説明

ガスバリアフィルム、それを用いた有機EL、電子ペーパ及び太陽電池

【課題】ブリーディング、ブルーミング及び移行汚染が発生せず、湿度に依存せずに、即効性に優れ、物性の低下を招かず、かつ優れた制電性が持続するガスバリアフィルムを提供することを主要な目的とする。
【解決手段】本発明に係るガスバリアフィルムは、基材フィルム11と、基材フィルム11の上に設けられた、ガスの透過を遮断する緻密な無機層14と、上記無機層の上又は下に接して積層された、該無機層14を保護し、柔軟性を与える有機層13とを備える。上記有機層13は、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂中に分散されてなる制電性組成物を硬化してなる、フィルムまたは粘着フィルムで形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にガスバリアフィルムに関するものであり、より特定的には帯電防止性を付与したガスバリアフィルムに関する。この発明は、また、そのようなガスバリアフィルムを用いた有機EL(electro luminescence)、電子ペーパ及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELや電子ペーパ、太陽電池、電子ノートなど、次世代デバイスへの注目が益々高まっている。これらのデバイスのキーとなる素子には精密な構造や材料を用いるため、極微量の水分や酸素の影響で劣化して性能が低下する。
【0003】
図6は、従来の有機ELの断面図である。有機発光層1と有機キャリア輸送層2からなる有機素子が、金属電極3とITO透明電極4間に挟まれて通電されて発光する。有機ELの劣化に対しては、有機素子を空気から遮断する封止技術の効果が大きいので、防湿性の高いガラス基板間5,5に、接着剤6で固定して、狭持された構造をしている。
【0004】
しかしながら、ガラス基板5の取扱い難さに加え、急速に市場拡大しているモバイルツールへの応用展開を考え、ガラス基板5の代わりにプラスチックを基板として用いた、“フレキシブル有機ELディスプレイ”(薄い、軽い、割れない、曲げられる)が求められている。
【0005】
一方、基板にプラスチックを用いると、防湿性に欠けるので、基板の少なくとも一方にガスバリアフィルムを貼り付ける必要がある。従来、ガスバリアフィルムは、主として包装材料分野において開発されてきたものである。食品や医薬品の包装に用いられているガスバリアフィルムは、1〜10-2[g/m・day]台の水蒸気バリア性能を有しているが、有機ELの劣化を抑制するには、その1/10000(10-6[g/m・day]台の水蒸気透過率)の“スーパー”バリアフィルムが必要である。
【0006】
高いバリア性を達成するためには、ポリカーボネート、PETのようなプラスチック基板上に緻密な無機材料を含むガスバリア層膜を形成することが知られている。また、無機材料だけではフィルムに合った柔軟な膜を得ることが難しく、クラックなどの無機材料の破壊が避けられない。
【0007】
そのために、図7を参照して、無機と有機を同時に用いる“有機無機ハイブリッド”により、両者の特性を併せ持つ“スーパー”バリアフィルムの構造が提案されている。“スーパー”バリアフィルムは、ポリカーボネート、PETのようなプラスチック基板7上に、ポリマー層8、無機層9、ポリマー層8、無機層9が交互に積層されてなるガスバリア層80が設けられてなる。無機層9は、ガスの透過を遮断する緻密な無機質の膜である。ポリマー層8は、無機層9を保護し、これに柔軟性を与える有機質の膜である。
【0008】
しかし、このようなガスバリア性を付与して水、酸素の透過を防いでも、さらに次のような問題点が生じていた。すなわち、フレキシブル有機ELディスプレイの基板であるプラスチックは、帯電し易い性質を有しており、有機ELの素子を封止するとき、変形(カール)したり、またプラスチック基板に帯電した静電気が有機発光層を侵すという問題があった。また、綿ごみがディスプレイに付着し、透明性を損なうという問題点があった。
【0009】
さて、これらの問題点は、帯電防止剤を用いて制電性を付与することで解決できると考えられるのであるが、樹脂に制電性を付与する方法として、従来より、界面活性剤等の帯電防止剤を樹脂成形品の表面に塗布したり、帯電防止剤を樹脂中に練り込む方法が知られている。しかしながら、前者の方法では、長時間経過すると制電性が著しく低下するため、持続性を有する高制電性樹脂として、実用化には供し難い。一方、後者の方法では、帯電防止剤と樹脂との相溶性が悪く、帯電防止剤が成形品の表面にブリーディングやブルーミングしてしまい、制電効果が低下するという課題があった。
【0010】
また、界面活性剤などの帯電防止剤は、湿度依存性があり、低湿度下では、制電効果が失活する、あるいは、樹脂を成形した後に、帯電防止効果が発現するまでに最低1〜3日掛かり、遅効性であるという課題があった。
【0011】
また、カーボンブラックやカーボンファイバーなどを樹脂に練り込む方法が提案されている。この方法によると、帯電防止性にすぐれ、帯電防止性に持続性がある樹脂組成物が得られる。しかし、この方法では、透明性を要求されるフレキシブル有機ELディスプレイには使用できないという課題があった。
【0012】
本発明者らは、これまで樹脂に帯電防止性を付与するという研究を一貫として行ってきており、帯電防止性が要求される塗料などに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であるカチオンによって構成される金属塩類を、−{O(AO)}−基(Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜7の整数を示す)を有し、且つ全ての分子末端がCH基および/またはCH基である脂肪酸エステルに溶解した溶液を、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエステルアミド樹脂、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸系樹樹、熱可塑性エラストマーおよびゴムに添加してなる制電性組成物を提案した(たとえば、特許文献1参照)。
