説明

ガスハイドレート製造装置及びガスハイドレート製造方法

【課題】
気泡を含まず、分解速度が遅い高品質なガスハイドレートを製造することができるガスハイドレート製造装置及びガスハイドレート製造方法を提供する。
【解決手段】
ガスハイドレート製造装置1において、ガスハイドレート製造装置1が、原料水w中に原料ガスgを溶解させ溶解水wgを生成する溶解槽2と、溶解水wgを冷却し、ガスハイドレートGHを生成する生成槽3を有しており、溶解槽2が、原料ガスgを供給して原料ガス雰囲気とした筐体10と、筐体10内の液体を下部から取り出して上方から再供給して循環する溶解水循環路4と、筐体10内の温度をガスハイドレートが生成する温度よりも高い温度条件に制御する温度制御装置を有しており、溶解槽2で生成した溶解水wgを、生成槽3でガスハイドレート生成条件である温度まで冷却する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン、プロパン、二酸化炭素等のガスハイドレートを製造するガスハイドレート製造装置及びガスハイドレート製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスやメタンなどの安全かつ経済的な輸送及び貯蔵手段として、それら原料ガスの固体状の水和物であるガスハイドレートを用いる方法が注目されている。このガスハイドレートは一般に高圧・低温下(例えば、6.0MPa、4℃)で生成される。このガスハイドレートの製造工程は、主に、スラリ状のガスハイドレートを生成する生成工程と、ガスハイドレートスラリを脱水する脱水工程と、脱水したガスハイドレートをペレット状に押し固める成型工程と、ペレットを冷却する冷却工程と、ペレットを脱圧して大気圧とする脱圧工程と、ペレットの貯蔵を行う貯蔵工程等がある。特に、このガスハイドレートの生成工程では、原料水を一定量供給した生成槽に、この生成槽の下方から原料ガスの微細気泡を供給するバブリング方式がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図7に、従来のガスハイドレート製造装置の生成槽の1例を示す。この生成槽3Xは、筐体31と、原料ガスを筐体31内に供給するガス供給部32と、撹拌翼33と、筐体31を冷却する冷却ジャケット34を有している。なお、筐体31内は、ガスハイドレートが生成する条件としている(平衡条件)。具体的には、例えば天然ガスハイドレートであれば、圧力が約6.0MPa、温度が約4℃となるように、制御している。
【0004】
次に、生成工程で使用する生成槽3Xの動作について説明する。まず、筐体31内に原料水wを充填する。冷却ジャケット34で、原料水wを冷却する。このときの温度は、例えば約4℃などガスハイドレートが生成する温度条件(平衡条件)とする。この冷却した原料水wに、ガス供給部32から原料ガスgを微細気泡として供給する。この微細気泡と原料水wが気液接触を行い、ガスハイドレートを生成する。
【0005】
また、原料ガスgと原料水wが気液接触を行う機会を増やすために、撹拌翼33により原料水wを撹拌する。その後、生成したガスハイドレートGHと、原料水wと、原料ガスgが混合したガスハイドレートスラリsを、次工程の脱水工程に搬送する。このとき、ガスハイドレートスラリsは、気固液三相である。なお、ガスハイドレートは、原料水wに比べ密度が低いため、原料水wの水面に浮き上がるようにして生成される。
【0006】
図8に、生成槽3X内でガスハイドレートGHが生成する際の様子(物質量の変化の様子)をグラフに示す。実線は、筐体31内の原料ガスgの体積Vgが、時間Tの経過と共に減少する様子を示している。破線は、ガスハイドレートの濃度CGH(%)が、時間Tの経過と共に増加する様子を示している。一点鎖線は、原料水w中に溶存している原料ガスgの質量Mwgが、時間Tの経過に関わらず変化しない様子を示している。このグラフは、原料ガスの体積Vgの減少に伴い、ガスハイドレートGHが生成する様子を示している。つまり、生成槽3Xは、原料水w中に供給された微細気泡状の原料ガスgを消費しながら、ガスハイドレートGHを生成する。
【0007】
この生成槽3Xは、原料ガスgを微細気泡として供給する構成、及び撹拌翼33により原料水wを撹拌する構成により、原料水wと原料ガスgの気液接触の機会を増やし、ガスハイドレートGHの生成効率を向上している。また、ガスハイドレートGHの生成熱を、冷却ジャケット34で除熱する構成により、ガスハイドレートGHの生成効率を向上している。
