説明

ガスハイドレートペレット冷却方法及び装置

【課題】ガスハイドレートペレットの冷却および払い出しを効率化する。
【解決手段】冷却筒41内又は隣接する冷却板27間にガスハイドレートペレットpを充填して冷却し、冷却されたガスハイドレートペレットpを冷却筒41内又は隣接する冷却板27間から払い出す時に前記冷却筒41又は冷却板27を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧下において、原料ガスを水と水和反応させてガスハイドレートを生成し、このガスハイドレートをペレット状に成形した後、冷却するガスハイドレートペレット冷却方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧下においてガスハイドレートペレットを冷却する装置としては、循環冷却ガスの顕熱を利用して冷却するガスハイドレートペレット冷却装置(例えば、特許文献1参照。)、或いは、プロパン液などをガスハイドレートペレットに噴霧し、その気化熱を利用して冷却するガスハイドレートペレット冷却装置(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【0003】
前者の場合は、縦型の円筒容器と、円筒容器内を高さ方向に仕切って多段に設けられた棚板と、棚板の中心を貫通して設けられた回転軸と、回転軸に固定して各棚板の上面に放射状に設けられた回転板と、円筒容器の上部に設けられたガスハイドレートペレット供給口と、円筒容器の底部に設けられたガスハイドレートペレット排出口と、冷却ガスを冷却器で冷却して円筒容器内に循環させる冷却ガス循環ブロワーにより構成されているが、この冷却ガス循環方式では、伝熱性が低いため、所定の温度に冷却するまでに長期間を要する。また、ガスハイドレートペレット供給口のプラスとマイナスの温度境界で氷結する恐れがある。
【0004】
他方、後者の場合は、横型容器と、横型容器の一端に設けられガスハイドレートペレットが供給される供給口と、横型容器内に設けられ供給口から供給されたガスハイドレートペレットを搬送する搬送手段と、横型容器の他端に設けられ搬送手段により搬送されるガスハイドレートペレットに沸点が目標冷却温度未満の液冷媒を噴霧するノズルと、ノズルに液冷媒を供給するポンプにより構成されているが、この液冷媒噴霧方式では、ガスハイドレートペレットに冷媒が付着し、冷媒の除去にコストがかかる。また、プロパン液の損失およびハイドレートペレット汚染等の課題が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−262376号公報
【特許文献2】特開2007−224249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解消するためになされたものであり、ガスハイドレートペレットの冷却および払い出しを効率化できるガスハイドレートペレット冷却方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係るガスハイドレートペレット冷却方法は、冷却筒内又は隣接する冷却板間にガスハイドレートペレットを充填して冷却し、冷却されたガスハイドレートペレットを冷却筒内又は隣接する冷却板間から払い出す時に前記冷却筒又は冷却板を加熱することを特徴とするものである。
【0008】
本願の請求項2に係るガスハイドレートペレット冷却方法は、冷却筒内又は隣接する冷却板間に充填したガスハイドレートペレットを冷凍機で冷却された伝熱媒体を用いて冷却し、冷却されたガスハイドレートペレットを冷却筒内又は隣接する冷却板間から払い出す時に冷凍機のコンプレッサーで昇温された伝熱媒体を用いて前記冷却筒又は冷却板を加熱することを特徴とするものである。
【0009】
本願の請求項3に係るガスハイドレートペレット冷却方法は、多数の冷却筒又は冷却板を備えた冷却槽を複数基設置するとともに、これらの冷却槽を1基ずつ、順次、稼働させてガスハイドレートペレットを連続的に冷却することを特徴とするものである。
【0010】
本願の請求項4に係るガスハイドレートペレット冷却装置は、槽内に多数の冷却筒又は冷却板から成る冷却部を設けると共に、冷却筒間又は冷却板内に設けた空隙を伝熱媒体の通路と成し、該通路に冷凍機で冷却された伝熱媒体を供給して前記冷却筒内又は隣接する冷却板間に充填したガスハイドレートペレットを冷却し、冷却されたガスハイドレートペレットを冷却筒内又は冷却板間から払い出す時に冷凍機のコンプレッサーで昇温された伝熱媒体を前記通路に供給して前記冷却筒又は冷却板を加熱し、冷却後のガスハイドレートペレットを排出することを特徴とするものである。
【0011】