【0013】
また、ポリウレタンからなる塩改質静電気散逸型重合体(Salt-modified electrostatic dissipative polymers)の製造方法として、リチウムビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドを補助溶剤(co-solvents)に溶解して添加する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開WO01/79354 A1公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】米国特許6、140、405号 (Claim 1、14及び15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の方法を、上記ガスバリアフィルムに応用した場合、制電性組成物に添加する金属塩類の種類によっては、制電性能が十分でない場合があった。
【0016】
また、特許文献2に記載の方法では、金属塩類を溶解するための補助溶剤(エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、N−メチル−2−ピロリドン等)が制電性組成物の成形品の表面にブリーディングやブルーミングしてしまい、有機ELのディスプレイを汚染する。また、ディスプレイの表面を払拭することなどにより制電性が低下し、帯電防止性の耐久性が十分でない。特に、高温高湿度の雰囲気下では、ブリーディングやブルーミングが促進されるため、制電性の低下が著しいという課題があった。
【0017】
本発明は、樹脂を帯電防止するという研究の一貫として、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱安定性に優れ、ブリーディング、ブルーミングおよび移行汚染が発生せず、透明性に優れ、湿度に依存せずに、即効性に優れ、物性の低下を招かず、かつ、優れた制電性が持続するガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
【0018】
この発明の他の目的は、そのようなガスバリアフィルムを使用した有機ELを提供することにある。
【0019】
この発明の他の目的は、そのようなガスバリアフィルムを使用した電子ペーパを提供することにある。
【0020】
この発明の他の目的は、そのようなガスバリアフィルムを使用した太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係るガスバリアフィルムは、基材フィルムと、上記基材フィルムの上に設けられた、ガスの透過を遮断する緻密な無機層と、該無機層の上又は下に接して積層された、該無機層を保護し、柔軟性を与える有機層とを備えたガスバリアフィルムに係る。上記有機層は、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂中に分散されてなる制電性組成物を硬化してなる、フィルムまたは粘着フィルムで形成されていることを特徴とする。
【0022】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、いわゆる超強酸の塩であり、重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂を含む組成物中に溶解された状態で、分散されると、例えば陽イオンがリチウムイオンである場合、リチウムイオンが裸の状態(シングルイオン化)になって、上記フィルムまたは粘着フィルム中にイオン輸送され、制電性に大きく寄与する。
【0023】
また重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂を含む組成物中に溶解された状態のフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、組成物を構成する分子と相溶性に優れるので、ブリーディング、ブルーミング、および移行汚染が発生せず、さらに湿度に依存せずに、即効性に優れ、かつ優れた制電性が持続する。
【0024】
本明細書で、「分散」とは、上記塩が、組成物中に微粒子上又は微液滴状になって散在あるいは溶込んでいる状態をいう。分散させる方法としては、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩をそのまま、あるいは、溶媒に溶解して、重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂を含む組成物中に散在させることによって行われる。
【0025】
上記重合性化合物とは、重合する官能基を有する化合物をいい、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基などを有する重合性化合物が挙げられる。態様としては、モノマー、オリゴマー、あるいは活性エネルギー線硬化性官能基を分子内に3つ以上有するものが挙げられる。
【0026】
モノマーとしては、例えば、単官能性のもの:2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、スチレンなど、二官能性のもの:ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンなど、多官能性のもの:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの3モルプロピレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチルプロパンの6モルエチレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ジペンタンエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
粘着性を確保するという点では、炭素数が4〜12の(メタ)アクリロイルモノマーを共重合することが好ましい。
【0028】
さらに、活性化エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレート系化合物として、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等を挙げることができる。