【0008】
しかしながら、上記のガスハイドレート製造装置はいくつかの問題点を有している。第1に、ガスハイドレートの表面積を小さくし、分解速度を遅くしたガスハイドレート(高品質なガスハイドレート)を生成することが困難であるという問題を有している。これは、ガス供給部及び撹拌翼等の作動により発生した気泡が、ガスハイドレートに混入又は付着するために起きる。つまり、気固液三相のガスハイドレートスラリを脱水工程で脱水して得られるガスハイドレートは、表面に微細気泡を有しており、この気泡がガスハイドレートの表面に微細な凹凸を形成してしまう。これは、ガスハイドレートを、成型工程で例えば球状のペレット等とした場合でも、同様である。
【0009】
第2に、ガスハイドレートから、気泡を除去するためには、気液分離器が必要となり、この気液分離器を採用した場合は、ガスハイドレート製造装置のコストが増加し、プロセスが複雑化するという問題を有している。また、気液分離器を採用した場合であっても、ガスハイドレートから気泡を完全に除去することは、困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−2456664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、気泡を含まず、分解速度が遅い高品質なガスハイドレートを製造することができるガスハイドレート製造装置及びガスハイドレート製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明に係るガスハイドレート製造装置は、ガスハイドレート製造装置において、前記ガスハイドレート製造装置が、原料水中に原料ガスを溶解させ溶解水を生成する溶解槽と、前記溶解水を冷却し、ガスハイドレートを生成する生成槽を有しており、前記溶解槽が、前記原料ガスを供給して原料ガス雰囲気とした筐体と、筐体内の液体を下部から取り出して上方から再供給して循環する溶解水循環路と、前記筐体内の温度をガスハイドレートが生成する温度よりも高い温度条件に制御する温度制御装置を有しており、前記溶解槽で生成した溶解水を、前記生成槽でガスハイドレート生成条件である温度まで冷却する制御を行う構成を有することを特徴とする。この構成により、気泡が混入又は付着していない高品質なガスハイドレートを製造することができる。
【0013】
上記のガスハイドレート製造装置において、前記溶解水循環路が、前記筐体の上方から筐体内の液体を噴霧する噴霧ノズルを有したことを特徴とする。この構成により、原料ガスと原料水の気液接触の機会を増加し、原料ガスが原料水中に溶けて溶解水を生成する効率を向上することができる。
【0014】
上記のガスハイドレート製造装置において、前記筐体が、少なくとも前記筐体の内側側壁又は内部に、前記溶解循環路から前記筐体内に供給した液体が付着し、上方から下方に流れる接触壁を有することを特徴とする。この構成により、更に原料ガスと原料水の気液接触の機会を増加し、溶解水を生成する効率を向上することができる。
【0015】
上記のガスハイドレート製造装置において、前記生成槽が、前記溶解水を流す管路と、冷媒を循環して前記管路を冷却する冷媒循環領域を有する二重管型の生成槽であることを特徴とする。この構成により、生成槽における気泡の発生を防止し、気泡が混入又は付着していない高品質なガスハイドレートを製造することができる。
【0016】
上記の目的を達成するための本発明に係るガスハイドレート製造方法は、ガスハイドレート製造方法において、前記ガスハイドレート製造方法が、原料水中に原料ガスを溶解させ溶解水を生成する溶解工程と、前記溶解水を冷却し、ガスハイドレートを生成する生成工程を有しており、前記溶解工程が、前記原料ガスを供給して原料ガス雰囲気とし、且つガスハイドレートが生成する温度よりも高い温度条件とした筐体内に前記原料水を噴霧して溶解水を生成するステップと、前記溶解水を前記筐体の下部から取り出して上方から再度噴霧する溶解水循環ステップを有しており、前記生成工程が、前記溶解水をガスハイドレートが生成する温度条件まで冷却してガスハイドレートを生成するステップを有することを特徴とする。この構成により、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るガスハイドレート製造装置及びガスハイドレート製造方法によれば、気泡を含まず、分解速度が遅い高品質なガスハイドレートを製造することができるガスハイドレート製造装置及びガスハイドレート製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施の形態のガスハイドレート製造装置の一部を示した概略図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の生成槽内の物質量の変化の様子を示したグラフである。
