する。本発明の方法はまた、β細胞破壊が完了した長時間後に処置が始まる場合でさえ、長期にわたる糖尿病を改善するという有用性を高める。
【0073】
特定の機構に縛られることは望まないが、ガストリンで処置した後のグルコース耐性の改善は、β細胞再生およびそれに随伴のβ細胞の増加した塊に起因する。組織学的分析は、ガストリンを用いた処置が、形態計測学的に測定された場合、β細胞塊の増加とともにβ細胞の再生を刺激することを示し得る。これは、膵臓のインスリン含有量の増加によって生化学的に確認され得る。β細胞塊の増加はまた、血流中へのインスリン分泌の増加を生じ得、これは、血漿中の循環しているCペプチドの増加によって示され得る。
【0074】
長期の有効な島細胞の新生は、本発明のガストリン化合物または組成物の投与の後に、本発明によって達成され得る。ガストリン化合物または組成物は、被験体において島細胞の増殖および/または分化を提供するために、インビボで投与され得るか、あるいは、それは、移植のための細胞にエキソビボで投与され得る。ガストリン化合物は、組換え技術を含む当業者に公知である方法を使用して細胞に導入され得る。例えば、キメラインスリンプロモーター−ガストリン融合遺伝子が、膵臓細胞にインビボまたはエキソビボで導入されて、1種以上のガストリン化合物が発現され得る。
【0075】
本発明は、幹細胞または前駆細胞を拡大させ、そしてインスリン分泌細胞へと分化させるための方法に関し、この方法は、上記幹細胞または前駆細胞を、治療上有効量の、本発明のガストリン化合物もしくは組成物または十分量のガストリン化合物または組成物と接触させて、幹細胞または前駆細胞を拡大および分化させる工程を包含する。上記幹細胞は、膵島、臍帯、胚、または幹細胞株から得られ得る。拡大および分化の量および期間は、ガストリン化合物または組成物の非存在下で達成されるものと比較して有意に異なる。一実施形態において、上記幹細胞または前駆細胞は、培養においてガストリン化合物または組成物と接触させられる。別の実施形態において、上記幹細胞または前駆細胞は、被験体において上記ガストリン化合物または組成物と接触させられる。上記ガストリン化合物または組成物は、被験体における幹細胞の移植の前、間またはその後に被験体に投与されて、長期間被験体において幹細胞を拡大および分化させ得る。上記方法はさらに、免疫抑制剤を投与する工程を包含する。
【0076】
一局面において、本発明は、投与後に長期間、膵島前駆細胞から成熟インスリン分泌細胞への分化をもたらすために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を提供することによって、真性糖尿病を処置するための方法を提供する。上記組成物中のガストリン化合物は、生理学的に受容可能なキャリア中で全身投与(特に、注射によって、好ましくは、静脈内に)され得る。あるいは、ガストリン化合物が、インサイチュで発現され得、そして膵島前駆細胞が、細胞中で上記化合物の発現を提供する発現構築ベクター内にあるガストリン化合物をコードする1つ以上の核酸で、エキソビボまたはインビボのいずれかにて形質転換される。ガストリン化合物をコードする核酸は、プレプロガストリンペプチド前駆体コード配列(これは、発現後にガストリンへとプロセシングされる)を含み得る発現構築物内に含まれ得る。上記発現構築物は、調節エレメントを含み得る。
【0077】
本発明はまた、被験体において島の新生を誘導することに関し、この誘導は、島前駆細胞と、被験体において島前駆細胞の増殖を増大および延長するために十分な量の、本発明のガストリン化合物または組成物とを接触させて、それによって島の新生を誘導する工程を包含する。一局面において、本発明は、被験体において長期β細胞増殖を刺激するための方法を提供し、この方法は、治療上有効量の本発明のガストリン化合物または組成物を投与する工程を包含する。一実施形態において、本発明は、長期間被験体においてβ細胞の数および大きさを増加させるための方法を提供し、この方法は、治療上有効量の本発明のガストリン化合物または組成物を投与する工程を包含する。
【0078】
長期間にわたる成熟インスリン分泌細胞への多能性膵臓前駆細胞(例えば、膵管細胞)の再生的分化は、真性糖尿病(特に、若年性の発症した糖尿病)の治療のための、本明細書中に記載されたガストリン化合物、組成物および方法を用いて得られ得、そして、全身投与または膵臓内でのインサイチュ発現のために提供されるガストリン化合物または組成物の治療的投与によって得られ得る。
【0079】
本発明は、組成物(これは、患者の膵島前駆細胞から成熟インスリン分泌細胞への持続性分化をもたらすために、そして/または存在する島細胞におけるインスリン合成を刺激するために、十分な量のガストリン化合物を含有する)を投与することによって、真性糖尿病の処置が必要な患者において真性糖尿病を処置するための方法を提供する。上記組成物は、全身投与され得るか、または発現ベクター内に核酸構築物を含む宿主細胞によってインサイチュで発現され得、ここで、この核酸構築物は、膵島前駆細胞において機能する転写調節エレメントおよび翻訳調節エレメントと一緒に、ガストリン化合物についてのコード配列を含む。
【0080】
一局面において、本発明は、真性糖尿病の処置が必要な患者において、真性糖尿病の処置をするための方法を提供し、この方法は、個体に、膵島前駆細胞から成熟インスリン分泌細胞への持続性分化をもたらすために十分な用量のガストリン化合物を提供する組成物を投与する工程を包含する。別の局面において、本発明は、インスリン依存性糖尿病(特に、I型糖尿病または若年性真性糖尿病)を処置するための方法を提供し、この方法は、糖尿病の哺乳動物に、分化再生的の量のガストリン化合物を、好ましくは、全身に投与して、島の新生を刺激し、これにより、投与後に、膵臓における機能性グルコース応答性インスリン分泌細胞の数の増加を長期間もたらす工程を包含する。
【0081】
本発明は、長期間、糖尿病患者における膵島移植片の機能性β細胞の塊を拡大させるための方法を企図し、この方法は、治療上有効量の、本発明のガストリン化合物または組成物を上記患者に投与する工程を包含する。
【0082】
一実施形態において、本発明は、糖尿病を予防および/または処置するための方法を提供し、この方法は、その予防および/または処置が必要な哺乳動物に、投与の後、長期間、哺乳動物における膵臓インスリン分泌β細胞の数を増加させるために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与して、それによって上記糖尿病を予防および/または処置する工程を包含する。上記組成物は、全身投与される。上記哺乳動物は、糖尿病の哺乳動物であり、例えば、上記哺乳動物は、哺乳動物の寿命の1%の範囲について糖尿病であった。上記ガストリン化合物は、長期間、グルコース応答性インスリン分泌島細胞中への膵島前駆細胞の分化を誘導するために十分な量で提供される。
