説明

ガストリン組成物およびガストリン処方物、ならびに使用方法および調製方法

【課題】持続性作用または長期間作用を有しているガストリン化合物を含む組成物が必要とされている。
【解決手段】本明細書中で提供される本発明の1つの実施形態は、自然界に存在しているガストリンと比較して被験体に投与した際に長い間活性を有するガストリン化合物を含む薬学的組成物である。ガストリン/CCK受容体、種々のキャリア部分に結合する機能的な能力を有しているガストリンのアミノ酸配列の部分を結合させる方法が提供され、この方法には、アミノ酸スペーサー領域の使用、および二官能性架橋試薬の使用が含まれる。この組成物を用いて糖尿病患者を処置する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の実施形態において、ガストリンペプチドよりも生体内で長い間活性な機能を有するガストリン組成物、および糖尿病の処置のためのガストリン組成物を作成し、使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
疾患の処置に使用されるペプチドおよび低分子量のタンパク質のような治療薬には、かなりの制限がある。これらの薬剤は、多くの場合、短時間のうちに腎臓によって排出されるか、またはプロテアーゼによって分解され、したがってその生体利用性には限界があり、その結果として有効であるために必要とされるよりも短い血漿半減期および低い薬剤濃度となっている。治療薬の高いクリアランスは、最大効力を得るためには長い期間にわたって高い血清濃度を維持することが望ましい場合には最適ではない。高用量または高い投与頻度により、多くの場合は高い治療効力が得られるが、副作用のリスクもかなり高く、これにより投与することができる用量または頻度が制限されている。
【0003】
多くのペプチドホルモンは血流中では極めて短い半減期を有しており、これによって投与後間もなく生物学的活性が失われる。ガストリンは糖尿病の処置に有効な他の成長因子との組み合わせが示されているペプチドホルモンである。しかし、ガストリンを単独で投与した場合には、ごく限られた効力しか得られない。さらに、ガストリンは比較的半減期が短いことが明らかにされている。ガストリン−17は、例えば、約5〜9分の血液循環中での半減期を有しており、一方で、ガストリン−34は約35分の血液循環中での半減期を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
持続性作用または長期間作用を有しているガストリン化合物を含む組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴的な実施形態では、自然界に存在しているガストリンと比較して、被験体に投与した際に長い間活性を有するガストリン化合物を含む薬学的組成物が提供される。この実施形態のガストリン成分は、配列番号1の29位〜34位;配列番号2の29位〜34位;配列番号3の12位〜17位;および配列番号4の12位〜17位の群より選択される少なくとも複数のアミノ酸を含み、そしてガストリンはさらに、タンパク質、高分子、脂質、または炭水化物に結合させられる。
【0006】
別の特徴的な実施形態では、Z−Y−X−AA−AA−AA−AA−AA−AAを含むガストリン化合物が提供される。式中、AAはTyrまたはPheであり、AAはGly、Ala、またはSerであり、AAはTrp、Val、またはIleであり、AAは、MetまたはLeuであり、AAはAspまたはGluであり、AAはPheまたはTyrであり、AAはアミド化されている。Zは高分子であり、高分子がタンパク質である場合にはZはタンパク質のアミノ酸配列であり;Yは小さい中性アミノ酸のm個のアミノ酸残基を含む任意的なスペーサー領域であり、Xは、ガストリン化合物がガストリン/CCK受容体に結合するという条件で、配列番号1の残基1〜28、配列番号2の残基1〜28、配列番号3の残基1〜11、および配列番号4の残基1〜11の任意の連続する部分から選択される。AA−AA−AA−AA−AA−AAは、例えば、Tyr−Gly−Trp−Met−Asp−Pheである。あるいは。AA−AA−AA−AA−AA−AAが、Tyr−Gly−Trp−Leu−Asp−Pheである。この式では、Zはタンパク質であることができ、例えば、Zはヒトの血清アルブミンである。
【0007】
はグリシンとアラニンを交互に、例えば、[Gly−Ala]を有しているか、またはグリシンおよびアラニンのランダムな配列を有しているm個の残基を含むアミノ酸配列であることができる。ガストリン化合物はさらに、mが1以上である場合はYのアミノ末端に、またmが0である場合にはXのアミノ末端に、システイン残基を有することができる。ガストリン化合物はさらに、Zへの結合のための二官能性架橋剤を含むことができる。一般的には、mは0から約20残基である。特定の実施形態では、mが0である場合は、X−AA−AA−AA−AA−AA−AAは、Zの結合のための二官能性架橋剤をさらに含む。
【0008】
Xは、特定の実施形態では、配列番号3の1位から11位;配列番号4の1位から11位;配列番号3の2位から11位;および配列番号4の2位から11位の配列の群より選択される。Zがタンパク質であるガストリン化合物は、組み換えによって生産することができる。
【0009】
本明細書中に提供される別の実施形態は、Zがタンパク質であるガストリン化合物をコードするヌクレオチド配列である。このヌクレオチド配列を有している細胞がさらに提供される。細胞は、細菌または酵母細胞である。細胞が細菌細胞である場合は、これは、例えば、大腸菌(Escherichia)、バシラス属(Bacillus)、および放線菌(Streptomyces)の種の細胞であることができる。細胞が酵母細胞である場合は、これは、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クリュイベロマイセス属(Kluyveromyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、およびピキア属(Pichia)の種の細胞であることができる。
【0010】
ガストリン化合物は、一般に、配列番号2の29位〜34位、または配列番号4の12位〜17位の少なくとも複数のアミノ酸である、最小ガストリン成分を含む。これらは、血液循環中に存在しているガストリンのカルボキシ末端に存在し、種々の実施形態では、例えばガストリンに由来する別のアミノ酸を存在させることができる。
【0011】
高分子成分は必ずしもタンパク質には限定されず、ポリエチレングリコール(PEG)またはデキストランのような合成の化学的な高分子であってもよい。高分子がタンパク質である場合は、種々の実施形態において、これは血清タンパク質、例えば、血清アルブミン(例えば、ヒトの血清アルブミン)であることができる。
【0012】
本明細書中で提供されるガストリン化合物の別の実施形態は、構造C−Y−Xを含む。式中、CはCysまたはLysであり、Yは小さい中性アミノ酸のm個のアミノ酸残基を含む任意的なスペーサー領域であり、Xは、ガストリン−17の少なくとも12位〜17位(配列番号3および4)、およびガストリン−34の少なくとも29位〜34位(配列番号1および2)から選択される配列を有する少なくとも6個のアミノ酸残基である。ガストリン化合物は、さらに高分子に、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはデキストランに結合させられる。ガストリン化合物はさらに、タンパク質に別の方法で結合させられる。特定の実施形態では、ガストリン化合物は、さらに二官能性架橋剤を含む。ここでは、架橋剤の第1の反応性末端がCに共有結合させられる。架橋剤の第2の反応性末端は高分子またはタンパク質に共有結合させられている。C−Y−Xは組み換えによって生産することができ、また、ペプチド合成によって合成することもできる。
【0013】
本明細書中で提供される任意のガストリン化合物は、特定の実施形態では、有効用量で提供される。本明細書中で提供されるガストリン化合物はさらに、免疫抑制のための薬剤を含むことができる。本明細書中で提供されるガストリン化合物はさらに、血糖降下剤を含むことができる。本明細書中で提供されるガストリン化合物はさらに、薬学的に受容可能なキャリアを含むことができる。本明細書中で提供されるガストリン化合物はさらに、成長因子を含むことができる。例えば、特定の実施形態では、成長因子はグルカゴン様ペプチド1受容体リガンドである。あるいは、特定の実施形態では、成長因子はEGF受容体リガンドである。
【0014】
糖尿病の被験体を処置するための医薬品の製造方法を含む本発明の実施形態もまた、本明細書中で提供される。この方法には、本明細書中に記載されるもののいずれかになるようにガストリン化合物を処方する段階、およびガストリン化合物を被験体に投与する段階が含まれる。この方法の特定の実施形態では、ガストリン化合物の投与頻度は、自然界に存在しているガストリンの投与頻度よりも少ない。この方法にはさらに、島新生の生理学的指標を測定する段階、例えば、空腹時血糖(FBG)を測定する段階が含まれる。この方法には、インシュリン依存性を軽減することも含まれる場合がある。
【0015】
本発明のさらに別の実施形態では、ガストリン化合物を作成する方法が提供される。この方法は、ガストリンのアミノ酸配列をキャリア組成物と結合させることである。したがって、ガストリンをキャリアと結合させる前に、ガストリンは、システイン置換または別のシステイン残基を含むように修飾される。システイン置換はピログルタミン酸の置換である。ガストリンのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列の残基29〜34;配列番号2のアミノ酸配列の残基29〜34;配列番号3のアミノ酸配列の残基12〜17;および配列番号4のアミノ酸配列の残基12〜17の群より選択される部分を少なくとも含む。特定の実施形態では、システインは、ガストリンのアミノ末端にある。あるいは、この方法には、ガストリンをキャリアに結合させる前に、ガストリンを二官能性架橋剤をさらに含むように修飾する段階が含まれる。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、糖尿病患者を処置するための医薬品の製造方法が提供される。この方法には、血清タンパク質と共有結合により反応することができる修飾されたガストリン化合物を処方する段階、および修飾されたガストリンを患者に投与する段階が含まれる。修飾されたガストリンは、ガストリン/CCK受容体に結合することができる自然界に存在しているガストリンの配列と、アミノ末端のシステインまたはリジンを含む。したがって、自然界に存在しているガストリンの配列は、配列番号1のアミノ酸配列の残基29〜34;配列番号2のアミノ酸配列の残基29〜34;配列番号3のアミノ酸配列の残基12〜17;および配列番号4のアミノ酸配列の残基12〜17の群より選択される。
【0017】
ガストリンのアミノ酸配列を有しているペプチドの血清濃度と比較して高いガストリンの血清濃度をより長い期間保つための医薬品の製造方法もまた、本明細書中で提供される。この方法には、上記ガストリン化合物を処方する段階、およびガストリン化合物を投与する段階が含まれる。
【0018】
本明細書中に記載されるガストリン化合物の少なくとも1つの有効用量を含むキットもまた、本明細書中で提供される。
【0019】
長期間作用するガストリン化合物を使用することにより、ガストリンのクリアランスを減少させることができるか、または酵素によるガストリンの分解を少なくすることができ、それによって、高濃度の血漿ガストリンを長い間維持し、そして/またはガストリンの半減期を長くして、結果として効率を高めることができる。用量レジュメは、糖尿病患者に対して、低い用量を使用するか、および/またはガストリンの投与頻度を少なくすることによって改良することができる。さらに、ガストリンをキャリアに結合させることを用いて、一部のキャリアは免疫系からガストリンを隠すことができ、それによってガストリンが免疫反応を誘発することを減少させるか、またはそれを防ぐことができ、さらに、血清ガストリンの半減期を長くし、そして/または高い血清ガストリン濃度を維持することもできる。
【0020】
本発明は、一般的な実施形態において、本明細書中でガストリン化合物と呼ばれる、ガストリン様の活性を有している組成物を提供する。用語「ガストリン化合物」は、本明細書中で使用される場合は、ガストリン/CCK受容体に結合する、それと相互作用する、またはそれを刺激する試薬を意味する。ガストリン化合物として、ガストリン誘導体および結合体、ならびにガストリン/CCK受容体と相互作用することができるペプチド相同体が挙げられる。用語「誘導体」および「結合体」は、本明細書中で使用される場合は、同等の語句であり、化学的に関係している組成物を示すために使用され、合成手段、生物学的手段、組み換え手段、または化学的手段によって調製することができる。
【0021】
種々の実施形態では、「修飾された」ガストリンを調製して、糖尿病を有している患者を処置するために使用することができる。用語「糖尿病」は、本明細書中で使用される場合は、インシュリンが不足している、インシュリンに対する抗体を生産している、または血糖値が高すぎる、あるいは実験用動物モデルを含む任意の哺乳動物の糖尿病の症状のいずれかを発症している生理的な適応症を意味し、これには、I型糖尿病およびII型糖尿病のようなヒトでの形態、初期糖尿病、およびインシュリンが少し少ないかもしくは血糖値が少し高いことによって特徴付けられる前糖尿病の症状が含まれる。本明細書中で使用される場合は、用語「哺乳動物」は、哺乳動物のあらゆるメンバーの通常の意味を有しており、これにはヒトが含まれる。
【0022】