【0029】
オリゴマーとしては、例えば、不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。この中でも、ポリエチレングリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレートは好ましく用いられる。その中でもオキシエチレン単位を少なくとも2個有するものが特に好ましく用いられる。ポリ(エチレングリコール)のモノ又はジ(メタ)アクリレートは帯電防止性を有しており、フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩と相乗してその効果を高める。
【0030】
3つ以上の官能基を有するオリゴマーとしては、例えば、ジイソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどと、水酸基含有(メタ)アクリレート:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの単官能のもの、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの3官能以上のものとを反応してなるものなどが挙げられる。
【0031】
上記樹脂は、ポリオレフィン系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリアミド系重合体、塩化ビニル系重合体、ポリアセタール系重合体、ポリエステル系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリカーボネート系重合体、アクリレート/メタクリレート系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、熱可塑性エラストマー系重合体、不飽和ポリエステル系重合体、エポキシ系重合体、フェノール系重合体、ジアリール系重合体、メラミン系重合体、液晶ポリエステル系重合体、フッ素系重合体、ポリスルホン系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体、ポリイミド系重合体及びシリコーン系重合体から選択された1種であればよい。この中でも極性基を有するものは特に好ましく用いられる。
【0032】
上記エラストマーは、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレン、シリコーンゴム、フッ素ゴム及びウレタンゴムから選択された1種であればよい。
【0033】
上記粘着性樹脂としては、粘着性を有する(メタ)アクリロイル系重合体を挙げることができる。炭素数が4〜12の(メタ)アクリロイル系モノマーを共重合に供することが好ましい。さらに好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。必要に応じて、(メタ)アクリル酸を共重合してもよい。
【0034】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、上記制電性組成物100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の割合で、上記制電性組成物中に分散されるのが好ましい。
【0035】
上記組成物中の全ての重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂100質量部に対して、上記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、0.01質量部以上50質量部以下、さらに好ましくは、0.1質量部以上15重量部以下の割合で配合されるのが好ましい。
【0036】
このように規制するのは、上記陰イオンを備えた塩の配合量が、0.01質量部未満であると、制電性が十分発揮されないからである。一方、上記陰イオンを備えた塩の配合量が、50質量部を超えると、制電性付与効果が飽和するので、コスト高を招来するという問題があるからである。
【0037】
上記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンは、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン及びフルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群から選ばれた陰イオンであるのが好ましい。
【0038】
上記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンと対になる陽イオンは、アルカリ金属、2A族元素、遷移金属及び両性金属からなる群の陽イオンから選ばれるのが好ましい。
【0039】
上記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、特にビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドのアルカリ金属塩及びトリフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩からなる群から選ばれた塩であるのが好ましい。
【0040】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、下記一般式(1)で表されるポリ(アルキレングリコール)含ホウ素エステルに溶解された状態で前記組成物中に分散されるとさらに好ましい。
【化1】

【0041】
(式(1)中、R、R及びRは、互いに独立に、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐状の低級アルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及び炭素数3〜6のアルケニル基からなる有機基群の中から選ばれ、OA,OAおよびOAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、l、m、nはオキシアルキレン基単位の平均付加モル数で、2〜14である。)