【0083】
本発明の別の実施形態は、糖尿病を予防および/または処置するための方法を提供し、この方法は、それが必要な哺乳動物に、投与の後、長期間、膵臓組織における島前駆細胞の増殖の量および持続期間を上昇させるために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与して、それによって、上記糖尿病を予防および/または処置する工程を包含する。
【0084】
別の局面において、本発明は、糖尿病を予防および/または処置するための方法を提供し、この方法は、それが必要な哺乳動物に、投与の後、長期間、哺乳動物における膵臓インスリン分泌β細胞の数を増加させるために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与する工程;および島の新生の量を決定して、それによって、上記糖尿病を予防および/または処置する工程を包含する。島の新生の量は、以下のパラメータのうちの1種以上によって測定され得る:血中グルコース、血清グルコース、血中グリコシル化ヘモグロビン、膵臓細胞の塊、血清インスリン、および膵臓のインスリン含有量。上記組成物の投与は、上記組成物を投与する前にアッセイされる血中グルコースと比較して、血中グルコースを減少させる。グリコシル化ヘモグロビン濃度は、上記組成物を投与する前にアッセイされる哺乳動物におけるグリコシル化ヘモグロビン濃度と比較して、長期間減少する。血清インスリン濃度は、上記組成物を投与する前にアッセイされる哺乳動物における血清インスリン濃度と比較して、長期間上昇する。膵臓のインスリン濃度は、上記組成物を投与する前にアッセイされる哺乳動物における血清インスリン濃度と比較して、長期間上昇する。
【0085】
さらなる局面において、本発明は、哺乳動物における膵島の新生を誘導するための方法を提供し、この方法は、投与の後、長期間にわたり、膵臓組織における島前駆細胞の量および増殖持続期間を増加させるために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与して、それによって、膵島の新生を誘導する工程を包含する。複数個の細胞は、多細胞であり得る。複数個の細胞は、哺乳動物に全身に送達される。
【0086】
なおさらなる局面において、本発明は、長期間の動物細胞における島の新生治療を誘導するための方法を提供し、この方法は、上記細胞と、調節エレメント(例えば、インスリンプロモーターレセプターリガンド、例えば、メタロチオネインプロモーター)に作動可能に連結されたガストリン化合物をコードする核酸配列とを接触させる工程を包含する。例えば、上記細胞は、生殖細胞であるか、または上記細胞は、エキソビボで培養された自己細胞である。
【0087】
本発明は、本発明の本発明のガストリン化合物または組成物を使用した細胞ベースの処置方法を企図する。従って、本発明は、細胞を処置する工程、または本発明のガストリン化合物もしくは組成物を用いて、哺乳動物の外植された膵臓組織を処置する工程、およびその哺乳動物に処置された細胞または膵臓組織を導入して、有益な効果(特に、持続性の有益な効果)を提供する工程を包含する方法を企図する。一般的な培養物および細胞ベースの処置方法の詳細についてはPCT/CA03/33595を参照のこと。
【0088】
本明細書中に記載される状態または疾患を有する被験体を処置するための方法は、エキソビボで複数個の細胞と、本発明のガストリン化合物または組成物とを接触させる工程、必要に応じて、その細胞を培養する工程、およびその処置が必要な被験体に細胞を投与して有益な効果(特に、持続性の有益な効果)を提供する工程を包含する。
【0089】
細胞ベースの治療方法の実施形態において、上記細胞は、膵管細胞であり、上記方法で使用される化合物または組成物の量は、長期間、被験体におけるインスリン分泌細胞の量を増加させるために、概して有効である。上記細胞は、自己(すなわち、同一被験体由来)の細胞であり得るか、または同一種の別の個体由来、もしくは異なる種由来の細胞であり得る。
【0090】
本発明はまた、被験体において糖尿病を処置するための方法を企図し、この方法は、被験体内に膵島調製物を移植する工程、および治療上有効量の、本発明のガストリン化合物または組成物を投与して、有益な効果(得に、持続性の有益な効果)を提供する工程を包含する。
【0091】
本発明はまた、培養において島細胞または前駆細胞を持続するための方法に関し、この方法は、培養において細胞を維持するために十分な量の、本発明のガストリン化合物または組成物の存在下で、細胞を培養する工程を包含する。この細胞は、上記化合物または組成物の非存在下で培養されるその細胞と比較して、有意に長い期間、培養において維持される。本発明のガストリン化合物または組成物の存在下で細胞を培養することは、移植が企図される細胞を調製および維持するのに、特に有用である。
【0092】
また、糖尿病の処置が必要な患者において、長期間、培養において島における膵臓β細胞の数を増加させるのに十分な量のガストリンに曝露されている糖尿病患者の膵島細胞中に移植することによる、糖尿病を処置するための方法および組成物が、提供され;必要に応じて、膵臓β細胞の集団は、移植の前にβ細胞の集団を拡大するために十分な時間、培養にて増殖され得る。
【0093】
本発明の別の実施形態は、糖尿病を処置するための方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:エキソビボで、複数個の細胞と、島前駆細胞の増殖およびインスリン分泌島細胞の量を増大させるために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物とを接触させる工程;およびその処置が必要な哺乳動物に上記接触された複数個の細胞を投与して有効な効果(特に、持続性の有効な効果)をもたらす工程。上記細胞は、自己細胞であり得る。上記組成物は、幹細胞から、例えば、膵臓組織において、成熟インスリン分泌島細胞への膵島前駆細胞の分化をもたらすために十分な量で提供される。上記組成物は、長期間、例えば、膵島前駆細胞の膵島幹細胞の増殖を増大させるための十分な量で提供される。幹細胞は、膵臓組織からまたは非膵臓組織(例えば、肝臓または骨髄)のいずれかから得られ得る。
【0094】