修飾されたガストリンは、6個のアミノ酸の最小配列(C末端に由来する)を含み、さらに、別の反応を受けることができるシステイン残基のような反応基が付加されている、ガストリン誘導体または類似体であり得る(配列番号1〜4を参照)。種々の実施形態では、ガストリンは34アミノ酸(「大きな」ガストリンまたはガストリン−34)までの長さであることができ、ここでは、システイン残基またはリジン残基のような少なくとも1つの反応性アミノ酸がN末端に付加されているか、またはN末端で置換されている。システインのような反応性アミノ酸の付加は末端領域で行うことができ、関連する実施形態では、スペーサー領域を、必要に応じて、付加される反応性アミノ酸の前に存在させることができる。例えば、スペーサーは、ガストリンアミノ酸配列の一部として生物学的に合成することができ、またガストリンアミノ酸配列に化学的に結合させて、ガストリン配列−スペーサー−システインを有する構造を形成させることもできる。例えば、スペーサー領域は、アラニンまたはグリシンのようないくつかのアミノ酸の配列であり得る。アミノ酸の配列は、交互アミノ酸(例えば、グリシン/アラニン)であってもよく、また交互ではなくてもよい、すなわち、ランダムな配列もしくは特定の配列であってもよい。配列は、少なくとも1つのアミノ酸から構成され得る。
【0023】
別の実施形態では、反応性の成分である二官能性架橋剤が、修飾されたガストリンに、特に、アミノ末端に反応基(例えば、システイン)が付加されているガストリンに対して、またはスペーサーを有している修飾されたガストリンに対して、架橋基のホモ二官能性部分もしくはヘテロ二官能性部分を介して、一方の末端にチオールもしくはアミノ基のような反応基を有している修飾されたガストリンを生じるように(例えば、カルボキシ末端、ガストリン−スペーサー−cys−架橋基−キャリア;ガストリン−cys−架橋基−キャリア;ガストリン−スペーサー−cys/−露出させられている反応基を有している架橋基、およびガストリン−cys−露出させられている反応基を有している架橋基によって列挙されるものを形成するように)付加される。
【0024】
修飾されたガストリンは、その後、この状態で患者に注射されるか、または患者から得られた全血清もしくは血清画分のような1つ以上の血漿成分;アルブミン、トランスフェリン、もしくは免疫グロブリンのような1つ以上の精製された血清タンパク質(単数または複数);脂質/脂溶性部分/疎水性部分;またはデキストランもしくはPEGのような重合性のキャリアに対して、注射の前に生体外でさらに結合させられるかのいずれかが行われる。用語「高分子」には、本明細書中および特許請求の範囲で使用される場合は、アミノ酸、糖、ヌクレオシドの高分子、合成ポリマー(例えば、PEG)、およびそれらの混合物が含まれる。高分子は、例えば、結合の前に、二官能性架橋基を用いて、または他の化学的手段によって活性化することができる。活性化されたガストリン化合物またはガストリン結合体の投与により、自然界に存在しているガストリンの投与と比較して、長い血清半減期が生じ、そして/または高い血漿ガストリン濃度が長期間にわたって維持される。
【0025】
本発明では、一般的な実施形態において、ガストリン化合物であり、共有結合によってではなく、または共有結合体としてのいずれかで、あるいはアミノ酸配列を有している別のペプチド性化合物に対する融合タンパク質として、ポリマーのような大きな分子と結合させることができる部分を有している、ガストリン組成物が提供される。本明細書中で提供されるガストリン化合物は、自然界に存在している形態のガストリンと比較して、被験動物または患者の血液循環においてより長い半減期を有しており、そして/または長い期間にわたって生体内でより高い濃度でガストリン化合物を維持する。さらに、本発明では、他の実施形態において、ガストリン化合物を作成し、使用する組成物および方法が提供される。これは、患者に対して、単独で、または糖尿病の処置のための少なくとも1つの成長因子と、血糖降下剤と、または免疫抑制剤と組み合わせてのいずれかで投与される。成長因子の例としては、EGFのようなEGF受容体リガンド、GLP−1のようなGLP−1受容体リガンド、プロラクチンのようなプロラクチン受容体リガンド、および成長ホルモンのような成長ホルモン受容体リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。免疫抑制剤の例としては、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、およびダシリツマブが挙げられるがこれらに限定されない。血糖降下剤の限定的ではない例としては、スルホニル尿素、メグリチニド、ビグアニド、チアゾリジンジオン、およびα−グルコシダーゼ阻害因子が挙げられる。
【0026】
1つの実施形態では、ガストリン化合物は、血液中で比較的大きな構造、または複数の構造に結合することができ、なおも標的タンパク質、すなわち、ガストリン/CCK受容体に結合するその能力を保持することができる。通常は、そうでなければ体内で迅速に分解されるガストリンは、キャリアタンパク質に結合させられる。この組成物を使用して、長期間にわたる薬剤の効力を得ることができる。あるいは、ガストリン化合物を、ポリエチレングリコール(PEG)またはデキストランのような重合性のキャリアに結合させて、同様の目的を達成することもできる。
【0027】
特定の実施形態では、ガストリンの化学的修飾を使用して、生体外(体外)または生体内のいずれかでキャリアタンパク質または重合性キャリアに対して共有的または非共有的に反応する化合物が提供される。関連する実施形態では、非共有的な相互作用は静電気相互作用または疎水性相互作用である。関連する実施形態では、キャリアへの修飾されたガストリンの結合は、注射の前に行われる。他の実施形態では、ガストリンは、注射された際に、血流中でキャリアに対して高い親和性を有するような様式に修飾される。別の実施形態では、長期間作用するガストリン化合物は、生体内または体外のいずれかで、キャリアタンパク質を必要としない化学的な修飾によって得られる。
【0028】
特定の実施形態では、キャリアタンパク質は血漿タンパク質である。関連する実施形態では、血漿タンパク質はアルブミンまたは免疫グロブリン、あるいは免疫グロブリンの複数の構成要素である。免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの複数の構成要素は、結合の前に修飾することができるか、または一部を欠失させることができる。特定の実施形態では、重合性キャリアはポリエチレングリコールまたはデキストランである。例えば、活性化されたPEGは、ガストリン化合物中のアミノ基を通じてガストリン化合物に結合させることができる(Vernonese,FM.Biomaterials 22(2001)−405−417)。
【0029】
他の実施形態では、アミノ酸の配列であるガストリン化合物は、これもまたアミノ酸の配列であるキャリアタンパク質と、標準的な組み換え遺伝子技術を用いて、注射の前に遺伝子融合させられる。ガストリンは、例えば、小さい中性の電荷を有していないアミノ酸の配列を含む、リンカー/スペーサーを用いて、またはそのようなリンカー/スペーサーを用いることなく、キャリアタンパク質と組み換えによって融合させることができる。ガストリンをコードする核酸は、キャリアタンパク質の一部または全体に対する融合体として、組み換えによって融合させることができるか、または直接合成することができ、核酸構築物または融合タンパク質は、2つのタンパク質の間のスペーサーとして働く複数の別のアミノ酸をコードするか、または組み込むことができる。組み換え融合タンパク質は、酵母(サッカロマイセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia))、または標準的な細菌システムにおいて発現させることができ、また、哺乳動物もしくは昆虫細胞システムを使用することもできる。発現および/または精製のための標準的な手順の後に、融合タンパク質を治療的に使用することができる。ガストリン化合物のポリペプチドの配列に対する修飾を、必要な場合には、融合タンパク質の構築の間に導入することができる。
【0030】
1つの実施形態では、キャリアタンパク質またはキャリアである非タンパク質性の高分子のような別の化合物とのさらなる接触の際に反応基がキャリアタンパク質または高分子と共有結合による相互作用を形成することができるように、リジンまたはシステインのようなアミノ酸上に存在する反応基のような反応基が導入されるようにガストリン化合物が修飾される。例えば、反応性チオール基を、例えば、スクシンイミジル3−2−ピリジルジチオプロピオン酸(SPDP)を使用して、リジン上のアミノ基を通じてガストリン分子に付加することができ、その後、DTTで還元して活性なチオール基を遊離させることができる(「Protein thiolation and reversible protein−protein conjugation.N−Succinimidyl 3−(2−pyridyldithio)propionate,a new heterobifunctional reagent.」Carlsson J、Drevin H,Axen R.Biochem J 173,723−737(1978))。さらに、二官能性基を、システインまたはリジンを付加した後に付加することができ、その結果、架橋剤の一方の反応性末端はシステイン/リジンと反応し、他方の末端の反応性末端は露出させられたままであるか、またはキャリアに結合させられる。
【0031】
チオールをまた、EDAC媒介性のシスタミンとの反応によってカルボン酸基に組み込み、その後DTTでジスルフィドを還元することができる(「Introduction of sulfhydryl groups into proteins at carboxyl sites.」Lin CM,Mihal KA,Krueger RJ.Biochim Biophys Acta 1038,382−385(1990))。限定的ではない例において、ガストリンのリジン残基上のアミノ基のスクシンイミジルトランス−4−(マレイミジルメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸との反応(「Conjugation of glucose oxidase from Aspergillus niger and rabbit antibodies using N−hydroxysuccinimide ester of N−(4−carboxycyclohexylmethyl)−maleimide.」Yoshitake S,Yamada Y,Ishikawa E,Masseyeff R.Eur J Biochem 101,395−399(1979))により、ガストリンのアミノ部位に、キャリアタンパク質のシステイン残基または活性化された高分子上の遊離のチオール基とその後に反応することができる、チオール反応基が導入される。
【0032】
ガストリン化合物−キャリア複合体は、ガストリン化合物−キャリア複合体の調製もしくは単離を容易にするか、またはガストリン化合物の機能的活性を高めるかもしくは維持することができる、スペーサーアームまたはエレメントまたは他の成分を含む、さらなる調節成分を含むことができる。スペーサーアームは、1つ以上のアミノ酸、ペプチド、ペプチド模倣物、または小さい有機分子であり得、ホモ二官能性もしくはヘテロ二官能性架橋試薬、またはキチンオリゴマーもしくはポリエチレングリコールまたは関連する高分子を含むことができる。
【0033】
別の実施形態では、キャリアとガストリン化合物とは、スペーサーアームを伴って、またはスペーサーアームを伴うことなく共有結合することができる。スペーサーアームを含まない(ゼロ長架橋)例として、EDCが挙げられる。スペーサーアームを形成するホモ二官能性架橋基は、例えば、ジスクシンイミジルスベレートであり得、スペーサーアームを形成するヘテロ二官能性架橋基は、例えば、2−イミノチオラン、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP)および4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)であり得る。
【0034】
種々の実施形態において、ガストリン化合物は、高分子、例えば、タンパク質のような大きなキャリア部分と結合させられる。結合が共有結合または非共有結合である場合は、タンパク質はキャリアタンパク質と考えることができる。複数のクラスのキャリアタンパク質は、抗原性ではない、すなわち、自然界に存在しているヒトのタンパク質であるという性質を有することができ、血液循環において保たれ得る。理想的なキャリアタンパク質は、ヒトの血液循環系において通常見ることができるタンパク質である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、処置の14日後の、最近糖尿病を発症したNODマウスの空腹時血糖値に対する未修飾のガストリンの効果を示す。
【図2】図2は、処置の14日後の、最近糖尿病を発症したNODマウスの膵臓でのインシュリン濃度に対する未修飾のガストリンの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書中で使用される場合は、用語「ガストリン/CCK受容体リガンド」には、ガストリン/CCK受容体に結合する、それと相互作用する、またはそれを刺激するあらゆる化合物が含まれる。このようなガストリン/CCK受容体リガンドの例は、2001年9月11日に発行された米国特許第6288301号に示されており、これには、ガストリン34(大きなガストリン)、ガストリン17(短い(little)ガストリンまたは小さい(small)ガストリン)、ガストリン14、ガストリン13、ガストリン−10、およびガストリン8、ペンタガストリン、テトラガストリンのような種々の形態のガストリン;CCK58、CCK33、CCK22、CCK12、およびCCK8のような種々の形態のコレシストキニン;ならびに他のガストリン/CCK受容体リガンドが含まれる。一般的には、ガストリン/CCL受容体リガンドは、カルボキシ末端のアミノ酸配列Trp−Met−Asp−Phe−アミドを共通して有している。上記のメチオニン(Met)はロイシンで置き換えることができる。上記の活性な類似体、断片、および他の修飾体(ガストリン/CCK受容体のペプチドアゴニストおよび非ペプチドアゴニストの両方、または部分的なアゴニスト、例えば、A71378を含む)も想定される(Lin等,Am.J.Physiol.258(4 Pt 1):G648,1990)。
【0037】