【図3】本発明に係る実施の形態のガスハイドレート製造装置の溶解槽を示した概略図である。
【図4】異なる実施の形態の溶解槽を示した概略図である。
【図5】本発明に係る実施の形態のガスハイドレート製造装置の生成槽を示した概略図である。
【図6】本発明に係る実施の形態の生成槽の管路を示した概略図である。
【図7】従来のガスハイドレート製造装置の生成槽を示した概略図である。
【図8】従来のガスハイドレート製造装置の生成槽内の物質量の変化の様子を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態のガスハイドレート製造装置及びガスハイドレート製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1に、ガスハイドレート製造装置1の一部の概略図を示す。このガスハイドレート製造装置1は、原料水に原料ガスを溶解させる溶解槽2と、ガスハイドレートを生成する生成槽3を有している。つまり、従来の生成槽3X(図7参照)を、溶解槽2及び撹拌翼を有さない生成槽3に置き換えたものである。なお、脱水工程で使用する脱水装置5から下流にある各工程の装置は、従来のガスハイドレート製造装置と同様とすることができる。
【0020】
まず、溶解槽2を使用する溶解工程について説明する。溶解槽2は、筐体10と、筐体10内の液体を循環するための溶解水循環路4を有している。なお、Pはポンプを示す。この溶解工程では、原料ガスgの供給により内部を原料ガス雰囲気とした筐体10内に、原料水wを噴霧する。原料水wは、内部に原料ガスgを溶かし込み溶解水wgとなる。更に、溶解水wgを、筐体10の下部、望ましくは底部から取り出し、溶解水循環路4を介して筐体10の上部、望ましくは天井部から供給して循環する。この循環を繰り返し、予め定めた量以上の原料ガスgを含む溶解水wgは、搬送管6を介して生成工程に送られる。この搬送管6は、筐体10の下部、望ましくは底部から気泡を含まない溶解水wgを搬送するように構成する。
【0021】
このとき、溶解槽2における温度は、図示しない温度制御装置で、ガスハイドレートが生成しない温度範囲(非平衡状態)に制御している。例えば、天然ガスハイドレートであれば、9〜20℃程度とする。また、溶解槽2の圧力は、ガスハイドレートの生成条件の範囲としている。更に、原料ガスgは、筐体10内に随時供給するように構成することが望ましい。原料水wも同様である。
【0022】
次に、生成槽3を使用する生成工程について説明する。生成槽3は、溶解水wgを流す管路20と、冷媒cを循環して管路20を冷却する冷媒循環領域21を有する二重管型の生成槽として構成している。この生成工程では、管路20内の溶解水wgが、ガスハイドレートの生成条件(平衡状態)となるように、冷媒cを循環する制御を行う。例えば、天然ガスハイドレートであれば、約4℃とする。なお、管路20内の圧力は、溶解槽2の場合と変わらず6.0MPa程度とする。
【0023】
生成槽3は、液相のみの溶解水wgを冷却してガスハイドレートを生成し、溶解水wgとガスハイドレートからなる固液二相のガスハイドレートスラリsを、脱水工程の脱水装置5に送る。ここで、ガスハイドレート製造装置1に、ガスハイドレートスラリsの一部を、生成槽3の上流側に循環するスラリ循環路7を設置することが望ましい。
【0024】
次に、脱水装置5を使用する脱水工程について説明する。脱水装置5は、固液二相のガスハイドレートスラリsから、溶解水wgを脱水し、濃縮したガスハイドレートGHを次工程に搬送する。ここで、ガスハイドレート製造装置1に、脱水装置5により得られた濾液(溶解水wg)を、溶解槽2に循環する濾液循環路8を設置することが望ましい。