本発明は、状態または疾患を処置するための方法を提供し、この方法は、その処置が必要な被験体に、複数個の細胞とともに本発明のガストリン化合物または組成物を投与して、それによって、有効な効果(特に、持続性の有効な効果)をもたらす工程を包含する。一局面において、本発明は、幹細胞の糖尿病レシピエントにおいて、インスリン分泌細胞へと幹細胞を拡大および分化するための方法を提供し、この方法は、上記レシピエントにおいて上記細胞を移植する工程、および有効用量のガストリン化合物を含有する組成物を投与して有効な効果(特に、持続性の有効な効果)をもたらす工程を包含する。例えば、上記移植される細胞は、ヒトから得られ、例えば、ヒトの膵島、ヒトの肝臓、ヒトの骨髄、ヒトの臍帯、またはヒトの胚から得られる。上記レシピエントへの上記細胞の移植は、器官(例えば、膵臓、腎臓、または肝臓)への直接注射のような経路によるものであり得る。あるいは、上記細胞の移植は、例えば、門脈または肝静脈への静脈内注射による投与であり得る。特定の実施形態において、上記細胞は、移植する前に、エキソビボにてガストリン化合物を含有する組成物を用いて処置される。
【0095】
本発明はまた、本発明の組成物と、1種以上のさらなる治療剤(限定するわけではないが、免疫抑制剤(例えば、ラパマイシン、シクロスポリン、ISAtx247、およびFK506)、肥満抑制剤、抗糖尿病剤、食欲調節薬、抗高血圧剤、状態および疾患(特に糖尿病および肥満症)から生じるかまたはこれらに関連する合併症を処置および/または予防するための薬剤、制吐性薬、頭痛薬、ならびに副作用を処置または予防する一般薬が挙げられる)とを組み合わせて使用するための方法を包含する。
【0096】
本発明はまた、状態または疾患の処置において、有効な効果(特に、持続性の有効な効果)を提供する医薬品の調製のための少なくとも1種のガストリン化合物を含有する組成物の使用を企図する。
【0097】
一実施形態において、本発明は、状態または疾患の処置において、有効な効果(特に、持続性の有効な効果)を提供する医薬品の調製のための、治療上有効量の、少なくとも1種のガストリン化合物の使用に関する。
【0098】
一実施形態において、本発明は、処置した後に、被験体においてβ細胞の数および/または大きさを上昇する(好ましくは、長期にわたり上昇する)ための医薬品の調製のための、ガストリン化合物の使用を提供する。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、処置した後、β細胞増殖を刺激(好ましくは、長期にわたり刺激する)ための医薬品の調製のための、ガストリン化合物の使用を提供する。
【0100】
なお別のさらなる実施形態において、本発明は、I型糖尿病またはII型糖尿病の長期にわたる処置または持続性の処置のための医薬品の調製のための、ガストリン化合物の使用を提供する。
【0101】
本発明はさらに、疾患および状態の処置において有効な効果(特に、持続性の有効な効果)のための医薬品の調製における、本発明のガストリン化合物または薬学的組成物の使用を提供する。
【0102】
本発明の組成物および方法の治療上の効能ならびに毒性は、細胞培養物における標準的な薬学的手順によって決定され得るか、または統計学的パラメータ(例えば、ED50(集団のうちの50%において治療上有効である用量)統計値またはLD50(集団のうちの50%において致死的な用量)統計値)を計算することなどによって実験動物を用いて決定され得る。治療指数は、治療効果と毒性効果との用量比であり、それは、ED50/LD50比として表示され得る。大きい治療指数を示す薬学的組成物が、好ましい。
【0103】
本発明の方法はさらに、以下のうちの1つ以上のマーカーを測定する工程を包含し得る:血中グルコース、血清グルコース、血中グリコシル化ヘモグロビン、膵臓β細胞の塊、血清インスリン、膵臓のインスリンレベル、形態計測学的に決定されるβ細胞の塊、インスリン分泌細胞の量、およびインスリン分泌細胞のグルコース応答性。
【0104】
(投与)
本発明のガストリン化合物および組成物は、被験体または患者の身体において、活性薬剤と薬剤の作用部位との接触を生じ、有益な効果、特に持続性のある有益な効果を生じる任意の方法で投与され得る。上記活性成分は、所望の有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供するために、異なる時点に、任意の順序で、同時にまたは連続的に投与され得る。本発明のガストリン化合物または組成物は、徐放性に、局所的にまたは全身的に送達されるために処方され得る。有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供するために、本発明の組成物および処置の効果を最適化する投与形態および投与経路を選択することは、熟練した医師または獣医師の能力範囲内である。
【0105】
非経口投与の様式としては、経皮経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、および経口経路が挙げられるが、これらには限定されない。上記化合物は、いかなる都合の良い経路でも、例えば注入、ボーラス注入、上皮または粘膜皮膚(口腔粘膜、直腸粘膜および腸管粘膜など)の内層を経由しての吸収により、他の生物学的活性剤と共に、投与され得る。好ましい投与経路は、全身性、例えば皮下注入である。非経口投与に関して、本明細書で記載される化合物および組成物は、適切なpHの生理食塩水、PBSまたは他の適切な緩衝液と組合せられ得る。徐放性処方物はまた、治療薬剤のいずれかまたは両方のために使用され得る。
【0106】
上記組成物は、錠剤、カプセル(それぞれ、持続放出性処方物または時間放出製処方物を含む)、丸剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁剤、シロップ剤および乳化剤のような経口投薬形態で投与され得る。それらはまた、静脈内形態(ボーラスまたは注入)、腹腔内形態、皮下形態、筋肉内形態で投与され得るが、全て薬学分野における当業者に周知の投薬形態を利用している。本発明の組成物は、適切な鼻腔内ビヒクルの局所的使用による鼻腔内経路または経皮経路、従来の経皮皮膚パッチにより投与され得る。例えば経皮送達システムを使用した投与のための投薬プロトコルは、投薬レジメンのいたるところで、間欠的であり得るというよりも、連続的であり得る。
【0107】
本発明の投薬レジメンは、上記薬剤の薬力学的特性ならびに投与様式および投与経路などのような既知の因子に依存する;患者の種、年齢、性別、健康状態、医学的状態および体重、症状の性質および程度、現在の処置の種類、処置の頻度、投与経路、患者の腎機能および肝機能ならびに所望の効果。