ガストリン17のようなガストリンの小さい形態は、ペプチド合成によって経済効率よく調製されており、合成ペプチドが市販されている。15位にメチオニンまたはロイシンを有しているヒトガストリンのような、合成のヒトガストリン17はまた、Bachem AG,Bubendorf,Switzerlandから、およびResearchplusから入手することもできる。自然界において見出されているガストリンペプチドは、カルボキシル末端がアミド化されたペプチドであり、カルボキシル末端アミノ酸のアミド化は本明細書中のガストリン化合物の範囲内に含まれる。
【0038】
ガストリン/CCK受容体リガンドには、上記リガンドの活性な類似体、断片、および他の修飾体も含まれる。これらは、例えば、内因性の哺乳動物のガストリンと、共通のアミノ酸配列を有しており、例えば、60%の配列同一性、または70%の同一性、または80%の同一性を共有している。このようなリガンドには、内因性のガストリン、コレシストキニン、または組織保存の部位に由来する同様の活性なペプチドの分泌を増大させる化合物が含まれる。これらの例としては、胃酸の分泌を阻害するガストリン放出ペプチドであるオメプラゾール、CCKの刺激を増大させるダイズトリプシン阻害因子がある。
【0039】
大きなガストリン−34と小さいガストリン−17の配列が本明細書中に示される。大きなガストリン−34は、本質的には、小さいガストリン−17の伸張形態であり、N末端にさらにアミノ酸配列を有している。大きなガストリンは、生体内で切断されて小さいガストリン−17を遊離させる。N末端の記号「Glp」はピログルタミン酸残基であり、これはグルタミン酸の自然に生じる環状形態である。種々の実施形態において、N末端にピログルタミン酸残基を有しているガストリンは、グルタミン酸またはグルタミンでピログルタミン酸を置換すること、あるいはプログルタミン酸を欠失させることのいずれかによって、N末端にシステインまたはリジン残基を含むように修飾される。さらに、ガストリン34とガストリン−17のそれぞれは、配列番号1〜2において本明細書中にそれぞれ示されるように32位に、または配列番号3〜4にそれぞれ示されるように15位に、メチオニンまたはロイシンを有する修飾された形態で使用することができる。
【0040】
N末端Glp−Leu−Gly−Pro−Gln−Gly−Pro−Pro−His−Leu−Val−Ala−Asp−Pro−Ser−Lys−Lys−Gln−Gly−Pro−Trp−Leu−Glu−Glu−Glu−Glu−Glu−Ala−Tyr−Gly−Trp−Met−Asp−Phe−NH2(配列番号1)
N末端Glp−Leu−Gly−Pro−Gln−Gly−Pro−Pro−His−Leu−Val−Ala−Asp−Pro−Ser−Lys−Lys−Gln−Gly−Pro−Trp−Leu−Glu−Glu−Glu−Glu−Glu−Ala−Tyr−Gly−Trp−Leu−Asp−Phe−NH2(配列番号2)
N末端Glp−Gly−Pro−Trp−Leu−Glu−Glu−Glu−Glu−Glu−Ala−Tyr−Gly−Trp−Met−Asp−Phe−NH2(配列番号3)
N末端Glp−Gly−Pro−Trp−Leu−Glu−Glu−Glu−Glu−Glu−Ala−Tyr−Gly−Trp−Leu−Asp−Phe−NH2(配列番号4)
特定の実施形態では、例えば、ガストリン配列のアミノ末端にアミノ酸の任意的なスペーサーを有しているガストリンアミノ酸配列の融合体であり、タンパク質キャリアを有しているガストリン化合物を、被験体に対してトランスジェニックによって提供することができる。このような融合タンパク質のトランスジェニック発現のための核酸構築物の1つの実施形態では、ヒトプレプロガストリンペプチド前駆体遺伝子が、キャリアタンパク質をコードする遺伝子に対して、スペーサーを伴って、またはスペーサーを伴うことなく、米国特許第5885956号に示されている技術と同様の技術によって融合させられる。
【0041】
糖尿病を処置する必要がある個体において糖尿病を処置するための方法には、ガストリン化合物と、EGF、GLP−1、プロラクチン、および成長ホルモンのようなFACGINTを提供する組成物を個体に投与する段階が含まれる。これらのFACGINTの誘導体、類似体、および結合体が含まれる。本明細書中で使用される場合は、用語「FACGINT」は、島新生療法についてガストリンを補足する因子を意味する。語句「FACGINT」はまた、本明細書中で使用される場合には、「1つ以上のFACGINT」または「少なくとも1つのFACGINT」を意味する場合もある。
【0042】
用語「FACGINT」には、これらの用語が通常理解されているように、多くの種々の成長因子および成長ホルモン、1つ以上の成長ホルモンを修飾する試薬、ならびにこれらの成長ホルモンおよび成長因子の結合に関与している1つ以上の受容体についてのリガンドおよびエフェクターが含まれ、例として、EGF受容体リガンド、PTHrPのようなPTH関連タンパク質(PTHrP)受容体リガンド(PTHrP;Garcia−Ocana,A等,2001,J.clin.Endocrin.Metab.86:984−988);HGFのような肝細胞増殖因子(HGF)受容体リガンド(HGF;Nielsen,J.等,1999、J Mol Med 77:62−66);FGFのような線維芽細胞増殖因子(FGF)、KGFのような角質細胞増殖因子(KGF)受容体リガンド;NGFのような神経成長因子(NGF)受容体リガンド;GIPのような胃抑制ペプチド(GIP)受容体;TGFβのようなトランスフォーミング増殖因子β(TGFβ)受容体(2002年6月13日に公開された米国特許出願番号第2002/0072115)、ラミニン−1のようなラミニン受容体リガンド;INGAPのような島新生関連タンパク質(INGAP)受容体リガンド;BMP−2のような骨形成因子(BMP)受容体リガンド;VIPのような血管作動性小腸ペプチド(VIP)受容体リガンド;GLP−1およびエキセンディン−4のようなグルカゴン様ペプチド1受容体リガンド、GLP−2のようなグルカゴン様ペプチド2(GLP−2)受容体リガンド、ならびにその完全性に関与している酵素を阻害することによりGLP−1のレベルに間接的に影響を与える、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害因子(Hughes,T.等,2002,Am Diabetes Assoc Abstract 272−or);REGタンパク質のようなREG受容体リガンド;GHのような成長ホルモン(GH)受容体リガンド、PRLおよび胎盤性ラクトゲン(PL)のようなプロラクチン(PRL)受容体リガンド;IGF−1およびIGF−2のようなインシュリン様成長因子(1型および2型)受容体リガンド;EPOのようなエリスロポエチン(EPO)受容体リガンド(http://www.drinet.org/html/august_2002_.htm);ベータセルリン(EGFファミリーのメンバーとも考えられる);アクチビン−Aのようなアクチビン−A受容体リガンド;VEGFのような血管内皮成長因子(VEGF)受容体リガンド;BMP−2のような骨形成因子(BMP)受容体リガンド;VIPのような血管作動性小腸ペプチド(VIP)受容体リガンド;VEGFのような血管内皮成長因子(VEGF)受容体リガンド;PACAPのような下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)受容体リガンド;G−CSFのような顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)受容体リガンド;GM−CSHのような顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)受容体リガンド;PDGFのような血小板由来成長因子(PDGF)受容体リガンド;ならびに、セクレチンのようなセクレチン受容体リガンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
例示的なFACGINTであると示される本明細書中の成長因子、酵素、酵素阻害因子、ペプチド、タンパク質、およびホルモン化合物の全てについての、全ての既知の類似体および誘導体は、自然界に存在しているものであるか、または突然変異誘発によって作成されたものであるか、または設計され合成されたものであるかにはかかわらず、そのようなFACGINTと同等であると考えられるべきである。結合体、すなわち、1つ以上の化学基およびそれらの混合物の付加によって誘導された組成物もまた、これらの等価物と考えられる。コード遺伝子は、例えば、ヒトの組み換え類似体のようなそのFACGINT類似体を生じるように、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって変更することができる。さらに、1つ以上のアミノ酸残基の同一性および位置を、標的化突然変異誘発によって変化させることもできる。タンパク質の一次アミノ酸配列は、グリコシル化、アシル化によって、または任意の他の補助的な分子(例えば、脂質、リン酸塩、硫酸塩、および/またはアセチル基)の付加によるような結合によって、拡大させることもできる。さらに、鎖の中の個々のアミノ酸残基は、酸化、還元、または他の誘導によって修飾することができる。FACGINTは、活性を保持している任意の断片が得られるように切断することもできる。FACGINTのプロドラッグまたは代謝産物は、FACGINTと同等である。ポリペプチドもしくはタンパク質全体、または任意の断片を免疫グロブリンおよび他のサイトカインのような任意の他のペプチドまたはタンパク質と融合させることができる。結合体として、例えば、ポリエチレングリコール部分を含む自然界には存在しない高分子に結合させたFACGINTを含む組成物を挙げることができる。この用語には、もとのペプチドの1つ以上のアミノ酸残基を、例えば、アルキル化、アシル化、エステル形成、またはアミド形成によって化学的に修飾することによって得られる誘導体も含まれる。あるいは、FACGINTの合成を誘導するか、またはFACGINTの作用を模倣する試薬が、同等の化合物と考えられる。単数形「FACGINT」は、本明細書中に示される例示的なFACGINTに由来する任意の1つ以上の化合物を意味する場合がある。用語「誘導体」および「結合体」は、本明細書中で使用される場合は同じものであり、化学的に関係している組成物を示すために使用され、合成手段、生物学的手段、または組み換え手段、または化学的手段によって調製することができる。
【0044】
用語「受容体リガンド」は、特定のリガンドについての受容体と組み合わせて本明細書中で使用される場合は、その受容体に結合する、それと相互作用する、またはそれを刺激する任意の組成物を意味する。
【0045】
受容体リガンドには、定義される範囲内に、アゴニストがFACGINTと構造的に関係しているかどうかにはかかわらず、任意の特定のFACGINTについての受容体に対する受容体アゴニストが含まれる。
【0046】
用語「プロラクチン」は、本明細書中で使用される場合は、この用語についてタンパク質因子(例えば、ヒトプロラクチン)の分野で知られているように、内因性の哺乳動物プロラクチンと実質的な配列類似性を共有しており、プロラクチン活性を有するあらゆるポリペプチドを意味する。内因性のヒトプロラクチンは、下垂体によって生産される199アミノ酸のポリペプチドである。この用語には、内因性プロラクチンの欠失変異体、挿入変異体、または置換変異体であり、活性を保っているプロラクチン類似体が含まれ、これには、他の種に由来するプロラクチンおよび自然界に存在している変異体が含まれる。プロラクチンの機能としては、米国特許第6333031号(活性のあるアミノ酸配列)および同第6413952号(金属錯体を形成したレセプターリガンドアンタゴニスト)に開示されているような、プロラクチン受容体に対してアゴニスト活性を有している組成物、ならびにプロラクチンアゴニストとして作用するヒト成長ホルモンの類似体であるG120RhGH(Mode等,1966、Endocrinol.137(2):447−454)、ならびに米国特許第5506107号および同第5837460号に記載されているようなプロラクチン受容体のリガンドが挙げられる。
【0047】
PRL、GH、およびPLは、共通の構造、免疫学的機能および生物学的機能を有しているポリペプチドホルモンのファミリーのメンバーであり(「Pancreatic Growth and Regeneration」,N.Sarvetnick編,Ch.1.Brejie,T.等,1997に概説されている)、したがって、本明細書中ではPRL/GH/PLファミリーと呼ばれる。PRLおよびGHは、脊椎動物の下垂体前葉によって分泌される。PRLは、浸透調節、再生、乳の分泌、および免疫調節を含む広い範囲の生物学的機能に関与している。GHは、成長および形態形成に関係している生理学的プロセスに関係している。関連する受容体リガンドは、「PRL/GH/PL」受容体リガンドと呼ばれる。FACGINTは、ペプチドおよびタンパク質の構造の類似性、ガストリンを補足することに関する機能的類似性、1つ以上の受容体の結合に関する機能的類似性に基づいて種々の群に分類することができ、これらの群は、それぞれが本発明の種々の実施形態の範囲に含まれる。
【0048】
グルカゴン様ペプチド−1は、アミドである分子形態GLP−1(7位〜36位と通常示される残基を有する)として小腸の内分泌細胞で合成され、GLP−1(7−37)と類似している。GLP−1の生物学的活性についての最初の研究では、GLP−1の全長のN末端が伸張された形態(1−37および1−36、後者はアミドである)が利用された。より大きなGLP−1分子は、通常は生物学的活性を欠失している。後に、最初の6個のアミノ酸の除去により、実質的に高い生物学的活性を有しているGLP−1分子のより短いバージョンが得られることが見出された。
【0049】