【0025】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、気泡が混入又は付着していないガスハイドレートを製造することができる。これは、溶解槽2で気相を含まない溶解水wgを作り、撹拌翼等を有さない生成槽3でガスハイドレートを生成するためである。このため、ガスハイドレートの表面が凹凸の少ない滑らかな面となり、分解速度の遅い高品質なガスハイドレートを製造することができる。具体的には、2週間当りのガスハイドレートの分解量(質量)を、2%程度低減することができる。また、前述の方法で製造したガスハイドレートは、密度が910kg/m程度の高密度なガスハイドレートとすることができる。なお、従来の方法で製造したガスハイドレートは、気泡を含んでいるため密度が800kg/m程度であった。
【0026】
第2に、ガスハイドレート製造装置の規模を大型化せずに、低コストで気泡が混入しないガスハイドレートを製造することができる。これは、溶解槽2では、ガスハイドレートを生成せず、原料ガスgを原料水w中に溶解させるのみであり、溶解槽2のサイズを大きく形成する必要がないからである。また、ガスハイドレートから気泡を除去する気液分離装置が不要となる。
【0027】
第3に、生成槽3をシンプルな構成とすることができる。これは、生成槽3では、液相のみの溶解水wgを冷却し、生成物も固液二相となるため、二重管方式や、シェルアンドチューブ方式等のシンプルな生成槽3とすることができる。
【0028】
第4に、製造するガスハイドレートの結晶粒径の増大、及び生成物のガスハイドレート率の増大を実現することができる。これは、スラリ循環路7により、生成槽3におけるガスハイドレートスラリsの滞留時間を延長したためである。また、溶解水循環路4により、溶解水wgに溶存する原料ガスgの比率を容易に制御することができる。更に、濾液循環路8により、濾液(溶解水wg)中に溶存している原料ガスgを廃棄することなく、利用することができる。
【0029】
図2に、生成槽3内でガスハイドレートが生成する際の様子(物質量の変化の様子)をグラフで示す。実線(Vg)は、原料ガスgの体積変化を示しており、生成槽3内に原料ガスgが気相として存在していないことを示している。破線(CGH)は、ガスハイドレートの濃度(%)が、時間Tの経過と共に増加する様子を示している。一点鎖線(Mwg)は、溶解水wg中に溶解している原料ガスgの成分の質量を示しており、時間Tの経過と共に減少する様子を示している。つまり、原料水w中に溶解した原料ガスgの成分を消費しながら、ガスハイドレートが生成される。そのため、生成槽3内には、気相である原料ガス等が存在せず、気泡を含まないガスハイドレートを生成することができる。
【0030】
図3に溶解槽2の1例を示す。溶解槽3は、筐体10と、溶解水wgを筐体10の下部から上部に循環する溶解水循環路4と、溶解水循環路4から筐体10内に溶解水wgを噴霧する噴霧ノズル11と、温度制御装置(図示しない)を有している。この筐体10は、内部を原料ガス雰囲気としている。また、筐体10の下部、望ましくは底部に溶解水wgを次工程(生成工程)に搬送する搬送管6を有している。なお、15は、原料ガスgの供給量を制御するバルブを示している。
【0031】
次に、溶解槽2の動作について説明する。まず、溶解槽2の筐体10内に原料ガスgを供給し、原料ガス雰囲気とする。この筐体10に、原料水w(又は溶解水wg)を噴霧ノズル11から霧12として噴霧する。原料水wは、原料ガスgと接触して内部に取り込み溶解水wgとなる。この溶解水wgを、溶解水循環路4により筐体10内に繰り返し噴霧し、原料ガスgを更に溶解水wg中に溶解させる。他方で、溶解水wgの一部を、筐体10の下部の搬送管6を介して生成槽3に搬送する。
【0032】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、原料水wを霧化する構成により、気液接触面積を増大し、原料ガスgが原料水w中に溶解する効率を向上することができる。第2に、溶解水循環路4で溶解水wgを循環して原料ガスg中に噴霧する構成により、原料ガスgの溶解量を更に増大することができる。第3に、溶解槽2下部の液相で、バブリングや撹拌等を行わないので、液相に気泡を巻き込むことを防止することができる。また、搬送管6を筐体10の下部又は底部に設置する構成により、生成槽3に送る溶解水wg中に気泡を含む可能性を更に下げることができる。
【0033】