【0108】
特定の状態または疾患の処置において、効果、特に持続性のある有益な効果を提供するために効果的な本発明の治療剤の量は、その状態または障害の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定され得る。処方物に使用される正確な用量もまた、投与経路、その状態または疾患の重篤性に依存し、開業医の判断および各患者の環境に従って決定されるべきである。インスリンまたはCペプチドの血中レベルおよび空腹時グルコースまたはグルコース負荷の所定の決定因子は、当業者により決定される。
【0109】
投与の適切な用量範囲は、有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供するために、特に選択される。用量範囲は、一般に1日、体重1キログラムあたり約0.01マイクログラム〜約500マイクログラム、例えば約0.01マイクログラム〜約1マイクログラム/kg、約0.1/kg〜約10マイクログラム/kgまたは約1マイクログラム/kg〜約50マイクログラム/kgのガストリン化合物である。
【0110】
別の局面では、本発明は、0.1マイクログラム/kg/日〜30マイクログラム/kg/日、0.1マイクログラム/kg/日〜40マイクログラム/kg/日、0.1マイクログラム/kg/日〜50マイクログラム/kg/日および0.1マイクログラム/kg/日〜60マイクログラム/kg/日のガストリン化合物を含有する薬学的組成物を提供する。
【0111】
持続性のある有益な効果を提供する本発明の特定の実施形態では、ガストリン化合物の投与の用量範囲は、体重1kg当たり、1〜30マイクログラム、特に体重1kg当たり、3〜30マイクログラム、さらに特定すると体重1kg当たり、5〜20マイクログラムである。
【0112】
本発明の組成物または処置は、有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供するために、少なくとも1種のガストリン化合物の単位用量を含み得る。「単位用量」とは、単位の(即ち、患者に投与され得る単回用量であって、この単回用量は、物理的に安定でかつ化学的にも安定なまま取り扱われ得、そして包装され得る)活性薬剤または固体もしくは液体の薬学的賦形剤、キャリアもしくはビヒクルの1種以上あるいはその混合物のいずれかを含有する。上記活性薬剤または1以上の固形または液体薬学的賦形剤、キャリアまたはビヒクルとの混合物のいずれかを含有する、単回の用量をいう。
【0113】
一つの局面では、長期間グルコースレベルを減少もしくは低減すること、または処置後ベータ細胞の増殖もしくは分化を増強することに効果的な、治療有効量の部分最適用量のガストリン化合物を含有する、薬学的組成物が提供される。
【0114】
別の局面では、疾患または状態、特に糖尿病の慢性的治療または急性治療のための形態で、治療有効量の部分最適用量のガストリン化合物を含有する、薬学的組成物が提供される。
【0115】
一つの局面では、本発明は、単回単位あたり30〜3000マイクログラム、100〜3000マイクログラム、100〜6000マイクログラム、1000〜6000マイクログラム、2000〜6000マイクログラム、3000〜6000マイクログラムのガストリン化合物を含有する薬学的組成物を提供する。
【0116】
本発明の組成物または処方物は、被験体に、およそまたは少なくとも約2週間〜4週間、2週間〜6週間、2週間〜8週間、2週間〜10週間、2週間〜12週間、2週間〜14週間、2週間〜16週間、2週間〜6ヶ月、2週間〜12ヶ月間、2週間〜18ヶ月間、定期的にまたは連続的に投与され得る。本発明の組成物は、1日に1回以上、特に、1日あたり1回もしくは2回投与され得る。
【0117】
本発明の組成物またはその画分は、代表的には、意図された投与の形態に基づいて、そして従来の薬学的実務に添って選択される、適切な薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤およびビヒクルを含有する。
【0118】
適切な薬学的キャリア、賦形剤およびビヒクルは、標準的テキスト、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Companyに記載されている。カプセルまたは錠剤の形態での経口投与の例として、上記活性成分は、ラクトース、澱粉、スクロース、メチルセルロ-ス、ステアリン酸マグネシウム、グルコース、硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム、マンニトール、ソルビトール(sorbital)などの経口的、非毒性の薬学的に受容可能な不活性キャリアと併用され得る。液体形態での経口投与に関しては、上記薬物成分は、エタノール、グリセリン、水などのような任意の経口、非毒性の薬学的に受容可能な不活性キャリアと併用され得る。適切な結合剤(例えば、ゼラチン、トウモロコシ甘味料、グルコースを含む天然糖類、天然ゴムおよび合成ゴムならびにワックス)、滑沢剤(例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、および塩化ナトリウム)、崩壊剤(例えば、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイトおよびザンサンガム)、香味矯臭剤、および着色剤はまた、上記組成物またはそれらの成分と併用され得る。本明細書で記載される組成物は、湿剤、乳化剤またはpH緩衝化剤をさらに含み得る。
【0119】
上記組成物は、液体溶液、懸濁液、乳化剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性処方物または散剤であり得る。上記組成物は、伝統的結合剤およびトリグリセリドのようなキャリアとともに、坐剤として処方され得る。経口処方物は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的なキャリアを含み得る。種々の送達システム(例えば、リポソーム、ミクロ粒子、マイクロカプセルなどでのカプセル化)が知られており、本発明の組成物を投与するために使用され得る。
【0120】
本発明の1つの局面では、薬学的組成物は、pH約7〜10である。
【0121】