血液循環中にある生物学的に活性なGLP−1の大部分は、GLP−1(7−36)アミド形態であることが見出されており、それより少ない量の生物学的に活性なGLP−1(7−37)形態も検出することができる。Orskov,C.等,Diabetes 1994,43:335−339を参照。いずれのペプチドも、ほぼ同量の生物学的機能を示す。GLP−1は、栄養摂取に応答して腸の内分泌細胞から分泌され、栄養吸収後の代謝系の恒常性において複数の役割を果たす。GLP−1の調節は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP−IV)によって媒介される2位のアラニン残基での切断によるペプチドのN末端分解によって生じる。概要については、DPP−IVを参照。GLP−1の生物学的活性としては、グルコース依存性のインシュリン分泌およびインシュリンの生合成の刺激、グルカゴンの分泌および胃内容排出の阻害、ならびに食物摂取の阻害が挙げられる。GLP−1は、Drucker,D.,Endocrin 142:521−527,2001に概説されているように、GI菅および中枢神経系において多数のさらに別の作用を有しているようである。例示的なGLP−1組成物としては、以下が挙げられる:BIM 51077(DPP−IV消化に抵抗性であるGLP−1類似体、Beaufour Ipsenから入手可能);AC2592(GLP−1、Amylin,San Diego CAによる);ThGLP−1(GLP−1,修飾されたアミノ酸および脂肪酸結合体、Theratechnologies,Saint−Laurent,Quebec,Canadaによる);DAC:GLP−1(Conjuchem,Montreal,Quebec,Canada);CJC−1131またはDAC(登録商標):GLP−1(アルブミンに共有結合するように操作されたGLP−1類似体、Conjuchem)、LY315902および徐放性LY315902(DDP−IV抵抗性GLP−1類似体、Eli Lilly,Indianapolis,INによる);低分子量GLP−1模倣物、アルブゴン(Albugon)(アルブミン:GLP−1融合ペプチド、Human Genome Sciences,Rockville,MDによる);LiraglutideまたはNN2211(GLP−1分子のアシル化によって得られる長期作用性GLP−1誘導体、これは血流中に侵入すると広い範囲でアルブミンに結合して、アルブミンがDPPIVによって分解されるのを保護し、腎臓でのクリアランスを減少させる;Elbrond等,Diabetes Care 2002 Aug 25(8):1398−404)。
【0050】
エキセンディン−4は、アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)(Gila monster)の毒液に由来する新規のペプチドであり、これは、GLP−1(7−36)アミドに対して53%の相同性を有している。これは、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)受容体の長期作用性の強力なアゴニストとして作用する。なぜなら、これはDDP−IVによる分解に対して抵抗性であるからである。エキセンディン−4は、GLP−1に類似する特性を有しており、胃内容排出、インシュリンの分泌、食物摂取、およびグルカゴン(slucagon)の分泌を調節する。エキセンディン−4の例としては、エキセンディン(AC2993としても知られている合成の形態、Amylin);エクセナチドLAR(長期作用性の形態);ZP10(6個のリジン残基が付加されている修飾されたエキセンディン−4、Aventis/Zealand Pharma);およびAP10(長期作用性処方物、Alkermes,Cambridge MA)が挙げられる。生理学的研究は、トランスジェニック哺乳動物でのエキセンディン−4の持続的な発現によっては、グルコースの恒常性、細胞量、または食物摂取が乱されることはないことを示している(Biaggio,L.等,J Biol Chem 275:34472−34477,2000)。つまり、エキセンディン−4の生理学的作用は完全には理解されていない。
【0051】
ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害因子とは、766アミノ酸の膜結合ペプチダーゼであるDPP−IVの活性を阻害する化合物をいい、これには、その基質であるGLP−1、GLP−2、およびGIPが含まれる。DPP−IVによって媒介されるGLP−1の不活化は、生体内でのGLP−1の生体活性の決定要因である。DPP−IV阻害因子の例として、イソロイシンチアゾリジド、バリン−プロリジド、NVP−DPP738(Novartis,Cambridge,MA)、LAF237(Novartis)、P32/98(Probiodrug AG,Halle,Germany)、およびP93/01(Probiodrug)が挙げられる。
【0052】
本明細書中で使用される場合は、用語「EGF受容体リガンド」には、EGF受容体を刺激し、その結果、同じもしくは隣接する組織中の、または同じ個体中のガストリン/CCK受容体もまた刺激されると、インシュリンを生産する膵島細胞の新生が誘導される化合物が含まれる。このようなEGF受容体リガンドの例として、EGF1−53である全長のEGFが含まれ、さらに、EGF1−48、EGF1−49、EGF1−52、ならびにそれらの断片および活性な類似体が含まれる。EGF受容体リガンドの他の例は、1−48、1−47、1−51を含むTGFαの複数の形態、およびアンフィレグリン、およびポックスウイルス増殖因子、ならびにガストリン/CCK受容体リガンドと同じ相乗的活性を示すあらゆるEGFレセプターリガンドである。これらには、上記の活性な類似体、断片、および修飾体が含まれる。Carpenter and Wahl,Chapter 4,Peptide Growth Factors(Sporn and Roberts編),Springer Verlag,1990もまた参照のこと。
【0053】
EGF受容体リガンドを含む化合物の群には、さらに、正常なまたは野生型のEGFの変異体を含む「修飾されたEGF」が含まれる。修飾は、EGFのクリアランス速度のような1つ以上の生物学的活性に影響を与えることが示されている。この用語には、ヒトEGFのアミノ酸配列と実質的に類似しているアミノ酸配列を有しているペプチドが含まれ、例えば、これらには、種々の残基位置で、1つまたは数個のアミノ酸の置換が含まれている。
【0054】
組み換えEGF形態は、構造および活性に変化が生じるように遺伝子操作されている。例えば、21位のメチオニンがロイシン残基で置換されたEGFが記載されている(米国特許第4760023号)。51個の残基を有している組み換えヒトEGF(hEGF)(すなわち、hEGFの52位および53位の2つのC末端残基を欠失しており、51位に中性のアミノ酸置換を有している)は、EGF活性を保持しており、微生物による生産プロセスおよびその後の被験体への投与の間の、プロテアーゼによる分解に対してより抵抗性がある。EGFおよびTGFαに対して顕著な類似性を有しているタンパク質のファミリーをコードする核酸分子のシリーズが記載されている(国際公開番号WO00/29438)。16位の残基のヒスチジンが中性または酸性アミノ酸で置換されているEGF突然変異タンパク質(変異したEGF)が記載されており(国際公開番号WO93/03757)、このような形態は、低いpH値で活性を保持している。EGFおよびTGFαの化学的類似体および断片は、EGF受容体ファミリーの種々のメンバーに結合する能力を保持している(米国特許第4686283号)。EGFまたはTGFαの種々の修飾により、生体外および生体内での安定性、さらには生体内での活性において、1つ以上の組み換えタンパク質の生産に影響を与える有利な特性が付与される。本明細書の実施例において使用される例示的な組み換え修飾されたEGF受容体リガンドは、51位にアスパラギンを有している51アミノ酸の長さのヒトEGFのC末端が欠失した形態(本明細書中では、EGF51Nと呼ばれる)であり、これは、実質的に全長のI.N.T.(登録商標)活性を保持しており、生体内および/または生体外で、正常なまたは野生型のhEGFと少なくとも同程度またはそれよりも大きい安定性を有している(S.Magil等,2003年5月15日にPCT/US02/33907として公開され、その全体が引用により本明細書中に組み込まれる)。
【0055】
用語「成長ホルモン」には、本明細書中で使用される場合は、内因性の哺乳動物の成長ホルモンと実質的に同一のアミノ酸配列を有しており、哺乳動物の成長ホルモンの生物学的活性を有しているあらゆるペプチドが含まれる。ヒトの成長ホルモンは、単鎖の191個のアミノ酸を含み、約22kDalの分子量を有しているポリペプチドである(Goeddel等,1979、Nature 281:544−548;Gray等,1985,Gene 39:247−254)。この用語には、欠失、挿入、または置換を有している類似体、および他の種に由来する成長ホルモン、ならびに自然界に存在している変異体が含まれる。Cunningham等,1989,Science 243:1330−1336,および1989,Science 244:1081−1085;ならびに国際公開番号WO90/05185、および米国特許第5506107号を参照のこと。
【0056】
用語「処置する」または「改善する」は、本明細書中で使用される場合は、1つ以上の糖尿病の症状を軽減するまたは排除することを意味する。用語「糖尿病」は、本明細書中で使用される場合は、インシュリンが不足している、インシュリンに対する抗体を生産している、または血糖値が高すぎる、あるいは実験用動物モデルを含む任意の哺乳動物の糖尿病の症状のいずれかを発症している生理的な適応症を意味し、これには、I型糖尿病およびII型糖尿病のようなヒトでの形態、初期糖尿病、およびインシュリンが少し少ないかもしくは血糖値が少し高いことによって特徴付けられる前糖尿病の症状が含まれる。「前糖尿病の症状」は、糖尿病または関連する症状を有している疑いのある哺乳動物、例えば、正式には糖尿病とは診断されていないが、インシュリンまたは血糖値に関して兆候を示している哺乳動物、および家族の病歴、遺伝的素因、またはII型糖尿病の場合には肥満によって糖尿病または関連する症状にかかりやすい哺乳動物、あるいは、糖尿病または関連する症状を以前有しており、再発のリスクがある被験体を記載する。
【0057】
本明細書中で使用される場合は、用語「免疫抑制剤」または「免疫抑制のための薬剤」は、免疫応答を抑制するあらゆる試薬を意味する。例示的な免疫抑制剤が表1に示され、これらの試薬の任意の誘導体、または機能的に同等なものは、本明細書中および特許請求の範囲に記載されるような本発明の実施形態に適切であると考えられる。表1の免疫抑制剤または他の同等の薬剤は、製造業者によって供給され、薬理学の分野の当業者に公知であるように被験体の体重に対して標準化されて投与される。例えば、タクロリムスは、通常、注射または経口で投与され、シロリムスは通常、経口投与される。
【0058】
【表1−1】

【0059】
【表1−2】

【0060】
【表1−3】

【0061】
【表1−4】

【0062】
【表1−5】

【0063】
【表1−6】

血糖降下剤または血糖降下薬は、インシュリン応答性のエンハンサーであり得、通常は、糖尿病患者の血糖を制御するためのものとして使用される。これらの薬剤として、スルホニル尿素(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、トラザミド、トルブタミド、グリブリド、グリピジド、グリメピリド)、メグリチニド(例えば、レパグリニド、ナテグリニド)、ビグアニド(例えば、メトフォルミン)、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)、α−グルコシダーゼ阻害因子(例えば、ミグリトール)、グルカゴンアンタゴニスト、カリウムチャンネルオープナー、インシュリン増感剤、肝酵素阻害因子、グルコース摂取調節因子、脂質代謝を変化させる化合物、および食物摂取を減少させる化合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの複数の薬剤の組み合わせを、本明細書中で提供されるガストリン化合物とともに使用することができる。
【0064】
本明細書中で使用される場合は、用語「哺乳動物」は、ヒト、サルのような哺乳動物、マウス、またはラットのような齧歯動物、イヌ、ネコ、農業上重要である動物、またはブタ(protein pig)、ヤギ、ヒツジ、ウマ、あるいはゴリラもしくはチンパンジーのような類人猿のあらゆるメンバーが含まれるが、これらに限定されない。個々の哺乳動物は、本明細書中に記載されるように、糖尿病ではなくてもよく、前糖尿病であってもよく、また、糖尿病であってもよい。
【0065】
全身投与の態様としては、経皮、髄腔内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、および経口による経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物は、任意の一般的な経路によって、例えば、注入または注射(bolus injection)によって、表皮もしくは皮膚粘膜の内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、膣粘膜、鼻腔粘膜、および腸粘膜など)を介する吸収によって投与することができ、他の生物学的活性のある薬剤とともに投与することもできる。例示的な投与経路は、例えば、皮下注射による全身投与である。ガストリン化合物は、FACGINTまたは免疫抑制剤または血糖降下剤とともに投与される場合は、1つの混合用量で投与することができ、また、複数の成分を任意の順序で別々に投与することもできる。
【0066】
(組成物の調製方法)
(ガストリンペプチドの合成)
ガストリンペプチドは、組み換え宿主細胞中での発現または化学合成のような任意の適切な手段によって生産することができる。後者の場合には、ガストリンペプチドは、例えば、固相Fmocペプチド合成を使用して、ポリジメチルアクリルアミドゲル樹脂上で合成することができる。その後、ポリペプチドは標準的な方法によって精製される。
【0067】
(結合パートナー/キャリア)