本願の請求項5に係るガスハイドレートペレット冷却装置は、槽内に多数の冷却筒又は冷却板から成る冷却部を設けると共に、冷却筒間又は冷却板内に設けた空隙を伝熱媒体の通路と成し、かつ、前記冷却部の真上に分配機を設けて供給されたガスハイドレートペレットを前記冷却筒内又は隣接する冷却板間に分配し、更に、前記冷却部の直下に冷却後のガスハイドレートペレットを払い出す切断用カッターと払出機を設けるとともに、前記払出機の下方にガスハイドレートペレット同志の結合を分断する破砕機を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷却筒又は冷却板の壁面にガスハイドレートペレットが直接接触することによる冷熱移動によってガスハイドレートペレットの冷却所要時間を短縮することができる。他方、隣接している冷却筒間又は冷却板内に設けた空隙に昇温した伝熱媒体を供給することにより、冷却筒又は冷却板の壁面に接触しているガスハイドレートペレットの接触面が融解するので、ガスハイドレートペレットの固着、あるいは冷却筒内又は隣接する冷却板間の閉塞を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るガスハイドレートペレット冷却装置の全体構成図である。
【図2】ガスハイドレートペレット冷却槽の一例を示す縦断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】冷却部の要部拡大断面図である。
【図5】冷却部加熱時の説明図である。
【図6】ガスハイドレートペレット払出し説明図である。
【図7】ガスハイドレートペレット冷却槽の他の一例を示す断面図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明に係るガスハイドレートペレット冷却装置1は、冷凍機2と、複数(例えば、2〜3台)の縦長のガスハイドレートペレット冷却槽(以下、冷却槽と称する。)3により構成されている。これらの冷却槽3は、その上方にガスハイドレートペレット供給用のスクリューフィーダー4を備え、その下方にガスハイドレートペレット排出用のスクリューフィーダー5を備えている。
【0016】
冷却槽3とガスハイドレートペレット供給用のスクリューフィーダー4の接続部には、それぞれ、図示しない開閉弁を設け、これらの開閉弁を、順次、開閉することによってガスハイドレートペレット供給用のスクリューフィーダー4から各冷却槽3に、順次、ガスハイドレートペレットpを供給できるようになっている。
【0017】
ガスハイドレートペレット供給用のスクリューフィーダー4は、その一端にガスハイドレートペレット導入口7を備え、ガスハイドレートペレット排出用のスクリューフィーダー5は、その一端にガスハイドレートペレット排出口8を備えている。
【0018】
冷却槽3は、図2に示すように、耐圧性の槽21内に冷却部22を設けている。その上、冷却部22の真上にガスハイドレートペレット分配機23を設ける一方、冷却部22の直下に切断用カッター(図示せず)とガスハイドレートペレット払出機24を設け、更に、ガスハイドレートペレット払出機24の下方に冷却部22から払いだされたガスハイドレートペレットp同志の結合を分断する破砕機25を設けている。
【0019】
冷却部22は、図3に示すように、角筒状(平面視長方形)のケーシング26内に多数の平板状の冷却板27を一定間隔で設けた構造になっており、隣接する2枚の冷却板27,27の間がガスハイドレートペレットpを一時的に貯留させる貫通路28となっている。
【0020】
冷却板27は、図4に示すように、金属製の2枚の波板30,30を背中合わせに重ねてその谷部30a同志を接合し、2枚の波板30,30間に多数の空隙29を形成したものであり、空隙29が伝熱媒体の通る通路になっている。ここで、1枚の冷却板27を例にとると、伝熱媒体aは、図4のように、縦方向に冷却板27の上下端で、順次、折り返しながら流れるのが好ましい。
【0021】
ここで、隣接する二つの冷却板27の間隔は、ガスハイドレートペレットpの直径をDとすると、5D〜10Dの範囲が望ましい。この範囲から外れると、ガスハイドレートペレットpの冷却に支障が生ずる。
【0022】
ガスハイドレートペレット分配機23は、一対のブレード31a,31bからなり、各ブレード31a,31bは、縦軸33によってそれぞれ左右に回動するようになっている。ブレード31a,31bの組み数は、冷却槽3の寸法に比例して増加する。
【0023】
ガスハイドレートペレット払出機24は、半円形の一対の支持板34,34からなり、各支持板34,34は、横軸36によって冷却部22の底部に接触する位置と垂下する位置との間を往復するようになっている。
【0024】
破砕機25は、ガスハイドレートペレットp同志の結合を分断できるものであれば如何なる装置でも差し支えないが、例えば、冷却槽3の周方向に一定の間隔で設けた複数の棒体37を適用しても良い。棒体37は、先端が尖っており、図示しないピストンによって冷却槽3内への出没を小刻みに繰り返すようになっている。
【0025】
一方、冷凍機2を構成しているコンプレッサ11と、熱交換器12と、アキュミュレーター13は、機内配管14によってサークル状に連接されている。機内配管14は、一端が第1バルブ15に接続し、他端が第2バルブ16に接続している。
【0026】
冷却槽3の冷却部22は、第1,第2の二本の配管38,39を備えているが、第1の配管38は、第1バルブ15に接続し、第2の配管39は、第2バルブ16に接続している。
【0027】
更に、コンプレッサ11と熱交換器12の間に位置している機内配管14から分岐した第1の分岐管17は、第1の配管38に接続し、第2の配管39から分岐した第2の分岐管18は、アキュミュレーター13に連通している。