本発明の組成物の非経口投与の処方物は、水性溶液、シロップ、水性懸濁液およびエマルジョン、または綿実油、ココナツ油、落花生油のような可食性の油を有する油性懸濁液およびエマルジョンを含み得る。水性懸濁液に使用され得る分散剤または懸濁剤は、トラガカント、アルギン酸塩、アカシア、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、メチルセルロースおよびポリビニルピロリドンのような合成ゴムまたは天然ゴムを含む。
【0122】
非経口投与のための組成物は、例えば水、等張性生理食塩水、等張性グルコース溶液、緩衝溶液、または他の治療的に活性な薬剤の非経口投与のために便利に用いられる他の溶媒を含み得る。非経口投与のために意図された組成物はまた、安定剤、緩衝液、保存剤、例えばメチルヒドロキシ安息香酸のような抗酸化剤、または類似した添加剤などの従来の添加剤を含み得る。
【0123】
一つの実施形態では、本明細書中の組成物は、有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供する、ヒトへの皮下投与または静脈内投与に適合した薬学的組成物として、日常的な手順に従って処方される。代表的には、皮下投与または静脈内投与のための組成物は、滅菌した等張性水性緩衝溶液である。必要な場合、その組成物はまた、溶解剤および注入部位での痛みを緩和するための局所麻酔剤を含有し得る。一般的に、上記成分は、密封した容器(例えば、活性薬剤の量を示すアンプルもしくは袋)のような中で、例えば、乾燥、乾燥凍結した散剤または水なしの濃縮物として、別々にか、または単位用量形態で一緒に混合されてかのいずれかで、供給される。上記組成物が、注入により投与される場合は、注入用の滅菌水または生理食塩水のアンプルが、上記成分が投与される前に混合され得るように提供され得る。
【0124】
本発明の組成物は、中性の形態または塩の形態で処方される。薬学的に受容可能な塩は、遊離のアミノ基(例えば塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸から誘導される塩)および遊離のカルボキシル基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第2鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインから誘導される塩)を含む。
【0125】
一つの実施形態では、結晶性または非晶質のガストリン化合物を含有する固形の薬学的組成物(錠剤、カプセル、散剤、粉末化形態)が提供される。
【0126】
別の実施形態では、結晶性または非晶質のガストリン化合物を含有する固形の薬学的組成物(錠剤、カプセル、散剤、粉末化形態)が提供される。
【0127】
別の実施形態では、本発明は、ガストリン化合物の薬学的に受容可能な塩を含有する、液体薬物処方物、および非経口投与のための安定で、かつ適切な懸濁液を提供するために再構成され得る凍結乾燥した薬物処方物に関する。
【0128】
特定の実施形態では、本発明は薬学的に受容可能なガストリン化合物の塩および溶液化に有効な溶媒を含む、水性組成物に関する。本発明はまた、少なくとも1種の溶解剤を有する、薬学的に受容可能なガストリン化合物の塩の水性処方物を含有する薬物を提供する。
【0129】
本発明の組成物は、例えば、細菌を保留するフィルターによる濾過、上記組成物への滅菌剤の添加、上記組成物の照射または上記組成物を加熱する事により滅菌され得る。あるいは本発明の化合物または組成物は、使用前にすぐに滅菌溶媒に容易に溶解する滅菌固形調製物(例えば凍結乾燥した散剤)として提供される。
【0130】
本明細書で記載されている処方物に加えて、上記組成物はまた、貯蔵調製物としても処方され得る。そのような持続的作用の処方物は、移植(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注入により投与され得る。従って、例えば、上記画分は、適切なポリマーまたは疎水性物質(例えば、受容可能な油の中のエマルジョン)またはイオン交換樹脂、または僅かにしか溶解しない誘導体(例えば、僅かにしか溶解しない塩)として処方され得る。
【0131】
本発明の組成物およびその成分は、標的化可能な薬物キャリアとして溶解性ポリマーを含有し得る。
【0132】
薬学的組成物が調製された後、それらは適切な容器に入れられ、そして示された状態の処置の表示がされ得る。本発明の組成物の投与のために、そのような表示は、投与の量、頻度および方法を含む。
【0133】
本発明の実施形態では、有益な効果、特に持続性のある有益な効果を提供するために、本発明の薬学的組成物の1以上の成分により充填される1以上の容器を含む薬学的パックまたはキットが、提供される。そのような容器と関連して、種々の文書(例えば、使用説明書、またはヒトへの投与を目的とした、医薬品もしくは生物学的製剤の製造、使用または販売を規制している政府機関による規定の形態の注意書き(ヒトへの投与を目的とした製造、使用または販売の、行政機関による認可を反映する))であり得る。
【0134】
本発明の別の局面に従って、キットは提供される。一つの局面では、上記キットは、ガストリン化合物または薬学的組成物を含む。一つの局面では、上記キットは、本発明の組成物を含有する容器を収納し、かつ被験体への上記組成物の投与のための説明書もまた収納している包装物である。
【0135】
本発明は、特定の実施例により、より詳細に説明される。以下の実施例は。説明を目的とするために提供されるもので、いかなる意味にも本発明の範囲を限定するようには意図されていない。当業者は、本質的に同じ結果を生じるよう変更または改変され得る重要でない種々のパラメータを、容易に認識する。
【実施例】
【0136】
(実施例1)
(糖尿病を発症して間もないNODマウスにおける、空腹時血糖および膵臓インスリン含量に対するガストリンまたはEGFの効果)
本実験の目的は、ガストリン(G1)またはEGF(E1)単独で、発症間もない糖尿病NODマウスにおいて糖尿病の状態を改善するか否かを決定することであった。
【0137】
慢性インスリン依存性糖尿病の非肥満性糖尿病(NOD)雌性マウスをTaconic(Germanton、NY)から購入した。そのマウスを収納し、病原体フリーの状態で飼育し、カナダ動物管理協会のガイドラインに従って世話をした。上記NODマウスを、糖尿病の進行(空腹時血糖、FBG>6.6ミリモル/l)についてモニターした。糖尿病発症後、そのマウスを(i)ビヒクル(V)−生理食塩リン酸緩衝溶液(n=4)、(ii)E1(E)1μg/kg/日、1日1回、14日間、i.p.投与(n=5)、(iii)G1(G)3μg/kg/日、1日1回、14日間、i.p.投与(n=5)で処置した。上記マウスに、インスリンの置換処置をしなかった。空腹時血糖レベルと膵臓インスリンレベルをモニターした。E1は、51のアミノ酸のEGFのアナログである;G1は、天然のガストリンと同じ長さであるが15位に単一のアミノ酸変更を含む、ガストリンのアナログである。