結合パートナー/キャリアとしては、患者から得られた血清のような血漿成分、アルブミン、トランスフェリン、または免疫グロブリンのような精製された血清タンパク質(単数または複数)、グリコホリンAおよびAE−1のような赤血球タンパク質、レクチン、不活化酵素、リン酸および硫酸結合タンパク質、コール酸、脂質結合タンパク質、脂質/脂溶性部分/疎水性部分のような糖結合タンパク質;デキストランまたはポリエチレングリコールのような重合性キャリアが挙げられる。ガストリンを脂質/脂溶性部分に結合させる場合には、一旦注射したこれらの結合体を、脂肪酸、または例えば、血清中の脂質結合タンパク質に結合することが知られているアルブミンのような血清タンパク質と、非共有的または共有的のいずれかで相互作用させることができる。本明細書中の組成物および方法の目的については、血清および血漿は同義的に使用することができる。ガストリンをキャリアに結合させるためには、キャリアを、最初に、反応基の導入によって活性化する必要がある。いくつかの場合には、キャリアはすでに少なくとも1つの反応基、例えば、アルブミン上のシステイン34を含んでいる。キャリアの活性化(必要な場合)の後、キャリアはガストリン化合物に結合させられる。通常は、キャリアは、タンパク質鎖中の反応基、例えば、チオール基、αおよびεアミノ基、カルボキシル基、または芳香環を介してタンパク質に共有結合することができる。このような反応基の全てがすでに存在している場合があり、また、タンパク質の事前の化学的修飾によって付加することもでき、化学合成の間に、または既存のガストリンペプチドを化学的に修飾することによって、あるいは公知の分子生物学的方法を使用してタンパク質のアミノ酸配列を修飾することのいずれかによって、組み込むこともできる。例えば、キャリアは、リジン残基中のタンパク質のεアミノ基に、またはN末端に存在するシステイン残基上のチオール基に結合させることができる。あるいは、キャリアは、ヘテロ二官能性またはホモ二官能性架橋剤を介してタンパク質に結合させることもできる。
【0068】
(血漿タンパク質)
血漿タンパク質の結合は、ガストリンのようなそうでなければ長くは存在できない分子の薬物動態特性を改善する有効な手段であり得る。血漿タンパク質の他の特徴は、腎臓浸潤のカットオフ(約45kDa)よりも大きい自然な状態での分子量であり、これにより血漿中での持続時間が延長させられる。血漿タンパク質としては、アルブミン、α−1酸性糖タンパク質、α−1抗キモトリプシン、α−1抗トリプシン、α−2−抗プラスミン、α−2−HS−糖タンパク質、α−2−マクログロブリン、アンギオテンシノゲン、アンチトロンビンIII、アポリポタンパク質AI(HDL)、アポリポタンパク質AII(HDL)、アポリポタンパク質B(LDL)、アポリポタンパク質CI(VLDL)、アポリポタンパク質CII(VLDL)、アポリポタンパク質CIII(VLDL)、アポリポタンパク質E(VLDL)、アポトランスフェリン、C1エステラーゼ阻害因子、セルロプラスミン、フェリチン、フィブリノーゲン、GCグロブリン、ヘプトグロビン(混合型)、ヘモグロビン、免疫グロブリンA、免疫グロブリンA1、免疫グロブリンA1、免疫グロブリンA2、免疫グロブリンD、免疫グロブリンE、免疫グロブリンG、Fab断片、免疫グロブリンG,Fc断片、免疫グロブリンG、免疫グロブリンG1、免疫グロブリンG2、免疫グロブリンG3、免疫グロブリンG4、免疫グロブリンM、μ鎖、免疫グロブリンM、Fc5μ、免疫グロブリンM、免疫グロブリン重鎖(H)、免疫グロブリン軽鎖(L)−K−軽鎖、γ−軽鎖、免疫グロブリンのFab断片、免疫グロブリンのFc断片、ラクトフェリン、リポタンパク質a、[Lp(a)]、リポタンパク質(高密度)、リポタンパク質(低密度、)リポタンパク質(超低密度)、プレアルブミン、プロトロンビン、プロチモシン−α、リウマトイド因子、ステロイド結合タンパク質、トランスコルチン、チロキシン結合グロブリン、トランスフェリンおよびα−フェトプロテインが挙げられるが、これらに限定されない。血漿タンパク質のリストは、Anderson and Anderson,Molecular and Cellular Proteomics 2002,1.11:845に見ることができる。
【0069】
ヒトの血清アルブミンは、約67kDaの分子量、血液循環においては19日の半減期を有し、ヒトの血漿中に最も多く存在するタンパク質である。アルブミンは、単鎖のポリペプチドを形成する585個のアミノ酸から構成される。アルブミンは、長鎖脂肪酸、ワルファリンおよびバルプロエートのような特定の治療薬、およびカルシウムのような無機リガンドのような、生理学的リガンドを含む多数の化合物と相互作用する。
【0070】
抗体/免疫グロブリンには、完全な免疫グロブリンまたはそれらの断片を含めることができ、免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE,IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3、IgMなどのような種々のクラスおよびイソ型が含まれる。それらの断片としては、Fab、Fv、およびF(ab’)、Fab’などが挙げられる。さらに、免疫グロブリンの断片、凝集物、ポリマー、または結合体を、適切である場合には使用することができる。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルであり得、宿主の免疫化、血清(ポリクローナル)の回収のような通常使用される技術によって、あるいは持続性のハイブリッド細胞株を調製し、分泌されたタンパク質(モノクローナル)を回収することによって、あるいは、ヌクレオチド配列または自然界に存在している抗体の特異的な結合に必要なアミノ酸配列を少なくともコードするその変異させたバージョンをクローニングし、発現させることによって、調製することができる。
【0071】
(重合性キャリア)
結合パートナーには高分子もまた含まれる。種々の実施形態では、高分子は、自然界に存在しているものである場合も、合成のものである場合もある。高分子の例として、タンパク質、糖ペプチド、アミノデキストランまたはカルボキシメチルデキストランのようなデキストランのような多糖類、およびデキストラン硫酸のようなデキストランの生体高分子誘導体、ヒドロキシエチル澱粉、セルロースおよびセルロース誘導体(メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む)、澱粉および澱粉誘導体、インシュリン、ヘパリン、ヘパリン断片;PEGおよびその誘導体のようなポリアルキルグリコール(PAG)、ポリオキシエチル化グリセロール(POG)のようなポリオキシエチル化ポリオール(POP)、ポリトリメチレングリコール(PTG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸、ポリエチルオキサゾリン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアミノ酸、ポリウレタンおよびポリホスファゼン、ポリ(乳酸−コ−エチレングリコールPLA−PEG、ポリ(D,L−乳酸−コ−グリコール酸PLGA、ポリ(オルトエステル)、ポリ(乳酸−コ−グリセリド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、およびポリウレタン オール)−ブロック−ポリ(乳酸−コ−グリコリド)(PLGA−PEG−PLGA)、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、ヒドラゾンの合成共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテルマレイン酸無水物、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、ポリプロピレングリコール、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体の共重合体、ポリビニルエチルエーテル、およびα、β−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)(PacM)のような合成高分子が挙げられる。通常は、合成高分子は、直鎖状または分岐状、置換または未置換、ホモ重合性、または2つ以上の異なる合成単量体の共重合体であり得る。
【0072】
ペプチドおよびタンパク質のペグ化により、生物学的機能を保持している高い治療特性を得ることができる。分子量を大きくすることによるPEG(またはデキストランのような他の高分子)との結合により、腎臓での浸潤、免疫応答、およびタンパク質分解性酵素による分解のプロセスを減少させることができる。これらの全ては、生体内での安定性を高めるように作用する。PEG(ポリエチレングリコール)は、単量体を繰り返す直鎖であり、これは、末端の遊離のヒドロキシル基で化学的に活性化することができる。このような活性化により、スルフヒドリル基およびアミノ基を含む多数の官能基に対する反応性を得ることができる。架橋を防ぐために、1つまたは2つの末端ヒドロキシル基がメトキシ基(mPEG)で覆われる場合がある。複数のフォーク状構造または分岐を有しているPEGもまた合成することができ、これにより、個々のPEG分子上の複数の点にペプチドを結合させることができる。
【0073】
遊離のスルフヒドリル基(例えば、システイン(3文字のアミノ酸表記を使用してCysと略される))を含むペプチドは、容易に、マレイミドで修飾された少なくとも1つのmPEGとのアルキル化反応をうけ、安定なチオエステル結合を形成する。ガストリンの場合には、その生物学的活性には必要ではないペプチドの領域(例えば、そのN末端)中にシステイン残基が導入されている合成されたガストリン化合物を使用することができる。
【0074】
遊離のアミン(例えば、リジンまたはN末端アミノ基)を含むペプチドは、スクシンイミジルエステルで修飾されたPEGと反応して、安定なアミド結合を形成することができる。化学的な反応の特異性がないことが原因で、例えば、3個のリジン残基を含むガストリン−34の場合には、任意の1つまたはそれ以上のリジン残基が修飾されたPEGと反応して、化学的に、そしておそらくは機能的にもそうである、結合されたペプチドの異種混合物を生じる場合がある。その精製は容易ではない。特定のリジン残基の部位特異的PEG化は、ペプチド合成の間に、PEGがすでにε−アミノ側鎖に結合させられているリジン残基を導入することによって容易に行うことができる(Felix(1997)に記載されているように)。Felix,A.M.(1997) Site−Specific Poly(ethylene glycol)ylation of Peptides.In「Poly(ethylene glycol).Chemistry and Biological Applications」Harris、J.M.& Zalipsky S.編。
【0075】
「活性化されたPEG」(または「ペグ化剤」)とは、タンパク質修飾因子として使用することができる任意のPEG誘導体である。なぜなら、これは、タンパク質/ペプチド中のいくつかの官能基と反応して、PEG−タンパク質/ペプチド結合体を生じることができる官能基を含むからである。活性化されたPEGとして、アルキル化PEG、アシル化PEG、およびアミノ酸アームを有しているPEGを挙げることができる。また、PEGマレイミド(例えば、Shearwater Corporation,Huntsville,ALによるmPEG−マレイミド−20000)を使用することにより、システイン残基をペグ化することもできる。アミノPEGはカルボキシル基をペグ化するために使用することができる。活性なPEGの例として、メトキシポリエチレングリコール、ジアミノメトキシ−ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール−p−ニトロ−フェニルカルボン酸、メトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルスクシネート、メトキシポリエチレングリコールトレシレート、メトキシ−ポリオキシエチレンアミン(アミノPEG)、メトキシポリオキシエチレン−カルボン酸、モノメトキシ−PEG p−ニトロフェニルカルボン酸、N−N’−カルボニルジイミダゾール活性化PEG、およびメトキシポリオキシエチレンイミダゾール−カルボニルが挙げられる。種々の分子量のPEGが市販されている。反応剤であるPEGの平均分子量は、約5000から約100000ダルトンの間の範囲であり得る。結合方法は重要ではないが、生物学的に活性な分子の活性を変化させないか、または最小限にのみ変化させることが好ましい。好ましい結合方法は、ポリペプチドへのN末端結合による方法である。PEGについての種々の活性化方法論の概要については、Veronese,Biomaterials 22
(5):405(2001)を参照のこと。あるいは、PEGを、結合の前に最初に糖分子を用いてガストリンを誘導することによる糖ペグ化(glycopegylation)によって、ペプチド/タンパク質に結合させることができる(すなわち、例えば、NeoseのGlycoPEGylation技術を使用する糖ペグ化手法)。
【0076】
デキストランは、グリコシド結合によって互いに連結されたD−グルコース単位の反復である直鎖の多糖によって主に構成されている、自然界に存在している高分子である。分岐点がデキストラン高分子中に存在する場合があり、分岐の型および分岐の程度は種によって様々である。デキストランは、ガストリン化合物に結合させるために本明細書中で使用することができる。可溶性デキストランの平均分子量は、約10000から約500000ダルトンの範囲内であり得る。デキストラン高分子は、それぞれのグルコース単量体上に隣接してヒドロキシル基を含み、これは、過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化されて官能性アルデヒド基を生じ、これはその後、アミノ基と反応することができる。ポリアルデヒドデキストランは、シッフ塩基の形成、それに続く安定な結合を生じるための還元的アミノ化によって、アミノ基、例えば、リジン残基上のεアミノ基に結合することができる。デキストランをモノクロロ酢酸との反応によってカルボキシメチル化して、カルボキシメチルデキストランを生じさせることができる。これは、カルボニル基またはアルデヒド基と反応するヒドラジンとの縮合の際にデキストラン−ヒドラジドを形成することができる。スルヒドリル反応性デキストラン誘導体は、例えば、一方の末端にピリジルジスルフィド、マレイミド、またはヨードアセチル基を含むヘテロ二官能性架橋剤の使用によって、スルヒドリル基と結合反応するように調製することができる。
【0077】
(脂溶性部分への結合)