【0042】
上記式(1)中、R、R及びRのうち、少なくとも1つは炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐状の低級アルキル基であり、かつもう1つはアクリロイル基又はメタクリロイル基であるのが特に好ましい。
【0043】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオン(アニオン)を備えた塩が、上記一般式(1)で表されるポリ(アルキレングリコール)含ホウ素エステルに溶解された状態というのは、錯体が形成された状態、例えばCFSOLiのようなLiX塩を例示すると、ホウ素原子(B)空のp軌道に、アニオン(X-)がトラップされている状態である。換言するとアニオン(X-)がホウ素原子(B)の空のp軌道に配位子として結合し、ホウ素錯体を形成している。その結果、リチウムイオン(Li+)が、対イオンであるX-イオン(CFSOイオン)から解き放たれた状態になる。このような状態で、重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂を含む組成物中に分散されているので、リチウムイオンが裸の状態(シングルイオン化)になって組成物中にイオン輸送され、制電性に大きく寄与するのである。
【0044】
したがって、上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンは、該陰イオンが、上記一般式(1)で表されるポリ(アルキレングリコール)含ホウ素エステルのホウ素原子の空のp軌道に、配位子として結合してなるホウ素錯体として分散されていると言い換えることもできる。
【0045】
上記組成物は、さらに重合体型帯電防止剤を含んでもよい。
【0046】
上記組成物に重合体型帯電防止剤を含めると、上記陰イオンを備えた塩を安定化することができることが見出された。この塩は重合体型帯電防止剤の存在する所に、集まり、局在化し、2種類の帯電防止剤の相乗効果によって制電性を強く発揮するのである。このような重合体型帯電防止剤としては、ポリエーテルブロックポリオレフィン共重合体、ポリオキシアルキレン系共重合体又はエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジル共重合体が挙げられる。
【0047】
上記重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂100質量部に対して、上記重合体型帯電防止剤を、0.05質量部以上65質量部以下、好ましくは、0.1質量部以上50質量部以下の割合で含有させればよい。
【0048】
このように規制するのは、上記重合体型帯電防止剤の配合量が0.05質量部未満であると、制電性が十分発揮されないからである。一方、上記重合体型帯電防止剤の配合量が65質量部を超えると、制電性付与効果が飽和するので、コスト高を招来するという問題があるからである。また、組成物の物性が失われることがあるからである。
【0049】
上記制電性組成物には、さらに酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、顔料、抗菌・抗カビ剤、耐光剤、可塑剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、硬化触媒、硬化剤、レベリング剤、撥水剤、カップリング剤、フィラー、加硫剤、キレート剤、加硫促進剤などの公知の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0050】
なお、重合性基の保護のために、従来から知られているハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジ−t−ブチル−ヒドロキシトルエン、フェノチアジン等の重合禁止剤を、従来から知られているように20〜1000ppmの添加量で用いることができる。
【0051】
本発明は、また上述のガスバリアフィルムを用いた有機EL、電子ペーパ、太陽電池に係る。
【0052】
硬化のための、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基の重合は、加熱、紫外線、可視光、電子線などのエネルギーによってなされるが、適宜、公知の重合開始剤を使用してもよい。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係るガスバリアフィルムでは、ガスの透過を遮断する緻密な無機層を保護し、これに柔軟性を与える有機層を、重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物を硬化してなる、フィルムまたは粘着フィルムで形成したので、ガスバリア性に富むことに加え、透明性にすぐれ、着色もほとんどなく、帯電性に優れるという効果を奏する。
【0054】
また、制電性・熱安定性に優れ、金属を腐食せず、湿度などの環境によらないガスバリアフィルムを得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るガスバリアフィルムの断面図である。
【図2】本発明に係るガスバリアフィルムを使用した、フレキシブル有機ELの概念図である。
【図3】実施例1に係るバリアフィルムの製造工程図である。
【図4】実施例2に係るバリアフィルムの製造工程図である。
【図5】実施例3に係るバリアフィルムの製造工程図である。
【図6】従来の有機ELの断面図である。
【図7】従来の“スーパー”バリアフィルムの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
熱安定性に優れ、ブリ-ディング、ブル-ミングおよび移行汚染が発生せず、湿度に依存せずに、即効性に優れ、物性の低下を招かず、かつ、優れた制電性が持続するガスバリアフィルムを得るという目的を、ガスの透過を遮断する緻密な無機層に柔軟性を与える有機層を、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂中に分散されてなる制電性組成物を硬化してなる、フィルムまたは粘着フィルムで形成することによって実現した。