【0138】
ビヒクルで処置したコントロール動物において、空腹時血糖(FBG)レベルは、35日後に倍化した。E1またはG1のいずれかで処置した動物のFBGレベルは、この動物モデルにおける病気の進行(例えば島細胞の継続的破壊)にもかかわらず、糖尿病発症時(0日目)に記録した値に近いままであった。図1を参照のこと。EGFまたはガストリンに刺激された島細胞新生が、これらの細胞の破壊を補償している。さらに、膵臓インスリンレベルもまた、全ての動物について測定した。ビヒクル処置コントロールにおける膵臓インスリンレベルは、35日目でβ細胞の破壊に起因して減少したが、E1またはG1で処置した動物は、処置前の値と比較して膵臓インスリンレベルの顕著な上昇を示した。図2を参照のこと。この研究の結果は、発症間もない糖尿病NODマウスにおいて、E1またはG1のいずれかによる処置が、糖尿病状態の進行を防ぎ、治療を停止してから少なくとも3週間、膵臓インスリン含量も改善した。
【0139】
(実施例2)
(糖尿病を発症して間もないNODマウスにおける空腹時血糖に対するガストリンの持続的効果)
この実験の目的は、ガストリンによる処置が、発症間もない糖尿病NODマウスにおける、糖尿病状態を長期間改善するか否かについて決定することであった。NODマウスをTaconic(Germanton、NY)から購入した。そのマウスを収納し、病原体フリーの状態で飼育し、カナダ動物管理協会のガイドラインに従って世話をした。
【0140】
3μg/kg/日のガストリンによる、最初の18日間の処置の後に、非肥満性糖尿病(NOD)マウスについて、空腹時血糖(FBG)を治療開始から8週間までモニターした。ビヒクルで処置したマウスのコントロール群もまた、モニターした。
【0141】
ビヒクル処置コントロール動物において、空腹時血糖(FBG)レベルは、経時的に増加した。ガストリン処置した動物のFBGレベルは、コントロール動物と比較して、処置停止後、少なくとも5週間は低いままであった。図3を参照のこと。この研究の結果は、ガストリンによる処置が、治療を停止した後、少なくとも5週間は、NODマウスの空腹時血糖レベルを減少した。
【0142】
(実施例3)
(慢性的インスリン依存性糖尿病のNODマウスにおける、空腹時血糖に対するガストリンの用量依存的効果)
(目的)
:ガストリン(G1)が、慢性的インスリン依存性糖尿病のNODマウスにおける、重篤な高血糖症の進展および死を防止できるか否かについて決定すること。
【0143】
(方法)
:慢性的インスリン依存性で、インスリン治療を維持したNODマウスを以下で処置される異なる処置群に分配した:(i)ビヒクル(n=4);(ii)G1 1μg/kg/日、1日2回(n=4)、28日間、i.p.投与、(iii)G1 5μg/kg/日、1日2回(n=4)、28日間、i.p.投与、(iv)G1 10μg/kg/日、1日2回(n=4)、28日間、i.p.投与。インスリン治療を、G1処置を開始してから14日で停止した。G1は、天然ガストリンと同じ長さであるが、15位に、単一のアミノ酸の変更を含む、17のアミノ酸のガストリンアナログである。
【0144】
(結果および結論)
0日目から14日目まで、上記動物について、インスリン治療を維持し、FBGレベルの低下を示した、10μg/kg/日のG1で処置した群をのぞく全ての処置群の空腹時血糖(FBG)レベルは、0日に記録したレベルに近いままであった。28日目に、インスリン治療の停止後14日目に、ビヒクル群の全ての動物は、これらの動物が完全なインスリン注入に依存性であったために、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)で死亡した。しかしながら、G1で処置した全てのマウスは、インスリン治療なしで2週間生存した。1μg/kg/日のG1で処置したマウスの空腹時血糖レベルは、高いままであったが、G1の用量を増加(それぞれ、5および10μg/kg/日)させるに従って空腹時血糖レベルは対応して減少した。図4を参照のこと。慢性的に糖尿病であるインスリン依存性NODラットにおいて、これらのデータは、ガストリンによる処置が、インスリン治療を使用せずに、グルコースの制御を顕著に改善する能力を有することを示唆する。
【0145】
本発明は、本明細書で記載した特定の実施形態により範囲を限定するものではない。何故なら、そのような実施形態は本発明の1局面の単なる一つの説明として意図しており、機能的に等価である任意の実施形態が、本発明の範囲以内であるからである。実際に、本明細書に示され、そして記載されている実施形態に加えて、本発明の種々の改変は、当業者には前述の記載および付随する図面から明らかになる。そのような改変は、添付の請求の範囲の範囲内に入るよう意図されている。
【0146】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願は、各個別の刊行物、特許または特許出願が、特異的にかつ個別的に全体として参考に援用されているのと同じ程度に、全体として参考に援用している。本明細書における、いかなる参考文献の引用も、それらの参考文献が本発明の先行技術として入手できることを承認するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0147】
本発明は以下の図を参考にすると、より良く理解される、
【図1】図1は、糖尿病を発症して間もないNODマウスをE1(1μkg/Kg/日I.P.14日間)またはG1(3μkg/Kg/日I.P.14日間)のいずれかで処置した結果を示す棒グラフである。糖尿病発症後(FBG>6.6mM)の0日目の空腹時グルコースレベル(mM)および35日目の空腹時グルコースレベルが示されている。
【図2】図2は、糖尿病を発症して間もないNODマウスを図1に記載したようにE1またはG1のいずれかで処置した結果を示す棒グラフである。糖尿病発症時および35日目のビヒクルのみの膵臓インスリン含量(μg/膵臓)が、示されている。処置は14日後に停止した。
【図3】図3は、糖尿病を発症して間もないNODマウスを最初の18日間のガストリンによる処置を含めて8週間モニターした結果を示す棒グラフである。発症後の0日目および各週での空腹時グルコースレベルが示されている。