脂溶性置換基を、ガストリンペプチドのN末端のアミノ酸の反応基に、または状況に応じて、ヘテロ二官能性もしくはホモ二官能性架橋基を介して作成した反応基に、結合させることができる。例えば、脂溶性置換基のカルボキシル基は、リジン上のアミノ基と反応することができる。例えば、脂溶性置換基は、具体的には、例えば、8〜40個の炭素原子を含む、長鎖の基である。例えば、脂溶性置換基は、直鎖または分岐したアルキル基、直鎖または分岐した脂肪酸のアシル基、直鎖または分岐したアルカン、α,ω−ジカルボン酸のアシル基であり得る。例えば、ガストリンの脂溶性誘導体は、ラウリン酸(n−ドデカン酸)、ミリスチン酸(n−テトラデカン酸)、パルミチン酸(n−ヘキサデカン酸)、パルミトレイン酸(n−ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n−オクタデカン酸)、オレイン酸(n−オクタデセン酸)、酢酸、リノール酸、およびアラキドン酸を含む種々の脂肪酸との例えばN末端のアミノ基への化学結合によって、合成することできる。
【0078】
あるいは、立体配座的に堅い(すなわち、二重結合、三重結合、または飽和もしくは不飽和環が存在している)疎水性部分を、ガストリンペプチドに結合させることができる。例えば、カルボキシル基を含む長鎖脂肪酸を、例えば、リジン残基上に見られるアミノ基に結合させることができる。
【0079】
(二官能性架橋剤)
架橋剤の例として以下が挙げられるが、これらに限定されない:
アミノ基に特異的であるホモ二官能性架橋試薬としては:ビスイミドエステル(ビスイミデート)、例えば、メチルアセトイミデート−HCl、ジメチルスベルイミデート−2HCl;ビス−N−スクシンイミジル誘導体、例えば、ビス(スルホスクシンイミジル−スベレート(BSSS)、スクシネートビス−(N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル);二官能性ハロゲン化アリール、例えば、1,5−ジクロロ−2,4−ジニトロベンゼン;ジイソシアネートおよびジイソチオシアネート(例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)のような二官能性アシル化剤;二官能性ハロゲン化スルホニル、例えば、フェノール−2,4−ジスルホニル−クロライド;ビス−ニトロフェノールエステル、例えば、カルボン酸のビス−(p−ニトロフェニルエステル);ならびに、二官能性アシルアジド、例えば、タータリルジアジド;ジアルデヒド、例えば、グルタルアルデヒド;ジケトン、例えば、2,5−ヘキサンジオン;ならびに他のもの、例えば、ベンゾキノン、2−イミノチオラン、エリスレイトールビスカルボネート、ムコブロム酸、ムコクロル酸、エチルクロロホルメート、p−ニトロフェニルクロロホルメート、スクシンイミジル6−ヒドラジノニコチネートアセトンヒドラゾン、およびスクシンイミジル4−ホルミル安息香酸(例えば、最初にヒドラジンリンカーでアミンを修飾し、次に、アミンをアルデヒドリンカーに修飾し、これを次いで、互いに架橋させることができる)。
【0080】
二官能性架橋剤の別の群は、スルフヒドリル基に特異的なホモ二官能性架橋基である。これには:Mercurial Reagent、例えば、1,4−ビス(ブロモマーキュリー)ブタン;ジスルフィド形成試薬、例えば、ポリメチレンビス(メタンチオスルフォネート);ビスマレイミド、例えば、N,N’−メチレンビスマレイミド、ビス(N−マレイミドメチル)エーテル、ビス−マレイミドエタン、1,4−ビス−マレイミドブタン、1,4−ビス−マレイミジル−2,3−ジヒドロキシブタン、ビス−マレイミドへキサン、1,8−ビス−マレイミドトリエチレングリコールが含まれる。さらに別の群は、ビオ−ハロアセチル誘導体、例えば、1,3−ジブロモアセトン;ハロゲン化ジアルキル、例えば、ジ(2−クロロエチル)スルフィド;S−トリアジン、例えば、2,4−ジクロロ−6−メトキシ−s−トリアジン;アジリジン、例えば、2,3,4−トリ(エチレンイミノ)−s−トリアジン;およびビス−エポキシド、例えば、1,2,3,4−ジエポキシブタン;ならびに他のもの、例えば、ジビニルスルフォンのようなアルキル化剤である。
【0081】
他の基に対して特異的なホモ二官能性架橋剤は、化学的架橋の分野で公知であり、例えば、カルボキシル基に特異的な試薬、例えば、ビスジアゾヘキサン;フェノレート、およびイミダゾリル基に特異的な試薬、例えば、ビス−ベンジジン;アルギニン試薬、例えば、p−フェニレンジグリオキサール;および他のもの、例えば、シス−ジクロロジアミノ白金(II)(α2−マクログロブリンを1つ以上のメチオニン残基と、認識部位またはその付近で架橋するために使用され、DNAアジピン酸(adipid acid)ジヒドラジドの相補鎖を架橋し、さらに糖タンパク質、過リン酸塩、およびインベルターゼを架橋することができる)、N,N’−ビス(b−アミノエチル)−タータルアミド(tartramide)である。
【0082】
基選択的なヘテロ二官能性架橋剤もまた当該分野で知られており、これには:アミノ基およびスルフヒドリル基に特異的な二官能性試薬、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオプロピオネート)(SPDP)およびその類似体(LC−SPDP、Sulfo−LC−SPDP)、スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)およびその類似体であるスルフォスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサン酸(Sulfo−LC−SMPT)、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸(SMCC)およびその類似体であるスルフォスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル−シクロヘキサン−1−カルボン酸(Sulfo−SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル(MBS)およびその類似体であるm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sulfo−MBS)、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミド安息香酸(SIAB)およびその類似体であるスルフォ−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル−アミノ安息香酸)(sulfo−SIAB)、スクシンイミジル−4−(p−マレイミドフェニル)酪酸(SMBP)およびその類似体であるスルフォスクシンイミジル−4(p−マレイミドフェニル)酪酸(sulfo−SMPB)、N−γ−マレイミドブチリル−オキシスクシンイミドエステル(GMBS)およびその類似体(Sulfo−GMBS)、スクシンイミジル6−[(ヨードアセチル)−アミノ]ヘキサン酸(SIAX)およびその類似体であるスクシンイミジル6−[6−(((ヨードアセチル)アミノ)−ヘキサノイル)アミノ]ヘキサン酸(SIAXX)、スクシンイミジル4−(((ヨードアセチル)アミノ)メチル)−シクロヘキサン−1−カルボン酸(SIAC)およびその類似体であるスクシンイミジル6−((((4−(ヨードアセチル)アミノ)メチル)−シクロヘキサン−1−カルボニル)アミノ)ヘキサン酸(SIACX)、N−スクシンイミジル4−マレイミド酪酸;カルボキシルと、スルヒドリル基またはアミノ基のいずれかに特異的である二官能性試薬、例えば、p−ニトロフェニルジアゾ酢酸;カルボニルとスルフヒドリル基に特異的な二官能性試薬、例えば、1−(アミノオキシ)−4−[(3−ニトロ−2−ピリジル)ジチオ]ブタン;4−(4−N−マレイミドフェニル)酪酸塩酸ヒドラジド(MPBH)、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシルヒドラジド(MH)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド(PDPH)および他のもの、例えば、2−メチル−N’−ベンゼンスルフォニル−N−ブロモアセチルキノンジイミド、N−ヒドロキシスクシンイミジル−p−ホルミル安息香酸、メチル−4−(6−ホルミル−3−アジド−フェノキシ)ブチルイミデートHCl、アクロレインが含まれる。
【0083】
適切な架橋試薬の実施形態には、さらに、ゼロ長(Zero−length)架橋試薬の群が含まれる。これには、カルボジイミドのようなカルボキシル基を活性化する試薬、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−塩酸カルボジイミド(EDC)(カルボキシル基を活性化し、次いでこれがNH2基と架橋することができる);イソオキサゾリウム誘導体;クロロホルメート;カルボニルジイミダゾール;およびN−カルボアルコキシジヒドロキノリン;ジスルフィド形成試薬、例えば、第二銅ジ(1,10−フェナントロリン);酵素、例えば、トランスグルタミナーゼ、ペルオキシダーゼ(リジン残基の間)、キサンチンオキシダーゼ(ジスルフィド結合を形成する);および他のもの、例えば、ピロロキノリンキノン(リジンをセミアルデヒドに変換し、次いでこれは他のリジン残基と反応することができる)が含まれる。
【0084】
(薬学的組成物)
本発明では、種々の実施形態において、治療有効量の、ガストリン化合物のみの組み合わせ、またはFACGINTまたは血糖降下剤とガストリン化合物との組み合わせを含む薬学的組成物が提供される。本明細書中に記載される全ての薬学的組成物は、免疫抑制のための薬剤とともに、またはそれらを伴わずに、徐放、局所もしくは全身的送達のための成分またはデバイスとともに、またはそれらを伴わずに、処方することができる。薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を添加することができる。このようなキャリアとしては、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。処方を、投与形式に合わせることができるはずである。「有効量」は、この用語が本明細書中で使用される場合は、認識される医学的な目的、この場合は、糖尿病の症状の改善を達成するために十分な治療薬または治療薬の組み合わせの量である。有効量は、本明細書中に記載されるように、確立されている関連するパラメーターの測定方法に従って、当業者が経験的に決定することができる。
【0085】
本明細書中の組成物はさらに、湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤を含むことができる。組成物は、液状の溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放処方物、または散剤であり得る。組成物は、坐剤として、一般的な結合剤またはトリグリセリドのようなキャリアとともに処方することができる。経口処方物には、薬学的等級のマンニトール、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような標準的なキャリアを含めることができる。種々の投与システムが公知であり、本発明の組成物、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルなどに封入して、投与するために使用することができる。
【0086】
例示的な実施形態では、本明細書中の組成物は、例えば、ヒトへの皮下投与のために適応させられた薬学的組成物として、日常的な手順にしたがって処方される。通常は、皮下投与のための組成物は、滅菌の等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要である場合は、組成物には、溶解補助剤、および注射部位の痛みを緩和するための局所麻酔を含めることもできる。一般的には、これらの成分は、単位投与量形態で、別々に、または共に混合されているかのいずれかで、例えば、アンプルまたは小袋のような密閉してシールされた容器中に、乾燥粉末、凍結乾燥粉末、または水を含まない濃縮物として提供され、例えば、これにより一定量の活性のある試薬を示す。組成物が注入により投与される場合は、組成物を、滅菌された薬学的等級の水、緩衝液、または生理食塩水を含む注入ボトルに分散させることができる。組成物を注射によって投与する場合には、投与前に複数の成分を混合することができるように、注射用の滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。本明細書中の組成物は、その種々の成分において、坐剤として処方することができる。これは、約0.5重量%から約10重量%の範囲の有効成分を含み;経口処方物は好ましくは、約10重量%から95重量%の有効成分を含む。一日の用量は、1回の用量として投与されるか、または1日の間に数回投与される、複数のさらに小さく分けられた用量に分けられる。
【0087】
本明細書中で使用される場合は、投与スケジュールとは、例えば、本明細書中に提供されるような修飾されたガストリン化合物、あるいは、同時に、または互いに特定の間隔をあけて(例えば、互いに1日以内に)投与されるか、または混合調製物として、または別々に、FACGINTともしくは血糖降下剤と、および/または免疫抑制剤と、それぞれの有効量を組み合わせて修飾されたガストリン化合物を含む組成物のいずれかを投与するためのプロトコールをいう。これには、例えば、1日あたり、およびそれぞれの組成物が投与される期間もしくは時間のような、単位時間あたりに投与される組成物の量が含まれる。
【0088】
1つの態様では、本発明では、糖尿病を予防または処置するための方法が提供される。この方法は、ガストリン化合物の組成物を単独、またはFACGINTと、もしくは血糖降下剤と、および/または免疫抑制剤と、それぞれを哺乳動物の膵臓のインシュリンを分泌するβ細胞の数を増加させるために十分な量で組み合わせた組成物を、その必要がある哺乳動物に投与する段階;島新生の量を決定し、それによって糖尿病を処置または予防する段階が含まれる。島新生の量の決定は、血糖、血清グルコース、血中のグリコシル化血色素、膵臓β細胞の量、血清インシュリン、および膵臓のインシュリン含量の群より選択されるパラメーターを測定することである。本明細書中に記載される組成物の投与により、組成物の投与前にアッセイした血糖と比較して血糖は減少する。例えば、組成物の投与により、血糖は、組成物の投与前にアッセイした血糖と比較して、約50%、または約70%減少する。グリコシル化血色素濃度は、組成物の投与前にアッセイした哺乳動物中のグリコシル化血色素濃度と比較して、減少する。血清インシュリン濃度は、組成物の投与前にアッセイした哺乳動物中の血清インシュリン濃度と比較して、上昇する。膵臓のインシュリン濃度は、組成物の投与前にアッセイした哺乳動物中の膵臓のインシュリン濃度と比較して、上昇する。