【0057】
図1は、本発明の実施の形態に係るガスバリアフィルムの断面図である。ガスバリアフィルム10は、基材フィルム11と、基材フィルム11の上に設けられたガスバリア層12とを備える。ガスバリア層12は、重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩(例えばLi塩)が分散されてなる制電性組成物を硬化させてなる有機層13(フィルムまたは粘着フィルム)と、ガスの透過を遮断する緻密な無機層14が交互に積層されてなる交互積層型のものである。有機層13は無機層14を保護し、これに柔軟性を与える役割と制電防止の役割を果たす。本実施の形態では、4層構造の交互積層型を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、無機層14、Li塩を含む有機層13は、それぞれ少なくとも1層あればよい。
【0058】
図2は、本発明に係るガスバリアフィルム10を、フレキシブル有機ELに適用した場合の概念図である。図2に係るフレキシブル有機ELにおいて、図6に示す有機ELと同一又は相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明を繰り返さない。
【0059】
図2に示す本発明に係るフレキシブル有機ELが、図6に示す従来の有機ELと異なる点は、ガラス基板の代わりにプラスチック基板15,15を用いている点と、それぞれのプラスチック基板15,15の内側に、つまり有機EL素子を封止する側に、本発明に係る、すなわち図1に示すガスバリアフィルム10を組み込んでいる点である。
【0060】
ガスバリアフィルム10は、ガスの透過を遮断する緻密な無機層14を有するので、水、酸素の透過を防ぐことができる。また、フレキシブル有機ELディスプレイの基板であるプラスチック基板15は、帯電し易い性質を有しているが、ガスバリアフィルム10は、重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂を含む組成物中に、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が分散されてなる制電性組成物を硬化させてなる有機層13を備えるので、制電性を強く発揮する。その結果、有機ELディスプレイの組み立て時、プラスチック基板15が変形(カール)することはない。またプラスチック基板15に静電気が帯電しないので、有機発光層1が侵されない。また、綿ごみがディスプレイに付着しないので、透明性を損なう等の問題点が発生しない。
【0061】
フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、組成物を構成する分子と相溶性に優れるので、ブリ-ディング、ブル-ミング、および移行汚染が発生せず、さらに湿度に依存せずに、即効性に優れ、かつ優れた制電性が持続する。
【0062】
上記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は数多くあるが、中でも、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン、フルオロアルキルスルホン酸イオンを含み、具体的には、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムLi(CFSON、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリカリウムK(CFSON、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドナトリウムNa(CFSON、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウムLi(CFSOC、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドカリウムK(CFSOC、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドナトリウムNa(CFSOC、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLi(CFSO)、トリフルオロメタンスルホン酸カリウムK(CFSO)、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムNa(CFSO)が好ましい。中でも、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドリチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムが好ましく、特にトリフルオロメタンスルホン酸リチウムが好ましい。これを少量添加するだけで、上記効果が効率よく得られる。
【0063】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0064】
図3(A)を参照して、基材フィルム20(ポリエチレンテレフタレートPET、厚み100μm、東レ製ルミラーT60)を準備する。図3(B)を参照して、基材フィルム20の上に、リアクティブスパッタリング装置を用いて、酸化アルミニウム無機層21(膜厚50nm、膜密度3.Og/cm)を形成した。そして、別途に光重合性アクリレートとして、ウレタンアクリレートプレポリマー(新中村化学製UKオリゴUA−53H)30質量部:多分岐ポリアクリレート(新中村化学製、NKエコノマー A−PG5027E)70質量部の混合溶液に、リチウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド10質量部を添加・溶解した溶液組成物に、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、イルガキュアー907)3重量%を、添加・溶解して塗布液を調整した。この塗布液を、図3(C)を参照して、ワイヤーバーを用いて無機層21の上に塗布し、UV照射(50mj×2パス)して、Li塩を含む有機層22を形成した。得られたガスバリアフィルムの膜厚は、約10μmであった。この有機層22の表面抵抗率は、2×10Ω/sqであった。このガスバリアフィルムを図2に示す有機ELの素子を封止するときにガスバリアフィルム10として、組み込むことができる。