【0028】
次に、上記したガスハイドレートペレット冷却装置1の作用について説明する。
【0029】
図1に示すように、第1,第2のバルブ15,16を開いて冷凍機2を稼働すると、冷凍機2の熱交換器12によって冷却された伝熱媒体a’が配管39を経て冷却槽3の冷却部22を構成している冷却板27の空隙29に供給される。
【0030】
一方、ガスハイドレートペレット供給用のスクリューフィーダー4から冷却槽3にガスハイドレートペレットpが供給されると、ガスハイドレートペレットpは、図2に示すように、ガスハイドレートペレット分配機23によって冷却部22に設けられている多数の貫通路28内に充填される。なお、冷却部22の下面は、予め、ガスハイドレートペレット払出機24の一対の支持板34,34によって閉鎖されている。
【0031】
貫通路28内のガスハイドレートペレットpが伝熱媒体a’の冷熱によって冷却されると、ガスハイドレートペレット払出機24の一対の支持板34,34を開いてガスハイドレートペレットpを払い出す。
【0032】
このとき、図5に示すように、第1,第2のバルブ15,16を閉じると、冷凍機2のコンプレッサー11によって昇温された伝熱媒体a”が配管38を経て冷却部22を構成している冷却板27の空隙29に供給される。
【0033】
そして、上記伝熱媒体a”によって冷却部22を構成している冷却板27が加熱されることから、冷却部22の冷却板27に接触しているガスハイドレートペレットpの接触面が溶融し、図6に示すように、ガスハイドレートペレットの結合体p’の落下が容易になる。
【0034】
ガスハイドレートペレットの結合体p’は、落下の途中で破砕機25によって凍結部分が分断される。なお、結合体p’を裁断するためにカッターを使用する。
【0035】
上記の冷却部22は、角筒状のケーシング26内に平板状の冷却板27を一定間隔で設けた構造になっているが、これに限定されるものではなく、図7及び図8に示すように、シェル・アンド・チューブ型の熱交換器を適用しても良い。
【0036】
このタイプの冷却部22’は、シェル40内に多数のチューブ(冷却筒)41を設けた構造になっている。その上、チューブ41を横切るように複数のバッフルプレート42を交互に配置してシェル40の下方の入り口43から供給された伝熱媒体aが蛇行してシェル40の上方の出口44から排出されるようになっている。その他の部位については、前者と同じ部位に同じ符号を付けて詳しい説明を省略する。
【符号の説明】
【0037】
27 冷却板
41 冷却筒
p ガスハイドレートペレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却筒内又は隣接する冷却板間にガスハイドレートペレットを充填して冷却し、冷却されたガスハイドレートペレットを冷却筒内又は隣接する冷却板間から払い出す時に前記冷却筒又は冷却板を加熱することを特徴とするガスハイドレートペレット冷却方法。
【請求項2】
冷却筒内又は隣接する冷却板間に充填したガスハイドレートペレットを冷凍機で冷却された伝熱媒体を用いて冷却し、冷却されたガスハイドレートペレットを冷却筒内又は隣接する冷却板間から払い出す時に冷凍機のコンプレッサーで昇温された伝熱媒体を用いて前記冷却筒又は冷却板を加熱することを特徴とする請求項1記載のガスハイドレートペレット冷却方法。
【請求項3】
多数の冷却筒又は冷却板を備えた冷却槽を複数基設置するとともに、これらの冷却槽を1基ずつ、順次、稼働させてガスハイドレートペレットを連続的に冷却することを特徴とする請求項1又は2記載のガスハイドレートペレット冷却方法。
【請求項4】
槽内に多数の冷却筒又は冷却板から成る冷却部を設けると共に、冷却筒間又は冷却板内に設けた空隙を伝熱媒体の通路と成し、該通路に冷凍機で冷却された伝熱媒体を供給して前記冷却筒内又は隣接する冷却板間に充填したガスハイドレートペレットを冷却し、冷却されたガスハイドレートペレットを冷却筒内又は冷却板間から払い出す時に冷凍機のコンプレッサーで昇温された伝熱媒体を前記通路に供給して前記冷却筒又は冷却板を加熱し、冷却後のガスハイドレートペレットを排出することを特徴とするガスハイドレートペレット冷却装置。
【請求項5】
槽内に多数の冷却筒又は冷却板から成る冷却部を設けると共に、冷却筒間又は冷却板内に設けた空隙を伝熱媒体の通路と成し、かつ、前記冷却部の真上に分配機を設けて供給されたガスハイドレートペレットを前記冷却筒内又は隣接する冷却板間に分配し、更に、前記冷却部の直下に冷却後のガスハイドレートペレットを払い出す切断用カッターと払出機を設けるとともに、前記払出機の下方にガスハイドレートペレット同志の結合を分断する破砕機を設けたことを特徴とする請求項4記載のガスハイドレートペレット冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−97053(P2012−97053A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248156(P2010−248156)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】