【0089】
本発明の組成物は、中性型または塩の形態で処方することができる。薬学的に受容可能な塩として、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などから誘導される遊離のアミノ基のような遊離のアミノ基とともに形成される塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから誘導される遊離のカルボキシル基のような遊離のカルボキシル基とともに形成される塩が挙げられる。
【0090】
特定の障害または症状の処置に有効である本発明の治療薬の量は、障害または症状の性質に応じて変化し、標準的な臨床的技術によって決定することができる。処方物において使用される正確な用量はまた、投与経路、疾患および障害の重篤度によっても異なり、医師の判断と、それぞれの患者の状況に従って決定されるべきである。血中インシュリン濃度または血中Cペプチド濃度、ならびに空腹時血糖値またはグルコースチャレンジの定期的な測定は、当業者によって決定される。有効用量は、生体外または動物モデル試験システムから導かれた用量応答曲線から、薬理学の当業者が推測することができる。被験体に投与される組成物の投与量は、吸収、分布、血液循環中での半減速度、代謝、分泌、および本明細書中の実施形態の受容体リガンドの毒性についての規準を含む標準的なデータを使用して、種ごとに知られている変量について調整される。適切な投与量範囲は、通常、個々の活性のある化合物について、体重1キログラムあたり1日に、約0.01μgから約10000μg、例えば、約0.01μg/kgから約1μg/kg、約0.1μg/kgから約10μg/kg、約1μg/kgから約500μg/kg、または、約10μg/kgから約10mg/kg体重/日である。したがって、適切な投与量範囲は、通常、約0.01μg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日である。
【0091】
本発明では、他の実施形態において、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分が充填された1つ以上の容器を含む、薬学的なパックまたはキットが提供される。このようなパックまたはキットの中には、幅広い用途のガストリン化合物の単位投与量を有している容器を見ることができる。このような容器(単数または複数)には、使用のための説明書、または薬学的または生物学的製品の製造、使用、または安全性を管理する政府機関により定められた形式の注意書き(この注意書きは、ヒトへの投与に関する製造、使用、または安全性についての政府機関による承認を反映する)のような、種々の資料が含まれる場合がある。
【0092】
特に断りのない限りは、本明細書中の全ての教示および科学的用語は、本発明が関係している分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるものと類似するかまたは同等の方法および材料を、本発明の実施において使用することができる。本発明は、種々の実施形態においてここで完全に記載され、さらなる実施形態は、以下の実施例および特許請求の範囲によって説明される。これらは、さらなる限定と解釈される意図のものではない。全ての引用される参考文献の内容は、それらの全体が、引用により本明細書中に組み込まれる。
【実施例】
【0093】
(実施例1.雄性のカニクイザル(Cynomolgus monkey)への静脈内注射による投与後の、未修飾のガストリンの薬物動態の例)
本実施例は、雄性のカニクイザル(cynomolgus monkey)に1回の静脈内注射により投与した後の、未修飾のガストリン(本明細書中では化合物Bという;表3を参照)の薬物動態(PK)プロフィールを評価するために行った。使用した17アミノ酸のガストリン類似体は、15位に1アミノ酸の変化を有しており、メチオニンがロイシンで置換されている。したがって化合物Bは自然界に存在しているガストリンと同一ではないが、得られた証拠の全てが、これがガストリンと機能的に同等であることを示している。
PKの分析に関する用語を以下のように定義する:
max−観察された最大血漿濃度
max−最大濃度に達するまでの時間
AUC−曲線下の面積、一定期間での薬物に対する全暴露の測定
血漿t1/2−血中に薬物がとどまることができる長さの測定、血漿濃度が50%に下がるまでに要する時間
(ガストリンの投与)
雄性動物を実施例で使用した。それぞれの動物に、ガストリンを静脈内投与によって投与した(3μg/kg、10μg/kg、および30μg/kg)。静脈内注射のための投与溶液を、1mL/kgの用量で伏在静脈から1回の注射として投与した。0.2mLの生理食塩水フラッシュを、用量の全量を確実に投与するために、投与後に投与した。それぞれの動物に投与した正確な容量は、動物の最も最近の体重に基づいた。
【0094】
(血液の採取)
段階的な血液試料(1つの時点についておよそ0.5ml)を、以下の時点で上腕静脈または大腿静脈から採取した:0(投与前)、投与後、1、3、5、10、15、30分、1、2、および4時間。
【0095】
それぞれの試料を、EDTAを含むチューブに採取し、遠心分離するまで氷水の上で保った。試料を、1500g(RCF)で最短で10分間、冷却下で遠心分離し、得られた血漿を2つのチューブに移し、氷上においた。全ての試料を、以下に記載するようなPK分析のために凍結保存した。
【0096】
(ガストリン濃度の分析)
血漿試料中のガストリンを、十分に確立された競合放射免疫測定を用いて、ガストリンの定量的決定のために測定した(Russell等,Postgraduate Medical Journal 52:645,1976)。アッセイで使用した抗体は、ウシの血清アルブミンに対してカルボジイミドを用いて結合させた合成のヒトガストリンIに対して、ウサギの中で惹起させた。抗原を125Iで標識し、抗原:抗体反応の存在を、ガンマカウンターを使用して検出した。
【0097】
(薬物動態分析)
薬物動態パラメーターを計算するために、個々の動物についてのそれぞれの時点でのガストリンの血中濃度を、Graphpad Prism 3.0(GraphPad Software,San Diego,California,USA,_www.graphpad.com)に入力した。
【0098】
【表2】

表2のデータは、化合物Bの比較的短い血漿t1/2を示している。これは、3つの用量の群のそれぞれについて、平均しておよそ4〜5分である。化合物Bは、1回の注射による投与の後、霊長類の血流から迅速にクリアランスされるようである。化合物Bの静脈内投与の用量を増加させると、CmaxおよびAUCの値の増大が観察されたが、用量の増加でt1/2値には影響はないようであった。これらのデータは、より多量の化合物Bの投与によっても、このペプチドの血液循環中での短い半減期を長くすることはできないことを示している。まとめると、これらのデータは、ガストリンが数分のうちに血流からクリアランスされることを示している。したがって、血清中の生物学的活性のある化合物の存在は、血清からのガストリンの迅速なクリアランスによって制限される。
【0099】
(実施例2.最近糖尿病を発症したNODマウスでの空腹時血糖値および膵臓のインシュリン含量に対する未修飾のガストリンの効果)
肥満体ではない糖尿病(NOD)の雌性マウスを、6.6mmol/lを上回る空腹時血糖(FBG)値によって決定される、糖尿病の発症についてモニターした。糖尿病の発症後、マウスを、(i)ビヒクル(n=4);または(ii)3μg/kg/日の量のガストリン(表3に示す化合物B)で、14日間にわたって1日1回(n=5)のi.p.の投与によって処置した。マウスには、インシュリン置換療法を行わなかった。空腹時血糖値および膵臓のインシュリン含量を、0日目および35日目(処置の終了後21日目)の両方で2つの処置群について評価した。
【0100】
図1は、ビヒクルで処置した対照動物では、空腹時血糖(FBG)値が、35日後に2倍になったことを示す。対照的に、ガストリンでの処置では、糖尿病のNODマウスにおいて血糖値が上昇することがある程度妨げられたが、FBG値は、正常なマウスにおいて観察される(約3〜7mM)よりも明らかに高いままであった。これらのデータは、正常なレベルにまで血糖値を下げるためには、ガストリンの効力を高めることが必要であることを示している。
【0101】
膵臓でのインシュリン濃度は、ビヒクルで処置した群については、β細胞の崩壊が原因で35日目に低下したが、ガストリンで処置した動物は、処置前の値と比較して、明らかに上昇した膵臓のインシュリン濃度を示した。図2を参照のこと。しかし、化合物Bでの処置後の、約0.6μgのインシュリン/膵臓にまでの膵臓のインシュリン濃度の上昇は、正常なマウスの濃度(約12μg/膵臓)よりもなお有意に低い。これらのデータは、実施例1の薬物動態分析と合わせて、未修飾のガストリンを用いた糖尿病のNODマウスの処置効率が、血漿ガストリンの比較的短い半減期(約5分)によって制限されてしまうことを示唆している。したがって、さらに長期間作用するガストリンを使用することが、島細胞新生を刺激し、膵臓のインシュリンを増加させ、NODマウスにおいて糖尿病の進行を防ぐことにおいてより効率的であり得る。
【0102】
(実施例3.ガストリンペプチドのペプチド合成)
ガストリンペプチドは、固相ペプチド合成についての標準的な技術を使用して、例えば、Steward,J.M.and Young,J.D.(1984)「Solid Phase Peptide Synthesis」第2版,Pierce Chemical Companyに記載されているように、当業者が容易に合成することができる。ガストリンペプチドの精製は、標準的な技術を使用して、例えば、HO中の0.1%のTFA、およびアセトニトリル中の0.1%のTFAから構成される揮発性二成分勾配システムを用いる逆相HPLCを使用して、行うことができる。UV吸収により溶出をモニターすることによって、精製されたペプチドを回収することができ、これはその後、凍結乾燥させられ、続いて投与および試験のために溶解させられるか、または必要である場合には、さらに結合反応させられる。
【0103】
配列番号1もしくは2の残基29〜34に加えて残基1〜28の任意の連続する部分を含むか、または、配列番号3もしくは4の残基12〜17に加えて残基1〜11の任意の連続する部分を含む、ガストリン合成ペプチドを合成することができる。さらに、GlyおよびAlaのような小さい中性のアミノ酸残基から構成されるスペーサー領域をN末端に有しているガストリンペプチドを合成することもできる。スペーサー領域を含むかまたは含まないガストリン合成ペプチドを、N末端にCys残基を有するように合成することもできる。
【0104】
本明細書中でのガストリン組成物の使用のために合成されるいくつかのガストリンペプチドをまとめて、表3に列挙する(化合物AからH)。これには、「大きな」ガストリン−34(A)、「短い(little)または小さい(small)」ガストリン−17(B)およびガストリン−13(C)も含まれる。
【0105】
【表3】

(実施例4.PEG−20000とのガストリンの結合)
N末端にCysを有するように修飾したガストリンペプチドを(表3の化合物D、E、F,G、およびH)、ほぼ中性の条件(pH6.5〜7.5に緩衝化)で約30分間、モル過剰のトリス[2−カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP;マレイミド部分との反応性がない還元剤)とともにインキュベートして、Cys残基を確実に還元状態として、反応に利用できるようにした。
【0106】
モル過剰のmPEG−マレイミド−20000(平均MW20000;Shearwater Corporation,Huntsville AL,USAから入手した)を混合しながら段階的に添加して溶解させ、完全に溶解したら、溶液をさらに1から4時間混合して、結合反応を完了させた。結合体の精製は、陰イオン交換体、例えば、Q−Sepharoseを、結合体とすべての遊離している未反応のガストリンがそれに対して強く結合する中性のpHで使用して行うことができる。なぜなら、ガストリンの理論上の等電点(pI)は3.4であり、一方、中性の未反応のmPEG−マレイミドは結合しないからである。さらなる精製のために、結合体は、それらの分子量の大きな差に基づいて、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、例えば、Sephadex G−50を使用し、PBSのような治療用途に適切な緩衝液を使用して、未反応のガストリンから容易に分けられる。
【0107】
これらの反応により、表3の化合物I,J、K、L、およびMを生産した。結合反応が成功したことを、ペプチド含量についてはビウレット反応を、PEG含量については比色法(Habeeb,A.F.S.A.(1966)Anal.Biochem.14:328−336)を、そして結合体の全MWを決定するためにはエレクトロスプレー質量スペクトル分析を使用して確認した。
【0108】
(実施例5.ヒトの血清アルブミンとの結合)
血清アルブミンは、1つの利用することができる還元されたシステイン残基(Cys−34)を含む。これは、ヒトの血漿タンパク質のなかで最も反応性が高いチオール基である(Pedersen等(1980)Eur.J.Biochem.106:291−295)。この特性により、ペプチドを含むリガンドを血清アルブミンに特異的に結合させることができる。
【0109】