【実施例2】
【0065】
図4(A)を参照して、基材フィルム20(ポリエチレンテレフタレートPET、厚み100μm、東レ製ルミラーT60)を準備する。図4(B)を参照して、基材フィルム20の上に、実施例1と同様の方法で、無機層21とLi塩を含む有機層22を交互に4層に積層したガスバリアフィルム27を作成した。先ず、ウレタンアクリレートプレポリマー(新中村化学製UKオリゴUA−53H)30質量部:多分岐ポリアクリレート(新中村化学製、NKエコノマー A−PG5027E)60質量部の混合溶液に、ポリエチレングリコール#600ジアクリレートにトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを50質量%溶解した溶解溶液10質量部を添加した後、混合・溶解して塗布液を調製した。有機層22の形成は、この塗布液を用いて作成した。無機層21の上に有機層22を積層するときは、上記塗布液を無機層21に塗布してUV照射で成膜した後、真空チャンパーに入れて減圧し、真空度が10−3Pa以下の状態で一定時間保持してから無機層21の上に有機層22を成膜した。有機層22の表面抵抗率は、5×1010Ω/sqであった。このガスバリアフィルム27に、外部電圧1000V印加時の静電気シール性試験(EIA 541 Appendix)を行った結果、10V以下で、良好な静電気シールド性を示した。得られたガスバリアフィルムを有機ELに使用したのが、図2に示す有機ELである。
【実施例3】
【0066】
(アクリル系共重合体の合成)
窒素ガスが還流され、温度調節が容易なように冷却装置を取り付けた反応器(IL)に、n−ブチルアクリレート80質量部、エチルアクリレート10質量部、ポリ(エチレングリコール)含ホウ素ジメタクリレート(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド50質量部溶解品)10質量部を添加した後、溶媒として、エチルアセテート100質量部を添加した。その後、酸素を除去するために、窒素ガスを一時パージした後、62℃に保持した。上記混含物を均一にした後に、反応開始剤としてエチルアセテートに50質量%の濃度に希釈したアゾビスイソブチロニトリル0.03質量部を投入し、9時間反応させてアクリル系共重合体を製造した。
【0067】
(配含およびコーティング過程)
上記製造したアクリル系共重合体100質量部、架橋剤としてイソシアネート系トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物0.6質量部、ポリエチレングリコール−2−エチルへキソネート0.1質量都を投入し、適切な温度で希釈し、均一に混合し、ついで、図5(A)を参照して、剥離紙23にコーティングして乾燥した後、厚さ25μmの均一な粘着層24を形成させた。図5(B)を参照して、この粘着層24をポリエチレンの保穫フィルム25に粘着加工し、その後、図5(C)を参照して、剥離紙23を除去し粘着保護フィルム26を作成した。作成した粘着保護フィルム26の剥離帯電圧(剥離角度180度、剥離速度10m/min、春日電機社製KSD−0103使用)を測定した結果、O.OKVであった。180度ピール粘潜力は、3.2N/25mmであった。この粘着保護フィルム26を用いて、図5(D)を参照して、実施例2のガスバリアフィルム27に粘着加工して貼り付けた。この粘着加工したガスバリアフィルムから、図5(D)と(E)を参照して、保護フィルム25を剥離し、ガスバリアフィルム10を得た。保護フィルム25を剥離(剥離速度10m/min)したとき、ガスバリアフィルム10は変形しなかった。保護フィルム25を剥離した後の、基材フィルム20上に多層の積層構造(有機層22,無機層21,有機層22,無機層21,粘着層24)を有する、粘着層24付きのガスバリアフィルム10を使って、図2に示すように有機EL素子を封止する。
【実施例4】
【0068】
(ガスバリアフィルムの設置)
封止フィルムとして、実施例1と同様な方法で作成したガスバリアフィルムを用いて有機EL素子を封止した。具体的には、有機EL素子の素子面上に、ガスバリアフィルムを、接着剤層面が有機EL素子側に接するように重ね、窒素パージグローブボックス中に設置したバキュームラミネータでラミネートし、100℃で1時間加熱して、有機EL素子を封止した。保護フィルムを有する実施例3のガスバリアフィルムを使用する場合は、予め、保護フィルムを剥離除去して粘着層面を露出させ、粘着層面が有機EL素子側に接するように重ねた後、上記と同様に封止を行った。
【0069】
[比較例1]
案施例2に記載の塗布液の調整において、ポリエチレングリコール#600ジアクリレートにトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを50質量部の溶解溶液10質量部を添加しないこと以外は、実施例2と同様な方法で、ガスバリアフィルムを製造した。このガスバリアフィルムに、外部電圧1000V印加時の静電気シール性試験(EIA 541 Appendix)を行った結果、500V以上であった。
【0070】
[比較例2]
実施例3に記載のアクリル系共重合体の合成において、ポリエチレングリコール含ホウ素ジメタクリレート(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド50質量部溶解品)10質量部を添加せず帯電防止性能の付与を行わなかったこと以外は、実施例3と同様な方法で製造した粘着層をポリエチレンの保謹フィルムに粘着加工した。この保護フィルムを用いて、実施例2のガスバリアフィルムに粘着加工した。この粘着加工したガスバリアフィルムから保護フィルム剥離(剥離速度10m/min)すると、ガスバリアフィルムは変形(カール)して、有機EL素子の封止が出来なかった。
【0071】
なお、上記実施例では、本発明に係るガスバリアフィルムをフレキシブル有機ELの素子の封止に使用する場合を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、電子ペーパや太陽電池等の素子の封止にも使用することができる。