【図4】図4は、G1が、慢性糖尿病インスリン依存性のNODマウスにおいて、空腹時血糖レベル(mM)を減少させ、インスリン治療の停止後14日目の死亡を予防している。
【0148】
[配列表]
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続性のある有益な効果を提供する治療的有効量のガストリン化合物および薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルを含有する薬学的組成物。
【請求項2】
糖尿病被験体において、投与後、長期間持続する正常な血糖レベルを提供する形態における、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
慢性的治療または急性治療を必要とする被験体の慢性的治療または急性治療のための形態で、治療的有効量のガストリン化合物を含有する、請求項1または2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
約0.1〜20または約0.1〜30マイクログラム/kg/日、より詳細には、3〜30マイクログラム/kg/日の間のガストリン化合物を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記有益な効果が、以下:島炎症の減少もしくは非存在、疾患進行の減少、生存率の増加または糖尿病もしくは関連疾患の症状の減少
のうちの1以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記有益な効果が、処置終了後も長期間持続する持続性のある有益な効果である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記有益な効果が、処置後、約2週間〜4週間または少なくとも約2週間〜4週間、約2週間〜5週間または少なくとも約2週間〜5週間、約3週間〜5週間または少なくとも約3週間〜5週間、約2週間〜6週間または少なくとも約2週間〜6週間、約2週間〜8週間または少なくとも約2週間〜8週間、約2週間〜10週間または少なくとも約2週間〜10週間、約2週間〜12週間または少なくとも約2週間〜12週間、約2週間〜16週間または少なくとも約2週間〜16週間、約2週間〜20週間または少なくとも約2週間〜20週間、約2週間〜24週間または少なくとも約2週間〜24週間、約2週間〜12ヶ月間または少なくとも約2週間〜12ヶ月間、約2週間〜18ヶ月間または少なくとも約2週間〜18ヶ月間持続される、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記持続性のある有益な効果が、処置後長期間、Cペプチド産生の増加、膵臓インスリン産生の増加およびほぼ正常もしくは低い血糖レベルを発現し得る、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記持続性のある有益な効果が、ガストリン化合物が存在しないときの効果と比較して、該ガストリン化合物の効果の統計解析の観点から、統計学的に有意差がある、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記持続性のある有益な効果が、少なくとも約0.05%、約0.1%。約0.5%、約1%、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約33%、約35%、約40%、約45%または約50%の膵臓インスリンレベルの増加である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記持続性のある有益な効果が、少なくとも約2%、約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%または約90%の血糖レベルの減少である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記持続性のある有益な効果が、処置後少なくとも約2週間〜4週間、約2週間〜5週間、約3週間〜5週間、約2週間〜6週間、約2週間〜8週間、約2週間〜10週間、約2週間〜12週間、約2週間〜16週間、約2週間〜20週間、約2週間〜24週間、約2週間〜12ヶ月、2約週間〜18ヶ月の期間の血糖レベルの減少である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
被験体において、持続性のある有益な効果をもたらすために、治療的有効量の少なくとも1種のガストリン化合物を該被験体に投与する工程を包含する、糖尿病を処置する方法。
【請求項14】
糖尿病の症状を有する被験体への投与時に、少なくとも一つの糖尿病の症状に対して持続性のある有益な効果を提供する、治療的有効量の少なくとも1種のガストリン化合物を被験体に投与する工程を包含する、処置方法。
【請求項15】
ガストリン化合物およびガストリン化合物を物理的に安定化するために有効な薬学的に受容可能なキャリア、賦形剤またはビヒクルを含有し、かつ糖尿病の処置において有益な効果、好ましくは持続性のある有益な効果を提供するのに適合された、安定な薬学的組成物を調製する方法。
【請求項16】
治療的有効量のガストリン化合物または請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を、処置が必要な被験体に投与する工程を包含し、それにより有益な効果、好ましくは持続性のある有益な効果をもたらす、糖尿病を処置する方法。
【請求項17】
ガストリン化合物または請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物を、処置が必要な被験体に、複数個の細胞と一緒に投与する工程を包含し、それにより有益な効果、好ましくは持続性のある有益な効果をもたらす、糖尿病を処置する方法。
【請求項18】
エクスビボで複数個の細胞とガストリン化合物または請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物とを接触させる工程、必要に応じて細胞を培養する工程、ならびに処置が必要な被験体に該細胞を投与する工程を包含する、糖尿病を処置する方法。
【請求項19】
被験体に島新生を誘導させる方法であって、被験体において、島前駆体細胞の長期間の増殖の増加を提供するために十分な量のガストリン化合物または請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物と島前駆体細胞とを接触させる工程を包含する、島新生を誘導する方法。