図4に、溶解槽の異なる実施例を示す。溶解槽2Aは、噴霧した溶解水wgが付着して流れる接触壁14を有している。この接触壁14に噴霧された霧12(溶解水wg)が付着し、水滴13となる。この水滴13は、原料ガスgと接触しながら、ゆっくりと降下していく。この構成により、溶解水wgが溶解槽2A下部に到達する時間を遅くし、溶解水wg(原料水w)が原料ガスgに接触する機会を増やすことができる。そのため、溶解水wgは、原料ガスgとの接触機会が増え、溶解水wgに原料ガスgが溶解する効率を向上することができる。なお、筐体10の内側側壁を、接触壁14として利用してもよい。
【0034】
図5に、生成槽3の1例を示す。この生成槽3は、多管式熱交換器で構成されている。この生成槽3は、溶解水wgを供給する分岐室22と、複数の管路20と、合流室21と、冷媒cを循環させる冷媒循環領域21を有している。
【0035】
次に、生成槽3の動作について説明する。まず、溶解槽2から溶解水wgを生成槽3に供給する。この溶解水wgは、分岐室22で、複数の管路20に分けられる。溶解水wgは、管路20内でガスハイドレートが生成する温度(平衡状態)まで冷却される。平衡状態まで冷却された溶解水wgは、ガスハイドレートを生成し、固液二相のガスハイドレートスラリsとなる。つまり、管路20を反応器として利用している。各管路20で生成されたガスハイドレートスラリsは、合流室23で合流し、生成槽3外に排出される。
【0036】
上記と平行して、生成槽3に冷媒cを供給する。この冷媒cは、冷媒循環領域21を循環し、複数の管路20を冷却し、生成槽3外に排出される。つまり、冷媒cは、溶解水wgを平衡状態まで冷却し、且つガスハイドレートの生成熱を除熱する。
【0037】
上記の生成槽3は、溶解水wgが流れる管路20を冷却する構成により、ガスハイドレートの生成熱を除熱し、ガスハイドレートの生成速度の向上を実現している。なお、ガスハイドレートの生成熱により、管路20内の温度が上昇すると、ガスハイドレートの生成効率は低下する。
【0038】
図6に、生成槽3の管路20の透視図を示す。管路20は、内部に伸縮及び揺動自在のコイルバネ24を有している。このコイルバネ24は、管路20内で生成したガスハイドレートが管路20を閉塞することを防止するために設置している。具体的には、管路内壁に付着したガスハイドレートを、コイルバネ24の伸縮及び揺動により、こそぎ落とすように構成している。ここで、白抜き矢印は、溶解水wgの流れる方向を示している。なお、溶解水wgの流速は、ガスハイドレート製造装置1の性能等から決定することができる。この溶解水wgの流速は、例えば0.1〜5.0m/sとする。
【0039】
また、管路20は、直径20〜50mm程度、望ましくは50mm程度とする。これは、関係が太すぎると冷却効率が低下し、細すぎると管路20の閉塞が発生しやすくなるためである。更に、コイルバネ24のコイル径は、コイルバネ24の外周が管路20の内壁に接触する程度の範囲とする。例えば、コイル径を、管路径の50〜95%、望ましくは60〜80%とする。これは、コイル径が小さい場合は、コイルバネ24が管路20の内壁に十分に接触することができなくなり、コイル径が大きい場合は、管路20内におけるコイルバネ24の動きが小さくなり、管路20の内壁に付着したガスハイドレートが除去しにくくなるためである。なお、コイルバネ24の両端は、管路20に固定している。
【0040】
以上より、コイルバネ24は、管路20の長手方向(図6左右方向)に伸縮自在であり、管路20の長手方向に直交する方向(図6の上下方向又は紙面手前奥方向)に揺動可能に構成している。
【0041】
次に、コイルバネ24の動きについて説明する。コイルバネ24は、溶解水wgの流れる力及びバネの復元力の相互作用により、変形を繰り返し、管路20の内壁に付着したガスハイドレートを取り除く。また、溶解水wgがコイルバネ24を通過する際に、コイルバネ24の周辺でカルマン渦が発生し、管路20の内壁面を洗浄する効果が発生する(ハイブリッドクリーニングエフェクト)。また、コイルバネ24の乱流促進効果により、溶解水wgは、気泡を含まない状態を維持しながら撹拌され、効率的に冷却される。
【0042】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、気泡を含まない高品質なガスハイドレートを生成することができる。これは、気泡を含まない溶解水wgを、気泡を発生させずに冷却し、ガスハイドレートを生成するためである。
【0043】