ヒトの血清アルブミンを、ほぼ中性の条件(pH6.5〜7.5に緩衝化)で約30分間、モル過剰のトリス[2−カルボキシエチル]ホスフィンハイドロクロライド(TCEP;マレイミド部分との反応性がない還元剤)とともにインキュベートして、Cys−34残基を確実に還元状態として、反応に利用できるようにした。モル過剰のビス−マレイミドエタン(短いスペーサーを有し、スルフヒドリル基に対する反応性を有しているホモ二官能性架橋剤)を、Cys−34を活性化させるために添加した。別の反応において、N末端にCysを有するように修飾したガストリンペプチド(表3の化合物D、E、F、G、およびH)を添加し、得られた溶液をさらに1から4時間混合して、結合反応を完了させた。結合体を、それらの分子量の大きな差に基づいて、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、例えば、PBSのような治療用途に適切な緩衝液を使用して、未反応のガストリン(および形成された全てのガストリン二量体)から容易に分けられる。未反応のHSAはそれ以上は、ガストリンペプチドと結合したHSAから分離しなかった。
【0110】
これらの反応によって、表3の化合物N、O、P、Q、およびRを生産した。結合反応が成功したことは、結合体の全MWを測定するためのエレクトロスプレー質量スペクトル分析を使用して確認した。
【0111】
(実施例6.ウィスター系ラット(Wistar rat)への静脈内注射による投与後の未修飾のガストリン化合物と修飾されたガストリン化合物の薬物動態の比較)
本実施例は、ウィスター系ラット(Wistar rat)へのiv注射後の未修飾のガストリン誘導体/結合体と修飾されたガストリン誘導体/結合体の薬物動態プロフィールを評価するために行った。
【0112】
(ガストリンの投与)
ラット(3匹の動物の群)に、iv投与によって10μg/kgのガストリン等量の用量レベルで、実施例3で合成した種々の試験化合物を投与した。以下で使用した試験化合物は、上記の表3に列挙した全ての化合物である。詳細については表3を参照のこと。
【0113】
(血液の採取)
段階的な血液試料(1つの時点についておよそ0.4ml)を、以下の時点で採取した:全ての動物について注射後5、60、180、480分。各時点で、血液を1つのグループについて3匹の動物から採取した。
【0114】
それぞれの試料を、EDTAを含むチューブに採取し、遠心分離するまで氷水の上で保った。試料を、1500g(RCF)で最短で10分間、冷却下で遠心分離し、得られた血漿を2つのチューブに移し、氷上においた。全ての試料を、PK分析のために凍結保存した。
【0115】
(ガストリン濃度の分析)
R&D system、カタログ番号DE3400によるヒトガストリン1(G−17)免疫アッセイキットを使用して、ELISA法を使用して血漿中の化合物B濃度を測定した。このアッセイは、試料中に存在するガストリンIがウサギポリクローナル抗体の複数の部位について固定量のアルカリホスファターゼで標識したガストリンIと競合する、競合結合技術に基づく。インキュベーションの間に、抗体は、マイクロプレート上にコーティングされたヤギ坑ウサギ抗体に結合する。過剰な結合体と結合していない試料を除去するための洗浄の後、基質溶液をウェルに添加して、結合した酵素活性を決定した。発色の直後、吸光度を405nmで読み取った。色の強さは、試料中のガストリンIの濃度に反比例する。
【0116】
(薬物動態分析)
ガストリン(化合物B)とその種々の誘導体/結合体の血漿濃度を、PK Functions for Microsoft(登録商標) Excel(Usansky JI,Desai A,Tang−Liu D,Department of Pharmacokinetics and Drug Metabolism,Irvine,CA)を使用して分析した。PKプロフィールを評価するために、種々の試験化合物および以下のPK値を計算した:Cmax、tmax、AUC、およびt1/2
【0117】
ガストリン(例えば、化合物B)は自然な状態で血液中に検出できる濃度で存在するので、投与前に得られた基底値を、化合物Bの投与後に得られた血漿濃度から引き算した。データを平均±SDとして示す。
【0118】
データは、N末端に官能基としてシステインを有する修飾されたガストリン化合物、またはN末端でPEGまたはHSAに結合させた修飾されたガストリン化合物が、自然界に存在しているガストリンと比較して明らかに長い半減期を有していることを示している。修飾されたガストリン化合物/結合体は、自然界に存在しているガストリン17またはガストリン34の投与と比較して、より長い期間、より高い濃度で血清中に存在する。これらのデータはまた、AUCもまたガストリン分子の化学的修飾によって増大することを示している。修飾されたガストリン誘導体/結合体が、より長い期間より高い濃度を提供し、糖尿病の動物における島細胞新生および血糖値の調節に必要な効力について最も高い可能性を有していると予想される。
【0119】
(実施例7.最近糖尿病を発症したNODマウスの糖尿病の進行を防ぐことにおける修飾されたガストリン化合物と未修飾のガストリンとの比較)
本実施例では、未修飾のガストリンと修飾されたガストリン化合物/結合体による処置の効果を、最近糖尿病を発症したNODマウスにおいて試験して、種々の修飾されたガストリン誘導体/結合体の投与が、未修飾のガストリンと比較して、最近糖尿病を発症したNODマウスにおいて重篤な高血糖症を予防することにおいて、さらには膵臓のインシュリン含量を増大させることにおいてより有効であるかどうかを決定した。使用した修飾されたガストリン化合物/結合体は以下のとおりである(さらなる詳細については表3を参照):化合物B(これは、アミノ酸15位にLeu残基を有する17アミノ酸残基の合成のヒトガストリンIとして調製されたガストリンである)、化合物E、化合物G、化合物J、化合物L、化合物O、および化合物Q。
【0120】
肥満体ではない糖尿病(NOD)の雌性マウス(12〜14週齢)を糖尿病の発症についてモニターし(8.0から15mmol/lを上回る空腹時血糖)、症状の発症後48時間以内に、種々の群のマウスをそれぞれ、3または10μg/kg/日のガストリン等量で処置した。それぞれの処置では、毎日静脈内経路によって投与した。
【0121】
処置は14日間の投与である。動物を空腹時血糖(FBG)値について毎週モニターした。FBG値を、餌を引き上げた後約12時間で、そして最後のペプチドまたはビヒクルの注射後24時間で測定した。治療が終了すると、全てのマウスを、その後4週間(2〜6週)にわたってFBG値についてモニターして、治療的処置の終了後に高血糖症の予防が持続するかどうかを決定した。14日目に処置を停止した。
【0122】
このプロトコールには、6週間で再びデータを得るためにこれらのマウスをサンプリングし、FBGおよび血漿Cペプチドのアッセイのために血液を採取し、マウスを膵臓のインシュリンの決定のために屠殺し、島の炎症(膵島炎)をスコアする段階が含まれる。処置の開始から、マウスには、インシュリン置換療法も免疫抑制も行わなかった。以下のパラメーターを評価した:生存率、膵臓のインシュリン濃度、島の炎症の存在、および空腹時血糖値。
【0123】
データは、より長い半減期およびAUCを有している修飾されたガストリン誘導体/結合体は、糖尿病のNODマウスの高血糖症を予防することにおいてより有効であることを示している。いくつかの場合には、修飾されたガストリン化合物/結合体は、血糖値を正常な濃度にまで完全に戻し、このことは、このモデルにおける島新生の有意なレベルの刺激を示している。
【0124】
(実施例8.最近糖尿病を発症したNODマウスの糖尿病の進行を予防することにおける、GLP−1と組み合わせた修飾されたガストリン化合物/結合体と未修飾のガストリンの比較)
本実施例では、GLP−1と未修飾のガストリンの組み合わせ、およびGLP−1と修飾されたガストリン化合物/結合体の組み合わせによる処置の効果を、最近糖尿病を発症したNODマウスにおいて試験し、GLP−1とガストリンの両方の投与により最近糖尿病を発症したNODマウスにおいて重篤な高血糖症を予防し、さらには膵臓のインシュリン含量を増大させることができるかどうかを決定した。使用したGLP−1は、ヒト/マウスGLP−1の生物学的に活性な断片(この断片がプロセシングされる前駆体と比較して7位〜36位の残基を有している;Bachem H6795から入手した)であるGLP−1である。使用した修飾されたガストリン化合物/結合体は以下の通りである:化合物B(COMPOUND B)−アミノ酸15位にLeu残基を有している17個のアミノ酸残基を有している合成のヒトガストリンIとしてのガストリン、化合物E、化合物Q。
【0125】
肥満体ではない糖尿病(NOD)の雌性マウス(12〜14週齢)を糖尿病の発症についてモニターし(8.0から15mmol/lを上回る空腹時血糖)、症状の発症後48時間以内に、4つの群のマウスをそれぞれ以下のように処置した:1つの群は、ビヒクルのみで処置した;他の群には、100μg/kg/日のGLP−1を投与し、残りの群は、GLP−1(100μg/kg/日)とガストリン化合物(3μg/kg/日のガストリン等量)の組み合わせで処置した。それぞれの処置では、毎日静脈内経路によって投与した。
【0126】
処置は14日間の投与である。動物を空腹時血糖(FBG)値について毎週モニターした。FBG値を、餌を引き上げた後約12時間で、そして最後のペプチドまたはビヒクルの注射後24時間で測定した。治療が終了すると、全てのマウスを、その後4週間(2〜6週)にわたってFBG値についてモニターして、治療的処置の終了後に高血糖症の予防が持続するかどうかを決定した。14日目に処置を停止した。
【0127】
このプロトコールには、6週間で再びデータを得るためにこれらのマウスをサンプリングし、FBGおよび血漿Cペプチドのアッセイのために血液を採取し、マウスを膵臓のインシュリンの決定のために屠殺し、島の炎症(膵島炎)をスコアする段階が含まれる。処置の開始から、マウスには、インシュリン置換療法も免疫抑制も行わなかった。以下のパラメーターを評価した:生存率、膵臓のインシュリン濃度、島の炎症の存在、および空腹時血糖値。
【0128】
データは、より長い半減期を有している修飾されたガストリン化合物/結合体(化合物EまたはQ)と組み合わせたGLP−1が、自然界に存在しているガストリン(化合物B)を伴ったGLP−1と比較して、糖尿病の動物の血糖値を下げることにおいてより有効であることを示している。これらのデータは、長期作用性の修飾されたガストリン化合物/結合体をGLP−1または他の成長因子と共に使用することをサポートしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ末端からZ−Y−X−AA−AA−AA−AA−AA−AAを含むアミノ酸配列を含むガストリン化合物であって、ここで、AAはTyrであり、AAはGlyであり、AAはTrpであり、AAはLeuであり、AAはAspであり、AAはPheであり、該AAはアミド化されており;ここで、Zはポリエチレングリコール(PEG)またはヒト血清アルブミン(HSA)から選択されるポリマーであり;Yは存在しないか、またはGly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Alaスペーサーであり、Xは配列番号4のアミノ酸残基1〜11であり;但し、該ガストリン化合物は、ガストリン/CCKレセプターに結合する、ガストリン化合物。
【請求項2】
Xが配列番号4の2位から11位の配列である、請求項1記載のガストリン化合物。
【請求項3】
Xのアミノ末端にてシステイン残基をさらに含む、請求項2記載のガストリン化合物。
【請求項4】
Xのアミノ末端にてリジン残基をさらに含む、請求項2記載のガストリン化合物。
【請求項5】
Zがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガストリン化合物。
【請求項6】
Zがヒト血清アルブミン(HSA)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガストリン化合物。
【請求項7】
構造C−Y−Xを含むガストリン化合物であって、Cがシステインまたはリジンであり、Yが存在しないか、またはGly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Ala−Gly−Alaスペーサーであり、Xがポリエチレングリコールにコンジュゲートしたガストリン17(配列番号3および4)のアミノ酸残基2〜11である、ガストリン化合物。
【請求項8】
糖尿病を処置するための請求項1〜7のいずれか1項に記載のガストリン化合物。
【請求項9】
ガストリンのアミノ酸配列を有するペプチドの血清レベルと比較してガストリン血清レベルの増加の期間を延長するための、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガストリン化合物。
【請求項10】
糖尿病を処置するための医薬の調製のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガストリン化合物の使用。
【請求項11】
ガストリンのアミノ酸配列を有するペプチドの血清レベルと比較して、ガストリン血清レベルの増加の期間を延長するための医薬の調製のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガストリン化合物の使用。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のガストリン化合物および薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含有する、薬学的組成物。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1種のガストリン化合物の有効用量を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−265294(P2010−265294A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156522(P2010−156522)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【分割の表示】特願2004−570257(P2004−570257)の分割
【原出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【出願人】(504430972)ワラタ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】