【請求項20】
幹細胞を、長期間にわたりインスリン分泌細胞の増殖および分化させる方法であって、該幹細胞を、有効量のガストリン化合物または請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物とを接触させることを包含する、方法。
【請求項21】
糖尿病を処置する方法であって、該方法は、処置が必要な哺乳動物に、該哺乳動物において長期間にわたる膵臓インスリン分泌β細胞の数を増加させるために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与する工程を包含し、それによって糖尿病を処置する、方法。
【請求項22】
糖尿病を処置する方法であって、該方法は、処置が必要な哺乳動物に、ガストリン化合物を投与した後に、膵臓組織において島前駆体細胞の増殖において、長期間の増加を提供するために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与する工程を包含し、それによって糖尿病を処置する、方法。
【請求項23】
糖尿病を処置する方法であって、該方法は、処置が必要な哺乳動物に、該哺乳動物において膵臓インスリン分泌β細胞数の長期増加を提供するために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与する工程;および島新生の量を測定する工程を包含し、それにより該糖尿病を処置する、方法。
【請求項24】
前記島新生の量が、血糖、血清グルコース、血液中グリコシル化ヘモグロビン、膵臓β細胞塊、血清インスリン、膵臓インスリン含量、形態計測学的に測定されたβ細胞塊の群から選択されるパラメータにより測定される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記組成物を投与する工程が、該組成物を投与する工程より前にアッセイされた血糖と比較して、より長期間血糖を減少させる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物を投与する工程が、該組成物を投与する工程より前にアッセイされた血糖と比較して、50%血糖を減少させる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
グリコシル化ヘモグロビン濃度が、前記組成物が投与されないコントロール哺乳動物におけるグリコシル化ヘモグロビン濃度と比較して、より長期間減少する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
血清Cペプチドインスリン濃度が、前記組成物を投与する前に測定された哺乳動物における血清インスリンと比較して、長期間増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
膵臓インスリン濃度が、該組成物を投与する前に測定された哺乳動物における膵臓インスリンと比較して、長期間増加する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞が、膵管細胞である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記ガストリン化合物が、前記膵臓島前駆体細胞のグルコース応答インスリン分泌島細胞への長期間の分化を誘導するために十分な量で提供される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記ガストリン化合物が、前記膵臓島前駆体細胞をグルコース応答インスリン分泌細胞に長期間の分化を誘導するために十分な量で提供される、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、膵臓組織における、前記膵臓島前駆体細胞の成熟インスリン分泌島細胞への長期間の分化をもたらすために十分な量で提供される、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が膵臓島前駆体細胞の増殖の長期間の増加を提供するために十分な量で提供される、請求項23に記載の方法。
【請求項35】
哺乳動物における膵臓島新生を誘導する方法であって、該方法は、膵臓組織における島前駆体細胞増殖において長期間の増加を提供するために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を、哺乳動物に導入する工程を包含し、それにより膵臓島新生を誘導する、方法。
【請求項36】
哺乳動物において膵臓島新生を誘導する方法であって、該方法は、該哺乳動物において膵臓インスリン分泌β細胞数の長期間の増加を提供するために十分な量のガストリン化合物を含有する組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項37】
動物の細胞において島新生治療を誘導する方法であって、該細胞を調節エレメントに作動可能に連結されたガストリン化合物をコードする核酸配列と接触させる工程を包含し、その結果ガストリン化合物の持続性のある有益な効果を生じさせる、方法。
【請求項38】
島前駆体細胞の、成熟インスリン分泌細胞の増加した量までの持続的増殖を誘導するために有効な用量のガストリン化合物を含有する組成物。
【請求項39】
島前駆体細胞の成熟インスリン分泌細胞への分化を誘導するために有効な用量の請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
糖尿病の持続的処置のための薬剤の調製のための少なくとも1種のガストリン化合物を含有する組成物の使用。
【請求項41】
請求項1〜12、38または39のいずれか1項に記載の組成物のキットの形態。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−513059(P2007−513059A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529497(P2006−529497)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000769
【国際公開番号】WO2004/105780
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(504430972)ワラタ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】