【0072】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、熱安定性に優れ、ブリーディング、ブルーミングおよび移行汚染が発生せず、湿度に依存せずに、即効性に優れ、物性の低下を招かず、かつ、優れた制電性が持続するガスバリアフィルムが得られる。
【符号の説明】
【0074】
1 有機発光層
2 有機キャリア輸送層
3 金属電極
4 ITO透明電極
5 ガラス基板
6 接着剤
7 プラスチック基板
8 ポリマー層
9 無機層
10 ガスバリアフィルム
11 基材フィルム
12 ガスバリア層
13 有機層
14 無機層
15 プラスチック基板
20 基材フィルム
21 無機層
22 有機層
23 剥離紙
24 粘着層
25 保穫フィルム
26 粘着保護フィルム
27 ガスバリアフィルム
80 ガスバリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの上に設けられた、ガスの透過を遮断する緻密な無機層と、
前記無機層の上又は下に接して積層された、該無機層を保護し、柔軟性を与える有機層と、を備えたガスバリアフィルムにおいて、
前記有機層は、フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩が重合性化合物、樹脂、エラストマー又は粘着性樹脂中に分散されてなる制電性組成物を硬化してなる、フィルムまたは粘着フィルムで形成されていることを特徴とするガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記有機層と前記無機層は交互に積層されている、請求項1に記載のガスバリアフィルム
【請求項3】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、前記制電性組成物100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下の割合で、前記制電性組成物中に分散されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンは、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンおよびフルオロアルキルスルホン酸イオンからなる群から選ばれた陰イオンである請求項1から3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記フルオロ基及びスルホニル基を有する陰イオンと対になる陽イオンは、アルカリ金属、2A族元素、遷移金属及び両性金属からなる群の陽イオンから選ばれる請求項1から4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドのアルカリ金属塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドのアルカリ金属塩およびトリフルオロアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩からなる群より選ばれた塩である、請求項5に記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンを備えた塩は、下記一般式(1)で表されるポリ(アルキレングリコール)含ホウ素エステルに溶解された状態で前記制電性組成物中に分散されていることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【化1】

(式(1)中、R、RおよびRは、互いに独立に、炭素数1〜8の直鎖又は分岐状の低級アルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基および炭素数3〜6のアルケニル基からなる有機基群の中から選ばれ、OA,OAおよびOAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、l、m、nはオキシアルキレン基単位の平均付加モル数で、2〜14である。)
【請求項8】
前記フルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンは、該陰イオンが、下記一般式(1)で表されるポリ(アルキレングリコール)含ホウ素エステルのホウ素原子の空のp軌道に、配位子として結合してなるホウ素錯体として分散されている請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【化1】

(式(1)中、R、RおよびRは、互いに独立に、炭素数1〜8の直鎖又は分岐状の低級アルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基および炭素数3〜6のアルケニル基からなる有機基群の中から選ばれ、OA,OAおよびOAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、l、m、nはオキシアルキレン基単位の平均付加モル数で、2〜14である。)
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを用いた有機EL。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを用いた電子ペーパ。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを用いた太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−39817(P2013−39817A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179884(P2011−179884)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(398033921)三光化学工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】