第2に、ガスハイドレート製造装置1の長時間連続運転を実現することができる。これは、ガスハイドレートが、管路20の内壁に付着した場合であっても、このガスハイドレートは、コイルバネ24により除去される(削ぎ落とされる)ためである。
【0044】
第3に、ガスハイドレートの生成効率を向上することができる。これは、管路20内で伸縮及び揺動するコイルバネ24により、溶解水wgに気泡を発生させずに撹拌することができ(乱流状態を維持し)、溶解水wgの冷却効率を向上することができるためである。
【0045】
なお、コイルバネ24に、バッフル板25を設置する構成としてもよい。このバッフル板25は、コイルバネ24のバネ材料から円形のコイルバネ24の中心方向に設置している。また、バッフル板25は、円形のコイルバネ24上で、例えば450°ずつ回転した位置に設置する。
【0046】
このバッフル板25は、溶解水wgの流れの力を受け、コイルバネ24を積極的に伸縮及び揺動することができる。そのため、管路20の内壁に付着したガスハイドレートの除去効率を更に向上することができる。また、コイルバネ24の変形量が大きくなるため、溶解水wgの乱流状態を維持することができる。なお、バッフル板25の設置位置は、上記に限定されることはなく、任意に決定することができる。また、バッフル板25は、溶解水wgの流れの力を受ける構成を有していればよく、形状は矩形に限らず、円弧、円形、多角形等とすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガスハイドレート製造装置
2、2A 溶解槽
3 生成槽
4 溶解水循環路
10 筐体
14 接触壁
21 冷媒循環領域
w 原料水
g 原料ガス
wg 溶解液
s ガスハイドレートスラリ
GH ガスハイドレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスハイドレート製造装置において、
前記ガスハイドレート製造装置が、原料水中に原料ガスを溶解させ溶解水を生成する溶解槽と、前記溶解水を冷却し、ガスハイドレートを生成する生成槽を有しており、
前記溶解槽が、前記原料ガスを供給して原料ガス雰囲気とした筐体と、筐体内の液体を下部から取り出して上方から再供給して循環する溶解水循環路と、前記筐体内の温度をガスハイドレートが生成する温度よりも高い温度条件に制御する温度制御装置を有しており、
前記溶解槽で生成した溶解水を、前記生成槽でガスハイドレート生成条件である温度まで冷却する制御を行う構成を有することを特徴とするガスハイドレート製造装置。
【請求項2】
前記溶解水循環路が、前記筐体の上方から筐体内の液体を噴霧する噴霧ノズルを有したことを特徴とする請求項1に記載のガスハイドレート製造装置。
【請求項3】
前記筐体が、少なくとも前記筐体の内側側壁又は内部に、前記溶解循環路から前記筐体内に供給した液体が付着し、上方から下方に流れる接触壁を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスハイドレート製造装置。
【請求項4】
前記生成槽が、前記溶解水を流す管路と、冷媒を循環して前記管路を冷却する冷媒循環領域を有する二重管型の生成槽であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスハイドレート製造装置。
【請求項5】
ガスハイドレート製造方法において、
前記ガスハイドレート製造方法が、原料水中に原料ガスを溶解させ溶解水を生成する溶解工程と、前記溶解水を冷却し、ガスハイドレートを生成する生成工程を有しており、
前記溶解工程が、前記原料ガスを供給して原料ガス雰囲気とし、且つガスハイドレートが生成する温度よりも高い温度条件とした筐体内に前記原料水を噴霧して溶解水を生成するステップと、
前記溶解水を前記筐体の下部から取り出して上方から再度噴霧する溶解水循環ステップを有しており、
前記生成工程が、前記溶解水をガスハイドレートが生成する温度条件まで冷却してガスハイドレートを生成するステップを有することを特徴とするガスハイドレート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−162606(P2012−162606A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22635(P2011−22635)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】